JPWO2014046191A1 - 局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤 - Google Patents

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Abstract

患部局所における有効な薬物濃度を長期にわたり維持することができ、しかも優れた持続鎮痛効果を有する局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤が提供される。局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、水混和性有機溶媒中に、リン脂質とコレステロールとの合計濃度が100〜200w/v%含有される水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、混合相におけるリン脂質とコレステロールとの合計濃度が15〜50w/v%であるエマルジョンを得て、前記エマルジョンを第2水相溶液で外液置換して得られるリポソーム組成物であって、前記第1水相溶液よりなるリポソーム膜の内部領域水相と前記第2水相溶液よりなるリポソーム膜の外部領域水相との間にイオン勾配が形成されたリポソーム組成物に、リモートローディング法を用いて前記内部領域水相に局所麻酔薬を封入して製造される。

Description

本発明は、局所麻酔薬を含有する持続徐放性リポソーム製剤に関する。
近年、社会の高齢化が進むにつれ、認知症や脳疾患、パーキンソン病等の介護者を必要とする患者が増えている。このような患者は、薬を飲むこと自体を忘れたり、嚥下困難に伴い薬を飲みこむことが困難だったりと、薬を飲むことを自分自身で管理することが難しく、経口投与以外の投与方法が求められている。また、精神病の患者などは、薬が切れてしまうと直ちに症状があらわれて生活に支障をきたすため、薬の効果が切れる前に、1日に何度も投与しなければならず、頻回投与は、患者にとって大きな負担となっている。これらのことから、持続徐放製剤は、あらゆる疾患領域において非常に望まれている製剤である。
持続徐放製剤としては、皮下投与製剤もしくは筋肉内投与製剤がこれまでに検討されており、それらの多くは、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)を用いたマイクロスフェアである。例えば、PLGAの架橋マトリックス中に抗癌剤リュープロレリンを封入したマイクロカプセル製剤リュープリン(Leuplin)(登録商標)がある。これらのPLGAを用いたマイクロスフェアは、投与後すぐに薬物が放出すること(初期バースト)が知られており、薬物血中濃度が速やかに有効濃度を超えるため、副作用が懸念される。また、PLGAを用いる場合、薬物を高効率で高濃度に封入することは難しく、臨床で投与可能な薬物量に限界があるため、薬物封入量の改善も未だ課題が残る。さらに、PLGAを用いる場合、調製工程に有機溶媒を用いるため、製剤からの有機溶媒の除去が必須となり、工業スケールでの製造では困難な場合が多い。加えて、PLGAを用いると、加水分解とともに局所的に酸性が強まるため、投与部位において炎症が起こることも大きな問題とされている。
その他、多層膜リポソームにリモートローディング法によりブピバカインを内封したアプローチもなされているが、該文献では、粒子径と徐放性の関係は検討しておらず、徐放製剤において最適な粒子径の知見は得られていない。また、開示されている徐放持続時間も、術後の3〜5日間続く強い痛みを十分な期間、緩和できるだけの持続時間とはいえず、持続性についてはまだ課題がある(非特許文献1、非特許文献2、特許文献1)。さらに、局所または全身的薬物送達のための脂質ベースの徐放性薬物担体として多小胞状リポソーム(MVL)が開発されているが(特許文献2)、これに関しても臨床上、十分な持続時間とはいえず、課題が残されている。
特表2002−522470号公報 特表2001−522870号公報
Gilbert J. Grantら、「A Novel Liposomal Bupivacaine Formulation to Produce Ultralong-Acting Analgesia」、Anesthesiology、2004年、第101巻、第1号、p.133−137 Elyad M. Davidsonら、「High-Dose Bupivacaine Remotely Loaded into Multivesicular Liposomes Demonstrates Slow Drug Release Without Systemic Toxic Plasma Concentrations After Subcutaneous Administration in Humans」、Anesthesia & Analgesia、2010年、第110巻、第4号、p.1018−1023
本発明は、局所麻酔薬を担持するリポソーム製剤について、患部局所における有効な薬物濃度を長期にわたり維持することができ、しかも優れた持続鎮痛効果を有する局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねたところ、10層以上の多層膜中に均一の内水相を有し、平均粒子径(平均最外径)が1μm以上で、リポソーム(以下、空のリポソームということがある)の内水相と外水相との間にイオン勾配を形成したリポソーム組成物に、局所麻酔薬を封入すると、局所麻酔薬の持続徐放性を有するリポソーム製剤が得られることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に掲げる(1)〜(11)である。
(1)水混和性有機溶媒中に、リン脂質とコレステロールとの合計濃度が100〜200w/v%含有される水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、混合相におけるリン脂質とコレステロールとの合計濃度が15〜50w/v%であるエマルジョンを得て、前記エマルジョンを第2水相溶液で外液置換して得られるリポソーム組成物であって、前記第1水相溶液よりなるリポソーム膜の内部領域水相と前記第2水相溶液よりなるリポソーム膜の外部領域水相との間にイオン勾配(イオン濃度勾配)が形成されたリポソーム組成物に、リモートローディング法を用いて前記内部領域水相に局所麻酔薬を封入して製造される、局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(2)前記イオン勾配がプロトン勾配(プロトン濃度勾配)であり、リポソームの内部領域水相のpHはリポソームの外部領域水相のpHよりも低い、上記(1)に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(3)前記局所麻酔薬を0.08(mol)/総脂質(mol)以上でリポソーム内に保持している、上記(1)または(2)に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(4)前記リポソームは、平均粒子径(平均最外径)が1μm以上であり、かつ10層以上の多層膜中に前記内部領域水相を有する、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(5)注射、浸潤、塗布および埋め込みからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺に投与するための、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(6)術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺にわたる、皮下、筋膜および筋肉内からなる群から選択される少なくとも1つに投与される、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(7)投与後、少なくとも3日間以上の鎮痛期間をもたらす、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(8)前記局所麻酔薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカインおよびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つのアミノアミド型麻酔薬である、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(9)27〜34ゲージの少なくとも1つのゲージサイズの注射針を有する注射器を用いて投与することができる、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
(10)上記(9)に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤と、27〜34ゲージの少なくとも1つのゲージサイズの注射針を有する注射器とを含む、局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤用キット。
(11)上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤をヒトに投与する工程を含む、ヒトに局所麻酔をかける方法。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は優れた持続性を有する。よって、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、術後の痛みを十分な期間緩和できる。
図1は、実施例2〜5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および従来法により調製された比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤の塩酸ロピバカイン放出率(%)の経時による変化を示すグラフである。 図2は、実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および従来法により調製された比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤の投与部位の塩酸ロピバカイン残存率(%)の経時による変化を示すグラフである。 図3は、実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤の術後鎮痛効果の経時変化を示すグラフである。 図4は、実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の術後鎮痛効果の経時変化を示すグラフである。 図5は、実施例3〜5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の術後鎮痛効果の経時変化を示すグラフである。 図6は、実施例6の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤の術後鎮痛効果の経時変化を示すグラフである。 図7は、実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および比較例C3の市販の塩酸ブピバカイン含有リポソーム製剤の術後鎮痛効果の経時変化を示すグラフである。 図8は、本発明の持続性局所麻酔薬徐放製剤に使用されるリポソーム製剤を示す図である。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、水混和性有機溶媒中に、リン脂質とコレステロールとの合計濃度が100〜200w/v%含有される水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、混合相におけるリン脂質とコレステロールとの合計濃度が15〜50w/v%であるエマルジョンを得て、前記エマルジョンを第2水相溶液で外液置換して得られるリポソーム組成物であって、前記第1水相溶液よりなるリポソーム膜の内部領域水相と前記第2水相溶液よりなるリポソーム膜の外部領域水相との間にイオン勾配(イオン濃度勾配)が形成されたリポソーム組成物に、リモートローディング法を用いて前記内部領域水相に局所麻酔薬を封入して製造される、局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤である。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、投与した患部に留まり、投与部位で、局所麻酔薬を持続的に徐放することができるため、術後等の痛みを、副作用もなく安全に、十分な期間緩和できる。
本発明において、局所麻酔薬を持続的に徐放することができることを持続性に優れるという。また、本明細書では、局所麻酔薬を導入する前のものを「リポソーム組成物」といい、内部領域に局所麻酔薬を導入した後のリポソーム組成物を「局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤」という。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤のリポソームの平均粒子径(平均最外径)は1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1〜12μm、さらに好ましくは2.5〜10μm、いっそう好ましくは3〜10μm、よりいっそう好ましくは6〜10μmである。リポソームの平均粒子径(平均最外径)は、粒度分布計、好ましくは光散乱回折式粒度分布計を用いることにより、測定することができる。光散乱回折式粒度分布計としては、例えば、ベックマンコールター社製LS230が挙げられる。
リポソームは、壁が脂質二重膜から構成されている。一つの脂質二重膜から一つの層構造(ラメラリティ)が構成されているとすると、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤に利用されるリポソームは、10層(重)以上の層構造により壁としての外殻が構成されていることが好ましい。層数は、好ましくは10〜35層(10〜35重)の層構造(当該層構造を有するときの平均粒子径は1〜12μmである。)、より好ましくは12〜35層(12〜35重)の層構造(当該層構造を有するときの平均粒子径は2.5〜12μmである。)、さらに好ましくは13〜27層(13〜27重)の層構造(当該層構造を有するときの平均粒子径は3〜10μmである。)を有する。これらの層構造は、内側と外側とに隣接する層構造が、ほぼ接触して存在しており、それらの間にはほんの少量の水が存在する。層構造の数はリポソームの壁を一部破壊するような条件で透過型電子顕微鏡(TEM)写真を撮影し、層構造の数を計測することにより求めることができる。
本発明のリポソーム製剤に使用するリポソームは内部に内水相を有する。内水相は最も内側に存在する層構造の内表面の内部領域に構成される。一つの層構造(脂質二重膜)の厚みが約10nmであり、存在する脂質二重膜の数が増加するとリポソームの壁厚みが増加する。脂質二重膜の層構造が20層である場合、10nmの20層分が内水相の両側に配置され、片側で約0.2μmの厚みとなると考えられる。20層からなるリポソームの外径から両側分の厚みの約0.4μmを引くことにより、内水相の概略の直径(リポソームの内径)を計算することができる。
本発明のリポソーム製剤の内水相の直径は0.8μm(平均粒子径1μmで10層)以上であることが好ましく、より好ましくは2.3μm(平均粒子径2.5μmで12層)〜11.3μm(平均粒子径12μmで35層)、さらに好ましくは2.7μm(平均粒子径3μmで13層)〜9.5μm(平均粒子径10μmで27層)である。
本発明のリポソーム製剤に使用するリポソームは、例えば、平均粒子径が1μmのときに層構造が10層であると考えることができる。同様に、例えば、平均粒子径が2.5μmのときに層構造が12層であり、平均粒子径が3μmのときに層構造が13層であり、平均粒子径が10μmのときに層構造が27層であり、平均粒子径が12μmのときに層構造が35層であると考えることができる。しかしながら、本発明のリポソーム製剤に使用するリポソームはこれらに限定されるものではない。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤に利用されるリポソームの平均粒子径は、徐放性能に優れ、かつ投与部位からのリポソームの拡散を抑制し、リポソームが血管内に移動せずに投与部位に留まることから、1μm以上であることが好ましい。また、細い針(例えば27〜34ゲージ)でも容易に投与可能であるために、傷みを軽減することができる。このように製造されたリポソームは好ましい徐放性が得られるとともに、均一なリポソーム組成物として製造することが可能となり、均質なリポソーム製剤を製造することができる。また、注射、浸潤、塗布および埋め込みからなる群から選ばれる少なくとも1種の方法による投与に適する。なお本発明において、注射は局所注射を含むもの、浸潤および塗布についても局所浸潤、局所塗布を含むものとする。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、以下の工程によってリポソーム組成物を形成し、さらに局所麻酔薬をリポソームの内水相に封入して製造することができる。
[リポソーム組成物]
局所麻酔薬を封入してリポソーム製剤とするためのリポソーム組成物は、水混和性有機溶媒中に、リン脂質とコレステロールとの合計濃度が100〜200w/v%含有される水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、混合相におけるリン脂質とコレステロールとの合計濃度が15〜50w/v%であるエマルジョンを得て、前記エマルジョンを第2水相溶液で外液置換して得られるリポソーム組成物であって、前記第1水相溶液よりなるリポソーム膜の内部領域水相と前記第2水相溶液よりなるリポソーム膜の外部領域水相との間にイオン勾配(イオン濃度勾配)が形成されたリポソーム組成物である。
ここで、「水混和性有機溶媒」とは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノ−ル等のアルコール類であり、エタノールが好ましい。
「水混和性有機溶液(以下、アルコール溶液ということがある)」とは、アルコール中に、リン脂質およびコレステロールの合計濃度が100〜200w/v%(100mL中100〜200g)で含有される溶液である。
「混合相」とは、水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、得られる混合相であり、総脂質濃度が15〜50w/v%(100mL中15〜50g)である。
「第1水相」とは、内部領域水相または内水相とも呼ばれ、本発明のリポソームの多層膜中に均一に存在する内部領域水相である。
「第2水相」は、外部領域水相または外水相とも呼ばれ、発明のリポソームの多層膜の外部に存在する水相であり、内部領域水相とイオン勾配を形成する水相である。
以下に各成分を説明する。
<リン脂質>
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を構成するリポソーム組成物の脂質膜の主構成成分の1つであるリン脂質は、生体膜の主要構成成分であり、一般的に、分子内に長鎖アルキル基より構成される疎水性基と、リン酸基より構成される親水性基とをもつ両親媒性物質である。リン脂質としては、ホスファチジルコリン(=レシチン)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどのグリセロリン酸;スフィンゴミエリン(SM)などのスフィンゴリン脂質;カルジオリピンなどの天然または合成のジホスファチジルリン脂質およびこれらの誘導体;これらの水素添加物、例えば、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素添加卵黄ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリンが好ましい。リン脂質は単一種または複数種の組合せであってもよい。
<リン脂質以外の添加物>
本発明のリポソーム製剤のリポソーム膜脂質には、上記主構成成分とともに、他の膜成分を含んでいてもよい。例えば、他の膜成分として、リン脂質以外の脂質および/またはその誘導体、酸化防止剤等を、所望により、含むことができる。
リン脂質以外の脂質は、長鎖アルキル基等の疎水性基を分子内に有し、かつリン酸基を分子内に有しない脂質であれば特に限定されない。リン脂質以外の脂質としては、具体的には、例えば、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質およびコレステロール等のステロール誘導体ならびにこれらの水素添加物とその他の誘導体を挙げることができる。好ましいステロール誘導体としては、シクロペンタノヒドロフェナントレン環を有するコレステロール類が挙げられる。本発明のリポソーム組成物は、リン脂質以外の脂質として、コレステロールを含むことが好ましい。本発明においては、リン脂質とコレステロールとの合計を総脂質と記載することがある。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、尿酸あるいはトコフェロール同族体すなわちビタミンEなどが挙げられる。トコフェロールには、α、β、γおよびδの4種類の異性体が存在するが、本発明においては、特に制限されず、いずれの異性体も使用することができる。
なお、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム組成物は、リン脂質およびコレステロールである総脂質の組成を以下のように選択することによって好適なリポソーム組成物とすることができる。
1)リポソームの脂質膜が、鎖長16〜18の飽和脂肪酸のアシル鎖を有するリン脂質のみで構成される。
2)リポソームの脂質膜が、鎖長14〜18の飽和脂肪酸のアシル鎖を有するリン脂質、およびコレステロールを主構成成分として含有する場合、両成分のモル比は80:20〜50:50である。
3)リポソームの脂質膜が、鎖長16〜18の不飽和脂肪酸のアシル鎖を有するリン脂質、およびコレステロールを主構成成分として含有する場合、両成分のモル比は60:40〜50:50である。
ここで、アシル鎖の鎖長とはアシル鎖の炭素数を意味する。アシル鎖炭素数14の飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸が、アシル鎖炭素数15の飽和脂肪酸としては、ペンタデシル酸が、アシル鎖炭素数16の飽和脂肪酸としては、パルミチン酸(慣用名:セチル酸、ヘキサデシル酸、体系名:ヘキサデカン酸)が、アシル鎖炭素数17の飽和脂肪酸としては、ヘプタデカン酸が、アシル鎖炭素数18の飽和または不飽和脂肪酸としては、ステアリン酸(体系名:オクタデカン酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸が、それぞれ例示される。
<リポソーム内水相(第1水相)溶液>
本発明において、両親媒性弱塩基性薬物を高効率かつ安定にリポソーム内に封入するために用いられるリポソームの内水相溶液は、前記両親媒性弱塩基性薬物とともにリポソーム内に封入される対イオンの選択が重要となる。本発明のリポソーム組成物は、薬物を高効率で封入し、かつ長期持続徐放性を達成するために、硫酸イオンを含有することが好ましい。硫酸イオンを生じる化合物としては硫酸アンモニウムが一般的であるが、その他、硫酸デキストランやコンドロイチン硫酸などからも選択できる。また、その他の対イオンとしては、水酸化物、燐酸塩、グルクロン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、シアン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物、塩化物、および他の無機または有機アニオン類、またはアニオン性重合体などが挙げられる。
内水相のpHについては、リモートローディング法の手法に応じて異なる。例えば、クエン酸を用いる場合、あらかじめ内水相と外水相との間にプロトン勾配(プロトン濃度勾配またはpH勾配ともいう。)を形成しておく必要がある。その場合は、内水相のpHと外水相のpHとの差が3以上であることが好ましい。また、硫酸アンモニウムを用いる場合は、化学平衡によってプロトン勾配が形成されるため、あらかじめ内水相のpHと外水相のpHとに差を設けておく必要はない。
また、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を構成するリポソーム組成物の調製において、リポソーム組成物は、水混和性溶媒中に、リン脂質とコレステロールとの合計濃度が100〜200w/v%含有される水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、混合相におけるリン脂質とコレステロールとの合計濃度が15〜50w/v%であるエマルジョンを得て、前記エマルジョンを第2水相溶液で外液置換して得られる。
<リポソーム外水相(第2水相)溶液>
外水相は、内水相溶液より前記イオン勾配を形成するためのイオン濃度が低い水溶液が用いられ、具体的にはHEPES溶液やNaCl溶液、グルコースやショ糖などの糖類水溶液が用いられる。外水相のpHについては緩衝剤によって調整されていることが望ましく、脂質の分解および生体内投与時のpH格差を考慮してpH5.5から8.5の範囲で調整されることが好適であり、より好ましくはpH6.0〜7.5の範囲である。リポソームの内水相と外水相の浸透圧については、両者の浸透圧差でリポソームが破壊されることのない範囲の浸透圧で調整されていればよく、特に限定はされないが、リポソームの物理的安定性を考慮するとこの浸透圧差は少ないほど望ましい。
<リポソーム組成物中に含んでもよいリポソーム>
上記リポソーム組成物は、リポソーム組成物中に上記したリポソーム以外のリポソームを含んでもよく、上記したリポソーム以外のリポソームは、単膜小リポソーム、多小胞リポソーム等がある。上記したリポソームが全リポソーム中の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがいっそう好ましい。
[リポソーム製剤]
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、上記したリポソーム組成物にリモートローディング法を用いて局所麻酔薬を封入して製造することができる。
<リモートローディング法>
リモートローディング法とは、薬物が内封されていない空リポソームを製造し、リポソーム外液に薬物を加えることによりリポソームに薬物を導入する方法である。リモートローディング法では、外液に加えられた薬物が能動的にリポソームへと移行し、リポソームへと取り込まれる。このドライビングフォースとしては、溶解度勾配、イオン勾配、pH勾配などが用いられ、例えばリポソーム膜を隔てて形成されるイオン勾配を用いて薬物をリポソーム内部に導入する方法が一般的であり、例えば、Na+/K+濃度勾配に対するリモートローディング法により予め形成されているリポソーム中に薬物を添加する技術がある(特開平9−20652号公報参照)。
イオン勾配法(イオン濃度勾配法)は、リポソームの内部領域水相と外部領域水相との間にイオン勾配(イオン濃度勾配)を形成し、前記外部領域水相に添加された局所麻酔薬がこのイオン勾配に従ってリポソーム多層膜を透過することで局所麻酔薬をリポソーム内部に封入する方法であり、イオン勾配としてはプロトン勾配(pH勾配)が好ましい。イオン勾配法では、リポソーム組成物を製造し、リポソーム組成物の懸濁液中に局所麻酔薬を添加することにより、リポソーム内水相に局所麻酔薬を導入することができる。
プロトン勾配(pH勾配)を形成する方法としては、第1水相として酸性pH緩衝液(例えば、pH3付近のクエン酸溶液)を用いてリポソームを形成し、次いでリポソームの外部pHを中性付近に調整する(例えば、外部水相をpH6.5の緩衝液に置換する。)ことで、リポソーム内部のpHがリポソームの外部のpHより低いプロトン勾配(pH勾配)を形成する方法を用いることができる。
また、アンモニウムイオン勾配を介してプロトン勾配を形成することもできる。
この場合、例えば、第1水相として硫酸アンモニウム水溶液を用いてリポソームを形成し、次いでリポソームの外部水相の硫酸アンモニウムを除去するか、または希釈することによって少なくともリポソームの内側と外側との間にアンモニウムイオンの濃度勾配を形成する。すると、生成したアンモニウムイオン勾配によって、リポソーム内水相から外水相へアンモニアの流出が起こり、結果的に内水相にアンモニアが残したプロトンが蓄積することによってリポソーム内部は外部よりも酸性になり、プロトン勾配が形成される。
<封入される局所麻酔薬>
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤に含まれる局所麻酔薬は、一般的に局所麻酔薬として使用されるものであれば特に制限されない。局所麻酔薬はイオン勾配法でリポソーム内に封入可能なものが好ましい様態の1つとして挙げられる。局所麻酔薬はイオン化可能な両親媒性であることが好ましく、両親媒性弱塩基性であることが好ましい。
前記局所麻酔薬としては、例えば、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブビバカイン、リドカイン、メビバカイン、プリロカインおよびこれらの塩のようなアミノアミド型麻酔薬;コカイン、プロカイン、テトラカインおよびこれらの塩のようなエステル型麻酔薬が挙げられるが、なかでも、アミノアミド型麻酔薬が好ましく、ブビバカイン、ロピバカイン、レボブビバカインまたはこれらの塩がより好ましい。その他、モルヒネ、フェンタニル、コデインのようなオピオイド系鎮痛薬が挙げられる。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、有効量の局所麻酔薬を含むことができる。本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤に含まれる局所麻酔薬の量は、特に限定されず、用途に応じて適宜調整し得る。具体的には、例えば、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤をヒトに対して1回投与する場合、少なくとも3日間持続的に痛みを緩和できる量を含むものとすることができる。例えば、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を1回投与すると、有効量を、少なくとも3日以上にわたって術創患部で持続的に放出する。本発明において、「1回投与する」とは、局所麻酔薬必要量の全量を、1箇所に投与することを意味するだけでなく、必要量を術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺に数箇所にわたり投与することも意味する。用量の上限は、個々の局所麻酔薬の毒性により制限される。用量の下限は、リポソーム内部領域に存在する局所麻酔薬が、徐痛のために必要な最小量を投与部位に放出されればよく、その必要量は術創の大きさによって変わるため特に制限されない。また、正確な用量は、個々の麻酔薬の特性、ならびに年齢、性別、体重、体調などの患者の要因により変わる。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤は、1回の投与で少なくとも3日以上または4日以上持続徐放するので、有効量は、持続期間(3日以上、または4〜7日)に徐放する量である。したがって、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤の1回当たりの投与に含まれる局所麻酔薬量は、1kg当たりの有効量に、ヒトの体重および3日以上、または4〜7日の徐放期間を乗じた量とすることができる。
<投与方法>
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤の投与方法は特に制限されないが、非経口的、かつ局所的に投与することが好ましい。例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、髄腔内、硬膜外、脳室内、筋組織の神経接合部内、痛みを伝達する神経周辺を選択することができ、症状により適宜投与方法を選択することができ、注射、浸潤、塗布および埋め込みからなる群から選ばれる少なくとも1種の方法によって投与することができる。ここで、注射、浸潤、塗布、埋め込みの各方法は特に制限されない。これらは局所であることを含む。例えば、筋肉注射、皮下注射;皮下への浸潤;スプレーによる塗布;シートによる埋め込みが挙げられる。また、カテーテルを体内、例えば管腔内、例えば血管内に挿入して病巣部位にもっていき、当該カテーテルを通して持続的、あるいは間欠的に投与することも可能である。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を注射によって投与する場合、19〜34ゲージ(G)の注射を有する注射器を用いて投与することができ、適宜、注射針の太さを選ぶことができる。注射針のゲージは注射する場所および方法によって適宜、選択することが好ましく、例えば、筋肉内にゆっくりと確実に注射する場合は、比較的太い注射針で投与するのがよく、19〜25ゲージであるのが好ましい。浸潤投与であれば、比較的細い注射針で投与するのがよく、27〜34ゲージの注射針が好ましい。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を適用する個所としては、例えば、術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺が挙げられる。
術創部位における手術の種類としては、例えば、異切除術、肝切除術、虫垂切除術、帝王切開術、胆嚢摘出術、子宮摘出術、結腸切除術、前立腺切除、椎間板切除術、卵巣摘出術、整形外科手術、冠動脈バイパス移植術、創面切除術などが挙げられる。
術創患部の隣接部位は術創部位に接するおよび/または近い部分であれば特に制限されない。術創患部の痛みを伝達する神経周辺は、術創部位を支配する神経の周辺であれば特に制限されない。
また、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を、術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺にわたる、皮下、腹膜、筋膜および筋肉内からなる群から選ばれる少なくとも1種に投与することができる。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を投与する方法は、縫合すべき切開部を有する術創患部の筋膜を閉鎖後、術創に沿って、局所麻酔薬持続性徐放製剤を筋膜および/またはその下の筋肉に注射針で複数箇所投与するステップと、筋膜および/または筋肉に投与後、皮膚を総合閉鎖するステップとを有する。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を投与する方法は、さらに、縫合閉鎖した後、縫合された切開部に沿った縫合糸付近の位置および切開部を取り囲む位置に、複数箇所、皮下に、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を均一に投与するステップが含まれてもよい。投与箇所は1箇所に限定されず、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤が術創に沿って均一に投与されるように、数箇所にわたって投与されることが好ましい。注射針は、縫合された切開部に先端が近づくように、皮膚に対して垂直または斜めに穿刺されることが好ましい。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を投与する方法は、さらに、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤の注射による投与中に、注射された皮下の膨張感を皮膚の上で確認するステップを有してもよい。この場合、皮膚の上で皮下の膨張感を確認するためには、術者の手や圧力センサーを備えた機器を用いることができる。膨張感を確認することで、組織に局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤がしっかりと投与され、かつ術創患部に均一に拡散されたことを確認することができる。
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を用いれば、投与後、少なくとも約3日間以上の鎮痛効果をもたらすことができ、好ましくは3〜7日、より好ましくは3〜5日の鎮痛期間をもたらすことができる。
[持続徐放製剤用キット]
本発明の持続徐放製剤用キットは、本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤および27〜34ゲージの少なくとも一つのゲージサイズの注射針を含む。注射針の本数は単数でも複数でもよく、注射針のサイズは、1種類でも2種類以上の組合せでもよい。本発明のリポソーム製剤は27ゲージ、30ゲージ、34ゲージのなどの細い針でも投与可能であり、投与される患者の負担が少ない。また、投与されるリポソーム製剤の徐放性も高いので本発明の持続徐放性剤用キットの有用性が高い。
[局所麻酔をかける方法]
本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤による、哺乳動物(ヒトを除く)またはヒトに局所麻酔をかける方法は、上述した本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を当該哺乳動物(ヒトを除く)またはヒトに投与する工程を含む。投与する方法は、特に限定されないが、上述した本発明の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤を投与する方法によることが好ましい。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[リポソーム製剤の製造]
(脂質および局所麻酔薬)
実施例1〜6と、比較例C1およびC2とについて、以下に記載する脂質および局所麻酔薬を使用してリポソーム製剤を製造した。また、調製例P1について、以下に記載する脂質を使用して空リポソームを製造した。
(1)脂質
水素添加大豆ホスファチジルコリン(分子量790,リポイド社製 SPC3)(本実施例において「HSPC」と略記する。)
コレステロール(分子量388.66,ソルベイ社製)(本実施例において「Chol」と略記する。)
(2)局所麻酔薬
塩酸ブピバカイン(分子量324.89,JINAN CHENGHUI−SHUANGDA Chemical社製)
塩酸ロピバカイン(分子量310.88,JINAN CHENGHUI−SHUANGDA Chemical社製)
〈調製例P1〉
以下に記載した方法により、空リポソームを調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(2.82g)およびChol(1.18g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が200w/v%となるように無水エタノール(2mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(2mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(8mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=4/1(v/v)となるようにして、約10分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約10倍量の10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、1,230×gで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、pH6.5の10mM クエン酸/NaCl溶液を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、10mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.5)を添加し、リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。これを空リポソームとした。
〈実施例1〉
以下に記載した方法により、塩酸ブピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(2.82g)およびChol(1.18g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が200w/v%となるように無水エタノール(2mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(2mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(8mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=4/1(v/v)となるようにして、約10分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約10倍量の10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、1,230×gで15分間遠心分離することで空リポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ブピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により10mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
65℃で加温したリポソーム分散液に、あらかじめ65℃で加温した局所麻酔薬溶液を所定量添加後、引き続き、65℃で60分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、1,230×gで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、20mM HEPES/NaCl溶液(pH7.5)を添加し、リポソームを再分散させて、持続性局所麻酔薬徐放製剤を製造した。この製剤を塩酸ブピバカイン含有徐放製剤とした。
〈実施例2〉
以下に記載した方法により、塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(141.2g)およびChol(58.82g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が100w/v%となるように無水エタノール(200mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(200mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(650mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=3.3/1(v/v)となるようにして、約60分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約3倍量の10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で120分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、10mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.5)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、10mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.5)を添加し、リポソームを再分散させて、持続性局所麻酔薬徐放製剤を製造した。この製剤を塩酸ロピバカイン含有徐放製剤とした。
〈実施例3〉
以下に記載した方法により、塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(169.4g)およびChol(70.62g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が133w/v%となるように無水エタノール(180mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(180mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(600mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=3.3/1(v/v)となるようにして、TKホモミキサーMARKIIで約60分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約3倍量の20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で120分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを再分散させて、持続性局所麻酔薬除法製剤を製造した。この製剤を塩酸ロピバカイン含有徐放製剤とした。
〈実施例4〉
以下に記載した方法により、塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(211.7g)およびChol(88.3g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が150w/v%となるように無水エタノール(200mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(200mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(800mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=4/1(v/v)となるようにして、約60分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約3倍量の20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で120分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、10mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを再分散させて、持続性局所麻酔薬徐放製剤を製造した。この製剤を塩酸ロピバカイン含有徐放製剤とした。
〈実施例5〉
以下に記載した方法により、塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(141.2g)およびChol(58.82g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が100w/v%となるように無水エタノール(200mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(200mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(650mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=3.3/1(v/v)となるようにして、約60分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約3倍量の20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で120分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、4,200×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを再分散させて、持続性局所麻酔薬徐放製剤を製造した。この製剤を塩酸ロピバカイン含有徐放製剤とした。
〈実施例6〉
以下に記載した方法により、塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(70.6g)およびChol(29.4g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が150w/v%となるように無水エタノール(65mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(65mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(250mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=4/1(v/v)となるようにして、クレアミックスシングルモーションで約60分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約3倍量の20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、10万×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で120分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、10万×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを再分散させて、持続性局所麻酔薬除法製剤を製造した。この製剤を塩酸ロピバカイン含有徐放製剤とした。
〈実施例7〉
以下に記載した方法により、塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を調製した。
(1)空リポソーム調製
HSPC(112.90g)およびChol(47.10g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が133w/v%となるように無水エタノール(120mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(120mL)に、第1水相である内水相溶液(pH3.0、300mMクエン酸水溶液)(400mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=3.3/1(v/v)となるようにして、スターラーで約3分間、撹拌した。撹拌後、引き続き、ホモミキサーで約45分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約3倍量の20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、10万×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で60分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに20mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、10万×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを4回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行い、持続性局所麻酔薬除法製剤を製造した。この製剤を塩酸ロピバカイン含有徐放製剤とした。
〈比較例C1〉
従来法により、塩酸ロピバカイン含有製剤を調製した。具体的には以下に記載する。
(1)空リポソーム調製
HSPC/Chol=54/46(モル比)となるように、HSPC(1.41g)およびChol(0.59g)を秤量し、これにクロロホルム(25mL)を添加して脂質を溶解し、脂質クロロホルム溶液を得た。
ロータリーエバポレーターを用いて、脂質クロロホルム溶液から溶媒を除去し、薄膜を形成した。次に、公知の方法に従い、約4%の脂質濃度になるように、薄膜に内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)を加え、水和した。そして、65℃に加温しながら攪拌して、リポソームを形成し、速やかに氷冷を行った。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。リポソームを約2倍量の10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、1,230×gで20分間遠心分離することで空リポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加してリポソームを分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
リポソーム分散液に、局所麻酔薬溶液を所定量添加後、60℃で120分間、加温することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、分散させて、1,230×gで20分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、10mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行い、持続性局所麻酔薬徐放製剤を製造した。得られた持続性局所麻酔薬製剤を塩酸ロピバカイン含有製剤とした。
〈比較例C2〉
従来法(エクストルージョン法)により、塩酸ロピバカイン含有製剤を調製した。具体的には以下に記載する。
(1)空リポソーム調製
HSPC/Chol=54/46(モル比)となるように、HSPC(0.71g)およびコレステロール(0.29g)を秤量し、これに無水エタノール(1mL)を添加して脂質を加温溶解し、脂質エタノール溶液を得た。
得られた脂質エタノール溶液(1mL)に、約70℃に加温した150mM 硫酸アンモニウム水溶液(内水相)(9mL)を添加し、加温しながら超音波装置を用いて攪拌して、粗リポソーム懸濁液を調製した。
得られた粗リポソーム懸濁液を、約70℃に加温したエクストルーダー(The Extruder T.10、Lipexbiomembranes Inc.)に取り付けたフィルター(孔径1.0μm×5回、Whatman社)を順次通して空リポソームを形成し、速やかに氷冷を行った。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、超遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約2倍量の10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)で分散し、10万×gで10分間処理することで空リポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加してリポソームを分散し、同様に超遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.4となるように局所麻酔薬としての塩酸ロピパカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により40mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。
65℃で加温したリポソーム分散液に、あらかじめ65℃で加温した局所麻酔薬溶液を所定量添加後、引き続き、65℃で60分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入局所麻酔薬除去
局所麻酔薬導入後のリポソームに10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加し分散させて、10万×gで10分間、超遠心機で処理することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去し、引き続き、10mM クエン酸/NaCl溶液(pH6.5)を添加して分散させ、同様に超遠心機で処理した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行った。3回目の上清除去後に、20mM リン酸緩衝液/NaCl溶液(pH7.2)を添加し、リポソームを再分散させて、局所麻酔薬製剤を製造した。得られた局所麻酔薬製剤を塩酸ロピバカイン含有製剤とした。
〈比較例C3〉
市販の塩酸ブピバカイン含有リポソーム製剤であるエクスパレル(Exparel(R))(パシラ社)を準備した。
[調製したリポソーム製剤の特性評価]
実施例1〜7、調製例P1、比較例C1およびC2のリポソーム製剤の局所麻酔薬担持量および平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
〈局所麻酔薬担持量〉
リポソームに内封された局所麻酔薬濃度(モル濃度)および総脂質濃度(モル濃度)に基き、局所麻酔薬/総脂質(モル比)として、局所麻酔薬担持量を求めた。
〈平均粒子径〉
光散乱回折式粒度分布計(ベックマンコールター社製、LS230)を用いて平均粒子径(d50;μm)を測定した。
〈リポソーム膜のラメラリティ〉
ミクロトームを用いて作成した試料切片の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を撮影し、層構造の数を計測することにより、リポソーム膜のラメラリティを測定した。
Figure 2014046191
従来法により調製した比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤は、実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤および実施例2〜7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤と比較して、粒子径のコントロールが困難であった。さらに、未封入薬物除去後においても外液中薬物濃度が実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤および実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤よりも約9倍高かった。このことから、比較例C1で調製した塩酸ロピバカイン含有製剤は、局所麻酔薬がリポソーム内部に安定に保持されないことが明らかとなった。これは、比較例C1のリポソームの構造が実施例1〜7のリポソームの構造と異なることに起因するものと考えられる。
[リポソーム製剤の安定性の比較]
実施例2〜5のロピバカイン含有徐放製剤および比較例C1のロピバカイン含有製剤の安定性(薬物漏れ性)を、37℃の加温試験を行い、比較した。
(1)方法
実施例2〜5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤において、塩酸ロピバカイン濃度が0.6mg/mL(投与量)となるようにリン酸緩衝液によって製剤を希釈した。希釈後の製剤を試料とし、37℃で所定時間加温した(0時間(無加温)、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、18時間、24時間、48時間、および72時間)。
加温後、すみやかに試料を取り出して直ちに氷冷し、リポソーム組成物からの局所麻酔薬の放出を停止した。
放出された塩酸ロピバカイン量(放出量)は、リポソーム製剤の総脂質濃度が約20〜30mg/mLとなるようにRO水(逆浸透膜浄水)でリポソーム製剤を希釈した後、これをさらにメタノールで20倍希釈してリポソームを崩壊し、この溶液の263nmでの吸光度において、紫外可視吸光光度計を用いて高速液体クロマトグラフィーにて定量することにより求めた。
(2)結果
各試料の塩酸ロピバカイン放出率(%)を、投入量と放出量とから算出し、図1に示した。なお、図1中、“Ex.”は実施例を、“Comp. ex.”は比較例を、それぞれ意味する。また、図1中、横軸の“Time [hr.]”は「加温開始からの経過時間(時間)」を意味し、縦軸の“Release rates of ropivacaine hydrochloride [mass %]”は「塩酸ロピバカイン放出率(質量%)」を意味する。
本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤(実施例2〜5)は、初期の薬物の漏れ率が低く、時間とともにゆるやかに放出することが明らかとなった。一方、従来法で調製した塩酸ロピバカイン含有製剤(比較例C1)は初期の薬物の漏れ率が非常に高く、その後、時間とともにゆるやかに放出した。つまり、従来法で調製した塩酸ロピバカイン製剤は、製造直後の製剤の外液中に含まれる局所麻酔薬量(リポソーム組成物に封入されていない局所麻酔薬量)が非常に高く、それによって初期に直ちに放出したと考えられる。したがって、従来法で調製した塩酸ロピバカイン製剤は、局所麻酔薬をリポソーム組成物に安定に封入できないことが明らかとなった。これは、製剤の保存安定性が懸念されるだけでなく、投与後、初期バーストを引き起こす危険性があるため副作用のリスクも考えられる。したがって、従来法によって調製した局所麻酔薬は、臨床上、安全なものを提供することは困難であることが示唆された。
[リポソーム製剤の薬物動態の比較]
実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤の薬物動態試験を行い、結果を比較した。
1.方法
10週齢の雄性ウィスター・ラットを2%インフルラン吸入により麻酔した。その後、ラットの足底筋内に、実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤(塩酸ロピバカイン量として0.87mg/body)または比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤(塩酸ロピバカイン量として0.95mg/body)を投与した。
実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与したラットについては、投与後、4時間、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間および216時間が経過した時に、投与部位の足底筋肉組織を採取した。一方、比較例C1の塩酸ロピバカイン含有製剤を投与したラットについては、投与後、4時間、24時間、72時間および120時間が経過した時に、投与部位の足底筋肉組織を採取した。
採取した足底筋肉組織をホモジネート処理し、ホモジネート溶液を調製した。
続いて、ホモジネート溶液を処理し、得られた試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(検出波長:210nm)にて定量し、投与部位の足底筋肉組織(試料)に残存する塩酸ロピバカイン量を求めた。
2.結果
各試料の塩酸ロピバカイン残存率(%)を、ラットに投与した塩酸ロピバカイン量(投与量)と試料に残存していた塩酸ロピバカイン量(残存量)とから算出し、図2に示した。なお、図2中、“Ex.”は実施例を、“Comp. ex.”は比較例を、それぞれ意味する。また、図2中、横軸の“Time [hr.]”は「投与後の経過時間(時間)」を意味し、縦軸の“Remaining rates of ropivacaine chloride [mass %]”は「塩酸ロピバカイン残存率(質量%)」を意味する。
本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤(実施例2)は、投与後、1日目で61%、3日目で39%、5日目で8%の塩酸ロピバカインが投与部位に残存していた。
これに対して、従来法により調製した塩酸ロピバカイン含有製剤(比較例C1)は、投与後1日目で52%、3日目で22%、5日目で8%の塩酸ロピバカインが投与部位に残存していた。
このことから、本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤は、従来法により製造された塩酸ロピバカイン含有製剤に比べて、投与部位で持続的に局所麻酔薬を放出し、臨床上、十分な薬物濃度を維持しながら長期な徐放能を有することが明らかとなった。
[局所麻酔薬含有徐放製剤の術創患部における鎮痛効果]
〈ラットの術後痛モデル(ラット足裏疼痛モデル)〉
雄性ウィスター・ラットへ、ペントバルビタールナトリウム注射液(ネンブタール注射液、大日本住友製薬社製)0.3mLを腹腔内投与して麻酔した後、左足底の踵より5mmの位置から縦に、No.11メス(フェザー社製)にて5mm皮膚切開した。切開部からさらに足底筋をすくい出し、縦に切開した。その後、5−0ナイロン糸で皮膚を2針結節縫合した。さらに投与する徐放製剤が漏れないようにその上からダーマボンドを1層塗布した。ダーマボンドが十分乾いた後のラットをラットの術後痛モデルとした。
〈動物の痛みの行動学的研究(テスト法)〉
手術前、手術後から9〜10時間後、さらに14日後まで1日ごとに、フォン・フレイ・フィラメント(von Frey filament)試験を行った。同試験は、非侵害刺激に対する痛みの評価を目的に、決まった圧力を加えることができる太さの異なるフィラメント(フォン・フレイ・ヘア(von Frey Hair))を測定部位にタッチして圧刺激を与え、逃避反応を起こす圧力を測定することによって、機械刺激に対する逃避閾値を求める試験である。具体的には、曲がるまでに所定の応力を要するvon Frey Hairセット(North Coast Medical社製、商品名:Touch−Test)を用いて、ラットを入れたゲージの網の下からラットの手術部に対して垂直に押しつけ、ラットが驚愕して足を上げた際の応力(機械刺激の逃避閾値)を求めた。
1.塩酸ブピバカイン含有徐放製剤の術創患部における鎮痛効果
本発明の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤の有効性を評価した。
(1)方法
14週齢の雄性ウィスター・ラット(体重:370−390g)12匹を、6匹ずつ任意に、切開後に塩酸ブピバカイン含有徐放製剤を投与する群(投与群)と、切開のみ施す擬似手術群(対照群)との2群に分け、上記したラットの術後痛モデルを用いて、実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤の鎮痛効果をvon Frey filament試験により、上記のとおり評価した。
投与群には、実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤を、27Gの注射器(テルモ社製)を用いて、それぞれ規定量(塩酸ブピバカイン量として0.6mg/body)を足底筋付近に注入した。対照群には切開のみ施し、局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与しなかった。
(2)結果
von Frey filament試験の結果を図3に示す。図3中、“Ex. 1”は実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群」を、“Control”は「対照群」を、それぞれ表す。また、図3において、横軸の“Time(days)”は「術後経過時間(日)」を意味する。ただし、1日よりも前の“Pre−incision”は「切開前」を、“9 hours”は「術後9時間」を、それぞれ意味する。また、縦軸の“Withdrawal threshold [g]”は「機械刺激に対する逃避閾値(g)」を意味する。図3中、グラフに付した*(アスタリスク)は、対照群に対して有意差があることを意味する(t検定において計算したp値<0.05)。なお、切開前の機械刺激に対する逃避閾値は、いずれも15gを超えていた。
局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与していない「対照群」では、切開前に比べて逃避域値の著名な低下、すなわち痛みが4日間持続し、5日目以降、回復傾向にあった。
実施例1の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群」では、術後9時間後から術後4日目まですべての時点で、対照群に比べて有意に閾値の上昇が認められた(p値<0.05)。
対照群に比べて、投与群で有意に閾値の上昇が見られることは、術後4日目まで、術後痛が有意に軽減されていることを意味し、特筆すべきである。また、術後5日目以降に関しては、切開部の自然治癒が進み回復傾向にあることから、術後の強い痛みは4日目まで継続すると考えられる。したがって、4日間の鎮痛持続時間は十分であることが示唆された。
なお、同様のラット術後痛モデルを用いて塩酸ブピバカイン単体(原液)の鎮痛効果を評価した結果、術後1日目から閾値の上昇は認められず、術後1日目で既に鎮痛効果は得られないことが明らかとなった。これは、塩酸ブピバカイン単体が投与後すぐに消失するため、術後痛を軽減する時間が非常に短く、持続性がないと考えられる。
以上のことから、本発明の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤は、術後、術創に1回投与することで、4日間にわたる鎮痛効果を得ることができた。これは術後の強い痛みを感じる期間中、十分に鎮痛効果が得られることを意味する。本発明の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤はヒトに対しても同様に術後、術創に1回投与することで臨床上、十分な期間、鎮痛効果を得ることができると考えられる。
2.塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の術後鎮痛効果(1)
本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の有効性を評価した。
(1)方法
10週齢の雄性ウィスター・ラット(体重:290−300g)12匹を、6匹ずつ任意に、切開後に塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与する群(投与群)と、切開のみ施す擬似手術群(対照群)との2群に分け、上記したラットの術後痛モデルを用いて、実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の鎮痛効果をvon Frey filament試験により、上記のとおり評価した。
投与群には、実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を、27Gの注射器(テルモ社製)を用いて、それぞれ規定量(塩酸ロピバカイン量として0.5mg/body)を足底筋付近に注入した。対照群には切開のみ施し、局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与しなかった。
(2)結果
von Frey filament試験の結果を図4に示す。図4中、“Ex. 2”は実施例2の塩酸ブピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群」を、“Control”は「対照群」を、それぞれ表す。また、図4において、横軸の“Time(days)”は「術後経過時間(日)」を意味する。ただし、1日よりも前の“Pre−incision”は「切開前」を、“10 hours”は「術後10時間」を、それぞれ意味する。また、縦軸の“Withdrawal threshold [g]”は「機械刺激に対する逃避閾値(g)」を意味する。また、図4中、グラフに付した*(アスタリスク)は、対照群に対して有意差があることを意味する(t検定において計算したp値<0.05)。なお、切開前の機械刺激に対する逃避閾値は、いずれも15gを超えていた。
局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与していない「対照群」では、切開前に比べて逃避域値の著名な低下、すなわち痛みが4日間持続し、5日目以降、回復傾向にあった。
実施例2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群」では、術後10時間後から術後3日目まですべての時点で、対照群に比べて有意に閾値の上昇が認められた(p値<0.05)。したがって、投与群では、術後3日目まで、有意に術後痛が軽減されていることが明らかとなった。
なお、同様のラット術後痛モデルを用いて塩酸ロピバカイン単体(原液)の鎮痛効果を評価した結果、術後1日目から閾値の上昇は認められず、術後1日目で既に鎮痛効果は得られないことが明らかとなった。これは、塩酸ブピバカイン同様に塩酸ロピバカイン単体が投与後すぐに消失するため、術後痛を軽減する時間が非常に短く、持続性がないと考えられる。
以上のことから、本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤は、塩酸ブピバカイン含有徐放製剤と同様に、術後、術創に1回投与することで、3〜4日間にわたる鎮痛効果が得られることが明らかとなった。したがって、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤はヒトに対しても同様に術後、術創に1回投与することで臨床上、十分な期間、鎮痛効果を得ることができると考えられる。
3.塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の術後鎮痛効果(2)
本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤間の有効性を比較した。
(1)方法
10週齢の雄性ウィスター・ラット(体重:280−300g)24匹を、6匹ずつ任意に、切開後に実施例3の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与する群(投与群1)と、切開後に実施例4の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与する群(投与群2)と、切開後に実施例5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与する群(投与群3)と、切開のみ施す擬似手術群(対照群)との4群に分け、上記したラットの術後痛モデルを用いて、実施例3〜5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の鎮痛効果をvon Frey filament試験により、上記のとおり評価した。
投与群1〜3には、それぞれ、実施例3〜5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を、27Gの注射器(テルモ社製)を用いて、それぞれ規定量(塩酸ロピバカイン量として0.54mg/body)を足底筋付近に注入した。対照群には切開のみ施し、局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与しなかった。
(2)結果
von Frey filament 試験の結果を図5に示す。図5中、“Ex. 3”、“Ex. 4”および“Ex. 5”は、それぞれ、実施例3の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」、実施例4の除法製剤を投与した「投与群2」および実施例5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群3」を表す。また、図5において、横軸の“Time(days)”は「術後経過時間(日)」を意味する。ただし、1日よりも前の“Pre−incision”は「切開前」を、“10 hours”は「術後10時間」を、それぞれ意味する。また、縦軸の“Withdrawal threshold [g]”は「機械刺激に対する逃避閾値(g)」を意味する。また、図5中、グラフに付した*(アスタリスク)は、対照群に対して有意差があることを意味する(t検定において計算したp値<0.05)。なお、切開前の機械刺激に対する逃避閾値は、いずれも15gを超えていた。
局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与していない「対照群」では、切開前に比べて逃避域値の著名な低下、すなわち痛みが4日間持続し、5日目以降、回復傾向にあった。一方、実施例3の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」、実施例4の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群2」および実施例5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群3」は、術後10時間後から術後4日目まですべての時点で、対照群に比べて有意に閾値の上昇が認められた(p値<0.05)。したがって、実施例3〜5の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤は、術後5日目まで、有意に術後痛が軽減されていることが明らかとなった。また、各投与群間では閾値の変化は同様の傾向を示した。
4.塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の術後鎮痛効果(3)
本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤と従来法(エクストルーダー法)により調製した塩酸ロピバカイン含有製剤との間で有効性を比較した。
(1)方法
10週齢の雄性ウィスター・ラット(体重:290−320g)18匹を、6匹ずつ任意に、切開後に実施例6の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与する群(投与群1)と、切開後に比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤を投与する群(投与群2)と、切開のみ施す擬似手術群(対照群)との3群に分け、上記したラットの術後痛モデルを用いて、実施例6および比較例C2の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤鎮痛効果をvon Frey filament試験により、上記のとおり評価した。
投与群1には、実施例6の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を、投与群2には、比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤を、27Gの注射器(テルモ株式会社製)を用いて、それぞれ規定量(塩酸ロピバカイン量として0.55mg/body)を足底筋付近に注入した。対照群には切開のみ施し、局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与しなかった。
(2)結果
von Frey filament 試験の結果を図6に示す。図6中、“Ex. 6”は実施例6の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」を、“Comp.ex. C2”は比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤を投与した「投与群2」を、“Control”は「対照群」を、それぞれ表す。また、図6において、横軸の“Time(days)”は「術後経過時間(日)」を意味する。ただし、1日よりも前の“Pre−incision”は「切開前」を、“10 hours”は「術後10時間」を、それぞれ意味する。また、縦軸の“Withdrawal threshold [g]”は「機械刺激に対する逃避閾値(g)」を意味する。なお、切開前の機械刺激に対する逃避閾値は、いずれも15gを超えていた。
局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与していない「対照群」では、切開前に比べて逃避域値の著名な低下、すなわち痛みが4日間持続し、5日目以降、回復傾向にあった。
実施例6の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」は、術後10時間後から術後2日目まですべての時点で、対照群に比べて有意に閾値の上昇が認められた(t検定において計算したp値<0.05)。
従来法(エクストルーダー法)により調製した、比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤を投与した「投与群2」は、術後2日目には対照群に比べて優位に閾値が上昇していたが(p値<0.05)、全体として、鎮痛効果は投与群1に劣り、かつ鎮痛効果の持続も十分に得られない結果となった。
実施例6の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤と比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤との間の術後鎮痛効果の差は、比較例C2の塩酸ロピバカイン含有製剤は、塩酸ロピバカインの放出が速くなるため、術後の鎮痛効果の持続が十分に発揮されないことによるものと考えられる。
[局所麻酔薬含有徐放製剤の坐骨神経ブロックモデルにおける鎮痛効果]
〈ラットの足底筋切開(2針縫合)+患側坐骨神経ブロックモデル〉
雄性ウィスター・ラットへ、ペントバルビタールナトリウム注射液(ネンブタール注射液、大日本住友製薬社製)0.3mLを腹腔内投与して麻酔した後、左大腿骨部を毛剃りした。腹臥位にして、消毒後、No.11メス(フェザー社製)にて大腿骨上の皮膚を1cmほど切開し、皮下を剥離し、大腿二頭筋を露出した。大腿二頭筋間溝を確認し、筋膜を切開し、筋頭間を鈍的に剥離し、白い坐骨神経を確認した。坐骨神経を愛護的に把持して、坐骨神経外膜内に局所麻酔薬含有徐放製剤を局注し、筋膜は縫合せずに、大腿部皮膚を5−0ナイロン2針で縫合閉鎖した。その後、続けて、同側の足底と足底筋を切開して、5−0ナイロンで2針縫合し、ラット足底筋切開(2針縫合)+患側坐骨神経ブロックモデルとした。
1.塩酸ロピバカイン含有徐放製剤の坐骨神経ブロックモデルにおける鎮痛効果
本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および市販の塩酸ブピバカイン含有リポソーム製剤であるエクスパレルの有効性を評価した。
(1)方法
14週齢の雄性ウィスター・ラット(体重:370−390g)18匹を、6匹ずつ任意に、坐骨神経露出(実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤24μLを神経外膜内に局注)+足底筋切開(2針縫合)(投与群1)と、坐骨神経露出(比較例C3のエクスパレル40μLを神経外膜内に局注)+足底筋切開(2針縫合)(投与群2)と、坐骨神経露出(生理食塩水40μLを神経外膜内に局注)+足底筋切開(2針縫合)(対照群)との3群に分け、上記したラットの足底筋切開(2針縫合)+患側坐骨神経ブロックモデルを用いて、実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤および比較例C3のエクスバレルの鎮痛効果をvon Frey filament試験により、上記のとおり評価した。
投与群1には実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を、投与群2には比較例C3のエクスパレルを、27Gの注射器(テルモ株式会社製)を用いて、それぞれ規定量(塩酸ロピバカイン量または塩酸ブピバカイン量として0.6mg/body)を神経外膜内に局注した。対照群には切開のみ施し、局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与しなかった。
(2)結果
von Frey filament試験の結果を図7に示す。図7中、“Ex. 7”は実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」を、“Comp. ex. C3”は比較例C3のエクスパレルを投与した「投与群2」を、“Control”はそれぞれ表す。また、図7において、横軸の“Time(days)”は「術後経過時間(日)」を意味する。ただし、1日よりも前の“Pre−incision”は「切開前」を、“10 hours”は「術後10時間」を、それぞれ意味する。また、縦軸の“Withdrawal threshold [g]”は「機械刺激に対する逃避閾値(g)」を意味する。図7中、グラフに付した*(アスタリスク)は、対照群に対して有意差があることを意味する(t検定において計算したp値<0.05)。なお、切開前の機械刺激に対する逃避閾値は、いずれも15gを超えていた。
局所麻酔薬(疼痛緩和剤)を投与していない「対照群」では、切開前に比べて逃避域値の著名な低下、すなわち痛みが4日間持続し、5日目以降、回復傾向にあった。
実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」では、術後10時間後から術後4日目まですべての時点で、対照群に比べて有意に閾値の上昇が認められた(p値<0.05)。したがって、本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤は、患側坐骨神経ブロックモデルにおいて術後4日目まで、有意に術後痛が軽減されていることが明らかとなった。
エクスパレルを投与した「投与群2」では、鎮痛効果は投与群1に劣り、かつ鎮痛効果の持続は2日までしか得られない結果となった。
実施例7の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤を投与した「投与群1」では、エクスパレルを投与した「投与群2」と比較して、術後10時間後から術後4日目まで有意に閾値の上昇を認めた。
以上のことから、患側坐骨神経ブロックモデルにおいて、本発明の塩酸ロピバカイン含有徐放製剤は、術後4日間にわたり有意に鎮痛効果が認められ、かつエクスパレルに比べて持続期間が長く、鎮痛効果においても有意に優れていることが明らかとなった。
[リポソーム製剤の構造]
図8は、本発明の局所麻酔薬持続性徐放リポソーム製剤に使用されるリポソーム組成物と同様の方法で製造されたリポソーム組成物に薬物を導入した後のリポソーム製剤の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した正中断面写真である。
図8において示されるリポソーム製剤は、ほぼ中央で分割されている。図8に示すリポソーム1は、複数層の脂質二重膜で形成されたリポソーム膜2を有する1つの均質な内水相3を有する構造であることが分かる。
図8の写真撮影に使用された薬剤導入後のリポソーム組成物は、本発明の持続性局所麻酔薬徐放製剤に使用されるリポソーム組成物と同様の方法で製造された。したがって、本発明の持続性局所麻酔薬徐放製剤は図8のリポソームと同様な形態を有している。
図8の写真撮影に使用された薬剤導入後のリポソーム組成物は以下のとおり製造された。
(1)空リポソーム調製
HSPC(2.82g)およびChol(1.18g)を秤量し、無水エタノール中の脂質濃度が200w/v%となるように無水エタノール(2mL)を添加した後、約70℃で加温溶解して、脂質エタノール溶液を調製した。
調製した脂質エタノール溶液(2mL)に、第1水相である内水相溶液(150mM硫酸アンモニウム水溶液)(8mL)を加え、内水相の脂質エタノール溶液に対する容積比が、内水相/脂質エタノール溶液=4/1(v/v)となるようにして、約10分間、一定の回転速度で加温撹拌することで空リポソームを調製した。加温終了後のリポソームは速やかに氷冷した。
(2)pH勾配形成
氷冷後の空リポソームを、遠心機を用いて外液置換を行い、リポソーム内水相側/外水相側にpH勾配を形成させた。
リポソームを約10倍量の20mM HEPES/0.9%NaCl溶液(pH7.5)で分散し、1,230×gで15分間遠心分離することで空リポソームを沈殿させた。その後、上清を除去した。引き続いて、20mM HEPES/0.9%NaCl溶液(pH7.5)を添加して分散し、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した。
その後、20mM HEPES/0.9%NaCl溶液(pH7.5)を添加し、空リポソームを再分散させて、pH勾配を形成した。
(3)pH勾配による局所麻酔薬導入
pH勾配形成後の空リポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、塩酸ドネペジル(DNP、分子量415.95)/総脂質(mol/mol)比が0.16となるように塩酸ドネペジル量を計算し、必要量のDNPを秤量後、RO水により20mg/mLのDNP溶液(薬物溶液)を調製した。
65℃で加温したリポソーム分散液に、あらかじめ65℃で加温したDNP溶液を所定量添加後、引き続き、65℃で60分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。薬物導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
(4)未封入薬物除去
薬物導入後のリポソームに、外水相溶液(20mM HEPES/0.9%NaCl溶液(pH7.5))を添加し、分散させて、1,230×gで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除去した。引き続いて、20mM HEPES/0.9%NaCl溶液(pH7.5)を添加し、分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入薬物除去を行った。
1:リポソーム
2:リポソーム膜
3:内水相
4:外水相

Claims (11)

  1. 水混和性有機溶媒中に、リン脂質とコレステロールとの合計濃度が100〜200w/v%含有される水混和性有機溶液、容積1に対して、第1水相溶液を容積比3/1〜12/1で混合し、混合相におけるリン脂質とコレステロールとの合計濃度が15〜50w/v%であるエマルジョンを得て、前記エマルジョンを第2水相溶液で外液置換して得られるリポソーム組成物であって、前記第1水相溶液よりなるリポソーム膜の内部領域水相と前記第2水相溶液よりなるリポソーム膜の外部領域水相との間にイオン勾配が形成されたリポソーム組成物に、リモートローディング法を用いて前記内部領域水相に局所麻酔薬を封入して製造される、局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  2. 前記イオン勾配がプロトン勾配であり、リポソームの内部領域水相のpHはリポソームの外部領域水相のpHよりも低い、請求項1に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  3. 前記局所麻酔薬を0.08(mol)/総脂質(mol)以上でリポソーム内に保持している、請求項1または2に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  4. 前記リポソームは、平均粒子径が1μm以上であり、かつ10層以上の多層膜中に前記内部領域水相を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  5. 注射、浸潤、塗布および埋め込みからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺に投与するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  6. 術創患部および/またはその隣接部位もしくは痛みを伝達する神経周辺にわたる、皮下、筋膜および筋肉内からなる群から選択される少なくとも1つに投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  7. 投与後、少なくとも3日間以上の鎮痛期間をもたらす、請求項1〜6のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  8. 前記局所麻酔薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカインおよびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つのアミノアミド型麻酔薬である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  9. 27〜34ゲージの少なくとも1つのゲージサイズの注射針を有する注射器を用いて投与することができる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤。
  10. 請求項9に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤と、27〜34ゲージの少なくとも1つのゲージサイズの注射針を有する注射器とを含む、局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤用キット。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の局所麻酔薬持続徐放性リポソーム製剤をヒトに投与する工程を含む、ヒトに局所麻酔をかける方法。
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