本発明の第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
本第1実施形態に係る2槽式計量装置は、図1に示す計量部10と、図2に示す信号処理部20と、によって構成されている。
このうち、計量部10は、図1に示すように、概略円筒形状の2つの計量槽(ホッパ)102および104を備えている。これらの計量槽102および104は、或る鉛直面に沿う基準面106に関して互いに面対称となるように、概略平板状の支持台108上に配置されている。つまり、各計量槽102および104は、それぞれに共通の支持台108を介して、互いに結合(一体化)されている。なお、支持台108自体も、基準面106に関して面対称とされている。
各計量槽102および104は、支持台108と共に、3つの荷重検出手段としてのロードセル110,112および114によって、支持されている。具体的には、支持台108の一方(図1において左側)の端縁と両側縁とによって形成されている2つの角部の底面に、それぞれ概略L字状の連結部材116および118を介して、第1のロードセル(起歪体)110と第2のロードセル112との各自由端が結合されている。そして、これら2つのロードセル110および112の各固定端は、それぞれ固定基部(シャーシ)120に結合されている。これに対して、第3のロードセル114は、その自由端が、上述と同様の連結部材122を介して、支持台108の他方(図1において右側)の端縁の略中央部の底面に結合されている。そして、この第3ロードセル114の固定端は、上述と同様の固定基部124に結合されている。なお、これらのロードセル110,112および114は、互いに同一仕様のものである。また、図には示さないが、支持台108と各連結部材116,118および122との結合部分には、各ロードセル110,112および114間での力学的な相互干渉を回避するためのゴム板等の干渉防止手段が、設けられている。
ここで、各計量槽102および104に対して別々に被計量物126および128が供給されると、これら各被計量物126および128の重量値W1およびW2に応じた荷重が各ロードセル110,112および114に分散して印加される。すると、各ロードセル(図示しない歪ゲージを含む出力回路)110,112および114のそれぞれは、自身に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重検出信号Pa1,Pa2およびPbを出力する。そして、これらのアナログ荷重検出信号Pa1,Pa2およびPbは、信号処理部20に入力される。
なお、厳密に言うと、各アナログ荷重検出信号Pa1,Pa2およびPbには、各被計量物126および128による荷重W1およびW2の他に、各計量槽102,104,支持台108,各連結部材116,118および122等による一定の荷重成分、いわゆる初期荷重成分、も含まれる。ただし、ここでは、説明の便宜上、初期荷重成分は予め除去されているものとする。また、ここで言う各被計量物126および128としては、例えば粉状体または粒状体のものが適当であるが、これに限定されない。さらに、各被計量物126および128は、各計量槽102および104に対して、それぞれの上方から供給されるが、排出の際には、当該各計量槽102および104の底部に設けられている図示しない排出扉を介して、排出される。そして、これら各被計量物126および128の排出をスムーズ化するべく、各計量槽102および104の下側部分はテーパ状に形成されている。
このような計量部10からアナログ荷重検出信号Pa1,Pa2およびPbを受け付ける信号処理部20は、図2に示すように、互いに同一仕様の2つの増幅回路202および204を備えている。そして、このうちの一方の増幅回路202に、第1ロードセル110および第2ロードセル112からのアナログ荷重検出信号Pa1およびPa2が、互いに合成(加算)された状態で入力される。この増幅回路202に入力された言わば合成アナログ荷重検出信号Pa(=Pa1+Pa2)は、ここで増幅された後、A/D変換回路206に入力される。A/D変換回路206は、入力された合成アナログ荷重検出信号Paを所定のサンプリング周期ΔTでサンプリング処理することで、合成ディジタル荷重検出信号(以下、これについてもPa(=Pa1+Pa2)という符号で表す。)に変換する。変換された合成ディジタル荷重検出信号Paは、インタフェース回路208を介して、重量演算手段としてのCPU(Central
Processing Unit)210に入力される。なお、A/D変換回路206によるサンプリング周期ΔTは、数[ms]程度が適当であり、例えば1[ms]とされる。
これに対して、他方の増幅回路204には、第3ロードセル114からのアナログ荷重検出信号Pbが入力される。この増幅回路204に入力されたアナログ荷重検出信号Pbは、ここで増幅された後、上述と同一仕様のA/D変換回路212に入力される。A/D変換回路212は、入力されたアナログ荷重検出信号Pbをディジタル荷重検出信号(以下、これについてもPbという符号で表す。)に変換する。この変換後のディジタル荷重検出信号Pbもまた、インタフェース回路208を介して、CPU210に入力される。
CPU210は、インタフェース回路208経由で入力された各ディジタル荷重検出信号PaおよびPbに従う荷重検出値(以下、これらについてもPa(=Pa1+Pb2)およびPbという符号で表す。)に基づいて、後述する演算を行うことで、各被計量物126および128の重量値W1およびW2を個別に求め、つまり重量測定値W1’(≒W1)およびW2’(≒W2)を求める。そして、求めた重量測定値W1’およびW2’を、表示手段としてのディスプレイ214に表示する。
なお、ディスプレイ214は、インタフェース回路208を介して、CPU210に接続されている。また、CPU210には、これに各種命令を入力するための命令入力手段としての操作キー216も、当該インタフェース回路208を介して、接続されている。さらに、CPU210には、記憶手段としてのメモリ回路218も接続されており、このメモリ回路218には、CPU210の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。
さて、今、図3に示すように、各計量槽102および104を含む支持台108上に、X軸とY軸とから成る2次元の直交座標が設定されている、と仮定する。具体的には、第1ロードセル110による支持点1aが、原点Oとされる。そして、この原点Oを通り、かつ、支持台108の側縁と平行を成して延伸する直線が、X軸とされる。さらに、原点Oにおいて当該X軸と直交する直線が、Y軸とされる。なお、Y軸は、第2ロードセル112による支持点をも通る。
このような直交座標上において、例えば一方の計量槽、言わば第1計量槽102、に供給されている被計量物126の重心位置G1が、(x1,y1)という座標点にある、と仮定する。そして、他方の言わば第2計量槽104に供給されている被計量物128の重心位置G2が、(x2,y2)という座標点にある、と仮定する。この場合、第1ロードセル110に印加される荷重Wa1は、次の式3のように表される。なお、この式3において、Sxは、X軸方向における原点Oから第3ロードセル114による支持点1bまでの距離であり、Syは、Y軸方向における原点Oから第2ロードセル112による支持点2aまでの距離である。
《式3》
Wa1={(Sx−x1)/Sx}・{(Sy−y1)/Sy}・W1+{(Sx−x2)/Sx}・{(Sy−y2)/Sy}・W2
これと同様に、第2ロードセル112に印加される荷重Wa2は、次の式4のように表され、第3ロードセル114に印加される荷重Wbは、式5のように表される。
《式4》
Wa2={(Sx−x1)/Sx}・{y1/Sy}・W1+{(Sx−x2)/Sx}・{y2/Sy}・W2
《式5》
Wb={x1/Sx}・W1+{x2/Sx}・W2
さらに、第1ロードセル110に印加される荷重Wa1と第2ロードセル112に印加される荷重Wa2とを合成すると、その合成荷重Waは、次の式6のようになる。
《式6》
Wa=Wa1+Wa2
={(Sx−x1)/Sx}・W1+{(Sx−x2)/Sx}・W2
ここで、式5および式6は同時に成立するので、これら式5および式6に含まれる各被計量物126および128の重量値W1およびW2を変数とすると、当該式5および式6から成る連立方程式を解くことで、次の式7および式8が導き出される。
《式7》
W1=α1・Wa+α2・Wb
《式8》
W2=β1・Wa+β2・Wb
なお、これらの式7および式8において、α1,α2,β1およびβ2は、係数であり、それぞれ次の式9〜式12によって表される。
《式9》
α1=−x2/(x1−x2)
《式10》
α2=(Sx−x2)/(x1−x2)
《式11》
β1=x1/(x1−x2)
《式12》
β2=−(Sx−x1)/(x1−x2)
つまり、式7によれば、第1計量槽102に供給されている被計量物126の重量値W1は、第1ロードセル110および第2ロードセル112に印加される合成荷重Waにα1という一種の重み係数を乗じた値(=α1・Wa)と、第3ロードセル114に印加される荷重Wbにα2という重み係数を乗じた値(=α2・Wb)と、の総和(=α1・Wa+α2・Wb)に等しい、という関係になる。これは、第1計量槽102に供給されている被計量物126による荷重W1が、各重み係数α1およびα2に応じた比率で各ロードセル110,112および114に分散して印加される、という思想による。
また、式9および式10から分かるように、各重み係数α1およびα2は、x1,x2およびSxという各被計量物126および128の重心位置G1およびG2に関する要素(詳しくは各ロードセル110,112および114による支持点1a,2aおよび1bに対する各重心位置G1およびG2の相対的な距離)のみで構成されている。要するに、各重み係数α1およびα2は、各重心位置G1およびG2によって決まる一種の重心係数である、と言える。また、別の観点から見れば、各重心位置G1およびG2は、各計量槽102および104の形状や寸法、当該各計量槽102および104に対する各ロードセル110,112および114(支持点1a,2aおよび1b)の位置関係等、を含む計量部10全体の構造的な特性によって決まるので、各重心係数α1およびα2は、当該計量部10全体の構造的な特性を総合的に反映した係数でもある。なお、図3に示した座標においては、第1ロードセル110による支持点11と第2ロードセル112のよる支持点2aとがY軸上にあり、また、これら第1ロードセル110と第2ロードセル112とは言わば一対として取り扱われるので、各重心係数α1およびα2には、Y軸方向の要素y1,y2およびSyは含まれない。
これと同様に、上述の式8によれば、第2計量槽104に供給されている被計量物128の重量値W2は、第1ロードセル110および第2ロードセル112に印加される合成荷重Waにβ1という重み係数を乗じた値(=β1・Wa)と、第3ロードセル114に印加される荷重Wbにβ2という重み係数を乗じた値(=β2・Wb)と、の総和に等しい(=β1・Wa+β2・Wb)、という関係になる。そして、式11および式12から分かるように、各重み係数β1およびβ2は、x1,x2およびSxという各被計量物126および128の重心位置G1およびG2に関する要素のみによって決まる重心係数である、と言える。なお、これらの重心係数β1およびβ2にも、Y軸方向の要素y1,y2およびSyは含まれない。
さらに、各ロードセル110,112および114について、いわゆるオフセット調整およびスパン調整が正確に成されているとすると、上述の式7および式8は、次の式13および式14のように表すことができる。
《式13》
W1=α1・Pa+α2・Pb
《式14》
W2=β1・Pa+β2・Pb
これらの式13および式14から分かるように、各重心係数α1,α2,β1およびβ2が判明すれば、当該式13および式14に基づいて、各被計量物126および128の重量値W1およびW2を個別に求めることができる。そこで、本第1実施形態では、これらの重心係数α1,α2,β1およびβ2を正確に求めるべく、次のようにして事前の調整作業が行われる。
まず、最初に、各被計量物126および128を模擬した2つのサンプル用被計量物(以下、単にサンプルと言う。)が、用意される。このうちの一方は、第1計量槽102用であり、その重量値Ws1は、当該第1計量槽102の最大収容重量値(定格容量)W1max以下とされ、例えば当該最大収容重量値W1maxの約半分(Ws1≒W1max/2)とされる。そして、他方は、第2計量槽104用であり、その重量値Ws2は、当該第2計量槽104の最大収容重量値W2max以下とされ、例えば当該最大収容重量値W2maxの約半分(Ws2≒W2max/2)とされる。なお、これらのサンプルは、各被計量物126および128と同じ材料によって形成されるのが、望ましい。
そして、第1計量槽102に、当該第1計量槽102用のサンプルが供給されると共に、第2計量槽104に、当該第2計量槽104用のサンプルが供給される。そして、このときに得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa[1]であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb[1]である、とすると、上述の式13および式14に基づいて、次の式15および式16が成立する。
《式15》
Ws1=α1・Pa[1]+α2・Pb[1]
《式16》
Ws2=β1・Pa[1]+β2・Pb[1]
次に、各計量槽102および104の一方、例えば第1計量槽102については、そのままの状態で、他方の第2計量槽104については、サンプルが排出され、つまり空(カラ)とされる。そして、このとき得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa[2]であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb[2]である、とすると、上述と同様に、式13および式14に基づいて、次の式17および式18が成立する。
《式17》
Ws1=α1・Pa[2]+α2・Pb[2]
《式18》
0=β1・Pa[2]+β2・Pb[2]
これらの式15〜式18に注目すると、このうちの式15および式17から成る連立方程式を解くことで、当該式15および式17に含まれる2つの重心係数α1およびα2が求められる。そして、式16および式18から成る連立方程式を解くことで、当該式16および式18に含まれる2つの重心係数β1およびβ2が求められる。
このようにして各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められたことをもって、事前の調整作業が終了する。なお、求められた各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、図2に示したメモリ回路218に記憶される。
この調整作業の終了後、実際の計量作業が行われる。即ち、当該調整作業において求められた各重心係数α1,α2,β1およびβが、上述の式13および式14に適用され、厳密には当該式13および式14に準拠する次の式19および式20に適用される。そして、これらの式19および式20に基づいて、各被計量物126および128の重量測定値W1’およびW2’が求められる。
《式19》
W1’=α1・Pa+α2・Pb
《式20》
W2’=β1・Pa+β2・Pb
以上のように、本第1実施形態によれば、各ロードセル110,112および114による荷重検出値Pa(=Pa1+Pa2)およびPbと、各被計量物126および128の重心位置G1およびG2によって決まる各重心係数α1,α2,β1およびβ2と、の1次結合式である式19および式20に基づいて、当該各被計量物126および128の重量測定値W1’およびW2’が個別に求められる。しかも、各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、Ws1およびWs2という既知重量値を持つサンプルを用いた事前の調整作業によって実測されるので、各被計量物126および128の実際の重心位置G1およびG2を反映したものとなり、言い換えれば、当該重心位置G1およびG2を含む実機全体の構造的な特性を反映したものとなる。従って、種々の寸法値L,a1およびa2が設計値通りであることが必要とされる上述した従来技術に比べて、高い精度で各被計量物126および128の重量値W1およびW2(重量測定値W1’およびW2’)を求めることができる。
さらに、本第1実施形態によれば、各計量槽126および128が3つのロードセル110,112および114によって3点で支持されるので、4つのロードセルによってホッパが支持されるという従来技術に比べて、当該支持の安定化が図られる。また、従来技術では、上述の如くいずれかのロードセルの着力点が浮き上がる現象が生じる恐れがあるが、本第1実施形態によれば、そのような現象は生じず、全てのロードセル110,112および114に対して常に適確に荷重が印加される。このこともまた、計量精度の向上に大きく貢献する。
次に、本発明の第2実施形態について、説明する。
本第2実施形態においても、事前の調整作業によって、上述した各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められる。ただし、本第2実施形態では、第1実施形態よりも数多くのサンプルが用いられる。
即ち、各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、上述したように各計量槽102および104内における各被計量物126および128の重心位置G1およびG2を反映するものであるが、厳密に言うと、当該各重心位置G1およびG2は、各計量槽102および104内における各被計量物126および128の量(供給量)によって変わり、言い換えれば当該各被計量物126および128の重量値W1およびW2によって変わる。そうすると、第1実施形態の要領で各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められたとしても、各被計量物126および128の重量値W1およびW2によっては、当該各重心係数α1,α2,β1およびβ2が不適切となることがあり、これは当然に計量精度の低下を招く。そこで、本第2実施形態においては、各被計量物126および128の重量値W1およびW2がどのような大きさであるとしても、比較的に高い計量精度を保つことのできる各重心係数α1,α2,β1およびβ2が、次のようにして求められる。
まず、第1計量槽102用のサンプルとして、Ws1[1],Ws1[2],…,Ws1[K]という互いに異なる既知重量値(ただしWs1[1]<Ws1[2]<…<Ws1[K])を持つK個のものが、用意される。なお、これらのサンプルの重量値Ws1[1],Ws1[2],…,Ws1[K]のうち、最小の重量値Ws1[1]は、例えばゼロに近い値(Ws1[1]≒0)とされ、最大の重量値Ws1[K]は、例えば第1計量槽102の最大収容重量値W1maxと等価(Ws1[K]=W1max)とされる。これ以外の各重量値Ws1[2]〜Ws1[K−1]は、最小重量値Ws1[1]と最大重量値Ws1[K]との間を略等間隔に分割した値とされる。
これと同様に、第2計量槽104用のサンプルとして、Ws2[1],Ws2[2],…,Ws2[k]という互いに異なる既知重量値(ただしWs2[1]<Ws2[2]<…<Ws2[K])を持つK個のものが、用意される。そして、これらのサンプルの重量値Ws2[1],Ws2[2],…,Ws2[K]のうち、最小の重量値Ws2[1]は、ゼロに近い値(Ws2[1]≒0)とされ、最大の重量値Ws2[K]は、第2計量槽104の最大収容重量値W2maxと等価(Ws2[K]=W2max)とされ、これ以外の各重量値Ws2[2]〜Ws2[K−1]は、最小重量値Ws2[1]と最大重量値Ws2[K]との間を略等間隔に分割した値とされる。
さらに、上述の式19に基づいて求められた第1計量槽102内の被計量物126の重量測定値W1’は、当該被計量物126の真の重量値W1に対して、ΔW1という誤差を有するものと仮定して、次の式21が立てられる。
《式21》
ΔW1=W1−W1’=W1−(α1・Pa+α2・Pb)
これと同様に、上述の式20に基づいて求められた第2計量槽104内の被計量物128の重量測定値W2’は、当該被計量物128の真の重量値W2に対して、ΔW2という誤差を有するものと仮定して、次の式22が立てられる。
《式22》
ΔW2=W2−W2’=W2−(β1・Pa+β2・Pb)
このような準備が成された上で、第1計量槽102に、最小重量値Ws1[1]のサンプルが供給されると共に、第2計量槽104にも、最小重量値Ws2[1]のサンプルが供給される。そして、このときに得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa[1]であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb[1]である、とする。すると、式21および式22に基づいて、このときの誤差ΔW1[1]およびΔW2[1]が、次の式23および式24のように表される。
《式23》
ΔW1[1]=Ws1[1]−(α1・Pa[1]+α2・Pb[1])
《式24》
ΔW2[1]=Ws2[1]−(β1・Pa[1]+β2・Pb[1])
これと同じ要領で、第1計量槽102に、残りのサンプルが重量値Ws1[k](k=2〜K)の小さいものから順次1つずつ供給されると共に、第2計量槽104にも、残りのサンプルが重量値Ws2[k](k=2〜K)の小さいものから順次1つずつ供給される。そして、その都度得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa[k]であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb[k]である、とする。すると、その都度の誤差ΔW1[k]およびΔW2[k]が、次の式25および26のように表される。
《式25》
ΔW1[k]=Ws1[k]−(α1・Pa[k]+α2・Pb[k])
where k=2〜K
《式26》
ΔW2[k]=Ws2[k]−(β1・Pa[k]+β2・Pb[k])
where k=2〜K
ここで、式23および式25によって表される誤差ΔW1[k](k=1〜K)の2乗の総和をE1とすると、この2乗誤差の総和E1は、次の式27で表される。
《式27》
E1=Σ(ΔW1[k])2 where k=2〜K
これと同様に、式24および式26によって表される誤差ΔW2[k](k=1〜K)の2乗の総和をE2とすると、この2乗誤差の総和E2は、次の式28で表される。
《式28》
E2=Σ(ΔW2[k])2 where k=2〜K
つまり、これらの2乗誤差の総和E1およびE2が最小になるような各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められれば、各被計量物126および128の重量値W1およびW2がどのような大きさであるとしても、比較的に高い計量精度を保つことができる。例えば、式27で表される2乗誤差の総和E1に関して、次の式29および式30で表される2つの偏微分方程式が立てられる。
《式29》
∂E1/∂α1=0
《式30》
∂E1/∂α2=0
そして、これらの式29および式30を連立して解くことで、当該式29および式30に含まれるα1およびα2という2つの重心係数が求められる。具体的には、α1という重心係数は、次の式31によって求められ、α3という重心係数α2は、式32によって求められる。
《式31》
α1=[ΣPb[k]2・Σ(Pa[k]・Ws1[k])−Σ(Pa[k]・Pb[k])・Σ(Pb[k]・Ws1[k])]/[ΣPa[k]2・ΣPb[k]2−{Σ(Pa[k]・Pb[k])}2]
where k=1〜K
《式32》
α2=[ΣPa[k]2・Σ(Pb[k]・Ws1[k])−Σ(Pa[k]・Pb[k])・Σ(Pa[k]・Ws1[k])]/[ΣPa[k]2・ΣPb[k]2−{Σ(Pa[k]・Pb[k])}2]
where k=1〜K
これと同様に、上述の式28で表される2乗誤差の総和E2に関して、次の式33および式34で表される2つの偏微分方程式が立てられる。
《式33》
∂E2/∂β1=0
《式34》
∂E2/∂β2=0
そして、これらの式33および式34を連立して解くことで、当該式33および式34に含まれる残り2つの重心係β1およびβ2数が求められる。具体的には、一方の重心係数β1は、次の式35によって求められ、他方の重心係数β2は、式36によって求められる。
《式35》
β1=[ΣPb[k]2・Σ(Pa[k]・Ws2[k])−Σ(Pa[k]・Pb[k])・Σ(Pb[k]・Ws2[k])]/[ΣPa[k]2・ΣPb[k]2−{Σ(Pa[k]・Pb[k])}2]
where k=1〜K
《式36》
β2=[ΣPa[k]2・Σ(Pb[k]・Ws2[k])−Σ(Pa[k]・Pb[k])・Σ(Pa[k]・Ws2[k])]/[ΣPa[k]2・ΣPb[k]2−{Σ(Pa[k]・Pb[k])}2]
where k=1〜K
このようにして求められた各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、図2に示したメモリ回路218に記憶される。これをもって、事前の調整作業が終了する。
この調整作業の終了後、第1実施形態と同じ要領で、実際の計量作業が行われる。即ち、当該調整作業で求められた各重心係数α1,α2,β1およびβが、上述の式19および式20に適用され、これらの式19および式20に基づいて、各被計量物126および128の重量測定値W1’およびW2’が求められる。
以上のように、本第2実施形態によれば、上述の式13および式14(式19および式20)を回帰式とするいわゆる最小2乗法によって各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められる。つまり、各被計量物126および128の重量値W1およびW2がどのような大きさであるとしても、比較的に高い計量精度を保つことのできる各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められる。言い換えれば、常に比較的に高い計量精度を得ることができる。
なお、本第2実施形態においては、各重心係数α1,α2,β1およびβ2を求めるのに最小2乗法を用いたが、これ以外の回帰分析法を採用してもよい。また、第1計量槽102用のサンプルの重量値Ws1[k]と第2計量槽104用のサンプルの重量値Ws2[k]とは、互いに同じであってもよいし、そうでなくてもよい。
次に、本発明の第3実施形態について、説明する。
本第3実施形態は、第1実施形態および第2実施形態のいずれかを前提とし、これら第1実施形態および第2実施形態のいずれかにおいて上述の式19および式20に基づいて求められた重量測定値W1’およびW2’に適宜の処理を施すことで、より高い計量精度を得るものである。
即ち、上述したように、第1実施形態の要領で求められた各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、各被計量物126および128の重心位置G1およびG2が変化することによって不適切となることがあり、当該重心位置G1およびG2は、各被計量物126および128の重量値W1およびW2によって変わる。第2実施形態においても、各重心係数α1,α2,β1およびβ2が言わば一義的に求められる以上、これら各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、各被計量物126および128の重量値W1およびW2によっては多少なりとも不適切となることがある。要するに、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、上述の式19および式20に基づいて求められた重量測定値W1’およびW2’は、誤差を含むことがある。本第3実施形態では、この誤差を補償するための処理が成される。
まず、各被計量物126および128の重量値W1およびW2が変わり、これに伴い、当該各被計量物126および128の重心位置G1およびG2が変わる、と仮定する。この場合、各ロードセル110,112および114に印加される荷重Wa1,Wa2およびWbも変化するが、これら荷重Wa1,Wa2およびWbの総和Wa1+Wa2+Wb(=Wa+Wb)と、各被計量物126および128の重量値W1およびW2の総和W1+W2とは、互いに等しい。言い換えれば、各被計量物126および128の真の重量値W1およびW2の総和W1+W2に対する各ロードセル110,112および114による荷重検出値Pa1,Pa2およびPbの総和Pa1+Pa2+Pb(=Pa+Pb)の誤差は、常にゼロになる。従って、上述の如く各被計量物126および128の重心位置G1およびG2が変わり、これによって各重量測定値W1’およびW2’に誤差が生じたとしても、この誤差の総和もまた、常にゼロになる。
そうすると、例えば、第1計量槽102内の被計量物126の重心位置G1が変わることによって、当該被計量物126についての重量測定値W1’にdW1という誤差が生じる、とすると、第2計量槽104内の被計量物128についての重量測定値W2’には−dW1という誤差が生じる、と考えられる。これと同様に、第2計量槽104内の被計量物128の重心位置G2が変わることによって、当該被計量物128についての重量測定値W2’にdW2という誤差が生じる、とすると、第2計量槽104内の被計量物128についての重量測定値W2’には−dW2という誤差が生じる、と考えられる。つまり、各被計量物126および128の重心位置G1およびG2が変わることによって生じる誤差dW1およびdW2は、互いの重量測定値W1’およびW2’に影響し合う。ゆえに、各被計量物126および128の真の重量値W1およびW2は、次の式37および式38で表される。
《式37》
W1=W1’−dW1+dW2
《式38》
W2=W2’+dW1−dW2
これらの式37および式38から分かるように、各誤差dW1およびdW2が判明すれば、当該式37および式38に基づいて、当該各誤差dW1およびdW2を補償することができ、ひいては各被計量物126および128の真の重量値W1およびW2をより正確に求めることができる。また、各誤差dW1およびdW2のうち、第1計量槽102内の被計量物126の重心位置G1が変わることに起因する誤差dW1は、当該被計量物126の重量値W1の関数f(W1)として表すことができる。これと同様に、第2計量槽104内の被計量物128の重心位置G2が変わることに起因する誤差dW2は、当該被計量物128の重量値W2の関数f(W2)として表すことができる。そして、これらの関数式f(W1)およびf(W2)を導き出すために、本第3実施形態においても、事前の調整作業が行われる。
本第3実施形態における事前の調整作業においては、Ws[1],Ws[2],…,Ws[K]という互いに異なる既知重量値(ただしWs[1]<Ws[2]<…<Ws[K])を持つK個のサンプルが、用意される。なお、これらのサンプルは、各計量槽102および104に共通のものであってもよいし、それぞれに専用のものであってもよいが、ここでは、当該各計量槽102および104に共通のものとする。また、各サンプルの重量値Ws[1],Ws[2],…,Ws[K]のうち、最小の重量値Ws[1]は、例えばゼロに近い値(Ws[1]≒0)とされ、最大の重量値Ws[K]は、例えば各計量槽102および104の一方の最大収容重量値W1maxまたはW2maxと等価(Ws[K]=W1maxまたはWs[K]=W2max)とされる。これ以外の各重量値Ws[2]〜Ws[K−1]は、最小重量値Ws[1]と最大重量値Ws[K]との間を略等間隔に分割した値とされる。
このようなサンプルが用意された上で、まず、第2計量槽104については空とされ、第1計量槽102のみに各サンプルが重量値Ws[k](k=1〜K)の小さいものから順次1つずつ供給される。そして、その都度、上述した式19に基づいて、W1’[k]という重量測定値W1’が得られる、とする。そして、この重量測定値W1’[k]が次の式39に代入されることで、それぞれのサンプルの真の重量値Ws[k]に対する誤差dW1[k]が求められる。
《式39》
dW1[k]=W1’[k]−Ws[k]
その一方で、第1計量槽102内の被計量物126の重心位置G1が変わることに起因する誤差dW1の関数式f(W1)が、次の式40のような2次関数式として定義される。なお、この式40において、Q11,Q12およびQ13は、定数である。
《式40》
dW1=f(W1)=Q11・(W1+Q12)2+Q13
ただし、この式40において、被計量物126の重量値W1は未知であるので、これに代えて重量測定値W1’を用いた次の式41によって、当該誤差dW1が定義される。
《式41》
dW1=f(W1’)=Q11・(W1’+Q12)2+Q13
そして、この式41を回帰式として、例えば最小2乗法によって各定数Q11,Q12およびQ13が求められることで、当該式41が完成する。
これと同じ要領で、第2計量槽104内の被計量物128の重心位置G2が変わることに起因する誤差dW2の関数式f(W2)が導き出される。具体的には、第1計量槽102が空とされ、第2計量槽104のみに各サンプルが重量値Ws[k]の小さいものから順次1つずつ供給される。そして、その都度、上述した式20に基づいて、W2’[k]という重量測定値W2’が得られる、とする。そして、この重量測定値W2’[k]が次の式42に代入されることで、それぞれのサンプルの真の重量値Ws[k]に対する誤差dW2[k]が求められる。
《式42》
dW2[k]=W2’[k]−Ws[k]
その一方で、第2計量槽104内の被計量物128の重心位置G2が変わることに起因する誤差dW2の関数式f(W2)が、次の式43のように定義される。なお、この式43において、Q21,Q22およびQ23は、定数である。
《式43》
dW2=f(W2)=Q21・(W2+Q22)2+Q23
ただし、この式43においても、被計量物128の重量値W2は未知であるので、これに代えて重量測定値W2’を用いた次の式44によって、当該誤差dW2が定義される。
《式44》
dW2=f(W2’)=Q21・(W2’+Q22)2+Q23
そして、この式44を回帰式として、例えば最小2乗法によって各定数Q21,Q22およびQ23が求められることで、当該式44が完成する。
このようにして各誤差dW1およびdW2を求めるための関数式f(W1’)およびf(W2’)が導き出されることで、事前の調整作業が終了する。なお、導き出された関数式f(W1’)およびf(W2’)は、図2に示したメモリ回路218に記憶される。
そして、実際の計量作業においては、まず、上述した式19および式20に基づいて、各被計量物126および128についての重量測定値W1’およびW2’が求められる。そして、これらの重量測定値W1’およびW2’が、それぞれ式41および式44に示した関数式f(W1’)およびf(W2’)に代入されることで、当該各重量測定値W1’およびW2’に応じた誤差dW1およびdW2が求められる。さらに、これらの誤差dW1およびdW2が、式37および式38に代入されることで、各被計量物126および128の重量値W1およびW2がより正確に求められる。厳密には、当該式37および式38に準拠する次の式45および式46に基づいて、各誤差dW1およびdW2が補償された補償後重量測定値W1”およびW2”が求められる。
《式45》
W1”=W1’−dW1+dW2
《式46》
W2”=W2’+dW1−dW2
以上のように、本第3実施形態によれば、各被計量物126および128の重心位置G1およびG2が変わることに起因する誤差dW1およびdW2が補償された補償後重量測定値W1”およびW2”が求められる。しかも、当該誤差dW1およびdW2を求めるための上述した式41および式44で表される関数式f(W1’)およびf(W2’)は、既知重量値Ws[k]を持つK個のサンプルを用いた事前の調整作業によって、つまり実測結果に基づいて、導き出される。従って、このような誤差補償が成されない第1実施形態および第2実施形態に比べて、より高い計量精度を得ることができる。
なお、本第3実施形態においては、各誤差dW1およびdW2を求めるための関数式f(W1’)およびf(W2’)を、式41および式44(式40および式43)に示したような2次関数式として定義したが、これ以外の関数式、例えば1次関数式や3次以上の高次関数式、として定義してもよい。また、この関数式f(W1’)およびf(W2’)を完成させるために最小2乗法を採用したが、これ以外の回帰分析法を採用してもよい。
さらに、各誤差dW1およびdW2を、各被計量物126および128についての重量測定値W1’およびW2’の関数f(W1’)およびf(W2’)としたが、これに限らない。例えば、当該各誤差dW1およびdW2を、各被計量物126および128の体積値の関数としてもよい。つまり、当該各被計量物126および128の体積値を、それぞれV1およびV2とすると、これらの体積値V1およびV2を計測するための手段、例えば流量計、を設け、その計測結果V1およびV2を変数とする関数f(V1)およびf(V2)として、各誤差dW1およびdW2を規定してもよい。また、各被計量物126および128の高さ寸法(嵩)の関数として、各誤差dW1およびdW2を規定してもよい。つまり、各被計量物126および128の高さ寸法を、それぞれH1およびH2とすると、これらの高さ寸法H1およびH2を計測するための手段、例えばレベル計、を設け、その計測結果H1およびH2を変数とする関数f(H1)およびf(H2)として、当該各誤差dW1およびdW2を規定してもよい。
次に、本発明の第4実施形態について、図4および図5を加えて説明する。
上述したように、各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、各被計量物126および128の重心位置G1およびG2が変化することによって不適切となることがあり、当該重心位置G1およびG2は、各被計量物126および128の重量値W1およびW2によって変わる。言い換えれば、各被計量物126および128の重量値W1およびW2に応じて、各重心係数α1,α2,β1およびβ2の適切値がある、ということになる。そこで、本第4実施形態においては、各被計量物126および128の重量値W1およびW2に応じて、各重心係数α1,α2,β1およびβ2の適切値が求められ、この適切な各重心係数α1,α2,β1およびβ2を用いて、当該各被計量物126および128の重量測定が行われる。そのために、本第4実施形態においても、次のようにして事前の調整作業が行われる。
まず、第1計量槽102用のサンプルとして、Ws10,Ws11,Ws12,Ws13およびWs14という互いに異なる既知重量値を持つ5つのものが、用意される。なお、これらのサンプルの重量値Ws10,Ws11,Ws12,Ws13およびWs14のうち、最小の重量値Ws10は、例えばゼロに近い値(Ws10≒0)とされ、最大の重量値Ws14は、例えば第1計量槽102の最大収容重量値W1maxと等価(Ws14=W1max)とされる。そして、これ以外の各重量値Ws11,Ws12およびWs13は、それぞれ第1計量槽102の最大収容重量値W1maxの1/4,1/2および3/4の値(Ws11=(1/4)・W1max,Ws12=(1/2)・W1max,Ws13=(3/4)・W1max)とされる。
これと同様に、第2計量槽104用のサンプルとして、Ws20,Ws21,Ws22,Ws23およびWs24という互いに異なる既知重量値を持つ5つのものが、用意される。そして、これらのサンプルの重量値Ws20,Ws21,Ws22,Ws23およびWs24のうち、最小の重量値Ws20は、ゼロに近い値(Ws20≒0)とされ、最大の重量値Ws24は、第2計量槽104の最大収容重量値W2maxと等価(Ws24=W2max)とされ、これ以外の各重量値Ws21,Ws22およびWs23は、それぞれ当該第2計量槽104の最大収容重量値W2maxの1/4,1/2および3/4の値(Ws21=(1/4)・W2max,Ws22=(1/2)・W2max,Ws23=(3/4)・W2max)とされる。さらに、Ws21’,Ws22’,Ws23’およびWs24’という別の既知重量値を持つ4つのサンプルが、用意される。なお、これら4つのサンプルの重量値Ws21’,Ws22’,Ws23’およびWs24’のうち、最小の重量値Ws21’は、重量値Ws21よりも僅かに小さく(Ws21’≒Ws21)、重量値Ws22’は、重量値Ws22よりも僅かに小さい(Ws22’≒Ws22)。また、重量値Ws23’は、重量値Ws23よりも僅かに小さく(Ws23’≒Ws23)、重量値Ws24’は、重量値Ws24よりも僅かに小さい(Ws24’≒Ws24)。要するに、第2計量槽104用として、合計9つのサンプルが用意される。
このように各サンプルが用意された上で、第1計量槽102に、最小重量値Ws10を持つサンプルが供給される。そして、第2計量槽104については、空とされる。このとき得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa00’であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb00’である、とすると、上述した式13および式14に基づいて、次の式47および式48が成立する。
《式47》
Ws10=α1・Pa00’+α2・Pb00’
《式48》
0=β1・Pa00’+β2・Pb00’
続いて、第1計量槽102については、そのままの状態で、第2計量槽104に、最小の重量値Ws20を持つサンプル品が供給される。このとき得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa00であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb00である、とすると、上述の式13および式14に基づいて、次の式49および式50が成立する。
《式49》
Ws10=α1・Pa00+α2・Pb00
《式50》
Ws20=β1・Pa00+β2・Pb00
これらの式47〜式50に注目すると、このうちの式47および式49から成る連立方程式を解くことで、当該式47および式49に含まれる2つの重心係数α1およびα2が求められる。そして、式48および式50から成る連立方程式を解くことで、当該式48および式50に含まれる2つの重心係数β1およびβ2が求められる。ここで、重量値Ws20が、Ws20≒0であることを鑑みると、これらの式47〜式50に基づいて求められた各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、W1=Ws10(≒0)およびW2=Ws20(≒0)という条件に適切である、と言える。これらの重心係数α1,α2,β1およびβ2は、当該条件に適切な重心係数α100,α200,β100およびβ200として、図2に示したメモリ回路218に記憶される。
次に、第1計量槽102については、そのままの状態で、第2計量槽104に、Ws21’という重量値を持つサンプル品が供給される。そして、このとき得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa01’であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb01’である、とすると、次の式51および式52が成立する。
《式51》
Ws10=α1・Pa01’+α2・Pb01’
《式52》
Ws21’=β1・Pa01’+β2・Pb01’
そして、第1計量槽102については、そのままの状態で、第2計量槽104に、Ws21という重量値を持つサンプル品が供給される。そして、このとき得られる第1ロードセル110および第2ロードセル112による合成荷重検出値Paが、Pa=Pa01であり、第3ロードセル114による荷重検出値Pbが、Pb=Pb01である、とすると、次の式53および式54が成立する。
《式53》
Ws10=α1・Pa01+α2・Pb01
《式54》
Ws21=β1・Pa01+β2・Pb01
これらの式51〜式54に注目すると、このうちの式51および式53から成る連立方程式を解くことで、当該式51および式53に含まれる2つの重心係数α1およびα2が求められる。そして、式52および式54から成る連立方程式を解くことで、当該式52および式54に含まれる2つの重心係数β1およびβ2が求められる。さらに、重量値Ws21が、Ws21≒Ws21’であることを鑑みると、これらの式51〜式54に基づいて求められた各重心係数α1,α2,β1およびβ2は、W1=Ws10(≒0)およびW2=Ws21という条件に適切である、と言える。これらの重心係数α1,α2,β1およびβ2は、当該条件に適切な重心係数α101,α201,β101およびβ201として、図2に示したメモリ回路218に記憶される。
これと同様にして、W1=Ws10(≒0)およびW2=Ws22という条件に適切な重心係数α102,α202,β102およびβ202が求められ、メモリ回路218に記憶される。そして、W1=Ws10(≒0)およびW2=Ws23という条件に適切な重心係数α103,α203,β103およびβ203が求められ、W1=Ws10(≒0)およびW2=Ws24という条件に適切な重心係数α104,α204,β104およびβ204が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。
さらに、W1=Ws11およびW2=Ws20(≒0)という条件に適切な重心係数α110,α210,β110およびβ210が求められ、メモリ回路218に記憶される。そして、W1=Ws11およびW2=Ws21という条件に適切な重心係数α111,α211,β111およびβ211が求められ、W1=Ws11およびW2=Ws22という条件に適切な重心係数α112,α212,β112およびβ212が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。また、W1=Ws11およびW2=Ws23という条件に適切な重心係数α113,α213,β113およびβ213が求められ、W1=Ws11およびW2=Ws24という条件に適切な重心係数α114,α214,β114およびβ214が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。
そして、W1=Ws12およびW2=Ws20(≒0)という条件に適切な重心係数α120,α220,β120およびβ220が求められ、メモリ回路218に記憶される。また、W1=Ws12およびW2=Ws21という条件に適切な重心係数α121,α221,β121およびβ221が求められ、W1=Ws12およびW2=Ws22という条件に適切な重心係数α122,α222,β122およびβ222が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。さらに、W1=Ws12およびW2=Ws23という条件に適切な重心係数α123,α223,β123およびβ223が求められ、W1=Ws12およびW2=Ws24という条件に適切な重心係数α124,α224,β124およびβ224が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。
また、W1=Ws13およびW2=Ws20(≒0)という条件に適切な重心係数α130,α230,β130およびβ230が求められ、メモリ回路218に記憶される。そして、W1=Ws13およびW2=Ws21という条件に適切な重心係数α131,α231,β131およびβ231が求められ、W1=Ws13およびW2=Ws22という条件に適切な重心係数α132,α232,β132およびβ232が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。さらに、W1=Ws13およびW2=Ws23という条件に適切な重心係数α133,α233,β133およびβ233が求められ、W1=Ws13およびW2=Ws24という条件に適切な重心係数α134,α234,β134およびβ234が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。
そして、W1=Ws14およびW2=Ws20(≒0)という条件に適切な重心係数α140,α240,β140およびβ240が求められ、メモリ回路218に記憶される。また、W1=Ws14およびW2=Ws21という条件に適切な重心係数α141,α241,β141およびβ241が求められ、W1=Ws14およびW2=Ws22という条件に適切な重心係数α142,α242,β142およびβ242が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。さらに、W1=Ws14およびW2=Ws23という条件に適切な重心係数α143,α243,β143およびβ243が求められ、W1=Ws14およびW2=Ws24という条件に適切な重心係数α144,α244,β144およびβ244が求められ、それぞれメモリ回路218に記憶される。
このようにして各被計量物126および128の重量値W1およびW2の様々な(合計25通りの)条件に適切な各重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められることで、図4に示すような言わばマップが形成される。この図4のマップは、α1という重心係数と各被計量物126および128の重量値W1およびW2との関係を概念的に図式化したものであり、他の重心係数α2,β1およびβ2についても、同様のマップが形成される。そして、このマップが形成されたことをもって、事前の調整作業が終了する。
実際の計量作業においては、まず、上述した式19および式20に基づいて、各被計量物126および128についての重量測定値W1’およびW2’が求められる。このとき、各重心係数α1,α2,β1およびβ2として、適当な値、例えば上述のマップにおいて中心に位置するα122,α222,β122およびβ222という値が、仮に適用される。つまり、この仮の重心係数α122,α222,β122およびβ222が適用された式19および式20に基づいて、仮の重量測定値W1’およびW2’が求められる。そして、この仮の重量測定値W1’およびW2’がマップと照合されることで、当該仮の重量測定値W1’およびW2’に応じた各重心係数α1’,α2’,β1’およびβ2’が求められる。
具体的には、今、仮の重量測定値W1’およびW2’が、図4において斜線模様で示される領域内にある、つまりWs11<W1’<Ws12およびWs21<W2’<Ws22という関係にある、と仮定する。ここで、例えば、重心係数α1’に注目すると、この重心係数α1’は、当該領域を囲むα111,α112,α121およびα122という4つの既知の重心係数に基づいて、次のようにして求められる。
即ち、図5を参照して、当該領域内においては、任意の重量値W1およびW2に対する重心係数αは、当該重量値W1およびW2に応じて線形に変化する、とみなされる。そうすると、重心係数α1’は、これを囲む4つの既知重心係数α111,α112,α121およびα122による影響を、それぞれとの重量値W1およびW2の差に応じた比率r111,r112,r121およびr122で受けることになる。例えば、α111という既知重心係数による影響を当該重心係数α1’が受ける比率r111は、次の式55によって求められる。
《式55》
r111={(Ws12−W1’)/(Ws12−Ws11)}・{(Ws22−W2’)/(Ws22−Ws21)}
この式55において、右辺の分母であるWs12−Ws11およびWs22−Ws21は、それぞれW1max/4およびW2max/4である。従って、例えば、W1max=W2max=Wmaxである、と仮定すると、当該式55は、次の式56のように表される。
《式56》
r111={(Ws12−W1’)・(Ws22−W2’)}/(Wmax/16)
これと同様に、重心係数α1’が他の既知重心係数α112,α121およびα122による影響を受ける比率r112,r121およびr122は、それぞれ次の式57,式58および式59によって求められる。
《式57》
r112={(Ws12−W1’)・(W2’−Ws22)}/(Wmax/16)
《式58》
r121={(W1’−Ws12)・(Ws22−W2’)}/(Wmax/16)
《式59》
r122={(W1’−Ws12)・(W2’−Ws22)}/(Wmax/16)
そして、重心係数α1’は、これらの比率r111,r112,r121およびr122と各既知重心係数α111,α112,α121およびα122とを含む次の式60によって求められる。
《式60》
α1’=(r111・α111+r112・α112+r121・α121+r122・α122)/(r111+r112+r121+r122)
そして、他の重心係数α2’,β1’およびβ2’についても、これと同じ要領で求められる。
ここで、上述した仮の重量測定値W1’およびW2’は、多少の誤差を含むものの、各被計量物126および128の真の重量値W1およびW2に比較的に近い値である、と考えられる。そうすると、この仮の重量測定値W1’およびW2’に応じた各重心係数α1’,α2’,β1’およびβ2’は、正式な重量測定に用いられるのに概ね適切である、と考えられる。ゆえに、これら各重心係数α1’,α2’,β1’およびβ2’が、上述の式19および式20における各重心係数α1,α2,β1およびβ2として適用され、当該式19および式20に基づいて、最終的な重量測定値W1’およびW2’が求められる。
このように、本第4実施形態によれば、まず、仮の重心係数α122,α222,β122およびβ222をもって、仮の重量測定値W1’およびW2’が求められる。そして、この仮の重量測定値W1’およびW2’がマップと照合されることで、正式な重量測定に適切な重心係数α1,α2,β1およびβ2が求められる。しかも、仮の重心係数α122,α222,β122およびβ222を含むマップは、既知重量値を持つサンプルを用いた事前の調整作業によって、つまり実測結果に基づいて、形成される。そして、この適切な重心係数α1,α2,β1およびβ2をもって、正式な重量測定が行われ、詳しくは最終的な重量測定値W1’およびW2’が求められる。従って、一義的な重心係数α1,α2,β1およびβ2をもって重量測定が行われる上述の第1実施形態および第2実施形態に比べて、より高い計量精度を得ることができる。
なお、より一層の高精度計量を実現するには、最終的に求められた重量測定値W1’およびW2’を再度マップと照合することで、より適切な重心係数α1,α2,β1およびβ2を求め、このより適切な重心係数α1,α2,β1およびβ2をもって、改めて最終的な重量測定値W1’およびW2’を求めればよい。また、この処理を繰り返せば、計量精度がさらに向上する。この処理の繰り返しは、予め定められた一定回数にわたって行ってもよいし、前回求められた重量測定値W1’およびW2’と今回求められた重量測定値W1’およびW2’との差が一定範囲内に収束するまで行ってもよい。
以上の各実施形態においては、特に計量部10が図2に示した構成である場合について説明したが、これに限らない。例えば、図6に示すように、各計量槽102および104が互いに離れた構成であってもよい。また、図7に示すように、各計量槽102および104が基準面106に関して非対称であってもよい。そして、各計量槽102および104は、互いに異なる形状や寸法であってもよい。
さらに、図8に示すように、1つの槽130を仕切板132によって2つに仕切ることによって、各計量槽102および104を構成してもよい。この場合も、各計量槽102および104は、互いに異なる形状や寸法(つまり非対称)であってもよい。また、図9に示すように、当該槽130を各ロードセル110,112および114によって直接支持する構成としてもよい(つまり支持台108を排除した構成としてもよい)。
そして、図10に示すように、各計量槽102および104を上方から吊り下げる構成としてもよい。この場合、支持台108に代えて、各計量槽102および104に共通のフランジ140を設け、このフランジ140を介して当該各計量槽102および104を吊り下げる構成としてもよい。勿論、これ以外の構成によって、各計量槽102および104を吊り下げてもよい。
また、図11に示すように、図1における第3ロードセル114に代えて、第1ロードセル110および第2ロードセル112と同様の2つのロードセル150および152を設けてもよい。この場合、当該ロードセル150および152による荷重検出値Pb1およびPb2の合計値Pb1+Pb2を、第3ロードセル114による荷重検出値Pbと同等に取り扱えばよい。なお、各ロードセル150および152と支持台108との結合は、上述したのと同様の連結部材154および156を介してもよいし、これ以外のものを採用してもよい。
さらに、2台または4台以上のロードセルを用いてもよい。そして、ロードセル以外の荷重センサ、例えば電磁力平衡方式センサや音叉振動式センサ等を、荷重検出手段として採用してもよい。