以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、圧胴12の周面に保持された記録媒体に直接的に画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置である。
このインクジェット記録装置10は、記録媒体を周面に保持して搬送する圧胴12と、記録媒体14を供給する給紙部16と、圧胴12により保持された記録媒体14に色インクを付与して画像形成を行う印字部18と、インクの溶媒を乾燥させる溶媒乾燥部20と、画像を堅牢化する定着処理部22と、画像が形成された記録媒体14を搬送して排出する排出部24と、印字部18のインクジェットヘッド18K,18C,18M,18Yにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部26と、から主に構成される。
給紙部16には、枚葉紙の形態の記録媒体14を供給する給紙トレイ28が設けられている。給紙トレイ28から給紙ローラ30によって送り出された記録媒体14は、ガイドローラ32を介して圧胴12の周面に送り出され圧胴12の周面に保持される。
カット紙形態の記録媒体14に代わり、ロール形状に巻かれた連続紙形態の記録媒体を用いることも可能である。連続紙形態の記録媒体を用いる場合には、ロールを保持する手段と、長尺の記録媒体を所定のサイズにカットするカッターと、を備えられる。
図示は省略するが、圧胴12の周面には多数の吸引穴が所定の配置パターンにしたがって配置され、多数の吸引穴が配置される領域が記録媒体を吸引保持する記録媒体保持領域として機能する。吸引穴は、圧胴12の内部に設けられた吸引流路と連通するとともに、吸引流路を介して外部の吸引装置(ポンプ)に接続される。なお、上述した負圧吸引方式に代わり、静電気により圧胴12の記録媒体保持領域に記録媒体14を保持する静電吸着方式を適用してもよい。記録媒体の搬送が安定するため搬送不良が低減できる。また、記録媒体を搬送する手段には吸着ベルト搬送など、他の形態を適用してもよい。
印字部18は、圧胴12の周面に対向する位置に設けられる、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクに対応するインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」と記載することがある。)18K,18C,18M,18Yを有し、圧胴12の周面に保持された記録媒体14に対して画像データに応じて各色インクを吐出して画像記録を行う。
図1に示すように、ヘッド18K,18C,18M,18Yは、圧胴12の周面に沿って水平面に対して斜めに傾けて配置されている。言い換えると、各ヘッド18K,18C,18M,18Yのインク吐出面の垂線方向と圧胴12の周面の法線方向が一致し、各ヘッド18K,18C,18M,18Yのインク吐出面と圧胴12上(記録媒体14上)の打滴位置と距離が各ヘッド18K,18C,18M,18Yとも同一になるように各ヘッド18K,18C,18M,18Yが配置されている。特に、圧胴12の周囲に円弧状に配置することで、打滴距離に起因する着弾位置精度が確保され高品位画像の形成が可能となる。
図1には、KCMYの標準色(4色)の構成を例示するが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクやレッド、ブルー、ゴールド、シルバーを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
印字部18の後段には溶媒乾燥部20が設けられている。画像記録が行われた記録媒体14はガイドローラ34を介して溶媒乾燥部20に送られ、溶媒乾燥処理が施される。溶媒乾燥部20では、記録媒体14の画像記録面に50℃〜130℃の温風を吹き付けて、記録媒体14の画像記録面に残留する水などの溶媒を蒸発させる。なお、溶媒乾燥部20の他の態様として、温風乾燥方式に代わり又はこれと併用して、赤外線ヒータによる輻射方式の加熱や、記録媒体14の画像形成面の反対側面からヒータを内蔵したヒートローラを接触させる接触乾燥方式を適用してもよい。つまり画像記録面と非接触で乾燥させることが望ましく、未乾燥による装置内接触汚れや排出記録媒体の積載による裏汚れ等が防止される。
溶媒乾燥部20の後段には、乾燥処理後の記録媒体14に定着処理を施す定着処理部22が設けられている。図1に示す定着処理部22は、ヒータ36が内蔵されたヒートローラ38と、ヒートローラ38の記録媒体搬送路をはさんで反対側に配置される支持ローラ40と、を含んで構成されている。
乾燥処理後の記録媒体14はヒートローラ38と支持ローラ40との間に、画像記録面がヒートローラ38側となるようにはさみ込まれ、ヒータ36から放射される熱によりヒートローラ38を介して記録媒体14の画像記録面が加熱されるとともに、ヒートローラ38と支持ローラ40の押圧により記録媒体14は加圧される。記録媒体画像部の耐擦性が向上する。
定着処理部22によって定着処理が施された記録媒体14は、排出部24から装置外部に排出される。排出部24には、画像ごと(オーダーごと)に区別して排出されるようにソータを備える態様が好ましい。
メンテナンス処理部26は各ヘッド18K,18C,18M,18Yのそれぞれに対応するメンテナンスユニット26K,26C,26M,26Yを有している。図1に示すように、メンテナンスユニット26K,26C,26M,26Yはヘッド18K,18C,18M,18Yと平行になるように水平面に対して斜めに傾けて配置されている。なお、メンテナンス処理部26の詳細については後述する。
〔ヘッドの構造〕
次に、図2〜図5を用いて、図1の印字部18のヘッド18K,18C,18M,18Yついて詳細に説明する。なお、ヘッド18K,18C,18M,18Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図2は、ヘッド50をインク吐出面(ノズル形成面)側から見た図である。同図に示すように、ヘッド50は、略平行四辺形の平面形状を有する複数のヘッドユニット50Aが一列に並べられた構造を有するラインヘッドであり、複数のヘッドユニット50Aを記録媒体14の幅方向に沿ってつなぎ合わせて、記録媒体14(図1参照)の全幅に対応している。
複数のヘッドユニット50Aは、それぞれのインク吐出面が略同一平面内となるように位置決めされ、かつ、各ヘッドユニット50Aのノズルアライメントが調整された状態で、インク吐出面の反対側面からヘッドユニット保持部材50Bに保持されている。
また、ヘッド50の長手方向の両端部には、略三角形の平面形状を有するヘッドユニットダミー部50Cが設けられ、ヘッドユニットダミー部50Cも所定の位置決めがなされてユニット保持部材50Bに保持されている。なお、ヘッドユニット50A同士の間には、ヘッドユニット50Aの製造上の誤差や取り付けの誤差を吸収するための隙間50Dが設けられている。
図3は、ヘッド50の側面図(図1のA−A線に沿う断面図と等価)である。同図における下方向がヘッド50のインク吐出方向となり、ヘッド50の下側に圧胴12(図2における図示は省略)が配置されている。
ヘッドユニット50A(及びヘッドユニットダミー部50C)は、上側からヘッドユニット保持部材50Bにより支持され、インク吐出面側に凸の形状となっている。また、ヘッドユニット保持部材50Bの上側(ヘッドユニット50Aと反対側の背面)には、ヘッドユニット50Aごとにインク供給口50Eが設けられ、不図示のインク供給系からチューブ及びインク供給口50Eを介して各ヘッドユニット50Aにインクが供給される。
また、各ヘッドユニット50Aの背面には、駆動信号の供給源である駆動基板(駆動回路)50Fが配設されている。駆動基板50Fは不図示のフレキシブル基板を介して本体装置と接続される。図3には、各ヘッドユニット50Aに2枚の駆動基板50Fを備え、2枚の駆動基板50Fの間に共通の放熱板50Gが配設される態様を図示した。
図4(a)はヘッドユニット50Aにおけるノズルの配置例を示す平面透視図であり、図4(b)はその一部の拡大図である。記録媒体14上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、各ヘッドユニット50Aにおけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッドユニット50Aは、図4(a)、(b)に示したように、インク吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド50の長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体14の搬送方向(紙送り方向、副走査方向)と略直交する主走査方向に画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図4(a)の構成に代えて、図4(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された略長方形形状の平面形状を有するヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体14の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル51への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図5は、ヘッドユニット50Aの立体形状を示す断面図(図4(a),(b)のB−B線に沿う断面図)である。
図5に示すように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に供給される。
圧力室52の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されている。個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、圧電素子58には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、圧電素子58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル51に対応した圧電素子58の駆動を制御することにより、ノズル51からインク滴を吐出させることができる。記録媒体14を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル51のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体14上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット53を図4(b)に示すごとく主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPNはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子58)に代表される圧電アクチュエータの変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔メンテナンユニットの説明〕
次に、図1に示すメンテナンスユニット26K,26C,26M,26Yについて詳細に説明する。なお、図1に示すメンテナンスユニット26K,26C,26M,26Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号60によってメンテナンスユニットを示すものとする。
図6は、メンテナンスユニット60の概念図である。同図に示すように、メンテナンスユニット60は圧胴12が配設される印字位置(印字位置に位置するヘッド50を破線で図示)とは離れたメンテナンス位置に設けられている。図6に示すように、矢印線で示すようにヘッド50を水平移動させることで、圧胴12の直上の印字位置とメンテナンス位置との間を移動させることができるように構成されている。
メンテナンスユニット60は、ヘッド50のインク吐出面(ノズル形成面)に洗浄液を付与する洗浄液塗布ローラ61と、洗浄液塗布されたノズル形成面を払拭するブレード62と、ヘッドユニットの隙間50D(図2参照、以下単に「隙間50D」と記載することがある。)を吸引する吸引除去部63と、予備吐出時のインク受けになるとともにノズル形成面側からノズル(図5参照)を介してインク吸引を行うキャップ64と、吸引除去部63及びキャップ64に負圧を発生させるポンプ65と、吸引除去部63に連通する流路を開閉する開閉弁66と、吸引除去部63及びキャップ64を介して回収された洗浄やインクを貯留する回収タンク67と、を含んで構成されている。
ヘッド50を図6における左から右へ移動させると、まず、多孔質部材により形成され、図1に示すヘッドユニットの隙間50Dに対応する形状を有するスリット61Aが表面に形成された洗浄液塗布ローラ61によって、ノズル形成面に付着して固化したインクを溶解させる洗浄液が塗布される。さらにヘッド50が右へ移動して洗浄液が塗布されてから所定時間が経過すると、ブレード62によってノズル形成面のワイピングが行われる。
また、ヘッドユニット間の隙間50Dの位置が吸引除去部63の直上に到達すると、ヘッド50を一旦停止させ(又は、減速させ)、開閉弁66を開けて隙間50Dの吸引が行われる。吸引除去部63による隙間50Dの吸引処理が終了すると、開閉弁66を閉じるとともにヘッド50を再び図6の左から右へ移動させる。
ヘッド50がキャップ64の位置まで移動すると、ヘッド50を停止させるとともに、メンテナンスユニット60を上方向に移動させてヘッド50のノズル形成面をキャッピングし、すべてのノズルについて予備吐出が行われる。また、必要に応じてノズルの吸引処理を行ってもよい。なお、上述したメンテナンスユニット60の構造やメンテナンス処理の詳細については、図8〜図18を用いて詳細に説明する。
〔制御系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、メンテナンス制御部79、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図7には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号88で図示されている。モータ88には、図1で説明した圧胴12を駆動するモータや、給紙ローラ30を駆動するモータなどが含まれている。
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、ヒータ89を駆動するドライバである。図7には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。図7のヒータ89には、図1の溶媒乾燥部20のヒータや定着処理部22のヒータ36などが含まれている。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御にしたがい、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ74に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる印字データ(すなわち、画像バッファメモリ82に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド50の各ノズル51に対応する圧電素子58を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ84から出力された駆動信号がヘッド50に加えられることによって、該当するノズル51からインクが吐出される。記録媒体14を所定の速度で搬送しながらヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録媒体14上に画像が形成される。
また、システムコントローラ72は、図1の圧胴12による記録媒体14の負圧吸着を制御する手段として機能し、記録媒体14が圧胴12に受け渡されると圧胴12の周面に設けられた吸引口に負圧を発生させるように吸引装置に指令信号を送出する。
さらに、システムコントローラ72は、定着処理部22のニップ圧を制御する手段としても機能する。記録媒体14の種類情報を取得すると、処理対象の記録媒体14に対応するニップ圧となるように、定着処理部22のヒートローラ38と支持ローラ40との間のクリアランスを制御する。
メンテナンス制御部79は、図1に示すメンテナンス処理部26(図6に示すメンテナンスユニット60)によるヘッド50のメンテナンス処理を制御する手段として機能する。即ち、図7に示すメンテナンス制御部79は、システムコントローラ72から送られる指令信号に基づきヘッド50の移動、メンテナンスユニット60の移動、洗浄液塗布ローラ61の駆動、ポンプ65の駆動、開閉弁66の開閉等を制御する。
システムコントローラ72は、センサ92から得られる検出信号に基づき装置各部に指令信号を送出する。図7のセンサ92には、図1の圧胴12の記録媒体14の受渡部に設けられる給紙センサや、圧胴12の表面温度を検出する温度センサ、溶媒乾燥部20に設けられる温度センサ、定着処理部22に設けられる温度センサ、ヘッド50のメンテナンス時にヘッドユニット間の隙間50Dの位置を検出するセンサなどが含まれる。
プリント制御部80には、図1の排出部24に配置される印字検出部(インラインセンサ)94から記録画像の撮像結果のデータが入力される。印字検出部94は、印字部18の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他吐出異常をチェックする手段として機能する。
すなわち、印字検出部94は、記録媒体14に印字された画像(テストパターン)を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部94から得られた情報に基づいてヘッド50に対する各種補正やヘッド50のメンテナンスを行うように各部を制御する。
印字検出部94の構成例として、少なくともヘッド50によるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される態様が挙げられる。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたR受光素子列と、緑(G)の色フィルタが設けられたG受光素子列と、青(B)の色フィルタが設けられたB受光素子列と、から成る色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
〔メンテナンスユニットの詳細な説明〕
次に、図6に示すメンテナンスユニット60について詳細に説明する。
図8は、メンテナンスユニット60を上側(ヘッド50側)から見た概略図である。先に説明したように、メンテナンスユニット60は、表面にスリット61Aが設けられた洗浄液塗布ローラ61と、ヘッド50ノズル形成面のワイピングを行うブレード62と、ヘッドユニット間の隙間50Dを吸引する吸引除去部63と、ヘッド50のノズル形成面に密着させて予備吐出時のインク受けとして機能するとともに、ノズルを介してヘッド50内のインクを吸引する機能を有するキャップ64と、を含んで構成され、メンテナンス処理時におけるヘッド50の移動方向の上流側から上記の順に配置されている。
図9(a)には洗浄液塗布ローラ61の側面側から見た形状をを拡大して図示する。また、図9(b)には、洗浄液塗布ローラ61の周面の平面形状を拡大して図示する。
洗浄液塗布ローラ61は表面が多孔質部材により形成され、不図示の洗浄液供給部から供給される洗浄液が表面に保持される。また、図9(b)に示すように、洗浄液塗布ローラ61は円筒形状を有し、その表面にはヘッドユニット50Aのつなぎ目ピッチで、かつ、ヘッドユニット間の隙間50Dに対応して斜め方向にスリット61Aが形成されている。
スリット61Aの平面形状はヘッドユニット間の隙間50Dの平面形状に対応し、スリット61Aの外周の長さは、メンテナンス処理時のヘッド50の移動方向(以下、単に「ヘッドの移動方向」や「ヘッドの長手方向」と記載することがある。)におけるヘッドユニット50Aの長さと、ヘッドユニット間の隙間50Dの長さを足し合わせた長さに相当し、スリット61Aの円周方向の長さは、ヘッドの移動方向における隙間50Dの長さと同一又は該隙間50Dの長さよりもやや長くなっている。
また、スリット61Aの円周方向に対する角度は、ヘッドの移動方向に対する隙間50Dの角度に対応している。すなわち、洗浄液塗布ローラ61が回転するとスリット61Aは隙間50Dを覆う形状であり、例えば、ヘッド移動方向における隙間50Dの長さに対する円周方向におけるスリット61Aの長さ比は1.0以上1.2以下とするとよい。隙間50Dを確実にスリット61Aにて覆うことができ、位置合わせが容易となる。
また、図9(b)に示すように、洗浄液塗布ローラ61は回転軸61Bに支持され回転可能に構成され、メンテナンス時のヘッド50の移動速度に対応する一定速度で回転し、ヘッドユニット50Aのノズル形成面に洗浄処理液を付与するとともに、洗浄液塗布ローラ61の直上にヘッドユニット間の隙間50Dが移動してくると、スリット61Aが真上の位置に移動してくるように洗浄液塗布ローラ61の回転が制御される。このように洗浄液塗布ローラ61の回転制御を行うと、ヘッドユニット間の隙間50Dには洗浄液が付与されない。
すなわち、ヘッドユニット間の隙間50Dとスリット61Aとの位置合わせがなされるように、ヘッド50の移動と洗浄液塗布ローラ61の回転が制御される。例えば、ヘッドユニット間の隙間50Dのヘッド50の移動経路上の位置を検出する検出部を備え、検出部により検出された隙間50Dの位置に合わせて洗浄液塗布ローラ61の回転速度やオンオフを制御する態様が挙げられる。隙間50Dの検出部には、ヘッド50の移動機構のモータにエンコーダを取り付けてエンコーダの出力信号から間接的に隙間50Dの位置を把握する構成や、ヘッド50の移動経路上に設けられた位置検出センサにより隙間50Dの位置を直接検出する構成が適用可能である。
なお、洗浄液塗布ローラ61の表面に2本以上のスリットを設け、ヘッドユニット間の隙間50Dと洗浄液塗布ローラ61の表面のスリットの何れか1つが同期するように洗浄液塗布ローラ61の回転制御を行うように構成してもよい。
図8のブレード62は、ヘッド50のノズル形成面にたわみながら接触する長さを有し(図11参照)、払拭面がヘッドの移動方向と略直交し、ヘッドユニット間の隙間50Dに対して斜めに払拭中に接触するように配置される。ブレード62には弾性部材が好適に用いられる。
ブレード62によって、ヘッドユニット間の隙間50Dに対して斜め方向からヘッド50のノズル形成面のワイピングを行うことで、該隙間50Dのエッジ(ヘッドユニット50Aのエッジ)とブレード62との衝突によるブレード62の払拭面の劣化が防止される。
また、図10に示すように、ヘッドユニットダミー部50Cに端部からヘッドユニット50Aが配置される内側に向かって厚みが大きくなるような傾斜面50Hを設け、ヘッドユニット50Aの端部のエッジにはブレード62が線接触するように構成すると、ヘッドユニット50Aの端部のエッジとブレード62との接触によるブレード62の払拭面の劣化が防止される。
吸引除去部63は、ポンプ65から発生する負圧を用いてヘッドユニット間の隙間50Dに入り込んだ液体(洗浄液やインク)を除去する手段として機能する。吸引除去部63は、隙間50Dの形状に対応する開口形状を持つ開口部63Aと、ポンプ65と接続される負圧発生口63Bと、を有し、ヘッド50のノズル形成面とは接触せずに非接触で隙間50Dの吸引を行う。吸引除去部63による隙間50Dの吸引処理を行う場合には、ヘッド50の移動を所定の期間停止させて隙間50Dのみから吸引を行い、隙間50D以外のヘッド50のノズル形成面に塗布された洗浄液や洗浄液に溶解したインクを吸引しないように、ヘッド50の移動やポンプ65及び開閉弁66による負圧発生が制御される。
ヘッド50のノズル形成面と開口部63Aとの距離は、0.3mm以上1.5mm以下とするとよい。ポンプ65により付与される負圧は10KPa以上1.0MPa以下とするとよい。また、ヘッド50の停止時間は0.1秒以上3.0秒以下とするとよく、吸引処理を迅速におこなうことができる。
開口部63Aは、隙間50Dと略平行となるようにヘッドの移動方向に対して斜めに配置されるとともに、隙間50Dと略同一の開口形状を有している。なお、洗浄液塗布ローラ61と吸引除去部63との配置ピッチをヘッドユニット50Aの配置ピッチ(隙間50Dの配置ピッチ)とすると、隣り合う隙間50Dにおいて、ヘッドの移動方向の上流側の隙間50Dの位置と洗浄液塗布ローラ61のスリット61Aの位置が一致した状態で、下流側の隙間50Dの位置と開口部63Aの位置を一致させることができ、洗浄液を塗布する際の隙間50Dを避ける処理と隙間50Dの吸引処理の2つの処理を同時に行うことができ、処理の迅速化が可能となる。
吸引除去部63には、吸引圧力により変形しない強度を持ち、かつ、インクや洗浄液に対する耐食性を有する材料が適用され、金属や樹脂が好適に用いられる。
本例では、図11に示すようにヘッド50は水平面H(一点破線で図示)に対して斜めに配置されているので、ヘッドユニット間の隙間50Dに入り込んだ液体(主として洗浄液及び洗浄液に溶解したインク)は、隙間50D内で傾き方向の下側に溜まってしまう。
メンテナンスユニット60もヘッド50の傾きに合わせて水平面Hに対して斜めに配置されるので、吸引除去部63に設けられる負圧発生口63Bをメンテナンスユニット60の傾き方向の下側端部に設けることで、隙間50Dの下側端部に溜まった液体が効率よく吸引除去される。
キャップ64は、ヘッド50のノズル形成面を覆う開口形状を有している。また、ヘッド50のノズル形成面と接触する部分はシール部材により構成され、キャップ64とヘッド50のノズル形成面との密着性が確保されている。また、キャップ64の底面にはポンプ65と連通する負圧流路との接続口64Aが設けられている。
ワイピング処理後のノズルからキャップ64に向けて予備吐出を行うことで、ワイピングの際にノズル内に入った洗浄液や洗浄液に溶解したインクが排出される。同時に、ノズル内の劣化インクも排出され、好ましいインク吐出を行うノズルの状態を得ることができる。
以上まとめると、上述したメンテナンスユニット60を用いたヘッド50のメンテナンス処理は、ヘッド50をメンテナンス位置に移動させる移動工程と、ヘッド50のノズル形成面(インク吐出面)に洗浄液を塗布するとともに、ヘッドユニット間の隙間50Dに洗浄液が入り込まないように洗浄液の塗布を回避する洗浄液塗布工程と、ノズル形成面のワイピングを行うワイピング工程と、ヘッドユニット間の隙間50Dに入り込んだ液体を除去する液体除去工程と、ヘッド50のすべてのノズルから予備吐出を行う予備吐出工程と、を含んで構成されている。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10は、ヘッド50のメンテナンス処理において、ノズル形成面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布ローラ61にヘッドユニット間の隙間50Dに対応するスリット61Aを設け、隙間50Dとスリット61Aを同期させて洗浄液の塗布を行うので、隙間50Dの中への洗浄液の入り込みが防止される。
また、ヘッドユニット間の隙間50Dの形状に対応する開口形状を有する開口部63Aを具備する吸引除去部63を備え、隙間50Dを非接触で負圧吸引するので、隙間50Dに洗浄液が入り込んだとしても洗浄液を除去することができる。
さらに、吸引除去部63の負圧発生口63Bをメンテナンスユニット60の傾き方向の下側端部に配置することで、ヘッドユニット間の隙間50Dに入り込み、傾き方向の下側端部に溜まった洗浄液を効率よく除去することができ、ヘッドユニット間の隙間50Dからの液たれが防止される。
なお、吸引除去部63の構成として、負圧吸引に代わり多孔質部材等の吸収部材による吸収除去を適用してもよい。例えば、ヘッドユニット間の隙間50Dに対応する形状を有する吸収部材を先端部に備えた構造体を、ヘッドユニット間の隙間50Dの傾きと略平行になるようにメンテナンス時のヘッドの移動方向に対して斜めに傾けて配置する形態が可能である。
該構造体の構成例として、メンテナンスユニットに固定されるベース部と、ベース部の先端に設けられ、ブレード62の先端部よりも上に突出した形状を持ち、ヘッドユニット間の隙間50Dに入り込むように構成された吸収部と、を備える態様が挙げられる。また、吸収部を内部から吸引するように構成し、吸収と吸引を併用することも考えられる。
なお、ブレード62は消耗部品であり、メンテナンスユニット60から取り外しができるようにメンテナンスユニット60に取り付けられている。また、キャップ64による吸引を行う場合には開閉弁66を閉じることで、吸引力が下がらないように開閉弁66が制御されるので、負圧の有効利用を図ることができる。
〔メンテナンスユニットの他の実施形態〕
次に、メンテナンスユニットの他の実施形態について説明する。図12は本実施形態に係るメンテナンスユニット160の概念図であり、図13は、メンテナンスユニット160を上側(ヘッド50側)から見た平面図である。
図12に示すメンテナンスユニット160は、図6に示すメンテナンスユニット60の吸引除去部63に代わり多孔質部163を備えるとともに、ブレード(弾性部)162Aと多孔質部163が一体に構成されている。
すなわち、メンテナンスユニット160は、ヘッド50のノズル形成面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布ローラ161と、ヘッド50のノズル形成面をヘッドの移動方向に沿って一括でワイピングを行うとともに、ヘッドユニット間の隙間50Dの中の液体を除去するブレード構造体162と、キャップ164とを備えている。
また、ブレード構造体162は、弾性部162Aのメンテナンス処理時におけるヘッド50の移動方向下流側に多孔質部163が設けられ、弾性部162Aと多孔質部163が接合された構造を有している。
また、図13に示すように、弾性部162A及び多孔質部163が一体に構成されたブレード構造体162は、払拭面がヘッドユニット間の隙間50Dと略平行になるように、ヘッドの移動方向に対して斜めに配置されている。図13に示す符号163Bは、多孔質部163によって吸収された液体を吸引するための吸引口であり、図12に示すように開閉弁166を介してポンプ165と接続されている。
なお、洗浄液塗布ローラ161及びキャップ164の構造及び機能は、先に説明したメンテナンスユニット60の洗浄液塗布ローラ61及びキャップ64と同一であり、ここでは説明を省略する。
図14(a)には、弾性部162A及び多孔質部163が一体に構成されたブレード構造体162の平面形状(ヘッドの移動方向から見た形状)を図示し、図12(b)は側面から見た形状(ヘッドの移動方向と直交する方向から見た形状)を図示する。
図14(a)に示すように、ブレード構造体162の平面形状は長方形形状であり、その幅(図14(a)の左右方向に長さ)はヘッドユニット50Aの短手方向の幅と同一又は、それよりも長くなっている。
また、ブレード構造体162の先端部がヘッド50のノズル形成面にたわみ変形した状態で接触するように、弾性部162A及び多孔質部163の長さ(高さ)が決められている。さらに、多孔質部163は弾性部162Aよりも上側に突出した形状を有し、この突出した先端部がヘッドユニット間の隙間50Dに入り込み、当該隙間50Dの中に入り込んだ液体を吸収し得る。この突出した先端部の長さ(隙間50Dに入り込む部分の長さ)は、隙間50Dの深さの3%〜20%程度とするとよい。
図14(b)に示すように、弾性部162A及び多孔質部163の側面形状は長方形形状である。また、ブレード構造体162は弾性部162Aに沿って短形状の多孔質部163を構成する部材が一体的に貼り付けられた構造となっている。
図15(a)〜(c)には、ブレード構造体162によってヘッド50のノズル形成面を払拭する状態を模式的に図示する。図15(a)〜(c)におけるメンテナンス時におけるヘッド50の移動方向は、他の図と同様に左から右である。
図15(a)は、ヘッドの移動方向における下流側のヘッドユニット50A−1のノズル形成面を払拭している状態である。各ヘッドユニット50Aのノズル形成面を払拭するときは、弾性部162A及び多孔質部163ともたわみ変形してノズル形成面に接触している。この状態では、弾性部162Aによってノズル形成面のワイピングが行われるとともに、多孔質部163によって拭き残しの液体が吸収除去される。
図15(b)は、ブレード構造体162の多孔質部163の位置に、下流側のヘッドユニット50A−1と上流側のヘッドユニット50A−2との間の隙間50Dが到達した状態である。この状態でヘッド50を停止させると、たわみ変形していた多孔質部163の先端部が復元力により当該隙間50Dに入り込む。
この状態を所定期間維持することで、当該隙間50Dの中の液体が多孔質部163により吸収除去される。ヘッド50の停止期間は、多孔質部163の吸収能力と隙間50Dの形状、洗浄液の種類(物性)等によって決められる。
なお、ヘッドユニット間の隙間50Dに多孔質部163が入り込みやすいように、多孔質部163の先端部のエッジを面取り加工しておくとよい。
図15(c)には、ヘッド50のすべてのヘッドユニット50Aについてノズル形成面のワイピングが終了し、ブレード構造体162がヘッド50の直下から抜け出した状態を図示する。
かかる態様によれば、弾性部162Aと多孔質部163を具備するブレード構造体162によりヘッド50のノズル形成面のワイピングを行うことで、ヘッド50のノズル形成面のクリーニングとヘッドユニット間の隙間50Dのクリーニングを一体的に行うことができる。
なお、弾性部162Aと多孔質部163の間に一定以上の距離があると、ヘッド50の停止と移動が繰り返され、弾性部162Aによる拭きムラ(段ムラ)が生じる可能性がある。したがって、弾性部162Aによる拭きムラを最小限に抑えるために、弾性部162Aと多孔質部163は極力近接させることが好ましく、上記のように弾性部162Aと多孔質部163とを接合し、一体に構成することがより好ましい。
また、弾性部162A及び多孔質部163は消耗部品であり、ブレード構造体162を一体に、又は弾性部162Aと多孔質部163を別々にメンテナンスユニット160から取り外しができるように構成されている。
〔変形例〕
次に、上述したブレード構造体の変形例について説明する。図16は、本変形例に係るブレード構造体262の斜視図である。
図16に示すブレード構造体262は、傾き方向の下側に弾性部262Aよりも突出し、かつ、上方向にも多孔質部263よりも突出した構造を有する端部多孔質部263Aが設けられている。端部多孔質部263Aの平面形状は上下に細長い長方形であり、端部多孔質部263Aの側面から見た形状はL字を180°回転させた逆L字形状となっている。さらに、端部多孔質部263Aの逆L字の水平部分は弾性部262Aよりも前方にやや突出した形状となっている。
上述した構造(形状)を有する端部多孔質部263Aは、水平面に対して傾けられて配置されるヘッド50の傾き方向の下側の端部において、ヘッドユニット間の隙間50Dにヘッド50の側面側から接触し、当該隙間50Dに入り込んだ液体を吸収除去する手段として機能する。図17には、ヘッド50の側面側端部(ヘッド50の短手方向の端部)から端部多孔質部263Aによりヘッドユニット間の隙間50D内の液体を除去している状態を模式的に図示する。なお、図17に符号260を付して破線で図示した構造は、ブレード構造体262を支持するメンテナンスユニットである。
図18(a)〜(c)には、ブレード構造体262によってヘッド50のノズル形成面を払拭する状態を模式的に図示する。図18(a)〜(c)におけるメンテナンス時におけるヘッド50の移動方向は、他の図と同様に左から右である。
図18(a)は、ヘッドの移動方向における下流側のヘッドユニット50A−1のノズル形成面を払拭している状態である。各ヘッドユニット50Aのノズル形成面を払拭するときは、弾性部262A及び多孔質部263ともたわみ変形してノズル形成面に接触している。また、端部多孔質部263Aはヘッド50の側面に接触(密着)している。この状態では、弾性部262Aによってノズル形成面のワイピングが行われるとともに、多孔質部263によって拭き残しの液体が吸収除去される。
図18(b)は、ブレード構造体262の弾性部262Aの位置に、下流側のヘッドユニット50A−1と上流側のヘッドユニット50A−2との間の隙間50Dが到達した状態である。この状態でヘッド50を停止させると、たわみ変形していた多孔質部263の先端部が復元力により当該隙間50Dに入り込む。また、端部多孔質部263Aは当該隙間50Dをヘッドの側面側から密着するので、隙間50Dの傾き方向の下側に溜まった液体は端部多孔質部263Aに接触する。
この状態を所定期間維持することで、当該隙間50Dの中の液体が多孔質部263及び端部多孔質部263Aにより吸収除去される。ヘッド50の停止期間は、多孔質部263及び端部多孔質部263Aの吸収能力と隙間50Dの形状、洗浄液の種類(物性)等によって決められる。なお、多孔質部263と端部多孔質部263Aは同一の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
また、端部多孔質部263Aがヘッドユニット間の隙間50Dをヘッド50の側面側から覆うように端部多孔質部263Aの形状およびサイズ(特に水平部分のサイズ)が決められている。
図18(c)には、ヘッド50のすべてのヘッドユニット50Aのノズル形成面のワイピングが終了し、ブレード構造体262がヘッド50の直下から抜け出した状態を図示する。
かかる変形例によれば、圧胴搬送手段を用いたインクジェット記録装置において、圧胴の周面に沿って水平面に対して傾けられて配置されたヘッドにおいて、ヘッドユニット間の隙間50Dの傾き方向下側に溜まった液体を除去し、液たれを防止する。
本発明は、インクに含有する着色剤を凝集(または、不溶化)させる機能を持つ処理液とインクを反応させて画像を形成する装置構成についても適用可能である。
以上、本発明のインクジェット記録装置、ヘッドメンテナンス装置を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):液体を吐出する複数のノズルが2次元状に並べられたヘッドユニットを記録媒体の全幅に対応する長さにわたって繋ぎ合わせたラインヘッドと、前記ラインヘッドを前記ヘッドユニットの並び方向に沿って移動させるヘッド移動手段と、前記ヘッド移動手段により前記ラインヘッドが移動する際に、前記ヘッドユニットのノズル形成面に接触して前記ノズル形成面を前記ヘッドユニットの並び方向に沿って一括で払拭する払拭手段と、前記払拭手段の前記ラインヘッドの移動方向下流側に設けられ、前記ヘッドユニット間の隙間に入り込んだ液体を除去する液体除去手段と、を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
本発明によれば、払拭手段による払拭処理によりヘッドユニット間の微細な隙間に入り込んだ液体を、液体除去手段により除去するように構成したので、隙間に液体が保持されることがなく、隙間に溜まった液体の液たれが防止される。
液体除去手段には、ヘッドユニット間の隙間と接触せずに該隙間を吸引する態様を適用してもよいし、ヘッドユニット間の隙間に接触して(隙間の中の液体に接触して)、隙間の中の液体を吸収除去する態様を適用してもよい。
払拭手段には、ヘッドユニットの幅(ヘッドの移動方向と直交する方向におけるヘッドユニットの長さ)に対応する幅を有するブレードを含む態様が好ましい。
ヘッドユニットは一列につなぎ合わせてもよいし、千鳥状などの配置にしたがってつなぎ合わせてもよい。
(発明2):発明1に記載の液体吐出装置において、前記ヘッドユニットのノズル形成面は、略平行四辺形の平面形状を有することを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様において、ヘッドユニットの隙間は、平行四辺形の斜辺部と平行となり、ヘッドの移動方向に対して斜め方向となる。
一方、払拭手段による払拭方向は、ヘッドの移動方向に平行とすることで、隙間に対して斜め方向から払拭することになり、隙間のエッジ部と払拭手段との衝突による払拭手段の劣化を防止し、払拭手段の払拭処理の際に隙間に液体を押し込みにくくなる。
(発明3):発明1又は2に記載の液体吐出装置において、前記ラインヘッドのノズル形成面と対向する液体吐出領域に配設される前記記録媒体を周面に保持する回転ドラムを含む記録媒体搬送手段を備え、前記ラインヘッドは、前記ノズル形成面の垂線と前記回転ドラムの周面の法線が略平行となるように水平面に対して斜めに配置され、前記払拭手段及び前記液体除去手段は、前記ラインヘッドのノズル形成面と略平行となるように水平面に対して斜めに配置されることを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様において、ラインヘッドのノズル形成面と平行になるように前記払拭手段及び前記液体除去手段を配置したので、ラインヘッドを水平方向に移動させることで、ノズル形成面のメンテナンスを行うことができる。
記録媒体の搬送方向と直交する方向に沿う行方向及び、行方向と所定の角度(0°を超え90°未満の角度)をなす斜め方向の列方向に沿って2次元状にノズルを配置する場合には、列方向とヘッドユニットの斜辺が平行になる。
(発明4):発明1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記払拭手段の前記ラインヘッドの移動方向上流側に設けられ、前記ノズル形成面に洗浄液を塗布する塗布ローラを含む洗浄液塗布手段を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、ノズル形成面を払拭する前に洗浄液を塗布することで、払拭によるノズル形成面と払拭手段との磨耗が抑制される。
(発明5):請求項4に記載の液体吐出装置において、前記塗布ローラは、周面に前記ヘッドユニット間の隙間に対応する形状を有するスリットが設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、ヘッドユニット間の隙間には洗浄液が入り込まない。発明2のようにヘッドユニット間の隙間がヘッドの移動方向に対して斜めになる場合には、洗浄液塗布ローラのスリットも斜め方向となる。
(発明6):発明4又は5に記載の液体吐出装置において、前記塗布ローラを回転駆動する塗布ローラ駆動手段と、前記ヘッドユニット間の隙間に対して前記塗布ローラのスリットを位置合わせするように前記塗布ローラ駆動手段を制御する塗布ローラ駆動制御手段を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、ヘッドユニット間の隙間と洗浄液塗布ローラの位置合わせを行うことで、洗浄液塗布時における隙間への洗浄液に入り込みを確実に防止し得る。
(発明7):発明4乃至6のいずれかに記載の液体吐出装置において、前記塗布ローラ駆動制御手段は、前記ヘッドユニット間の隙間と前記塗布ローラのスリットとの位置合わせがなされた状態で前記塗布ローラを停止させるように前記塗布ローラ駆動手段を制御することを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様において、スリットの位置を隙間が抜けるタイミングで、洗浄液塗布ローラの回転を再開するように制御するとよい。
(発明8):発明1乃至7のいずれか1項に記載に液体吐出装置において、前記液体除去手段は、前記隙間に負圧を付与して吸引する吸引除去手段を含むことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、隙間を負圧吸引することで、払拭手段によるノズル形成面に払拭時に隙間に入り込んだ液体が除去される。負圧吸引は隙間(ヘッドのノズル形成面)と非接触で行う態様が好ましい。
(発明9):発明8に記載の液体吐出装置において、前記吸引除去手段は、前記ヘッドユニット間の隙間に対応する平面形状を有する開口部と、前記開口部に負圧発生口を介して負圧を発生させる負圧発生手段と、を有し、前記ヘッドユニットの隙間と前記開口部の位置が合った状態で前記開口部に負圧を発生させるように前記負圧発生手段を制御する負圧制御手段を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、隙間の中に入り込んだ液体は負圧吸引により除去されるので、隙間の中に液体が溜まることがなく、液たれが防止される。
(発明10):発明9に記載の液体吐出装置において、前記ヘッド移動手段は、前記ヘッドユニットの隙間と前記開口部の位置が合った状態で前記ラインヘッドの移動を停止させることを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、隙間内を吸引するための時間が確保され、好ましい液体除去が行われる。
(発明11):発明8乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記吸引除去手段は、前記開口部と連通する負圧発生口が傾き方向の下側端部に設けられることを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、ヘッドユニット間の隙間の斜め方向下側端部に溜まった液体を効率よく除去することができ、隙間の斜め方向下側端部からの液たれが防止される。
(発明12):発明1乃至11のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記ラインヘッドの前記ヘッドユニットの並び方向の両端部にはヘッドダミー部が設けられ、前記ヘッドダミー部は、前記ラインヘッドの端部から前記ヘッドユニット側の内側に向かって高さが大きくなる傾斜面を有することを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、ヘッドの両端部における払拭手段とノズル形成面が線接触するので、払拭手段の破損及び劣化を防止することができる。
(発明13):発明1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記液体除去手段は、前記隙間と接触して前記隙間内の液体を吸収する吸収除去手段を含むことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、簡単な構成により、ヘッドユニット間の隙間に入り込んだ液体を効率よく、かつ、確実に除去することができる。
(発明14):発明13に記載の液体吐出装置において、前記吸収除去手段は、多孔質部材を含むことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、液体の吸収性に優れ、かつ、隙間の形状に対応して変形しやすい多孔質部材を用いることで、ヘッドユニット間の隙間に入り込んだ液体を効率よく吸収除去することが可能となる。
(発明15):発明1乃至14のいずれかに記載の液体吐出装置において、前記払拭手段は、前記ラインヘッドの移動方向と直交する前記ラインヘッドの長さに対応する長さを有するブレードを含むことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、ノズル形成面を一括で払拭することができる。
(発明16):発明1乃至15のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記払拭手段は、前記ラインヘッドの液体吐出面を払拭する払拭面が前記ヘッドユニット間の隙間に対して斜め方向となるように配置されることを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、払拭手段によりラインヘッドのノズル形成面を払拭する際に、隙間の中に液体が入りにくくなる。
(発明17):発明1乃至16の何れか1項に記載の液体吐出装置において、前記液体除去手段の前記ラインヘッドの移動方向下流側に設けられ、前記ラインヘッドのノズル形成面をキャッピングするキャッピング手段を備え、前記払拭手段、前記液体除去手段、及び前記キャッピング手段は、前記ラインヘッドの移動方向に沿って一体に配置されることを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様によれば、洗浄液塗布手段、払拭手段、液体除去手段、及びキャッピング手段が一体に構成されたメンテナンスユニットによって、ラインヘッドのノズル形成面のワイピング、予備吐出(又は吸引)を一連の動作として実行することができる。
(発明18):発明1乃至17のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、
ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置を含むことを特徴とする液体吐出装置。
かかる態様において、カラー画像記録に対応して色ごとにラインヘッドを備える場合には、払拭手段及び液体除去手段をヘッドごとに備える態様が好ましい。
(発明19):液体を吐出する複数のノズルが2次元状に並べられたヘッドユニットを記録媒体の全幅に対応する長さにわたって繋ぎ合わせたラインヘッドのノズル形成面に接触して、前記ヘッドユニットの並び方向に沿って移動する前記ラインヘッドのノズル形成面を、前記ヘッドユニットの並び方向に沿って一括で払拭する払拭手段と、前記払拭手段の前記ラインヘッドの移動方向下流側に設けられ、前記ヘッドユニット間の隙間に入り込んだ液体を除去する液体除去手段と、を備えたことを特徴とするヘッドメンテナンス装置。
液体を吐出する複数のノズルが2次元状に並べられたヘッドユニットを記録媒体の全幅に対応する長さにわたって繋ぎ合わせたラインヘッドのノズル形成面のメンテナンスを行う方法として、ラインヘッドをヘッドユニットの並び方向に沿って移動させながら、ノズル形成面をヘッドユニットの並び方向に沿って一括で払拭する払拭工程と、払拭工程の後にヘッドユニット間の隙間に入り込んだ液体を除去する液体除去工程と、を含むヘッドメンテナンス方法が挙げられる。
かかるヘッドメンテナンス方法において、ヘッドユニット間の隙間を避けながらノズル形成面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布工程を含む態様が好ましい。
10…インクジェット記録装置、12…圧胴、18…印字部、18K,18C,18M,18Y,50…ヘッド、26…メンテナンスユニット、50A…ヘッドユニット、50C…ヘッドユニットダミー部、50D…隙間、50H…傾斜面、61…洗浄液塗布ローラ、61A…スリット、62…ブレード、63…吸引除去部、63A…開口部、63B…負圧発生部、64…キャップ