しかしながら、特許文献1,2の構成のように、光作用極基板と対極基板との2つの基板を貼り合せたセル構造では、色素を吸着した多孔質酸化チタン層の表面と対極表面との間の電解質を満たしたギャップを狭くかつ一定に保って製造することは困難であり、変換効率が高くかつ安定であり、信頼性が高いものを製造することは困難であった。
また、基板サイズが大きくなると、このギャップを狭くかつ一定に保つことは特に困難であった。上記のようにスペーサを介在させて短絡防止することができても、このギャップを狭くかつ一定に保つことはできなかった。なぜなら、太陽電池では低コスト化が求められており、低コストのガラス基板等は平面度が悪く、平面度をよくするには高コストの研磨加工が必要となり、平面度の悪い2枚の基板を貼り合せると益々ギャップが大きく且つ不均一になるという問題があった。他材料の基板であっても同様である。
このギャップに相当する電解質層の幅(厚み)は、多孔質酸化チタン層と対極層とが接触せず、かつできるだけ狭い方が、電気抵抗を小さくできて発電効率がよく、また基板全面においてギャップが均一であった方が、そのバラツキによる電流ロスや電圧ロスが小さくて済み発電効率が高い。従って、多孔質酸化チタン層(半導体電極)と対極(対向電極)との間隔を一定に保つ、もしくは電解質の幅を狭く且つ一定にする手段があれば、変換効率及び信頼性が高くなる。さらに、耐久性を向上させるためには充分な量の電解質を設置することが必要であるが、従来の2枚の基板を貼り合せる構造では多孔質酸化チタン層(半導体電極)と対極層(対向電極)との間隔で電解質の設置量が決まるため、変換効率の向上と信頼性の確保とを両立させることはできなかった。
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は以下の点にある。
(1)従来2枚の基板間の隙間で決定されていた電解質層の厚みが、その隙間に依存せずに電解質の溶液(液体)を保持した均一な厚みの浸透層の厚みで決まるようにすることによって、電解質層を薄くかつ均一化して、変換効率及び信頼性を高めること。
(2)従来半導体電極と対極との間にしか設置されていなかった電解質を、第2の領域にも充填することにより、変換効率及び信頼性を高めること。
(3)1枚の基板上に各層を積層した一体型積層構造の積層体を形成し、ガラスまたはセラミックスを主成分とする封止部材を用いて封止した後に、浸透層を通して色素を吸着させ、また電解質の溶液を浸漬させることによって、従来のように色素を吸着及び電解質を注入した後に対極層を積層形成する際や封止する際の熱処理等によって色素及び電解質が劣化するのを防ぎ、その結果変換効率を高めること。
(4)1枚の基板上に複数個の光電変換装置を容易に形成できるので集積化に優れ、また光電変換装置を複数個積層できるので積層化に優れる光電変換装置を提供すること。
(5)1枚の基板に形成された多孔質の半導体層及び対極層から外部電極に電気的に接続できることから、配線の自由度に優れ、外部に取り出す出力を自由に選択することができる光電変換装置を提供すること。
本発明の光電変換装置は、絶縁性の第1の基板上に、導電膜、色素を吸着した多孔質の半導体層、電解質の溶液が浸透するとともに浸透した前記溶液が保持される浸透層及び対極層が順次積層されるとともに、前記多孔質の半導体層及び前記浸透層に含まれる電解質の第1の領域を有する積層体が形成されており、前記積層体上に前記電解質の第2の領域を介して第2の基板が積層されていることを特徴とする。
本発明の光電変換装置は好ましくは、前記導電膜は、絶縁部分によって複数の領域に分割されており、少なくとも1つの領域上に前記積層体が形成され、他の少なくとも1つの領域に前記対極層が電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の光電変換装置は好ましくは、前記第1の基板及び前記導電膜は透光性を有することを特徴とする。
本発明の光電変換装置は好ましくは、前記第2の基板及び前記対極層は透光性を有することを特徴とする。
本発明の光電変換装置は好ましくは、前記浸透層は、前記電解質の溶液を含まない状態での表面または破断面の表面の算術平均粗さが前記多孔質の半導体層の表面または破断面の表面の算術平均粗さよりも大きいことを特徴とする。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記浸透層は、絶縁体粒子及び酸化物半導体粒子の少なくとも一方を焼成した焼成体から成ることを特徴とする。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記浸透層は、酸化アルミニウム粒子及び酸化チタン粒子の少なくとも一方を焼成した焼成体から成ることを特徴とする。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記第1及び第2の基板の周縁部を接合して前記電解質を封止する封止部材が形成されており、前記封止部材はガラスまたはセラミックスを主成分とすることを特徴とする。
本発明の光電変換装置の製造方法は、絶縁性の第1の基板上に、絶縁部分によって複数の領域に分割された導電膜を形成するとともに、前記導電膜の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層、浸透層及び対極層が順次積層された積層体を形成する工程と、前記導電膜の他の少なくとも1つの領域と前記対極層とを電気的に接続する工程と、前記積層体上に電解質の領域を形成するための空隙を確保して第2の基板を配置するとともに前記第1及び第2の基板の周縁部を接合するように貫通孔を有する封止部材を形成する工程と、前記貫通孔及び前記浸透層を通して前記多孔質の半導体層に色素を吸着させる工程と、前記貫通孔及び前記浸透層を通して前記多孔質の半導体層に電解質の溶液を浸透させるとともに、前記第1の基板、前記第2の基板及び前記封止部材で包囲された空間内に前記電解質の溶液を注入する工程と、前記貫通孔を塞ぐ工程とを具備することを特徴とする。
また、本発明の光電変換装置の製造方法は、絶縁性の第1の基板上に、絶縁部分によって複数の領域に分割された導電膜を形成するとともに、前記第1の基板及び前記導電膜に貫通孔を形成する工程と、前記導電膜の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層、浸透層及び対極層が順次積層された積層体を形成する工程と、前記導電膜の他の少なくとも1つの領域と前記対極層とを電気的に接続する工程と、前記積層体上に電解質の領域を形成するための空隙を確保して第2の基板を配置するとともに前記第1及び第2の基板の周縁部を接合するように封止部材を形成する工程と、前記貫通孔及び前記浸透層を通して前記多孔質の半導体層に色素を吸着させる工程と、前記貫通孔及び前記浸透層を通して前記多孔質の半導体層に電解質の溶液を浸透させるとともに、前記第1の基板、前記第2の基板及び前記封止部材で包囲された空間内に前記電解質の溶液を注入する工程と、前記貫通孔を塞ぐ工程とを具備することを特徴とする。
また、本発明の光電変換装置の製造方法は、絶縁性の第1の基板上に、絶縁部分によって複数の領域に分割された導電膜を形成するとともに、前記導電膜の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層、浸透層及び対極層が順次積層された積層体を形成する工程と、前記導電膜の他の少なくとも1つの領域と前記対極層とを電気的に接続する工程と、前記積層体上に電解質の領域を形成するための空隙を確保して貫通孔を有する第2の基板を配置するとともに前記第1及び第2の基板の周縁部を接合するように封止部材を形成する工程と、前記貫通孔及び前記浸透層を通して前記多孔質の半導体層に色素を吸着させる工程と、前記貫通孔及び前記浸透層を通して前記多孔質の半導体層に電解質の溶液を浸透させるとともに、前記第1の基板、前記第2の基板及び前記封止部材で包囲された空間内に前記電解質の溶液を注入する工程と、前記貫通孔を塞ぐ工程とを具備することを特徴とする。
本発明の光発電装置は、上記本発明の光電変換装置を発電手段として用い、前記発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことを特徴とする。
本発明の光電変換装置は、絶縁性の第1の基板上に、導電膜、色素を吸着した多孔質の半導体層、電解質の溶液が浸透するとともに浸透した溶液が保持される浸透層及び対極層が順次積層されるとともに、多孔質の半導体層及び浸透層に含まれる電解質の第1の領域を有する積層体が形成されていることから、光作用極側基板(絶縁性の第1の基板、導電膜及び多孔質の半導体層)上に浸透層を設け、浸透層を支持層としてこの上に対極側の積層部(対極層、即ち触媒層と導電膜)を積層したことにより、従来使用していた導電性を有する対極側基板に代わって、幅広い材料から成る第2の基板を用いることができ、低コスト化を達成することができる。
また、第2の基板を積層体上に電解質の第2の領域(余剰領域)を介して積層させることによって、電解質の体積を大きくして電荷移動に寄与する正孔輸送体及び電子の数を増加させることができるため、変換効率を向上させることができるとともに、充分な量の電解質を設置できることによって信頼性を高めることができる。
また、1枚の基板上に各層を積層した一体型積層構造の積層体を形成し、ガラスまたはセラミックスを主成分とする封止部材を用いて封止した後に、浸透層を通して色素を吸着させ、また電解質の溶液を浸漬させることによって、従来のように色素を吸着し電解質を注入した後に対極層を積層形成する際や封止する際の熱処理等によって色素及び電解質が劣化するのを防ぐことができ、その結果変換効率が高まる。
また、従来2枚の基板間の隙間で決定されていた電解質層の厚みが、均一な厚みで薄く形成できる浸透層の厚みで決まるので、電解質層を薄くでき且つ均一化できて、変換効率及び信頼性を高めることができる。
また、電解質が、ゲル電解質や液相体からゲル体へと相変化する化学ゲル電解質等の浸透可能な電解質である場合、従来の液状電解質よりも電気抵抗が大きいため、変換効率が30%程度低くなるが、本発明のように上記のような積層体を形成した場合には電解質層の厚みを非常に薄くすることができるため、電解質がゲル電解質等の固体状の電解質であっても高い変換効率が得られるという効果がある。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、導電膜は、絶縁部分によって複数の領域に分割されており、少なくとも1つの領域上に積層体が形成され、他の少なくとも1つの領域に対極層が電気的に接続されていることから、従来のように2つの電極(光作用極側の導電膜と対極側の導電膜)が、対向する2つの基板にそれぞれ形成されておらず、第1の基板にのみ形成されているため、電極の取り出しが容易である。
また、2つの電極が1枚の基板のみから外部電極へと接続できることから、配線の自由度に優れ、さらに外部に取り出す出力を自由に選択することができる。
また、1枚の第1の基板上の導電膜を2つの電極(光作用極側の電極と対極側の電極)として使用できることから、光電変換装置の集積化が容易である。即ち、1枚の第1の基板上に光電変換装置を複数個並べて形成し、直列接続や並列接続を自由に選択でき、所望の電圧と電流を出力できる。
また、基板が、絶縁性の第1の基板の1枚でよいことから、光電変換装置の積層化が容易である。即ち、1枚の絶縁性基板上に光電変換装置を複数個積層して成る積層型の光電変換装置を容易に形成でき、電圧が上がってもロスが小さい光電変換装置が得られる。
また、光作用極側の導電膜が非透光性である場合、ITO膜等の酸化物層ではなく金属層からなる導電膜とすることができるため、電気抵抗の小さい導電膜を形成することができるので、変換効率が高いものとなる。
また、光作用極側の第1の基板及び導電膜が透光性である場合には、多孔質の半導体層を第1の基板に形成して、光入射側に多孔質の半導体層を配置できるので、変換効率が高いものとなる。
また、第2の基板及び対極層が透光性を有する場合には、第1の基板側及び第2の基板側から光を入射させることができ、変換効率がより向上する。
本発明の光電変換装置は好ましくは、浸透層は、電解質の溶液を含まない状態での表面または破断面の表面の算術平均粗さが多孔質の半導体層の表面または破断面の表面の算術平均粗さよりも大きいことにより、浸透層は、それを構成する微粒子の平均粒径が多孔質の半導体層の平均粒径より大きいものとなり、その場合浸透層内部の空孔が大きくなるため、対極層に隣接する浸透層の内部により多くの電解質が存在することができ、浸透層に含まれる電解質による電気抵抗が小さくなり、変換効率を高めることができる。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、浸透層は、絶縁体粒子及び酸化物半導体粒子の少なくとも一方を焼成した焼成体から成ることにより、浸透層は、多孔質の半導体層を支える支持層としての役割も果たすことから、1枚の基板上に形成する積層体で光電変換装置を構成することができ、変換効率及び信頼性が高めることができる。
また、浸透層は、それ自体多孔質体であるため、その多孔質体の気孔部に電解質を充填できるので、酸化還元反応を効率的に行うことができる。この電解質を保持した浸透層の厚みは、非常に薄く且つ均一に再現性よく制御することができるので、電解質を保持した電解質層としての浸透層の幅(厚み)を非常に薄く且つ均一にでき、その結果電気抵抗が小さくなる等の効果があり、変換効率及び信頼性が高まる。この電解質層の幅は、絶縁性の第1の基板及び導電膜の平面度によることなく、浸透層の厚みによるので、従来からの均一な塗布技術で形成できる。こうして、光電変換装置を大面積化、集積化、積層化しても、電解質層の厚みのバラツキによる電流ロスや電圧ロスが小さくてすむので、大面積化等しても優れた特性の光電変換装置となる。
また、浸透層が絶縁体粒子からなる場合には、浸透層は、多孔質の半導体層を支える支持層としての役割を果たすとともに、電気的な絶縁作用(短絡防止)を有することにより、多孔質の半導体層と対極層との短絡を防ぐことができ、変換効率を高めることができる。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、浸透層は、酸化アルミニウム粒子及び酸化チタン粒子の少なくとも一方を焼成した焼成体から成ることにより、浸透層と多孔質の半導体層との密着性を高めることができ、変換効率及び信頼性を高めることができる。
また、多孔質の半導体層は、酸化チタン等の酸化物半導体微粒子、水及び界面活性剤等から成るペーストを塗布形成し、その後高温焼結して形成したものが良好な変換効率を示すが、本発明では導電膜を形成した後に多孔質の半導体層を形成しているので、多孔質の半導体層と導電膜及び第1の基板との密着性を高めることができ、変換効率及び信頼性が高まる。
また、浸透層が絶縁体粒子である酸化アルミニウム粒子からなる場合には、多孔質の半導体層と対極層との短絡を防ぐことができ、変換効率を高めることができる。
また、浸透層が酸化物半導体粒子である酸化チタン粒子からなる場合には、電子エネルギーバンドギャップが可視光よりも大きい2〜5eVの範囲にあり、色素が吸収する波長領域の光を吸収しないという効果があるため、好ましい。
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、第1及び第2基板の周縁部を接合して電解質を封止する封止部材がガラスまたはセラミックスを主成分とすることから、色素や電解質の外気からの汚染や電解質の揮発による劣化を抑制して信頼性を確保することができる。
本発明の光電変換装置の製造方法は、絶縁性の第1の基板上に、絶縁部分によって複数の領域に分割された導電膜を形成するとともに、導電膜の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層、浸透層及び対極層が順次積層された積層体を形成する工程と、導電膜の他の少なくとも1つの領域と対極層とを電気的に接続する工程と、積層体上に電解質の領域を形成するための空隙を確保して第2の基板を配置するとともに第1及び第2の基板の周縁部を接合するように貫通孔を有する封止部材を形成する工程と、貫通孔及び浸透層を通して多孔質の半導体層に色素を吸着させる工程と、貫通孔及び浸透層を通して多孔質の半導体層に電解質の溶液を浸透させるとともに、第1の基板、第2の基板及び封止部材で包囲された空間内に電解質の溶液を注入することにより、上記種々の特有の作用効果を有する光電変換装置を作製することができる。
また、本発明の光電変換装置の製造方法は、絶縁性の第1の基板上に、絶縁部分によって複数の領域に分割された導電膜を形成するとともに、第1の基板及び導電膜に貫通孔を形成する工程と、導電膜の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層、浸透層及び対極層が順次積層された積層体を形成する工程と、導電膜の他の少なくとも1つの領域と対極層とを電気的に接続する工程と、積層体上に電解質の領域を形成するための空隙を確保して第2の基板を配置するとともに第1及び第2の基板の周縁部を接合するように封止部材を形成する工程と、貫通孔及び浸透層を通して多孔質の半導体層に色素を吸着させる工程と、貫通孔及び浸透層を通して多孔質の半導体層に電解質の溶液を浸透させるとともに、第1の基板、第2の基板及び封止部材で包囲された空間内に電解質の溶液を注入することにより、上記種々の特有の作用効果を有する光電変換装置を作製することができる。
また、本発明の光電変換装置の製造方法は、絶縁性の第1の基板上に、絶縁部分によって複数の領域に分割された導電膜を形成するとともに、導電膜の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層、浸透層及び対極層が順次積層された積層体を形成する工程と、導電膜の他の少なくとも1つの領域と対極層とを電気的に接続する工程と、積層体上に電解質の領域を形成するための空隙を確保して貫通孔を有する第2の基板を配置するとともに第1及び第2の基板の周縁部を接合するように封止部材を形成する工程と、貫通孔及び浸透層を通して多孔質の半導体層に色素を吸着させる工程と、貫通孔及び浸透層を通して多孔質の半導体層に電解質の溶液を浸透させるとともに、第1の基板、第2の基板及び封止部材で包囲された空間内に電解質の溶液を注入することにより、上記種々の特有の作用効果を有する光電変換装置を作製することができる。
また、色素吸着前に対極層を形成できるので、対極層の形成に高温処理を用いることができ、対極層の材料や形成法において選択の幅が拡がるという効果や対極層の導電率が向上するという効果がある。
また、色素吸着及び電解質の溶液を注入する前に封止部材を形成できるので、封止部材の形成に高温処理を用いることができ、封止部材の材料や封止法において選択の幅が拡がるという効果や封止性が向上するという効果がある。
本発明の光発電装置は、上記本発明の光電変換装置を発電手段として用い、発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことにより、上記本発明の光電変換装置の作用効果である、電解質の幅が薄く且つ均一で優れた光電変換特性が安定して得られるという作用効果を利用した、高変換効率を有する高信頼性の光発電装置となる。
本発明の光電変換装置、その製造方法及び光発電装置についての実施の形態を、図1〜図4に基き以下に詳細に説明する。なお、各図において、同一部材には同一符号を付している。
本発明の光電変換装置の断面図を図1に示す。本発明の光電変換装置1aは、絶縁性の第1の基板2上に、導電膜3、色素4を吸着した多孔質の半導体層5、電解質6の溶液が浸透するとともに浸透した溶液が保持される浸透層7及び対極層8が順次積層されるとともに、多孔質の半導体層5及び浸透層7に含まれる電解質6の第1の領域6aを有する積層体が形成されており、その積層体上に電解質6の第2の領域6bを介して第2の基板9が積層されている構成である。
本発明において、電解質6は、液状のものでよいが、浸透層7を浸透するまでは液相体であり浸透後にはゲル体に相変化する化学ゲルからなるものであってもよい。化学ゲルの液相体からゲル体への相変化は、加熱によって行うことができる。
図1の光電変換装置1aの製造方法は、第1の基板2上に、導電膜3、多孔質の半導体層5、浸透層7及び対極層8が順次積層された積層体を形成し、次に積層体を色素4溶液に浸漬して浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させ、次に浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させる構成である。
この場合、多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる際に、積層体を色素4溶液に浸漬して積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させることもでき、より容易かつ速やかに色素4を浸透させて吸着させることができる。また、多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させる際に、積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させることもでき、より容易かつ速やかに電解質6の溶液を浸透させることができる。
また、積層体の側面を囲うように形成された封止部材10に、それを貫通する複数個の貫通孔13(図2に示す)を設け、次に貫通孔13を通して電解質6の溶液を注入して浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させ、次に貫通孔13を塞ぐこともできる。即ち、図2の光電変換装置1bの製造方法は、絶縁性の第1の基板2上に、絶縁部分11によって複数の領域に分割された導電膜3を形成するとともに、導電膜3の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層4、浸透層7及び対極層8が順次積層された積層体を形成する工程と、導電膜3の他の少なくとも1つの領域と対極層8とを電気的に接続する工程と、積層体上に電解質6の領域(第2の領域6b)を形成するための空隙を確保して第2の基板9を配置するとともに第1及び第2の基板2,9の周縁部を接合するように貫通孔を有する封止部材10を形成する工程と、貫通孔13及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる工程と、貫通孔13及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させるとともに、第1の基板2、第2の基板9及び封止部材10で包囲された空間内に電解質6の溶液を注入する構成である。
また、第1の基板2及び導電膜3に、それらを貫通する複数個の貫通孔13(図3に示す)を設けておき、貫通孔13を通して電解質6の溶液を注入し、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させ、次に貫通孔13を塞ぐことができる。即ち、図3の光電変換装置1cの製造方法は、絶縁性の第1の基板2上に、絶縁部分11によって複数の領域に分割された導電膜3を形成するとともに、第1の基板2及び導電膜3に貫通孔を形成する工程と、導電膜3の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層5、浸透層7及び対極層8が順次積層された積層体を形成する工程と、導電膜3の他の少なくとも1つの領域と対極層8とを電気的に接続する工程と、積層体上に電解質6の領域(第2の領域6b)を形成するための空隙を確保して第2の基板9を配置するとともに第1及び第2の基板2,9の周縁部を接合するように封止部材10を形成する工程と、貫通孔13及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる工程と、貫通孔13及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させるとともに、第1の基板2、第2の基板9及び封止部材10で包囲された空間内に電解質6の溶液を注入する構成である。
また、第2の基板9に、それを貫通する複数個の貫通孔13(図4に示す)を設けておき、貫通孔13を通して電解質6の溶液を注入し、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させ、次に貫通孔13を塞ぐ構成とすることができる。即ち、図4の光電変換装置1dの製造方法は、絶縁性の第1の基板2上に、絶縁部分11によって複数の領域に分割された導電膜3を形成するとともに、導電膜3の少なくとも1つの領域上に、多孔質の半導体層5、浸透層7及び対極層8が順次積層された積層体を形成する工程と、導電膜3の他の少なくとも1つの領域と対極層8とを電気的に接続する工程と、積層体上に電解質6の領域(第2の領域6b)を形成するための空隙を確保して貫通孔13を有する第2の基板9を配置するとともに第1及び第2の基板2,9の周縁部を接合するように封止部材10を形成する工程と、貫通孔13及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる工程と、貫通孔13及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させるとともに、第1の基板2、第2の基板9及び封止部材10で包囲された空間内に電解質6の溶液を注入する構成である。
図1〜4に示す封止部材10は、例えば、ガラスまたはセラミックスを主成分とするガラスフリット等からなる。
また、図2〜4に示す貫通孔封止部14は、透明または不透明な樹脂層、低融点ガラス粉末を加熱し固化させたガラス層、シリコンアルコキシド等の溶液をゾルゲル法によって硬化したゾルゲルガラス層等の層状体、またはプラスチック板やガラス板等の板状体、または薄い金属箔(シート)等の箔状体等からなる。また、層状体、板状体、箔状体を組み合わせて構成してもよい。
本発明の浸透層7は、電解質6の溶液を毛細管現象により速やかに吸収、浸透させるものであるため、浸透層7全体に速やかに電解質6の溶液がゆきわたるとともに、多孔質の半導体層5の浸透層7側の面全面から多孔質の半導体層5側へ電解質6の溶液を浸透させることができる。
次に、上述した光電変換装置1を構成する各要素について詳細に説明する。
<第1の基板>
第1の基板2は、非透光性でも透光性でも構わない。第1の基板2及び導電膜3が透光性を有する場合、多孔質の半導体層5を光作用極側基板である第1の基板に形成して、光入射側に多孔質の半導体層5を配置できるので、変換効率を高めることができる。例えば、厚み0.7mmの白板ガラスの基板の場合、400〜1100nmの波長範囲で92%以上の光透過率であり、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC)の基板の場合、可視光で約90%程度の光透過率であり、好ましい。
絶縁性の第1の基板の材料としては、白板ガラス,ソーダガラス,硼珪酸ガラス等のガラス、セラミックス等の無機材料、有機無機ハイブリッド材料、樹脂材料等がよい。第1の基板2の厚みは、機械的強度の点で0.005〜5mm、好ましくは0.01〜2mmがよい。
<導電膜>
導電膜3が金属膜である場合、チタン,アルミニウム,ステンレススチール,銀,銅,ニッケル等から成る金属膜を、真空蒸着法やスパッタリング法で形成したものがよい。また、導電膜3が金属膜である場合、高い導電性と低いコストの点で、厚みは0.001〜10μm、好ましくは0.05〜2.0μmがよい。0.001μm未満では、導電膜3の抵抗が増大し、10μmを超えると、導電膜3の形成に要するコストが増大する。
また、導電膜3が透光性を有する場合、金属の微粒子や微細線を含浸させた導電性の透明樹脂層、または電解質6による腐食防止性に優れた、チタン層,ステンレススチール層、または導電性の金属酸化物層等がよい。
また、導電膜3としては、弗素や金属をドープした金属酸化物から成る透明導電膜が利用できる。特に、熱CVD法により形成したフッ素ドープの二酸化スズ膜(SnO2:F膜)等が耐熱性を有しており、好ましい。また、低温成長のスパッタリング法や低温スプレー熱分解法で形成したスズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)や不純物ドープの酸化インジウム膜(In2O3膜)等がよい。他に、溶液成長法で形成した不純物ドープの酸化亜鉛膜(ZnO膜)等がよい。また、これらの透明導電膜を種々の組合せで積層して用いてもよい。また、透明導電膜は、Ti層,ITO層,Ti層を順次積層したものでもよく、この場合密着性と耐食性を高めた積層膜となる。また、透明導電膜3の厚みは高い導電性と高い光透過性の点で0.001〜10μm、好ましくは0.05〜2.0μmがよい。0.001μm未満では、透明導電膜の抵抗が増大し、10μmを超えると透明導電膜の光透過性が低下する。
導電膜3の成膜法として、真空蒸着法、イオンプレーティング法、ディップコート法、ゾルゲル法等がある。これらの成膜法によって、導電膜3の表面に入射光の波長オーダーの凹凸を形成するとよく、光閉じ込め効果があってなおよい。
また、導電膜3としては、真空蒸着法やスパッタリング法等で形成したAu,Pd,Al等からなる極薄い透明な金属膜でもよい。
透明な導電膜3としては、少なくとも可視光の波長範囲において高い透光性を有していればよく、好適な光透過率としては少なくとも可視光の波長範囲で90%以上の光透過率を有する導電膜3であれば利用できる。
本発明において好ましくは、導電膜3は、絶縁部分11によって複数の領域に分割されており、少なくとも1つの領域上に積層体が形成され、他の少なくとも1つの領域に対極層8が電気的に接続されているが、導電膜3に絶縁部分11を設ける方法としては、メカニカルスクライビング法等の機械的な研削方法、酸またはアルカリ溶液等を用いたエッチングなどの化学的方法等を用いることができる。また、マスキングなどにより絶縁部分をあらかじめパターニングして導電膜3を形成する方法を用いることもできる。
また、導電膜3の他の少なくとも1つの領域と対極層8とを電気的に接続するには、チタン、ステンレススチール等の金属からなる導電性の配線や柱状体、銀粒子等を含有した導電性ペーストを塗布し焼成して成る導電性膜等からなる導電体12を用いて行うことができる。
<多孔質の半導体層>
多孔質の半導体層5としては、二酸化チタン等からなるとともに内部に微細な空孔(空孔径が好ましくは10〜40nm程度のものであり、22nmのときに変換効率がピークを示す)を多数有する多孔質のn型酸化物半導体層等であるのがよい。多孔質の半導体層5の空孔径が10nm未満の場合、色素4の浸透及び吸着が阻害され、十分な色素4の吸着量が得られず、また、電解質6の拡散が妨げられるために拡散抵抗が増大することから、変換効率が低下することとなる。40nmを超えると、多孔質の半導体層5の比表面積が減少するため、色素4の吸着量を確保するためには厚みを厚くしなければならなくなり、厚みを厚くしすぎると光が透過しにくくなり、色素4が光を吸収できないこと、また、多孔質の半導体層5に注入された電荷の移動距離が長くなるため電荷の再結合によるロスがおおきくなること、さらに、電解質6の拡散距離も増大するため拡散抵抗が増大することから、やはり変換効率が低下することとなる。
図1に示すように、第1の基板2上の導電膜3上に多孔質の半導体層5を形成する。この多孔質の半導体層5の材料や組成としては、酸化チタン(TiO2)が最適であり、他の材料としては、チタン(Ti),亜鉛(Zn),スズ(Sn),ニオブ(Nb),インジウム(In),イットリウム(Y),ランタン(La),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta),ハフニウム(Hf),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba),カルシウム(Ca),バナジウム(V),タングステン(W)等の金属元素の少なくとも1種以上の金属酸化物半導体がよく、また窒素(N),炭素(C),弗素(F),硫黄(S),塩素(Cl),リン(P)等の非金属元素の1種以上を含有していてもよい。酸化チタン等はいずれも電子エネルギーバンドギャップが可視光のエネルギーより大きい2〜5eVの範囲にあり、好ましい。また、多孔質の半導体層5は、電子エネルギー準位においてその伝導帯が色素4の伝導帯よりも低いn型半導体がよい。
多孔質の半導体層5は、粒状体、または針状体,チューブ状体,柱状体等の線状体、またはこれら種々の線状体が集合してなるものであって、多孔質体であることにより、色素4を吸着する表面積が増え、変換効率を高めることができる。多孔質の半導体層5は、空孔率が20〜80%、より好適には40〜60%である多孔質体であるのがよい。多孔質化により光作用極層としての表面積を稠密体に比べて1000倍以上に高めることができ、光吸収と光電変換と電子伝導を効率よく行うことができる。
なお、多孔質の半導体層5の空孔率は、ガス吸着測定装置を用いて窒素ガス吸着法によって試料の等温吸着曲線を求め、BJH法,CI法,DH法等によって空孔容積を求め、これと試料の粒子密度から得ることができる。
多孔質の半導体層5の形状は、その表面積が大きくなりかつ電気抵抗が小さい形状がよく、例えば微細粒子もしくは微細線状体からなるのがよい。その平均粒径もしくは平均線径は5〜500nmであるのがよく、より好適には10〜200nmがよい。ここで、平均粒径もしくは平均線径の5〜500nmにおける下限値は、これ未満になると材料の微細化ができず、上限値は、これを超えると導電膜3に対する接合面積が小さくなり光電流が著しく小さくなることによる。
また、多孔質の半導体層5を多孔質体とすることにより、これに色素4を吸着させて成る色素増感型光電変換体としての表面が凹凸状となり、光閉じ込め効果をもたらして、変換効率をより高めることができる。
また、多孔質の半導体層5の厚みは0.1〜50μmがよく、より好適には1〜20μmがよい。ここで、0.1〜50μmにおける下限値は、これより厚みが小さくなると光電変換作用が著しく小さくなって実用に適さず、上限値は、これを超えて厚みが厚くなると光が透過しなくなって、多孔質の半導体層5の内部の全体に光が入射しなくなることによる。
多孔質の半導体層5が酸化チタンからなる場合、以下のようにして形成される。まず、TiO2のアナターゼ粉末にアセチルアセトンを添加した後、脱イオン水とともに混練し、界面活性剤で安定化させた酸化チタンのペーストを作製する。作製したペーストをドクターブレード法やバーコート法等で第1の基板2上の導電膜3上に一定速度で塗布し、大気中で300〜600℃、好適には400〜500℃で、10〜60分、好適には20〜40分加熱処理することにより、多孔質の半導体層5を形成する。この手法は簡便であり、好ましい。
多孔質の半導体層5の低温成長法としては、電析法、泳動電着法、水熱合成法等がよく、電子輸送特性を良くするための後処理としては、マイクロ波処理、CVD法によるプラズマ処理や熱触媒処理等、またUV照射処理等がよい。低温成長法による多孔質の半導体層5としては、電析法による多孔質ZnO層、泳動電着法による多孔質TiO2層等からなるものがよい。
また、多孔質の半導体層5の多孔質体の表面に、TiCl4処理、即ちTiCl4溶液に10時間浸漬し、水洗し、450℃で30分間焼成する処理を施すとよく、電子電導性がよくなって変換効率が高まる。
また、多孔質の半導体層5と導電膜3との間に、n型酸化物半導体から成る極薄の緻密層を挿入するとよく、逆電流が抑制できるので変換効率が高まる。
また、多孔質の半導体層5は、酸化物半導体微粒子の焼結体から成るとともに、酸化物半導体微粒子の平均粒径が導電膜3側より厚み方向に漸次大きくなっていることが好ましく、例えば多孔質の半導体層5が酸化物半導体微粒子の平均粒径が異なる2層の積層体からなるものとするのがよい。具体的には、導電膜3側に平均粒径が小さい酸化物半導体微粒子から成る多孔質の半導体層を形成し、浸透層7側に平均粒径が大きい酸化物半導体微粒子(散乱粒子)から成る多孔質の半導体層を形成することにより、平均粒径が大きい浸透層7側の多孔質の半導体層5において光散乱と光反射の光閉じ込め効果が生じ、変換効率を高めることができる。
より具体的には、平均粒径が小さい酸化物半導体微粒子として、平均粒径が約20nmのものを100wt%(重量%)使用し、平均粒径が大きい酸化物半導体微粒子として、平均粒径が約20nmのものを70wt%及び平均粒径が約180nmのものを30wt%混合して使用すればよい。これらの重量比、平均粒径、それぞれの膜厚を変えることで、最適な光閉じ込め効果が得られる。また、積層数を2層から複数層に増やしたり、これらの境界が生じないように塗布形成したりすることにより、平均粒径を導電膜3側から厚み方向に漸次大きくなるように形成することができる。
<浸透層>
浸透層7は、絶縁体粒子及び酸化物半導体粒子の少なくとも一方を焼成した焼成体から成るのがよい。さらに浸透層7は、酸化アルミニウム粒子及び酸化チタン粒子の少なくとも一方を焼成した焼成体から成るのがよい。
具体的には、浸透層7としては、例えば、酸化アルミニウム等の微粒子等を焼結させた、電解質6の溶液が毛細管現象により浸透可能であるとともに溶液が例えば表面張力によって保持される多孔質体からなる薄膜であるのがよい。図1に示すように、多孔質の半導体層5上に浸透層7を形成する。なお、電解質6の溶液が例えば表面張力によって浸透層7に保持されている状態は、一旦浸透層7に浸透し吸収された電解質6の溶液が外部に漏れないようになっている状態であり、目視による観察によって容易に判別できる。
浸透層7は、電解質6の溶液を含まない状態での表面または破断面の表面の算術平均粗さが多孔質の半導体層5の表面または破断面の表面の算術平均粗さよりも大きいことが好ましく、この場合、浸透層7は、それを構成する微粒子の平均粒径が多孔質の半導体層5の平均粒径より大きいものとなる。その結果、浸透層7内部の空孔が大きくなるため、対極層8に隣接する浸透層7の内部により多くの電解質6が存在することができ、浸透層7に含まれる電解質6による電気抵抗が小さくなり、変換効率を高めることができる。
また、浸透層7は、多孔質の半導体層5と対極層8との間のギャップを狭くかつ一定に保つことができ、従って浸透層7の厚みは均一で、できるだけ薄く、色素4の溶液及び電解質6の溶液を浸透できるよう多孔質であるのがよい。浸透層7の厚みが薄くなるほど、即ち酸化還元反応距離もしくは正孔輸送距離が短くなるほど、変換効率が高くなり、また浸透層7の厚みが均一であるほど、信頼性が高く、大面積の光電変換装置を実現できる。
浸透層7の厚さは、好ましくは0.01〜300μmであり、より好適には0.05〜50μmがよい。0.01μm未満では、浸透層7に保持される電解質6の溶液が少なくなるため電解質6の電気抵抗が大きくなり、変換効率が低下し易いものとなる。300μmを超えると、多孔質の半導体層5と対極層8との間のギャップが大きくなるため、電解質6による電気抵抗が大きくなり、変換効率が低下し易いものとなる。
浸透層7が絶縁体粒子からなる場合、その材料としてはAl2O3,SiO2,ZrO2,CaO,SrTiO3,BaTiO3等がよい。特にこれらのうち、Al2O3が、対極層8と多孔質の半導体層5との短絡を防ぐ絶縁性、及び機械的強度(硬度)等の点で優れており、また白色であるため特定の色の光を吸収せず、変換効率の低下を防ぐことができ、好ましい。
また、浸透層7が酸化物半導体粒子からなる場合、その材料としては、TiO2,SnO2,ZnO,CoO,NiO,FeO,Nb2O5,Bi2O3,MoO2,MoS2,Cr2O3,SrCu2O2,WO3,La2O3,Ta2O5,CaO−Al2O3(CaO,Al2O3の複合酸化物),In2O3,Cu2O,CuAlO,CuAlO2,CuGaO2等がよい。特にこれらのうち、TiO2が、色素4を吸着するので変換効率の向上に寄与でき、また半導体であるため対極層8と多孔質の半導体層5との短絡を抑えることができる。
浸透層7がこれらの材料の粒状体、針状体、柱状体等が集合してなるものであって多孔質体であることにより、電解質6の溶液を含有することができ、変換効率を高めることができる。また、浸透層7を成す粒状体、針状体、柱状体等の平均粒径もしくは平均線径は5〜800nmであるのがよく、より好適には10〜400nmがよい。ここで、平均粒径もしくは平均線径の5〜800nmにおける下限値は、これ未満になると材料の微細化ができず、上限値は、これを超えると焼結温度が高くなる、という理由による。
また、浸透層7を多孔質体とすることにより、浸透層7や多孔質の半導体層5の表面、及びこれらの界面が凹凸状となり、光閉じ込め効果をもたらして、変換効率をより高めることができる。
浸透層7の低温成長法としては、電析法、泳動電着法、水熱合成法等がよい。
浸透層7は、表面または破断面の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上であることがよく、より好適には0.1〜1μmであることがよく、さらに好適には0.1〜0.3μmであることがよい。浸透層7の表面または破断面の表面のRaが0.1μm未満では、色素4の溶液や電解質6の溶液が浸透しにくくなる。また、浸透層7の表面または破断面の表面のRaが1μmを超えると、浸透層7と多孔質の半導体層5との密着性が劣化し易くなる。また、Raが1μmを超える場合、そもそも浸透層7の積層形成が困難になる。ここで、Raの定義は、JIS−B−0601及びISO−4287の規定に従う。
なお、浸透層7の表面または破断面の表面のRaは、浸透層7の内部の空孔の大きさにほぼ相当するものであり、Raが0.1μmであれば空孔の大きさもほぼ0.1μmとなる。
浸透層7の表面のRaは、例えば、次のようにして測定すればよい。触針式表面粗さ測定機、例えば、株式会社ミツトヨ製サーフテスト(SJ−400)を用い、浸透層7の表面を測定する。測定の方式及び手順は、JIS−B−0633及びISO−4288に規定される表面形状評価の方式及び手順に従えばよい。測定箇所はスクラッチ等の表面欠陥を避けることとする。浸透層7の表面が等方性の場合、測定方向は任意に設定してよい。測定距離、すなわち評価長さはRaの値に応じて適切に設定すればよい。具体例として、例えば、Raが0.02μmより大きくかつ0.1μm以下である場合、評価長さは1.25mmとすればよい。また、この場合、粗さ曲線用カットオフ値は0.25mmとすればよい。また、浸透層7の破断面の表面の算術平均粗さRaは、浸透層7の表面と同様に測定すればよい。
また、浸透層7は、例えば、次のようにして破断すればよい。まず、第1の基板2の多孔質の半導体層5が形成された主面と反対側の主面の表面に、ダイヤモンドカッターを用いてキズをつける。この際に加える力は、目視でキズが確認できる程度に強く、かつ、ガラス粉が出ない程度に弱くすればよい。次に、プライヤーを用いて積層体を挟み込み、第1の基板2につけたキズに沿って浸透層7を含む積層体を破断する。
また、第1の基板2にキズをつけた後の破断は、次のようにしてもよい。まず、ブロック状の台の上に、第1の基板2を上側にして積層体を置く。この際、ブロック状の台の縁と第1の基板2につけたキズを並行にし、また、第1の基板2につけたキズがブロック状の台の縁から1mm程度離れて空中に保持されるようにして積層体を固定する。次に、積層体よりも長い幅をもつ板状の治具、例えば、ステンレス板等を、第1の基板2につけたキズの両側に載置する。次に、ブロック状の台の上の積層体の部分に載置した治具を固定しながら、積層体の空中に保持された部分に載置した治具を下向きに押下することにより、浸透層7を含む積層体を破断する。なお、浸透層7の破断の際には、破断面を直線的にすると破断面の観察が容易になってよい。
また、浸透層7は、空孔率が20〜80%、より好適には40〜60%の多孔質体であるのがよい。20%未満では、色素4の溶液や電解質6の溶液が浸透しにくくなり、80%を超えると、浸透層7と多孔質の半導体層5との密着性が劣化し易くなる。
なお、浸透層7の空孔率は、ガス吸着測定装置を用いて窒素ガス吸着法によって試料の等温吸着曲線を求め、BJH法,CI法,DH法等によって空孔容積を求め、これと試料の粒子密度から得ることができる。
また、浸透層7の空孔率を上記の範囲内で大きくすると、色素4の溶液の浸透が早くなり、確実に多孔質の半導体層5に色素を吸着させることができ、さらに、電解質6の抵抗が小さくなり、変換効率をより高めることができる。空孔率の大きな浸透層7を形成する具体例として、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の微粒子(平均粒径31nm)とポリエチレングリコール(分子量約2万)とを混合したペーストを焼成すればよい。またこの場合、酸化アルミニウムの微粒子(平均粒径31nm)の70wt(重量)%に、平均粒径がより大きな酸化チタン(TiO2)の微粒子(平均粒径180nm)の30wt%を混合して使用してもよい。これらの重量比、平均粒径、材料を調整することで、より大きな空孔率を得ることもできる。
また浸透層7は、表面または破断面の表面の算術平均粗さRa(0.1μm以上)が多孔質の半導体層5の表面または破断面の表面の算術平均粗さRa(10〜40nm程度)よりも大きいことがよい。この場合、浸透層7は、それを構成する微粒子の平均粒径が多孔質の半導体層5の平均粒径より大きいものとなり、その場合浸透層7内部の空孔が大きくなるため、対極層8に隣接する浸透層7の内部により多くの電解質6が存在することができ、浸透層7に含まれる電解質6による電気抵抗が小さくなり、変換効率を高めることができる。
また、浸透層7に浸透した電解質6の溶液は、例えば表面張力によって浸透層7に保持されるものとする。電解質6の溶液を浸透層7に保持させるためには、浸透層7の空孔径を、電解質6の溶液の表面張力及び密度、電解質6の溶液と浸透層7との接触角に応じた適宜の値とすればよい。具体例として、例えば、炭酸エチレン,アセトニトリルまたはメトキシプロピオニトリル等に、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム,ヨウ化リチウム,ヨウ素等を混合して調製した電解質6の溶液を用い、酸化アルミニウムまたは酸化チタンを用いて浸透層7を形成する場合、浸透層7の空孔径を1μm以下とすれば、電解質6の溶液を浸透層7に保持させることができる。
酸化アルミニウムからなる浸透層7は以下のようにして形成される。まず、Al2O3の微粉末にアセチルアセトンを添加した後、脱イオン水とともに混練し、界面活性剤で安定化させた後、ポリエチレングリコールを添加して酸化アルミニウムのペーストを作製する。このペーストをドクターブレード法やバーコート法等で多孔質の半導体層5上に一定速度で塗布し、大気中で300〜600℃、好適には400〜500℃で、10〜60分、好適には20〜40分加熱処理することにより、浸透層7を形成する。
<対極層>
対極層8としては、浸透層7側より、触媒層と導電膜(これらの層は図示していない)の順で積層する構成がよい。
この触媒層としては、触媒機能を有する白金,カーボン等の極薄膜がよい。他に、金(Au),パラジウム(Pd),アルミニウム(Al)等の極薄膜を電析したものが挙げられる。また、これらの材料の微粒子等から成る多孔質膜、例えばカーボン微粒子の多孔質膜等が、対極層8の表面積が増え、気孔部に電解質6の溶液を含有させることができ、変換効率を高めることができる。触媒層は薄くて済むので、透光性とすることもできる。
導電膜は、触媒層の導電性を補完するものである。この導電膜としては、非透光性、透光性のいずれの層も用途に応じて利用できる。非透光性の導電膜の材料としては、チタン,ステンレススチール,アルミニウム,銀,銅,金,ニッケル,モリブデン等がよい。また、カーボンや金属の微粒子や微細線を含浸させた樹脂、導電性樹脂等でもよい。光反射性の非透光性の導電膜の材料としては、アルミニウム,銀,銅,ニッケル,チタン,ステンレススチール等の光沢のある金属薄膜を単独で形成したもの、あるいは電解質6による腐食防止のために導電膜3と同じ材料から成る不純物ドープの金属酸化物から成る膜を光沢のある金属薄膜上に被覆したものがよい。また他の導電膜として、Ti層,Al層,Ti層を順次積層し、密着性、耐食性、光反射性を高めた多層積層体等からなるのがよい。これらの導電膜は、真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法,電解析出法等で形成できる。
透光性の導電膜としては、低温成膜法のスパッタリング法や低温スプレー熱分解法で形成した、スズドープ酸化インジウム膜(ITO膜),不純物ドープの酸化インジウム膜(In2O3膜),不純物ドープの酸化スズ膜(SnO2膜),不純物ドープの酸化亜鉛膜(ZnO膜)等がよい。また、熱CVD法で形成したフッ素ドープの二酸化スズ膜(SnO2:F膜)等は低コストでよい。また、Ti層,ITO層,Ti層を順次積層した密着性を高めた積層体でもよい。他には、簡便な溶液成長法で形成した不純物ドープの酸化亜鉛膜(ZnO膜)等でもよい。
これらの膜の他の成膜法として、真空蒸着法,イオンプレーティング法,ディップコート法,ゾルゲル法等がある。これらの成膜法によって入射光の波長オーダーの表面凹凸を導電膜に形成すると光閉じ込め効果があってなおよい。また、真空蒸着法やスパッタリング法等で形成した透光性を有するAu,Pd,Al等の薄い金属膜でもよい。透光性の導電膜の厚みは、高い導電性と高い光透過性の点で0.001〜10μmがよく、より好ましくは0.05〜2.0μmがよい。0.001μm未満では、導電膜の抵抗が増大し、10μmを超えると、導電膜の光透過性が低下する。
ここで、対極層8及び第2の基板9が透光性を有する場合、光電変換装置の主面のどちらの面からでも光を入射させることができるので、光電変換装置の両主面側から光を入射させて変換効率を高めることができる。
<第2の基板>
第2の基板9は、第1の基板2が非透光性である場合には透光性である必要があり、第1の基板2が透光性である場合には非透光性でも透光性でも構わない。第2の基板9の材料としては、白板ガラス,ソーダガラス,硼珪酸ガラス等のガラス、セラミックス等の無機材料、有機無機ハイブリッド材料等がよい。また、チタン,ステンレススチール,アルミニウム,銀,銅,ニッケル等からなる金属シートからなるもの、カーボン等からなるシートからなるもの、または金属基板等の表面に電解質6による腐食防止のためにチタン層,ステンレススチール層,金属酸化物層等を被覆したものがよい。第2の基板9は光電変換装置内に充分な量の電解質6を保持する目的で設置するため、その厚みは機械的強度及びコストの点で0.5〜50mm、好ましくは1〜20mmがよい。第2の基板9の厚みが0.5mm未満では、機械的強度が確保できず、50mmを超えるとコストが増大する。
<封止部材>
図1において、封止部材10は、第1及び第2の基板2,9の周縁部を接合して、電解質6の溶液が外部に漏れるのを防ぐとともに、機械的強度を補強する、また積層体を保護するとともに外部環境と直接接して光電変換機能が劣化するのを防ぐために設ける。
封止部材10の材料としては、ガラスまたはセラミックスを主成分とするガラスフリット等が封止性及び耐候性に優れ特によい。
封止部材10は第1及び第2の基板2,9の周縁部を接合するが、その周縁部の周りに他の基板等に接合するための接合代、第1及び第2の基板2,9の面積を調整するための切断代等の余分な領域があってもよい。
封止部材10の厚みは0.1μm〜6mm、好ましくは1μm〜4mmがよい。また、遮熱性、耐熱性、低汚染性、抗菌性、防かび性、意匠性、耐疵付き、耐摩耗性、帯電防止性、遠赤外線放射性、耐酸性、耐食性、環境対応性等を封止部材10に付与することにより、信頼性や商品性をより高めることができる。
<色素>
増感色素である色素4としては、例えば、ルテニウム−トリス,ルテニウム−ビス,オスミウム−トリス,オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、多核錯体、またはルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、またはフタロシアニンやポルフィリン、多環芳香族化合物、ローダミンB等のキサンテン系色素であることが好ましい。
多孔質の半導体層5に色素4を吸着させるためには、色素4に少なくとも1個以上のカルボキシル基,スルホニル基,ヒドロキサム酸基,アルコキシ基,アリール基,ホスホリル基を置換基として有することが有効である。ここで、置換基は色素4自体を多孔質の半導体層5に強固に化学吸着させることができ、励起状態の色素4から多孔質の半導体層5へ容易に電荷移動できるものであればよい。
多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる方法としては、例えば第1の基板2上の導電膜3上に形成された多孔質の半導体層5を、色素4を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。
本発明の製造方法は、好ましくはその工程中において、多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる。即ち、第1の基板2上に、絶縁部分11を設けた導電膜3、多孔質の半導体層5、浸透層7及び対極層8が順次積層された積層体を形成し、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させ、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させる。
このとき、例えば、積層体の側面に封止部材10を貫通する複数個の貫通孔13を設け、次に貫通孔13を通して色素4の溶液を注入し、循環させ、次に浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させ、さらに貫通孔13を通して電解質6の溶液を注入し、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させ、次に貫通孔13を塞ぐ。
または、第1の基板2及び導電膜3を貫通する複数個の貫通孔13を設け、次に貫通孔13を通して色素4の溶液を注入し、循環させ、次に浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させ、さらに貫通孔13を通して電解質6の溶液を注入し、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させ、次に貫通孔13を塞ぐ。
または、基板9を貫通する複数個の貫通孔13を設け、次に貫通孔13を通して色素4の溶液を注入し、循環させ、次に浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させ、さらに貫通孔13を通して電解質6の溶液を注入し、次に積層体の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に電解質6の溶液を浸透させ、次に貫通孔13を塞ぐ。
色素4を溶解させる溶液の溶媒は、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物等を1種または2種以上混合したものが挙げられる。溶液中の色素4の濃度は5×10−5〜2×10−3mol/l(l(リットル):1000cm3)程度が好ましい。
多孔質の半導体層5に色素4を吸着させる際、溶液及び雰囲気の温度の条件は特に限定するものではなく、例えば、大気圧下もしくは真空中、室温もしくは第1の基板2の加熱等の条件が挙げられる。色素4の吸着にかける時間は色素4及び溶液の種類、溶液の濃度、溶液の循環量等により適宜調整することができる。これにより、色素4を多孔質の半導体層5に吸着させることができる。
<電解質>
電解質6としては、第4級アンモニウム塩やLi塩等を用いる。電解質6溶液の組成としては、例えば炭酸エチレン,アセトニトリルまたはメトキシプロピオニトリル等の溶媒に、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム,ヨウ化リチウム,ヨウ素等の溶質を混合し調製したものを用いることができる。また、電解質6として、上記溶媒に上記溶質を混合した電解質溶液に化学ゲルもしくは物理ゲル化剤を混合した電解質溶液を用いることが好ましく、化学ゲルの場合、液相体から成る化学ゲルを光電変換装置内に注入して浸透させ、その後加熱等することによって電解質溶液をゲル電解質に相変化させることができる。
本発明においては、積層体上に電解質6の第2の領域6bが形成されているが、第2の領域6bの厚みは0.1〜100μm程度である。
また、本発明の光電変換装置は、その用途は太陽電池に限定されるものではなく、光電変換機能を有するものであれば適用でき、各種受光素子や光センサ等にも適用可能である。
上述した光電変換装置を発電手段として用い、この発電手段からの発電電力を負荷へ供給するように成した光発電装置とすることができる。即ち、上述した光電変換装置を1つ用いるか、または複数用いる場合には直列、並列または直並列に接続したものを発電手段として用い、この発電手段から直接直流負荷へ発電電力を供給するようにしてもよい。また、上述した光発電手段をインバータ等の電力変換手段を介して発電電力を適当な交流電力に変換した後で、この発電電力を商用電源系統や各種の電気機器等の交流負荷に供給することが可能な発電装置としてもよい。さらに、このような発電装置を日当たりのよい建物に設置する等して、各種態様の太陽光発電システム等の光発電装置として利用することもでき、これにより、高効率で耐久性のある光発電装置を提供することができる。
本発明の図4の構成の光電変換装置1dの実施例3について、以下に説明する。
まず、導電膜3が形成された絶縁性の第1の基板2として、市販のフッ素ドープ酸化スズから成る透明導電膜(導電膜3)付きのガラス基板(縦5cm×横5cm)を用いた。
次に、この導電膜3の一部を600番の紙やすりによって除去して絶縁部分11を形成し、導電膜3を2つの領域に分割した。
次に、この導電膜3上に二酸化チタンから成る多孔質の半導体層5を、実施例1と同様に形成した。
次に、この多孔質の半導体層5上に酸化アルミニウムから成る浸透層7を実施例1と同様に形成した。
この浸透層7上に、スパッタリング装置を用いて、Ptターゲットを用いて、対極層8としての白金層をシート抵抗で0.6Ω/□(スクエア)となるよう、厚み約200nmで堆積させ、積層体を作製した。また、適当なパターンを用いて導電体12としての白金層を積層体の側面に同時に堆積し、導電膜3の積層体が形成されていない領域と対極層8が電気的に接続されるようにした。
次に、この積層体の一部を機械的に除去して浸透層7の側面を露出させた。次に、実施例1と同じガラスフリットペーストを、ディスペンサーにより透明導電膜付きのガラス基板の周縁部に塗布した。
次に、電着ダイヤモンドバーを軸回りに高速回転させて、第2の基板9としての市販のソーダライムガラス基板(縦4cm×横4cm)を研削し、ソーダライムガラス基板を貫通する2つの貫通孔13を形成した。
次に、透明導電膜付きのガラス基板に塗布したガラスペースト上に、積層体上に第2の領域6aとなる間隙(20μm)を介して貫通孔13を形成したソーダライムガラス基板を設置した。
次に、実施例1と同様に熱処理を行い、透明導電膜付きのガラス基板とソーダライムガラス基板の周縁部を接合した。
次に、フッ素ドープ酸化スズから成る透明導電膜の積層体の外部に露出した部位に、超音波を用いて半田付けして取り出し電極を形成した。
次に、チュービングポンプを用いて貫通孔13を通して実施例1と同じ色素4溶液を光電変換装置1d内に注入し、室温で毎分5mlの流量で色素4溶液を5時間循環させ、多孔質の半導体層5の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させた。
次に、浸透層7を通して実施例1と同じ電解質6の溶液を多孔質の半導体層5に浸透させた。次に、貫通孔13の内部に紫外線硬化タイプのアクリル系樹脂を充填した上で、ソーダライムガラス基板(縦1.5cm×横1.5cm、図示はしていない)を貫通孔13を外部から塞ぐように重ねて、アクリル系樹脂に紫外線を照射し、貫通孔封止部14を形成した。
こうして得られた光電変換装置1dの光電変換特性を評価したところ、AM1.5、100mW/cm2で変換効率4.8%を示した。この光電変換装置1dを暗中85℃の環境下で高温放置試験を行ったところ、100時間経過後も試験前の5割を超える光電変換効率を維持した。
以上のように、本実施例3においては、高い変換効率が得られ、さらに高い耐久性を示すことを確認できた。
[比較例1]
比較例1の光電変換装置について、以下に説明する。
まず、導電膜3が形成された絶縁性の第1の基板として、市販のフッ素ドープ酸化スズから成る透明導電膜(導電膜3)付きのガラス基板(縦5cm×横5cm)を用いた。
次に、透明導電膜付きのガラス基板の導電膜3と反対側の面より、電着ダイヤモンドバーを軸回りに高速回転させて研削し、ガラス基板及び導電膜3を貫通する2つの貫通孔13を形成した。
次に、この導電膜3の一部を600番の紙やすりにて除去して絶縁部分11を形成し、導電膜3を2つの領域に分割した。
次に、この導電膜3上に二酸化チタンから成る多孔質の半導体層5を、実施例1と同様に形成した。
次に、この多孔質の半導体層5上に酸化アルミニウムから成る浸透層7を実施例1と同様に形成した。
この浸透層7上に、スパッタリング装置を用いて、Ptターゲットを用いて、対極層8としての白金層をシート抵抗で0.6Ω/□(スクエア)となるよう、厚み約200nmで堆積させ、積層体を形成した。また、適当なパターンを用いて導電体12としての白金層を積層体の側面に同時に堆積し、導電膜3の積層体が形成されていない領域と対極層8とが電気的に接続されるようにした。
次に、この積層体の一部を機械的に除去して浸透層7の側面を露出させた。次に、オレフィン系樹脂からなるシートをくり抜いて、封止部材10となる積層体の周囲を囲うような大きさの枠状体を形成し、その枠状体を透明導電膜付きのガラス基板の周縁部上に設置した。
次に、枠状体のシート上に、積層体上に第2の領域6bとなる間隙(20μm)を介して、第2の基板9としての市販のソーダライムガラス基板(縦4cm×横4cm)を設置した。
次に、ソーダライムガラス基板に上方より圧力をかけながら加熱することによって、枠状体のシートを加熱圧着し、透明導電膜付きのガラス基板とソーダライムガラス基板の周縁部を接合した。
次に、フッ素ドープ酸化スズから成る透明導電膜の積層体の外部に露出した部位に、超音波を用いて半田付けして取り出し電極を形成した。
次に、チュービングポンプを用いて貫通孔13を通して実施例1と同じ色素4溶液を注入し、室温で毎分5mlの流量で色素4溶液を5時間循環させ、多孔質の半導体層5の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させた。
次に、浸透層7を通して実施例1と同じ電解質の溶液を多孔質の半導体層5に浸透させた。次に、貫通孔13の内部に紫外線硬化タイプのアクリル系樹脂を充填した上で、ソーダライムガラス基板(縦1.5cm×横1.5cm、図示はしていない)を貫通孔13を外部から塞ぐように重ねて、アクリル系樹脂に紫外線を照射して貫通孔封止部14を形成した。
こうして得られた光電変換装置の光電変換特性を評価したところ、AM1.5、100mW/cm2で変換効率4.6%を示した。この光電変換装置を暗中85℃の環境下で高温放置試験を行ったところ、25時間経過時点で電解質が蒸発し、光電変換が行えなくなった。
以上のように、本比較例1においては、高い耐久性を有する光電変換装置を作製することはできなかった。
[比較例2]
本発明の光電変換装置の比較例2について、以下に説明する。
まず、導電膜3が形成された絶縁性の第1の基板2として、市販のフッ素ドープ酸化スズから成る透明導電膜(導電膜3)付きのガラス基板(縦5cm×横5cm)を用いた。
次に、透明導電膜付きのガラス基板の導電膜3と反対側の面より、電着ダイヤモンドバーを軸回りに高速回転させて研削し、ガラス基板及び導電膜3を貫通する2つの貫通孔13を形成した。
次に、この導電膜3の一部を600番の紙やすりにて除去して絶縁部分11を形成し、導電膜3を2つの領域に分割した。
次に、この導電膜3上に二酸化チタンから成る多孔質の半導体層5を、実施例1と同様に形成した。
次に、この多孔質の半導体層5上に酸化アルミニウムから成る浸透層7を実施例1と同様に形成した。
この浸透層上に、スパッタリング装置を用いて、Ptターゲットを用いて、対極層8としての白金層をシート抵抗で0.6Ω/□(スクエア)となるよう、厚み約200nmで堆積させ、積層体を作製した。また、適当なパターンを用いて導電体12としての白金層を積層体の側面に同時に堆積し、導電膜3の積層体が形成されていない領域と対極層8とが電気的に接続されるようにした。
次に、この積層体の一部を機械的に除去して浸透層7の側面を露出させた。次に、熱硬化タイプのエポキシ系樹脂をディスペンサーにより透明導電膜付きのガラス基板の周縁部に塗布した。
次に、塗布したエポキシ系樹脂上に、積層体上に第2の領域6bとなる間隙(20μm)を介して第2の基板9となる市販のソーダライムガラス基板(縦4cm×横4cm)を設置した。次に、空気中で80℃で10時間保持して仮硬化を行った後、125℃で20分間保持した後、150℃で1時間保持して本硬化を行い、透明導電膜付きのガラス基板とソーダライムガラス基板の周縁部を接合した。
次に、フッ素ドープ酸化スズから成る透明導電膜の積層体の外部に露出した部位に、超音波を用いて半田付けして取り出し電極を形成した。
次に、チュービングポンプを用いて貫通孔13を通して実施例1と同じ色素4溶液を光電変換装置内に注入し、室温で毎分5mlの流量で色素4溶液を5時間循環させ、多孔質の半導体層5の側面及び浸透層7を通して多孔質の半導体層5に色素4を吸着させた。
次に、浸透層7を通して実施例1と同じ電解質6の溶液を多孔質の半導体層5に浸透させた。次に、貫通孔13の内部に紫外線硬化タイプのアクリル系樹脂を充填した上で、ソーダライムガラス基板(縦1.5cm×横1.5cm、図示はしていない)を貫通孔13を外部から塞ぐように重ねて、紫外線を照射し、貫通孔封止部14を形成した。
こうして得られた光電変換装置の光電変換特性を評価したところ、AM1.5、100mW/cm2で変換効率4.2%を示した。この光電変換装置を暗中85℃の環境下で高温放置試験を行ったところ、25時間経過時点で光電変換効率が試験前の5割に満たなくなり、100時間経過後には光電変換効率が試験前の1割を下回った。
以上のように、本比較例2においては、高い耐久性を有する光電変換装置を作製することはできなかった。