(第1の実施形態)
図1A〜図1Cは、本発明の第1の実施形態に係るマスキングテープの貼付装置を示す図である。図1Aは貼付装置の上面図であり、図1Bは貼付装置の側面図であり、図1Cは貼付装置の正面図である。図1A〜図1Cに示す貼付装置は、塗布液を塗布する前の基板にマスキングテープを貼り付けるとともに、塗布後の基板からマスキングテープを剥離するものである。なお、本実施形態では、マスキングテープを剥離する剥離装置と貼付装置とが一体として構成される例を説明するが、貼付装置は剥離装置と別体として構成されてもよい。
貼付装置は、テーブル1、テーブル移動機構2、第1レール3、貼付ユニット4、剥離ユニット5、ユニット移動機構6、第2レール7、および支持部材8を備える。マスキングテープの貼付および剥離を行う対象となる基板は、テーブル1の上面(載置面)に載置される。テーブル1の載置面はXY平面と平行である。テーブル1は、その下面がテーブル移動機構2の上部に固着される。テーブル移動機構2は、X軸方向に延びる第1レール3上に設置され、第1レール3に沿って滑動可能である。これによって、テーブル移動機構2は、テーブル1をX軸方向に平行移動させることができる。また、テーブル移動機構2は、テーブル1の中心であるZ軸を中心に回転可能であり、Z軸を中心にテーブル1を回転させることができる。
一方、支持部材8は、テーブル1の移動可能領域の上方で2本の第2レール7を支持する。各第2レール7は、Y軸方向に延びる向きに支持される。支持部材8および2本の第2レール7からなる組は2組設けられる。ユニット移動機構6は、第2レール7に沿って滑動可能なように4本(2組)の第2レール7に接続される。これによって、ユニット移動機構6はY軸方向に平行移動することが可能である。貼付ユニット4および剥離ユニット5は、ユニット移動機構6に固着される。図1A〜図1Cでは、ユニット移動機構6に対してY軸負方向側に貼付ユニット4が固着され、ユニット移動機構6に対してY軸正方向側に剥離ユニット5が固着される。貼付ユニット4および剥離ユニット5は、それらの下面がテーブル1の上面よりも高い位置(Z軸に関して正方向の位置)に配置される。以上によって、ユニット移動機構6は、テーブル1の移動可能領域の上方において貼付ユニット4および剥離ユニット5をY軸方向に移動させることが可能である。
図2Aは、貼付ユニット4の内部構成を模式的に示す図で、図1AにおいてY軸正方向視の図である。図2Aに示すように、貼付ユニット4は、筐体10、供給リール11、回収リール12、ガイドローラ13〜15、可動ローラ16、調整ローラ17、テープ分離部材18、エアシリンダ19、可動部材20、切断部21、切込部27、および押し当て台28を備える。貼付ユニット4は、基板にマスキングテープ24を貼付するものである。
図2Aに示す筐体10の内部において、供給リール11、回収リール12、各ガイドローラ13〜15、および調整ローラ17は、筐体10によってその回転軸が支持される。マスキングテープ24は、供給リール11に巻き付けられて収納されている。なお、本実施形態では、供給リール11は、マスキングテープ24とベーステープ25とが貼り合わされて1本のテープとした状態で収納している。つまり、供給リール11に巻き付けられているテープは、マスキングテープ24とベーステープ25との2層からなる構成である。供給リール11に巻き付けられているテープは、ガイドローラ13〜15、テープ分離部材18の先端、および調整ローラ17を順に通って回収リール12に巻き付けられる。
図2Aにおいて、テープ分離部材18は、筐体10の下面に形成された開口部26付近に配置される。切込部27は、ガイドローラ15とテープ分離部材18との間に配置される。切込部27は、ベーステープ25を所定の形状に切り抜くための切り込みを入れる刃を有している。切込部27は、ベーステープ25の面に対して略垂直な方向に可動である。押し当て台28は、各テープ24および25を挟んで切込部27と対向する位置に配置される。なお、切込部27は、テープ分離部材18の先端部よりも上流側においてベーステープ25に切り込みを入れることができればよく、例えばガイドローラ14とガイドローラ15との間に配置されてもよいし、切断部21とテープ分離部材18の先端部との間に配置されてもよい。
図2Bは、切込部27によって切り込みが入れられたベーステープ25を示す図である。本実施形態では、切込部27は、ベーステープ25の端に接しない四角形状(図2Bの点線)に切り込みを入れる。これによって、後述する動作によりベーステープ25がマスキングテープ24から剥離される際、切り込みが入れられた領域内の部分(切込部分)29はマスキングテープ24に接着されたまま剥離されずに残ることとなる。なお、切込部27による切り込みの形状はどのような形状であってもよい。ただし、切込部27は、ベーステープ25が切断されてしまわないように切り込みを入れることが好ましい。ベーステープ25が切断されてしまうと、回収リール12によってベーステープ25を回収できなくなるからである。
図2Aの説明に戻り、切断部21は、マスキングテープ24を切断するための切断刃22を有しており、ガイドローラ15とテープ分離部材18の先端との間に配置される。切断部21は、マスキングテープ24に対して略垂直な方向に可動である。
可動ローラ16は、テープ分離部材18の先端近傍に配置される。可動部材20は、その一端で可動ローラ16の回転軸を支持する。可動部材20の他端は、伸縮動作を行うエアシリンダ19に接続される。可動部材20の支点23は筐体10に固定されており、可動部材20は支点23を中心に回転可能に支持される。これらのエアシリンダ19および可動部材20によって、エアシリンダ19の伸縮動作に応じて可動ローラ16を上下方向に移動させる(正確には、支点23を中心とした円弧上を移動させる)ことができる(図2Aに示す矢印参照。)。なお、可動ローラ16は、筐体10の下面よりも下方に突出した位置まで移動することが可能である。詳細は後述するが、可動ローラ16は、マスキングテープ24を基板に貼付するために用いられる。すなわち、以下に説明する第1〜第5の実施形態においては、可動ローラ16が請求項に記載の貼付手段に相当する。
図3は、剥離ユニット5の内部構成を模式的に示す図で、貼付ユニット4と同様に図1AにおいてY軸正方向視の図である。図3に示すように、剥離ユニット5は、筐体30、供給リール31、回収リール32、ガイドローラ33〜35、調整ローラ36、可動ローラ37、エアシリンダ38、および可動部材39を備える。剥離ユニット5は、基板に貼付されたマスキングテープを剥離するものである。
図3に示す筐体30の内部において、回収リール32、供給リール31、各ガイドローラ33〜35、および調整ローラ36は、筐体30によってその回転軸が支持される。剥離テープ41は、供給リール31に巻き付けられて収納されている。剥離テープ41は、基板に貼り付けられたマスキングテープ24にその粘着面を接着することによってマスキングテープ24を基板から剥離するために用いられる。なお、マスキングテープ24を完全に覆うことができるように、剥離テープ41の幅はマスキングテープ24の幅よりも広い。また、剥離テープ41は、上述したマスキングテープ24とは異なり、他のテープに貼り付けられていない1層の構成である。剥離テープ41は、ガイドローラ33および34、可動ローラ37、ガイドローラ35、および調整ローラ36を順に通って回収リール32に巻き付けられる。
また、可動ローラ37は、筐体30の下面に形成された開口部42付近に配置される。剥離テープ41は、可動ローラ37によって、粘着面がマスキングテープの方向を向くように案内される。可動部材39は、その一端で可動ローラ37の回転軸を支持する。可動部材39の他端は、伸縮動作を行うエアシリンダ38に接続される。可動部材39の支点40は筐体30に固定されており、可動部材39は支点40を中心に回転可能に支持される。これらのエアシリンダ38および可動部材39によって、エアシリンダ38の伸縮動作に応じて可動ローラ37を上下方向に移動させる(正確には、支点40を中心とした円弧上を移動させる)ことができる(図3に示す矢印参照。)。なお、可動ローラ37は、筐体30の下面よりも下方に突出した位置まで移動することが可能である。
なお、図3においては、供給リール31から回収リール32までの全区間で剥離テープ41が張設されていると、可動ローラ37が上下方向に移動することによって、剥離テープ41に余計な力が加えられたり剥離テープ41がたるんだりすることがある。したがって、剥離ユニット5は、供給リール31から供給された剥離テープ41(供給リール31および回収リール32に巻き取られていない部分の剥離テープ41)の長さを調節する機構をさらに備えていてもよい。具体的には、ガイドローラ33〜35または調整ローラ36を、剥離テープ41に加えられる張力に応じて(換言すれば、可動ローラ37の移動に応じて)移動するようにしてもよい。これによって、供給リール31および回収リール32に巻き取られていない部分の剥離テープ41の長さを一定とすることができ、剥離テープ41に余計な力が加えられたり剥離テープ41がたるんだりすることを防止することができる。
次に、以上のように構成される貼付装置が有機EL(Electro Luminescence)表示装置の製造工程において用いられる場合を例として貼付装置の動作を説明する。有機EL表示装置を製造する際、基板(ガラス基板)に対して正孔輸送材料や有機EL材料といった塗布液が塗布される。ここで、塗布が不要な基板領域に塗布液が塗布されることを防止するために、マスキングテープを基板に貼り付ける工程(貼付工程)が行われる。次に、マスキングテープが貼り付けられた基板に対して塗布液を塗布する工程(塗布工程)が行われる。さらに、塗布工程が完了した基板からマスキングテープを剥離する工程(剥離工程)が行われる。貼付装置は、上記貼付工程および剥離工程において用いられる。
図4A〜図4Cを用いて、有機EL表示装置の製造工程の概要を説明する。図4Aは、貼付工程が施された基板を示す図である。本実施形態における貼付工程においては、貼付装置は2本のマスキングテープ24を基板50に貼り付ける。図4Aに示すように、1本のマスキングテープ24は、略正方形の基板50の一辺から所定長さ離れた位置に当該一辺と平行に貼り付けられる。もう1本のマスキングテープは、当該一辺に対向する辺から所定長さ離れた位置に当該対向する辺と平行に貼り付けられる。なお、マスキングテープ24を基板に貼り付ける際の貼付装置の具体的な動作については後述する(図6A〜図6D参照)。貼付工程が完了した基板は、図示しない塗布装置に搬送されて塗布工程が施される。
図4Bは、塗布工程が施された基板を示す図である。図4Bにおいて点線で囲まれる斜線領域51は、塗布液が塗布された領域を示す。塗布工程においては、図4Bに示すように、マスキングテープ24が貼り付けられた基板50に対して塗布液が塗布される。塗布方法としては、例えばノズルから塗布液を基板50に向けて吐出する方法が考えられる。図4Bでは、マスキングテープ24に垂直な方向(図4Bにおける上下方向)のストライプ状に塗布液が塗布される。塗布工程が完了した基板50は、貼付装置に搬送されて剥離工程が施される。
図4Cは、剥離工程が施された基板を示す図である。図4Cにおいて斜線で示される領域52〜54は、塗布液が塗布された基板領域を示す。剥離工程においては、塗布液が塗布された後の基板50から貼付装置によってマスキングテープ24が剥離される。なお、マスキングテープ24を基板から剥離する際の貼付装置の具体的な動作については後述する(図8A〜図8D参照)。図4Cに示すように、領域52と領域53との間の基板領域は、マスキングテープ24が貼り付けられていた領域であるので、塗布液が付着していない。領域53と領域54との間の基板領域についても、領域52と領域53との間の基板領域と同様に塗布液が付着していない。本貼付装置は、以上のようにマスキングテープを用いることによって、塗布不要な基板領域に塗布液が付着することを防止することができる。なお、図4Cに示す一点鎖線領域55は、1枚の有機EL表示装置として用いられる領域であり、一点鎖線領域55の外側の領域は切断されて破棄される。
なお、有機EL表示装置を製造する際、基板50に対して正孔輸送材料や赤、緑、および青色の有機EL材料といった塗布液が塗布される。図5は、有機EL表示装置の製造工程を示す図である。具体的な製造工程の順序は、基板Pの上面にバンク(壁)を形成した後、本実施形態の貼付装置を用いて各塗布液の塗布工程毎に貼付工程および剥離工程が行われる(図5参照)。例えば、赤色の有機EL材料を基板Pに塗布する際は、塗布工程前にマスキングテープ24が貼り付けられ、塗布工程後にマスキングテープ24を剥離して、ベーク処理が行われる。そして、他の色の有機EL材料についても赤色の有機EL材料の場合と同様に、貼付工程、塗布工程、剥離工程、およびベーク処理工程が行われる。
次に、貼付装置の貼付工程における動作を詳細に説明する。貼付工程においては、まず、貼付装置の動作開始前にテーブル1に基板が載置される。なお、詳細は後述するが、マスキングテープ24はX軸方向と平行に貼り付けられる。したがって、マスキングテープ24を貼り付ける方向が所望の方向となるように、テーブル1上の基板はテーブル移動機構2の回転動作によってその向きが調整される。初期状態において、テーブル1は、例えば図1Aに示す位置のように、2つの支持部材8の間の外側に配置される。初期状態における貼付ユニット4は、2つの支持部材8の間にテーブル1が位置する場合にテーブル1の直上空間となる位置に配置される。
以上に示した初期状態から、まず、ユニット移動機構6により貼付ユニット4を所定位置とした後、テーブル1の移動が開始される。すなわち、テーブル1は、貼付ユニット4に近づく方向(図1AではX軸正方向)に移動する。テーブル1は、マスキングテープ24の先端部分が貼り付けられる基板の位置が可動ローラ16の真下にくる位置まで移動する。さらに、テープの送り動作が開始される。すなわち、貼付ユニット4の供給リール11、回収リール12、および調整ローラ17が回転駆動を開始する。これによって、供給リール11からテープが供給されるとともに、回収リール12にテープが巻き取られて回収される。なお、供給リール11、回収リール12、および調整ローラ17によるテープの送り速度は、テーブル1の移動速度と等しくなるように設定される。
図6A、図6B、図6Cおよび図6Dは、貼付工程の動作時における筐体10の開口部付近の様子を示す図である。なお、図6A〜図6Dにおいては、図面を見やすくする目的で筐体10、エアシリンダ19および可動部材20の記載を省略している。まず、切込部27は、押し当て台28の方へ刃をベーステープ25に食い込ませることによってベーステープ25に切り込みを入れる(図6A)。これによって、ベーステープ25に切込部分29(図6A〜図6Dにおいて斜線で示す)が形成される。ここで、ガイドローラ15からテープ分離部材18へ送られてくるテープは、マスキングテープ24およびベーステープ25の2層からなる。切込部27は、マスキングテープ24およびベーステープ25のうちでベーステープ25のみを切断する厚さまで刃が食い込むように調整されている。したがって、切込部27によってベーステープ25にのみ切り込みが入れられる。
次に、切込部分29が切断刃22の位置に達すると、切断部21はマスキングテープ24を切断する(図6B)。具体的には、切断部21は、切断刃22をマスキングテープ24へ向けて突出させてマスキングテープ24に食い込ませることによってマスキングテープ24を切断する。なお、切断刃22は、マスキングテープ24およびベーステープ25のうちでマスキングテープ24のみを切断する厚さまで食い込むように調整されている。したがって、切断部21によってマスキングテープ24は切断されるが、ベーステープ25は切断されない。なお、ここでは、切断刃22によるマスキングテープ24の切断部分と、ベーステープ25の切込部分29とが重なるようにマスキングテープ24が切断されるとした。ここで、マスキングテープ24の切断箇所は、切込部分29よりも若干下流側(テープが送られていく側)の位置であってもよい。つまり、切断部21は、切込部分29が切断刃22の位置に達する少し前にマスキングテープ24を切断するようにしてもよい。
マスキングテープ24が切断部21によって切断された後、テープがさらに送られると、マスキングテープ24の切断位置がテープ分離部材18の先端に達する。テープ分離部材18の先端ではベーステープ25が鋭角に折り曲げられるので、マスキングテープ24はベーステープ25から分離される。これによってマスキングテープ24がテープ分離部材18の先端から突出する。このとき、切込部分29は、マスキングテープ24の先端部分に接着されたままになる。したがって、ベーステープ25は、切込部分29が残されたままマスキングテープ24から分離される(図6C)。
可動ローラ16は、マスキングテープ24の先端部分が可動ローラ16の下方に到達したタイミングで、エアシリンダ19の伸縮動作によって下方(Z軸負方向)に移動する(図6Cに示す矢印参照)。可動ローラ16は、基板50の上面付近まで移動することによってマスキングテープ24の先端部分を基板50に接触させる。これによって、マスキングテープ24の先端部分のうち、切込部分29が接着されていない部分は基板50に貼り付けられる。ただし、切込部分29が接着されている部分は基板50と接着しない。したがって、マスキングテープ24の先端部分は、全面が基板50に接着している場合に比べて基板50に対する接着力が低下されている。マスキングテープ24を基板50に接触させると、可動ローラ16は上方に移動して元の位置に戻る。なお、マスキングテープ24の先端を貼り付けるX軸方向の位置は、テーブル1の移動を調整することによって任意の位置に設定することができる。
マスキングテープ24の先端部分が基板50に貼り付けられると、テープの送り速度に等しい速度でテーブル1が移動することによって、続いて供給されるマスキングテープ24が先端部分から順に基板50に貼り付けられていく(図6D)。一方、マスキングテープ24を切断してから所定長さのテープが送られると、切断部21は再度マスキングテープ24を切断する。なお、この所定長さは、基板50に貼り付けるマスキングテープ24の長さである。切断部21による再度の切断が行われた後、テープがさらに送られることによってマスキングテープ24が終端まで基板50に貼り付けられる。なお、可動ローラ16を上下方向に移動させることによって、マスキングテープ24の終端部分を基板50に接触させるようにしてもよい。また、マスキングテープ24の貼り付け動作中、マスキングテープ24の先端部分から終端部分まで可動ローラ16をマスキングテープ24を介して基板50に押しつけたままとしてもよい。以上の動作によって、1本のマスキングテープ24を基板50に貼り付ける処理が完了する。
図7は、基板50に貼り付けられたマスキングテープ24の先端部付近を基板上方からみた図である。図7に示すように、基板50に対して塗布液が塗布される領域51を確実にマスクするため、切込部分29が当該領域51に含まれないようにマスキングテープ24が貼り付けられる。したがって、切込部分29の長さL2は、基板50の端から領域51までの長さL1よりも小さくなるように、切込部分29を形成する必要がある。
以上の動作によって、X軸方向に沿ってマスキングテープ24を貼り付けることができる。複数本のマスキングテープ24を基板に貼り付ける場合には、貼付装置は上記の動作を複数回繰り返す。なお、マスキングテープ24の先端を貼り付けるX軸方向の位置は、マスキングテープ24を切断するタイミングを調整することによって任意の位置に設定することができる。一方、マスキングテープ24を貼り付けるY軸方向の位置は、ユニット移動機構6によって貼付ユニット4をY軸方向に予め移動させることによって任意の位置に設定することができる。
なお、本実施形態においては、マスキングテープ24を送る速度と等しい速度でテーブル1を移動させるようにしたが、マスキングテープ24を送る速度と等しい速度で貼付ユニット4を移動させるようにしてもよい。
次に、剥離工程における貼付装置の動作を説明する。剥離工程においては、まず、貼付装置の動作開始前にテーブル1に基板50が載置される。基板50は、剥離すべきマスキングテープ24がX軸方向を向くように載置される。テーブル1上の基板50の向きはテーブル移動機構2の回転動作によって調整される。剥離工程におけるテーブル1の初期位置は、貼付工程と同様、2つの支持部材8の間の外側の位置である。また、初期状態において、剥離ユニット5は、基板50から剥離すべきマスキングテープ24の延長線上に可動ローラ37が位置するように配置される。基板50から剥離すべきマスキングテープ24の位置と可動ローラ37の位置とがY軸方向に関して同じになるように剥離ユニット5が配置される。
以上に示した初期状態から、まず、テーブル1の移動が開始される。テーブル1は、剥離ユニット5に近づく方向(図1AではX軸正方向)に移動する。さらに、剥離テープ41の送り動作が開始される。すなわち、剥離ユニット5の供給リール31、回収リール32、および調整ローラ36が回転駆動を開始する。これによって、供給リール31から剥離テープ41が供給されるとともに、回収リール32に剥離テープ41が巻き取られて回収される。なお、供給リール31、回収リール32、および調整ローラ36による剥離テープ41の送り速度は、テーブル1の移動速度と等しくなるように設定される。
図8A、図8B、図8C、および図8Dは、剥離工程における筐体30の開口部付近の様子を示す図である。なお、図8A〜図8Dにおいては、図面を見やすくする目的で筐体30、エアシリンダ38および可動部材39の記載を省略している。
初期状態からテーブル1が移動することによって、基板50に貼り付けられたマスキングテープ24の先端が可動ローラ37の直下位置に達する(図8A)と、可動ローラ37はエアシリンダ38の伸縮動作によって下方(Z軸負方向)に移動する。図3および図8A等に示すように、可動ローラ37は、基板50の方向へ凸となるように剥離テープを張設している。したがって、可動ローラ37が基板50の上面付近まで移動することによって、剥離テープ41の粘着面はマスキングテープ24の先端に接触する(図8B)。これによって、剥離テープ41とマスキングテープ24とが接着される。剥離テープ41をマスキングテープ24に接触させると、可動ローラ37は上方に移動して元の位置に戻る。このとき、マスキングテープ24の先端は剥離テープ41に接着されているので、マスキングテープ24の先端は基板50から剥離される(図8C)。このとき、マスキングテープ24の先端部分には切込部分29が接着されているためにマスキングテープ24と基板50との接着力が弱くなっているので、マスキングテープ24の先端部分を基板50から容易に剥離することができる。
また、可動ローラ37が上下方向に移動している間もテーブル1の移動動作および剥離テープ41の送り動作は継続されている。したがって、剥離テープ41がマスキングテープ24の先端に接着すると、剥離テープ41が続いて供給されることによって、マスキングテープ24は先端から順に剥離テープ41に接着されていく(図8D)。すなわち、剥離テープ41の送り動作によって可動ローラ37が回転すると、マスキングテープ24は先端から順に剥離テープ41に接触するので両者が接着されていく。その後もテーブル1の移動動作および剥離テープ41の送り動作は継続されるので、マスキングテープ24は終端まで剥離テープ41に接着されて基板50から剥離される。剥離テープ41に接着されたマスキングテープ24は、剥離テープの送り動作によって筐体30の内部に回収され、ガイドローラ35および調整ローラ36を通って回収リール32に回収される。なお、マスキングテープ24の上面には塗布物が付着しているが、マスキングテープ24が回収される際、この上面は剥離テープ41によって覆われている。したがって、マスキングテープ24の上面に付着した塗布物が落下して基板に付着するおそれがない。
以上の動作によって、1本のマスキングテープ24を基板50から剥離する処理が完了する。なお、複数本のマスキングテープ24を基板50から剥離する場合には、貼付装置は上記の動作を複数回繰り返す。
以上のように、第1の実施形態によれば、切込部27によってベーステープ25に切り込みを入れておくことによって、マスキングテープ24の先端付近において、マスキングテープ24と基板50との間に切込部分29を付着させておく。これによって、基板50に対するマスキングテープ24の接着力を低下させることができ、マスキングテープ24を容易に剥離することができる。出願人による実験では、マスキングテープ24に切込部分29を付着させない場合には上記剥離ユニット5による剥離率は40%であったのに対して、マスキングテープ24に切込部分29を付着させた場合には、剥離率が100%となった。
以上の第1の実施形態に説明したように、本発明は、マスキングテープの接着面に基板と接着しない非接着部分を形成することによって、基板とマスキングテープとの接着力を低下させることにより、マスキングテープの剥離を容易にするものである。第1の実施形態では、切込部分29が付着された部分を上記非接着部分としたが、非接着部分は、他の方法によって形成されてもよい。以下、本発明の他の実施形態について説明する。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る貼付装置について説明する。第2の実施形態では、マスキングテープと基板との接着力を低下させるための非接着部分を、マスキングテープに当て材を接着させることによって形成する。具体的には、ベーステープの切込部分をマスキングテープに残すことに代えて、当て材をマスキングテープに接着させることによってマスキングテープと基板との接着力を低下させる。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る貼付装置の構成は、貼付ユニット4の構成が異なる他は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第2の実施形態に係る貼付装置は、図1A〜図1Cおよび図3に示す構成を有する。
図9は、第2の実施形態における貼付ユニット4の構成を示す図である。第2の実施形態においては、貼付ユニット4は、切込部27および押し当て台28に代えて、当て材配置部61を備えている。当て材配置部61は、基板上に当て材62を配置するものである。ここでは、当て材配置部61は、ノズル内の気体を吸気することによって、真空吸着によりその先端で当て材62を保持することが可能な吸着ノズルで構成される。また、筐体10内には、当て材62を収納する収納部(図示しない)が設けられる。当て材配置部61は、ノズルの先端が可動ローラ16の下方に位置する状態と、ノズルの先端が収納部に位置する状態との間で移動することが可能である。
また、当て材62は、例えば膜状(板状)の形状である(棒状等、任意の形状でよい)。当て材62の長さは、図7で説明した理由で、基板50の端から塗布液が塗布される領域51までの長さよりも小さくなるように選択される。当て材62の幅は、マスキングテープ24の幅よりもやや大きいことが好ましい。当て材62は、例えばベーステープ25と同様の材質(PET等)で構成されるが、基板と接着しない材質であればよい。
次に、第2の実施形態における貼付工程の動作を説明する。テーブル1および貼付ユニット4の初期状態の配置は、第1の実施形態と同じである。初期状態となった後、テーブル1の移動およびテープの送り動作が開始される。テーブル1は、マスキングテープ24の先端部分が貼り付けられる基板の位置が可動ローラ16の真下にくる位置まで移動する。
図10A、図10B、図10C、および図10Dは、第2の実施形態における貼付工程の動作を示す図である。なお、図10A〜図10Dにおいては、図面を見やすくする目的で筐体10、エアシリンダ19および可動部材20の記載を省略している。まず、切断部21は、切断刃22によってマスキングテープ24を切断する(図10A)。
一方、当て材配置部61は、当て材62を真空吸着により保持することによって収納部から取得し、当て材62を保持している。そして、テーブル1の所定位置が可動ローラ16の下方に到達したタイミングで、当て材配置部61は、可動ローラ16の下方において、保持していた当て材62を離し、当て材62を基板50の所定位置に配置する(図6B)。また、基板50の塗布領域を確実にマスクするため、当て材62は塗布領域に含まれないように配置される。なお、当て材62の基板50上における配置位置は、テーブル1の移動を調整することによって任意の位置に設定することができる。当て材配置部61は、当て材62を配置した後、可動ローラ16が下方へ移動する際の妨げにならない場所へ待避する。なお、基板50に当て材62が配置された後は、当て材62が基板50上で移動してしまうため、基板50をできるだけ移動させない方が好ましい。したがって、ここでは、基板50に当て材62が配置された後、可動ローラ16がマスキングテープ24を当て材62に接着させるまで、テーブル1は停止するものとする。
一方、マスキングテープ24が切断部21によって切断された後、テープが送られると、マスキングテープ24の切断位置(先端部分)がテープ分離部材18の先端に達し、マスキングテープ24はベーステープ25から分離される。これによってマスキングテープ24がテープ分離部材18の先端から突出する。可動ローラ16は、マスキングテープ24の先端部分が可動ローラ16の下方に到達したタイミングで、基板50の上面付近まで下方に移動することによってマスキングテープ24の先端を当て材62に接触させる(図10C)。なお、この時点で、基板50上の当て材62は、可動ローラ16の下方に位置している。この後、テーブル1が移動するとともにテープが送られることによって、可動ローラ16とマスキングテープ24との接触位置は、下に当て材62が配置されていない位置へ移動する。接触位置が当該位置まで移動すると、可動ローラ16は上方に移動して元の位置に戻る(図10D)。その後、テーブル1が移動するとともにテープが送られることによって1本のマスキングテープ24が基板50に貼り付けられるまでの動作は、第1の実施形態と同様である。
以上のように、第2の実施形態によれば、マスキングテープと基板との間に当て材が配置され、当て材が配置された位置を含む線上にマスキングテープが貼り付けられた。これにより、マスキングテープの一部が基板に接着しないようにすることができる。したがって、第1の実施形態と同様、マスキングテープの剥離が容易になる。なお、出願人による実験では、第2の実施形態の方法によって、貼付されたマスキングテープを上記剥離ユニット5によって100%剥離することができた。
なお、上記第2の実施形態においては、基板とマスキングテープとの間に当て材を配置するための構成として吸着ノズルを用いたが、当て材を配置するための構成はどのような構成であってもよい。例えば、当て材配置部は、図11および図12に示すような構成であってもよい。図11および図12は、当て材配置部の他の構成を示す図である。なお、図11および図12においては、図面を見やすくする目的で、基板50、テープ分離部材18、各テープ24および25、当て材62、ならびに、当て材配置部のみを記載し、他の構成の記載を省略している。
図11に示す当て材配置部63は、当て材62を供給する供給管によって構成される。当て材配置部64は、適宜のタイミングで供給管から当て材62を落下させることによって基板50上に当て材62を配置する。
図12に示す当て材配置部65は、切断部66、押し当て台67、および図示しない当て材保持部を備えている。当て材保持部は、適宜のタイミングで当て材62を押し当て台67から突出するように移動させる。切断部66は、下方に移動することによって、押し当て台67から突出した部分の当て材62を切断する。これによって、切断された当て材62が基板50上に落下して配置される。なお、図12では、当て材62を円柱状の部材としているが、当て材62の形状は板状等、どのような形状でも構わない。
また、上記第2の実施形態において、当て材62を基板50に配置することに代えて、当て材62をマスキングテープ24に付着させるようにしてもよい。以下、第2の実施形態の変形例として、当て材をマスキングテープ24に付着させる構成について説明する。
図13Aは、第2の実施形態の変形例における貼付ユニットの構成を示す図である。本変形例では、当て材付着部68は、上下に可動であり、平らな嘴状の部材によって構成される。図13Bは、当て材付着部68の斜視図である。当て材62は、当て材付着部68の上面の先端部分に配置されて保持される。当て材付着部68の上面には供給口68aが設けられる。当て材付着部68の内部には供給管が設けられており、供給管は、当て材の収納部と供給口68aとを接続している。以上の構成により、当て材付着部68は、当て材62を供給管を介して供給口68aから供給することが可能である。供給された当て材62は、当て材付着部68の上面の先端部分に付着される(図14A参照)。
図14Aは、第2の実施形態の変形例における貼付工程の動作を示す図である。本変形例においても第2の実施形態と同様、マスキングテープ24が切断部21によって切断され、テープが送られることによってテープ分離部材18の先端でマスキングテープ24がベーステープ25から分離される。これによってマスキングテープ24がテープ分離部材18の先端から突出する(図14A)。マスキングテープ24がテープ分離部材18の先端から突出すると、当て材付着部68は、保持している当て材62がマスキングテープ24の先端部分の下面(接着面)に当接するように移動する。これによって、当て材62がマスキングテープ24の先端部分に付着される。当て材62をマスキングテープ24に付着させると、当て材付着部68は、可動ローラ16の移動の妨げにならない場所へ待避する。この後、可動ローラ16が下方に移動することによってマスキングテープ24が基板50に当接される。以降、第2の実施形態と同様の動作によってマスキングテープ24が基板50に貼り付けられる。
図14Bは、他の変形例における当て材付着部68の他の構成を示す図である。図14Bに示すように、当て材付着部68は、可動部68bによって上下に可動な構成であってもよい。これによって、当て材付着部68の先端部分のみを上下に移動させることができる(図14Bに示す矢印参照)ので、当て材62をマスキングテープ24の下面に付着させやすくなる。
以上に説明した第1および第2の実施形態は、マスキングテープの接着面の一部に、基板とは異なる所定部材(第1の実施形態では切込部分29。第2の実施形態では当て材62)を接着させることで上記非接着部分を形成した。ここで、他の実施形態では、マスキングテープの接着面の一部が基板に接触しないようにマスキングテープを変形させることによって非接着部分を形成するようにしてもよい。以下、第3および第4の実施形態において詳細を説明する。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る貼付装置について説明する。第3の実施形態では、マスキングテープの一部を加熱して塑性変形させることによって非接着部分を形成し、当該非接着部分が基板と接着しないようにする。これによって、マスキングテープの剥離を容易にする。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態に係る貼付装置の構成は、貼付ユニット4の構成が異なる他は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第3の実施形態に係る貼付装置は、図1A〜図1Cおよび図3に示す構成を有する。
図15は、第3の実施形態における貼付ユニット4の構成を示す図である。第3の実施形態においては、貼付ユニット4は、切込部27および押し当て台28に代えて、変形部71を備えている。変形部71は、凸型の第1部材71aと凹型の第2部材71bとを有し、各部材71aおよび71bによって各テープ24および25を両面から挟んで加熱することによって塑性変形させる。なお、2つの部材71aおよび71bは、通常、各テープ24および25を挟んでいない状態(図15に示す状態)であり、必要に応じて各テープ24および25を挟んで加熱する(図16A参照)。変形部71は、図15ではガイドローラ15とテープ分離部材18との間に配置されるが、切断部21よりも上流側に配置されればよい。
次に、第3の実施形態における貼付工程の動作を説明する。テーブル1および貼付ユニット4の初期状態の配置は、第1の実施形態と同じである。初期状態となった後、テーブル1の移動およびテープの送り動作が開始される。テーブル1は、マスキングテープ24の先端部分が貼り付けられる基板の位置が可動ローラ16の真下にくる位置まで移動する。
図16A、図16B、および図16Cは、第3の実施形態における貼付工程の動作を示す図である。なお、図16A〜図16Cにおいては、図面を見やすくする目的で筐体10、エアシリンダ19および可動部材20の記載を省略している。
まず、変形部71は、各テープ24および25を両面から挟んで加熱する(図16A)。これによって、変形部71に挟まれた部分の各テープ24および25は(張力がかからない状態では)変形することになる。本実施形態では、変形部71は、マスキングテープ24の非接着面の側へ反るように各テープ24および25を変形させる。また、変形部71が各テープ24および25を挟んでいる間、テープの送りは停止される。変形部71は、各テープ24および25が塑性変形するのに十分な時間各テープ24および25を挟んだ後、元の状態(各テープ24および25を挟んでいない状態。すなわち、図16Bに示す状態。)に戻る。変形部71が元の状態に戻ると、テープの送りが再開される。
なお、供給リール11から回収リール12までの全区間で各テープ24および25が張設されていると、変形部71によって各テープ24および25が挟まれることによって、各テープ24および25に余計な力が加えられ、最悪の場合には各テープ24および25が切断されることがある。したがって、貼付ユニット4は、供給リール11から供給された各テープ24および25の長さを調節する機構をさらに備えていてもよい。具体的には、ガイドローラ13〜15のいずれかを、各テープ24および25に加えられる張力に応じて(換言すれば、変形部71が各テープ24および25を挟んだことに応じて)移動するようにしてもよい。これによって、各テープ24および25に余計な力が加えられて各テープ24および25が切断されることを防止することができる。
テープの送りが再開されて、変形部71によって塑性変形された部分(図16Bに示す斜線領域)72が切断刃22の位置に達すると、切断部21はマスキングテープ24を切断する(図16B)。なお、切断部21がマスキングテープ24を切断する箇所は、上記塑性変形部分72の若干下流側でもよい。つまり、切断部21は、塑性変形部分72が切断刃22の位置に達する少し前にマスキングテープ24を切断するようにしてもよい。
マスキングテープ24が切断部21によって切断された後、テープがさらに送られると、マスキングテープ24の切断位置がテープ分離部材18の先端に達し、マスキングテープ24はベーステープ25から剥離される。これによってマスキングテープ24がテープ分離部材18先端から突出する。このとき、マスキングテープ24の先端部分は、変形部71による塑性変形部分72である。可動ローラ16は、マスキングテープ24の塑性変形部分72でない部分が可動ローラ16の真下に到達したタイミングで下方に移動し、当該部分を基板50に接触させる(図16Cに示す矢印参照)。その後、テーブル1の移動およびテープの送り動作が続けられることによって、第1の実施形態と同様にマスキングテープ24が基板50に貼り付けられる。
図17は、第3の実施形態の貼付方法によってマスキングテープ24が貼り付けられた基板50を示す図である。図17に示すように、マスキングテープ24の先端部分は、基板50に対して反る方向へ変形している塑性変形部分72であるので、基板50に接着されずに浮き上がっている。または、仮に先端部分が基板50に接着していたとしても、元の形に戻ろうとする力によって剥がれやすい状態となっている。したがって、上記第1の実施形態と同様の剥離工程において、この先端部分からマスキングテープ24を剥離する(具体的には、先端部分に最初に剥離テープ41を接触させて剥離する)ことによってマスキングテープ24を容易に剥離することができる。以上のように、第3の実施形態によれば、基板に貼付されたマスキングテープを容易に剥離することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る貼付装置について説明する。第4の実施形態では、マスキングテープの一部をループ状に変形させることによって上記非接着部分を形成する。これによって、マスキングテープの剥離を容易にする。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態に係る貼付装置の構成は、貼付ユニット4の構成が異なる他は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第4の実施形態に係る貼付装置は、図1A〜図1Cおよび図3に示す構成を有する。
図18は、第4の実施形態における貼付ユニット4の構成を示す図である。図18に示すように、貼付ユニット4は、筐体10、供給リール11、回収リール12、ガイドローラ13〜15、可動ローラ16、調整ローラ17、テープ分離部材18、エアシリンダ19、可動部材20、および切断部21を備える。第4の実施形態における貼付ユニット4は、第1の実施形態における貼付ユニット4の構成と、切込部27および押し当て台28を備えていない点で異なるが、他の構成は同じである。このように、第4の実施形態では、他の第1〜第3の実施形態に比べて貼付ユニット4を簡易な構成とすることができる。
次に、第4の実施形態における貼付工程の動作を説明する。テーブル1および貼付ユニット4の初期状態の配置は、第1の実施形態と同じである。初期状態となった後、テーブル1の移動およびテープの送り動作が開始される。テーブル1は、マスキングテープ24の先端部分が貼り付けられる基板の位置が可動ローラ16の真下にくる位置まで移動する。
図19A、図19B、図19C、および図19Dは、第4の実施形態における貼付工程の動作を示す図である。なお、図19A〜図19Dにおいては、図面を見やすくする目的で筐体10、エアシリンダ19および可動部材20の記載を省略している。
まず、切断部21は、切断刃22によってマスキングテープ24を切断する(図19A)。マスキングテープ24が切断部21によって切断された後、テープが送られると、マスキングテープ24の切断位置がテープ分離部材18の先端に達し、マスキングテープ24はベーステープ25から分離される。これによってマスキングテープ24がテープ分離部材18の先端部分から突出する。
可動ローラ16は、マスキングテープ24の先端部分が可動ローラ16の下方に到達したタイミングで、エアシリンダ19の伸縮動作によって下方(Z軸負方向)に移動する(図19B)。可動ローラ16は、基板50の上面付近まで移動することによってマスキングテープ24の先端を基板50に接触させる。これによって、マスキングテープ24の先端部分は基板50に接着される。以上の動作は、ベーステープの切り込みが入れられない点を除いて第1の実施形態と同様である。
マスキングテープ24の先端部分が基板50に貼り付けられた後、第4の実施形態においては、テーブル1の移動量よりも多い送り量でマスキングテープ24が送られる。これによって、テープ分離部材18によって分離されたマスキングテープ24がたるんでループ状に変形される(図19C)。なお、マスキングテープ24の送り量とテーブル1の移動量との関係は、送り量が移動量よりも相対的に大きくなればよく、送り量を通常よりも多くしてもよいし、移動量を通常よりも少なくしてもよい。
マスキングテープ24がテーブル1の移動量よりも多く送られた後、可動ローラ16は、下方に再度移動し、マスキングテープ24を基板50に接触させる。これによって、マスキングテープ24の一部がループ形状に変形された状態でマスキングテープ24が基板50に貼り付けられる(図19D)。その後、マスキングテープ24が通常の送り量で送られ、テーブル1が通常の移動量で移動することによって、マスキングテープ24がテーブル1の移動量と同じ量だけ送られて、マスキングテープ24が基板50に貼り付けられる。
以上のように、貼付手段である可動ローラ16は、マスキングテープ24の第1部分(具体的には先端部分)を基板50に接着するとともに、第1部分から所定長さにある第2部分を、第1部分が接着された位置から当該所定長さよりも短い位置に接着する。これによって、マスキングテープ24は、図20に示すようなループ形状に変形されて基板50に貼り付けられることとなる。図20は、第4の実施形態の貼付方法によってマスキングテープ24が貼り付けられた基板50を示す図である。図20に示すように、マスキングテープ24の先端付近において、ループ形状の部分(ループ部分)が形成される。このループ部分は、基板50に接着されずに浮き上がっている。したがって、剥離工程においてループ部分からマスキングテープ24を剥離することによって、マスキングテープ24を容易に剥離することができる。つまり、第4の実施形態では、このループ部分が上記非接着部分に相当する。以上のように、第4の実施形態によれば、基板に貼付されたマスキングテープを容易に剥離することができる。
なお、上記ループ部分の長さは、テープの送り量とテーブル1の移動量との関係によって決まる。すなわち、送り量と移動量との差分が大きいほどループ部分が長くなる。したがって、ループ部分を剥離に適した適度な長さにするためには、送り量および移動量を調整すればよい。
なお、上記第4の実施形態では、マスキングテープにループ部分を形成するために、テープの送り量とテーブル1の移動量とを異ならせるようにしたが、図21に示す方法によってループ部分を形成するようにしてもよい。図21は、第4の実施形態の変形例を示す図である。本変形例においては、図21に示すように、基板50に柱状のループ形成部材81を配置する。なお、ループ形成部材81は、例えば上記第2の実施形態で述べた各種の方法によって基板50上に配置される。ループ形成部材81が配置された状態で、マスキングテープ24をループ形成部材81の上を通過するように基板50に貼り付ける(図21参照)。マスキングテープ24を基板50に貼り付けた後、ループ形成部材81を基板50から取り除くことによって、マスキングテープ24にループ部分を形成することができる。なお、図21ではループ形成部材81の断面は半円形としたが、断面はどのような形状であってもよい。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る貼付装置について説明する。第5の実施形態では、マスキングテープの一部を加熱することによって変形・変質させることによって、基板との接着力を小さくするための上記非接着部分を形成する。これによって、マスキングテープの剥離を容易にする。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態に係る貼付装置の構成は、貼付ユニット4の構成が異なる他は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第5の実施形態に係る貼付装置は、図1A〜図1Cおよび図3に示す構成を有する。
図22は、第5の実施形態における貼付ユニット4の構成を示す図である。第5の実施形態においては、貼付ユニット4は、切込部27および押し当て台28に代えて、加熱部91およびエアシリンダ92を備えている。加熱部91は、マスキングテープ24に接触することでマスキングテープ24を変形・変質する程度に加熱する。加熱部91は、例えば棒状の形状を有しており、その一端(マスキングテープ24に接触する側の一端)が可動ローラ16の下方に位置するように配置される。加熱部91は、伸縮動作を行うエアシリンダ92に接続される。これによって、加熱部91はその長手方向に移動することが可能である。
次に、第5の実施形態における貼付工程の動作を説明する。テーブル1および貼付ユニット4の初期状態の配置は、第1の実施形態と同じである。初期状態となった後、テーブル1の移動およびテープの送り動作が開始される。テーブル1は、マスキングテープ24の先端部分が貼り付けられる基板の位置が可動ローラ16の真下にくる位置まで移動する。
図23Aおよび図23Bは、第5の実施形態における貼付工程の動作を示す図である。なお、図23Aおよび図23Bにおいては、図面を見やすくする目的で筐体10、エアシリンダ19および92、ならびに可動部材20の記載を省略している。
マスキングテープ24が切断部21によって切断されて、マスキングテープ24の先端部分がテープ分離部材18の先端から突出するまでの動作は、第4の実施形態と同様である。第5の実施形態では、マスキングテープ24の先端部分がテープ分離部材18の先端から突出すると、加熱部91は、マスキングテープ24の先端部分を加熱する。すなわち、エアシリンダ92の伸縮動作によって加熱部91が可動ローラ16の下方に移動し、加熱部91の一端がマスキングテープ24の先端部分に接触する(図23A)。なお、マスキングテープ24の先端部分が加熱部91に接触する位置で、テープの送りは一端停止される。マスキングテープ24の先端部分が加熱されることによって、当該先端部分は長手方向の断面が球状に変形する。また、加熱によって先端部分が変質し、粘着力が低下する(または失われる)。加熱部91は所定時間マスキングテープ24を加熱すると、エアシリンダ92の伸縮動作によって移動し、可動ローラ16の下方から退避する。なお、上記所定時間は、マスキングテープ24を変形・変質させるのに十分な時間であり、マスキングテープ24の材質や加熱部91の温度等によって決まる。
加熱部91が可動ローラ16の下方から退避すると、可動ローラ16は、下方に移動し、マスキングテープ24の先端部分93以外の部分を基板50に接触させる(図23B)。すなわち、加熱部91によって変形・変質されていないマスキングテープ24の部分に可動ローラ16が接触するように、テープ送りが調整される。これによって、マスキングテープ24の当該部分が基板50に接着される。以下では、変形・変質された先端部分93を「変質部分93」と呼ぶ。その後、マスキングテープ24がテーブル1の移動量と同じ量だけ送られることによって、マスキングテープ24が基板50に貼り付けられる。
図24は、第5の実施形態の貼付方法によってマスキングテープ24が貼り付けられた基板50を示す図である。図24に示すように、マスキングテープ24の変質部分93は、加熱部91によって変形・変質されている。つまり、変形されることによって基板50との接触面積が小さくなるとともに、変質されることによって基板50に対する接着力が小さくなっている。したがって、剥離工程において上記変質部分93からマスキングテープ24を剥離することによって、マスキングテープ24を容易に剥離することができる。以上のように、第5の実施形態によれば、基板に貼付されたマスキングテープを容易に剥離することができる。なお、第5の実施形態では、マスキングテープの先端部分に加熱部91を当接させて加熱するようにしたが、他の実施形態では、マスキングテープに部材を接触させないで加熱する(例えば、熱風をあてて加熱する)ようにしてもよい。
以上に示した第1〜第5の実施形態によれば、マスキングテープの接着面に基板と接着しない非接着部分を形成する。これによって、基板とマスキングテープとの接着力を低下させ、マスキングテープの剥離を容易にすることができる。なお、マスキングテープを剥離する方法としては、マスキングテープに紫外線を照射して接着力を低下させて剥離する方法もあるが、有機ELを製造する場合には塗布液に紫外線を照射することができないため、当該方法を用いることができない。上記各実施形態の方法は、有機ELを製造する場合のように、マスキングテープに紫外線を照射して接着力を低下させて剥離する方法を用いることができない場合に、特に有効である。
また、上記第2〜第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様の理由で、塗布液が塗布されない位置に非接着部分が位置するようにマスキングテープを基板に接着させることが好ましい。すなわち、第2の実施形態においては、当て材は、塗布液が塗布されない位置に配置されることが好ましい。第3の実施形態においては、マスキングテープの塑性変形された部分が、塗布液が塗布されない位置にくるようにマスキングテープが貼付されることが好ましい。第4の実施形態においては、ループ形状に変形された部分が、塗布液が塗布されない位置にくるようにマスキングテープが貼付されることが好ましい。第5の実施形態においては、加熱によって変形・変質された部分が、塗布液が塗布されない位置にくるようにマスキングテープが貼付されることが好ましい。
なお、上記第1〜第5実施形態においては、剥離ユニット5を用いて自動的にマスキングテープを剥離することを想定して説明したが、剥離ユニット5を用いた剥離方法は一例であり、マスキングテープの剥離方法はどのような方法であってもよい。剥離方法がどのような方法であっても、上記実施形態のようにマスキングテープに非接着部分を形成することによって、マスキングテープの剥離が容易になる。例えば、マスキングテープを剥離するために、マスキングテープの全面を覆うように剥離テープを接着した後、剥離テープとともにマスキングテープを回収してもよい。また、マスキングテープの剥離は作業者の手によって行われてもよい。
また、他の実施形態においては、マスキングテープの剥離をより容易にするために、上記第1〜第5の実施形態における方法を組み合わせて用いるようにしてもよい。例えば、第1または第2の実施形態と、第3の実施形態とを組み合わせて、マスキングテープの先端部分にベーステープまたは当て材を付着させるとともに、当該先端部分を塑性変形させるようにしてもよい。また、例えば、第1または第2の実施形態と、第5の実施形態とを組み合わせて、マスキングテープの先端部分にベーステープまたは当て材を付着させるとともに、当該先端部分を加熱して変形・変質させるようにしてもよい。また、例えば、第3の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせて、マスキングテープがループ形状を形成しやすいように塑性変形させた後、第4の実施形態における方法でマスキングテープを貼付するようにしてもよい。なお、この場合、マスキングテープは、上記第3の実施形態とは異なる方向に(すなわち、マスキングテープの先端部分を接着面の側へ反る方向に)塑性変形される。これによって、ループ形状がより形成されやすくなる。
また、第1〜第3の実施形態においては、マスキングテープの先端部分が先鋭形状となるようにマスキングテープを切断するようにしてもよい。マスキングテープの先端部分を先鋭形状にすることによって、剥離工程においてマスキングテープをより剥離しやすくすることができる。例えば、切断部21の切断刃22をマスキングテープの幅方向に対して斜めに設け、マスキングテープを幅方向に対して斜めに切断する。これによって、マスキングテープの先端部分を先鋭形状にすることができる。
なお、上記第1〜第5の実施形態においては、有機EL材料を塗布する場合に貼付装置を用いる場合を例として説明したが、本発明に係る貼付装置は、耐塗布液として基板に貼り付けたマスキングテープを貼付する場合に適用することが可能である。例えば、有機EL材料を塗布する場合に限らず、PDP(Plasma Display Panel)の蛍光材料、レジスト液、SOG(Spin On Glass)液等を基板に塗布する際に用いられるマスキングテープを貼付する場合にも本発明を適用することができる。