JP5076026B2 - 容量素子及び共振回路 - Google Patents

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Description

本発明は、容量素子及びそれを備える共振回路に関し、特に、使用時において容量素子内に発生する応力を調整することのできる容量素子、及び共振回路に関する。
近年、電子機器の小型化、高信頼性化に伴い、その電子機器に用いられる電子部品として、小型化された容量素子の開発が求められている。そして、容量素子の小型化、及び高容量化を可能とするために、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層誘電体素子本体に外部電極を形成した積層セラミックコンデンサが提案されている(特許文献1)。
特許文献1では、製造される積層セラミックコンデンサの積層誘電体素子本体に残留応力が結果的に付与されることにより、誘電率が向上し、取得静電容量の向上を図ることが記載されている。そして、このように、積層セラミックコンデンサにおいて積層誘電体素子本体に残留応力が結果的に付与されることで誘電率の向上が図られるので、より一層の小型化が可能とされている。
WO2005/050679号公報
ところで、使用する容量素子毎に静電容量のバラツキがある場合、電子機器の性能を精度よく確保できないという問題がある。このため、容量素子の使用時において、静電容量を合わせこみたいという要望がある。
また、近年、印加される制御電圧に応じて静電容量が変化する誘電体層を用いた容量素子(可変容量素子)が開発されているが、このような可変容量素子においては、小さな制御電圧に対しても、十分な可変率を確保したいという要望がある。
上述の点に鑑み、本発明は、静電容量の値を精度良く確保できる容量素子、及び、容量可変率を十分に確保することのできる可変容量素子を提供する。また、これらの容量素子を用いた共振回路を提供する。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の容量素子は、誘電体層と誘電体層を挟持して誘電体層に所望の電界を発生させる少なくとも1対の容量素子電極とで構成される容量素子本体を有する。また、容量素子本体の誘電体層に発生する応力を調整する応力調整部を有する。また、応力調整部は、応力調整用誘電体層と、応力調整用誘電体層内に積層された複数の応力調整用電極とを有し、前記容量素子本体を挟持して前記誘電体層の厚さ方向に積層されている。そして、この応力調整部は、容量素子電極の積層方向に引張応力を発生させる。
本発明の容量素子では、応力調整部により容量素子本体の誘電体層に発生する応力を調整することができる。これにより、比誘電率や誘電損失などの特性を制御することができる。
本発明の共振回路は、共振コンデンサと、共振コンデンサに接続された共振コイルとを有して構成されている。共振コンデンサは、誘電体層と誘電体層を挟持して誘電体層に所望の電界を発生させる少なくとも1対の容量素子電極とで構成される容量素子本体と、容量素子本体の誘電体層に発生する応力を調整する応力調整部とからなる容量素子を有する。また、応力調整部は、応力調整用誘電体層と、応力調整用誘電体層内に積層された複数の応力調整用電極とを有し、前記容量素子本体を挟持して前記誘電体層の厚さ方向に積層されている。そして、この応力調整部は、容量素子電極の積層方向に引張応力を発生させる。
本発明によれば、静電容量の値が精度良く調整された容量素子を得ることができる。また、誘電体層に外部から印加される制御電圧に応じて容量が変化する誘電体材料を用いた場合には、容量可変率の向上が図られる。そして、共振回路にこれらの容量素子を用いることにより、共振回路の性能を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 可変容量素子に構成された可変容量素子本体の概略平面構成図である。 本発明の第1の実施形態に係る可変容量素子の等価回路図である。 可変容量素子を動作させる場合における、信号電圧電源、制御電圧電源、応力調整用電圧電源を含む回路構成図である。 本発明の第2の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 本発明の第3の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 本発明の第4の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 比較例に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 A,B 実施例1の可変容量素子、及び比較例の可変容量素子において制御電圧であるDCバイアスを印加した場合の静電容量と、静電容量変化率の変化を示した図である。 本発明の第5の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 A,B 実施例2の可変容量素子において、制御電圧であるDCバイアスを印加した場合の静電容量と静電容量変化率の変化を示した図である。 本発明の第6の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成図である。 本発明の第7の実施形態に係る共振回路を用いた非接触ICカードの受信系回路部のブロック構成図である。 原理説明の為の可変容量素子の概略断面構成図である。
以下に、本発明の実施形態に係る容量素子及びそれを備える電子機器の一例を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:本発明を可変容量素子に適用した場合の一例
1−1 原理
1−2 可変容量素子の構成
1−3 可変容量素子の製造方法
1−4 可変容量素子の動作
2.第2の実施形態:本発明を可変容量素子に適用した場合の一例
3.第3の実施形態:本発明を可変容量素子に適用した場合の一例
4.第4の実施形態:本発明を可変容量素子に適用した場合の一例
5.第5の実施形態:本発明を可変容量素子に適用した場合の一例
6.第6の実施形態:本発明を可変容量素子に適用した場合の一例
7.第7の実施形態:本発明の可変容量素子を備える電子機器の一例
〈1.第1の実施形態〉
[1−1 原理]
まず、本発明の第1の実施形態に係る可変容量素子を説明する前に、本実施形態例の可変容量素子の理解を容易にするために、図14を用いて本実施形態例の原理を説明する。
図14に、原理説明の為の従来の可変容量素子の概略断面構成を示す。図14に示す可変容量素子100は、誘電体層103と、その誘電体層103を挟んで構成される少なくとも一対の電極101、102とから構成されている。また、一方の電極101は、一方の外部端子104に接続されており、他方の電極102は、他方の外部端子105に接続されている。
この可変容量素子100では、誘電体層103は強誘電体材料で構成されており、外部から印加される制御電圧に応じて分極状態が変化することにより容量が変化する。
図14に示す可変容量素子100において、誘電体層103を構成する強誘電体材料として、従来技術および本発明においても、強誘電体材料の焼結物を用いることが多い。そして、具体的な物質として例えばチタン酸バリウムを用いる場合、誘電体層103に発生する電界によりその結晶状態が変化することが知られている。その変化を説明する前に、チタン酸バリウムの結晶構造について説明する。温度によっても安定な結晶構造が違うが、ここでは説明を容易にするため、以降は室温での場合のみとする。チタン酸バリウムは正方晶が安定であり、その正方晶はc軸方向に自発分極を有していることが知られている。チタン酸バリウムの焼結物は多結晶であり、自発分極が外部に現れない。この理由を次に記す。
チタン酸バリウムの焼結物では、自発分極のある正方晶の微小領域に接して(自発分極方向に対して平行に並ぶ側面)、自発分極の直交方向にごく薄い厚みの範囲で自発分極の無い立方晶が存在し、さらにその立方晶が介在してその立方晶に接して先の自発分極領域の方向とは逆向きの自発分極となる正方晶の別の微小領域が存在する。また、微小領域の立方晶のC軸方向の末端領域には、そのC軸に対して45度方向にごく薄い厚みの範囲で立方晶が存在し介在して微小領域の立方晶とは互いに90度(直交)の向きとなって、自発分極を有する立方晶の別の微小領域も存在することがある。
さらには、立方晶を介して自発分極領域が互いに分極を打ち消し合うように存在するいくつか正方晶の複数の微小領域から構成される集団領域となる。また先の説明のように、隣り合う集団領域においても、集団領域の主たる正方晶のC軸方向に対して、平行の配置および直交の配置でも存在する。
以上の理由により、チタン酸バリウムの焼結物の全体としては、分極が外部へ現われない。なお、この場合、正方晶の分極方向であるいわゆるC軸の格子定数は、元の立方晶のC軸の格子定数よりも長いことも知られている。
図14に示す可変容量素子100において、誘電体層103を構成する強誘電体材料として例えばチタン酸バリウムの焼結物を用いる場合、誘電体層103に発生する電界によりその結晶状態の変化について説明する。その変化の仕方は複数のパターンがあり、電界の強度と印加時間、および、電界の向きの反転と反転の周期(周波数)などにも依存することが知られている。
代表的な変化の仕方のパターンは、誘電体層にある電界が印加されたとき、その電界方向に平行(および平行に近い)な自発分極のある正方晶の微小領域と、それ近接する90度方向の自発分極のある正方晶の微小領域とにおいて、それらの間の正方晶のごく狭い領域面(ドメイン壁)があたかも移動するよう結晶型の変化が連続するように起こり、平行(および平行に近い)自発分極のある正方晶の微小領域が、90度方向の自発分極のある正方晶の微小領域を侵食するようになる。すなわち、分極が電界方向に多く配列することになる。この際、2つの微小領域をまとめて見ると、電界方向に対しては伸長し、電界方向に対して直交方向には収縮することになる。
また、電界強度が大きく、時間が長く印加される場合、電界方向に平行および平行に近い集団領域において、集団領域内部でやはり正方晶のごく狭い領域面(ドメイン壁)が移動し、逆向きの微小領域を侵食するようにして分極が電界方向に多く配列するようになる。そして、逆向きの微小領域にしてみれば、周囲から侵食されるようになり、最終的には逆向きの微小領域が消失する。もちろん、立方晶領域も消失する。この際に、その1つの集団領域をまとめて見ると、電界方向に対して直交方向は伸長も収縮も無いことになる。また、立方晶領域が消失して正方晶に変化した分だけ、電界方向に対してはやや伸長することになる。
また、印加された電界に対し、先に説明のような正方晶のごく狭い領域面(ドメイン壁)の移動を伴わず、全体の分極が反転することが知られている。
このようなチタン酸バリウムの結晶状態の変化、又は分極方向の変化に応じて、高誘電率が得られる。また、いわゆるドメインクランピングと呼ばれる直流バイアス電圧印加によって、重畳される交流電圧による交流電界に対して分極反転がしにくくなることになり、その直流バイアス電圧によって、静電容量を変化させる制御を行うこともできる。
このような考察を元に、本発明者等は、印加電界によるチタン酸バリウムの伸長を、促進あるいは阻害することで、チタン酸バリウムの分極状態、すなわち誘電率、さらにすなわち容量を制御できるのではないかという知見を得た。
図14に示すような可変容量素子100では、容量を制御するための専用の制御端子が構成されていないので、容量を変化させる制御電圧と、信号電圧(交流)とが同一の電極間(図14では、電極101と電極102)に印加される。このため、誘電体層103には制御電圧及び信号電圧の総和が印加され、誘電体層103に発生する電界方向に応じて誘電体層103を構成するチタン酸バリウムの結晶状態が変化し、チタン酸バリウムが伸長、あるいは元に戻る収縮、さらには元よりも収縮することもある。これにより、誘電体層103全体が、電界方向に伸長、あるいは元に戻る収縮、さらには元よりも収縮することになる。
そして、このとき、誘電体層103に電界を生成させる一対の電極101,102間では、矢印A,Bに示すように、静電力(クーロン力)が発生する。そして、このクーロン力により、電界(電極)が誘電体層103を圧縮するように働く。
このような考察を元に、本発明者等は、チタン酸バリウムの伸長を、クーロン力が阻害するように働いているのではないかという知見も得た。
制御電圧がチタン酸バリウムで構成される誘電体層103に印加されることにより、その電界方向に分極ドメインがそろい、容量が変化する。しかし、上述の理由により、クーロン力がチタン酸バリウムの結晶状態の転位を阻害し、分極ドメインが揃うことを阻害することにより、容量の可変率が低下するものと考えられる。
図14に示す可変容量素子100では、誘電体層103に印加される信号電圧(交流)がとりわけ制御電圧よりも大きい場合、制御電圧による容量可変率が低下してしまうことや、誘電損失が大きくなるという問題があった。これらの現象も、電極間に働くクーロン力により、電界(電極)が誘電体層103に圧縮応力をもたらすためと考えられる
そこで、本発明者等は、可変容量素子を構成する場合には、誘電体層に係る応力を低減あるいは増加させることのできる構成を用いることにより、容量可変率の向上や、誘電損失の低減や容量の安定化なども図られると考えた。
[1−2 可変容量素子の構成]
上述の原理をふまえ、第1の実施形態に係る可変容量素子について説明する。図1は、本実施形態例の可変容量素子1の概略断面構成図である。
図1に示すように、本実施形態例の可変容量素子1は、誘電体層4と誘電体層4を挟持して構成された1対の電極(以下、可変容量素子電極3という)とで構成される可変容量素子本体2を有する。さらに、誘電体層4の厚み方向に可変容量素子本体2の両側に積層された応力調整部9a,9bとを有する。
誘電体層4は、誘電体層4を挟持する1対の可変容量素子電極3間に制御電圧が印加されることにより、誘電率が変化する誘電体材料で形成され、例えば、比誘電率が1000を超えるような強誘電体材料で形成される。
誘電体層4の材料としては、具体的には、イオン分極を生じる誘電体材料を用いることができる。イオン分極を生じる強誘電体材料は、イオン結晶材料からなり、プラスのイオンとマイナスのイオンの原子が変位することで電気的に分極する強誘電体材料である。このイオン分極を生じる強誘電体材料は、一般に、所定の2つの元素をA及びBとすると、化学式ABO(Oは酸素元素)で表され、ペロブスカイト構造を有する。このような強誘電体材料としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、チタン酸鉛(PbTiO)等があげられる。また、誘電体層の形成材料として、チタン酸鉛(PbTiO)にジルコン酸鉛(PbZrO)を混ぜ合わせたPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いてもよい。
また、誘電体層4の形成材料として電子分極を生じる強誘電体材料を用いてもよい。この強誘電体材料では、プラスの電荷に偏った部分と、マイナスの電荷に偏った部分とに分かれて電気双極子モーメントが生じ、分極が生じる。そのような材料として、従来、Fe2+の電荷面と、Fe3+の電荷面の形成により、分極を形成して強誘電体的特性を示す希土類鉄酸化物が報告されている。この系においては、希土類元素をREとし、鉄族元素をTMとしたときに、分子式(RE)・(TM)・O(O:酸素元素)で表される材料が高誘電率を有することが報告されている。なお、希土類元素としては、例えば、Y、Er、Yb、Lu(特にYと重希土類元素)が挙げられ、鉄族元素としては、例えば、Fe、Co、Ni(特にFe)が挙げられる。また、(RE)・(TM)・Oとしては、例えば、ErFe、LuFe、YFeが挙げられる。
一対の可変容量素子電極3は、平板状に形成されており、誘電体層4を挟んで対向するように形成されている。図2に、可変容量素子本体2の概略平面構成を示す。図2に示すように、それぞれの可変容量素子電極3の端部には、外部からの制御電圧、又は信号電圧(交流)が供給される端子8が形成されている。可変容量素子電極3の形成材料としては、Pt、Pb、Pb/Ag、Ni、Ni合金等の金属材料を用いることができる。
このような構成の可変容量素子本体2では、端子8を介して対向する一対の可変容量素子電極3間に制御電圧を印加することにより、可変容量素子電極3間に挟持された誘電体層4の分極状態が変化し、可変容量素子本体2の容量が変化する。
応力調整部9a,9bは、応力調整用誘電体層7を挟んで交互に複数層積層される第1の応力調整用電極5aと第2の応力調整用電極5bとから構成されている。そして、この応力調整部9a,9bは、可変容量素子本体2の一方の可変容量素子電極3の上層、及び他方の可変容量素子電極3の下層に積層されて形成されている。すなわち、応力調整部9a,9bは、可変容量素子本体2の誘電体層4の厚さ方向(電界が発生する方向)において、可変容量素子本体2を挟持するように形成されている。また、図1では、応力調整用誘電体層7の厚さ(応力調整用電極5aと5bとの間隔)および誘電体層4の厚さは同一に図示されているが、それぞれ異なってもよい。加えて、複数が図1で示される複数の応力調整用誘電体層7の厚さ(応力調整用電極5aと5bとの間隔)も、それぞれ異なっていてもよい。
応力調整部9aを構成する応力調整用誘電体層7の形成材料は、可変容量素子本体2を構成する誘電体層4の形成材料と同様の材料を用いることができる。その他、可変容量素子本体2の誘電体層4よりも、硬い材料や、印加される応力調整用電圧(電界)に対する圧縮率の高い材料を用いることができる。このような物質は、可変容量素子本体2を構成する誘電体層4の形成材料の具体例から選んでも良く、ふつうの誘電材料から選んでもよい。ふつうの誘電材料としては、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、TiO、MgTiO、SrMgTiO、Al、Ta、等が挙げられる。
第1の応力調整用電極5a、及び第2の応力調整用電極5bは、可変容量素子本体2を構成する可変容量素子電極3と同様に平板状に形成されており、可変容量素子電極3と平行関係をほぼ保持しながら、応力調整用誘電体層7を介して交互に積層されている。図1の例は、可変容量素子本体2の一方の可変容量素子電極3の上層に積層される応力調整部9aでは、第1の応力調整用電極5a及び第2の応力調整用電極5bがそれぞれ、3層ずつ積層された例とされている。また、可変容量素子本体2の他方の可変容量素子電極3の下層に積層される応力調整部9bでは、第1の応力調整用電極5a及び第2の応力調整用電極5bがそれぞれ2層ずつ積層された例とされている。
このように、本実施形態例では上層の応力調整部9aと下層の応力調整部9bではその電極構成が異なるが、同じ構成としてもよい。また、図1では応力調整用電極5a、5bの厚さおよび可変容量素子電極3の厚さは同一に図示されているが、それぞれ異なってもよい。加えて、応力調整用電極5aの厚さと応力調整用電極5bの厚さとも異なっていてもよい。また加えて、応力調整部9aに設ける応力調整用電極5a,5bの厚さと応力調整部9bに設ける応力調整用電極5a,5bの厚さも異なっていてもよい。さらには、応力調整用電極5a,5bの面積もそれぞれ異なってもよい。また、応力調整部9a、9bは必ずしも両方とも形成されなくてもよい。すなわち、少なくともどちらか一方だけ形成されていればよく、以降に説明する実施形態でも同様である。また、応力調整用電極の層数は、可変容量素子本体の電極の層数に対し、1/5から400倍、好ましくは1から200倍、さらに好ましくは2倍から100倍であり、以降に説明する実施形態でも同様である。また、応力調整用電極の層数は、可変容量素子本体の電極の層数に対し、1/5から1000倍、好ましくは1から1000倍、さらに好ましくは2倍から1000倍であり、以降に説明する実施形態でも同様である。
第1及び第2の応力調整用電極5a,5bの形成材料としては、可変容量素子本体2を構成する電極と同様、Pt、Pb、Pb/Ag、Ni、Ni合金等の金属材料を用いることができる。
そして、第1の応力調整用電極5aは、その端部において、可変容量素子本体2及び応力調整部9a,9bからなる積層体の一方の側面に形成された外部端子6aに接続されている。また、第2の応力調整用電極5bは、その端部において、可変容量素子本体2及び応力調整部9A,9bからなる積層体の他方の側面に形成された外部端子6bに接続されている。
[1−3 可変容量素子の製造方法]
以上の構成を有する可変容量素子1の製造方法の一例を説明する。まず、所望の誘電体材料からなる誘電体シートを用意する。誘電体シートは、可変容量素子本体2においては、誘電体層4を構成するものであり、応力調整部9a,9bでは、応力調整用誘電体層7を構成するものである。これらの誘電体シートは、ペースト状にした誘電体材料を、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に所望の厚さに形成することによって形成することができる。また、可変容量素子本体2を構成する可変容量素子電極3、第1の応力調整用電極5a、及び第2の応力調整用電極5bの形成領域に対応する領域が開口されたマスクを用意する。
次に、Pt、Pb、Pb/Ag、Ni、Ni合金等の金属粉末をペースト状にした導電ペーストを調整し、その導電ペーストを、前段で用意したそれぞれのマスクを介して誘電体シート上に塗布(シルク印刷等)する。これにより、誘電体シートの一方の表面に、可変容量素子電極3、第1の応力調整用電極5a、又は第2の応力調整用電極5bがそれぞれ形成される。
そして、可変容量素子電極3、第1の応力調整用電極5a、又は第2の応力調整用電極5bが形成されたそれぞれの誘電体シートを、各電極が印刷された面の向きを揃えて、所望の順番に積層する。さらに、この積層体の上下に電極が印刷されていない誘電体シートを積層させて、圧着する。
そして、圧着した部材を還元性の雰囲気中で高温焼成して、誘電体シートと導電ペーストで形成された各電極とを一体化する。本実施形態例では、このようにして可変容量素子1を形成する。
このように、本実施形態例での可変容量素子1の製造方法では、応力調整部9a,9bも可変容量素子本体2と同様の方法で形成することができるので、誘電体層と電極とを交互に積層させた従来からある積層型の容量素子の製造工程を応用することができる。また、応力調整部9a,9bの応力調整用誘電体層7と、可変容量素子本体2の誘電体層4の形成材料は、同じものを用いても異なるものを用いてもよい。同じ形成材料を用いる場合は、製造が容易になる。なお、誘電体層7において、可変容量素子本体2の近傍の誘電体層には弾性率が低く圧縮変形が容易な物質にするのが良い。
[1−4 可変容量素子の動作]
図3に、本実施形態例の可変容量素子1の等価回路図を示す。図3では、可変容量素子本体2の誘電体層4の容量をCvacで示している。また、可変容量素子本体2の上層に形成される応力調整部9a内の電極間で形成される容量をまとめてC1で示し、可変容量素子本体2の下層に形成される応力調整部9b内の電極間で形成される容量をまとめてC2で示している。
図3に示すように、応力調整部9a,9bでは、第1の応力調整用電極5aを外部端子6aを介して、応力調整電圧の入力端子に接続する。また、第2の応力調整用電極5bを外部端子6bを介して、応力調整電圧の出力端子に接続する。
また、可変容量素子本体2では、一方の可変容量素子電極3を、端子を介して制御電圧の入力端子に接続するとともに、他方の可変容量素子電極3を、端子を介して制御電圧の出力端子に接続する。また、本実施形態例では、可変容量素子電極3に接続される端子は、交流信号の入出力端子にもそれぞれ接続されている。すなわち、本実施形態例において、可変容量素子本体2では、可変容量素子電極3間に、制御電圧が印加されると共に、信号電圧が印加される構成とされている。
このような構成の可変容量素子1において、第1の応力調整用電極5a、及び第2の応力調整用電極5b間に、応力調整用電圧を印加する。そうすると、第1の応力調整用電極5aには、図1の矢印sで示すように、クーロン力が発生する。そうすると、それぞれの応力調整部9a,9bにおいて最外電極以外の第1、及び第2の応力調整用電極5a,5bでは、矢印aと矢印bで示すように電極の表面側と裏面側において、それぞれ反対側の方向に向かうクーロン力が発生する。そのため、最外電極以外の第1及び第2の応力調整用電極5a,5bに対しては、クーロン力が打ち消されるため、それらの第1の応力調整用電極5a及び第2の応力調整用電極5bに挟まれた領域の応力調整用誘電体層7は、クーロン力に起因する圧縮応力を受けない(打ち消された力は図示せず)。そうすると、本実施形態例では、可変容量素子本体2は、上下に形成された応力調整部9a,9bに挟まれた領域に形成されているので、クーロン力に起因する圧縮応力を受けにくい領域に誘電体層4を有することになる。むしろ、応力調整用誘電体層7には引張応力をかけることとなる。
このような状態で、可変容量素子本体2の可変容量素子電極3間に、制御電圧を印加した場合、誘電体層4の厚み方向に電界が発生し、その電界によって、誘電体層4の分極状態が変化されることにより、誘電体層4の誘電率が変化される。そして、この場合、誘電体層4が形成される位置は、上述したように、圧縮応力を受けにくく、むしろ、引張応力力を受ける領域とされている。このため、誘電体層4に発生される電界によるクーロン力による図示してない圧縮応力を低減する、もしくは引張応力をかけることができる。
これにより、制御電圧に応じた誘電体層4における分極状態の変化が容易となり、誘電体層4の容量可変率を向上させることができる。すなわち、誘電体層4において結晶構造の転位が従来のものと比べ容易になる。このため、誘電体層4における誘電体材料の結晶構造の転位の際の損失(誘電損失)も従来のものと比べ小さくなる。また、誘電体層4の容量可変率を向上させることができ、低い制御電圧に対する誘電体層4の容量可変率の向上にも効果を奏する。また、応力調整部に印加する電圧も制御することで間接的に誘電体層4の容量を制御することもでき、誘電体層4の容量可変率のさらなる向上にもつながる。
また、応力調整部9a,9bにおける応力調整用誘電体層7の形成材料として、可変容量素子本体2を構成する誘電体層4の形成材料よりも印加される電圧に対する圧縮率が高い材料を用いれば、誘電体層4に対してより強い引張応力あるいは圧縮応力を発生させることができる。このようにして引張応力が誘電体層4にかかる場合には電界方向の伸長がし易くなるため、より小さい制御電圧において容量を可変させることが可能となる。したがって、小さい制御電圧に対する容量可変率の高い可変容量素子を得ることができる。
次に、図4に、本実施形態例の可変容量素子1を動作させる場合における、信号電圧電源、制御電圧電源、応力調整用電圧電源を含む回路構成を示す。図4において、図3に対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
図4に示すように、可変容量素子本体2の一方の可変容量素子電極3に接続される端子を、バイアス除去用コンデンサ10を介して、交流信号電源15の一方の入出力端子に接続すると共に、電流制限抵抗12を介して制御電圧電源14の入力端子に接続する。また、可変容量素子本体2の他方の可変容量素子電極3に接続される端子を、バイアス除去用コンデンサ11を介して、交流信号電源15の他方の入出力端子に接続すると共に、電流制限抵抗13を介して制御電圧電源14の出力端子に接続する。さらに、応力調整部9a,9bの第1の応力調整用電極5aに接続された端子6aを、電流制限抵抗16を介して応力調整用電圧電源18の入力端子に接続する。また、応力調整部9a,9bの第2の応力調整用電極5bに接続された端子6bを、電流制限抵抗17を介して応力調整用電圧電源18の出力端子に接続する。
図4に示す回路構成では、信号電流(交流信号)は、バイアス除去用コンデンサ10,11及び可変容量素子本体2を流れ、制御電流(直流バイアス電流)は、電流制限抵抗12,13を介して可変容量素子本体2のみを流れる。この際、制御電圧を変化させることにより、可変容量素子本体2の容量が変化し、その結果、信号電流も変化する。
また、本実施形態例では、応力調整用電圧DC2は、電流制限抵抗16,17を介して応力調整部9a,9bに構成された容量C1、及びC2のコンデンサを流れる。そして、この応力調整部9a,9bに応力調整用電圧DC2が印加されることにより、前述した原理により、可変容量素子本体2を構成する誘電体層4にかかる応力が調整される。
図4に示す例では、制御電圧電源14と、応力調整用電圧電源18を別に設ける例としたが、共通に構成する例としてもよい。また、制御電圧DC1よりも応力調整用電圧DC2を大きく設定することで、可変容量素子本体2の誘電体層4に、引張応力を発生させることができる。誘電体層4に引張応力が生じる場合には、誘電体層4においてより分極が生じやすくなるため、制御電圧DC1の変化幅を抑えつつ、可変容量素子本体2の容量Cvacの可変率を向上させることができる。
また、可変容量素子本体2の誘電体層4へ印加される電界強度Eは、制御電圧をDC1、信号電圧をAC、誘電体層の膜厚をdとすると、E=(DC1+AC)/dで表される。このとき、電界強度Eよりも応力調整用電圧DC2をより大きくすることで、交流電圧による電界強度の影響をより少なくすることができる。
本実施形態例では、可変容量素子本体2は、1層の誘電体層4を有して構成された例であったが、誘電体層4と可変容量素子電極3とを複数層交互に積層させた積層型の可変容量素子本体を構成する例としてもよい。この場合も、圧縮応力のかからない領域に複数層の誘電体層を形成することにより、上述と同様の効果を得ることができる。
〈2.第2の実施形態:可変容量素子〉
次に、本発明の第2の実施形態に係る可変容量素子について説明する。図5は、本実施形態例の可変容量素子21の概略断面構成である。図5において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
本実施形態例の可変容量素子21では、可変容量素子本体2の上層及び下層に形成される応力調整部20a,20bにおいて、積層される第1の応力調整用電極19a及び第2の応力調整用電極19bの構成が、第1の実施形態と異なる例である。
本実施形態例の可変容量素子21では、図5に示すように、応力調整部20a,20bの第1の応力調整用電極19a及び第2の応力調整用電極19bが、可変容量素子本体2が形成された領域の外周部に形成されている。また、可変容量素子本体2を構成する一対の可変容量素子電極3は、上下に形成される応力調整部20a,20bを構成する応力調整用電極(図5では、第1の応力調整用電極19a)と同層に形成されている。
本実施形態例の可変容量素子21も、第1の実施形態と同様の製造方法を用いて形成することができる。この場合、各電極のパターニングを変えるのみでよい。
このような構成においても、応力調整部20a,20bでは、最外に形成される電極以外の第1及び第2の応力調整用電極19a,19bと、可変容量素子本体2と同層似形成された第1の応力調整用電極19a以外に発生するクーロン力が打ち消しあう。このため、図5の矢印sで示すクーロン力のみ残る。このため、可変容量素子本体2の誘電体層4が形成される領域は、圧縮応力をほとんど受けない領域となるため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態例では、応力調整部20a,20bにおける第1及び第2の応力調整用電極19a,19bは、可変容量素子本体2の外周部に形成する構成が採られているが、可変容量素子本体2が形成されない領域であればよい。可変容量素子本体2の可変容量素子電極3の小型化や誘電体層4の薄膜化等によりデッドスペースができるが、本実施形態例ではこれらのデッドスペースを有効に用いることができる。
〈3.第3の実施形態:可変容量素子〉
図6に、本発明の第3の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成を示す。図6において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
本実施形態例の可変容量素子31では、図6に示すように、可変容量素子本体2を構成する一方の可変容量素子電極3上層に構成される応力調整部30aは、第1の応力調整用電極29aのみが応力調整用誘電体層7を介して積層されている。また、可変容量素子本体2を構成する他方の可変容量素子電極3下層に構成される応力調整部30bでは、第2の応力調整用電極29bのみが応力調整用誘電体層7を介して積層されている。
そして、第1の応力調整用電極29a、及び第2の応力調整用電極29bは、外部端子6a,6bにそれぞれ接続されている。本実施形態例の可変容量素子31も、第1の実施形態の可変容量素子1と同様の製造方法を用いて形成することができる。
本実施形態例では、外部端子6a,6bには前記のような応力調整用電圧を印加してもよいし、印加しなくても良い。応力調整部30a,30bにおいて、それぞれ同一極性の電極が積層される構成とされているので、応力調整部30a,30bにおける電極間ではコンデンサは形成されず、また、電極間のクーロン力も発生しない。しかしながら、この場合も、可変容量素子本体2は、その上下に形成された応力調整部30a,30bに支持された構造とされているので、誘電体層4は物理的に変形しにくくなる。このため、誘電体層4にかかる圧縮応力を低減することができる。これにより、第1の実施形態の可変容量素子1と同様に、容量可変率の向上が図られる。
このように、本実施形態例では、応力調整部30a,30bにより、可変容量素子本体2を物理的に支持することにより、可変容量素子31の可変容量領域となる誘電体層4に係る圧縮応力を緩和する効果が得られる。応力調整部30a,30bによって可変容量素子本体2を物理的に支持するためには、応力調整部30a,30bに形成される第1の応力調整用電極29aや第2の応力調整用電極29bの本数を増やすことが好ましい。
ところで、図6においては、第1の応力調整用電極29a及び第2の応力調整用電極29bには、外部端子6a,6bを介して所望の電圧を印加することのできる構成とされている。しかしながら、本実施形態例では、第1の応力調整用電極29a、第2の応力調整用電極29b間では容量が形成されないため、可変容量素子本体の端子と別の端子である外部端子に接続されなくてもよく、電気的にフローティングにしてもよい。すなわち、第1の応力調整用電極29a及び第2の応力調整用電極29bに電圧が印加されない構造としても、各電極が、応力調整用誘電体層7内において梁の役割を果たすため、可変容量素子本体2の誘電体層4に係る圧縮応力を低減することができる。
ところで、上述した第1から第3の実施形態に係る可変容量素子では、可変容量素子本体の誘電体層に発生するクーロン力を応力調整部で制御することにより、容量可変率の向上が図られていた。
ここで、可変容量素子本体の誘電体層の内部の応力に関して改めて整理すると、第1から第3の実施形態で考えた2つの応力に加え、製造時において内部に発生する残留応力もあげられる。すなわち、可変容量素子本体の誘電体層の内部応力は、電極に印加される電圧に起因したクーロン力による応力とチタン酸バリウムを代表する誘電体焼結物の誘電体層の伸縮による応力(いわゆる圧電性)と、製造時に生じる残留応力との3つから成ると考えられる。
本発明の基本思想は、可変容量素子本体とは別途に応力調整部を構成することで、可変容量素子本体の内部応力へ影響を与え、可変容量素子本体の目的とする電気的特性を向上させることである。よって、応力調整部が、可変容量素子本体のそれら3つのうち少なくとも1つの応力を変化させればよい。
上述した第1から第3の実施形態に係る可変容量素子本体では、応力調整部によってもたらされるクーロン力による応力で可変容量素子本体の内部応力を調整や制御あるいは軽減することについての実施形態であった。見方を変えれば、応力調整部の内部応力を変化させることが、可変容量素子本体への応力の変化となり、可変容量素子本体の内部応力が変化を受けたと見ることができる。これらでは、製造時において内部に発生する残留応力はありきであった。
さて、残留応力にも着目すると、可変容量素子において、製造時における残留応力の絶対値を大きくすることのできる応力調整部を構成することで、容量値や可変容量率を大きくすることができる。したがって、本発明の可変容量素子における応力調整部は、製造時に発生する内部応力の絶対値をより増やす構成とすることができればよく、応力調整部を構成する応力調整用電極を制御する外部端子を必ずしも構成しなくてもよい。
第1及び第2の実施形態では、可変容量素子本体を挟んで積層される応力調整用電極は、可変容量素子電極に接続される端子とは異なる外部端子に接続され、可変容量素子本体とは別に制御される構成とされていた。すなわち、可変容量素子を構成する応力調整部と可変容量素子本体とは、電気的に分離した構造とされていた。また、応力調整部において容量が必ずしも形成される必要がない。
以下に、応力調整部を構成する応力調整用電極を制御する外部端子を構成しない例について詳述する。
〈4.第4の実施形態:可変容量素子〉
図7に、本発明の第4の実施形態に係る可変容量素子の概略断面構成を示す。
本実施形態例の可変容量素子41は、可変容量素子本体40と、可変容量素子本体40を挟んで構成される2つの応力調整部47a,47bとから構成される。
可変容量素子本体40は、誘電体層45を挟んで交互に複数層積層される第1の可変容量素子電極44aと第2の可変容量素子電極44bとから構成されている。誘電体層45は、第1の実施形態の誘電体層と同様の材料を用いることができる。
第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bは、平板状に形成されており、その構成材料は、第1の実施形態の可変容量素子電極3と同様の材料を用いることができる。そして、第1の可変容量素子電極44aは、第1の端子42に接続され、第2の可変容量素子電極44bは、第2の端子43に接続されている。第1の端子42及び第2の端子43は、可変容量素子本体40及び応力調整部47a,47bからなる積層体の、積層方向に水平な面である一方の側面と、その一方の側面に対向する他方の側面に設けられている。このため、第1の可変容量素子電極44aは、積層体の積層方向に水平な面である一方の側面に露出するように積層され、第2の可変容量素子電極44bは、その一方の側面に対向する他方の側面に露出するように積層される。
この第1の端子42及び第2の端子43間には、外部からの制御電圧、又は信号電圧が供給される。これにより、可変容量素子本体40の容量Cが可変され、また所望の容量値において、可変容量素子41が用いられる。
また、図7では、積層される複数の第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bのうち5層のみを図示したが、これに限られるものではなく、所望の層数だけ積層することができる。
応力調整部47a,47bは、応力調整用誘電体層48を挟んで複数層積層される応力調整用電極46で構成され、可変容量素子本体40の上層及び下層に積層されている。すなわち、応力調整部47a,47bは、可変容量素子本体40の誘電体層45の厚さ方向(電界が発生する方向)に積層され、可変容量素子本体40を挟持するように構成されている。
応力調整用電極46は、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bと同様の形状とされ、また、同様の形成材料で構成されている。そして、応力調整部47a,47bのそれぞれの応力調整用電極46は、全て、第1の端子42に接続されている。このため、全ての応力調整用電極46は、第1の可変容量素子電極44aと同様に、可変容量素子本体40と応力調整部47a,47bからなる積層体の一方の側面に露出するように形成されている。
応力調整部47a、47b内の応力調整用電極46を同じ端子(この場合第1の端子42)に接続することで、応力調整用電極46間では容量が形成されない。また、応力調整用電電極46は、可変容量素子本体40のうち、応力調整部47a,47bに隣接する可変容量素子電極(この場合、第1の可変容量素子電極44a)が接続される端子と同じ第1の端子42に接続されるため、応力調整部47a,47bと可変容量素子本体40との間にも容量は形成されない。図7では、各応力調整部47a,47bにおいて、積層される複数の応力調整用電極46のうち4層のみを図示したが、これに限られるものではなく、所望の層数だけ積層することができる。
ところで、本実施形態例の可変容量素子41では、応力調整部47a,47bによってもたらされる製造時の残留応力によって、可変容量素子本体40の容量値、及び容量可変率の増加を図るものである。また、残留応力は、電極材料と誘電体層の材料の焼成時の収縮率の違いによって発生するためそれら材料の収縮率の違いを大きくすればするほど、また、応力調整部47a,47bにおいては、応力調整用電極46の積層数は多ければ多いほど、残留応力を大きくすることができる。しかしながら、電極材料と誘電体層の材料の収縮率の違いが大きすぎると、また応力調整用電極46の層数が多すぎると、内部ひずみが溜まるため、焼成時に亀裂が入る等の問題がある。したがって、電極材料と誘電体層の材料の収縮率の違いや応力調整用電極46の積層数は、その残留応力が可変容量素子本体40の容量値に与える効果と、製造信頼性との兼ね合いにより決定する。なお、電極材料と誘電体層の材料の収縮率の違いを大きくする方法の1つは、応力調整用電極の材料をより収縮するものにすることである。従来の容量素子では、前記のようなNi等の金属材料は誘電体層の材料よりも非常に収縮しやすいので、誘電体層と電極との収縮率を近付けるために、Ni等の金属材料に誘電体層の材料を添加した電極用材料を用いて容量となる電極を形成することが多い。応力調整用電極には、Ni等の金属材料へ誘電体層の材料の添加量を少なくした電極用材料を用いることで、それらの収縮率の違いを大きくすることができる。
応力調整用誘電体層48は、可変容量素子本体40を構成する誘電体層45の形成材料と同様の材料を用いることができる他、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。この応力調整用誘電体層48の厚さ(応力調整用電極46間の厚さ)は可変容量素子本体40の電極間の誘電体層45と同一でもよく、異なっていてもよい。また、各応力調整用誘電体層48のそれぞれの厚さも、同一でもよく、異なっていてもよい。
本実施形態例の可変容量素子41は、第1の実施形態と同様の製造方法で製造することができる。そして、第1の可変容量素子電極44a、第2の可変容量素子電極44b、及び応力調整用電極46は全て同じ形状とされるため、同じマスクを用いて形成することができ、工程が容易である。
以下に、本実施形態例をより具体的に構成した実施例1と、応力調整部47a,47bを構成しない比較例を示し、本実施形態例における応力調整部47a,47bの効果について説明する。
[実施例1]
実施例1では、誘電体層45、及び応力調整用誘電体層48の材料としてチタン酸バリウムが主成分で少なくとも1種の副成分を含むものを用い、誘電体層45及び応力調整用誘電体層48の1層の厚さを、11μmとした。少なくとも1種の副成分とは、V、Dy、Mg、Zn、Ca、Mn、B、Zr、Mo、又はSrの元素から成るものである。
また、実施例1では、第1の可変容量素子電極44a、第2の可変容量素子電極44b及び応力調整用電極46の材料としてニッケルを用い、その厚みを2μmとした。また、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bの積層数を11層とし、各応力調整部47a、47bにおいては、応力調整用電極46の積層数を45層とした。
そして以上の構成により、電極の積層方向の厚みtが1.6mm、第1の端子42から第2の端子43の長さLが3.2mm、積層方向及び第1の端子42と第2の端子43とを結ぶ線に垂直な方向の幅Wが1.6mmの大きさの可変容量素子41を形成した。
[比較例]
次に、比較例の可変容量素子について説明する。
図8に、比較例における可変容量素子200の概略断面構成を示す。比較例の可変容量素子200では、応力調整部が構成されていない以外は、本実施形態と同様の構成とされている。したがって、図8において、図7に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
比較例の可変容量素子200では、誘電体層45の材料として実施例1と同じものを用い、1層の厚さを11μmとし、また、第1の可変容量素子電極44a及び第2の可変容量素子電極44bの材料としてニッケルを用い、その厚みを2μm、とした。また、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bの積層数を11層とした。比較例では、可変容量素子本体40の上層及び下層に応力調整部が形成されないが、その代わり、誘電体層45を実施例1の応力調整部47a,47bの厚み分だけ積層することにより、外形を実施例1と同じとした。すなわち、比較例においても、電極の積層方向の厚みtが1.6mm、第1の端子42から第2の端子43の長さLが3.2mm、積層方向及び第1の端子42と第2の端子43とを結ぶ線に垂直な方向の幅Wが1.6mmの大きさの可変容量素子200を形成した。
[測定結果]
図9A,Bに、第4の実施形態に係る実施例1の可変容量素子41、及び比較例の可変容量素子200において、第1の端子42及び第2の端子43間に、制御電圧であるDCバイアスを印加した場合の静電容量の変化、及び静電容量変化率を示す。図9Aでは、横軸にDCバイアス電圧(V)を示し、縦軸が静電容量(F)を示す。また、図9Bでは、横軸にDCバイアス電圧(V)を示し、縦軸に静電容量変化率(%)を示す。この測定は、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製Agilent 4294A
)を用いて行った。測定条件は、周波数を1kHz、印加AC電圧を500mVrmsとし、印加DCバイアス電圧を1分毎に0Vから40Vまで掃引して測定を行った。図9A,Bは、3回目の掃引データである。
図9Aに示すように、DCバイアス電圧が0Vのときの静電容量の値を見ると、実施例1の可変容量素子41では、77.6nFであるのに対し、比較例の可変容量素子200の静電容量は、67.8nFであることがわかる。また、図9Bに示すように、DCバイアス電圧0Vの静電容量の半分になる(静電容量変化率が−50%となる)DCバイアス電圧を見ると、実施例1の可変容量素子41では、29.8Vであるのに対し、比較例の可変容量素子200では、32.2Vであることがわかる。
実施例1と比較例では、可変容量素子本体40に関しては同一構成であるため、以上の測定結果から、応力調整部47a,47bの効果により静電容量が大きくなり、また、誘電体層45の比誘電率が高くなることが示された。
そして、実施例1の可変容量素子41では、比較例の可変容量素子200に比べ、小さなDCバイアス電圧で静電容量を減少させることができ、可変容量素子としての特性が優れていることがわかる。また、比較例に示した従来の積層セラミックコンデンサでも、可変容量素子の特性を有するが、実施例1のように、応力調整部47a,47bを設けることにより、可変特性を向上させることができることがわかる。
次に、第4の実施形態に係る実施例1の可変容量素子41、及び比較例の可変容量素子200において、電極の積層方向と、電極の長さ方向に発生する応力(残留応力)の測定を行った。この応力測定では、可変容量素子41、および可変容量素子200のそれぞれを、電極の幅方向の中心において電極の長さ方向の側面が露出するように切断、研磨し、その後、その切断面をさらにイオンミリングによって平滑化することにより測定試料を作製した。そして、それらの切断面の中央を応力測定領域とした。
また、この応力測定では以下の測定装置を用いた。
XRD装置:Bruker AXS製D8 DISCOVER μHR/TXS X線波長:CuKα(Kα1(1.540Å)、Kα2の混在)
光源サイズ:0.1×1mm(ポイントフォーカス)
出力:45kV、20mA
検出器:二次元検出器Hi−star
そして、可変容量素子41、及び可変容量素子200の測定試料のそれぞれの応力測定領域に、X線を照射することで応力解析用の二次元XRDデータを得、このデータに基づいて応力を解析した。応力解析においては、チタン酸バリウムの(420)回折線(いわゆる2θが118°)を用い、ピーク位置は、回折ピーク形状分析に用いられるPearson VII関数で算出した。
測定試料において、電極の積層方向における応力解析用の二次元XRDデータは、X線の照射方向に対し、電極の積層方向が平行となるように測定試料を配置することで得た。また、電極の長さ方向における応力解析用の二次元XRDデータは、X線の照射方向に対し、電極の長さ方向が平行となるように測定試料を配置することで得た。
これらの応力測定において、実施例1の可変容量素子41では、電極の積層方向における応力が48MPaで、電極の長さ方向における応力が−89MPaであることがわかった。また、比較例の可変容量素子200では、電極の積層方向における応力が−27MPaで、電極の長さ方向における応力が−87MPaであることがわかった。ここで、応力の正符号は引張応力(誘電体層を引張する方向に働く応力)を示し、負符号は圧縮応力(誘電体層を圧縮する方向に働く応力)を示す。
電極の積層方向の残留応力については、比較例における可変容量素子200では−27MPa(圧縮応力)であるのに対し、実施例1の可変容量素子41では48MPa(引張応力)であった。これにより、応力調整部を設けることで、応力が75MPa増大できる(引張応力を増大できる)ことがわかった。そして、応力調整部を設けることで、電極の積層方向の残留応力を制御できることが示された。
電極の長さ方向の残留応力については、比較例における可変容量素子200では−82MPa(圧縮応力)であるのに対し、実施例1の可変容量素子41では−89MPa(圧縮応力)であった。これにより、応力調整部をも設けることで、応力が7MPa減少できる(圧縮応力を増大できる)ことがわかった。そして、応力調整部を設けることで、電極の長さ方向の残留応力を制御できることが示された。
以上のように、応力調整部を設けることで、静電容量部の応力を制御でき、電気特性を向上させることができることがわかった。
〈5.第5の実施形態:可変容量素子〉
次に、本発明の第5の実施形態に係る可変容量素子について説明する。図10は、本実施形態例の可変容量素子51の概略断面構成である。図10において、図7に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
本実施形態例の可変容量素子51における応力調整部57a,57bは、応力調整用誘電体層58を挟んで交互に複数層積層される第1の応力調整用電極56a及び第2の応力調整用電極56bで構成され、可変容量素子本体40の上層及び下層に積層されている。すなわち、第1の応力調整用電極56a及び第2の応力調整用電極56bは、可変容量素子本体40の誘電体層45の厚さ方向(電界が発生する方向)に積層され、可変容量素子本体40を挟持するように構成されている。
第1及び第2の応力調整用電極56a,56bは、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bと同様の形状とされ、また、同様の形成材料で構成されている。そして、第1の応力調整用電極56aは、可変容量素子本体40と応力調整部57a,57bとからなる積層体の積層方向に水平な一方の側面に露出するように形成され、第1の端子42に接続されている。一方、第2の応力調整用電極56bは、可変容量素子本体40と応力調整部57a,57bとからなる積層体の積層方向に水平な他方の側面に露出するように形成されている。そして、この場合、第2の端子53は、可変容量素子本体40を構成する第2の可変容量素子電極44bにのみ接続される範囲に形成されている。すなわち、本実施形態例では、第2の応力調整用電極56bは、電気的にフローティングとされている。第2の端子53は、従来と同様にして、積層体の側面に形成した後、第2の応力調整用電極56bに接続された部分をマスキングによって除去し、第2の可変容量素子電極44bのみに接続されるよう加工することによって形成することができる。
応力調整部57a,57bでは、第2の応力調整用電極56bに電圧が印加されることがないため、第1の応力調整用電極56a及び第2の応力調整用電極56b間で容量が形成されない。また、可変容量素子本体40の最上層と最下層には、第1の端子42に接続される第1の可変容量素子電極44aが配置されるので、可変容量素子本体40と応力調整部57a,57bとの間においても容量が形成されることもない。図10では、各応力調整部57a,57bにおいて、積層される複数の第1及び第2の応力調整用電極56a,56bのうち4層のみを図示したが、これに限られるものではなく、所望の層数だけ積層することができる。その積層数の決定については、第4の実施形態と同様である。
以下に、本実施形態例をより具体的に構成した実施例2を示し、本実施形態例における応力調整部57a,57bの効果について説明する。
[実施例2]
実施例2では、誘電体層45、及び応力調整用誘電体層58の材料として実施例1と同じものを用い、誘電体層45及び応力調整用誘電体層58の1層の厚さを、11μmとした。
また、実施例2では、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bと、第1及び第
2の応力調整用電極56a,56bの材料としてニッケルを用い、その厚みを2μmとし
た。また、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bの積層数を11層とし、各応
力調整部57a,57bにおいては、第1及び第2の応力調整用電極56a,56bの積層数を45層とした。
そして以上の構成により、電極の積層方向の厚みtが1.6mm、第1の端子42から第2の端子53の長さLが3.2mm、積層方向及び第1の端子42と第2の端子53とを結ぶ線に垂直な方向の幅Wが1.6mmの大きさの可変容量素子を形成した。すなわち、実施例2の可変容量素子51は、実施例1の可変容量素子41と、応力調整用電極の構成が異なる構造とされている。
[測定結果]
図11A,Bに、実施例2の可変容量素子51において、第1の端子42及び第2の端子53間に、制御電圧であるDCバイアスを印加した場合の静電容量と静電容量変化率を示す。実施例2の可変容量素子51の測定は、前述した、実施例1及び比較例の測定と同じ条件で行った。
図11Aに示すように、実施例2の可変容量素子51では、DCバイアス電圧が0Vのときの静電容量の値は、84.3nFであり、DCバイアス電圧が0Vのときの静電容量の半分になる(静電容量変化率が−50%となる)DCバイアス電圧は、22.8Vであることがわかる。このように、実施例2の可変容量素子51では、第4の実施形態を適用した実施例1の可変容量素子41や比較例の可変容量素子200に比較して、静電容量が大きく、誘電体層45の比誘電率が高いことがわかる。
以上のように、本実施形態例の可変容量素子51の特性が第4の実施形態の可変容量素子41の特性よりも優れている理由として考えられることは、応力調整部57a,57bにおける第1及び第2の応力調整用電極56a,56bの積層位置の違いである。第4の実施形態の可変容量素子41では、全ての応力調整用電極46が第1の端子42に接続されるため、第2の端子43側にのみ、第2の端子43と応力調整用電極46との間に電極が形成されないスペースがあった。本実施形態例では、積層体の一方の側面に露出される第1の応力調整用電極56aと、他方の側面に露出される第2の応力調整用電極56bとが交互に積層されるため、第1の端子42側と第2の端子53側とで、電極が形成されないスペースがバランス良く配置される。これにより、本実施形態例の可変容量素子51では、製造時の収縮が全体的に均一になり、可変容量素子本体40の誘電体層45に対して内部応力が均一にかかる。このため、本実施形態例の可変容量素子51は、第4の実施形態における可変容量素子41に比較して、応力調整部の効果を得やすいものと考えられる。
〈6.第6の実施形態:可変容量素子〉
次に、本発明の第6の実施形態に係る可変容量素子について説明する。図12は、本実施形態例の可変容量素子61の概略断面構成である。図12において、図8に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
本実施形態例の可変容量素子61は、応力調整部67a,67bの応力調整用電極66が全てフローティングとされた例である。すなわち、本実施形態例では、応力調整用電極66に電圧は供給されていない。
本実施形態例では、応力調整部67a,67bは、応力調整用誘電体層68を挟んで複数層積層される応力調整用電極66で構成され、可変容量素子本体40の上層及び下層に積層されている。すなわち、応力調整用電極66は、可変容量素子本体40の誘電体層45の厚さ方向(電界が発生する方向)に積層され、可変容量素子本体40を挟持するように構成されている。
応力調整用電極66は、平板形状とされ、また、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bと同様の形成材料で構成されている。そして、応力調整部67a,67bのそれぞれの応力調整用電極66は全てフローティングとされるため、可変容量素子本体40と応力調整部67a,67bとからなる積層体の側面には露出されない構成とされる。このため、本実施形態例の応力調整用電極66を形成する場合には、第1、及び第2の可変容量素子電極44a,44bと異なる形状で形成する必要があり、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bを形成する場合とは異なるマスクにより形成する必要がある。
図12では、各応力調整部67a,67bにおいて、積層される複数の応力調整用電極66のうち4層のみを図示したが、これに限られるものではなく、所望の層数だけ積層することができる。その積層数の決定は、第4の実施形態と同様である。
応力調整用誘電体層68は、可変容量素子本体40を構成する誘電体層45の形成材料と同様の材料を用いることができる他、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。この応力調整用誘電体層68の厚さ(応力調整用電極66間の厚さ)は誘電体層45と同一でもよく、異なっていてもよい。また、各応力調整用誘電体層68のそれぞれの厚さも、同一でもよく、異なっていてもよい。本実施形態例では、応力調整用誘電体層68を可変容量素子本体40の誘電体層45と同様の構成とした。
また、前述したように、残留応力は、電極の材料と、誘電体層の材料の収縮率の違いによって発生するため、応力調整部67a,67bの残留応力を大きくするためには、応力調整用電極66の面積を、第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bの面積よりも大きく形成することが好ましい。応力調整用電極66の面積を第1及び第2の可変容量素子電極44a,44bの面積よりも大きくすることで、応力調整部67a,67bによってもたらされる残留応力を増加させ、可変容量素子61の特性を向上させることができる。また、応力調整用電極66の形状は、平板状でもよいが、外部の端子に接続する必要がないため、その形状を自由に設計することができる。
そして、本実施形態例の可変容量素子61でも、第4の実施形態、及び第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。
ところで、上述の第1〜第6の実施形態では、容量素子本体の誘電体層の形成材料として強誘電体材料を用い可変容量素子とする例としたが、通常の容量素子(すなわち、容量素子本体の容量が電圧の印加によって変化しない容量素子)にも、本発明を適用することができる。
この場合、応力調整用電圧を制御することで、容量素子本体の容量を変化させることができる。よって、容量素子全体としては、可変容量素子としての機能を有することになる。
また、容量が電圧の印加によって変化しない容量素子に応力調整部を構成することにより、複数の容量素子間で、静電容量の値を合わせこむことが可能となる。これにより、このような容量素子を電子機器の回路に用いた場合には、電子機器の性能のバラツキを抑えることができる。
なお、本発明に好適な容量素子の容量C(F)は、使用する周波数f(Hz)にも依存する。本発明は、インピーダンスZ(オーム)(Z=1/2πfc)が2オーム以上、好ましくは15オーム以上、さらに好ましくは100オーム以上となる容量C(F)であるの容量素子に好適である。
〈7.第7の実施形態:共振回路〉
次に、本発明の第7の実施形態に係る共振回路について説明する。本実施形態例は本発明の容量素子を共振回路に適用した例であり、特に、第1の実施形態における可変容量素子1を適用した例を示す。また、本実施形態例では、共振回路を非接触ICカードに用いた例を示す。
図13は、本実施形態例の共振回路を用いた非接触ICカード50の受信系回路部のブロック構成図である。なお、本実施形態例では、説明を簡略化するために、信号の送信系(変調系)回路部は省略している。送信系回路部の構成は、従来の非接触ICカード等と同様の構成である。また、図13において、図3に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
非接触ICカードは、図13に示すように、受信部71(アンテナ)と、整流部72と、信号処理部73とを備える。
受信部71は、共振コイル74及び共振コンデンサ75からなる共振回路で構成され、非接触ICカード50のR/W(不図示)から送信される信号をこの共振回路で受信する。なお、図13では、共振コイル74をそのインダクタンス成分74a(L)と抵抗成分74b(r:数オーム程度)とに分けて図示している。
共振コンデンサ75は、容量Coのコンデンサ75aと、受信信号の電圧値(受信電圧値)に応じて容量Cvが変化する可変容量素子本体2とが並列に接続されている。すなわち、本実施形態では、従来のアンテナ(共振コイル74とコンデンサ75aとからなる共振回路)に可変容量素子本体2を並列接続した構成となる。また、可変容量素子本体2は、図1に示すように、応力調整部9a,9bを有する可変容量素子1に組み込まれて構成されたものである。
コンデンサ75aは、従来のアンテナと同様に、常誘電体材料で形成されたコンデンサを用いる。常誘電体材料で形成されたコンデンサ75aは、比誘電率が低く、入力電圧の種類(交流または直流)及びその電圧値に関係なくその容量はほとんど変化しない。それゆえ、コンデンサ75aは、入力信号に対して非常に安定した特性を有する。従来のアンテナでは、アンテナの共振周波数がずれないようにするために、このような入力信号に対して安定性の高い常誘電体材料で形成されたコンデンサを用いる。
なお、実際の回路上では、共振コイル74のインダクタンス成分Lのばらつきや信号処理部73内の集積回路の入力端子の寄生容量などによる受信部71の容量変動(数pF程度)が存在し、その変動量は非接触ICカード50毎に異なる。それゆえ、本実施形態では、これらの影響を抑制(補正)するために、コンデンサ75aの電極パターンをトリミングして容量Coを適宜調整している。
整流部72は、整流用ダイオード76と整流用コンデンサ77とからなる半波整流回路で構成され、受信部71で受信した交流電圧を直流電圧に整流して出力する。
信号処理部73は、主に半導体素子の集積回路(LSI:Large Scale Integration)で構成され、受信部71で受信した交流信号を復調する。信号処理部73内のLSIは整流部72から供給される直流電圧により駆動される。なお、LSIとしては、従来の非接触ICカードと同様のものを用いることができる。
本実施形態例では、受信部に用いる可変容量素子は、応力調整部が構成されているために、可変の共振コンデンサそのものに印加される制御電圧だけでなく応力調整部に印加する制御電圧によっても容量を制御することが可能で、より低い電圧で大きな可変幅を得られる。また可変幅が大きくなる分共振コンデンサへの変化負担を減らせるため共振コンデンサの誘電体を厚くすれば耐圧が向上しより大きなAC電圧を扱うことが可能となる。
本実施形態例では、共振回路の可変容量素子として、第1の実施形態の可変容量素子を用いる例としたが、第2〜第6の実施形態の可変容量素子を用いる例としてもよい。なお、第4〜第6の実施形態の可変容量素子を本実施形態例の共振回路に適用する場合には、応力調整電極に印加する制御電圧は必要無く、回路を省略することができる。
1・・・可変容量素子、2・・・可変容量素子本体、3・・・可変容量素子電極、4・・・誘電体層、5a・・・第1の応力調整用電極、5b・・・第2の応力調整用電極、6a・・・外部端子、6b・・・外部端子、7・・・応力調整用誘電体層、8・・・端子、9a・・・応力調整部、9b・・・応力調整部

Claims (30)

  1. 誘電体層と、前記誘電体層を挟持して前記誘電体層に所望の電界を発生させる少なくとも1対の容量素子電極とで構成される容量素子本体と、
    前記容量素子本体において、前記容量素子電極の積層方向に引張応力を発生させる応力調整部であって、応力調整用誘電体層と、前記応力調整用誘電体層内に積層された複数の応力調整用電極とを有し、前記容量素子本体を挟持して前記誘電体層の厚さ方向に積層された応力調整部と
    を備える容量素子。
  2. 前記応力調整部は、前記容量素子本体において、前記容量素子電極の面に対して水平な方向に圧縮応力を発生させる
    請求項1に記載の容量素子。
  3. 前記応力調整部は、前記応力調整用電極に印加される電圧に起因したクーロン力による応力、チタン酸バリウムからなる応力調整用誘電体層の伸縮による応力、及び、製造時に生じる残留応力のうち、少なくとも1つの応力を変化させることで、前記容量素子本体の内部応力を調整している
    請求項1又は2に記載の容量素子。
  4. 前記応力調整部において発生する製造時の残留応力は、前記応力調整用電極を構成する材料と前記応力調整用誘電体層を構成する材料との焼成時の収縮率の違いによって発生した応力である
    請求項3に記載の容量素子。
  5. 前記容量素子電極と前記応力調整用電極は互いに平行に積層されており、
    前記応力調整用電極の面積は前記容量素子電極の面積よりも大きい
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量素子。
  6. 前記応力調整用電極の層数は、前記容量素子電極の層数よりも多い
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の容量素子。
  7. 前記応力調整用電極の端部は、前記容量素子本体及び前記応力調整部で構成される積層体の側面に設けられた外部端子に接続されている
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の容量素子。
  8. 隣り合う前記容量素子電極と前記応力調整用電極とが、同じ外部端子に接続されている
    請求項7に記載の容量素子。
  9. 前記応力調整部では、逆極性の応力調整用電圧が印加される応力調整用電極が交互に配置されている
    請求項7に記載の容量素子。
  10. 前記1対の容量素子電極間に制御電圧が印加されており、前記応力調整用電圧は、前記制御電圧よりも大きい
    請求項に記載の容量素子。
  11. 前記応力調整部の電界強度は、前記容量素子本体の電界強度よりも大きい
    請求項9又は10に記載の容量素子。
  12. 前記応力調整用誘電体層の厚さと、前記誘電体層の厚さが異なる
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の容量素子。
  13. 前記応力調整用電極の厚さと、前記容量素子電極の厚さが異なる
    請求項1〜12のいずれか一項に記載の容量素子。
  14. 隣り合う前記応力調整用電極間では容量は形成されていない
    請求項1〜13のいずれか一項に記載の容量素子。
  15. 前記応力調整部において、隣り合う少なくとも一対の応力調整用電極間で容量が形成されている
    請求項1に記載の容量素子。
  16. 前記応力調整用電極は、電気的にフローティングとされている
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の容量素子。
  17. 前記容量素子本体と前記応力調整部との間には、前記誘電体層又は前記応力調整用誘電体層と同じ材料からなる誘電体材料層が設けられている
    請求項1に記載の容量素子。
  18. 前記誘電体層は制御電圧に応じて容量が変化する強誘電体材料で構成されている
    請求項1〜17のいずれか一項に記載の容量素子。
  19. 前記強誘電体材料の比誘電率が1000を超える
    請求項18に記載の容量素子。
  20. 前記誘電体層及び前記応力調整用誘電体層は、同じ材料で形成されている
    請求項1〜19のいずれか一項に記載の容量素子。
  21. 前記容量素子本体では、誘電体層を介して、複数の容量素子電極が積層されている
    請求項1〜20のいずれか一項に記載の容量素子。
  22. 前記応力調整用電極の層数は、前記容量素子電極の層数に対し、1/5倍から400倍の層数である
    請求項1に記載の容量素子。
  23. 前記応力調整用電極は、所望の金属材料に、前記応力調整用誘電体層の材料を添加した材料で形成されている
    請求項1に記載の容量素子。
  24. 前記容量素子電極と前記応力調整用電極とは同一形状である
    請求項1に記載の容量素子。
  25. 前記容量素子電極と前記応力調整用電極とはその形状が異なる
    請求項1に記載の容量素子。
  26. 使用する周波数をf(Hz)、容量をC(F)としたときのインピーダンスがZ(Ω)=1/2πfCであるとき、前記インピーダンスZ(Ω)が2Ω以上となるように容量C(F)が設定されている
    請求項1〜25のいずれか一項に記載の容量素子。
  27. 前記容量素子電極の積層方向において、両端の容量素子電極が同電位である
    請求項1に記載の容量素子。
  28. 前記容量素子本体を狭持する2つの応力調整部のそれぞれの応力調整用電極のうち、前記容量素子本体に隣り合うそれぞれの応力調整用電極が同電位である
    請求項1に記載の容量素子。
  29. 同層に設けられる前記応力調整用電極は、一部材で構成されている
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の容量素子。
  30. 誘電体層と誘電体層を挟持して前記誘電体層に所望の電界を発生させる少なくとも1対の容量素子電極とで構成される容量素子本体と、前記容量素子本体において、前記容量素子電極の積層方向に引張応力を発生させる応力調整部であって、応力調整用誘電体層と、前記応力調整用誘電体層内に積層された複数の応力調整用電極とを有し、前記容量素子本体を挟持して前記誘電体層の厚さ方向に積層された応力調整部とを備える容量素子を含む共振コンデンサと、
    前記共振コンデンサに接続された共振コイルと
    を備える共振回路。
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