以下に、本発明の実施形態に係る積層型容量素子及びそれを備える電子機器(共振回路)の一例を、図面を参照しながら以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:積層型容量素子の基本構成例
2.第2の実施形態:コンデンサを構成する一対の内部電極が誘電体層の厚さ方向において対向しない積層型容量素子の構成例
3.第3の実施形態:コンデンサを構成する一対の内部電極の各電極部の延在方向が互いに交差する積層型容量素子の構成例
4.第4の実施形態:本発明の積層型容量素子を備える非接触受信装置の構成例
<1.第1の実施形態>
[積層型容量素子の構成]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る積層型容量素子(以下、積層型コンデンサという)の概略断面図を示す。なお、本実施形態の積層型コンデンサの構成は、入力信号の種類(交流または直流)及びその信号レベルに関係なく容量がほとんど変化しないコンデンサ(以下、定容量コンデンサという)だけでなく、可変容量コンデンサにも適用することができる。
本実施形態の積層型コンデンサ10(静電容量素子)は、5つの誘電体層11〜15と、4つの内部電極21〜24とを備える。なお、以下では、説明の便宜上適宜、誘電体層11〜13、14及び15をそれぞれ第1誘電体層〜第3誘電体層(第1誘電体部〜第3誘電体部)、下部誘電体層及び上部誘電体層と称し、内部電極21〜24を、それぞれ第1電極〜第4電極と称する。
本実施形態では、下部誘電体層14上に、第4電極24、第3誘電体層13、第3電極23、第2誘電体層12、第2電極22、第1誘電体層11、第1電極21及び上部誘電体層15を、この順で積層して積層型コンデンサ10を構成する。
また、本実施形態では、図1に示すように、第1電極21及び第4電極24は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極22及び第3電極23は、信号電源100の他方の端子に接続される。第1電極21〜第4電極24をこのように信号電源100に接続することにより、積層型コンデンサ10内では、第1電極21及び第2電極22間、並びに、第3電極23及び第4電極24間にコンデンサ(以下、内部コンデンサという)がそれぞれ形成される。なお、第2誘電体層12を挟んで形成される第2電極22及び第3電極23には、同じ極性の信号が印加されるので、第2誘電体層12には内部コンデンサは形成されない。
すなわち、本実施形態の積層型コンデンサ10では、内部コンデンサが形成される層と、内部コンデンサが形成されない層とが交互に積層された構成となる。
まず、各誘電体層の構成について説明する。第1誘電体層11〜第3誘電体層13、下部誘電体層14及び上部誘電体層15の上面(下面)の形状は、長方形であり、その長辺と短辺の比は、例えば、2:1にすることができる。
また、本実施形態では、図1に示すように、第1誘電体層11〜第3誘電体層13の厚さ(例えば2μm程度)は同じとする。ただし、本発明はこれに限定されず、第1誘電体層11〜第3誘電体層13の厚さは、例えば用途、必要とする容量等に応じて適宜設定することができる。例えば、第1誘電体層11〜第3誘電体層13の厚さを全て異ならせても良いし、第2誘電体層12の厚さのみを第1誘電体層11及び第3誘電体層13の厚さより薄くしても良い。なお、積層型コンデンサ10の薄型化(小型化)を観点では、内部コンデンサが形成されない第2誘電体層12の厚さを、第1誘電体層11及び第3誘電体層13の厚さより薄くすることが好ましい。また、下部誘電体層14及び上部誘電体層15の厚さは、例えば用途等に応じて適宜設定することができる。
本実施形態では、第1誘電体層11〜第3誘電体層13、下部誘電体層14及び上部誘電体層15を同じ誘電体材料で形成する。なお、本発明はこれに限定されず、各誘電体層の形成材料を変えても良い。しかしながら、製造の容易性の観点では、本実施形態のように、第1誘電体層11〜第3誘電体層13、下部誘電体層14及び上部誘電体層15を同じ誘電体材料で形成することが好ましい。
本実施形態の積層型コンデンサ10を定容量コンデンサとして用いる場合には、各誘電体層は、比誘電率の低い常誘電体材料で形成される。常誘電体材料としては、例えば、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリスチレン、TiO2、MgTiO2、MgTiO3、SrMgTiO2、Al2O3、Ta2O5等を用いることができる。
また、本実施形態の積層型コンデンサ10を可変容量コンデンサとして用いる場合には、各誘電体層は、比誘電率が1000を超えるような強誘電体材料で形成される。そのような強誘電体材料で各誘電体層を形成することにより、外部から印加される制御信号に応じて各誘電体層の容量を変化させることができる。
そのような強誘電体材料としては、イオン分極を生じる強誘電体材料を用いることができる。イオン分極を生じる強誘電体材料は、イオン結晶材料からなり、プラスのイオンとマイナスのイオンの原子が変位することで電気的に分極する強誘電体材料である。このイオン分極を生じる強誘電体材料は、一般に、所定の2つの元素をA及びBとすると、化学式ABO3(Oは酸素元素)で表され、ペロブスカイト構造を有する。このような強誘電体材料としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)等が挙げられる。また、強誘電体材料として、例えば、チタン酸鉛(PbTiO3)にジルコン酸鉛(PbZrO3)を混ぜ合わせたPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いてもよい。
また、強誘電体材料として、電子分極を生じる強誘電体材料を用いてもよい。この強誘電体材料では、プラスの電荷に偏った部分と、マイナスの電荷に偏った部分とに分かれて電気双極子モーメントが生じ、分極が生じる。そのような材料として、従来、Fe2+の電荷面と、Fe3+の電荷面の形成により、分極を形成して強誘電体的特性を示す希土類鉄酸化物が報告されている。この系においては、希土類元素をREとし、鉄族元素をTMとしたときに、分子式(RE)・(TM)2・O4(O:酸素元素)で表される材料が高誘電率を有することが報告されている。なお、希土類元素としては、例えば、Y、Er、Yb、Lu(特にYと重希土類元素)が挙げられ、鉄族元素としては、例えば、Fe、Co、Ni(特にFe)が挙げられる。また、(RE)・(TM)2・O4としては、例えば、ErFe2O4、LuFe2O4、YFe2O4が挙げられる。また、強誘電体材料として、異方性を有する強誘電体材料を用いてもよい。
次に、各内部電極の構成について説明する。図2(a)〜(d)に、積層型コンデンサ10の分解図を示す。なお、図2(a)〜(d)では、説明を簡略化するため、上部誘電体層15を省略する。図2(a)には、第1誘電体層11上に形成される第1電極21の電極構成を示す。図2(b)には、第2誘電体層12上に形成される第2電極22の電極構成を示す。図2(c)には、第3誘電体層13上に形成される第3電極23の電極構成を示す。そして、図2(d)には、下部誘電体層14上に形成される第4電極24の電極構成を示す。
なお、本実施形態では、図2(a)〜(d)に示すように、第1電極21〜第4電極24は、いずれもT字状の表面形状を有し、その寸法も全て同じとする。ただし、本発明はこれに限定されず、第1電極21〜第4電極24の構成(例えば、形状、寸法等)は、例えば用途、必要とする容量等を考慮して適宜設定することができる。例えば、第1電極21〜第4電極24を全て異なる構成にしてもよいし、同じ極性の信号が印加される内部電極間では同じ構成とし且つ異なる極性の信号が印加される内部電極間では異なる構成としてもよい。
第1電極21は、第1誘電体層11の一方の短辺(図2(a)では右側の短辺)に沿って形成された端子部21bと、端子部21bの中央から端子部21bの延在方向(図2(a)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部21aとで構成される。
第2電極22は、第2誘電体層12の他方の短辺(図2(b)では左側の短辺)に沿って形成された端子部22bと、端子部22bの中央から端子部22bの延在方向(図2(b)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部22aとで構成される。
第3電極23は、第2電極22と同様の構成であり、第3誘電体層13の他方の短辺に沿って形成された端子部23bと、端子部23bの中央から端子部23bの延在方向(図2(c)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部23aとで構成される。また、第3電極23は、第2誘電体層12を挟んで、第2電極22と対向する位置に配置される。
第4電極24は、第1電極21と同様の構成であり、下部誘電体層14の一方の短辺に沿って形成された端子部24bと、端子部24bの中央から端子部24bの延在方向(図2(d)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部24aとで構成される。また、第4電極24は、第1誘電体層11〜第3誘電体層13を挟んで、第1電極21と対向する位置に配置される。
なお、内部コンデンサが形成される誘電体層を挟んで形成される一対の内部電極は、誘電体層の厚さ方向において、一対の内部電極の電極部同士が対向するような位置に配置される。また、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の各電極部の延在方向の長さは、誘電体層の厚さ方向において、一対の内部電極の電極部同士が対向するように設定される。すなわち、内部コンデンサを構成する一対の内部電極のうち、一方の内部電極を他方の内部電極の形成面に投影した際に、一方の内部電極の電極部の投影パターンが他方の内部電極の電極部と重なるように一対の内部電極の配置位置及び電極部の延在長さを設定する。なお、以下では、一方の内部電極の電極部の投影パターンと他方の内部電極の電極部とが重なる領域を対向電極領域という。
また、本実施形態では、積層型コンデンサ10内に形成される複数の内部コンデンサにおいて、対向電極領域の面積が均一となるように、各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さを設定する。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、用途、必要とする容量等に応じて、内部コンデンサの対向電極領域の面積が内部コンデンサ毎に異なるように、各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さを設定してもよい。
なお、図示しないが、積層型コンデンサ10は、信号電源100の一対の端子に例えばリード線等を介して接続される一対の外部端子を有する。そして、第1電極21及び第4電極24の端子部21b及び24bは、一方の外部端子に接続され、第2電極22及び第3電極23の端子部22b及び23bは、他方の外部端子に接続される。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、内部電極毎に個別に外部端子を設け、コンデンサを回路上に実装した際に、回路の配線により第1電極21及び第4電極24、並びに、第2電極22及び第3電極23がそれぞれ電気的に接続されるようにしてもよい。
また、本実施形態の積層型コンデンサ10を可変容量コンデンサとして用いる場合には、一対の外部端子は、信号電源100だけでなく、制御電源の端子にも接続される。この際、積層型コンデンサ10は、バイアス除去用コンデンサを介して信号電源100に接続され、制御電源には電流制限抵抗を介して接続される。
第1電極21〜第4電極24は、例えば、金属微粉末(Pd、Pd/Ag、Ni等)を含む導電ペーストを用いて形成される。これにより、積層型コンデンサ10の製造コストを低減することができる。なお、本実施形態では、第1電極21〜第4電極24は、同じ材料で形成する。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば用途等に応じて、第1電極21〜第4電極24を互いに異なる材料で形成してもよいし、内部コンデンサを構成する一対の内部電極毎に形成材料を変えてもよい。
また、本実施形態では、第1電極21〜第4電極24の厚さは、同じとする。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば用途等に応じて、第1電極21〜第4電極24の厚さが互いに異なるようにしてもよいし、内部コンデンサを構成する一対の内部電極毎に厚さを変えてもよい。
上述のように、本実施形態の積層型コンデンサ10では、各内部電極の構成、並び、各誘電体層の構成を同じにするので、積層型コンデンサ10内に形成される2つの内部コンデンサの容量(C1)は同じになる。なお、本発明はこれに限定されず、例えば用途等に応じて、各内部電極の構成、並び、各誘電体層の構成を適宜異ならせ、2つの内部コンデンサの容量が互いに異なるようにしてもよい。
図3に、本実施形態の積層型コンデンサ10の等価回路を示す。上述のように、本実施形態では、積層型コンデンサ10内に形成される2つの内部コンデンサの容量C1は同じになるので、積層型コンデンサ10の等価回路は、信号電源100に対して容量C1の2つの内部コンデンサ16及び17を並列接続した回路となる。この場合、本実施形態の積層型コンデンサ10全体の容量は2×C1となる。
[積層型コンデンサの作製方法]
次に、本実施形態の積層型コンデンサ10の作製方法の一例を簡単に説明する。まず、上述した誘電体材料からなるシート部材(厚さは、例えば2μm程度)を用意する。なお、このシート部材が、上述した第1誘電体層11〜第3誘電体層13及び下部誘電体層14のいずれかになる。
次いで、例えばPd、Pd/Ag、Ni等の金属微粉末をペースト化した導電ペーストを調製する。そして、その導電ペーストを内部電極の形状(T字状)に対応する開口部が形成されたマスクを介して、シート部材の一方の表面に塗布(シルク印刷等)して内部電極を形成する。そして、本実施形態では、この一方の表面に内部電極が形成されたシート部材(以下、電極付シート部材という)を合計4枚作製する。
次いで、上述のようにして用意した4枚の電極付シート部材を、内部電極とシート部材とが交互に配置されるように積層する。この際、各内部電極が、図2(a)〜(d)に示すような形態で配置されるように積層する。すなわち、上側の電極付シート部材から、各内部電極の端子部の位置が、シート部材の一方の短辺付近(図2では右側短辺)、他方の短辺付近(図2では左側短辺)、他方の短辺付近及び一方の短辺付近となるように4枚の電極付シート部材を積層する。次いで、別途用意した内部電極が形成されていないシート部材を、内部電極が露出した側の表面上に積層する。この別途用意したシート部材は、上部誘電体層15になる。
次いで、その積層部材を加熱圧着する。そして、加熱圧着した部材を還元性雰囲気中で、高温焼成してシート部材と導電ペースト層(内部電極)とを一体化させる。本実施形態では、このようにして積層型コンデンサ10を作製する。
なお、積層型コンデンサ10の電極抵抗を低減するために、第2誘電体層12を形成せずに、第3電極23上に第2電極22を直接形成して(導電ペーストを2度塗りして)、内部電極の膜厚を厚くする手法も考えられる。しかしながら、この場合、第2電極22の形成工程を他の内部電極の形成工程と変える必要がある。それに対して、本実施形態の積層型コンデンサ10の製造工程では、上述のように内部電極の形成工程は全て同じであるので、上記場合に比べて、より簡易に積層型コンデンサ10を作製することができる。
[比較例1]
ここで、第1の実施形態の積層型コンデンサ10の効果を説明する前に、従来の積層型コンデンサ(比較例1)の構成について説明する。
図4に、比較例1の積層型コンデンサの概略断面図を示す。比較例1の積層型コンデンサ300は、第1の実施形態と同様に、主に、5つの誘電体層311〜315(第1誘電体層〜第3誘電体層、下部誘電体層及び上部誘電体層)と、4つの内部電極321〜324(第1電極〜第4電極)とで構成される。また、比較例1では、下部誘電体層314上に、第4電極324、第3誘電体層313、第3電極323、第2誘電体層312、第2電極322、第1誘電体層311、第1電極321及び上部誘電体層315を、この順で積層する。
さらに、比較例1の積層型コンデンサ300では、第1電極321及び第3電極323は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極322及び第4電極324は、信号電源100の他方の端子に接続される。すなわち、比較例1の積層型コンデンサ300では、異なる極性の信号が印加される内部電極が誘電体層を挟んで交互に積層された構成となる。各内部電極をこのように信号電源100に接続することにより、積層型コンデンサ300内には、誘電体層毎に内部コンデンサが形成される。
なお、比較例1では、各誘電体層の構成(例えば形状、寸法、形成材料等)は、第1の実施形態と同様とする。また、各内部電極の構成(例えば、形状、寸法、形成材料等)も、第1の実施形態と同様とする。
また、図5(a)〜(d)に、比較例1の積層型コンデンサ300の分解図を示す。なお、図5(a)〜(d)では、説明を簡略化するため、上部誘電体層315を省略する。図5(a)には、第1誘電体層311上に形成される第1電極321の電極構成を示す。図5(b)には、第2誘電体層312上に形成される第2電極322の電極構成を示す。図5(c)には、第3誘電体層313上に形成される第3電極323の電極構成を示す。そして、図5(d)には、下部誘電体層314上に形成される第4電極324の電極構成を示す。
第1電極321は、T字状の表面形状を有し、電極部321aと、端子部321bとで構成される。端子部321bは、長方形状の第1誘電体層311の一方の短辺(図5(a)では右側の短辺)に沿って形成され、電極部321aは、端子部321bの中央から端子部321bの延在方向(図5(a)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。
第2電極322は、T字状の表面形状を有し、電極部322aと、端子部322bとで構成される。端子部322bは、長方形状の第2誘電体層312の他方の短辺(図5(b)では左側の短辺)に沿って形成され、電極部322aは、端子部322bの中央から端子部322bの延在方向(図5(b)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。
第3電極323は、T字状の表面形状を有し、電極部323aと、端子部323bとで構成される。端子部322bは、長方形状の第3誘電体層313の一方の短辺(図5(c)では右側の短辺)に沿って形成され、電極部323aは、端子部323bの中央から端子部323bの延在方向(図5(c)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。また、第3電極323は、第1誘電体層311及び第2誘電体層312を挟んで、第1電極321と対向する位置に配置される。
第4電極324は、T字状の表面形状を有し、電極部324aと、端子部324bとで構成される。端子部324bは、長方形状の下部誘電体層314の他方の短辺(図5(d)では左側の短辺)に沿って形成され、電極部324aは、端子部324bの中央から端子部324bの延在方向(図5(d)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。また、第4電極324は、第2誘電体層312及び第3誘電体層313を挟んで、第2電極322と対向する位置に配置される。
なお、比較例1では、所定の内部電極を、誘電体層を挟んで隣に位置する内部電極の形成面に投影した際に、所定の内部電極の電極部の投影パターンが隣に位置する内部電極の電極部と重なるように、各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さが設定されている。
また、比較例1では、積層型コンデンサ300内に形成される複数の内部コンデンサにおいて、対向電極領域の面積が均一となるように、各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さが設定されている。すなわち、積層型コンデンサ300内に形成される3つの内部コンデンサの容量は同じになる。さらに、比較例1では、各誘電体層及び各内部電極の構成(例えば、形状、寸法、形成材料等)が第1の実施形態と同様である。それゆえ、比較例1の積層型コンデンサ300の各誘電体層に形成される内部コンデンサの容量は、第1の実施形態の積層型コンデンサ(図1)内に形成される内部コンデンサの容量C1と同じになる。
図6に、比較例1の積層型コンデンサ300の等価回路を示す。比較例1では、積層型コンデンサ300の等価回路は、信号電源100に対して容量C1の3つの内部コンデンサ316〜318を並列接続した回路となる。それゆえ、比較例1の積層型コンデンサ300全体の容量は3×C1となる。
ここで、第1の実施形態の積層型コンデンサ10及び比較例1の積層型コンデンサ300の間で、内部電極数と内部コンデンサ数との関係を比較する。第1の実施形態の積層型コンデンサ10では、4つの内部電極に対して容量C1の2つの内部コンデンサが形成される。一方、比較例1の積層型コンデンサ300では、4つの内部電極に対して容量C1の3つの内部コンデンサが形成される。
それゆえ、比較例1の積層型コンデンサ300の容量と同じ容量の積層型コンデンサを、第1の実施形態の積層型コンデンサ10で実現する場合には、第1の実施形態の内部電極の数を比較例1のそれの1.5倍にする必要がある。すなわち、比較例1の積層型コンデンサ300と第1の実施形態の積層型コンデンサ10とで同じ容量のコンデンサを作製した場合、第1の実施形態の積層型コンデンサ10の内部電極の数は、比較例1のそれより多くなる。それゆえ、第1の実施形態の積層型コンデンサ10では、比較例1に比べて、積層型コンデンサ10全体の電極抵抗(直流抵抗)をより小さくすることができる。
上述のように、本実施形態では、積層型コンデンサ10全体の電極抵抗をより小さくすることができるので、Q値の低下を抑制することができ、より高性能の積層型コンデンサ10を提供することができる。
さらに、本実施形態では、積層型コンデンサ10全体の電極抵抗をより小さくすることができるので、積層型コンデンサを可変容量コンデンサとして用いた場合には、より低い駆動電圧で積層型コンデンサの容量を変化させることができる。
また、本実施形態の積層型コンデンサ10は、上述のように、より簡易に且つ低コストで作製することができる。それゆえ、本実施形態によれば、より簡易に且つ低コストで高性能の積層型コンデンサ10を提供することができる。
[変形例1]
上記第1の実施形態では、3つの誘電体層11〜13を介して、4つの内部電極21〜24を積層し、積層型コンデンサ10内部に2つの内部コンデンサを生成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。誘電体層及び内部電極の積層数は、例えば、用途、必要とする容量等を考慮して適宜増やすことができる。変形例1では、その一例について説明する。
図7に、変形例1の積層型コンデンサの概略断面図を示す。変形例1の積層型コンデンサ30は、9つの誘電体層31〜39(第1誘電体層〜第7誘電体層、下部誘電体層及び上部誘電体層)と、8つの内部電極41〜48(第1電極〜第8電極)とを備える。また、変形例1では、下部誘電体層38上に、第8電極48、第7誘電体層37、第7電極47、第6誘電体層36、第6電極46、第5誘電体層35、第5電極45及び第4誘電体層34を、この順で積層する。さらに、変形例1では、第4誘電体層34上に、第4電極44、第3誘電体層33、第3電極43、第2誘電体層32、第2電極42、第1誘電体層31、第1電極41及び上部誘電体層39を、この順で積層する。
変形例1の積層型コンデンサ30では、第1電極41、第4電極44、第5電極45及び第8電極48が、外部の信号電源100の一方の端子に接続される。また、第2電極42、第3電極43、第6電極46及び第7電極47は、信号電源100の他方の端子に接続される。
内部電極を上述のように接続することにより、第1電極41及び第2電極42間、第3電極43及び第4電極44間、第5電極45及び第6電極46間、並びに、第7電極47及び第8電極48間にそれぞれ内部コンデンサが形成される。一方、第2電極42及び第3電極43間、第4電極44及び第5電極45間、並びに、第6電極46及び第7電極47間には内部コンデンサが形成されない。すなわち、変形例1の積層型コンデンサ30においても、第1の実施形態と同様に、内部コンデンサが形成される層と、内部コンデンサが形成されない層とが交互に積層された構成となる。
変形例1の積層型コンデンサ30は、図7に示すように、第1の実施形態の積層型コンデンサ10(図1)を2つ積層した構成である。それゆえ、変形例1では、比較例1の積層型コンデンサ300(図4)を2つ積層した構成に比べて、積層型コンデンサ30全体の電極抵抗をより小さくすることができる。
なお、変形例1では、第1の実施形態の積層型コンデンサ10(図1)を2つ積層した構成例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の実施形態の積層型コンデンサ10(図1)を3つ以上備える構成としてもよい。また、変形例1の積層型コンデンサ30(図7)において、第7電極47及び第8電極48を備えない構成にしてもよい。
さらに、第1の実施形態の積層型コンデンサ10(図1)と、比較例1の積層型コンデンサ300(図4)とを積層してもよい。この場合、積層型コンデンサの一部に、第1の実施形態の積層型コンデンサ10と同様の構成部分を備えるので、比較例1の積層型コンデンサ300(図4)を2つ積層した構成に比べて、積層型コンデンサ30全体の電極抵抗をより小さくすることができる。
上述のように、変形例1においても、積層型コンデンサ30全体の電極抵抗をより小さくすることができるので、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<2.第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極が誘電体層の厚さ方向において対向する積層型コンデンサの構成例について説明したが、本発明はこれに限定されない。内部コンデンサを構成する一対の内部電極が誘電体層の厚さ方向において対向しなくてもよい。第2の実施形態では、そのような構成例を説明する。
[積層型容量素子の構成]
図8に、本発明の第2の実施形態に係る積層型コンデンサの概略断面図を示す。なお、本実施形態の積層型コンデンサの構成は、定容量コンデンサだけでなく、可変容量コンデンサにも適用することができる。
本実施形態の積層型コンデンサ50(静電容量素子)は、5つの誘電体層51〜55と、4つの内部電極61〜64とを備える。なお、以下では、説明の便宜上適宜、誘電体層51〜53、54及び55を、それぞれ第1誘電体層〜第3誘電体層(第1誘電体部〜第3誘電体部)、下部誘電体層及び上部誘電体層と称し、内部電極61〜64を、それぞれ第1電極〜第4電極と称する。
本実施形態では、下部誘電体層54上に、第4電極64、第3誘電体層53、第3電極63、第2誘電体層52、第2電極62、第1誘電体層51、第1電極61及び上部誘電体層55をこの順で積層して積層型コンデンサ50を構成する。
また、本実施形態の積層型コンデンサ50では、図8に示すように、第1電極61及び第4電極64は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極62及び第3電極63は、信号電源100の他方の端子に接続される。第1電極61〜第4電極64をこのように信号電源100に接続することにより、積層型コンデンサ50内では、第1電極61及び第2電極62間、並びに、第3電極63及び第4電極64間に内部コンデンサがそれぞれ形成される。なお、第2誘電体層52を挟んで形成される第2電極62及び第3電極63には、同じ極性の信号が印加されるので、第2誘電体層52には内部コンデンサは形成されない。
すなわち、本実施形態の積層型コンデンサ50においても、第1の実施形態(図1)と同様に、内部コンデンサが形成される層と、内部コンデンサが形成されない層とが交互に積層された構成となる。
まず、各誘電体層の構成について説明する。第1誘電体層51〜第3誘電体層53、下部誘電体層54及び上部誘電体層55の上面(下面)の形状は、長方形であり、その長辺と短辺の比は、例えば、2:1にすることができる。
また、本実施形態では、図8に示すように、第1誘電体層51〜第3誘電体層53の厚さ(例えば2μm程度)は同じとする。ただし、本発明はこれに限定されず、第1誘電体層51〜第3誘電体層53の厚さは、例えば、用途、必要とする容量等に応じて適宜設定される。例えば、第1誘電体層51〜第3誘電体層53の厚さを全て異ならせても良いし、第2誘電体層52の厚さのみを第1誘電体層51及び第3誘電体層53の厚さより薄くしても良い。なお、積層型コンデンサ50の薄型化(小型化)を観点では、内部コンデンサが形成されない第2誘電体層52の厚さを第1誘電体層51及び第3誘電体層53の厚さより薄くすることが好ましい。
本実施形態では、第1誘電体層51〜第3誘電体層53、下部誘電体層54及び上部誘電体層55を同じ誘電体材料で形成する。なお、本発明はこれに限定されず、各誘電体層の形成材料を誘電体層毎に変えても良い。しかしながら、製造の容易性の観点では、本実施形態のように、第1誘電体層51〜第3誘電体層53、下部誘電体層54及び上部誘電体層55を同じ誘電体材料で形成することが好ましい。なお、本実施形態の各誘電体層の形成材料としては、第1の実施形態で説明した誘電体層の形成材料と同様の材料を用いることができる。
次に、各内部電極の構成について説明する。図9(a)〜(d)に、本実施形態の積層型コンデンサ50の分解図を示す。なお、図9(a)〜(d)では、説明を簡略化するため、上部誘電体層55を省略する。図9(a)には、第1誘電体層51上に形成される第1電極61の電極構成を示す。図9(b)には、第2誘電体層52上に形成される第2電極62の電極構成を示す。図9(c)には、第3誘電体層53上に形成される第3電極63の電極構成を示す。そして、図9(d)には、下部誘電体層54上に形成される第4電極64の電極構成を示す。
本実施形態では、図9(a)〜(d)に示すように、第1電極61〜第4電極64は、いずれもT字状の表面形状を有し、その寸法も全て同じとする。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば用途、必要とする容量等を考慮して、第1電極61〜第4電極64の構成(例えば、形状、寸法等)を適宜設定することができる。例えば、第1電極61〜第4電極64を全て異なる構成にしてもよいし、内部コンデンサを構成する一対の内部電極毎に形成材料を変えてもよい。
第1電極61は、第1誘電体層51の一方の短辺(図9(a)では右側の短辺)に沿って形成された端子部61bと、端子部61bの中央から端子部61bの延在方向(図9(a)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部61aとで構成される。
第2電極62は、第2誘電体層52の他方の短辺(図9(b)では左側の短辺)に沿って形成された端子部62bと、端子部62bの中央から端子部62bの延在方向(図9(b)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部62aとで構成される。
第3電極63は、第2電極62と同様の構成であり、第3誘電体層53の他方の短辺に沿って形成された端子部63bと、端子部63bの中央から端子部63bの延在方向(図9(c)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部63aとで構成される。また、第3電極63は、第2誘電体層52を挟んで、第2電極62と対向する位置に配置される。
第4電極64は、第1電極61と同様の構成であり、下部誘電体層54の一方の短辺に沿って形成された端子部64bと、端子部64bの中央から端子部64bの延在方向(図9(d)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在した電極部64aとで構成される。また、第4電極64は、第1誘電体層51〜第3誘電体層53を挟んで、第1電極61と対向する位置に配置される。
なお、内部コンデンサが形成される誘電体層を挟んで形成される一対の内部電極は、誘電体層の厚さ方向において、一対の内部電極の電極部同士が対向しないような位置に配置される。また、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の各電極部の延在方向の長さは、誘電体層の厚さ方向において、一対の内部電極の電極部同士が対向しないように設定される。すなわち、内部コンデンサを構成する一対の内部電極のうち一方の内部電極を他方の内部電極の形成面に投影した際に、一方の内部電極の電極部の投影パターンが他方の内部電極の電極部と重ならないように各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さを設定する。
また、本実施形態では、積層型コンデンサ50内に形成される複数の内部コンデンサの容量が同じになるように、各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さを設定する。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、用途、必要とする容量等に応じて、容量が内部コンデンサ毎に異なるように、各内部電極の配置位置及び電極部の延在長さを設定してもよい。
なお、図示しないが、積層型コンデンサ50は、信号電源100の一対の端子に例えばリード線等を介して接続される一対の外部端子を有する。そして、第1電極61及び第4電極64の端子部61b及び64bは、一方の外部端子に接続され、第2電極62及び第3電極63の端子部62b及び63bは、他方の外部端子に接続される。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、内部電極毎に個別に外部端子を設け、コンデンサを回路上に実装した際に、回路の配線により第1電極61及び第4電極64、並びに、第2電極62及び第3電極63がそれぞれ電気的に接続されるようにしてもよい。
また、本実施形態の積層型コンデンサ50を可変容量コンデンサとして用いる場合には、一対の外部端子は、信号電源100だけでなく、制御電源の端子にも接続される。この際、積層型コンデンサ50は、バイアス除去用コンデンサを介して信号電源100に接続され、制御電源には電流制限抵抗を介して接続される。
さらに、本実施形態では、第1電極61〜第4電極64は、第1の実施形態で説明した内部電極の形成材料と同様の材料で形成することができる。また、本実施形態の積層型コンデンサ50は、第1の実施形態と同様にして作製することができる。なお、本実施形態では、第1電極61〜第4電極64の厚さは同じとする。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば用途等に応じて、第1電極61〜第4電極64の厚さを互いに異なるようにしてもよいし、内部コンデンサを構成する一対の内部電極毎に厚さを変えてもよい。
上述のように、本実施形態の積層型コンデンサ50では、各内部電極の構成、並び、各誘電体層の構成を同じにするので、積層型コンデンサ50内に形成される2つの内部コンデンサの容量(C2)は同じになる。なお、本発明はこれに限定されず、例えば用途等に応じて、各内部電極の構成、並び、各誘電体層の構成を適宜異ならせ、2つの内部コンデンサの容量が互いに異なるようにしてもよい。
図10に、本実施形態の積層型コンデンサ50の等価回路を示す。上述のように、本実施形態では、積層型コンデンサ50内に形成される2つの内部コンデンサの容量C2は同じになるので、積層型コンデンサ50の等価回路は、信号電源100に対して容量C2の2つの内部コンデンサ56及び57を並列接続した回路となる。この場合、本実施形態の積層型コンデンサ50全体の容量は2×C2となる。
[比較例2]
ここで、誘電体層を挟んで配置された一対の内部電極が誘電体層の厚さ方向において対向しないタイプの従来の積層型コンデンサ(例えば上記非特許文献1参照:比較例2)の構成について説明する。
図11に、比較例2の積層型コンデンサの概略断面図を示す。比較例2の積層型コンデンサ350は、第2の実施形態と同様に、主に、5つの誘電体層351〜355(第1誘電体層〜第3誘電体層、下部誘電体層及び上部誘電体層)と、4つの内部電極361〜364(第1電極〜第4電極)とで構成される。また、比較例2では、下部誘電体層354上に、第4電極364、第3誘電体層353、第3電極363、第2誘電体層352、第2電極362、第1誘電体層351、第1電極361及び上部誘電体層355を、この順で積層する。
また、比較例2の積層型コンデンサ350では、第1電極361及び第3電極363は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極362及び第4電極364は、信号電源100の他方の端子に接続される。すなわち、比較例2の積層型コンデンサ350では、異なる極性の信号が印加される内部電極が誘電体層を挟んで交互に配置された構成となる。各内部電極をこのように信号電源100に接続することにより、積層型コンデンサ350内には、誘電体層毎に内部コンデンサが形成される。
なお、比較例2では、各誘電体層の構成(例えば形状、寸法、形成材料等)は、第2の実施形態と同様とする。また、各内部電極の構成(例えば、形状、寸法、形成材料等)も、第2の実施形態と同様とする。
また、図12(a)〜(d)に、比較例2の積層型コンデンサ350の分解図を示す。なお、図12(a)〜(d)では、説明を簡略化するため、上部誘電体層355を省略する。図12(a)には、第1誘電体層351上に形成される第1電極361の電極構成を示す。図12(b)には、第2誘電体層352上に形成される第2電極362の電極構成を示す。図12(c)には、第3誘電体層353上に形成される第3電極363の電極構成を示す。そして、図12(d)には、下部誘電体層354上に形成される第4電極364の電極構成を示す。
第1電極361は、T字状の表面形状を有し、電極部361aと、端子部361bとで構成される。端子部361bは、長方形状の第1誘電体層351の一方の短辺(図12(a)では右側の短辺)に沿って形成され、電極部361aは端子部361bの中央から端子部361bの延在方向(図12(a)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。
第2電極362は、T字状の表面形状を有し、電極部362aと、端子部362bとで構成される。端子部362bは、長方形状の第2誘電体層352の他方の短辺(図12(b)では左側の短辺)に沿って形成され、電極部362aは端子部362bの中央から端子部362bの延在方向(図12(b)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。
第3電極363は、T字状の表面形状を有し、電極部363aと、端子部363bとで構成される。端子部363bは、長方形状の第3誘電体層353の一方の短辺(図12(c)では右側の短辺)に沿って形成され、電極部363aは端子部363bの中央から端子部363bの延在方向(図12(c)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。また、第3電極363は、第1誘電体層351及び第2誘電体層352を挟んで、第1電極361と対向する位置に配置される。
第4電極364は、T字状の表面形状を有し、電極部364aと、端子部364bとで構成される。端子部364bは、長方形状の下部誘電体層354の他方の短辺(図12(d)では左側の短辺)に沿って形成され、電極部364aは端子部364bの中央から端子部364bの延在方向(図12(d)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。また、第4電極364は、第2誘電体層352及び第3誘電体層353を挟んで、第2電極362と対向する位置に配置される。
なお、比較例2では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極のうち一方の内部電極を他方の内部電極の形成面に投影した際に、一方の内部電極の電極部の投影パターンが他方の内部電極の電極部と重ならないように、各内部電極が構成されている。また、比較例2では、積層型コンデンサ350内に形成される各内部コンデンサの容量(C2)が均一になるように、各内部電極の例えば配置位置及び電極部の延在長さ等が設定されている。
図13に、比較例2の積層型コンデンサ350の等価回路を示す。比較例2では、積層型コンデンサ350の等価回路は、信号電源100に対して容量C2の3つの内部コンデンサ356〜358を並列接続した回路となる。それゆえ、比較例2の積層型コンデンサ350全体の容量は3×C2となる。
ここで、第2の実施形態の積層型コンデンサ50及び比較例2の積層型コンデンサ350において、内部電極数と内部コンデンサ数との関係を比較する。第2の実施形態の積層型コンデンサ50では、4つの内部電極に対して容量C2の2つの内部コンデンサが形成される。一方、比較例2の積層型コンデンサ350では、4つの内部電極に対して容量C2の3つの内部コンデンサが形成される。
それゆえ、比較例2の積層型コンデンサ350の容量と同じ容量の積層型コンデンサを、第2の実施形態の積層型コンデンサ50で実現する場合には、第2の実施形態の内部電極の数を比較例2のそれの1.5倍にする必要がある。すなわち、比較例2の積層型コンデンサ350と第2の実施形態の積層型コンデンサ50とで同じ容量のコンデンサを作製した場合、第2の実施形態の積層型コンデンサ50の内部電極の数は、比較例2のそれより多くなる。それゆえ、第2の実施形態の積層型コンデンサ50では、比較例2に比べて、積層型コンデンサ50全体の電極抵抗(直流抵抗)をより小さくすることができる。
上述のように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、積層型コンデンサ50全体の電極抵抗をより小さくすることができるので、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態の積層型コンデンサ50では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極間の距離を、第1の実施形態のそれより大きくすることができる。それゆえ、本実施形態の積層型コンデンサ50の構成は、容量のより小さな積層型コンデンサを作製する際に、より好適である。
[変形例2]
上記第2の実施形態の積層型コンデンサ50(図8)では、内部コンデンサが形成されない第2電極62及び第3電極63間を第2誘電体層52のみで構成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。第2電極62及び第3電極63間を複数の誘電体層と、その複数の誘電体層間に設けられた内部電極とで構成してもよい。変形例2では、その一例について説明する。
図14に、変形例2の積層型コンデンサの概略断面図を示す。変形例2の積層型コンデンサ70は、6つの誘電体層71〜76(第1誘電体層〜第4誘電体層、下部誘電体層及び上部誘電体層)と、5つの内部電極81〜85(第1電極〜第5電極)とを備える。
また、変形例2では、下部誘電体層75上に、第4電極84、第4誘電体層74、第3電極83、第3誘電体層73、第5電極85、第2誘電体層72、第2電極82、第1誘電体層71、第1電極81及び上部誘電体層76を、この順で積層する。
変形例2では、第2電極82及び第3電極83間の誘電体部(第2誘電体部)を、第2誘電体層72、第5電極85及び第3誘電体層73で構成したこと以外は、第2の実施形態の構成(図8)と同様である。また、各誘電体層及び各内部電極の構成も第2の実施形態のそれらと同様とする。なお、各誘電体層の厚さは同じである。ただし、第2電極82及び第3電極83間の誘電体層及び内部電極の積層数は、例えば、用途、必要とする容量等に応じて適宜変更できる。
変形例2の積層型コンデンサ70では、第1電極81及び第4電極84は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極82、第3電極83及び第5電極85は、信号電源100の他方の端子に接続される。内部電極をこのように接続することにより、変形例2では、第1電極81及び第2電極82間、第3電極83及び第4電極84間、第1電極81及び第5電極85間、並びに、第4電極84及び第5電極85間にそれぞれ内部コンデンサが形成される。
この際、変形例2では、第1電極81及び第2電極82間、並びに、第3電極83及び第4電極84間には、容量C2の内部コンデンサが形成される。また、第1電極81及び第5電極85間、並びに、第4電極84及び第5電極85間の距離は、第1電極81及び第2電極82間、並びに、第3電極83及び第4電極84間の距離の約2倍となる。それゆえ、第1電極81及び第5電極85間、並びに、第4電極84及び第5電極85間に形成される内部コンデンサの容量は約C2/2となる。
図15に、変形例2の積層型コンデンサ70の等価回路を示す。変形例2では、積層型コンデンサ70の等価回路は、信号電源100に対して容量C2の2つの内部コンデンサ77及び78、並びに、容量C2/2の2つの内部コンデンサ79及び80を並列接続した回路となる。それゆえ、変形例2の積層型コンデンサ70全体の容量は3×C2となる。すなわち、比較例2の積層型コンデンサ70と同様の容量が得られる。
ここで、変形例2の積層型コンデンサ70及び比較例2の積層型コンデンサ350の間で、内部電極数とコンデンサ全体の容量との関係を比較する。変形例2の積層型コンデンサ70では、上述のように、5つの内部電極を用いて、容量3×C2の積層型コンデンサを構成する。それに対して、比較例2の積層型コンデンサ350では、4つの内部電極を用いて、容量3×C2の積層型コンデンサを構成する。
すなわち、比較例2の積層型コンデンサ350と変形例2の積層型コンデンサ70とで同じ容量のコンデンサを作製した場合、変形例2の積層型コンデンサ70の内部電極の数は、比較例2のそれより多くなる。それゆえ、変形例2では、比較例2に比べて、積層型コンデンサ70全体の電極抵抗(直流抵抗)をより小さくすることができ、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
[変形例3]
上記第2の実施形態及び変形例2では、内部電極と誘電体層を交互に積層する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。極性の異なる信号が印加される一対の内部電極を同一面に形成してもよい。変形例3では、その一例について説明する。
図16に、変形例3の積層型コンデンサの概略断面図を示す。変形例3の積層型コンデンサ90は、3つの誘電体層91〜93(誘電体層、下部誘電体層及び上部誘電体層)と、4つの内部電極101〜104(第1電極〜第4電極)とを備える。
変形例3では、誘電体層91(第2誘電体部)の一方の表面に、第1電極101及び第2電極102が所定間隔離れて形成され、他方の表面に第3電極103及び第4電極104が所定間隔離れて形成される。また、変形例3では、上部誘電体層93は、誘電体層91の一方の側(図16では上側)に配置され、下部誘電体層92は、誘電体層91の他方の側(図16では下側)に配置される。
なお、変形例3では、誘電体層91、下部誘電体層92及び上部誘電体層93の構成(例えば形状、寸法、形成材料等)は、それぞれ、第2の実施形態の積層型コンデンサ50の第2誘電体層52、下部誘電体層54及び上部誘電体層55と同様の構成とする。また、第1電極101〜第4電極104の構成(例えば形状、寸法、形成材料等)は、それぞれ、第2の実施形態の積層型コンデンサ50の第1電極61〜第4電極64と同様の構成とする。
図17(a)及び(b)に、変形例3の積層型コンデンサ90の分解図を示す。なお、図17(a)及び(b)では、説明を簡略化するため、上部誘電体層93を省略する。図17(a)には、誘電体層91上に形成される第1電極101及び第2電極102の電極構成を示す。図17(b)には、下部誘電体層92上に形成される第3電極103及び第4電極104の電極構成を示す。
第1電極101は、T字状の表面形状を有し、電極部101aと、端子部101bとで構成される。端子部101bは、長方形状の誘電体層91の一方の短辺(図17(a)では右側の短辺)に沿って形成され、電極部101aは端子部101bの中央から端子部101bの延在方向(図17(a)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。
第2電極102は、T字状の表面形状を有し、電極部102aと、端子部102bとで構成される。端子部102bは、長方形状の誘電体層91の他方の短辺(図17(a)では左側の短辺)に沿って形成され、電極部102aは端子部102bの中央から端子部102bの延在方向(図17(a)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。
第3電極103は、T字状の表面形状を有し、電極部103aと、端子部103bとで構成される。端子部103bは、長方形状の下部誘電体層92の一方の短辺(図17(b)では左側の短辺)に沿って形成され、電極部103aは端子部103bの中央から端子部103bの延在方向(図17(b)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。また、第3電極103は、誘電体層91を挟んで、第2電極102と対向する位置に配置される。
第4電極104は、T字状の表面形状を有し、電極部104aと、端子部104bとで構成される。端子部104bは、長方形状の下部誘電体層92の一方の短辺(図17(b)では右側の短辺)に沿って形成され、電極部104aは端子部104bの中央から端子部104bの延在方向(図17(b)中のy方向)に直交する方向(x方向)に延在して形成される。また、第4電極104は、誘電体層91を挟んで、第1電極101と対向する位置に配置される。
また、変形例3の積層型コンデンサ90では、図16に示すように、第1電極101及び第4電極104は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極102及び第3電極103は、信号電源100の他方の端子に接続される。
第1電極101〜第4電極104を上述のように信号電源100に接続することにより、変形例3では、第1電極101及び第3電極103間、並びに、第2電極102及び第4電極104間に同じ容量(C2)の内部コンデンサがそれぞれ形成される。さらに、変形例3では、同一面に形成された第1電極101及び第2電極102間(第1誘電体部)、並びに、第3電極103及び第4電極104間(第3誘電体部)に同じ容量(C3)の内部コンデンサがそれぞれ形成される。
図18に、変形例3の積層型コンデンサ90の等価回路を示す。変形例3では、積層型コンデンサ90の等価回路は、容量C2の2つの内部コンデンサ95及び96、並びに、容量C3の2つの内部コンデンサ97及び98を信号電源100に並列接続した回路となる。それゆえ、変形例3の積層型コンデンサ90全体の容量は2×C2+2×C3となる。
上述のように、変形例3の積層型コンデンサ90では、4つの内部電極に対して4つの内部コンデンサが形成される。しかしながら、同一面に形成された一対の内部電極間の内部コンデンサの全容量2×C3が容量C2より小さくなるように、同一面に形成された一対の内部電極を構成すれば、変形例3の積層型コンデンサ90全体の容量は比較例2のそれより小さくなる。この条件を満たすためには、例えば、同一面に形成された一対の内部電極間の間隔を誘電体層91の厚さより十分広くすればよい。
すなわち、変形例3では、同一面に形成された一対の内部電極間の間隔を適宜設定することにより、変形例3の積層型コンデンサ90全体の容量を比較例2のそれより小さくすることができる。
この場合、比較例2の積層型コンデンサ350と変形例3の積層型コンデンサ90とで同じ容量のコンデンサを作製した場合、変形例3の積層型コンデンサ90の内部電極の数は、比較例2のそれより多くなる。それゆえ、変形例3では、比較例2に比べて、積層型コンデンサ90全体の電極抵抗(直流抵抗)をより小さくすることができ、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
<3.第3の実施形態>
[電極間の位置ずれの影響]
上記第1及び第2の実施形態では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の電極部の延在方向が互いに平行である例を説明した。しかしながら、このような電極構成でより小さい容量の積層型コンデンサを作製する場合、一対の内部電極間の位置ずれによる特性への影響が大きくなる。そこで、ここでは、本実施形態の積層型コンデンサの構成を説明する前に、まず、内部電極間の位置ずれにより生じる問題を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図19に、一般的な積層型の積層型コンデンサの概略構成を示す。なお、図19は、積層型コンデンサの分解図である。積層型コンデンサは、一般に、板状の誘電体層400及び誘電体層400上に形成された上電極401(内部電極)からなる層と、板状の誘電体層403及び誘電体層403上に形成された下電極402からなる層とを積層して構成される。
上電極401は誘電体層400の表面において、その一方の短辺部から誘電体層400の長辺に沿って長さLで延在して形成される。また、誘電体層403及び下電極402からなる層は、誘電体層400及び上電極401からなる層と同じ構成である。
そして、誘電体層400及び上電極401からなる層と、誘電体層403及び下電極402からなる層を積層する際、電極が形成されていない表面部(誘電体層400及び403が露出している面領域)が互いに重ならないように両者の層を重ねる。これにより、上電極401を下電極402側に投影した際の投影パターンと下電極402とが重なる領域(対向電極領域)が形成される。
ここで、対向電極領域の面積をS、誘電体層400の厚さ(電極間距離)をd、誘電体層400の比誘電率をεr、そして、真空の誘電率をε0とすると、上電極401及び下電極402間の容量Cは、C=ε0×εr×(S/d)で表される。また、各内部電極の幅をW、厚さをt、内部電極の積層数をN、電極の比抵抗をρとすると、積層型コンデンサの直流抵抗Rは、R=ρ×L/(W×t×N)で表される。
それゆえ、積層型コンデンサにおいて、小容量のコンデンサを作製するためには、内部電極間の距離d(誘電体層400の厚さ)を大きくする及び/又は対向電極領域の面積Sを小さくする必要がある。しかしながら、積層型コンデンサを可変容量コンデンサとして用いる場合、内部電極間の距離dを大きくすると、容量を変化させるための制御電圧が大きくなり(例えば、約50〜100V程度になる)、低電圧駆動(例えば、約5V以下)の用途には適さない。それゆえ、積層型コンデンサで小容量のコンデンサを作製するためには、対向電極領域の面積Sをより小さくする、すなわち、より小さな電極を形成する必要がある。
対向電極領域の面積Sは、電極長さLを短くすること、または、電極の幅Wを狭くすることによって小さくすることができるが、この場合、電極全体が小さくなるので、電極の抵抗R(直流抵抗)が大きくなる。この問題に対して、積層型コンデンサでは、その抵抗値は電極の積層数に反比例するので、電極の積層数Nを増やすことにより、上記抵抗Rの問題を解消することができる。
しかしながら、積層型コンデンサにおいて電極の積層数Nが増えると、内部コンデンサが形成される誘電体層を挟んで対向する一対の内部電極間の相対的な位置ずれによる容量変化への影響が大きくなる。なお、誘電体層を挟んで対向する一対の内部電極間の相対的な位置ずれ量及び位置ずれ方向は、電極形成時の製造プロセス(例えば、マスクの位置合わせ等)の精度により変化する。
そして、積層型コンデンサにおいて、各内部コンデンサが形成される誘電体層を挟んで対向する一対の内部電極間に位置ずれが発生すると、内部コンデンサ毎にその容量が変化する。その結果、積層型コンデンサ全体の容量のばらつきが大きくなり、所望の容量を有する積層型コンデンサを安定して製造することができなくなる。このような内部電極間の位置ずれの問題は、積層型コンデンサが定容量コンデンサである場合だけでなく、可変容量コンデンサである場合にも同様に生じる。
そこで、本実施形態では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極間に相対的な位置ずれが生じても容量のばらつきを抑制できる積層型コンデンサの構成例を説明する。
[積層型容量素子の構成]
図20に、本発明の第3の実施形態に係る積層型コンデンサの概略断面図を示す。なお、本実施形態の積層型コンデンサの構成は、定容量コンデンサだけでなく、可変容量コンデンサにも適用することができる。
本実施形態の積層型コンデンサ110(静電容量素子)は、5つの誘電体層111〜115(第1誘電体層〜第3誘電体層、下部誘電体層及び上部誘電体層)と、4つの内部電極121〜124(第1電極〜第4電極)とを備える。
本実施形態では、下部誘電体層114上に、第4電極124、第3誘電体層113、第3電極123、第2誘電体層112、第2電極122、第1誘電体層111、第1電極121及び上部誘電体層115を、この順で積層して積層型コンデンサ110を構成する。
また、本実施形態の積層型コンデンサ110では、図20に示すように、第1電極121及び第4電極124は、外部の信号電源100の一方の端子に接続され、第2電極122及び第3電極123は、信号電源100の他方の端子に接続される。第1電極121〜第4電極124をこのように信号電源100に接続することにより、積層型コンデンサ110内には、第1電極121及び第2電極122間、並びに、第3電極123及び第4電極124間に内部コンデンサがそれぞれ形成される。なお、第2誘電体層112を挟んで形成される第2電極122及び第3電極123に印加される信号の極性は同じになり、両者の間にはコンデンサは形成されない。
まず、各誘電体層の構成について説明する。第1誘電体層111〜第3誘電体層113(第1誘電体部〜第3誘電体部)、下部誘電体層114及び上部誘電体層115の上面(下面)の形状は、長方形であり、その長辺と短辺の比は、例えば、2:1にすることができる。
本実施形態では、図20に示すように、第1誘電体層111〜第3誘電体層113の厚さ(例えば2μm程度)は同じとする。ただし、本発明はこれに限定されず、第1誘電体層111〜第3誘電体層113の厚さは、例えば、用途、必要とする容量等に応じて適宜設定される。例えば、第1誘電体層111〜第3誘電体層113の厚さを全て異ならせても良いし、第2誘電体層112の厚さのみを第1誘電体層111及び第3誘電体層113の厚さより薄くしても良い。なお、積層型コンデンサ110の薄型化(小型化)を観点では、内部コンデンサが形成されない第2誘電体層112の厚さを第1誘電体層111及び第3誘電体層113の厚さより薄くすることが好ましい。
また、本実施形態では、第1誘電体層111〜第3誘電体層113、下部誘電体層114及び上部誘電体層115を同じ誘電体材料で形成する。なお、本発明はこれに限定されず、各誘電体層の形成材料を変えても良い。しかしながら、製造の容易性を観点では、本実施形態のように、第1誘電体層111〜第3誘電体層113、下部誘電体層114及び上部誘電体層115を同じ誘電体材料で形成することが好ましい。なお、本実施形態の各誘電体層の形成材料としては、第1の実施形態で説明した誘電体層の形成材料と同様の材料を用いることができる。
次に、各内部電極の構成について説明する。図21(a)〜(d)に、本実施形態の積層型コンデンサ110の分解図を示す。なお、図21(a)〜(d)では、説明を簡略化するため、上部誘電体層115を省略する。図21(a)には、第1誘電体層111上に形成される第1電極121の電極構成を示す。図21(b)には、第2誘電体層112上に形成される第2電極122の電極構成を示す。図21(c)には、第3誘電体層113上に形成される第3電極123の電極構成を示す。そして、図21(d)には、下部誘電体層114上に形成される第4電極124の電極構成を示す。
第1電極121は、略L字状の形状を有し、電極部121aと、端子部121bとで構成される。端子部121bは、第1誘電体層111の一方の短辺(図21(a)上では右側の短辺)に沿って形成される。また、電極部121aは、端子部121bの一方の長辺側(図21(a)上では下側の長辺側)の位置から端子部121bの延在方向(図21(a)中のy方向)に直交する方向(x方向:第1方向)に延在して形成される。
第2電極122は、略U字状の形状を有し、電極部122aと、端子部122bとで構成される。端子部122bは、L字状の形状を有し、第2誘電体層112の他方の短辺(図21(b)面上では左側の短辺)に沿って形成される短辺部分と、第2誘電体層112の一方の長辺(図21(b)面上では上側長辺)に沿って形成される長辺部分とで構成される。そして、電極部122aは、端子部122bの長辺部分の端部から、その長辺部分の延在方向(図21(b)中のx方向)に直交する方向(y方向:第2方向)に延在して形成される。すなわち、本実施形態では、第2電極122の電極部122aの延在方向と、第1電極121の電極部121aの延在方向とが直交する。
第3電極123は、第2電極122と同様に略U字状の形状を有し、電極部123aと、端子部123bとで構成される。端子部123bは、L字状の形状を有し、第3誘電体層113の他方の短辺(図21(c)面上では左側の短辺)に沿って形成される短辺部分と、第3誘電体層113の一方の長辺(図21(c)面上では上側長辺)に沿って形成される長辺部分とで構成される。そして、電極部123aは、端子部123bの長辺部分の端部から、その長辺部分の延在方向(図21(c)中のx方向)に直交する方向(y方向:第2方向)に延在して形成される。また、第3電極123は、第2誘電体層112を挟んで、第2電極122と対向する位置に配置される。
第4電極124は、第1電極121と同様に略L字状の形状を有し、電極部124aと、端子部124bとで構成される。端子部124bは、下部誘電体層114の一方の短辺(図21(d)上では右側の短辺)に沿って形成される。また、電極部124aは、端子部124bの一方の長辺側(図21(d)上では下側の長辺側)の位置から端子部124bの延在方向(図21(d)中のy方向)に直交する方向(x方向:第1方向)に延在して形成される。すなわち、本実施形態では、第4電極124の電極部124aの延在方向と、第3電極123の電極部123aの延在方向とが直交する。また、第4電極124は、第1誘電体層111〜第3誘電体層113を挟んで、第1電極121と対向する位置に配置される。
第1電極121〜第4電極124は、第1の実施形態で説明した内部電極の形成材料と同様の材料で形成することができる。なお、本実施形態の積層型コンデンサ110は、第1の実施形態と同様にして作製することができる。
さらに、本実施形態では、第1電極121〜第4電極124の厚さは同じとする。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば用途等に応じて、第1電極121〜第4電極124の厚さを互いに異なるようにしてもよいし、内部コンデンサを構成する一対の内部電極毎に厚さを変えてもよい。
また、図示しないが、積層型コンデンサ110は、信号電源100の一対の端子に例えばリード線等を介して接続される一対の外部端子を有する。そして、第1電極121及び第4電極124の端子部121b及び124bは、一方の外部端子に接続され、第2電極122及び第3電極123の端子部122b及び123bは、他方の外部端子に接続される。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、内部電極毎に個別に外部端子を設け、コンデンサを回路上に実装した際に、回路の配線により第1電極121及び第4電極124、並びに、第2電極122及び第3電極123がそれぞれ電気的に接続されるようにしてもよい。
また、本実施形態の積層型コンデンサ110を可変容量コンデンサとして用いる場合には、一対の外部端子は、信号電源100だけでなく、制御電源の端子にも接続される。この際、積層型コンデンサ110は、バイアス除去用コンデンサを介して信号電源100に接続され、制御電源には電流制限抵抗を介して接続される。
[内部電極の設計概要]
次に、本実施形態の積層型コンデンサ110の内部電極の設計概要を説明する。本実施形態の積層型コンデンサ110では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極(例えば第1電極121及び第2電極122)は、誘電体層の厚さ方向において、一対の内部電極の電極部同士が交差する位置に配置される。
すなわち、本実施形態では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極のうち一方の内部電極を他方の内部電極の形成面に投影した際に、一方の内部電極の電極部の投影パターンが他方の内部電極の電極部と交差するように、各内部電極を構成する。
また、本実施形態では、各内部電極の形状及び寸法を、必要とする容量、抵抗値及び想定される電極間の最大の位置ずれ量を考慮して各内部電極の構成を設定する。
ここで、位置ずれに対する本実施形態の積層型コンデンサ110の設計概要を、図22を参照しながらより具体的に説明する。なお、図22は、第1誘電体層111を挟んで形成される第1電極121及び第2電極122のうち、第1電極121を第2電極122の形成面に投影した際の第1電極121の投影パターン121pと、第2電極122との重なり状態を示す図である。
本実施形態では、第2誘電体層112の長辺方向(x方向)及び短辺方向(y方向)の位置ずれ量が最大になっても、対向電極領域Saの面積が変化しないように、図22中に示す主な寸法パラメータ(ΔL1、ΔL2及びS1〜S3)を設定する。より具体的には、図22中に示す各寸法パラメータ(ΔL1、ΔL2及びS1〜S3)が、例えば、次のような条件を満たすように各内部電極の形状及び配置位置を設定する。
なお、図22に示すΔL1は、第1電極121の投影パターン121pの電極部121paの先端と、第2電極122の電極部122aとの距離である。ΔL2は、第2電極122の電極部122aの先端と、第1電極121の投影パターン121pの電極部121paとの距離である。S1は、第1電極121の投影パターン121pの電極部121paの先端と、第2電極122の端子部122bの短辺部分との距離である。S2は、第1電極121の投影パターン121pの端子部121pbと、第2電極122の電極部122aとの距離である。そして、S3は、第1電極121の投影パターン121pの電極部121paと、第2電極122の端子部122bの長辺部分との距離である。
本実施形態では、第1電極121と第2電極122との相対的な位置ずれ量が想定される最大値になった場合でも、ΔL1≧0、ΔL2≧0、S1≧0、S2≧0及びS3≧0の条件が満たされるように、第1電極121及び第2電極122の構成を設計する。なお、第3電極123及び第4電極124に対しても、第1電極121及び第2電極122と同様に、設計する。なお、各内部電極の形状は、上述した設計概要の条件を満たすような形状であれば任意の形状を適用することができる。
図22中に示す各寸法パラメータ(ΔL1、ΔL2及びS1〜S3)を、上記条件を満たすように各内部電極を設計することにより、内部コンデンサを構成する一対の内部電極間に位置ずれが生じても、その対向電極領域Saの面積は変化しない。それゆえ、本実施形態の積層型コンデンサ110では、小容量の積層型コンデンサを製造する場合であっても、誘電体層を挟んで対向する一対の内部電極の位置ずれに関係なく、所望の容量の積層型コンデンサ110を安定して作製することができる。
また、本実施形態では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の電極部の幅を狭くすることで、容易により小さな容量の積層型コンデンサを作製することができる。
さらに、本実施形態では、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の間に位置ずれが発生しても対向電極領域Saの面積を一定(容量を不変)にすることができるので、一つの内部コンデンサ当たりの電極面積を小さくして積層数を増やすことができる。これにより、積層型コンデンサ全体の容量をより大きくすることができ且つ電極抵抗をより低減することができる。また、本実施形態では、電極の形成が容易であり且つ低コストである。
なお、本実施形態の積層型コンデンサ110では、図20に示すように、第1の実施形態(図1)と同様に、内部コンデンサが形成される層と、内部コンデンサが形成されない層とが交互に積層された構成となる。それゆえ、本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
[変形例4]
内部コンデンサを構成する一方の内部電極の電極部の延在方向と、他方の部内部電極の電極部の延在方向とが交差するタイプの積層型コンデンサの構成は、上記第3の実施形態の構成例に限定されない。変形例4では、そのようなタイプの積層型コンデンサにおいて、種々の変形例を説明する。なお、変形例4の積層型コンデンサの構成は、内部電極の構成を第3の実施形態と変えたこと以外は、第3の実施形態(図20及び図21)と同様とする。
(1)変形例4−1
図23に、変形例4−1の積層型コンデンサにおける、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の概略構成を示す。なお、図23では、説明を簡略化するため、内部コンデンサを構成する一対の内部電極(上電極141及び下電極142)の各上面図と、誘電体層145の上面図とを重ねて示す。
上電極141は、V字状の形状を有し、電極部141aと、端子部141bとで構成される。端子部141bは、誘電体層145の一方の短辺(図23面上では右側の短辺)に沿って形成される。また、電極部141aは、端子部141bの一方の端部から端子部141bの延在方向(図23中のy方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。図23の図面上では、電極部141aは、誘電体層145の表面の右上の角部からそれに対向する左下の角部に向かう方向に延在する。
下電極142は、V字状の形状を有し、図23中のy方向に対して上電極141と対称形状を有する。下電極142は、電極部142aと、端子部142bとで構成される。端子部142bは、誘電体層145の他方の短辺(図23面上では左側の短辺)に沿って形成される。また、電極部142aは、端子部142bの一方の端部から端子部141bの延在方向(図23中のy方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。図23の図面上では、電極部142aは、誘電体層145の表面の左上の角部からそれに対向する右下の角部に向かう方向に延在する。
なお、変形例4−1では、下電極142の電極部142aの延在方向と、上電極141の電極部141aの延在方向とが直交しないように構成する。また、この例では、上電極141の電極部141aの一部と、下電極142の電極部142aの一部とが、誘電体層145の厚さ方向において対向するように(対向電極領域Saが形成されるように)上電極141及び下電極142の例えば寸法等が設定される。さらに、この例では、第3の実施形態と同様に、誘電体層145の長辺方向(x方向)及び短辺方向(y方向)の位置ずれ量が最大になっても、対向電極領域Saが変化しないように、上電極141及び下電極142の例えば寸法、形状、配置位置等が設定される。
(2)変形例4−2
図24に、変形例4−2の積層型コンデンサにおける、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の概略構成を示す。なお、図24では、説明を簡略化するため、内部コンデンサを構成する一対の内部電極(上電極151及び下電極152)の各上面図と、誘電体層155の上面図とを重ねて示す。
上電極151は、V字状の形状を有し、電極部151aと、端子部151bとで構成される。端子部151bは、誘電体層155の一方の長辺(図24面上では下側の長辺)に沿って形成される。また、電極部151aは、端子部151bの一方の端部から端子部151bの延在方向(図24中のx方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。図24の図面上では、電極部151aは、誘電体層155の表面の右下の角部からそれに対向する左上の角部に向かう方向に延在する。
下電極152は、V字状の形状を有し、図24中のx方向に対して上電極151と対称形状を有する。下電極152は、電極部152aと、端子部152bとで構成される。端子部152bは、誘電体層155の他方の長辺(図24面上では上側の長辺)に沿って形成される。また、電極部152aは、端子部152bの一方の端部から端子部151bの延在方向(図24中のx方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。図24の図面上では、電極部152aは、誘電体層155の表面の右上の角部からそれに対向する左下の角部に向かう方向に延在する。
なお、変形例4−2では、下電極152の電極部152aの延在方向と、上電極151の電極部151aの延在方向とが直交するように構成する。また、この例では、上電極151の電極部151aの一部と、下電極152の電極部152aの一部とが、誘電体層155の厚さ方向において対向するように(対向電極領域Saが形成されるように)上電極151及び下電極152の例えば寸法等が設定される。さらに、この例では、第3の実施形態と同様に、誘電体層155の長辺方向(x方向)及び短辺方向(y方向)の位置ずれ量が最大になっても、対向電極領域Saが変化しないように、上電極151及び下電極152の例えば寸法、形状、配置位置等が設定される。
変形例4−2では、上電極151及び下電極152の各端子部を誘電体層155の長辺の延在方向(x方向)に沿って、その近傍に形成するので、上電極151及び下電極152の電極部の長さを変形例4−1に比べて短くすることができる。それゆえ、変形例4−2では、積層型コンデンサの電極抵抗値をより低減することができる。
(3)変形例4−3
図25に、変形例4−3の積層型コンデンサにおける、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の概略構成を示す。なお、図25では、説明を簡略化するため、内部コンデンサを構成する一対の内部電極(上電極161及び下電極162)の各上面図と、誘電体層165の上面図とを重ねて示す。
まず、上電極161の構成について説明する。上電極161は、略三角状の形状を有し、電極部161aと、端子部161bとで構成される。電極部161aは、誘電体層165の長辺に沿う方向(図25中のx方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。具体的には、図25の図面上では、電極部161aは、誘電体層165の表面の左上の角部からそれに対向する右下の角部に向かう方向に延在する。
端子部161bは、第1端子部161c及び第2端子部161dで構成される。第1端子部161cは、誘電体層165の一方の長辺(図面上では下側の長辺)に沿って、その長辺近傍に形成される。そして、第1端子部161cの一方の端部が、電極部161aの一方の端部に接続される。
また、第2端子部161dは、誘電体層165の長辺に沿う方向(図25中のx方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在し且つ電極部161aの延在方向と交差する方向に延在して形成される。図25の図面上では、第2端子部161dは、誘電体層165の表面の右上の角部からそれに対向する左下の角部に向かう方向に延在する。そして、第2端子部161dの一方の端部は、電極部161aの他方の端部(第1端子部161cと接続されていない側の端部)に接続され、他方の端部は、第1端子部161cの他方の端部に接続される。
電極部161a、第1端子部161c及び第2端子部161dを上述のように構成することにより、上電極161内には、これらの部により三角状の開口部161eが画成される。なお、開口部161eの形状はこれに限定されず、任意の形状にすることができる。
次に、下電極162の構成について説明する。下電極162は、V字状の形状を有し、電極部162aと、端子部162bとで構成される。下電極162は、上記変形例4−2(図24)で説明した下電極152と同様の構成である。
なお、変形例4−3では、下電極162の電極部162aの延在方向と、上電極161の電極部161aの延在方向とが略直交するように構成する。また、この例では、上電極161の電極部161aの一部と、下電極162の電極部162aの一部とが、誘電体層165の厚さ方向において対向するように(対向電極領域Saが形成されるように)上電極161及び下電極162の例えば寸法等が設定される。さらに、この例では、第3の実施形態と同様に、誘電体層165の長辺方向(x方向)及び短辺方向(y方向)の位置ずれ量が最大になっても、対向電極領域Saが変化しないように、上電極161及び下電極162の例えば寸法、形状、配置位置等が設定される。
変形例4−3では、上電極161の端子部161bの領域(面積)を広くすることができるので、積層型コンデンサの電極抵抗値をより小さくすることができる。
(4)変形例4−4
図26に、変形例4−4の積層型コンデンサにおける、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の概略構成を示す。なお、図26では、説明を簡略化するため、内部コンデンサを構成する一対の内部電極(上電極171及び下電極172)の各上面図と、誘電体層175の上面図とを重ねて示す。
まず、上電極171の構成について説明する。上電極171は、電極部171aと、端子部171bとで構成される。電極部171aは、誘電体層175の長辺に沿う方向(図26中のx方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。具体的には、図26の図面上では、電極部171aは、誘電体層175の表面の左上の角部からそれに対向する右下の角部に向かう方向に延在する。
端子部171bは、略L字状の形状を有し、その底辺部が誘電体層175の一方の長辺(図26面上では下側の長辺)に沿って、その近傍に形成される。そして、略L字状の端子部171bの一方の端部に電極部171aの一方の端部が接続され、他方の端部に電極部171aの他方の端部が接続される。その結果、上電極171内には、電極部171a及び端子部171bにより、矩形状の開口部171dが画成される。なお、開口部171dの形状はこれに限定されず、任意の形状にすることができる。
次に、下電極172の構成について説明する。下電極172は、電極部172aと、端子部172bとで構成される。電極部172aは、誘電体層175の長辺に沿う方向(図26中のx方向)に対して斜め方向(直交しない方向)に延在して形成される。具体的には、図26の図面上では、電極部172aは、誘電体層175の表面の右上の角部からそれに対向する左下の角部に向かう方向に延在する。
端子部172bは、略L字状の形状を有し、その底辺部が誘電体層175の他方の長辺(図26面上では上側の長辺)に沿って、その近傍に形成される。そして、略L字状の端子部172bの底辺部に対向する側に位置する端部に、電極部172aの一方の端部が接続される。
なお、変形例4−4では、下電極172の電極部172aの延在方向と、上電極171の電極部171aの延在方向とが略直交するように構成する。また、この例では、上電極171の電極部171aの一部と、下電極172の電極部172aの一部とが、誘電体層175の厚さ方向において対向するように(対向電極領域Saが形成されるように)上電極171及び下電極172の例えば寸法等が設定される。さらに、この例では、第3の実施形態と同様に、誘電体層175の長辺方向(x方向)及び短辺方向(y方向)の位置ずれ量が最大になっても、対向電極領域Saが変化しないように、上電極171及び下電極172の例えば寸法、形状、配置位置等が設定される。
変形例4−4では、上電極171の端子部171bの領域(面積)を広くすることができ、且つ、下電極172の電極部172aの延在方向の長さをより短くすることができる。それゆえ、この例では、積層型コンデンサの電極抵抗をより小さくすることができる。
(5)変形例4−5
上記第3の実施形態及び変形例4−1〜4−4では、誘電体層の長辺方向及び短辺方向の両方向において位置ずれを考慮した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上電極及び下電極の位置を位置合わせする装置及び製造プロセスによっては、x方向またはy方向の一方向の位置ずれが顕著である場合がある。このような場合には、上電極及び下電極間の位置ずれの影響はx方向またはy方向のみを考慮すればよい。変形例4−5では、y方向(誘電体層の短辺方向)にのみ位置ずれが顕著である場合に適用可能な積層型コンデンサの構成例を説明する。
図27に、変形例4−5の積層型コンデンサにおける、内部コンデンサを構成する一対の内部電極の概略構成を示す。なお、図27では、説明を簡略化するため、内部コンデンサを構成する一対の内部電極(上電極181及び下電極182)の各上面図と、誘電体層185の上面図とを重ねて示す。
上電極181は、T字状の形状を有し、電極部181aと、端子部181bとで構成される。端子部181bは、誘電体層185の一方の短辺(図27面上では右側の短辺)に沿って、その近傍に形成される。また、電極部181aは、端子部181bの中央から端子部181bの延在方向(図27中のy方向)に対して直交する方向(x方向)に延在して形成される。
下電極182は、略U字状の形状を有し、2つの電極部182a及び182cと、端子部182bとで構成される。端子部182bは、誘電体層185の他方の短辺(図27面上では左側の短辺)に沿って、その近傍形成される。電極部182a及び182cは、端子部182bの両端からそれぞれ端子部182bの延在方向(図27中のy方向)と直交する方向(x方向)に延在して形成される。なお、ここでは、電極部182a及び電極部182cの形状は同じとする。すなわち、下電極182の電極部182a及び182cの延在方向は、上電極181の電極部181aの延在方向と平行とする。
変形例4−5では、上電極181及び下電極182間に複数の対向電極領域(図27中のSa1及びSa2)が形成されるように、各内部電極を構成する。具体的には、上電極181の電極部181aが、下電極182の電極部182a及び182cのそれぞれと誘電体層185の厚さ方向において対向するように、上電極181及び下電極182の例えば寸法等が設定される。さらに、この例では、誘電体層185の短辺方向(y方向)の位置ずれ量が最大になっても、2つの対向電極領域Sa1及びSa2の面積の総和が変化しないように、上電極181及び下電極182の例えば寸法、形状、配置位置等が設定される。
<4.第4の実施形態>
第4の実施形態では、上述した本発明の積層型コンデンサを備える非接触受信装置の構成例を説明する。
[非接触受信装置の構成]
本実施形態では、非接触受信装置として、非接触IC(Integrated Circuit)カードを例に挙げ説明する。図28に、本実施形態の非接触ICカードの受信系(復調系)回路部のブロック構成を示す。なお、図28では、説明を簡略するために、信号の送信系(変調系)回路部は省略している。送信系回路部の構成は、従来の非接触ICカード等と同様に
構成することができる。
非接触ICカード190は、受信部191(アンテナ)と、整流部192と、信号処理部193とを備える。
受信部191は、共振コイル194及び共振コンデンサ195からなる共振回路を備え、非接触ICカード190のリーダライター(不図示)から送信される信号をこの共振回路で受信する。なお、図28では、共振コイル194をそのインダクタンス成分194a(L)と抵抗成分194b(r:数オーム程度)とに分けて図示している。また、受信部191は、共振コンデンサ195内の後述する可変容量コンデンサ197の制御電源200と、可変容量コンデンサ197及び制御電源200間に設けられた2つの電流制限抵抗201及び202とを備える。
共振コンデンサ195は、容量Coの定容量コンデンサ196と、可変容量コンデンサ197と、可変容量コンデンサ197の両端子にそれぞれ接続された2つのバイアス除去用コンデンサ198及び199とで構成される。そして、定容量コンデンサ196と、可変容量コンデンサ197並びに2つのバイアス除去用コンデンサ198及び199からなる直列回路とは、共振コイル194に並列接続される。
定容量コンデンサ196は、上記実施形態及び変形例で説明した積層型コンデンサのいずれかで構成される。定容量コンデンサ196を構成する各誘電体層は、第1の実施形態で説明した比誘電率の低い誘電体材料(常誘電体材料)で形成されており、入力信号の種類(交流または直流)及びその信号レベルに関係なく、その容量はほとんど変化しない。
なお、実際の回路上では、共振コイル194のインダクタンス成分Lのばらつきや信号処理部193内の集積回路の入力端子の寄生容量などによる受信部191の容量変動(数pF程度)が存在し、その変動量は非接触ICカード190毎に異なる。それゆえ、本実施形態では、これらの影響を抑制(補正)するために、定容量コンデンサ196内の内部電極の電極パターンをトリミングして容量Coを適宜調整する。
可変容量コンデンサ197もまた、上記実施形態及び変形例で説明した積層型コンデンサのいずれかで構成される。なお、可変容量コンデンサ197を構成する各誘電体層は、第1の実施形態で説明した比誘電率の大きな強誘電体材料で形成される。
また、可変容量コンデンサ197は、電流制限抵抗201及び202を介して制御電源200に接続される。そして、可変容量コンデンサ197の容量Cvは、制御電源200から印加される制御電圧に応じて変化する。
なお、バイアス除去用コンデンサ198及び199、並びに、電流制限抵抗201及び202は、制御電源から流れる直流バイアス電流(制御電流)と、受信信号電流との干渉による影響を抑制するために設けられる。具体的には、バイアス除去用コンデンサ198及び199は、信号回路の保護及び/又は分離のために設けられ、電流制限抵抗201及び202は、制御回路の保護及び/又は分離のために設けられる。
整流部192は、整流用ダイオード203と整流用コンデンサ204とからなる半波整流回路で構成され、受信部191で受信した交流電圧を直流電圧に整流して出力する。
信号処理部193は、主に半導体素子の集積回路(LSI:Large Scale Integration)で構成され、受信部191で受信した交流信号を復調する。信号処理部193内のLSIは整流部192から供給される直流電圧により駆動される。なお、LSIとしては、従来の非接触ICカードと同様のものを用いることができる。
本実施形態の非接触ICカード190において、可変容量コンデンサ197は、過大な受信信号により耐電圧性の低い半導体素子からなる制御回路が破壊されないようにするために用いられる。具体的には、受信信号が過大な場合に、制御電圧により可変容量コンデンサ197の容量Cvを小さくする。これにより、可変容量コンデンサ197の容量低下分に対応した周波数Δfだけ、受信部191の共振周波数が高域にシフトする。これにより、容量可変前の共振周波数f0における受信信号のレスポンスは、容量可変前より低くなり、受信信号のレベルが抑制される。その結果、制御回路に過大な電流信号が流れないようにすることができ、制御回路の破壊を防止することができる。
本実施形態の非接触ICカードでは、定容量コンデンサ196及び可変容量コンデンサ197に、本発明の積層型コンデンサを用いているので、より高性能の非接触ICカードを提供することができる。また、可変容量コンデンサ197に、本発明の積層型コンデンサを用いているので、より低い駆動電圧で非接触ICカードを駆動することができる。
なお、本実施形態では、定容量コンデンサ196及び可変容量コンデンサ197の両方を本発明の積層型コンデンサで構成する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、いずれか一方を本発明の積層型コンデンサで構成してもよい。また、本実施形態では、定容量コンデンサ196を備えない構成としてもよい。
また、本実施形態の非接触ICカード190では、可変容量コンデンサ197の制御電源200を設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、整流部192から出力された直流電圧から、例えば抵抗分割等の手法により所望の制御電圧を抽出するような構成にしてもよい。
さらに、本実施形態では、非接触受信装置の一例として、非接触ICカードを例にとり説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、共振コイル及び共振コンデンサからなる共振回路を用いて非接触で情報及び/または電力を受信する任意の装置に適用可能であり、同様の効果が得られる。例えば、携帯電話等や、ワイアレス電力伝送装置にも適用可能である。なお、ワイアレス電力伝送装置では、電力を非接触で伝送する装置であるので、非接触ICカードのように受信信号を復調する信号処理部を備えなくてもよい。