JP5075413B2 - 茶滓からの飼料の製造法 - Google Patents
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Description
一方、畜産業界においては、飼料自給率の向上ならびに飼料価格の低減は国家的命題となっている。特に植物性蛋白質の需要は、BSE問題の発生以来急激に拡大しているため大豆の需要が逼迫している。
これに対して茶滓に含まれる粗蛋白質は乾物比で30%と大豆に匹敵する高濃度であり純植物性蛋白飼料としての可能性が従来より高く評価されてきている。これまで養魚用の飼料、ニワトリ、ブタ等の単胃家畜の飼料への配合が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
茶滓にはカテキンが大量に含まれており、このカテキンが家畜の腸内微生物に対して抗菌作用を持つためと考えられる。上記の従来技術においても増体率は低下している(特許文献1及び2の実施例参照)。
茶滓は、特に反芻胃の家畜に対する有毒性が顕著である。反芻胃動物は複数の部分に分かれた胃袋を有し、そこには膨大な数の微生物が棲みついている。微生物は植物を有機酸とガスに分解し、反芻胃動物はその有機酸を栄養分として吸収する。カテキンは、特にこれらの微生物に対して阻害作用があると考えられる。
本発明は、糸状菌の作用により家畜にとり茶滓を無害となし、家畜の消化能を向上させて茶滓に含まれる蛋白質を家畜に吸収させることができる画期的技術を提供するものである。
従って、茶滓を含む原料を糸状菌と混合する工程、及び混合物を好気的に発酵させる工程を含む飼料の製造方法を提供する。また、茶滓を含む原料を糸状菌と混合する工程と、混合物を好気的に発酵させる工程と、水分が低下した後更に茶滓を含む原料を添加することを少なくとも1回行う工程とを含む飼料の製造方法を提供する。
本発明は、かかる方法により製造された茶滓飼料を提供することも目的とする。本発明はさらに、糸状菌で好気的に発酵処理した茶滓を含有する飼料、好気性糸状菌の茶滓麹を含む飼料、および、好気性糸状菌によってポリフェノール、特にカテキンあるいはタンニンの含有量を低減した茶滓麹を含む反芻胃動物用の飼料を提供する。
茶滓は、カテキン等の成分を抽出した後に残る茶葉の滓であるが、抽出後の茶葉にも多量のカテキンが残っている。本発明の方法によれば、カテキンは糸状菌によって分解され、無害化される。茶滓はその種類にもよるが、通常は乾燥重量で0.1%〜10%程度のカテキンを含んでおり、本発明によればカテキン含量を100〜50%程度低減することができる。
さらに、糸状菌の発酵段階において、一部の有機物は二酸化炭素と水に分解されるが大部分は良質な菌体タンパクに合成される一方、消化吸収に有効な消化酵素が大量に分泌される。その結果、家畜等に給餌するのに適した栄養価の高い飼料が得られる。
麹菌による廃棄物の発酵処理は悪臭が発生せず、また、その結果生成される飼料は家畜の肥育を促進し、良好な肉質にする。
さらに、原料に油脂を含有すると、麹菌が油脂を資化し、効率よく発酵熱に変換するため、麹菌の生育のための養分を特に添加する必要がない上、油脂がエネルギー源となって麹菌による有機原料の分解乾燥速度が飛躍的に向上するという効果がある。更に自然界には油脂類を資化する微生物は少ないので、比較的他の雑菌類の汚染を受けやすい麹菌を、優先的に生育させうるという効果もある。
まず原料を準備し、必要に応じて前処理が施される。
原料である茶滓(水分約70%)を水分50%以下に乾燥させる。
茶滓とは、清涼飲料の製造において発生する抽出残渣、家庭から出る茶殻などのカテキンを含有する茶葉を意味する。例えば、緑茶、ウーロン茶、紅茶の抽出後の茶葉等が含まれ、特に緑茶の抽出後の茶葉である。また、麦茶、玄米茶等の穀物茶とカテキン含有茶とのブレンド茶の抽出残渣も含まれる。
この茶滓に米、麦、フスマ、とうもろこし等の澱粉質原料、その他飼料に適した原料を添加してもよい。ただし、他の原料を加えた場合にも合計で水分50%以下に調整するのが好ましい。
糸状菌投入後間もなく麹菌の生育に伴い発熱がはじまり、品温が徐々に上昇する。
これ以降、恒温槽等で、好適には35℃〜50℃に保温することが好ましく、送風等による冷却が効果的である。
糸状菌が発酵を開始すると、発酵熱により水分は蒸発する。従って所望の水分を含有する飼料を得ることができる。最終的な飼料の目標水分は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。飼料の水分が30重量%より高い場合には総質量が多くなり、貯蔵、運搬が困難となる。また、腐敗しやすいので長期保存性に劣り、好ましくない。
また、得られた飼料の水分量を更に低減させる必要がある場合には、スチームヒーターの熱風等を用いて乾燥を行ってもよい。
さらに、水分が低下した時点、好ましくは水分約20%の時点で、水分の多い原料をさらに添加撹拌し、水分を約30%前後に調整して発酵を続けることができ、これを数段階繰り返すこともできる。
必要に応じてエネルギー源として食用油もしくは食用廃油を添加することができる。
品温を35℃から40℃の範囲に維持するために適宜送風を行う。この結果24時間から48時間後には水分が20%以下に乾燥するので、再度茶滓を混和して水分を40%以下に調整し以後同様の操作を繰り返す。
この方法は麹中に投入するために、処理の時間は短く、効率的である。
本発明の飼料の製造方法においては、糸状菌、特に麹菌が優勢に増殖する点で好ましい。
この茶滓に同時にフスマやとうもろこし等の澱粉質原料を添加してもよいが、加えた場合にも合計で水分40%以下に調整する。
この後100℃にて30分以上殺菌を行った。
45℃以下に冷却後常法に従い麹菌を原料に対して0.1%混合した。
以後品温を35℃から40℃の間に維持するために適宜送風を繰り返し40時間以上培養して水分20%以下の茶滓飼料を得た。
これに1gの種麹(Aspergillus)を添加し、品温を35℃から40℃に維持するために製麹開始8時間は保温を行い、それ以降は通風を行うことで48時間後には水分18%のふすま麹が完成した。
これに300gの茶滓(水分84%)と食用油9mlを加え、水分を35%に調整した。その後通風を行い、品温を35℃から40℃に維持した。この結果24時間後にはその水分は再び18%に乾燥していた。
上記の操作を11日間にわたり繰り返した。
この結果、1Kgのフスマに対して3.3Kgの茶滓(水分84%)と99mlの食用油を添加し、最終的に1340g(水分15%)の茶滓飼料を得た。
これにより製造された茶滓飼料についての分析結果を以下に示す。
最も抗菌力が高いエルゴカテキンガレートの変化を測定した。
下記の結果は乾燥重量で示される。処理後の測定はフスマを除いた状態で行った。
処理前:950mg/100g
処理後:210mg/100g
上記の比較結果から明らかなように、上述の工程を経た結果、エルゴカテキンガレートが顕著に低減された。
サンプルを塩酸酸性にてペプシンを加えて37℃3時間処理後苛性ソーダにて中和しパンクレアチンを加えて37℃24時間処理したものについて乾物ならびに粗蛋白質の消化率を測定した。
結果を以下に示す。
乾物消化率 粗蛋白質消化率
乾燥茶滓 37% 55%
茶滓飼料 41% 65%
茶滓を麹にすることにより消化率の顕著な向上が実現した。
以上の結果から明らかなように、従来廃棄されていた茶滓が高蛋白で消化率の高い素晴らしい飼料となることが明白となった。
Claims (13)
- 茶滓を含む原料を糸状菌と混合する工程と、その後混合物を好気的に発酵させる工程を含む飼料の製造方法。
- 茶滓を含む原料を糸状菌と混合する工程と、その後混合物を好気的に発酵させる工程と、混合物の水分が低下した後更に茶滓を含む原料を添加することを少なくとも1回行う工程とを含む飼料の製造方法。
- 茶滓を含む原料が、さらに澱粉質原料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の飼料の製造方法。
- 澱粉質原料と糸状菌を混合して麹を作る工程と、その後茶滓を含む原料を麹と混合して混合物を好気的に発酵させることを少なくとも1回行う工程とを含む飼料の製造方法。
- 茶滓を含む原料が電子線照射されていない、請求項1ないし4の何れか1項に記載の飼料の製造方法。
- 発酵前の混合物が、水分50%以下であることを特徴とする、請求項1ないし5の何れか1項に記載の飼料の製造方法。
- 糸状菌が、麹菌であることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の飼料の製造方法。
- 糸状菌が、Asp.oryzae、Asp.awamori及びAsp.sojaeからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項7に記載の飼料の製造方法。
- 澱粉質原料が、米、麦、フスマ及びとうもろこしからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の飼料の製造方法。
- 油脂を添加する工程を更に含む、又は茶滓を含む原料が油脂を含有することを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の飼料の製造方法。
- 請求項1ないし10の何れか1項に記載の反芻胃動物用飼料の製造方法。
- 請求項1ないし10の何れか1項に記載の飼料の製造方法により製造された茶滓飼料。
- 糸状菌で好気的に発酵処理した茶滓を含有する飼料。
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