JP5075149B2 - 絶縁シート、積層板及び多層積層板 - Google Patents

絶縁シート、積層板及び多層積層板 Download PDF

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Description

本発明は、多層積層板などの絶縁層を形成するのに用いられる絶縁シート、並びに該絶縁シートを用いた積層板及び多層積層板に関する。
近年、携帯電話及びコンピュータ等の電子機器では、小型化及び情報処理の高速化が進行している。このため、上記電子機器に用いられるプリント配線板では、多層化及び薄膜化が進行しており、かつ電子部品の実装密度が高くなってきている。
従来、多層プリント配線板の製造方法としては、絶縁接着層としてのプリプレグシートを数枚介して、回路が形成された内層回路板と銅箔とを積層プレスする方法が用いられている。上記プリプレグシートは、一般的には、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させてBステージ化したシートである。しかし、上記方法では、積層プレスに長時間を要し、さらに大掛かりな設備も必要となるため、製造コストが高くなる。このため、近年、内層回路板の導体層上に絶縁層を交互に積み上げるビルドアップ方式の多層プリント配線板の製造方法が広く採用されてきている。
上記ビルドアップ方式に用いる絶縁シートには、室温でのハンドリング性と、内層回路を良好にラミネートするために適度な流動性とが求められる。
上記絶縁シートの一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、エラストマー及び無機充填剤を含有する接着剤組成物を、ガラスクロスに含浸させた絶縁接着シートが開示されている。また、下記の特許文献2には、重量平均分子量5,000〜100,000のバインダーポリマーと、結晶性固体である多官能エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを含む絶縁シートが開示されている。
特開2006−342238号公報 特開平11−001547号公報
特許文献1に記載の絶縁シートは、ガラスクロスが用いられているため、柔軟性が低かった。このため、内層回路を良好にラミネートすることができなかった。また、ガラスクロスを用いた場合には、薄膜化が困難であったり、レーザー加工性に劣ったり、ガラスクロス自体の熱伝導率が低いことにより十分な放熱性が得られないことがあった。また、特許文献2に記載の絶縁シートは、高い熱伝導率を有するフィラーが充填されていないために、放熱性が低かった。
本発明の目的は、硬化前のハンドリング性及びラミネート時の内層回路への充填性に優れており、かつ硬化後の硬化物の放熱性及び耐熱性を高めることができ、さらに硬化物の表面に導体層が形成されたときに、硬化物と導体層との接着強度を高めることができる絶縁シート、並びに該絶縁シートを用いた積層板及び多層積層板を提供することである。
本発明によれば、重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)と、重量平均分子量が1万未満である結晶性のエポキシ樹脂(B1)及び重量平均分子量が1万未満である結晶性のオキセタン樹脂(B2)の内の少なくとも一方の結晶性の樹脂(B)と、硬化剤(C)と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(D)とを含み、前記ポリマー(A)と、前記結晶性の樹脂(B)と、前記硬化剤(C)とを含む絶縁シート中の樹脂成分の合計100重量%中、前記ポリマー(A)の含有量が20〜60重量%、前記結晶性の樹脂(B)の含有量が10〜60重量%、かつ前記ポリマー(A)と前記結晶性の樹脂(B)との合計の含有量が100重量%未満である。
本発明に係る絶縁シートのある特定の局面では、前記結晶性の樹脂(B)は、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のエポキシモノマー(B1b)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のオキセタンモノマー(B2b)の内の少なくとも一方の結晶性のモノマーを含む。
上記フィラー(D)は、アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高くすることができる。
本発明に係る絶縁シートの他の特定の局面では、前記硬化剤(C)は、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である。
上記ポリマー(A)は、フェノキシ樹脂である。フェノキシ樹脂の使用により、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
上記硬化剤(C)は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物であることが好ましい。また、上記硬化剤(C)は、下記式(1)〜(3)の内のいずれかで表される酸無水物であることがより好ましい。これらの好ましい硬化剤(C)の使用により、絶縁シートの柔軟性、耐湿性又は接着性をより一層高めることができる。
Figure 0005075149
Figure 0005075149
Figure 0005075149
上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
上記硬化剤(C)は、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂であることが好ましい。この好ましい硬化剤(C)の使用により、絶縁シートの硬化物のシート柔軟性及び難燃性をより一層高めることができる。
本発明に係る積層板は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に積層された導体層とを備え、前記絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させることにより形成されている。
本発明に係る多層積層板は、積層された複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の間に配置された導体層とを備え、前記絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させることにより形成されている。
本発明に係る多層積層板のある特定の局面では、前記導体層の少なくとも一部がめっきにより形成されている。
本発明に係る多層積層板の他の特定の局面では、前記絶縁層の少なくとも一部の表面が粗化液により粗化されており、粗化された表面に前記導体層がめっきにより形成されている。
本発明に係る絶縁シートは、上記(A)〜(D)成分を含むので、室温において未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性及びラミネート時の内層回路への充填性に優れており、さらに硬化物の放熱性及び絶縁性に優れている。さらに、本発明に係る絶縁シートでは、上記(A),(C)及び(D)成分とともに上記結晶性の樹脂(B)が用いられているため、上記各特性を維持したままで、硬化物の耐熱性を充分に高くすることができる。
本発明に係る積層板及び多層積層板は絶縁層を備え、該絶縁層が本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させることにより形成されているので、絶縁層の耐熱性が高い。このため、積層板及び多層積層板が高温下に晒されても劣化し難い。
図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを用いた積層板を模式的に示す部分切欠正面断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを用いた多層積層板を模式的に示す部分切欠正面断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを用いた積層構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る絶縁シートは、重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)と、重量平均分子量が1万未満である結晶性のエポキシ樹脂(B1)及び重量平均分子量が1万未満である結晶性のオキセタン樹脂(B2)の内の少なくとも一方の結晶性の樹脂(B)と、硬化剤(C)と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(D)とを含む。
(ポリマー(A))
本発明に係る絶縁シートに含まれている上記ポリマー(A)は、重量平均分子量が1万以上であれば特に限定されない。ポリマー(A)は、芳香族骨格を有することが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。ポリマー(A)が芳香族骨格を有する場合には、芳香族骨格をポリマー全体の中に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。ポリマー(A)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をさらに一層高めることができる。ポリマー(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記芳香族骨格は特に限定されない。上記芳香族骨格の具体例としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はビスフェノールA型骨格等が挙げられる。なかでも、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
上記ポリマー(A)として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等を用いることができる。
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、特に限定されない。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、又はポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などのスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群等を使用できる。上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の内のいずれか一方が用いられてもよく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とが併用されてもよい。
上記ポリマー(A)は、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体又はフェノキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂であることがより好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の酸化劣化を防止でき、かつ耐熱性をより一層高めることができる。
上記スチレン系重合体として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、又はスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等を用いることができる。中でも、スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン系重合体が好ましい。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン又は3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル又はメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有することが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも一方を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましい。また、上記フェノキシ樹脂は、下記式(4)〜(9)で表される骨格の内の少なくとも1つの骨格を主鎖中に有することがより好ましい。
Figure 0005075149
上記式(4)中、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Xは単結合、炭素数1〜7の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、又は−CO−である。
Figure 0005075149
上記式(5)中、R1aは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。
Figure 0005075149
上記式(6)中、R1bは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、lは0〜4の整数である。
Figure 0005075149
Figure 0005075149
上記式(8)中、R及びRは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは−SO−、−CH−、−C(CH−、又は−O−であり、kは0又は1である。
Figure 0005075149
上記ポリマー(A)として、例えば、下記式(10)又は下記式(11)で表されるフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
Figure 0005075149
上記式(10)中、Aは上記式(4)〜(6)の内のいずれかで表される構造を有し、かつその構成は上記式(4)で表される構造が0〜60モル%、上記式(5)で表される構造が5〜95モル%、及び上記式(6)で表される構造が5〜95モル%であり、Aは水素原子、又は上記式(7)で表される基であり、nは平均値で25〜500の数である。
Figure 0005075149
上記式(11)中、Aは上記式(8)又は上記式(9)で表される構造を有し、nは少なくとも21以上の値である。
上記ポリマー(A)のガラス転移温度Tgは、60〜200℃の範囲内にあることが好ましく、90〜180℃の範囲内にあることがより好ましい。ポリマー(A)のTgが低すぎると、樹脂が熱劣化することがある。ポリマー(A)のTgが高すぎると、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が悪くなる。この結果、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性、並びに絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記ポリマー(A)がフェノキシ樹脂である場合には、フェノキシ樹脂のガラス転移温度Tgは、95℃以上であることが好ましく、110〜200℃の範囲内にあることがより好ましく、110〜180℃の範囲内にあることがさらに好ましい。フェノキシ樹脂のTgが低すぎると、樹脂が熱劣化することがある。フェノキシ樹脂のTgが高すぎると、フェノキシ樹脂と他の樹脂との相溶性が悪くなる。この結果、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性、並びに絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記ポリマー(A)の重量平均分子量は、10,000以上である。ポリマー(A)の重量平均分子量は、30,000以上であることが好ましく、30,000〜1,000,000の範囲内にあることがより好ましく、40,000〜250,000の範囲内にあることがさらに好ましい。ポリマー(A)の重量平均分子量が小さすぎると、絶縁シートが熱劣化することがある。ポリマー(A)の重量平均分子量が大きすぎると、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が悪くなる。この結果、絶縁シートのハンドリング性、並びに絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
ポリマー(A)と、結晶性の樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、ポリマー(A)は20〜60重量%の範囲内で含まれている。ポリマー(A)は上記範囲内で、ポリマー(A)と結晶性の樹脂(B)との合計の含有量が100重量%未満であるように含まれている。全樹脂成分の合計100重量%中のポリマー(A)の含有量の好ましい下限は30重量%であり、好ましい上限は50重量%である。ポリマー(A)の含有量が少なすぎると、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性が低下することがある。ポリマー(A)の含有量が多すぎると、フィラー(D)の分散が困難になることがある。なお、全樹脂成分とは、ポリマー(A)、結晶性のエポキシ樹脂(B1)、結晶性のオキセタン樹脂(B2)、硬化剤(C)及び必要に応じて添加される他の樹脂成分の総和をいう。
(結晶性の樹脂(B))
本発明に係る絶縁シートは、結晶性のエポキシ樹脂(B1)及び結晶性のオキセタン樹脂(B2)の内の少なくとも一方の結晶性の樹脂(B)を含有する。結晶性の樹脂(B)として、結晶性のエポキシ樹脂(B1)のみが用いられてもよく、結晶性のオキセタン樹脂(B2)のみが用いられてもよく、結晶性のエポキシ樹脂(B1)と結晶性のオキセタン樹脂(B2)との双方が用いられてもよい。
ポリマー(A)と硬化剤(C)とフィラー(D)とともに、結晶性の樹脂(B)が用いられることにより、絶縁シートの硬化物の耐熱性を充分に高くすることができる。
「結晶性」を有する樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)での測定により結晶融点を示す樹脂をいう。
上記結晶性のエポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量は1万未満である。結晶性のエポキシ樹脂(B1)は重量平均分子量が1万未満であれば特に限定されない。結晶性のエポキシ樹脂(B1)として、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のエポキシモノマー(B1b)が好適に用いられる。
上記結晶性のエポキシ樹脂(B1)の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、ジーt−ブチルハイドロキノン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー又はトリアジン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
上記結晶性のエポキシ樹脂(B1)の市販品としては、850CRP、830LVP、835LV及びHP−4032D(以上、いずれもDIC社製)、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR、YSLV−120TE、YSLV−50TE、YSLV−80DE、GK−8001及びZX−1598(以上いずれも東都化成社製)、YX−4000、YX−4000K、YX−4000H、YX−4000HK、YL−6677、YL−6810、YL−6922及びYL−7172(以上いずれもジャパンエポキシレジン社製)、オグゾールPG(大阪ガスケミカル社製)、並びにTEPIC−G,TEPIC−P、TEPIC−S及びTEPIC−SP(日産化学工業社製)等が挙げられる。中でも、溶融後の再結晶性が低いために良好なシート性を容易に維持できるので、ビフェニル型のYX−4000シリーズ及びナフタレン型のHP−4032Dが好ましい。結晶性のエポキシ樹脂(B1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記結晶性のオキセタン樹脂(B2)の重量平均分子量は1万未満である。結晶性のオキセタン樹脂(B2)は重量平均分子量が1万未満であれば特に限定されない。結晶性のオキセタン樹脂(B2)として、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のオキセタンモノマー(B2b)が好適に用いられる。
上記結晶性のオキセタン樹脂(B2)の具体例としては、例えば、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル等が挙げられる。結晶性のオキセタン樹脂(B2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
結晶性のエポキシ樹脂(B1)及び結晶性のオキセタン樹脂(B2)の重量平均分子量、すなわち結晶性の樹脂(B)の重量平均分子量は、1万未満である。結晶性の樹脂(B)の重量平均分子量は、600以下であることが好ましい。結晶性の樹脂(B)の重量平均分子量の好ましい下限は200、より好ましい上限は550である。結晶性の樹脂(B)の重量平均分子量が小さすぎると、結晶性の樹脂(B)の揮発性が高すぎて絶縁シートの取扱い性が低下することがある。結晶性の樹脂(B)の重量平均分子量が大きすぎると、絶縁シートが固くかつ脆くなったり、絶縁シートの硬化物の接着性が低下したりすることがある。
ポリマー(A)と、結晶性の樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、結晶性の樹脂(B)は10〜60重量%の範囲内で含まれている。上記全樹脂成分の合計100重量%中に、結晶性の樹脂(B)は10〜40重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。結晶性の樹脂(B)は上記範囲内で、ポリマー(A)と結晶性の樹脂(B)との合計の含有量が100重量%未満であるように含まれている。結晶性の樹脂(B)の含有量が少なすぎると、絶縁シートの硬化物の接着性及び耐熱性が低下することがある。結晶性の樹脂(B)の含有量が多すぎると、絶縁シートの柔軟性が低下することがある。
上記結晶性の樹脂(B)は、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のエポキシモノマー(B1b)、及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のオキセタンモノマー(B2b)の内の少なくとも一方の結晶性のモノマーを含むことが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の耐熱性をより一層高くすることができる。
結晶性の樹脂(B)は、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のエポキシモノマー(B1b)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のオキセタンモノマー(B2b)の内の少なくとも一方の結晶性のモノマーを40〜100重量%の範囲内で含むことが好ましく、60〜100重量%の範囲内で含むことがより好ましく、80〜100重量%の範囲内で含むことが特に好ましい。結晶性のエポキシモノマー(B1b)及び結晶性のオキセタンモノマー(B2b)の含有量が上記好ましい範囲内にある場合には、絶縁シートの柔軟性、並びに絶縁シートの硬化物の接着性及び耐熱性をより一層高めることができる。
(硬化剤(C))
本発明に係る絶縁シートに含まれている硬化剤(C)は特に限定されない。硬化剤(C)は、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物であることが好ましい。この好ましい硬化剤(C)の使用により、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた絶縁シートの硬化物を得ることができる。硬化剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール樹脂は、特に限定されない。上記フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、又はポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。なかでも、絶縁シート柔軟性及び難燃性をより一層高めることができるので、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール樹脂の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びNEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(ジャパンエポキシレジン社製)、LA―7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれも大日本インキ社製)、並びにPS6313及びPS6492(群栄化学社製)等が挙げられる。
芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、特に限定されない。芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。なかでも、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、絶縁シートの硬化物の耐水性を高めることができる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカジットMTA−10、リカジットMTA−15、リカジットTMTA、リカジットTMEG−100、リカジットTMEG−200、リカジットTMEG−300、リカジットTMEG−500、リカジットTMEG−S、リカジットTH、リカジットHT−1A、リカジットHH、リカジットMH−700、リカジットMT−500、リカジットDSDA及びリカジットTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれも大日本インキ化学社製)等が挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。この場合には、絶縁シートの柔軟性、耐湿性又は接着性をより一層高めることができる。また、上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカジットHNA及びリカジットHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれもジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。
また、上記硬化剤(C)は、下記式(1)〜(3)の内のいずれかで表される酸無水物であることがより好ましい。この好ましい硬化剤(C)の使用により、絶縁シートの柔軟性、耐湿性又は接着性をより一層高めることができる。
Figure 0005075149
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上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
硬化速度又は硬化物の物性などを調整するために、上記硬化剤と硬化促進剤とを併用してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されない。硬化促進剤の具体例としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアジン類、有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類又は有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類等が挙げられる。また、上記硬化促進剤としては、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩類又は金属ハロゲン化物等が挙げられる。上記有機金属化合物類としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫又はアルミニウムアセチルアセトン錯体等が挙げられる。
上記硬化促進剤として、高融点のイミダゾール硬化促進剤、高融点の分散型潜在性硬化促進剤、マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、又は高温解離型かつ熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等を使用できる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記高融点の分散型潜在性促進剤としては、ジシアンジアミド又はアミンがエポキシモノマー等に付加されたアミン付加型促進剤等が挙げられる。上記マイクロカプセル型潜在性促進剤としては、イミダゾール系、リン系又はホスフィン系の促進剤の表面がポリマーにより被覆されたマイクロカプセル型潜在性促進剤が挙げられる。上記高温解離型かつ熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤としては、ルイス酸塩又はブレンステッド酸塩等が挙げられる。
上記硬化促進剤は、高融点のイミダゾール系硬化促進剤であることが好ましい。高融点のイミダゾール系硬化促進剤が用いられた場合には、反応系を容易に制御でき、かつ絶縁シートの硬化速度、及び絶縁シートの硬化物の物性などをより一層容易に調整できる。融点100℃以上の高融点の硬化促進剤は、取扱性に優れている。従って、硬化促進剤の融点は100℃以上であることが好ましい。
ポリマー(A)と、結晶性の樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、硬化剤(C)は10〜40重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。上記全樹脂成分の合計100重量%中の硬化剤(C)の含有量のより好ましい下限は12重量%であり、より好ましい上限は25重量%である。硬化剤(C)の含有量が少なすぎると、絶縁シートを充分に硬化させることが困難になることがある。硬化剤(C)の含有量が多すぎると、硬化に関与しない余剰な硬化剤が発生したり、硬化物の架橋が充分に進行しなかったりすることがある。このため、絶縁シートの硬化物の耐熱性及び接着性が充分に高められないことがある。
(フィラー(D))
本発明に係る絶縁シートに、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(D)が含まれていることにより、絶縁シートの硬化物の放熱性を高めることができる。
上記フィラー(D)は、熱伝導率が10W/m・K以上であれば特に限定されない。フィラー(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。例えばフィラー(D)を絶縁シート中に高密度で充填する場合に、フィラーを2種類併用し、少なくとも一方のフィラーを新モース硬度の低いフィラーとすることで、絶縁シートの硬化物の高い加工性と高い放熱性とを両立することが容易になることがある。
上記フィラー(D)は、アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましいフィラー(D)の使用により、絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
上記フィラー(D)は、球状アルミナ、破砕アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト及び球状窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、球状アルミナ又は球状窒化アルミニウムであることがさらに好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の放熱性をさらに一層高めることができる。
上記破砕されたフィラーとしては、破砕アルミナ等が挙げられる。破砕されたフィラーは、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー又はボールミル等を用いて、塊状の無機物質を破砕することにより得られる。破砕されたフィラーの使用により、絶縁シート中のフィラー(D)が、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。従って絶縁シートの硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。また、破砕されたフィラーは、一般的に、通常のフィラーに比べて安価である。このため、破砕されたフィラーの使用により、絶縁シートのコストを低減できる。
破砕されたフィラーの平均粒子径は、12μm以下であることが好ましい。平均粒子径が12μmを超えると、絶縁シート中に、破砕されたフィラーを高密度に分散させることができず、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。破砕されたフィラーの平均粒子径の好ましい上限は10μmであり、好ましい下限は1μmである。フィラーの平均粒子径が小さすぎると、破砕されたフィラーを高密度に充填させることが困難となることがある。
破砕されたフィラーのアスペクト比は、特に限定されない。破砕されたフィラーのアスペクト比は、1.5〜20の範囲内にあることが好ましい。アスペクト比が1.5未満のフィラーは、比較的高価である。従って、絶縁シートのコストが高くなる。上記アスペクト比が20を超えると、破砕されたフィラーの充填が困難となることがある。
破砕されたフィラーのアスペクト比は、例えば、デジタル画像解析方式粒度分布測定装置(商品名:FPA、日本ルフト社製)を用いて、フィラーの破砕面を測定することにより求めることができる。
上記フィラー(D)が球状のフィラーである場合には、球状のフィラーの平均粒子径は、0.1〜40μmの範囲内にあることが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満であると、球状のフィラーを高密度で充填することが困難なことがある。平均粒子径が40μmを超えると、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
絶縁シート100体積%中に、フィラー(D)は20〜90体積%の範囲内で含まれていることが好ましい。フィラー(D)の含有量が上記範囲内にあることにより、絶縁シートの硬化物の熱伝導性を高くすることができる。絶縁シート100体積%中のフィラー(D)の含有量のより好ましい下限は30体積%、さらに好ましい下限は35体積%、より好ましい上限は85体積%、さらに好ましい上限は80体積%である。
フィラー(D)の含有量が少なすぎると、絶縁シートの硬化物の放熱性が充分に高められないことがある。フィラー(D)の含有量が多すぎると、絶縁シートの硬化物の接着性が低下しやすくなったり、フィラー(D)の新モース硬度が高い場合にはドリルや打ち抜きプレスによる絶縁シートの硬化物の加工性が悪くなったりすることがある。
フィラー(D)は熱伝導率が10W/m・K以上である。絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができるので、フィラー(D)の熱伝導率は20W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましい。
上記フィラー(D)は、化学式MgCOで示される結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)、及び該炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)の表面が、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカにより被覆されている被覆体(D2d1)の内の少なくとも一方のフィラー(Dd1)であってもよい。このようなフィラー(Dd1)の使用により、絶縁シートの硬化物の熱伝導率及び耐熱性を充分に確保しつつ、絶縁シートの硬化物の加工性を高めることができる。本発明の絶縁シートは、加工性に優れているため、例えば、絶縁シートの加工時に使用する設備の摩耗を抑制できる。従って、絶縁シートを長期に渡り安定的に生産できる。
上記化学式MgCOで示される結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)は、熱伝導率が15W/m・Kと比較的良好であり、モース硬度も3.5と低い。さらに、上記炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)は、窒化物と比べて安価である。従って、上記炭酸マグネシウム塩(D1d1)又は該炭酸マグネシウム塩を含む上記被覆体(D2d1)の使用により、絶縁シートの生産コストを低減できる。
上記化学式MgCOで示される結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)は、例えば化学式4MgCO・Mg(OH)・4HOで表されるヒドロキシ炭酸マグネシウムとは異なる。このヒドロキシ炭酸マグネシウムは、単に炭酸マグネシウムと呼ばれることもある。このヒドロキシ炭酸マグネシウムは100℃前後に加熱されると、結晶水を放出する。このため、ヒドロキシ炭酸マグネシウムは、例えば高いはんだ耐熱性が要求される用途には適さない。
また、上記化学式MgCOで示される結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)として、天然品及び合成品が存在する。天然品は不純物を含むため、天然品が用いられた場合には、耐熱性などの物性が安定しない可能性がある。このため、上記炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)は、合成品であることが望ましい。
上記被覆体(D2d1)は、炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)をコアとし、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカにより形成された被覆層をシェルとするコア/シェル構造を有する。上記被覆体(D2d1)は、上記被覆層を有するので、樹脂への分散性が高い。さらに上記被覆層を有する上記被覆体(D2d1)の使用により、絶縁シートの硬化物の耐酸性をより一層高めることができる。
上記炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)の表面を上記被覆層により被覆する方法は特に限定されない。この方法としては、例えば、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカ原料であるシランカップリング剤が溶解されている溶液中に炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)を分散させた分散液をスプレー乾燥する方法、有機樹脂又はシリコーン樹脂が溶解された溶液中に炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)を分散させた後、有機樹脂又はシリコーン樹脂の貧溶媒を添加することにより、炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)の表面に有機樹脂又はポリシロキサンを析出させる方法、炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)が分散された媒体中でアクリル樹脂、スチレン樹脂又は低分子量シラン等の重合性単量体を反応させ、高分子量化し媒体中に溶けきれなくなった有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカを炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)の表面に析出させる方法等が挙げられる。
上記有機樹脂は、炭酸マグネシウム無水塩(D1d1)の表面を被覆できれば特に限定されない。上記有機樹脂は、硬化物に耐酸性を付与できる樹脂であることが好ましい。上記有機樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。
上記有機樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、熱硬化性ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、アミノアルキド系樹脂、フェノキシ樹脂、フタレート樹脂、ポリアミド系樹脂、ケトン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、又はポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物等が挙げられる。この中でも単量体の種類が豊富であり、被覆層を幅広く設計でき、かつ熱又は光等により反応を容易に制御できるため、(メタ)アクリル系樹脂又はスチレン系樹脂が好ましい。
上記スチレン系樹脂は特に限定されない。上記スチレン系樹脂としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン又はジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート又はイソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エッチング時の耐酸性を高めることができるので、上記有機樹脂は、分子中に反応基を2つ以上有する架橋性モノマーを含有することが好ましい。
また、有機樹脂により被覆されている被覆層へのエッチング液の浸透を防ぐことができるので、上記被覆層を形成するための有機樹脂のOkitsuの計算式によるSP値は、10(cal/cm1/2以下であることが好ましい。
上記Okitsuの計算式は、具体的には、下記式(X)で表される。
δ=(ΣΔF)/(ΣΔv) ・・・(X)
上記式(X)中、δはSP値[単位:(cal/cm1/2]であり、ΔFは分子中の各原子団のモル引力定数、Δvは各原子団のモル容積である。
なお、上記Okitsu式は、例えば、「接着」1996年40巻8号第342頁〜350頁に記載されている。
上記被覆層の厚みは、10nm〜1μmの範囲内にあることが好ましい。被覆層の厚みが10nm未満であると、被覆体(D2d1)の樹脂への分散性の向上効果、及び絶縁シートの硬化物の耐酸性の向上効果が十分に得られないことがある。被覆層の厚みが1μmを超えると、被覆体(D2d1)の熱伝導性が著しく低下することがある。
フィラー(Dd1)の形状は、特に限定されない。フィラー(Dd1)は、略多面体状又は長径と短径との比であるアスペクト比が1〜2の範囲内にある形状を有することが好ましい。この場合には、絶縁シート中に上記フィラー(Dd1)を高密度で充填させることができ、従って、絶縁シート硬化物の放熱性を高めることができる。
フィラー(Dd1)は、化学式MgCOで示される結晶水を含まない球状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d2)、及び該球状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d2)の表面が、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカにより被覆されている被覆体(D2d2)の内の少なくとも一方のフィラー(Dd2)であることが好ましい。なお、球状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d2)の表面を、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカにより被覆することにより、被覆体(D2d2)を球状にできる。また、フィラー(Dd2)は、球状であることが好ましい。球状の場合には、絶縁シート中にフィラー(Dd2)を高密度で充填させることができ、従って絶縁シートの硬化物の放熱性を高めることができる。さらに、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性を高めることができる。
なお、球状は、真球状に限られない。球状には、真球がわずかに扁平していたり、歪んでいたりしている形状が含まれる。例えば、球状には、アスペクト比が1〜1.5の範囲内にある形状、又は表面の多くの部分例えば表面の30%以上の部分が平面等ではなく曲面であり、表面の一部の部分例えば表面の70%未満の部分が曲面ではなく、平面等である形状が含まれる。表面の50%以上の部分が曲面である形状がより好ましく、表面の70%以上の部分が曲面である形状がさらに好ましい。
また、上記球状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d2)、該球状の炭酸マグネシウム無水塩を用いた上記被覆体(D2d2)又は球状のフィラー(Dd2)は、ジェットミル又は回転するローターとステーターとを有する粉砕−表面処理装置により球状化処理されたものであることが好ましい。このような球状化処理により、球形度を高くすることができ、かつ真球状又は真球状に近い形状にすることができる。さらに、上記球状化処理により、フィラー(Dd2)の凝集物を砕くことができる。従って、上記フィラー(Dd2)を、絶縁シート中に高密度で充填させることができる。このため、絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができる。さらに、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
上記フィラー(Dd2)の平均粒子径は、0.1〜40μmの範囲内にあることが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満であると、フィラー(Dd2)を高密度で充填させることが困難となることがある。平均粒子径が40μmを超えると、絶縁シートの厚みを100μm程度として、絶縁シートを薄膜化した際に、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。
なお、「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
絶縁シート中に細密充填構造を形成して、絶縁シート硬化物の放熱性を高めるために、形状が異なる2種以上のフィラー(Dd1)が用いられてもよく、粒径が異なる2種以上のフィラー(Dd1)が用いられてもよい。
上記フィラー(Dd1)は、化学式MgCOで示される結晶水を含まない略多面体状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d3)、及び該略多面体状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d3)の表面が、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカにより被覆されている被覆体(D2d3)の内の少なくとも一方のフィラー(Dd3)であることも好ましい。なお、略多面体状の炭酸マグネシウム無水塩(D1d3)の表面を、有機樹脂、シリコーン樹脂又はシリカにより被覆することにより、被覆体(D2d3)を略多面体状にできる。また、フィラー(Dd3)は、略多面体状であることが好ましい。また、フィラー(Dd3)が略多面体状である場合に、上記フィラー(Dd3)以外の他のフィラーがさらに含まれており、該他のフィラーが板状フィラーであることが好ましい。
フィラー(Dd3)が略多面体状であり、板状フィラーが含まれている場合には、絶縁シート中でフィラー(Dd3)と板状フィラーとが点接触ではなく面接触し、フィラー(Dd3)と板状フィラーとの接触面積が大きくなる。また、絶縁シート中に距離を隔てて分散されている複数のフィラー(Dd3)同士が、板状フィラーを介して接触又は近接することで、絶縁シート中の各フィラーが橋掛け又は効率的に近接された構造となる。このため、絶縁シートの硬化物の熱伝導性をより一層高くすることができる。
上記板状フィラーの平均長径は0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。上記フィラー(Dd3)及び板状フィラーの使用により、絶縁シート中で上記フィラー(Dd3)と板状フィラーとを充分に接触させることができる。このため、絶縁シートの硬化物の熱伝導性をより一層高くすることができる。
なお、「略多面体状」とは、一般的な多面体の定義である平面によってのみ構成される多面体状だけでなく、平面と一定割合以下の曲面を有する形状も含まれる。略多面体状には、例えば表面の10%以下の曲面と、表面の90%以上の平面により構成される形状が含まれる。略多面体状は、略立方体状又は略直方体状であることが好ましい。
上記板状フィラーの平均長径が0.1μm未満であると、板状フィラーの充填が困難であったり、板状フィラーによって略多面体状のフィラー(Dd3)間を効率的かつ十分に橋かけさせることができなかったりことがある。板状フィラーの平均長径が10μmを超えると、絶縁シートの絶縁性が低くなりやすくなる。板状フィラーの平均長径は、0.5〜9μmの範囲内にあることがより好ましく、1〜9μmの範囲内にあることがより好ましい。
上記板状フィラーの平均厚みは、100nm以上であることが好ましい。板状フィラーの厚みが100nm以上の場合には、硬化物の熱伝導率をさらに一層高くすることができる。また、上記板状フィラーのアスペクト比は2〜50の範囲内にあることが好ましい。板状フィラーのアスペクト比が50を超えると、板状フィラーの充填が困難なことがある。板状フィラーのアスペクト比は、3〜45の範囲内にあることがより好ましい。
また、上記板状フィラーは、アルミナ及び窒化ホウ素の内の少なくとも一方であることが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の熱伝導性をさらに一層高くすることができる。特に、上記フィラー(Dd3)とアルミナ及び窒化ホウ素の内の少なくとも一方との併用により、絶縁シートの硬化物の熱伝導性をさらに一層高くすることができる。
フィラー(Dd1)とフィラー(Dd1)以外の他のフィラーとが併用される場合には、その配合量は、フィラー(Dd1)及び他のフィラーのそれぞれの種類、粒径及び形状により適宜最適なように決定される。絶縁シート100体積%中に、フィラー(Dd1)と他のフィラーとの合計の含有量は、60〜90体積%の範囲内であることが好ましい。フィラー(Dd1)と他のフィラーとの合計の含有量が60体積%未満であると、硬化物の放熱性を充分に高めることができないことがある。フィラー(Dd1)と他のフィラー(D)との合計の含有量が90体積%を超えると、絶縁シートの柔軟性又は接着性が著しく低下するおそれがある。
フィラー(Dd1)と他のフィラーとが併用される場合には、絶縁シート100体積%中、上記フィラー(Dd1)の含有量は、20〜80体積%の範囲内であることがより好ましい。
絶縁シート中に、上記略多面体状のフィラー(Dd3)と上記板状フィラーとは体積比で70:30〜99:1で含まれていることが好ましい。また、絶縁シート100体積%中に、上記略多面体状のフィラー(Dd3)と上記板状フィラーとの合計の含有量は60〜90体積%の範囲内であることが好ましい。また、絶縁シート中に上記フィラー(Dd3)と上記板状フィラーとの含有量は体積比で70:30〜99:1であり、かつ絶縁シート100体積%中に上記フィラー(Dd3)と上記板状フィラーとの合計の含有量は60〜90体積%の範囲内であることがより好ましい。上記フィラー(Dd3)及び上記板状フィラーの含有量がそれぞれ上記好ましい範囲内にある場合には、絶縁シートの硬化物の加工性及び熱伝導性をより一層高くすることができる。
(他の成分)
本発明に係る絶縁シートは、樹脂粒子(E)を含んでいてもよい。樹脂粒子(E)の使用により、絶縁シートの応力緩和性を高めることができ、絶縁シートの硬化物の柔軟性を高めることができ、かつ絶縁シートの硬化物の耐熱性の低下を抑制できる。
また、本発明に係る絶縁シートは、分散剤(F)を含んでいてもよい。分散剤(F)の使用により、絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
上記分散剤(F)の上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、又はフェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
上記分散剤(F)の上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaは、2〜10の範囲内にあることが好ましく、3〜9の範囲内にあることがより好ましい。上記官能基のpKaが2未満であると、分散剤(F)の酸性度が高くなりすぎて、原料樹脂成分中のエポキシ成分及びオキセタン成分の反応が促進されやすくなることがある。従って、未硬化状態の絶縁シートが貯蔵された場合に、絶縁シートの貯蔵安定性が低下することがある。上記官能基のpKaが10を超えると、分散剤としての機能が充分に果たされず、絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性が充分に高められないことがある。
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基は、カルボキシル基又はリン酸基であることが好ましい。この場合には、絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をさらに一層高めることができる。
上記分散剤(F)としては、具体的には、例えば、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、脂肪族系フェノール又はポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。分散剤(F)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
絶縁シート100重量%中に、分散剤(F)は0.01〜20重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。絶縁シート100重量%中の分散剤(F)の含有量のより好ましい下限は0.1重量%であり、より好ましい上限は10重量%である。分散剤(F)の含有量が上記範囲内にある場合には、上記フィラー(D)の凝集を抑制でき、かつ絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性を充分に高めることができる。
本発明に係る絶縁シートは、室温(23℃)において未硬化状態でも自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、絶縁シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。絶縁シートが上記基材物質を含まない場合には、絶縁シートの厚みを薄くすることができ、かつ絶縁シートの硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。さらに、絶縁シートが上記基材物質を含まない場合には、必要に応じて絶縁シートにレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルム又は銅箔などの支持体が存在しなくても、未硬化状態であっても、シートの形状を保持し、シートとして取扱うことができることをいう。
また、本発明の絶縁シートは、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、マイカ、クレー、カオリン、珪藻土及び炭酸カルシウムなどのチキソ性付与剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン系難燃剤などの難燃剤、シリコーン系、フッ素系又は高分子系の消泡剤、シリコーン系、フッ素系又は高分子系のレベリング剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン及びカーボンブラックなどの着色剤等が挙げられる。
(絶縁シート)
本発明に係る絶縁シートの製造方法は特に限定されない。絶縁シートは、例えば、上述した材料を混合した混合物を溶剤キャスト法又は押し出し成膜法等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
絶縁シートの厚みは特に限定されない。絶縁シートの厚みは、10〜300μmの範囲内にあることが好ましい。絶縁シートの厚みのより好ましい下限は20μmであり、さらに好ましい下限は30μmであり、より好ましい上限は200μmであり、さらに好ましい上限は120μmである。厚みが薄すぎると、絶縁シートの硬化物の絶縁性が低下することがある。厚みが厚すぎると、絶縁シートの硬化物の放熱性が低下することがある。
未硬化状態の絶縁シートのガラス転移温度Tgは、25℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃を超えると、室温において固く、かつ脆くなることがある。このため、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性が低下することがある。
絶縁シートの硬化物の熱伝導率は、0.5W/m・K以上であることが好ましい。絶縁シートの硬化物の熱伝導率は、1.0W/m・K以上であることがより好ましく、3.0W/m・K以上であることがさらに好ましい。熱伝導率が低すぎると、絶縁シートの硬化物の放熱性が低くなることがある。
絶縁シートの硬化物の絶縁破壊電圧は、30kV/mm以上であることが好ましい。絶縁シートの硬化物の絶縁破壊電圧は、40kV/mm以上であることがより好ましく、50kV/mm以上であることがさらに好ましく、80kV/mm以上であることがさらに好ましく、100kV/mm以上であることが最も好ましい。絶縁破壊電圧が低すぎると、絶縁シートが例えば電力素子用のような大電流用途に用いられた場合に、絶縁性が低くなることがある。
未硬化状態の絶縁シートの反応率は10%以下であることが好ましい。未硬化状態の絶縁シートの反応率が10%を超えると、未硬化状態の絶縁シートが固くかつ脆くなり、未硬化状態の絶縁シートの室温でのハンドリング性が低下したり、絶縁シートの硬化物の接着性が低下したりすることがある。絶縁シートの反応率は、示差走査型熱量測定装置を用いて、絶縁シートを120℃1時間、次に200℃1時間の2段階で硬化させた時に発生する熱量から計算することにより求められる。
絶縁シートの硬化物の体積抵抗率は、1014Ω・cm以上であることが好ましく、1016Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率が低すぎると、導体層と熱伝導体との間の絶縁を充分に保てないことがある。
絶縁シートの硬化物の熱線膨張率は、30ppm/℃以下であることが好ましく、20ppm/℃以下であることがより好ましい。熱線膨張率が高すぎると、絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
未硬化状態の絶縁シートの25℃での曲げ弾性率は、10〜1,000MPaの範囲内にあることが好ましく、20〜500MPaの範囲内にあることがより好ましい。未硬化状態の絶縁シートの25℃での曲げ弾性率が10MPa未満であると、未硬化状態の絶縁シートの室温での自立性が著しく低下し、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性が低下することがある。未硬化状態の絶縁シートの25℃での曲げ弾性率が1,000MPaを超えると、加熱接着時に弾性率が充分に低くならないため、絶縁シートの硬化物が接着対象物に充分に密着しないことがあり、かつ絶縁シートの硬化物と接着対象物との接着性が低下することがある。
絶縁シートが硬化されたときに、絶縁シートの硬化物の25℃での曲げ弾性率は、1,000〜50,000MPaの範囲内にあることが好ましく、5,000〜30,000MPaの範囲内にあることがより好ましい。絶縁シートの硬化物の25℃での曲げ弾性率が低すぎると、例えば、絶縁シートを用いて、厚みの薄い積層基板又は両面に銅回路が設けられた積層板等の積層体を作製した場合に、積層体がたわみやすくなる。このため、折れや曲げ等により積層体が破損しやすくなる。絶縁シートの硬化物の25℃での曲げ弾性率が高すぎると、絶縁シートの硬化物が固くかつ脆くなりすぎて、絶縁シートの硬化物にクラック等が生じやすくなることがある。
上記曲げ弾性率は、例えば、万能試験機RTC−1310A(オリエンテック社製)を用いて、JIS K7111に準拠し、長さ8cm、幅1cm及び厚み4mmの試験片を用いて、支点間距離6cm及び速度1.5mm/分の各条件で測定できる。また、絶縁シートの硬化物の曲げ弾性率を測定する際に、絶縁シートの硬化物は、120℃で1時間、次に200℃で1時間の2段階の温度により硬化させることにより得られる。
本発明に係る絶縁シートは、回転型動的粘弾性測定装置を用いて測定された25℃での未硬化状態の絶縁シートのtanδが0.1〜1.0の範囲内にあり、かつ未硬化状態の絶縁シートを25℃から250℃まで昇温させた場合の絶縁シートのtanδの最大値が1.0〜5.0の範囲内にあることが好ましい。上記絶縁シートのtanδは、0.1〜0.5の範囲内にあることがより好ましい。上記絶縁シートのtanδの最大値は、1.5〜4.0の範囲内にあることがより好ましい。
上記25℃での未硬化状態の絶縁シートのtanδが0.1未満であると、未硬化状態の絶縁シートの柔軟性が低くなり、未硬化状態の絶縁シートが破損しやすくなる。上記25℃での未硬化状態の絶縁シートのtanδが1.0以上であると、未硬化状態の絶縁シートが柔らかすぎるため、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性が低下することがある。上記未硬化状態の絶縁シートを25℃から250℃まで昇温させた場合の絶縁シートのtanδの最大値が1.0未満であると、加熱接着時に絶縁シートが接着対象物に充分に密着しないことがある。上記絶縁シートのtanδの最大値が5.0を超えると、絶縁シートの流動性が高すぎて、加熱接着時に絶縁シートの厚みが薄くなり、所望の絶縁破壊特性が得られないことがある。上記25℃での未硬化状態の絶縁シートのtanδは、回転型動的粘弾性測定装置VAR−100(レオロジカ・インスツルメンツ社製)を用いて、直径2cmの円板状の未硬化状態の絶縁シートを用いて、直径2cmのパラレル型プレートにより、25℃にて、オシレーション歪み制御モード、開始応力10Pa、周波数1Hz及び歪み1%の各条件で測定できる。また、未硬化状態の絶縁シートを25℃から250℃まで昇温させた場合の絶縁シートのtanδの最大値は、上記未硬化状態の絶縁シートを、上記測定条件に加え、昇温速度30℃/分で、25℃から250℃まで昇温させることにより測定できる。上記曲げ弾性率及びtanδが上記特定の範囲内にある場合には、製造時及び使用時に、未硬化状態の絶縁シートのハンドリング性が顕著に高くなる。さらに、絶縁シートと銅箔など接着強度が顕著に高くなる。また、内層回路などの凹凸に対する追従性を高めることができる。このため、接着界面に空隙が形成され難くなり、従って放熱性が高くなる。
(積層板及び多層積層板)
本発明に係る絶縁シートは、積層板及び多層積層板の絶縁層を形成するために好適に用いられる。
図1に、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを用いた積層板を示す。
図1に示す積層板1は基板2を備える。基板2の上面2aの一部の領域には、導体層3が設けられている。基板2の上面2aに、導体層3を覆うように絶縁層4が積層されている。絶縁層4の上面4aの一部の領域に、導体層5が設けられている。従って、積層板1は、絶縁層4と、絶縁層4の両面に積層された導体層3,5とを備える。導体層3及び導体層5は、図示しないビアホール接続により接続されている。
積層板1では、絶縁層4が、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを硬化させることにより形成されている。従って、導体層3,5により熱が発生しても、絶縁層4により熱を効率的に放散させることができる。
図2に示す多層積層板11では、基板12の上面12aに、複数の絶縁層13〜15が積層されている。基板12の上面12aの一部の領域には、導体層16が設けられている。最上層の絶縁層15以外の絶縁層13,14の上面13a,14aの一部の領域にそれぞれ、導体層17,18が設けられている。従って、多層積層板11は、積層された複数の絶縁層13〜15と、絶縁層13,14間に配置された導電層17と、絶縁層14,15間に配置された導電層18とを備える。導体層16〜18は、図示しないビアホール接続により接続されている。
多層積層板11では、絶縁層13〜15が、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを硬化させることにより形成されている。従って、導体層16〜18により熱が発生しても、絶縁層13〜15により熱を効率的に放散させることができる。
また、絶縁層4及び絶縁層13〜15が、上記絶縁シートを硬化させることにより形成されているので、絶縁層4と導体層3,5との接着強度及び絶縁層13〜15と導体層16〜18との接着強度を高くすることができる。従って、絶縁層4と導体層3,5との界面、及び絶縁層13〜15と導体層16〜18との界面での電気信号の損失を小さくすることができる。
本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させることにより絶縁層が形成されている場合には、絶縁層を粗化処理しなくても、絶縁層と導体層との接着強度を充分に高くすることができる。ただし、絶縁層は粗化処理されていてもよい。粗化処理により絶縁層の表面により一層微細な孔を形成できる。従って、絶縁層の表面に微細な配線を形成でき、かつ該配線における信号伝送速度を速くすることができる。
また、上記導体層は配線回路であることが好ましい。配線回路の場合には、絶縁層と導体層との接着強度を高めることができるので、回路の信頼性を高めることができる。
上記導体層を形成する材料として、金属箔もしくは金属めっき、又は回路保護用に用いるめっき材料を使用できる。上記導体層の少なくとも一部はめっきにより形成されていることが好ましい。上記導体層はめっき層であることが好ましい。導体層がめっきにより形成されためっき層である場合には、絶縁層と導体層との接着強度を充分に高くすることができる。
上記めっき材料としては、例えば、金、銀、銅、ロジウム、パラジウム、ニッケル又は錫などが挙げられる。これらの2種類以上の合金を用いてもよい。なかでも、導体層は、銅層であることが好ましく、銅めっき層であることがより好ましい。
上記導体層を形成する前に、絶縁層の表面に微細な凹凸を形成するために、絶縁層の表面を粗化液により粗化処理してもよい。絶縁層の少なくとも一部の表面が粗化液により粗化されており、粗化された表面に導体層がめっきにより形成されていることが好ましい。
粗化処理される前に、膨潤処理されることが好ましい。ただし、上記膨潤処理は必ずしも行われなくてもよい。
上記膨潤処理方法として、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、上記絶縁層の表面を処理する方法が用いられる。上記膨潤処理には、40重量%エチレングリコール水溶液が好適に用いられる。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等の粗化液が用いられる。これらの化学酸化剤は、例えば、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム又は無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化処理方法は特に限定されない。上記粗化処理には、例えば、30〜90g/L過マンガン酸もしくは過マンガン酸塩溶液、又は30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液が好適に用いられる。
(積層構造体)
本発明に係る絶縁シートは、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体を導電層に接着するのにも用いられる。
図3に、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを用いた積層構造体を示す。
図3に示す積層構造体21は、熱伝導体22と、熱伝導体22の一方の面22aに積層された絶縁層23と、絶縁層23の熱伝導体22が積層された面とは反対側の面に積層された導電層24とを備える。絶縁層23は、本発明の一実施形態に係る絶縁シートを硬化させることにより形成されている。熱伝導体22の熱伝導率は10W/m・K以上である。
熱伝導体22の少なくとも一方の面22aに、絶縁層23と導電層24とがこの順に積層されていればよく、熱伝導体22の他方の面22bにも、絶縁層と導電層とがこの順に積層されていてもよい。
積層構造体21では、絶縁層23が高い熱伝導率を有するので、導電層24側からの熱が絶縁層23を介して熱伝導体22に伝わりやすい。積層構造体21では、熱伝導体22によって熱を効率的に放散させることができる。
上記熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体は特に限定されない。上記熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体として、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム又はグラファイトシート等が挙げられる。中でも、上記熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。銅又はアルミニウムは、放熱性に優れている。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
[ポリマー(A)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:E1256、Mw=51,000、Tg=98℃)
(2)高耐熱フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名:FX−293、Mw=43,700、Tg=163℃)
(3)エポキシ基含有スチレン樹脂(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−1010S、Mw=100,000、Tg=93℃)
[ポリマー(A)以外の樹脂]
(1)エポキシ基含有アクリル樹脂(日油社製、商品名:マープルーフG−0130S、Mw=9,000,Tg=69℃)
[結晶性のエポキシ樹脂(B1)]
(1)結晶性ビフェニル骨格エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YX−4000、Mw=350)
(2)結晶性ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製、商品名:HP−4032D、Mw=304)
(3)結晶性ビスフェノールS骨格含有エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名:YSLV−120TE、Mw=434)
[結晶性のオキセタン樹脂(B2)]
(1)結晶性ベンゼン骨格含有オキセタン樹脂(宇部興産社製、商品名:エタナコールOXTP、Mw=362.4)
[結晶性の樹脂(B)以外の樹脂]
(1)ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:1003、Mw=1,300)
[硬化剤(C)]
(1)脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:MH−700)
(2)芳香族骨格酸無水物(サートマー・ジャパン社製、商品名:SMAレジンEF60)
(3)多脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:HNA−100)
(4)テルペン系骨格酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピキュアYH−306)
(5)ビフェニル骨格フェノール樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7851−S)
(6)アリル基含有骨格フェノール樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YLH−903)
(7)トリアジン骨格系フェノール樹脂(大日本インキ化学社製、商品名:フェノライトKA−7052−L2)
(8)メラミン骨格系フェノール樹脂(群栄化学工業社製、商品名:PS−6492)
(9)イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製、商品名:2MZA−PW)
[フィラー(D)]
(1)球状アルミナ(デンカ社製、商品名:DAM−10、平均粒子径10μm、熱伝導率36W/m・K)
(2)破砕アルミナ(日本軽金属社製、商品名:LS−242C、平均粒子径2μm、、熱伝導率36W/m・K)
(3)板状窒化ホウ素(昭和電工社製、商品名:UHP−1、平均長径8μm、熱伝導率60W/m・K、アスペクト比30〜50)
(4)窒化アルミ(東洋アルミ社製、商品名:TOYALNITE―FLX、平均粒子径14μm、熱伝導率200W/m・K)
(5)結晶性シリカ(龍森社製、商品名:クリスタライトCMC−12、平均粒子径5μm、熱伝導率10W/m・K)
(6)合成マグネサイト(神島化学社製、商品名:MSL、平均粒子径6μm、熱伝導率15W/m・K)
(7)板状アルミナ(キンセイマテック社製、商品名:セラフ02025、平均長径2μm、熱伝導率36W/m・K、アスペクト比20〜30)
[樹脂粒子(E)]
(1)0.1μm粒子(コアシェル型シリコーン−アクリル粒子、旭化成ワッカーシリコーン社製、商品名:P22、平均粒子径0.1μm、コアシェル構造を有する、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むコア層と有機物を含む)
[分散剤(F)]
(1)アクリル系分散剤(ビックケミージャパン社製、商品名:Disperbyk−2070、pKaが4のカルボキシル基を有する)
(2)ポリエーテル系分散剤(楠本化成社製、商品名:ED151、pKaが7のリン酸基を有する)
[添加剤]
(1)エポキシシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBE403)
(2)マイカ(山口雲母工業所社製、商品名:SJ005、平均粒子径5μm)
(3)タルク(日本タルク社製、商品名:K−1、平均粒子径8μm)
(4)水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名:B−103、平均粒子径8μm)
(5)水酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製、商品名:PZ−1、平均粒子径1.2μm)
[溶剤]
(1)メチルエチルケトン
(実施例1,2,4〜30、参考例3及び比較例1〜5)実施例3及び参考例1,2は欠番とする
ホモディスパー型攪拌機を用いて、下記の表1,2に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合し、混練し、絶縁材料を調製した。
厚み50μmの離型PETシートに、上記絶縁材料を50μmの厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PETシート上に絶縁シートを作製した。
(評価)
(1)ハンドリング性
PETシートと、該PETシート上に形成された絶縁シートとを有する積層シートを460mm×610mmの平面形状に切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを用いて、室温(23℃)でPETシートから未硬化状態の絶縁シートを剥離したときのハンドリング性を下記の基準で判定した。
[ハンドリング性の判定基準]
〇:絶縁シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:絶縁シートを剥離できるものの、シート伸びや破断が発生する
×:絶縁シートを剥離できない
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量測定装置「DSC220C」(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、3℃/分の昇温速度で未硬化状態の絶縁シートのガラス転移温度を測定した。
(3)熱伝導率
絶縁シートを120℃のオーブン内で1時間、その後200℃のオーブン内で1時間加温処理し、絶縁シートを硬化させた。絶縁シートの硬化物の熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。
(4)絶縁破壊電圧
絶縁シートを100mm×100mmの平面形状に切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを120℃のオーブン内で1時間、更に200℃のオーブン内で1時間硬化させ、絶縁シートの硬化物を得た。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、絶縁シートの硬化物間に、1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。絶縁シートの硬化物が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
(5)半田耐熱試験
絶縁シートを厚み1.5mmのアルミ板と厚み35μmの電解銅箔との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を50mm×60mmのサイズに切り出し、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを300℃の半田浴に銅箔側を下に向けて浮かべて、銅箔の膨れ又は剥がれが発生するまでの時間を測定し、以下の基準で判定した。
[半田耐熱試験の判定基準]
◎:10分経過しても膨れ及び剥離の発生なし
〇:3分経過後、かつ10分経過する前に膨れ又は剥離が発生
△:1分経過後、かつ3分経過する前に膨れ又は剥離が発生
×:1分経過する前に膨れ又は剥離が発生
(6)接着強度(引き剥がし強さ)
厚み1mmのアルミ板と厚み35μmの電解銅箔間に絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板の銅箔をエッチングし、幅10mmの銅箔の帯を形成した。その後、絶縁シートの硬化物に対して90℃の角度及び50mm/分の引っ張り速度で、銅箔を硬化物から剥離した際の引き剥がし強さを測定した。
(7)加工性
絶縁シートを厚み1.5mmのアルミ板と厚み35μmの電解銅箔との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を直径2.0mmのドリル(ユニオンツール社製、RA series)を用いて、回転数30000及びテーブル送り速度0.5m/分の条件でルーター加工した。ばりが発生するまでの加工距離を測定し、加工性を以下の基準で評価した。
[加工性の判定基準]
○:ばりが発生することなく5m以上加工可能
△:ばりが発生することなく1m以上、5m未満加工可能
×:1m未満の加工によりばりが発生
(8)積層プレス時のはみ出し量
PETシートと、該PETシート上に形成された絶縁シートとを有する積層シートを13cm×5cmの平面形状に切り出した後、絶縁シートをPETシートから剥離した。また、13cm×5cmの平面形状のアルミニウム板(エンジニアリングテストサービス社製、JIS H4000 A5052P、最大高さ粗さRz=1.1)と、13cm×5cmの平面形状の銅箔(福田金属箔粉工業社製、電解銅箔、CT−T8)とを用意した。
アルミニウム板の粗面と銅箔の粗面との間に絶縁シートを挟んで積層体を得た後、温度120℃及び圧力4MPaで10分間加熱プレスした。プレス後に積層体の側面からはみ出た絶縁シートの重量を測定し、下記の式により絶縁シートのはみ出し量を求めた。はみ出し量を、下記の基準で判定した。
はみ出し量=(プレス後に積層体の側面からはみ出た絶縁シートの重量)/(プレス前の絶縁シートの重量)×100
[積層プレス時のはみ出し量の判定基準]
○:絶縁シートのはみ出し量が7%未満
△:絶縁シートのはみ出し量が7%を超え、10%未満
×:絶縁シートのはみ出し量が10%以上
(9)自立性
上記(1)ハンドリング性の評価において、PETシートから剥離された後の未硬化状態の絶縁シートを用意した。この未硬化状態の絶縁シートの四角を固定して、該四角が水平方向と平行な方向に位置するように絶縁シートを宙吊りにし、23℃で10分間放置した。放置後の絶縁シートの変形を観察し、自立性を下記の基準で判定した。
[自立性の判定基準]
○:絶縁シートが下方に向かってたわんでおり、絶縁シートの鉛直方向におけるたわみ距離(変形度合い)が5cm以内
△:絶縁シートが下方に向かってたわんでおり、絶縁シートの鉛直方向におけるたわみ距離(変形度合い)が5cmを超える
×:絶縁シートが破れた
(10)放熱性
厚み1mmのアルミ板と厚み35μmの電解銅箔との間に絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板の銅箔面を、同じサイズの60℃に制御された表面平滑な発熱体に196N/cmの圧力で押し付けた。アルミ板の表面の温度を熱伝対により測定し、放熱性を下記の基準で判定した。
[放熱性の判定基準]
◎:発熱体とアルミ板の表面の温度差が3℃以下
○:発熱体とアルミ板の表面の温度差が3℃を超え、6℃以下
△:発熱体とアルミ板の表面の温度差が6℃を超え、10℃以下
×:発熱体をアルミ板の表面の温度差が10℃を超える
(11)曲げ弾性率
万能試験機RTC−1310A(オリエンテック社製)を用いて、JIS K7111に準拠し、長さ8cm、幅1cm及び厚み4mmの試験片を、支点間距離6cm及び速度1.5mm/分の各条件で測定することにより、未硬化状態の絶縁シートの25℃での曲げ弾性率を測定した。
また、絶縁シートを120℃で1時間、その後200℃で1時間硬化させ、絶縁シートの硬化物を得た。未硬化状態の絶縁シートと同様に万能試験機(オリエンテック社製)を用いて、JIS K7111に準拠し、長さ8cm、幅1cm及び厚み4mmの試験片を、支点間距離6cm及び速度1.5mm/分の各条件で測定することにより、得られた絶縁シートの硬化物の25℃での曲げ弾性率を測定した。
(12)弾性率
回転型動的粘弾性測定装置VAR−100(レオロジカ・インスツルメンツ社製)を用いて、直径2cmの円板状の未硬化状態の絶縁シートサンプルを使用し、直径2cmのパラレル型プレートにより、オシレーション歪み制御モード、開始応力10Pa、周波数1Hz及び歪み1%の各条件で、未硬化状態の絶縁シートの25℃でのtanδを測定した。また、未硬化状態の絶縁シートを25℃から250℃まで昇温させた場合の絶縁シートのtanδの最大値は、上記未硬化状態の絶縁シートサンプルを、上記測定条件に加え、昇温速度30℃/分で、25℃から250℃まで昇温させることにより測定した。
(13)反応率
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査型熱量測定装置「DSC220C」を用いて、測定開始温度30℃及び昇温速度8℃/分で、得られた絶縁シートを120℃まで昇温し1時間保持した後、昇温速度8℃/分で200℃までさらに昇温し1時間保持した。この2段階で絶縁シートを硬化させた時に発生する熱量(以下、熱量Aと記載する)を測定した。
次に、厚み50μmの離型PETシートに、実施例、参考例及び比較例の絶縁シートの作製に際し用意した絶縁材料を厚み50μmとなるように塗工し、23℃及び0.01気圧の常温真空条件において1時間乾燥したこと以外は実施例、参考例及び比較例と同様にして得られた非加熱で乾燥された未硬化状態の絶縁シートを用意した。上記の熱量Aの測定と同様にして、2段階で硬化させた時に発生する熱量(以下、熱量Bと記載する)を測定した。得られた熱量A及び熱量Bから、下記の式により、未硬化状態の絶縁シートの反応率を求めた。
反応率(%)=[1−(熱量A/熱量B)]×100
結果を下記の表1〜5に示す。
Figure 0005075149
Figure 0005075149
Figure 0005075149
Figure 0005075149
Figure 0005075149
1…積層板
2…基板
2a…上面
3…導体層
4…絶縁層
4a…上面
5…導体層
11…多層積層板
12…基板
12a…上面
13〜15…絶縁層
13a,14a…上面
16〜18…導体層
21…積層構造体
22…熱伝導体
22a…一方の面
22b…他方の面
23…絶縁層
24…導電層

Claims (11)

  1. 重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)と、
    重量平均分子量が1万未満である結晶性のエポキシ樹脂(B1)及び重量平均分子量が1万未満である結晶性のオキセタン樹脂(B2)の内の少なくとも一方の結晶性の樹脂(B)と、
    硬化剤(C)と、
    熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(D)とを含み、
    前記ポリマー(A)がフェノキシ樹脂であり、
    前記ポリマー(A)と、前記結晶性の樹脂(B)と、前記硬化剤(C)とを含む絶縁シート中の樹脂成分の合計100重量%中、前記ポリマー(A)の含有量が20〜60重量%、前記結晶性の樹脂(B)の含有量が10〜60重量%、かつ前記ポリマー(A)と前記結晶性の樹脂(B)との合計の含有量が100重量%未満である、絶縁シート。
  2. 前記結晶性の樹脂(B)が、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のエポキシモノマー(B1b)及び芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下である結晶性のオキセタンモノマー(B2b)の内の少なくとも一方の結晶性のモノマーを含む、請求項1に記載の絶縁シート。
  3. 前記フィラー(D)が、アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の絶縁シート。
  4. 前記硬化剤(C)がフェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁シート。
  5. 前記硬化剤(C)が、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である、請求項又はに記載の絶縁シート。
  6. 前記硬化剤(C)が、下記式(1)〜(3)の内のいずれかで表される酸無水物である、請求項に記載の絶縁シート。
    Figure 0005075149
    Figure 0005075149
    Figure 0005075149
    上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
  7. 前記硬化剤(C)が、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂である、請求項又はに記載の絶縁シート。
  8. 絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に積層された導体層とを備え、
    前記絶縁層が、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁シートを硬化させることにより形成されている、積層板。
  9. 積層された複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の間に配置された導体層とを備え、
    前記絶縁層が、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁シートを硬化させることにより形成されている、多層積層板。
  10. 前記導体層の少なくとも一部がめっきにより形成されている、請求項に記載の多層積層板。
  11. 前記絶縁層の少なくとも一部の表面が粗化液により粗化されており、粗化された表面に前記導体層がめっきにより形成されている、請求項又は10に記載の多層積層板。
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