以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のオートライトシステムの概略構成を示す説明図である。図1に示す如く、本実施形態のオートライトシステム1は、車両に搭載され、走行中の車両の走行環境(主に前方風景)を撮像して、その撮像画像に基づいて灯火の点灯・消灯を自動で制御するものである。このオートライトシステム1は、主として、車両走行環境を撮像して走行環境の明暗を判定し、その判定結果に基づいて灯火を点灯又は消灯させるための灯火制御指令を出力する撮像システム2と、この撮像システム2からの灯火制御指令に従って灯火を点灯又は消灯させる車両灯制御ECU3とを備えている。
撮像システム2は、カメラ11と画像処理ECU15とにより構成される。このうちカメラ11は、車両前方(一部、車室内を含む)の撮像対象からの光が入射される広角レンズ12と、広角レンズ12を介して入射された撮像対象からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子13と、撮像素子13による変換後の電気信号を後段の画像処理ECU15が扱えるデジタルデータに変換する撮像回路部14とを備えている。このカメラ11は、車室内前方におけるフロントガラス10の上部(図示しないルームミラー近傍)に固定設置され、主として車両前方の風景を撮像する。
また、車室内におけるフロントガラス10の下部には、車室内の光を集光してその集光した光をカメラ11の広角レンズ12へ導くプリズム19が設置されている。これにより、カメラ11による撮像画像中に、車両前方の領域である前方上空撮像領域41及び前方中央撮像領域42に加え、車室内の領域である車室内撮像領域43も含まれることになる。つまり、カメラ11により車両前方と車室内の双方を同時に(一つの撮像画像内に)撮像できるのである。
カメラ11による撮像画像中の上記各撮像領域41,42,43の具体的配置関係は、図3に示すようになり、画像上部に前方上空撮像領域41、その下の画像中央部に前方中央撮像領域42、その下の画像下部に車室内撮像領域43が、それぞれ表示される。車室内撮像領域43の画像は、車外前方から斜め下方向に車両内を見下ろしたときの風景とほぼ一致する。なお、図3に示すように、撮像画像中には、更に複数の領域30〜34が設定されているが、これらについては後述する。
カメラ11を構成する広角レンズ12は、通常のレンズよりも広い画角の画像を撮像するためのものである。この広角レンズ12を用いることにより、前方上空撮像領域41、前方中央撮像領域42、及び車室内撮像領域43をそれぞれ十分に広い範囲で撮像することができる。本実施形態では特に、広角レンズ12として、画角全体における所定の中心領域については画像の歪み(歪曲収差)がほとんど生じず、周辺領域についてのみ画像に歪みが生じるような特殊タイプのものを用いている。
即ち、例えば図2(b)に示すように、広角レンズに分類されるレンズの一つである魚眼レンズ101は、画角は広くとれるものの、この魚眼レンズ101を介して撮像素子13に結像した画像は全体に渡って歪みを有したものとなり、その分解能も画角全体に渡ってほぼ同じである。これに対し、図3(a)に示すように、特殊タイプの広角レンズとして構成された本実施形態の広角レンズ12は、画角そのものは魚眼レンズ101と同等レベルを有しつつ、前方中央撮像領域42に相当する中心領域については歪みがほとんど生じない。しかも、魚眼レンズ101を用いた場合(図3(b))における、撮像素子13に結像する中心領域の受光領域27に比べて、特殊タイプの広角レンズ12を用いた場合(図3(a))における中心領域の受光領域26の方が広い。
そのため、前方中央撮像領域42については、歪みがなく且つ高い分解能で広い範囲の撮像画像が得られ、その得られた画像に基づいて各種画像認識を良好に行うことができる。また、前方上空撮像領域41についても、歪みは生じるものの、周囲の建物等の影響を受けない(領域中に周囲の建物等が写らない、或いは写る可能性が極めて低い)、上空のより高い範囲までの撮像画像が得られる。車室内撮像領域43についても、歪みが生じるものの車室内の明暗判定に必要な範囲の車室内撮像画像が十分に得られる。
撮像素子13は、例えばCCDやCMOSなどからなる画像センサであって、広角レンズ12を介して入力された光を電気信号に変換する。
撮像回路部14は、A/D変換回路等を備え、撮像素子13による変換後の電気信号を後段の画像処理ECU15が扱えるデジタルデータに変換する。この撮像回路部14は、画像処理ECU15内の駆動制御部18からの制御信号に従って動作する。
画像処理ECU15は、カメラ11により撮像された撮像画像を処理して、後述する図6の自動灯火制御処理、即ち明暗判定やトンネル等の判定、及びこれら判定結果に基づく灯火の制御を行ったり、例えば道路標識、他車両、白線、障害物などの特定の認識対象物を認識する画像認識処理等を行ったりするものであり、カメラ11により撮像された撮像画像を示す画像データが入力される入出力インターフェースとしての画像入力部16と、カメラ11の撮像回路部14へ制御信号を出力してその駆動を制御する駆動制御部18と、画像処理ECU15の動作全体を統括し、画像入力部16を介して入力された画像データに対する各種の画像処理や駆動制御部18の制御等を行う演算処理部17とを備えている。
演算処理部17は、カメラ11から画像入力部16を介して入力された撮像画像(画像データ)に基づいて上記各撮像領域41,42,43の明暗判定(より詳しくは後述する各判定領域31〜34の明暗判定)やトンネル/橋げた判定を行うと共に、これら判定結果に基づいて灯火の自動点灯・消灯制御のための灯火制御指令を生成する。なお、この演算処理部17は、ハードウェア的には、CPUやメモリ等からなるマイコン(図示略)を有し、このマイコンにて各種演算処理を行うものである。
演算処理部17は更に、撮像画像に基づく画像認識を行う。そして、認識対象物が認識されると、その認識対象物がディスプレイ9に拡大表示されるとともに、LEDからなる表示部25を点灯或いは点滅させること等によって、認識対象物が認識されたことをユーザに報知する。
なお、ディスプレイ9は、車室内のダッシュボードの中央部に設けられている。また、表示部25は、運転席前方(ステアリングの前方)のインストルメントパネル内における所定の位置において運転者に視認可能に配置されている。
また、本実施形態では、画像認識結果がディスプレイ9および表示部25によってユーザに報知されるだけでなく、画像認識結果が画像処理ECU15以外の他の各種ECUにも適宜通知され、これら各ECUにおいて、画像認識結果に基づく各種制御処理が行われる。他のECUの一例としては、例えば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やプリクラッシュセーフティシステム(PCS)用の車間制御ECU、或いは、車線維持・車線逸脱警報システムを実現するためのECUなどが挙げられる。
車両灯制御ECU3は、車両に備えられている前照灯21、車幅灯22、尾灯23(以下これらをまとめて「車両灯」ともいう)の点灯・消灯を制御するための電子制御装置であり、基本的には、車両灯操作スイッチ24の状態に応じてその点灯・消灯を制御する。
車両灯操作スイッチ24は、ステアリング付近に配置され、運転者が手動で切替操作できるようにされており、操作モードとして、全てが消灯状態となる消灯モード、車幅灯22及び尾灯23のみ点灯状態となる準点灯モード、前照灯21を含む全ての灯火21,22,23が点灯状態となる完全点灯モード、運転者の意志とは無関係に画像処理ECU15からの灯火制御指令に従って車両灯の点灯・消灯が自動で制御されるAUTOモードの4種類が設定されている。
車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作されると、車両灯制御ECU3は、画像処理ECU15に対してAUTOモードに設定された旨の信号を送る。これにより、画像処理ECU15は、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作された旨の情報を得る。このAUTOモードである旨の情報は、後述する図6の自動灯火制御処理において用いられる。
また、画像処理ECU15及び車両灯制御ECU3は、メータ系ECU4、車速検出センサ5、操舵角検出センサ6、車両状態検出センサ7、道路情報提供装置8などにも接続されている。
メータ系ECU4は、表示部25に表示させるべき各種情報(速度、エンジン回転数、燃料残量、各種車両状態、上述した画像認識情報など)の表示を制御するものである。なお、表示部25には、現在の灯火の状態を表示するインジケータも備えられている。即ち、例えば車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに操作されているか否か、車両灯が点灯しているか否か、前照灯はいわゆるハイビームかそれともロービームであるか、といった情報を示すインジケータが備えられている。更に、表示部25には、メータ系ECU4が画像処理ECU15から車両灯消灯警告指令を受けた場合に表示される消灯警告灯や、メータ系ECU4が画像処理ECU15から車両灯点灯警告指令を受けた場合に表示される点灯警告灯(いずれも図示略)も備えられている。
車速検出センサ5は、車両の速度を検出してその速度に応じた速度信号を出力する。操舵角検出センサ6は、ステアリングの回転角度を検出し、その角度に応じた操舵角信号を出力する。車両状態検出センサ7は、ヨーレートセンサや傾斜センサなどから構成され、これら各センサからの検出信号(車両状態信号)を出力する。道路情報提供装置8は、いわゆるナビゲーションシステムを構成するものであり、GPS衛星からの情報を元に車両の絶対位置を計測し、地図データと共に自車位置をディスプレイ9に表示する。なお、ディスプレイ9には、運転者等による所定の操作によって画像認識結果を表示させたりカメラ11による撮像画像を表示させたりすることもできる。
次に、撮像システム2内の画像処理ECU15により行われる、撮像画像の明暗判定、及びこの明暗判定結果に基づく自動灯火制御について、より詳しく説明する。本実施形態のオートライトシステム1では、車両灯操作スイッチ24がどのモードに切替操作されているかに拘わらず、画像処理ECU15が、カメラ11による撮像画像に基づいて走行環境の明暗を判定する。そして、その判定結果及び車両灯操作スイッチ24の状態に応じて各種指令を生成・出力する。
図3に示すように、カメラ11により撮像される画像は、大きく分けると、既述の通り前方上空撮像領域41、前方中央撮像領域42、及び車室内撮像領域43の三つの領域に分けられるが、走行環境の明暗判定(ひいては車両灯の制御)を行うための領域として、さらに4つの領域が設定されている。具体的には、前方上空明るさ判定領域31、前方中空明るさ判定領域32、前方遠方明るさ判定領域33、及び車室内明るさ判定領域34である。
なお、上記4つの明るさ判定領域の他に、前方中央撮像領域42の中に前方監視領域30が設定されているが、この前方監視領域30は例えば車線維持・車線逸脱警報システム等における画像認識用の領域であるため、ここではこの前方監視領域30に関する詳細説明は省略する。
前方上空明るさ判定領域31は、前方上空の明るさを判定するために、上記三つの撮像領域のうち前方上空撮像領域41内に設定された領域であり、可能な限り、周囲の建物等が写らずに前方上空(天空)のみが写るように設定されている。この前方上空明るさ判定領域31は、広角レンズではない通常のレンズでは撮像不可能(或いは撮像困難)な高い領域である。本実施形態では、特殊タイプの広角レンズ12を用いることで、周囲の建物等の影響が排除された前方上空の画像を得ることができる。
この前方上空明るさ判定領域31は、より具体的には、撮像画像中の所定の位置を基準点(0°)として、この基準点から垂直方向45°の角度以上に設定されている。なお、ここでいう角度とは、カメラ11の実位置を中心として、このカメラ11と車両前方の上記基準点に相当する位置とを結ぶ基準線に対する角度である。この45°以上という垂直方向の角度は、カメラ11の搭載位置を道路上1.5mの高さと仮定し、この仮定及び想定される周囲の建物の高さ等に基づいて設定されたものである。また、撮像画像中の基準点は、例えば、車両前方に無限に直線道路が続いていると仮定した場合に自車前方を撮像したときの、その撮像画像中に現れる直線道路の消失点に相当する位置に設定される。
なお、この基準点は、実際の撮像画像の内容に拘わらず撮像画像内における絶対位置が予め固定されたものであってもよいし、実際の撮像画像を画像認識等することによってその位置を変化可能なものであってもよい。
前方中空明るさ判定領域32は、前方上空明るさ判定領域31と同じく、前方における高い領域の明るさを判定するための領域であるが、前方上空明るさ判定領域31よりも下であって、且つ、上記三つの撮像領域41〜43のうち前方中央撮像領域42内における上部に設定されている。この前方中空明るさ判定領域32は、換言すれば、広角レンズではない通常のレンズを用いて撮像可能な範囲における上部領域ともいえる。
この前方中空明るさ判定領域32は、より具体的には、基準点(垂直方向0°)に対し、垂直方向6°〜20°の範囲で設定されている。この範囲の下限である6°は、次のようにして得られたものである。即ち、自車前方Dc[m]先に車高Hc[m]のトラックが走行しているものと仮定したときに、そのトラックと重ならない(トラックより上の)範囲となるように、次式(1)にて算出したものである。
下限角度=arctan{(HcーHs)/Dc} … (1)
式(1)においてHsは、カメラ11の搭載位置(地上からの高さ)である。そして、例えば、トラックの車高Hcを3.8m、カメラ11の搭載位置Hsを1.5m、車間距離Dcを20mとして、上記式(1)を用いて下限角度を算出すると、およそ6°という結果が得られるのである。車間距離20mは、時速40kmの速度でおよそ2秒の間に走行する距離に相当するものである。
また、上記範囲の上限である20°は、画像認識に用いられる前方監視領域30の上限でもあり、次のようにして得られたものである。即ち、前方監視領域30の水平方向角度範囲を約50°とすると共に、水平対垂直の比率を4:3と設定すると、前方監視領域30の垂直方向角度範囲は約40°となる。また、前方監視領域30の垂直方向中心はちょうど基準点となるように設定されている。つまり、前方監視領域30の垂直方向角度範囲は、基準点を中心として上下にそれぞれ20°の範囲(上下あわせて40°)となる。そのため、基準点に対する前方中空明るさ判定領域32の上限角度(=前方監視領域30の上限角度)はおよそ20°となる。
通常は、前方上空明るさ判定領域31、或いは前方中空明るさ判定領域32のいずれかについてその明暗がわかれば、走行環境が明るいか又は暗いか、ひいては車両灯を点灯させるべきか否かがわかる。しかし、車両の走行環境は様々であり、周囲の建物等に限らず、例えばトンネルがあったり、歩道橋・陸橋等の橋げたがあったりする。
そのため、例えば、橋げたの下を通過する際には一時的に前方上空明るさ判定領域31が暗くなることがある。この場合、車両灯の点灯制御を前方上空明るさ判定領域31の明暗判定結果のみに基づいて行うと、本来は車両灯を点灯させる必要はない状況であるにもかかわらず、この前方上空明るさ判定領域31が暗くなったということのみをもって車両灯が点灯されてしまう。また例えば、トンネル内を走行中に出口が近くなると、前方中空明るさ判定領域が明るくなる。この場合、車両灯の点灯制御を前方中空明るさ判定領域32の明暗判定結果のみに基づいて行うと、まだトンネル内を走行中であって車両灯を消灯させるべきではないにもかかわらず、この前方中空明るさ判定領域32が明るくなったということのみをもって車両灯が消灯されてしまう。
このように、撮像画像中のある特定の領域のみに基づいて明暗判定を行い、車両灯の点灯・消灯を制御するようにすると、走行環境によっては必ずしも適切な制御を行うことができない。そこで本実施形態では、上述した2つの明るさ判定領域31,32と、次に説明する前方遠方明るさ判定領域33及び車室内明るさ判定領域34の4つの領域について明暗判定を行い、これら各判定領域の判定結果を総合的に判断して車両灯を制御するようにしている。
前方遠方明るさ判定領域33は、明暗判定のためだけでなく、自車前方数十m先にトンネルや橋げたがある場合にこれを認識することをもできるように設定された領域であり、前方中央撮像領域42内における、前方中空明るさ判定領域32の下に設定されている。より具体的には、垂直方向の角度範囲が、基準点を中心として上下それぞれ4°の範囲(合計8°)に設定されている。この上下角度である4°は、次のようにして得られたものである。即ち、自車前方約Dt[m]先にある、高さ約Ht[m]のトンネルや橋げた等の道路上構造物を認識すると仮定して、次式(2)にて算出したものである。
上下角度=arctan{(HtーHs)/Dt} … (2)
そして、例えば、トンネル等の道路構造物の高さHtを5m、自車からトンネル等までの距離Dtを50m、カメラ11の搭載位置Hを1.5mとして、上記式(2)を用いて上下角度を算出すると、およそ4°という結果が得られるのである。
車室内明るさ判定領域34は、プリズム19を介して得られる車室内の画像に基づいて車室内の明暗判定を行うための領域であり、車室内撮像領域43における所定の範囲に設定されている。
なお、各判定領域31〜34の水平方向の角度範囲は、各判定領域31〜34の明暗判定(前方遠方明るさ判定領域33についてはトンネル等の認識も含む)のために必要十分な範囲を適宜設定すればよく、例えば、各判定領域それぞれ水平方向と垂直方向の比率が所定比率(例えば4:3)となるように設定することができる。本実施形態では、図3に示したような範囲に設定されている。但し、図3に示した各判定領域31〜34の範囲はあくまでも一例であり、各判定領域31〜34の利用目的が達せられる限り、カメラ11の設置位置等の自車側の条件や周囲環境等に応じて適宜設定することができる。
次に、上記各判定領域31〜34の明暗判定結果に基づいて想定される走行環境(シーン)を、図4に示す。本実施形態では、各判定領域31〜34の明暗判定結果の組み合わせに応じて、図4に示すようにシーン1〜シーン16の16種類のシーンが想定される。そして、各シーン毎に、車両灯(前照灯21,車幅灯22,尾灯23)をどのように制御すべきかが設定されている。
各判定領域31〜34の明暗判定の具体的方法は種々考えられるが、本実施形態では、領域毎に平均階調を算出して、その平均階調と予め設定したしきい値とを比較することにより、明暗を判定する。より具体的には、平均階調がしきい値以上であれば「明」、即ち明るい領域と判定し、平均階調がしきい値より小さければ「暗」、即ち暗い領域と判定する。しきい値は、画像の階調を256階調としたとき、例えば30に設定することができる。もちろんこの値はあくまでも一例である。また、領域毎に異なるしきい値を設定するようにしてもよい。更に、上記のように階調に基づいて明暗判定を行う方法に限らず、他の方法で明暗判定を行うようにしてもよい。
各シーン1〜16のうち、シーン1は、各判定領域31〜34の全てが「明」と判定された場合である。この場合は、「暗」と判定された領域が全くなく、車両灯を点灯させる必要はないため、車両灯をOFF(消灯)するよう制御される。但し、実際にOFFするのは車両灯操作スイッチ24がAUTOモードの場合であって、車両灯操作スイッチ24がAUTOモード以外のモードに切替操作されている場合は、自動的にOFFさせることはせず、後述するように、車両灯をOFFさせるべき(OFFしてもよい)状況にあることを運転者へ警告(報知)する。
シーン2は、車室内明るさ判定領域34のみ「暗」と判定された場合である。この場合は、車室内以外は全て「明」であるため、一例として、自車がトンネル内を走行しており且つトンネルの出口付近にさしかかっている状態であることが想定される。つまり、車両灯をOFFさせてもよい状況にあることが想定される。そのため、このシーン2では車両灯をOFFするよう制御される。
シーン3は、前方遠方明るさ判定領域33のみ「暗」と判定された場合であり、この場合は、前方遠方以外は全て「明」であるため、一例として、自車前方(例えば数十m先)にトンネルや橋げた等の構造物が存在していることが想定される。ただしこの場合は、前方中空明るさ判定領域32が「明」であることなどから、トンネル等に実際にさしかかるまでにはまだしばらくの時間があることが予想される。そのため、現状の車両灯の状態をそのまま維持するよう制御される。
また、シーン3を含め、前方遠方明るさ判定領域33が「暗」と判定された場合には、この前方遠方明るさ判定領域33内にトンネルや橋げた等の道路構造物が写っている可能性がある。本実施形態の画像処理ECU15は、この前方遠方明るさ判定領域33内の画像に基づき、トンネルや橋げた等の認識を行うことができるよう構成されている。この画像認識は、具体的には、次のようにして行うことができる。即ち、まず前方遠方明るさ判定領域33内の画像を、所定の輝度しきい値に基づいて、明・暗の各領域に分ける。そして、このうち暗領域を抽出し、その暗領域の形状が、トンネル又は橋げたに相当する所定の形状パターンである場合に、トンネル又は橋げたが存在しているものとして認識する。
図5に、トンネル及び橋げたの各形状パターンの例を示す。まずトンネル形状パターンは、図5(a)に示す通りであり、前方遠方明るさ判定領域33の全範囲の1/2以上が四角又は半楕円状の暗い形状パターンであれば、トンネルが存在しているものと認識する。具体的な例としては、全範囲が暗領域(結果として四角の暗い形状パターン)となって現れるトンネル形状パターン33aや、領域中に四角の暗い形状パターンとなって現れるトンネル形状パターン33bや、領域中に半楕円状の暗い形状パターンとなって現れるトンネル形状パターン33cなどが挙げられる。
また、橋げた形状パターンは、図5(b)に示す通りであり、前方遠方明るさ判定領域33の一部分(全範囲の1/2未満)だけが横縞状に暗い形状パターンとなっていれば、橋げたが存在しているものと認識する。具体的な例としては、領域中の上側に横縞状の暗い形状パターンとして現れる橋げた形状パターン33dや、領域中の下側に横縞状の暗い形状パターンとして現れる橋げた形状パターン33eや、領域中に所定間隔隔てて上下に横縞状の暗い形状パターンとして現れる橋げた形状パターン33fなどが挙げられる。
なお、図5(a)に例示したトンネル形状パターンや図5(b)に例示した橋げた形状パターン、およびこれら各形状パターンに基づいて上記方法により画像認識を行うことは、あくまでも一例であり、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づいてトンネル或いは橋げたを認識できる限り、その具体的方法は特に限定されない。
シーン4は、前方遠方明るさ判定領域33に加えて車室内明るさ判定領域34も「暗」と判定された場合である。この場合も、前方上空明るさ判定領域31及び前方中空明るさ判定領域32はいずれも「明」であるため、シーン3と同様、自車前方(例えば数十m先)にトンネルや橋げた等の構造物が存在していることが想定されるそのため、シーン3と同様、現状の車両灯の状態をそのまま維持するよう制御される。また、このシーン4においても、シーン3と同様、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づくトンネル又は橋げたの画像認識を行うことができる。
シーン5及びシーン6は、前方中空明るさ判定領域32は「暗」であるものの、その上下の領域である前方上空明るさ判定領域31及び前方遠方明るさ判定領域33はいずれも「明」である。そのため、一例として、前方に橋げたが存在しており、この橋げたの存在によって前方中空明るさ判定領域32が「暗」と判定されたことが想定される。橋げたを通過する場合、一般的には車両灯の点灯は不要であり、点灯させるとむしろ先行車両や対向車両の運転者に対して「パッシングされた」といった不快感を与えてしまうおそれがある。そのため、このシーン5及びシーン6では、車両灯をOFFするよう制御される。
シーン7は、前方中空明るさ判定領域32及び前方遠方明るさ判定領域33は「暗」でその他は「明」と判定された場合である。この場合は、一例として、トンネルの入り口にさしかかる前の状態であって、上空および車室内はまだ明るいものの前方中空明るさ判定領域32及び前方遠方明るさ判定領域33はすでに暗くなってしまっていることが想定される。つまり、トンネルに入る間近の状態である。そのため、このシーン7では、車両灯をON(点灯)するように制御される。但し、実際にONするのは車両灯操作スイッチ24がAUTOモードの場合であって、車両灯操作スイッチ24がAUTOモード以外のモードに切替操作されている場合は、自動的にONさせることはせず、後述するように、車両灯をONさせるべき状況にあることを運転者へ警告(報知)する。
シーン8は、シーン7と比較して、車室内明るさ判定領域34が「暗」であるという点で異なる。この場合も、一例として、シーン7と同様、トンネルの入り口にさしかかる前の状態であって、且つ、トンネルやその周囲の影響によって車室内が暗くなってしまっている状況が想定される。或いは、トンネルの出口にさしかかろうとしているものの、少し先にはまた次のトンネルが待ち構えている(つまり次のトンネルの入り口に近い)状態が想定される。そのため、このシーン8でも、シーン7と同様、車両灯をON(点灯)するように制御される。
なお、このシーン7,8は、いずれもシーン3,4と同じように前方遠方明るさ判定領域33が「暗」であり、前方にトンネル等の道路構造物が存在していることが予想されるが、シーン3,4に比べ、自車がトンネル等により近い位置まで来ている状況であることが予想される。そのため、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づいて前方のトンネル等の認識を行うことは、このシーン7,8では困難である。このことは、後述するシーン15の場合も同様である。
シーン1〜8は、いずれも、前方上空明るさ判定領域31が「明」であったのに対し、次に説明するシーン9〜16は、いずれも、前方上空明るさ判定領域31が「暗」の場合である。
シーン9は、前方上空明るさ判定領域31が「暗」であるものの、他の三つの領域32〜34はいずれも「明」と判定された場合である。この場合は、一例として、橋げたを通過中であることが想定される。橋げたを通過する場合は、既述の通り、一般的には車両灯を点灯させる必要はない。そのため、このシーン9では、車両灯をOFFするよう制御される。
シーン10は、シーン9と比較して、車室内明るさ判定領域34が「暗」であるという点で異なる。この場合は、一例として、あるトンネルを走行中であってそのトンネルの出口にさしかかろうとしており、それ故に、最も上の領域である前方上空明るさ判定領域31と最も下の領域である車室内明るさ判定領域34はまだ暗い状態にあることが想定される。つまり、トンネル走行中ではあるものの、まもなくトンネルから出ようとしているところであると想定される。そのため、このシーン10では、車両灯をOFFするよう制御される。
シーン11は、前方上空明るさ判定領域31及び前方遠方明るさ判定領域33は「暗」であるがそれ以外は「明」と判定された場合である。この場合は、一例として、橋げたを通過中であって、且つ、自車前方(例えば数十m先)には別の橋げた又はトンネル等の構造物が存在していることが想定される。そのため、現状の車両灯の状態がそのまま維持される。
シーン12は、シーン11と比較して、車室内明るさ判定領域34が「暗」であるという点で異なる。この場合は、一例として、トンネルを通過中であって、且つ、自車前方(例えば数十m先)には別の橋げた又はトンネル等の構造物が存在していることが想定される。そのため、このシーン12でも、シーン11と同様、現状の車両灯の状態がそのまま維持される。
なお、シーン11及びシーン12においても、シーン3及びシーン4と同様、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づいて、トンネル又は橋げたの画像認識を行うことができる。
また、シーン3,4,11,12では、基本的には、上記のように現状の車両灯の状態が維持されるが、画像認識によってトンネル形状パターンが認識された場合は、やがてトンネルに入ることになるため、車両灯を点灯するように制御してもよい。後述する図6の自動灯火制御処理においては、前方遠方明るさ判定領域33内にトンネル形状パターンが認識された際には車両灯を点灯するような制御方法を採用している。
シーン13は、前方上空明るさ判定領域31及び前方中空明るさ判定領域32がいずれも「暗」であるがそれ以外は「明」と判定された場合である。この場合は、一例として、橋げたを通過している最中であることが想定される。そのため、このシーン13では車両灯をOFFするよう制御される。
シーン14は、シーン13と比較して、車室内明るさ判定領域34が「暗」であるという点で異なる。この場合は、一例として、トンネルの出口よりも前、即ち、トンネルを走行中であって前方に出口が見えているものの、出口まではまだ暫く時間がかかるという状況が想定される。そして、トンネルを走行中であるということは、すでに車両灯はONされているはずである。そのため、このシーン14では、現状の車両灯の状態(ここではON状態)がそのまま維持される。
シーン15は、車室内明るさ判定領域は「明」であるもののそれ以外は全て「暗」と判定された場合である。この場合は、一例として、トンネルの入り口であってまさにトンネルに入ろうとしている状況が想定される。そのため、このシーン15では車両灯をONするよう制御される。
シーン16は、各判定領域31〜34全てが「暗」と判定された場合である。この場合は、一例として、トンネル内を走行中(出口もまだ見えない)、或いは夜間であること等が想定される。そのため、このシーン16では車両灯をONするよう制御される。
なお、上記各シーン1〜16において一例として挙げた、トンネル/橋げたと自車との間で想定される相対関係は、あくまでも想定される(可能性のある)状況の一例であり、各シーンにおいて必ずそのような状況になることを意味するものではない。
次に、本実施形態のオートライトシステム1において、画像処理ECU15内の演算処理部17にて実行される自動灯火制御処理について、図6に基づいて説明する。車両の電源スイッチが投入され、画像処理ECU15が動作を開始すると、演算処理部17が図6の自動灯火制御処理を実行する。
図6の自動灯火制御処理が開始されると、まず、判定領域セット処理が行われる(S110)。この判定領域セット処理は、撮像画像中における各判定領域31〜34をどのように設定するかを決めるものであり、その詳細は図7に示す通りである。
本実施形態では、撮像画像中における、明暗判定が行われる各判定領域31〜34が、初期状態においては図3に示すような範囲にそれぞれ設定されている。しかし、車両が常に同じ条件、同じ状態で走行するとは限らず、例えば、高速走行しているときもあれば低速走行しているときもある。また、直進しているときもあればカーブを走行中の場合もある。さらには、乗員の数や車内における乗員・荷物等の位置によって車両が特定の角度に傾く場合もある。このように、車両において想定される状況は多種多様であり、にもかかわらず各判定領域31〜34を一律に図3に示した領域に固定すると、場合によっては必ずしも正確な明暗判定や画像認識ができず、ひいては車両灯の制御を正確に行うことができなくなるおそれがある。
そこで本実施形態では、ステアリングの操舵量、車両の傾斜状態、及び車速に応じて、図3に示した初期状態での各判定領域31〜34を適宜に補正するようにしている。図7に示す判定領域セット処理は、その補正の具体的方法である。
図7の判定領域セット処理が開始されると、まず、初期領域設定が行われる(S410)。この初期領域設定処理では、各判定領域31〜34がそれぞれ、図3に示した初期状態での位置に設定される。そして、操舵角検出センサ6からの操舵角信号に基づき、操舵角検出センサ6の情報、即ちステアリングがどの方向にどの程度旋回しているかの情報が取得される(S420)。
そして、その取得した情報に基づいて、ステアリングが旋回しているか否かが判断され(S430)、旋回していなければ(S430:NO)S450に移行するが、旋回していたならば(S430:YES)、各判定領域31〜34の全て又は一部が、その旋回状況(操舵量)に応じて水平方向に移動される(S440)。例えば、右方向に旋回していたならば、各判定領域31〜34が水平方向右側へ移動され、左方向に旋回していたならば、水平方向左側へ移動される。移動量は、操舵量に応じて設定される。
図8(a)に、このS440の処理の一例を示す。図8(a)は、操舵角検出センサ6によりステアリングが右方向に旋回している(つまり右カーブを走行中である)旨の情報が得られた場合の、各判定領域31〜34の水平方向移動例を示すものである。本例では、各判定領域31〜34のうち、前方中空明るさ判定領域32及び前方遠方明るさ判定領域33がそれぞれ初期状態(図3)よりも右側へと移動されている。他の前方上空明るさ判定領域31及び車室内明るさ判定領域34については、本例では初期状態のままである。即ち、ステアリングが旋回しているということは、車両が直進ではなく左右いずれかの方向に向かって走行しているということであるため、その進行方向に応じて前方中空明るさ判定領域32及び前方遠方明るさ判定領域33を移動させているのである。前方上空明るさ判定領域31及び車室内明るさ判定領域34については、ステアリングの旋回(操舵)に対しては必ずしも移動させる必要性はないため、本例では初期状態のままとしたが、これらについても適宜移動させるようにしてもよい。
操舵量に基づく領域移動(S440)の後は、車両状態検出センサ7からの車両状態信号に基づき、車両の状態(特に傾斜状態)に関する情報が取得される(S450)。そして、その取得した情報に基づいて、車両が傾斜しているか否かが判断され(S460)、傾斜していなければ(S460:NO)、S480に移行するが、傾斜していたならば(S460:YES)、各判定領域31〜34の全て又は一部が、その傾斜状況に応じて垂直方向に移動される(S470)。例えば、乗員や荷物等が車室前方に偏っていること等により車両が水平面に対して前傾した状態にあるときは、各判定領域31〜34が垂直方向上側に移動される。また例えば、乗員や荷物等が車室後方に偏っていること等により車両が後傾した状態にあるときは、垂直方向下側に移動される。
図8(b)に、このS470の処理の一例を示す。図8(b)は、車両状態検出センサ7により車両が前傾している旨の情報が得られた場合の、各判定領域31〜34の垂直方向移動例を示すものである。本例では、車両が前傾しているため、車室内明るさ判定領域34を除く他の各判定領域31〜33がそれぞれ、初期状態の位置よりも上側へと移動されている。車両が後傾している場合は、図8(b)とは逆に初期状態の位置よりも下方へ移動させればよい。車室内明るさ判定領域34については、本例では初期状態のままとしたが、これについても適宜移動させるようにしてもよい。また、傾斜の状態に応じて、4つの各判定領域31〜34のうちどの領域をどの程度移動させるかを適宜決めるようにしてもよい。
車両の傾斜状態に基づく領域移動(S470)の後は、車速検出センサ5からの速度信号に基づき、車両の速度情報が取得される(S480)。そして、その取得した速度に基づいて、各判定領域31〜34の全て又は一部が水平/垂直方向に縮小或いは拡大される(S490)。
図8(c)に、このS490の処理の一例を示す。図8(c)は、車速検出センサによって検出された速度が所定の基準速度よりも速い場合の、各判定領域31〜34の縮小例を示すものである。本例では、車速が基準速度よりも速いため、前方中空明るさ判定領域32及び前方遠方明るさ判定領域33がそれぞれ、初期状態(図3)よりも、垂直/水平方向にそれぞれ所定の縮小率にて縮小されている。他の前方上空明るさ判定領域31及び車室内明るさ判定領域34については、本例では初期状態のままである。車速が基準速度よりも遅い場合は、図8(c)とは逆に所定の拡大率にて拡大させればよい。
縮小率や拡大率は、例えば車速に応じて連続的或いは段階的に可変とするなど、種々の方法で決めることができる。前方上空明るさ判定領域31及び車室内明るさ判定領域34については、車速に応じて必ずしも縮小又は拡大させる必要性はないため、本例では初期状態のままとしたが、これらについても適宜縮小又は拡大させるようにしてもよい。つまり、どの領域を縮小或いは拡大させてどの領域を初期状態のままにするかについても、図8(c)の例に限らず適宜設定することができる。また、車速が基準速度を含む所定の範囲内であれば縮小又は拡大のいずれも行わないようにしてもよい。
車速に基づく領域の縮小又は拡大処理(S490)が終わると、各判定領域31〜34は、それぞれ、そのときの車両の車速・操舵量・車両状態(傾斜)に応じた適切な範囲に設定(補正)された状態となる。そして、S120以下の処理に移行する。
図6に戻り、S120以下の処理について説明する。上述した判定領域セット処理(S110)が終了すると、カメラ11により撮像された画像を取り込む(S120)。そして、取り込まれた撮像画像中の、上記S110の処理にて設定された4つの判定領域31〜34の各々について「明」又は「暗」のいずれであるかを判定し、この判定結果に基づき、4つの判定領域31〜34全てが「明」であるか否かを判定する(S130)。
このとき、4つの判定領域31〜34全てが「明」ならば(S130:YES)、図4に列挙したシーン1〜16のうちシーン1の状況にあることになる。そのため、この場合はまず消灯カウンタをカウント(即ちカウント値をインクリメント)する(S140)。この消灯カウンタは、車両灯を消灯(OFF)すべき状況が所定時間(例えば1秒)継続したときに車両灯をOFFするためのカウンタである。
そして、消灯カウンタの値が所定の設定値以上であるか否かを判断する(S150)。この設定値は、車両灯をOFFすべき状況が所定時間継続したかどうかを判定するための判定基準値であり、判定すべき所定時間(例えば1秒)に相当するカウント値が適宜設定される。消灯カウンタのカウント値がまだ設定値以上になっていなければ(S150:NO)、再びS110に戻るが、設定値以上ならば(S110:YES)、灯火点灯中であるか、即ち、車両灯(前照灯21、車幅灯22、尾灯23)のいずれか又は全てが点灯中であるか否かを判断する(S160)。
そして、灯火点灯中ならば(S160:YES)、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S170)、AUTOモードであれば(S170:YES)、車両灯制御ECU3へ、車両灯を消灯(OFF)させるべき旨の消灯指令を出力する(S180)。この消灯指令を受けた車両灯制御ECU3は、前照灯21、車幅灯22、尾灯23の全てをOFFさせる。
車両灯操作スイッチ24がAUTOモードでない場合は(S170:NO)、メータ系ECU4へ車両灯消灯警告指令を出力する(S190)。この車両灯消灯警告指令を受けたメータ系ECU4は、表示部25に備えられた消灯警告灯を点灯又は点滅させることにより、運転者に対して車両灯をOFFするよう警告する。この警告は、換言すれば、車両灯を点灯させる必要がない状況であるにも拘わらず車両灯の一部又は全てが点灯中であることを運転者に知らせるためのものとも言える。
S160の判断処理において、灯火点灯中でない場合、即ち車両灯全てがすでにOFFされているならば、上述したS180の処理を行う。この場合、車両灯はすでにOFFされているため、必ずしもこのS180の処理を行う必要性はないのだが、確認的な意味で、車両灯制御ECU3へ灯火制御指令(この場合は消灯指令)を出力するようにしている。
S180又はS190の処理の後は、消灯カウンタ及び点灯カウンタ(後述)を共にリセットして(S200)、再びS110に戻る。
一方、S130の判定処理において、4つの判定領域31〜34全てが「明」ではないと判定された場合、即ち「暗」と判定された領域が1つでもあった場合は、S210にて、4つの判定領域31〜34全てが「暗」であるか否かを判定する。このとき、4つの判定領域31〜34全てが「暗」ならば(S210:YES)、図4に列挙したシーン1〜16のうちシーン16の状況にあることになる。そのため、この場合はまず点灯カウンタをカウント(即ちカウント値をインクリメント)する(S220)。この点灯カウンタは、車両灯を点灯(ON)すべき状況が所定時間(例えば1秒)継続したときに車両灯をONするためのカウンタである。
そして、点灯カウンタの値が所定の設定値以上であるか否かを判断する(S230)。この設定値は、車両灯をONすべき状況が所定時間継続したかどうかを判定するための判定基準値であり、判定すべき所定時間(例えば1秒)に相当するカウント値が適宜設定される。なお、この点灯カウンタに対する設定値と、上述した消灯カウンタに対する設定値は、各々異なる値に設定してもよいし、同じ設定値を共用してもよい。
点灯カウンタのカウント値がまだ設定値以上になっていなければ(S230:NO)、再びS110に戻るが、設定値以上ならば(S230:YES)、前照灯21が消灯中であるか否かを判断する(S240)。
そして、前照灯21が消灯中ならば(S240:YES)、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S250)、AUTOモードであれば(S250:YES)、車両灯制御ECU3へ、車両灯を点灯(ON)させるべき旨の点灯指令を出力する(S260)。この点灯指令を受けた車両灯制御ECU3は、前照灯21、車幅灯22、尾灯23の全てをONさせる。
車両灯操作スイッチ24がAUTOモードでない場合は(S250:NO)、メータ系ECU4へ車両灯点灯警告指令を出力する(S270)。この車両灯点灯警告指令を受けたメータ系ECU4は、表示部25に備えられた点灯警告灯を点灯又は点滅させることにより、運転者に対して車両灯をONするよう警告する。この警告は、換言すれば、車両灯を点灯させるべき状況であるにも拘わらず車両灯が消灯中であることを運転者に知らせるためのものとも言える。
S240の判断処理において、前照灯21が消灯中でない場合、即ち車両灯がすでにONされているならば、上述したS260の処理を行う。この場合、車両灯はすでにONされているため、必ずしもこのS260の処理を行う必要性はないのだが、確認的な意味で、車両灯制御ECU3へ灯火制御指令(この場合は点灯指令)を出力するようにしている。
S260又はS270の処理の後は、消灯カウンタ及び点灯カウンタを共にリセットして(S280)、再びS110に戻る。
なお、表示部25に設けられている消灯警告灯及び点灯警告灯は、それぞれ単独で設けるようにしてもよいし、1つの警告灯を共用して実現するようにしてもよい。また、1つの警告灯を共用する場合、消灯警告の場合と点灯警告の場合とでそれぞれ点灯パターン等を異なるものにしてもよいし、あえて両者の区別をつけずにいずれの場合も同じ点灯パターンにしてもよい。
S210の判定処理において、4つの判定領域31〜34全てが「暗」ではないと判定された場合は、明るい領域である「明」領域と暗い領域である「暗」領域とが混在していることになる。この場合は、S290にて、前方遠方明るさ判定領域33が「暗」であるか否かを判定する。そして、前方遠方明るさ判定領域33が「暗」と判定されたならば(S290:YES)、その前方遠方明るさ判定領域33内にトンネル形状パターンが認識されるか否かを判断する(S300)。即ち、上述したように、前方遠方明るさ判定領域33内の画像に対し、画像認識を行うことにより、図5(a)に示したトンネル形状パターンが存在するか否かを判断するのである。
前方遠方明るさ判定領域33内にトンネル形状パターンが認識されれば(S300:YES)、シーン3,4,11,12のいずれかにおける、自車前方にトンネルが待ちかまえている状況にあることになる。この場合、必ずしもすぐにトンネル内に入るわけではないと予想されるため、すぐに車両灯を点灯させる必要はないのだが、本実施形態では、やがてトンネルに入ることが想定されるため、この時点で車両灯を点灯させるための制御に移るべく、S220へと移行する。
一方、前方遠方明るさ判定領域33内にトンネル形状パターンが認識されなかったならば(S300:NO)、さらに、前方中空明るさ判定領域32が「暗」であるか否かを判断する(S310)。そして、前方中空明るさ判定領域32が「暗」ならば(S310:YES)、前方中空明るさ判定領域32及び前方遠方明るさ判定領域33がいずれも暗い、シーン7,8,15のいずれかの状況であって、車両灯を点灯させるべき状況にあるものと判断し、S220へと移行する。
S310にて前方中空明るさ判定領域32が「明」と判定された場合は、前方遠方明るさ判定領域33は暗いものの前方中空明るさ判定領域32は明るいことから、トンネルは認識できなかったもののシーン3,4,11,12のいずれかの状況であって、必ずしもすぐに車両灯を点灯させる必要はない状況である。そのため、この場合は現状の点灯・消灯状態をそのまま維持させる。具体的には、そのままS110に戻る。
S290の判定処理において、前方遠方明るさ判定領域33が「暗」ではないと判定された場合は、さらに、前方中空明るさ判定領域32について「暗」であるか否かを判定する(S320)。そして、前方中空明るさ判定領域32が「暗」ではないと判定された場合は(S320:NO)、シーン2,9,10のいずれかの状況であって、車両灯を消灯させるべき状況にあるものと判断し、S140へと移行する。
S320の判定処理において前方中空明るさ判定領域32が「暗」と判定された場合は、更に、前方上空明るさ判定領域31が「暗」であるか否かを判定する(S330)。そして、前方上空明るさ判定領域31が「暗」ではないと判定された場合は(S330:NO)、シーン5,6のいずれかの状況であって、車両灯を消灯させるべき状況にあるものと判断し、S140へと移行する。
S330の判定処理において前方上空明るさ判定領域31が「暗」と判定された場合は、更に、車室内明るさ判定領域34が「暗」であるか否かを判定する(S340)。そして、車室内明るさ判定領域34が「暗」ではないと判定された場合は(S340:NO)、シーン13の状況であって、車両灯を消灯させるべき状況にあるものと判断し、S140へと移行する。
そして、S340の判定処理において車室内明るさ判定領域34も「暗」と判定された場合は、4つの判定領域31〜34のうち前方遠方明るさ判定領域33のみが「暗」であることになり、シーン14の状況にあることになる。この場合は、まだ暫くは車両灯を点灯させ続ける必要があると考えられるため、現状を維持すべく、そのままS110に戻る。
以上説明したように、本実施形態のオートライトシステム1では、特殊タイプの広角レンズ12を用いたカメラ11により、垂直方向により広い範囲(画角)の画像が得られる。しかも、車室内のフロントガラス10の下部にプリズム19を設置して、撮像画像中の下部領域に車室内の画像が撮像されるようにしている。これにより、カメラ11による撮像画像は、上は車両前方上空の高い領域(建物等が写る可能性がほとんどないような領域)から、下は車室内の領域まで、十分に広い範囲の画像となる。
そして、その撮像画像の中で、前方上空明るさ判定領域31、前方中空明るさ判定領域32、前方遠方明るさ判定領域33、及び車室内明るさ判定領域34の4つの領域を設定し、各判定領域31〜34について、それぞれ明暗を判定する。更に、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づいてトンネルや橋げたの認識を行うこともできる。本実施形態では、一例として、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づいてトンネルの認識を行うようにしている(図6のS300参照)。
そして、各判定領域31〜34それぞれの明暗判定結果、更には前方遠方明るさ判定領域33のトンネル認識結果に応じて、図4に示したような各シーン1〜16が想定されるため、それぞれのシーンに応じた適切な車両灯制御を行うようにしている。具体的にどのように制御するかは、図6の自動灯火制御処理に従って制御される。
従って、本実施形態のオートライトシステム1によれば、上下方向に配置された4つの判定領域31〜34の明暗を各々判定し、その判定結果に基づいて、車両灯をどのように制御すべきかを判定するようにしたため、走行環境(明暗)を精度良く判定することができ、その精度良い走行環境の判定結果に基づいて車両灯の制御を高精度に行うことができる。
特に、4つの判定領域31〜34のうち、前方上空明るさ判定領域31は、前方上空の明るさを判定するために、可能な限り周囲の建物等が写らずに前方上空(天空)のみが写るように設定された領域であり、これを実現すべく、通常のレンズでは撮像不可能(或いは撮像困難)な高い領域を撮像可能な広角レンズ12(しかも特殊タイプ)を用いている。また、前方遠方明るさ判定領域33は、自車前方の進行方向の明暗判定を目的としつつ、更に、自車前方数十m先にトンネルや橋げた等の構造物がある場合にこれを認識することをもできるように設定された領域である。また、前方中空明るさ判定領域32は、前方上空明るさ判定領域31と前方遠方明るさ判定領域33との間に設定され、これら各判定領域31,33の間の領域の明暗判定をカバーするために設定された領域である。さらに、車外の明暗だけでなく、車室内の明暗をも判定すべく、車室内明るさ判定領域34を設定している。
つまり、4つの判定領域31〜34はそれぞれ個々に重要な役割を担っており、それ故に、これら各判定領域31〜34の明暗判定結果を用いて、車両灯の制御を高精度に行うことができるのである。
しかも、単に各判定領域31〜34の明暗判定結果だけでなく、前方遠方明るさ判定領域33についてはトンネル等の形状認識も行い、その認識結果をも用いて総合的に判定するようにしているため、車両灯の制御をより高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、4つの判定領域31〜34の撮像画像中の絶対位置が予め固定されているわけではなく、車両の動作状態(車速、操舵量、傾斜量)に応じて適宜補正される。そのため、車両灯の制御をさらに高精度に行うことができる。
更に、本実施形態では、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードのときにのみ、車両灯の点灯・消灯が自動で制御され、それ以外のモードでは自動で点灯・消灯されることはないため、運転者はAUTOモードにするか或いはそれ以外のモードにするかを適宜選択することで、自分の意志に応じた灯火操作を行うことができる。しかも、AUTOモード以外の場合、何の制御も行われないわけではなく、明暗判定結果に応じ、点灯させるべき状況にも拘わらず消灯されている場合は点灯すべき旨の警告をし、消灯してもよい(消灯すべき)状況にも拘わらず点灯されている場合は消灯してもよい(消灯すべき)旨の警告(報知)を行うように構成されている。そのため、運転者にとって非常に使い勝手の良いオートライトシステム1の提供が可能となる。
なお、本実施形態において、前方上空明るさ判定領域31は本発明の上部上空領域に相当し、前方中空明るさ判定領域32は本発明の上部中空領域に相当し、前方遠方明るさ判定領域33は本発明の中央領域に相当し、車室内明るさ判定領域34は本発明の車室内領域に相当する。また、プリズム19は本発明の光学手段に相当し、車速検出センサ5,操舵角検出センサ6,車両状態検出センサは本発明の動作状態検知手段に相当し、車両灯制御ECU3は本発明の灯火制御手段に相当し、画像処理ECU15は本発明の明暗判定手段、灯火判定手段、構造物認識手段、補正手段に相当する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステムについて説明する。図9に、本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステムの概略構成を示す。本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50は、第1実施形態のオートライトシステム1が有する構成や機能等はそのまま保持しつつ、更に、カメラ11の撮像画像に基づいて雨滴を検出して、その検出結果に基づいてワイパーを自動で制御する機能と、雨滴の量に応じて車両灯の制御を可変とする機能をも有している。そのため、以下の説明では、第1実施形態のオートライトシステム1と異なる構成、即ち雨滴検出及びワイパーの自動制御と、雨滴に応じた車両灯の点灯制御機能を中心に詳細に説明し、第1実施形態と同じ構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50は、車室内のフロントガラス10の下部に、フロントガラス10に向けて近赤外線光を発する投光器55と、この投光器55からの近赤外線光をフロントガラス10における所定の領域に導くと共にフロントガラス10で反射した近赤外線光をカメラ11の広角レンズ12へ導くための雨滴検出用プリズム56と、この雨滴検出用プリズム56とフロントガラス10の内表面との間に介在し、雨滴検出用プリズム56と同じ屈折率を有する整合層57とを備えている。
図10は、車外前方からフロントガラス10を介して車室内の撮像システム51を見たときの外観図であり、図10に示すように、投光器55はレンズ12を中心としてその左右両側に相当する位置にそれぞれ設置されることにより、合計2つ設置されている。これに合わせ、雨滴検出用プリズム56も、各投光器55の上部にそれぞれ設置され、合計2つ設置されている。
このような構成により、本実施形態のカメラ11にて撮像される撮像画像は、図11に示すようになる。即ち、撮像画像中の左右両端に、雨滴検知撮像領域44が配置される。この雨滴検知撮像領域44は、各投光器55から投光され、各雨滴検出用プリズム56を介してカメラ11に入光した光によって形成される撮像領域である。この雨滴検知撮像領域44の画像は、雨滴の有無の検知に用いられる。
雨滴検出用プリズム56は、投光器55から投光された近赤外線光がフロントガラス10上で全反射し、広角レンズ12を介して撮像素子13に入射されるように調整されている。一方、フロントガラス10上に雨滴が付着した場合には、その雨滴が付着している部分については、投光器55からの近赤外線がカメラ11側に反射せずにそのまま雨滴を透過するように調整されている。
そのため、雨天時等にフロントガラス10上に雨滴が付着すると、撮像画像における左右両端の各雨滴検知撮像領域44は、例えば図12に示すように、雨滴46が付着した部分が暗い領域となって撮像される。
本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50が備える撮像システム51は、基本的には第1実施形態の撮像システム2と同様の構成であるが、画像処理ECU52内の駆動制御部54は、撮像回路部14を制御すると共に、各投光器55の駆動も行う。
また、画像処理ECU52内の演算処理部53も、基本的には第1実施形態の演算処理部17と同様の各種処理を行うが、本実施形態では更に、各投光器55の駆動を制御するための制御信号を駆動制御部54へ出力する機能、撮像画像中の雨滴検知撮像領域44に基づいて雨滴の有無や量を検知し、その検知結果に基づいてワイパー60の払拭動作を自動で制御するための払拭制御指令を出力する機能を備えている。
更に、第1実施形態では、各判定領域31〜34の明暗判定の結果、車両灯を点灯させる必要がない場合はS140以降(図6参照)の処理により車両灯をOFFするための制御を行ったが、本実施形態の演算処理部53は、明暗判定では車両灯を点灯させる必要がないとされた場合であっても、雨滴の有無に基づき、必要に応じて点灯させるようにしている。しかも、雨滴に基づいて点灯させる際には、雨滴の量に応じて、全ての車両灯を点灯させるか、或いは車両灯の一部(車幅灯22及び尾灯23のみ)を点灯させるかを判断する。そして、全ての車両灯を点灯させる際には、灯火制御指令として車両灯A点灯指令を出力し、一部の車両灯のみ点灯させる際には、灯火制御指令として車両灯B点灯指令を出力する。
なお、以下の説明で「車両灯A」とは、前照灯21、車幅灯22、尾灯23全てを含むものを意味し、「車両灯B」とは、車幅灯22及び尾灯23のみを意味する。
表示部25には、メータ系ECU4が画像処理ECU15から車両灯消灯警告指令を受けた場合に表示される消灯警告灯や、メータ系ECU4が画像処理ECU15から車両灯A点灯警告指令或いは車両灯B点灯警告指令を受けた場合に表示される点灯警告灯(いずれも図示略)が備えられているほか、メータ系ECU4が画像処理ECU15から払拭停止警告指令を受けた場合に表示される払拭停止警告灯、払拭操作警告指令を受けた場合に表示される払拭操作警告灯も備えられている。
本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50はまた、払拭制御用ECU58を備えている。この払拭制御用ECU58は、車両に備えられているワイパー60の払拭動作を制御するための電子制御装置であり、基本的には、払拭操作スイッチ59の状態に応じてその動作を制御する。
払拭操作スイッチ59は、車両灯操作スイッチ24と同様、ステアリング付近に配置され、運転者が手動で切替操作できるようにされており、操作モードとして、ワイパー60の払拭動作を停止させる払拭停止モード、ワイパー60をロー(Lo)スピードで払拭動作させるための払拭Loモード、ワイパー60をハイ(Hi)スピードで払拭動作させるための払拭Hiモード、運転者の意志とは無関係に画像処理ECU52からの払拭制御指令に従ってワイパー60の払拭動作が自動で制御されるAUTOモードの4種類が設定されている。
払拭操作スイッチ59がAUTOモードに切替操作されると、払拭制御用ECU58は、画像処理ECU52に対してAUTOモードに設定された旨の信号を送る。これにより、画像処理ECU52は、払拭操作スイッチ59がAUTOモードに切替操作された旨の情報を得る。このAUTOモードである旨の情報は、後述する図13〜図16の自動灯火・ワイパー制御処理において用いられる。
次に、本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50において、画像処理ECU52内の演算処理部53にて実行される自動灯火・ワイパー制御処理について、図13〜図16に基づいて説明する。車両の電源スイッチが投入され、画像処理ECU52が動作を開始すると、演算処理部53が図13の自動灯火・ワイパー制御処理を実行する。
図13に示すように、自動灯火・ワイパー制御処理が開始されると、まず、判定領域セット処理が行われる(S510)。この判定領域セット処理は、図6に示した第1実施形態の自動灯火制御処理におけるS110の判定領域セット処理(詳細は図7)と全く同じである。
この判定領域セット処理が終了すると、駆動制御部54を介して各投光器55から近赤外線光を投光させる(S520)。そして、各投光器55から近赤外線光が投光されている状態で、カメラ11により撮像された画像を取り込み(S530)、その取り込まれた撮像画像中の、上記S510の処理にて設定された4つの判定領域31〜34の各々について「明」又は「暗」のいずれであるかを判定して、その判定結果に基づき、4つの判定領域31〜34全てが「明」であるか否かを判定する(S540)。
このとき、4つの判定領域31〜34全てが「明」ならば(S540:YES)、図4に列挙したシーン1〜16のうちシーン1の状況にあることになる。そのため、この場合は消灯カウンタをカウントする(S550)のであるが、本実施形態では、S550の消灯カウンタのカウントの前に、図14に示すS710以降の処理を行う。
即ち、まずS710にて、撮像画像中の雨滴検知撮像領域44の画像に基づき、この雨滴検知撮像領域44全体における、雨滴46の占有率を算出する。この占有率は、例えば、2つの雨滴検知撮像領域44の総面積に対する雨滴46が占める面積の合計の比率としてもよいし、どちらか一方の雨滴検知撮像領域44における雨滴46の比率としてもよいし、2つの雨滴検知撮像領域44の各々について占有率を算出して両者の平均値を最終的な占有率としてもよい。
雨滴の占有率を算出した後は、まず、その占有率が所定のしきい値Aより小さいか否かを判断する(S720)。ここで、本実施形態では、雨滴の量を判断する基準となるしきい値として、しきい値A及びしきい値Bの二種類が予め設定されている。しきい値Aは、雨滴が多くてワイパー60をHiスピード又はLoスピードのどちらで払拭動作させるべきかどうかの判断基準となるものであり、本実施形態では一例として30%に設定されている。しきい値Bは、雨滴が存在してはいるもののワイパー60を払拭動作させるほどの量に達しているかどうかを判断する基準となるものであり、本実施形態では一例として5%に設定されている。
S710で算出された占有率がしきい値A(本例では30%)以上ならば(S720:NO)、S910に移行するが、しきい値Aより小さい場合は(S720:YES)、更に、占有率がしきい値Bより小さいか否かを判断する(S730)。そして、しきい値B以上ならば(S730:NO)、S810に移行するが、しきい値Bより小さい場合は(S730:YES)、払拭停止カウンタをカウントする(S740)。この払拭停止カウンタは、ワイパー60の払拭動作を停止すべき状況が所定時間(例えば5秒)継続したときにワイパー60の払拭動作を停止させるためのカウンタである。
そして、払拭停止カウンタの値が所定の設定値以上であるか否かを判断する(S750)。この設定値は、ワイパー60の払拭動作を停止すべき状況が所定時間継続したかどうかを判定するための判定基準値であり、判定すべき所定時間(例えば5秒)に相当するカウント値が適宜設定される。払拭停止カウンタのカウント値がまだ設定値以上になっていなければ(S750:NO)、図13のS550に移行するが、設定値以上ならば(S750:YES)、ワイパー60が払拭動作中であるか否かを判断する(S775)。
そして、払拭動作中ならば(S775:YES)、払拭操作スイッチ59がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S760)、AUTOモードであれば(S760:YES)、払拭制御用ECU58へ、ワイパー60の払拭動作を停止すべき旨の払拭制御指令である払拭停止指令を出力する(S770)。この払拭停止指令を受けた払拭制御用ECU58は、ワイパー60の払拭動作を停止させる。
払拭操作スイッチ59がAUTOモードでない場合は(S760:NO)、メータ系ECU4へ払拭停止警告指令を出力する。この払拭停止警告指令を受けたメータ系ECU4は、表示部25に備えられた払拭停止警告灯を点灯又は点滅等させることにより、運転者に対してワイパー60を停止させてもよい状況になっていることを警告(報知)する。
S770又はS780の処理の後は、払拭カウンタを全てリセットして(S790)、図13のS550に移行する。また、S775の判断処理において、ワイパー60が払拭動作中ではないと判定された場合も、S790に移行する。なお、ここでいう払拭カウンタとは、上述した払拭停止カウンタと、後述する払拭カウンタA及び払拭カウンタBの全てを含んでいる。つまり、S790では、払拭停止カウンタ、払拭カウンタA、及び払拭カウンタBが全てリセットされることとなる。このことは、後述するS860、S960も同様である。
一方、図14において、S720の判定処理で雨滴の占有率がしきい値A以上と判定された場合は、S910に移行し、払拭カウンタBをカウントする。また、S720の判定処理では雨滴の占有率がしきい値Aより小さいと判定されたものの、続くS730でしきい値B以上であると判定された場合は、S810に移行し、払拭カウンタAをカウントする。
払拭カウンタAは、ワイパー60を自動でLoスピードにて払拭動作させる際に用いられるカウンタであり、払拭カウンタBは、ワイパー60を自動でHiスピードにて払拭動作させる際に用いられるカウンタである。
そして、占有率がしきい値A以上であって(S720:NO)、S910にて払拭Bカウンタがカウントされた後は、この払拭カウンタBのカウント値が所定の払拭B設定値以上であるか否かを判断する(S920)。この払拭B設定値は、ワイパー60をHiスピードで払拭動作させるべき状況が所定時間(例えば0.2m秒)継続したかどうかを判定するための判定基準値であり、判定すべき所定時間(例えば0.2m秒)に相当するカウント値が適宜設定される。
払拭Bカウンタのカウント値がまだ払拭B設定値以上になっていなければ(S920:NO)、S970に移行して、点灯カウンタAをカウントする。なお、本実施形態では、点灯カウンタについても、点灯カウンタAと点灯カウンタBの二種類が備えられている。点灯カウンタAは、車両灯A(前照灯21、車幅灯22及び尾灯23の全て)を自動で点灯させるための基準となるカウンタであり、点灯カウンタBは、車両灯B(車幅灯22及び尾灯23)を自動で点灯させるための基準となるカウンタである。
払拭Bカウンタのカウント値が払拭B設定値以上になっていたならば(S920:YES)、ワイパー60がHiスピードで払拭動作中であるか否かを判断する(S925)。
そして、Hiスピードで払拭動作中ならば(S925:YES)、払拭操作スイッチ59がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S930)、AUTOモードであれば(S930:YES)、払拭制御用ECU58へ、ワイパー60をHiスピードで払拭動作させるべき旨の払拭制御指令である払拭Hi指令を出力する(S940)。この払拭Hi指令を受けた払拭制御用ECU58は、ワイパー60をHiスピードで払拭動作させる。
払拭操作スイッチ59がAUTOモードでない場合は(S930:NO)、メータ系ECU4へ払拭操作警告指令を出力する。この払拭操作警告指令を受けたメータ系ECU4は、表示部25に備えられた払拭操作警告灯を点灯又は点滅等させることにより、運転者に対してワイパー60を払拭動作させた方がいい状況になっていることを警告(報知)する。
S940又はS950の処理の後は、S790と同様、払拭カウンタを全てリセットして(S960)、S970に移行し、点灯カウンタAをカウントする。そして、図13におけるS640の点灯制御処理へ移行する。また、S925の判断処理において、ワイパー60がHiスピードで払拭動作中ではないと判定された場合も、S960に移行する。
雨滴の占有率がしきい値Aより小さいもののしきい値B以上であった場合は(S730:NO)、S810で払拭カウンタAをカウントし、この払拭カウンタAのカウント値が所定の払拭A設定値以上であるか否かを判断する(S820)。この払拭A設定値は、ワイパー60をLoスピードで払拭動作させるべき状況が所定時間(例えば0.2m秒)継続したかどうかを判定するための判定基準値であり、判定すべき所定時間に相当するカウント値が適宜設定される。なお、この払拭A設定値と、上述した払拭B設定値は、各々異なる値に設定してもよいし、同じ値を共用してもよい。
払拭Aカウンタのカウント値がまだ払拭A設定値以上になっていなければ(S820:NO)、S870に移行して、点灯カウンタBをカウントする。払拭Aカウンタのカウント値が払拭A設定値以上になっていたならば(S820:YES)、ワイパー60が停止中であるか否かを判断する(S825)。
そして、停止中ならば(S825:YES)、払拭操作スイッチ59がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S830)、AUTOモードであれば(S830:YES)、払拭制御用ECU58へ、ワイパー60をLoスピードで払拭動作させるべき旨の払拭制御指令である払拭Lo指令を出力する(S840)。この払拭Lo指令を受けた払拭制御用ECU58は、ワイパー60をLoスピードで払拭動作させる。
払拭操作スイッチ59がAUTOモードでない場合は(S830:NO)、S950と同様、メータ系ECU4へ払拭操作警告指令を出力する。
S840又はS850の処理の後は、S790及びS960と同様、払拭カウンタを全てリセットして(S860)、S870に移行し、点灯カウンタBをカウントする。そして、図13におけるS640の点灯制御処理へ移行する。また、S825の判断処理において、ワイパー60がHiスピードで払拭動作中ではないと判定された場合も、S860に移行する。
図14の処理において、雨滴の占有率がしきい値Bよりも小さかった場合は(S730:YES)、S740以降の処理を経た後に、図13におけるS550へと進むことになる。この場合、4つの判定領域31〜34は全て「明」であって、しかも、雨滴の占有率はしきい値Bよりも小さいことから、ワイパー60を動作させる必要も車両灯を点灯させる必要もない。そのため、S550以降の処理で、車両灯を消灯させるための処理を行う。
なお、S550の消灯カウンタのカウントから、S610の消灯カウンタ及び点灯カウンタのリセットに至る各処理は、第1実施形態の自動灯火制御処理(図6)におけるS140〜S200の処理と全く同じであり、消灯カウンタのカウント値が消灯カウンタに対する設定値以上ならば車両灯消灯指令の出力或いは車両灯消灯警告指令の出力を行うといった処理を行う。そのため、ここではS550〜S610の処理については詳細説明を省略する。
また、図14の処理において、雨滴の占有率がしきい値B以上ならば、S870又はS970いずれかの処理を経て、図13におけるS640の点灯制御処理へと進むことになる。つまりこの場合、4つの判定領域31〜34は全て「明」であって基本的には車両灯を点灯させる必要はないものの、雨滴がしきい値B以上の占有率にて付着していることから、走行環境は雨天で視界不良となり、外部から自車の存在が視認しづらくなっている可能性がある。そのため、車両灯A又はBを点灯させるべく、S640の点灯制御処理を行うのである。
S640の点灯制御処理の詳細は、図16に示す通りである。即ち、この点灯制御処理が開始されると、まず、点灯カウンタAのカウント値が所定の点灯A設定値以上であるか否かを判断する(S1010)。この点灯A設定値、及び後述する点灯B設定値は、いずれも、第1実施形態における図6のS230で用いた設定値と基本的に同じ目的で用いられるものである。なお、点灯A設定値と点灯B設定値は、異なる値にしてもよいし同じ値にしてもよい。
S1010の判定処理において、点灯カウンタAのカウント値が点灯A設定値以上と判定された場合は、車両灯Aが点灯中であるか否かを判断する(S1080)。そして、車両灯Aが点灯中ならば(S1080:YES)、点灯カウンタAをリセットした上で(S1120)、再び図13のS510に戻る。
車両灯Aが点灯中でなかった場合は(S1080:NO)、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S1090)、AUTOモードであれば(S1090:YES)、車両灯制御ECU3へ、車両灯Aを点灯(ON)させるべき旨の灯火制御指令である車両灯A点灯指令を出力する(S1110)。この車両灯A点灯指令を受けた車両灯制御ECU3は、車両灯A、即ち前照灯21、車幅灯22、尾灯23の全てをONさせる。
車両灯操作スイッチ24がAUTOモードでない場合は(S1090:NO)、メータ系ECU4へ車両灯A点灯警告指令を出力する(S1100)。この車両灯A点灯警告指令を受けたメータ系ECU4は、表示部25に備えられた点灯警告灯を点灯又は点滅させることにより、運転者に対して車両灯をONするよう警告する。
S1100又はS1110の処理の後は、点灯カウンタAをリセットして(S1120)、再び図13のS510に戻る。
S1010の判定処理において、点灯カウンタAのカウント値が点灯A設定値未満と判定された場合は、さらに、点灯カウンタBのカウント値が点灯B設定値以上であるか否かを判断する(S1020)。そして、点灯カウンタBのカウント値が点灯B設定値未満ならば(S1020:NO)、そのままこの点灯制御処理を終了して、図13のS510に戻る。点灯カウンタBのカウント値が点灯B設定値以上ならば(S1020:YES)、車両灯Bが点灯中であるか否かを判断する(S1030)。そして、車両灯Bが点灯中ならば(S1030:YES)、点灯カウンタBをリセットした上で(S1070)、再び図13のS510に戻る。
車両灯Bが点灯されていない場合は(S1030:NO)、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作されているか否かを判断し(S1040)、AUTOモードであれば(S1040:YES)、車両灯制御ECU3へ、車両灯Bを点灯(ON)させるべき旨の灯火制御指令である車両灯B点灯指令を出力する(S1050)。この車両灯B点灯指令を受けた車両灯制御ECU3は、車両灯B、即ち車幅灯22及び尾灯23をONさせる。
車両灯操作スイッチ24がAUTOモードでない場合は(S1040:NO)、メータ系ECU4へ車両灯B点灯警告指令を出力する(S1060)。この車両灯B点灯警告指令を受けたメータ系ECU4は、表示部25に備えられた点灯警告灯を点灯又は点滅させることにより、運転者に対して車両灯をONするよう警告する。
S1050又はS1060の処理の後は、点灯カウンタBをリセットして(S1070)、再び図13のS510に戻る。
図13に戻り、S540の判定処理において、4つの判定領域31〜34全てが「明」ではないと判定された場合、即ち「暗」と判定された領域が1つでもあった場合は、S620にて、4つの判定領域31〜34全てが「暗」であるか否かを判定する。このとき、4つの判定領域31〜34全てが「暗」ならば(S620:YES)、図4に列挙したシーン1〜16のうちシーン16の状況にあることになる。そのため、この場合はまず点灯カウンタAをカウントする(S630)。そして、図15に示すS710以降の処理を行う。
ここで、S630の処理の後に行われる図15のS710以降の処理は、図14に示したS710以降の処理と比較して明らかなように、図14とほとんど同じであり、図14と異なるのは、S870の点灯カウンタBのカウント処理がないこと、S970の点灯カウンタAのカウント処理がないこと、及び、S750で否定判定された後又はS790の後にS550ではなくS640の点灯制御処理に移行することである。
即ち、図15のS710以降の処理は、図13において、4つの判定領域31〜34が全て「暗」と判定された場合(S620:YES)、又は、全てが「暗」ではないものの前方遠方明るさ判定領域33が「暗」であって且つその前方中空明るさ判定領域32内にトンネル形状パターンが認識された場合(S660:YES)、又は、前方遠方明るさ判定領域33内にトンネル形状パターンは認識されなかったものの前方遠方明るさ判定領域33及び前方中空明るさ判定領域32が「暗」である場合(S670:YES)のいずれかで行われる処理、つまり車両灯Aを点灯させるべき状況において行われる処理である。そのため、S630にて点灯カウンタAをカウントさせた上で、図15のS710以降の処理に進むようにされているのであり、図15では、図14のように点灯カウンタA,Bをカウントする処理が不要なのである。
また、図14の処理は、明暗判定だけに基づくならば基本的には車両灯を点灯させる必要がない状況であるものの、雨滴が存在している場合には必要に応じて車両灯A又は車両灯Bを点灯させる場合の処理である。そのため、雨滴の占有率がしきい値Bより小さいときには(S730:YES)、S740以下の処理を経て図13のS550へ進むようにされている。これに対し、図15の処理は、上述の通り、車両灯Aを点灯させるべき状況において行われる処理である。そのため、雨滴の占有率がしきい値Bより小さくても(S730:YES)、S740以下の処理を経た後は図13のS640(点灯制御処理)に進むようにされているのである。
そして、図15に示した処理は、図14に示した処理と比較して、上述のように点灯カウンタBのカウント処理(図14のS870)と点灯カウンタAのカウント処理(図14のS970)がないこと、及びS790の処理の後又はS750で否定判定された後にはS640の点灯制御処理に移行することを除けば、図14に示した処理と全く同じであり、図14と同じ処理には図14と同じ符号を付している。そのため、ここでは図15についてのこれ以上の詳細説明は省略する。
また、図13の自動灯火・ワイパー制御処理における、S620の判定処理において、4つの判定領域31〜34全てが「暗」ではないと判定された場合は、S650以降の処理に進むことになるが、このS650以降の処理(S650〜S700)は、第1実施形態の図6の自動灯火制御処理におけるS290以降の処理(S290〜S340)と全く同じである。そのため、S650以降の処理についての説明はここでは省略する。
以上説明したように、本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50では、第1実施形態と同様、4つの判定領域31〜34の明暗判定に基づいて車両灯の点灯・消灯が自動で制御される。また、点灯させるべき状況にあるときは、原則として車両灯A(全ての車両灯)を点灯させるよう制御されるのであり、このことも第1実施形態と同様である。
そして、本実施形態では、上記のような第1実施形態と同様の構成・作用に加え、更に、フロントガラス10上の雨滴を検出する機能、及び、雨滴の量に基づいてワイパー60を自動で払拭動作させ、且つ、車両灯をも点灯させる機能を有する。
即ち、カメラ11による撮像画像中の左右両端に、雨滴検知用の領域である雨滴検知撮像領域44が設定されている。そして、各雨滴検知撮像領域44中における雨滴46の占有率に基づき、ワイパー60を払拭させる必要はないか、ワイパー60をLoスピードで払拭動作させるべきか、或いはワイパー60をHiスピードで払拭動作させるべきかを判定し、その判定結果に応じてワイパー60を制御する。
そして、4つの判定領域31〜34の明暗判定結果だけをみれば基本的には車両灯を点灯させる必要がない場合であっても、フロントガラス10に雨滴が付着している場合は、走行環境の視界が不良となっている可能性があることから、ワイパー60の制御だけでなく、雨滴の占有率に応じて車両灯の点灯制御も行う。具体的には、雨滴が微量であれば(しきい値B未満であれば)、車両灯を消灯させるためのS550以降の処理に進むものの、雨滴の占有率が大きければ(しきい値A以上ならば)、S640の点灯制御処理(詳細は図16)に進んで車両灯Aを点灯させるための制御を行い、雨滴の占有率が小さければ(しきい値B以上且つしきい値A未満ならば)、同じくS640の点灯制御処理に進んで車両灯Bを点灯させるための制御を行う。
従って、本実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50によれば、雨滴の量に応じてワイパー60の払拭動作が自動で制御されると共に、例え周囲が明るくて基本的には灯火を点灯させる必要がない場合であっても、雨滴の量がしきい値B以上ならば、灯火を点灯させるようにしている。そのため、第1実施形態の効果に加え、更に、走行環境に応じたより適切な灯火の制御が実現される。
しかも、単に雨滴の量がしきい値B以上ならば車両灯を点灯する、といった制御ではなく、しきい値B以上且つしきい値A未満ならば車両灯B(車幅灯22及び尾灯23のみ)を点灯させ、しきい値A以上ならば車両灯A(前照灯21も含む全て)を点灯させるといった、雨滴量に応じた段階的な制御を行っているため、雨滴の量に応じたより適切な灯火の制御が実現される。
なお、本実施形態において、画像処理ECU52、投光器55、雨滴検出用プリズム56、及び整合層57により本発明の雨滴検出手段が実現される。また、しきい値Aは本発明の第1しきい値に相当し、しきい値Bは本発明の第2しきい値に相当し、ワイパー60の払拭動作速度のうちHiスピードは本発明の第1速度に相当し、Loスピードは本発明の第2速度に相当する。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記各実施形態では、カメラ11による撮像画像中の4つの判定領域31〜34を、初期状態では図3に示すように設定したが、図3に示した初期状態における各判定領域31〜34の大きさ、位置、各々の相対的位置関係、相対的大小関係などは、あくまでも一例であり、各判定領域31〜34それぞれの目的が達せられ、ひいてはこれら各判定領域31〜34の明暗に基づいて灯火の点灯・消灯を精度良く制御できる限り、各判定領域31〜34は適宜設定できる。
また、上記実施形態では、車速、操舵量、及び傾斜に応じて各判定領域31〜34を補正するようにしたが、各判定領域31〜34の補正は、上記の車速、操舵量、傾斜とは異なる(或いはこれらに加えて更に)他の情報をも用いて行うようにしてもよい。他の情報とは、初期状態での各判定領域31〜34の位置や大きさ等に影響を与えるような情報であり、例えば、カメラ11の設置位置(地上高)、カメラ11の取り付け状態(広角レンズ12の光軸の角度等)、道路情報提供装置8から得られる車両周辺の各種情報などが挙げられる。
また、上記各実施形態では、4つの判定領域31〜34の明暗を判定し、これら判定結果を総合的に判断して灯火の点灯・消灯を制御するようにしたが、4つの判定領域31〜34全ての明暗判定結果を用いる方法に限らず、例えば、いずれか2つの判定領域、或いは3つの判定領域の明暗に基づいて灯火の点灯・消灯を制御してもよい。この場合は更に、点灯させる場合に車両灯全て点灯させるか或いは一部(例えば車幅灯22と尾灯23のみ)点灯させるかを判断するようにしてもよい。
より具体的には、例えば、前方上空明るさ判定領域31と前方遠方明るさ判定領域33の2つの判定領域のみを明暗判定対象として、この2つの判定領域31,33の明暗判定結果に基づいて灯火の点灯・消灯を制御するようにしてもよい。
また例えば、前方遠方明るさ判定領域33と前方中空明るさ判定領域32の2つの領域の明暗判定結果に基づいて灯火の点灯・消灯を制御するようにしてもよい。この場合、例えば、前方遠方明るさ判定領域33が「明」で前方中空明るさ判定領域32が「明」なら車両灯をOFF、前方遠方明るさ判定領域33が「明」で前方中空明るさ判定領域32が「暗」なら車両灯をOFF、前方遠方明るさ判定領域33が「暗」で前方中空明るさ判定領域32が「明」なら車両灯を現状維持、いずれも「暗」なら車両灯をONさせるといった、ある程度の大まかな判定は可能である。
ただし、例えば前方遠方明るさ判定領域33が「明」で前方中空明るさ判定領域32が「暗」の場合、橋げた通過中ならばOFFでいいものの、トンネル走行中に出口は見えているものの出口まではまだ暫くかかるといった状況もあり得る。その場合はOFFさせるのは適当ではない。そこで、前方遠方明るさ判定領域33及び前方中空明るさ判定領域32に加え、更に、車室内明るさ判定領域34まで考慮して、この車室内明るさ判定領域34が「暗」ならば、橋げたではなくトンネル内を走行中であると想定されるため、OFFさせずに現状(ON状態)を維持させることができる。
また例えば、前方上空明るさ判定領域31、前方中空明るさ判定領域32、及び前方遠方明るさ判定領域33の3つの判定領域を明暗判定対象として、これら3つの判定領域31〜33の明暗判定結果に基づいて灯火の点灯・消灯を制御するようにしてもよい。
更に例えば、車室内明るさ判定領域34と他の何れか一つ又は複数の明るさ判定領域を明暗判定対象として、これら各領域の明暗判定結果に基づいて灯火の点灯・消灯を制御するようにしてもよい。
つまり、4つの判定領域31〜34のうち、少なくとも2つの判定領域についてその明暗を判定すれば、灯火をどのように制御すべきか、ある程度の判定は可能である。但し、灯火の制御をより高精度に行うためには、判定領域の数は多いほど良く、また、明暗判定だけでなく更にトンネルや橋げた等の構造物の認識を行って、その認識結果をも加味して、灯火をどのように制御すべきかを判定するのが好ましい。
また、上記各実施形態では、各判定領域31〜34の明暗判定結果に基づき、灯火を点灯させるべき状況のときは前照灯21、車幅灯22、及び尾灯23の全てを点灯させるようにしたが、明暗判定結果に応じて、前照灯21を含む全ての灯火を点灯させるか、或いは車幅灯22及び尾灯23のみを点灯させるかを、適宜判断するようにしてもよい。
また、第2実施形態のワイパー制御機能付オートライトシステム50では、図11に示したように、撮像画像における左右両端に雨滴検知撮像領域44が設定されているが、例えば、撮像素子13におけるこの雨滴検知撮像領域44に相当する範囲に、近赤外線を含む所定帯域の光のみを透過させるフィルタ或いは可視光をカットするフィルタを設けることにより、可視光の影響を排除して雨滴検知をより精度良く行えるようにしてもよい。
また、第2実施形態では、各判定領域31〜34の明暗判定の結果だけをみれば灯火を点灯させる必要はない場合であっても雨滴の量に応じて車両灯A又は車両灯Bを点灯させるようにしたが、このように雨滴の影響によって灯火を点灯させる際には、一律に車両灯全てを点灯させるか、或いは一部(例えば車幅灯22及び尾灯23)のみを点灯させるようにしてもよい。
また、第2実施形態では、ワイパー60が動作する際の動作モードとして、Hiスピード又はLoスピードの2種類を設定したが、これらに加えて所定時間間隔で払拭動作を行う周知の間欠動作モードがあってもよい。その場合、間欠動作モードでの動作時にもいずれかの灯火(例えば車両灯B)を点灯させるようにしてもよい。
また、上記第2実施形態では、明暗判定のみに基づけば基本的には灯火を点灯させる必要がない場合であっても、雨滴の量が所定量以上(しきい値B以上)ならば、灯火を点灯させるようにしたが、その際、ワイパーの制御とは別に、灯火点灯のために点灯カウンタA,Bをカウントし、そのカウント値に基づいて灯火を点灯させるようにした。つまり、灯火点灯についてはあくまでも点灯カウンタA,Bを用いてその点灯タイミングを判定するようにした。
しかし、雨滴の量に応じてワイパーが自動制御される際は、灯火の点灯を必ずしも点灯カウンタA,Bを用いて行う必要はなく、単に、ワイパーの動作に従って点灯又は消灯を制御するようにしてもよい。例えば、雨滴検知によってワイパーが払拭動作されたならばそれに伴って灯火点灯させ、ワイパー停止中なら灯火も点灯させない、といった、ワイパーの動作に基づく単純な制御にしてもよい。そしてこの場合も、ワイパーがHiスピードで払拭動作されたときには前照灯21、車幅灯22、及び尾灯23の全てを点灯させ、ワイパーがLoスピードで払拭動作されるときには車幅灯22及び尾灯23を点灯させるといった、ワイパーの払拭動作に応じて点灯させる灯火を選択するようにしてもよい。
また、前方遠方明るさ判定領域33に基づく画像認識は、上記実施形態では、前方遠方明るさ判定領域33が「暗」の場合に、トンネル形状パターンがあるか否かについてのみ(即ちトンネルの画像認識のみ)行うようにしたが、図5(b)に示した橋げた形状パターンに基づく橋げたの画像認識も行い、その認識結果を車両灯のON・OFF制御に反映させるようにしてもよい。
例えば、図6の自動灯火制御処理において、S300でトンネル形状パターンがないと判定された場合に、さらに、橋げた形状パターンがあるかどうかを判定して、橋げた形状パターンもなければS310に移行するようにし、橋げた形状パターンがあればそのままS110に戻るようにしてもよい。また、橋げたを通過しようとしているときや橋げた通過中の場合、上記第1実施形態では、周囲にパッシングされたとの誤解を与えないために灯火を点灯させないようにしたが、前照灯21以外の灯火のみ点灯させるようにすることもできる。このようにすれば、橋げた通過の際、パッシングとの誤解を与えずに済み、且つ、自車の存在が周囲に視認されやすくなる。
また、上記各実施形態では、前方遠方明るさ判定領域33の画像に基づいてトンネル又は橋げたを認識できるものとして説明したが、トンネル又は橋げたの認識機能はあくまでも一例であり、トンネル又は橋げた以外に、道路上において道路を跨ぐように設けられる他の構造物が存在する可能性があるならば、それを認識対象として、その認識結果を基に灯火の制御を行うようにしてもよい。
また、上記第1実施形態では、車両灯操作スイッチ24の状態に拘わらず図6の自動灯火制御処理が実行されるものとして説明したが、車両灯操作スイッチ24がAUTOモードに切替操作されているときのみ、図6の自動灯火制御処理を実行するようにしてもよい。第2実施形態においても、車両灯操作スイッチ24又は払拭操作スイッチ59のいずれか一方又は双方がAUTOモードのときのみ、図13の自動灯火・ワイパー制御処理を実行するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、垂直方向に広い範囲(画角)の撮像画像を得ることができ、且つ撮像画像を他の各種処理でも用いることができるよう、特殊タイプの広角レンズ12を備えたカメラ11を用いて撮像を行うようにしたが、画像認識を行わない、或いはトンネル等の認識のみを行うだけであってそれほど高精度の画像が必要でない場合など、状況によっては、通常の広角レンズ(魚眼レンズ含む)を用いても良い。更に、上記各判定領域31〜34を一つの撮像画像中に得られるのであれば、必ずしも広角レンズを用いなくてもよい。
また、上記各実施形態では、撮像画像に基づく明暗判定及び灯火の点灯・消灯の制御を画像処理ECUが行うようにしたが、例えば、画像処理ECUは撮像画像データを他のECU(車両灯制御ECUや払拭制御用ECU)へ送信し、その送信先のECUがその撮像画像データに基づいて必要な制御処理(車両灯制御ECUならば明暗判定及び灯火制御、払拭制御ECUならばワイパーの制御)を行うようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、車室内の画像(車室内撮像領域43)を得るために、プリズム19を用いたが、プリズム19を用いるのはあくまでも一例であって、例えば反射鏡を用いてもよく、撮像画像の下部に車室内の画像(明暗判定に必要十分な車室内画像)が得られる限り、車室内を撮像するための具体的方法は限定されない。
1…オートライトシステム、2,51…撮像システム、3…車両灯制御ECU、4…メータ系ECU、5…車速検出センサ、6…操舵角検出センサ、7…車両状態検出センサ、8…道路情報提供装置、9…ディスプレイ、10…フロントガラス、11…カメラ、12…広角レンズ、13…撮像素子、14…撮像回路部、15,52…画像処理ECU、16…画像入力部、17,53…演算処理部、18,54…駆動制御部、19…プリズム、21…前照灯、22…車幅灯、23…尾灯、24…車両灯操作スイッチ、25…表示部、26,27…受光領域、30…前方監視領域、31…前方上空明るさ判定領域、32…前方中空明るさ判定領域、33…前方遠方明るさ判定領域、34…車室内明るさ判定領域、41…前方上空撮像領域、42…前方中央撮像領域、43…車室内撮像領域、44…雨滴検知撮像領域、46…雨滴、50…ワイパー制御機能付オートライトシステム、55…投光器、56…雨滴検出用プリズム、57…整合層、58…払拭制御用ECU58、59…払拭操作スイッチ、60…ワイパー、101…魚眼レンズ