JP5074213B2 - ジオールの工業的製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを反応蒸留塔に連続的に供給し、反応蒸留法を行い、該反応蒸留塔の塔底部から連続的に抜き出されるジオール類を主成分とする高沸点反応混合物を得、続いて、該高沸点反応混合物中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物を連続多段蒸留塔に連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分及びサイドカット成分として連続的に取得し、塔底成分として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを工業的に大量に長時間安定的に製造する方法である。
環状カーボネートと脂肪族1価アルコール類の反応から、ジアルキルカーボネートとジオール類を製造する反応蒸留法については、本発明者等が初めて開示した(特許文献1〜10)が、その後、他社からも反応蒸留方式を用いる出願(特許文献11〜15)がなされている。この反応に反応蒸留方式を用いた場合、高い反応率で反応を進行させることが可能である。しかしながら、これまで提案されている反応蒸留法は、少量のジアルキルカーボネートとジオール類を製造する方法であるか、短期間の製造方法に関するものであり、工業的規模での長期間安定製造に関するものではなかった。すなわち、ジオールを連続的に大量(例えば、1時間あたり1トン以上)に、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に製造するという目的を達成するものではなかった。
例えば、エチレンカーボネートとメタノールからジメチルカーボネート(DMC)とエチレングリコール(EG)を製造するために開示されている実施例における反蒸留塔の高さ(H:cm)、直径(D:cm)、段数(n)、エチレングリコールの生産量P(kg/hr)、連続製造時間T(hr)に関する最大値を示す記述は、表1のとおりである。
なお、特許文献14(第0060段落)には、「本実施例は上記の図1に示した好ましい態様と同様のプロセスフローを採用し、エチレンカーボネートとメタノールの接触転化反応によりエステル交換させてジメチルカーボネート及びエチレングリコールを製造する商業的規模装置の操業を目的になされたものである。なお、本実施例で下記する数値は実装置の操作にも十分適用可能である。」と記載され、その実施例として、2490kg/hrのエチレングリコールを具体的に製造したとの記載がなされている。実施例に記載のこの規模はジメチルカーボネート年産3万トン以上に相当するので、特許文献14の出願当時(2002年4月9日)としては、この方法による世界一の大規模商業プラントの操業が実施されたことになる。しかしながら、本願出願時でさえ、このような事実は全くない。また、特許文献14の実施例では、ジメチルカーボネートの生産量は理論計算値と全く同一の値が記載されているが、エチレングリコールの収率は約85.6%で、選択率は約88.4%であり、高収率・高選択率を達成しているとはいい難い。特に選択率が低いことは、この方法が工業的製造法として、致命的な欠点を有していることを表している。(なお、特許文献14は、2005年7月26日、未審査請求によるみなし取下処分がなされている。)
反応蒸留法は、蒸留塔内での反応による組成変化と蒸留による組成変化と、塔内の温度変化と圧力変化等の変動要因が非常に多く、長期間の安定運転の継続させることは困難を伴うことが多く、特に大量を扱う場合にはその困難性はさらに増大する。反応蒸留法によるジアルキルカーボネートとジオール類を高収率・高選択率を維持しつつ、それらの大量生産を長期間安定的に継続させ、ジオールを製造するためには、種々の工夫をすることが必要である。しかしながら、これまでに提案されている反応蒸留法における、長期間の連続安定製造に関する記述は、特許文献1及び2の200〜400時間のみであった。
本発明者等は、高収率・高選択率でジアルキルカーボネートとジオール類の大量生産を長期間安定的に継続できる工業的な反応蒸留法を提案したが、それに加えて、蒸留塔の下部から連続的に大量に抜き出される高沸点反応混合物から、ジオールを大量に、且つ、長時間安定的に分離・精製できる方法が必要であり、それによって大量のジオールを高収率で製造する方法が要望されていた。本発明はこの目的を達成するためになされたものである。
これまでに提案されている反応蒸留法によるジオールの1時間あたりの生産量は表1に示されるとおり、特許文献14以外は1時間あたり少量である。また、特許文献14の方法では、第4工程の蒸留塔の塔底成分として、未反応エチレンカーボネート約130kg/hr、及びジヒドロキシエチルカーボネー約226kg/hrを含むエチレングリコールが約2490kg/hrで得られた記載はあるが、これは単に反応混合物の組成を記述しているに過ぎず、ジオールの製造については全く記載がない。
反応蒸留及びジオール精製塔を用いて、比較的純度の高いジオールを製造する方法として、そのジオール精製塔のサイドカットからジオールを取得する方法も知られている。例えば、特許文献12の実施例(図5)では、反応蒸留塔の下部から抜き出された高沸点反応混合物が、薄膜蒸発装置(III)に供給され、そこで得られた高沸点物質が薄膜蒸発装置(IV)に供給され、そこで得られた低沸点蒸発物が蒸留塔(VII)に供給され、その蒸留塔(VII)の濃縮部のサイドカット成分(22)としてエチレングリコールを得た後、さらに精製装置(IX)で精製することによって、このエチレングリコールが、255g/hrの生産量で製造されている。すなわち、特許文献12の方法では、高沸点反応混合物から、4基の精製装置を用いることによって初めてエチレングリコールが得られることを示している。しかも、特許文献12の方法は少量のエチレングリコールの製法であり、大量(例えば、1トン/hr以上)のジオールを長時間(例えば、5000時間以上)安定的に製造する方法についての何の示唆もない。
また、例えば、特許文献15の実施例1(図5)では、反応蒸留塔の下部から抜き出された高沸点反応混合物が、第2蒸留塔(4)に供給され、そこで得られた高沸点物質が加水分解反応器(7)に供給され、その反応混合物が脱炭酸タンク(気液分離器:8)に供給され、そこで得られた液体成分が第3蒸留塔(10)に供給され、第3蒸留塔(10)の回収部のサイドカット成分として、エチレングリコールが19kg/hrの生産量で製造されている。しかしながら、特許文献15の方法では、得られたエチレングリコールは、ジエチレングリコールが0.2質量%含まれている。したがって、特許文献15の方法ではPET繊維やPET樹脂の原料として必要なエチレングリコールをえるためには、さらにもう1段以上の精製装置が必要である。すなわち、特許文献15の方法では、蒸留塔への供給口よりも下部である回収部に設置されたサイドカット抜き出し口からエチレングリコールを得ているが、その純度は不十分であり、しかも、特許文献15の方法は少量のエチレングリコールの製法であり、大量(例えば、1トン/hr以上)のジオールを長時間(例えば、5000時間以上)安定的に製造する方法についての何の示唆もない。
また、例えば、特許文献8の実施例10(図6)、特許文献9の実施例1(図1)では、EG精製塔(41)への供給口よりも上部である濃縮部に設置されたサイドカット抜き出し口から、エチレングリコールが得られているが、いずれも200g/hr未満の少量の生産量であり、大量(例えば、1トン/hr以上)のジオールを長時間(例えば、5000時間以上)安定的に製造する方法についての何の示唆もない。
なお、エチレングリコールは世界で年間約1600万トン(2004年)製造されているが、これまではこの全てがエチレンオキシドに水を付加させる水和法であった。しかしながら、非特許文献1に「EG(エチレングリコール)の製造はEO(エチレンオキシド)の水和反応であり、反応は通常150−200℃・・・で行われる。このとき、目的物であるMEG(モノエチレングリコール)が生成するばかりでなく、DEG(ジエチレングリコール)やTEG(トリエチレングリコール)が副生する。これらの生成割合は水/EO比に依存し、MEGを90%程度の選択性で得るためには、水/EO比はモル比で20程度が必要とされている。このためEGの精製工程では多量の水を留去することが必要となり、ここで多量の熱エネルギーが消費される。・・・EOからEG合成についてもエネルギー効率という視点から見ると未完成なプロセスといっても過言ではない。」との記載のとおり、この工業的製造法には、エチレングリコールの収率・選択率の面と、省エネルギーの面において大きな欠点を有しているのである。
特開平4−198141号公報 特開平4−230243号公報 特開平9−176061号公報 特開平9−183744号公報 特開平9−194435号公報 国際公開 WO97/23445号公報(欧州特許第0889025号明細書、米国特許第5847189号明細書) 国際公開 WO99/64382号公報(欧州特許第1086940号明細書、米国特許第6346638号明細書) 国際公開 WO00/51954号公報(欧州特許第1174406号明細書、米国特許第6479689号明細書) 特開2002−308804号公報 特開2004−131394号公報 特開平5−213830号公報(欧州特許第0530615号明細書、米国特許第5231212号明細書) 特開平6−9507号公報(欧州特許第0569812号明細書、米国特許第5359118号明細書) 特開2003−119168号公報(国際公開 WO03/006418号公報) 特開2003−300936号公報 特開2003−342209号公報 石油学会編 「石油化学プロセス」 120−125頁 講談社 2001年
本発明が解決しようとする課題は、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、続いて、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを製造する具体的な装置及び方法を提供することにある。そして、そのことによって、例えば、ジオールを1時間あたり1トン以上の量で、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に製造できる具体的な安価な工業的装置及び工業的製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の第1の態様では、
1. 環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、続いて、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを製造するにあたり、該連続多段蒸留塔Cが、
(a)下記式(1)〜(9)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる連続多段蒸留塔であり、
300 ≦ L ≦ 3000 式(1)
50 ≦ D ≦ 700 式(2)
3 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
3 ≦ n ≦ 30 式(4)
1000 ≦ L ≦ 5000 式(5)
50 ≦ D ≦ 500 式(6)
10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
20 ≦ n ≦ 100 式(8)
≦ D 式(9)
(b)該連続多段蒸留塔Cの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイには、式(10)を満足する断面積S(cm)の開口部を有するチムニーが1個以上設置されており、
200 ≦ S ≦ 1000 式(10)
且つ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さh(cm)が、式(11)を満足するチムニーであり、
10 ≦ h ≦ 80 式(11)
(c)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Cの該チムニートレイの液溜り部に接続されている、
連続多段蒸留塔であることを特徴とするジオールの工業的製造方法、
2. 製造されるジオールの量が、1時間あたり1トン以上であることを特徴とする前項1に記載の方法、
3. 該連続多段蒸留塔Cの塔下部にある回収部最下部のインターナルの下部にさらに複数(n段)のトレイKを設け、該トレイKの最上段から液を一部連続的に抜き出し、リボイラーで蒸留に必要な熱量を与えた後、該加熱された液を回収部最下部のインターナルと該最上段トレイKとの間に設けられた供給口から蒸留塔Cに戻し、残りの液を下部のトレイに順に供給することを特徴とする前項1又は2に記載の方法、
4. 該トレイKが、バッフルトレイであることを特徴とする前項3に記載の方法、
5. 該トレイKの存在する場所の塔の内径(D)が、D≦Dであることを特徴とする前項3又は4に記載の方法、
6. 該連続多段蒸留塔CのL、D、L/D、n、L、D、L/D、n、nが、それぞれ、500≦L≦2000、 70≦D≦500、 5≦L/D≦20、 5≦n≦20、 1500≦L≦4000、 70≦D≦400、 15≦L/D≦40、 30≦n≦90、 3≦n≦20 であることを特徴とする請求項3ないし5のうち何れか一項に記載の方法、
7. 該連続多段蒸留塔Cの回収部のインターナル及び濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、それぞれ、トレイ及び/又は充填物であることを特徴とする前項1ないし6のうち何れか一項に記載の方法、
8. 該連続多段蒸留塔Cの回収部のインターナルがトレイであり、濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、トレイ及び/又は規則充填物であることを特徴とする前項7に記載の方法、
9. 該トレイが、多孔板トレイであることを特徴とする前項7又は8に記載の方法、
10. 該多孔板トレイが、多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有しており、且つ、孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmであることを特徴とする前項9に記載の方法、
11. 該連続多段蒸留塔Cの回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、2〜15%の範囲であることを特徴とする前項9又は10に記載の方法、
12. 該連続多段蒸留塔Cの濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、1.5〜12%の範囲であることを特徴とする前項9ないし11のうち何れか一項に記載の方法、
13. 該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)が、10〜40%の範囲であることを特徴とする前項1ないし12のうち何れか一項に記載の方法、
14. 該連続多段蒸留塔Cの塔底温度が、150〜250℃の範囲であることを特徴とする前項1ないし13のうち何れか一項に記載の方法、
15. 該連続多段蒸留塔Cの塔頂圧力が、50000〜300000Paの範囲であることを特徴とする前項1ないし14のうち何れか一項に記載の方法、
16. 該連続多段蒸留塔Cの還流比が、0.3〜5の範囲であることを特徴とする前項1ないし15のうち何れか一項に記載の方法、
17. 該塔頂成分(C)中のジオールの含有量が、100ppm以下であることを特徴とする前項1ないし16のうち何れか一項に記載の方法、
18. 該サイドカット成分(C)中のジオールの含有量が、該連続多段蒸留塔Cに供給されたジオールの0.5%以下であることを特徴とする前項1ないし17のうち何れか一項に記載の方法、
を提供する。
また、本発明の第2の態様では、
19. 環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、続いて、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを製造するための連続多段蒸留塔Cであって、
(a)該連続多段蒸留塔Cが、下記式(1)〜(9)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる蒸留塔であり、
300 ≦ L ≦ 3000 式(1)
50 ≦ D ≦ 700 式(2)
3 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
3 ≦ n ≦ 30 式(4)
1000 ≦ L ≦ 5000 式(5)
50 ≦ D ≦ 500 式(6)
10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
20 ≦ n ≦ 100 式(8)
≦ D 式(9)
(b)該連続多段蒸留塔Cの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイには、式(10)を満足する断面積S(cm)の開口部を有するチムニーが1個以上設置されており、
200 ≦ S ≦ 1000 式(10)
且つ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さh(cm)が、式(11)を満足するチムニーであり、
10 ≦ h ≦ 80 式(11)
(c)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Cの該チムニートレイの液溜り部に接続されている、ことを特徴とする連続多段蒸留塔、
20. 該連続多段蒸留塔Cの塔下部にある回収部最下部のインターナルの下部にさらに複数(n段)のトレイKを設け、該トレイKの最上段から液を一部連続的に抜き出し、リボイラーで蒸留に必要な熱量を与えた後、該加熱された液を回収部最下部のインターナルと該最上段トレイKとの間に設けられた供給口から蒸留塔Cに戻し、残りの液を下部のトレイに順に供給することができることを特徴とする前項19に記載の連続多段蒸留塔、
21. 該トレイKが、バッフルトレイであることを特徴とする前項20に記載の連続多段蒸留塔、
22. 該トレイKの存在する場所の塔の内径(D)が、D≦Dであることを特徴とする前項20又は21に記載の連続多段蒸留塔、
23. L、D、L/D、n、L、D、L/D、n、nが、それぞれ、500≦L≦2000、 70≦D≦500、 5≦L/D≦20、 5≦n≦20、 1500≦L≦4000、 70≦D≦400、 15≦L/D≦40、 30≦n≦90、 3≦n≦20 であることを特徴とする前項19ないし22に記載の連続多段蒸留塔、
24. 回収部のインターナル及び濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、それぞれトレイ及び/又は充填物であることを特徴とする前項19ないし23に記載の連続多段蒸留塔、
25. 回収部のインターナルがトレイであり、濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、トレイ及び/又は規則充填物であることを特徴とする前項24に記載の連続多段蒸留塔、
26. 該トレイが、多孔板トレイであることを特徴とする前項24又は25に記載の連続多段蒸留塔、
27. 該多孔板トレイが多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有しており、且つ、孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmであることを特徴とする前項26に記載の連続多段蒸留塔、
28. 回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、2〜15%の範囲であることを特徴とする前項26又は27に記載の連続多段蒸留塔、
29. 濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、1.5〜12%の範囲であることを特徴とする前項26ないし28のうち何れか一項に記載の連続多段蒸留塔、
30. 該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)が、10〜40%の範囲であることを特徴とする前項19ないし29のうち何れか一項に記載の連続多段蒸留塔、
を提供する。
本発明が提供する具体的な装置及び方法によって、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとから、高収率(例えば、使用した環状カーボネート基準で、通常、97%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上)で、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まない、ジオールを、例えば1時間あたり1トン以上、好ましくは2トン以上、より好ましくは3トン以上の工業的規模で長期間例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に製造できる安価な工業的装置及び工業的製造方法が提供される。

また、本発明の方法は既存のエチレングリコール製造法とは異なり、大量の水を使用せずに、高収率・高選択率でエチレングリコールを製造することができ、既存の工業的製造法が永年懸案としている2つの課題(低選択率、エネルギー大量使用)を同時に解決する工業的製造法として優れた効果を有している。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の反応は、環状カーボネートと脂肪族1価アルコール類とから、ジアルキルカーボネートとジオール類が生成する下記式で表わされる可逆平衡なエステル交換反応である。
(式中、Rは2価の基-(CH)m-(mは2〜6の整数)を表わし、その1個以上の水素は炭素数1〜10のアルキル基やアリール基によって置換されていてもよい。また、Rは炭素数1〜12の1価の脂肪族基を表わし、その1個以上の水素は炭素数1〜10のアルキル基やアリール基で置換されていてもよい。)
本発明で原料として用いられる環状カーボネートとは、上式において(A)で表される化合物であって、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類や、1,3−ジオキサシクロヘキサ−2−オン、1,3−ジオキサシクロヘプタ−2−オンなどが好ましく用いられ、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが入手の容易さなどの点から更に好ましく使用され、エチレンカーボネートが特に好ましく使用される。
また、もう一方の原料である脂肪族1価アルコール類とは、上式において(B)で表される化合物であって、生成するジオールより沸点が低いものが用いられる。したがって、使用する環状カーボネートの種類によっても変わり得るが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、アリルアルコール、ブタノール(各異性体)、3−ブテン−1−オール、アミルアルコール(各異性体)、ヘキシルアルコール(各異性体)、ヘプチルアルコール(各異性体)、オクチルアルコール(各異性体)、ノニルアルコール(各異性体)、デシルアルコール(各異性体)、ウンデシルアルコール(各異性体)、ドデシルアルコール(各異性体)、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール(各異性体)、エチルシクロペンタノール(各異性体)、メチルシクロヘキサノール(各異性体)、エチルシクロヘキサノール(各異性体)、ジメチルシクロヘキサノール(各異性体)、ジエチルシクロヘキサノール(各異性体)、フェニルシクロヘキサノール(各異性体)、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール(各異性体)、フェニルプロパノール(各異性体)などが挙げられ、さらにこれらの脂肪族1価アルコール類において、ハロゲン、低級アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシロキシ基、ニトロ基等の置換基によって置換されていてもよい。
このような脂肪族1価アルコール類の中で、好ましく用いられるのは炭素数1〜6のアルコール類であり、さらに好ましいのはメタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)の炭素数1〜4のアルコール類である。環状カーボネートとしてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートを使用する場合に好ましいのはメタノール、エタノールであり、特に好ましいのはメタノールである。
本発明の方法においては、反応蒸留塔A内に触媒を存在させる。触媒を存在させる方法はどのような方法であってもよいが、例えば、反応条件下で反応液に溶解するような均一系触媒の場合、反応蒸留塔内に連続的に触媒を供給することにより、反応蒸留塔内の液相に触媒を存在させることもできるし、あるいは反応条件下で反応液に溶解しないような不均一系触媒の場合、反応蒸留塔内に固体触媒を配置することにより、反応系に触媒を存在させることもできるし、これらを併用した方法であってもよい。
均一系触媒を反応蒸留塔内に連続的に供給する場合には、環状カーボネート及び/又は脂肪族1価アルコールと同時に供給してもよいし、原料とは異なる位置に供給してもよい。該蒸留塔内で実際に反応が進行するのは触媒供給位置から下の領域であることから、塔頂から原料供給位置までの間の領域に該触媒を供給することが好ましい。そして該触媒が存在する段は5段以上あることが必要であり、好ましくは7段以上であり、さらに好ましくは10段以上である。
また、不均一系の固体触媒を用いる場合、該触媒の存在する段の段数が5段以上あることが必要であり、好ましくは7段以上であり、さらに好ましくは10段以上である。蒸留塔の充填物としての効果をも併せ持つ固体触媒を用いることもできる。
本発明において用いられる触媒としては、これまでに知られている種々のものを使用することができる。例えば、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属類;
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、アルコキシド化物類、アリーロキシド化物類、アミド化物類等の塩基性化合物類;
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩類、重炭酸塩類、有機酸塩類等の塩基性化合物類;
トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン類;
N−アルキルピロール、N−アルキルインドール、オキサゾール、N−アルキルイミダゾール、N−アルキルピラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、アルキルピリジン、キノリン、アルキルキノリン、イソキノリン、アルキルイソキノリン、アクリジン、アルキルアクリジン、フェナントロリン、アルキルフェナントロリン、ピリミジン、アルキルピリミジン、ピラジン、アルキルピラジン、トリアジン、アルキルトリアジン等の含窒素複素芳香族化合物類;
ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)等の環状アミジン類;
酸化タリウム、ハロゲン化タリウム、水酸化タリウム、炭酸タリウム、硝酸タリウム、硫酸タリウム、タリウムの有機酸塩類等のタリウム化合物類;
トリブチルメトキシ錫、トリブチルエトキシ錫、ジブチルジメトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、ジブチルジエトキシ錫、ジブチルフェノキシ錫、ジフェニルメトキシ錫、酢酸ジブチル錫、塩化トリブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫等の錫化合物類;
ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛、エチレンジオキシ亜鉛、ジブトキシ亜鉛等の亜鉛化合物類;
アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウム化合物類;
テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、ジクロロジメトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、酢酸チタン、チタンアセチルアセトナート等のチタン化合物類;
トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルメチルホスホニウムハライド、トリオクチルブチルホスホニウムハライド、トリフェニルメチルホスホニウムハライド等のリン化合物類;
ハロゲン化ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアルコキシド、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物類;
鉛及び鉛を含む化合物類、例えば、PbO、PbO、Pbなどの酸化鉛類;
PbS、Pb、PbS2などの硫化鉛類;
Pb(OH)、Pb(OH)、Pb[PbO(OH)]、PbO(OH)などの水酸化鉛類;
NaPbO、KPbO、NaHPbO、KHPbOなどの亜ナマリ酸塩類;
NaPbO、NaPbO、KPbO、K[Pb(OH)]、KPbO、CaPbO、CaPbOなどの鉛酸塩類;
PbCO、2PbCO・Pb(OH)などの鉛の炭酸塩及びその塩基性塩類;
Pb(OCH、(CHO)Pb(OPh)、Pb(OPh)などのアルコキシ鉛類、アリールオキシ鉛類;
Pb(OCOCH、Pb(OCOCH、Pb(OCOCH・PbO・3HOなどの有機酸の鉛塩及びその炭酸塩や塩基性塩類;
BuPb、PhPb、BuPbCl、PhPbBr、PhPb(又はPhPb)、BuPbOH、PhPbOなどの有機鉛化合物類(Buはブチル基、Phはフェニル基を示す);
Pb−Na、Pb−Ca、Pb−Ba、Pb−Sn、Pb−Sbなどの鉛の合金類;
ホウエン鉱、センアエン鉱などの鉛鉱物類、及びこれらの鉛化合物の水和物類;
が挙げられる。
これらの化合物は、反応原料や、反応混合物、反応副生物などに溶解する場合には、均一系触媒として用いることができるし、溶解しない場合には固体触媒として用いることができる。さらには、これらの化合物を反応原料や、反応混合物、反応副生物などで事前に溶解させたり、あるいは反応させることによって溶解させた混合物を均一系触媒として用いることも好ましい方法である。
さらに3級アミノ基を有する陰イオン交換樹脂、アミド基を有するイオン交換樹脂、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基のうちの少なくとも一つの交換基を有するイオン交換樹脂、第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体等のイオン交換体類;シリカ、シリカ-アルミナ、シリカーマグネシア、アルミノシリケート、ガリウムシリケート、各種ゼオライト類、各種金属交換ゼオライト類、アンモニウム交換ゼオライト類などの固体の無機化合物類等が不均一触媒として用いられる。
不均一触媒として、特に好ましく用いられるのは第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体であり、このようなものとしては、例えば、第4級アンモニウム基を交換基として有する強塩基性アニオン交換樹脂、第4級アンモニウム基を交換基として有するセルロース強塩基性アニオン交換体、第4級アンモニウム基を交換基として有する無機質担体担持型強塩基性アニオン交換体などが挙げられる。第4級アンモニウム基を交換基として有する強塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、スチレン系強塩基性アニオン交換樹脂などが好ましく用いられる。スチレン系強塩基性アニオン交換樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を母体として、交換基に第4級アンモニウム(I型あるいはII型)を有する強塩基性アニオン交換樹脂であり、例えば、次式で模式的に示される。
式中、Xはアニオンを示し、通常、Xとしては、F、Cl、Br、I、HCO 、CO 2−、CHCO 、HCO 、IO 、BrO 、ClO の中から選ばれた少なくとも1種のアニオンが使用され、好ましくはCl、Br、HCO 、CO 2−の中から選ばれた少なくとも1種のアニオンが使用される。また、樹脂母体の構造としては、ゲル型、マクロレティキュラー型(MR型)いずれも使用できるが、耐有機溶媒性が高い点からMR型が特に好ましい。
第4級アンモニウム基を交換基として有するセルロース強塩基性アニオン交換体としては、例えば、セルロースの-OH基の一部又は全部をトリアルキルアミノエチル化して得られる、−OCHCHNRXなる交換基を有するセルロースが挙げられる。ただし、Rはアルキル基を示し、通常、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどが用いられ、好ましくはメチル、エチルが使用される。また、Xは前述のとおりのアニオンを示す。
本発明において使用できる、第4級アンモニウム基を交換基として有する無機質担体担持型強塩基性アニオン交換体とは、無機質担体の表面水酸基-OHの一部又は全部を修飾することにより、4級アンモニウム基−O(CH)nNRXを導入したものを意味する。ただし、R、Xは前述のとおりである。nは通常1〜6の整数であり、好ましくはn=2である。無機質担体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、ゼオライトなどを使用することができ、好ましくはシリカ、アルミナ、シリカアルミナが用いられ、特に好ましくはシリカが使用される。無機質担体の表面水酸基の修飾方法としては、任意の方法を用いることができる。
第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体は、市販のものを使用することもできる。その場合には、前処理として予め所望のアニオン種でイオン交換を行なった後に、エステル交換触媒として使用することもできる。
また、少なくとも1個の窒素原子を含む複素環基が結合している巨大網状及びゲルタイプの有機ポリマー、または少なくとも1個の窒素原子を含む複素環基が結合している無機質担体から成る固体触媒もエステル交換触媒として好ましく用いられる。また、さらにはこれらの含窒素複素環基の一部又は全部が4級塩化された固体触媒も同様に用いられる。なお、イオン交換体などの固体触媒は、本発明においては充填物としての機能も果たすことができる。
本発明で用いられる触媒の量は、使用する触媒の種類によっても異なるが、反応条件下で反応液に溶解するような均一系触媒を連続的に供給する場合には、供給原料である環状カーボネートと脂肪族1価アルコールの合計質量に対する割合で表わして、通常0.0001〜50質量%、好ましくは0.005〜20質量%、さらに好ましくは0.01〜10質量%で使用される。また、固体触媒を該蒸留塔内に設置して使用する場合には、該蒸留塔の空塔容積に対して、0.01〜75容積%、好ましくは0.05〜60容積%、さらに好ましくは0.1〜60容積%の触媒量が好ましく用いられる。
本発明において反応蒸留塔である連続多段蒸留塔Aに、環状カーボネート及び脂肪族1価アルコールを連続的に供給する方法については、特別な限定はなく、それらが該蒸留塔Aの少なくとも5段以上、好ましくは7段以上、より好ましくは10段以上の領域において触媒と接触させることができるような供給方法であれば如何なる方法であってもよい。すなわち、該環状カーボネートと該脂肪族1価アルコールは、連続多段蒸留塔Aの上記の条件を満たす段に必要な数の導入口から連続的に供給することができる。また、該環状カーボネートと該脂肪族1価アルコールは該蒸留塔の同じ段に導入されてもよいし、それぞれ別の段に導入してもよい。
原料は、液状、ガス状又は液とガスとの混合物として該蒸留塔Aに連続的に供給される。このようにして原料を該蒸留塔Aに供給する以外に、付加的にガス状の原料を該蒸留塔Aの下部から断続的又は連続的に供給することも好ましい方法である。また、環状カーボネートを触媒の存在する段よりも上部の段に液状又は気液混合状態で該蒸留塔に連続的に供給し、該蒸留塔Aの下部に該脂肪族1価アルコールをガス状及び/又は液状で連続的に供給する方法も好ましい方法である。この場合、環状カーボネート中に、脂肪族1価アルコールが含まれていても、もちろん構わない。
本発明において、供給原料中に、生成物であるジアルキルカーボネート及び/又はジオール類が含まれていてもよい。その含有量は、ジアルキルカーボネートが、脂肪族1価アルコール/ジアルキルカーボネート混合物中のジアルキルカーボネートの質量%で表わして、通常、0〜40質量%、好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは0〜20質量%であり、ジオール類が環状カーボネート/ジオール混合物中の質量%で表わして、通常、0〜10質量%、好ましくは0〜7質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。
本反応を工業的に実施する場合、新規に反応系に導入される環状カーボネート及び/又は脂肪族1価アルコールに加え、この工程及び/又は他の工程で回収された、環状カーボネート及び/又は脂肪族1価アルコールを主成分とする物質が、これらの原料として使用できることは好ましいことである。本発明はこのことを可能にするものであり、これは本発明の優れた特徴である。他の工程とは、例えば、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物からジアリールカーボネートを製造する工程があり、この工程では、脂肪族1価アルコールが副生し、回収される。この回収副生脂肪族1価アルコールには、通常ジアルキルカーボネート、芳香族モノヒドロキシ化合物、アルキルアリールエーテルなどが含まれる場合が多く、さらには少量のアルキルアリールカーボネート、ジアリールカーボネートなどが含まれる場合がある。副生脂肪族1価アルコールは、そのままで本願発明の原料とすることもできるし、蒸留等により該脂肪族1価アルコールよりも沸点の高い含有物質量を減少させた後に原料とすることもできる。
また、本願発明に用いられる好ましい環状カーボネートは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシドなどのアルキレンオキシドと二酸化炭素との反応によって製造されたものであるので、これらの原料化合物などを少量含む環状カーボネートを、本願発明の原料として用いることもできる。
本発明において、反応蒸留塔Aに供給する環状カーボネートと脂肪族1価アルコール類との量比は、エステル交換触媒の種類や量及び反応条件によっても異なるが、通常、供給される環状カーボネートに対して、脂肪族1価アルコール類はモル比で0.01〜1000倍の範囲で供給することができるが、環状カーボネートの反応率を上げるためには脂肪族1価アルコール類を2倍モル以上の過剰量供給することが好ましい。しかしながら、あまり大過剰に用いると装置を大きくする必要がある。このような意味において、環状カーボネートに対する脂肪族1価アルコール類のモル比は、2〜20が好ましく、より好ましくは3〜15、さらに好ましくは5〜12である。なお、未反応環状カーボネートが多く残存していると、生成物であるジオール類と反応して2量体、3量体などの多量体を副生するので、工業的に実施する場合、未反応環状カーボネートの残存量をできるだけ減少させることが好ましい。本発明の方法では、このモル比が10以下であっても、環状カーボネートの反応率を98%以上、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.9%以上にすることが可能である。このことも本発明の特徴のひとつである。
本発明においては、反応蒸留塔Aにおいて、好ましくは1時間あたり約1トン以上のジオールを含む高沸点反応混合物(A)を連続的に製造し、これを連続多段蒸留塔Cに供給し、その塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点物質を実質的に含まないジオールを1時間あたり約1トン以上製造するのであるが、そのために連続的に供給される環状カーボネートの最低量は、製造すべきジオールの量(Pトン/hr)に対して、通常1.55Pトン/hr、好ましくは、1.5Pトン/hr、より好ましくは1.45Pトン/hrである。さらに好ましい場合は、1.43Pトン/hrよりも少なくできる。
本発明に係る反応蒸留法を実施する連続多段蒸留塔Aについては、特に限定はないが、蒸留だけでなく反応も同時に行って、1時間あたり好ましくは約1.5トン以上のジアルキルカーボネート及び/又は1時間あたり好ましくは約1トン以上のジオール類を長期間安定的に製造できるものであることが好ましい。
本発明では、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することに、ジオールを製造するのである。したがって、該連続多段蒸留塔Cは、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として効率的に除去できる機能を有していることが必要であり、本発明はこの機能を有する特定の構造を有する工業的蒸留装置を提供し、それを用いることによって本発明の目的が達成できることを見出したのである。
また、該高沸点反応混合物(A)中には、未反応環状カーボネートが微量〜少量含まれる場合がある。この場合、該連続多段蒸留塔Cの塔底成分(C)中に未反応環状カーボネートが実質的に存在しないようにしておくことが好ましい。このためには、少量の水を該連続多段蒸留塔Cに加え、該未反応環状カーボネートを加水分解反応によってジオールに変換させるか、及び/又はジオールと反応させてジアルキレングリコールなどに変換させるための工夫(例えば、該反応が完全に進行するために必要な温度と滞留時間を確保されていること、塔底成分の逆混合を少なくすることなど)がなされていることが好ましい。この工夫がなされていることによって、該連続多段蒸留塔Cの塔底成分(C)中には、未反応環状カーボネートが実質的に存在しないようにすることができ、このことは、本発明を実施する上で好ましいことである。
なお、本発明でいう「実質的に含まない」とは、その含有量が50ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下を意味する。
本発明で用いられる連続多段蒸留塔Cは、上記の目的を達成するためには、種々の条件を同時に満足させるものでなければならない。
具体的には、
(a)該連続多段蒸留塔Cが、下記式(1)〜(9)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる蒸留塔であり、
300 ≦ L ≦ 3000 式(1)
50 ≦ D ≦ 700 式(2)
3 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
3 ≦ n ≦ 30 式(4)
1000 ≦ L ≦ 5000 式(5)
50 ≦ D ≦ 500 式(6)
10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
20 ≦ n ≦ 100 式(8)
≦ D 式(9)
(b)該連続多段蒸留塔Cの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイには、式(10)を満足する断面積S(cm)の開口部を有するチムニーが1個以上設置されており、
200 ≦ S ≦ 1000 式(10)
且つ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さh(cm)が、式(11)を満足するチムニーであり、
10 ≦ h ≦ 80 式(11)
(c)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Cの該チムニートレイの液溜り部に接続されている、
ことを特徴とする連続多段蒸留塔であることが必要である。
このような連続多段蒸留塔Cを用いることによって、環状カーボネートと脂肪族1価アルコール類との反応蒸留法で製造された大量の高沸点反応混合物(A)から、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まない塔底物質(C)が、1時間あたり1トン以上、好ましくは2トン以上、より好ましくは3トン以上の工業的規模で、例えば1000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上の長期間、安定的に製造できることが見出されたのである。本発明の方法を実施することによって、このような優れた効果を有する工業的規模でのジオールの分離精製が可能になった理由は明らかではないが、式(1)〜(11)の条件が組み合わさった時にもたらされる複合効果のためであると推定される。
なお、各々の要因の好ましい範囲は下記に示される。
(cm)が300より小さいと、回収部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、Lを3000以下にすることが必要である。Lが3000よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなる。より好ましいL(cm)の範囲は、500≦L≦2000 であり、さらに好ましくは、600≦L≦1500 である。
(cm)が50よりも小さいと、目的とする蒸留量を達成できないし、目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させるには、Dを700以下にすることが必要である。より好ましいD(cm)の範囲は、70≦D≦500 であり、さらに好ましくは、190≦D≦400 である。
/Dが3より小さい時や30より大きい時は長期安定運転が困難となる。より好ましいL/Dの範囲は、4≦L/D≦20 であり、さらに好ましくは、5≦L/D≦15 である。
が3より小さいと回収部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、nを30以下にすることが必要である。nが30よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなる。より好ましいnの範囲は、5≦n≦20 であり、さらに好ましくは、6≦n≦15 である。
(cm)が1000より小さいと、濃縮部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、Lを5000以下にすることが必要である。Lが5000よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなる。より好ましいL(cm)の範囲は、1500≦L ≦4000 であり、さらに好ましくは、2000≦L≦3500 である。
(cm)が50よりも小さいと、目的とする蒸留量を達成できないし、目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させるには、Dを500以下にすることが必要である。より好ましいD(cm)の範囲は、70≦D≦400 であり、さらに好ましくは、90≦D≦350 である。
/Dが10より小さい時や50より大きい時は長期安定運転が困難となる。より好ましいL/Dの範囲は、15≦L/D≦40 であり、さらに好ましくは、20≦L/D≦35 である。
が20より小さいと濃縮部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、nを100以下にすることが必要である。nが100よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなる。より好ましいnの範囲は、30≦n≦90であり、さらに好ましくは、40≦n≦80 である。なお、本発明においては、濃縮部に1つ以上のチムニートレイが設置されることが必要であるが、その段数は、上記のnに含まれるものとする。また、本発明の連続多段蒸留塔Cにおいては、D≦D が好ましい。
なお、連続多段蒸留塔Cに供給される高沸点反応混合物(A)中に、少量の未反応環状カーボネートを含む場合は、塔下部において該未反応環状カーボネートを反応させて、塔底成分(C)中には実質的にそれが含有しないようにするための工夫を行うことが好ましい。したがって、該連続多段蒸留塔Cの塔下部にある回収部最下部のインターナルの下部にさらに複数(n段)のトレイKを設け、該トレイKの最上段から液を一部連続的に抜き出し、リボイラーで蒸留と反応に必要な熱量を与えた後、該加熱された液を回収部最下部のインターナルと該最上段トレイKとの間に設けられた供給口から蒸留塔Cに戻し、残りの液を下部のトレイに順に供給することができるようにすることは、本発明の好ましい実施態様である。
このような工夫を行うことによって、塔下部における液の滞留時間を増加させることができ、また、該トレイKの存在する段以下の塔径(D)を回収部の塔径(D)より大きくする(D<D)ことによって液体の滞留量を増加させ滞留時間を増加させることができ、充分な反応時間を維持することができる。さらには、塔底液の液面レベルをトレイKの最下段のトレイよりも低くすることによって、塔下部における液体の逆混合を防止することができる。したがって、本発明では、少量の未反応環状カーボネートを含む場合においても、未反応環状カーボネートは、主として大過剰に存在するジオールと反応して、高沸点のジアルキレングリコール等に完全に変換することができる。
このようなトレイKとしては、上記の機能を有している限り、どのような種類のトレイであってもよいが、機能と設備費との関係からみて、多孔板トレイやバッフルトレイが好ましく、なかでもバッフルトレイが特に好ましい。多孔板トレイやバッフルトレイの場合、堰が設けられていることが好ましく、その堰をオーバーフローした液は、ダウンカマー部から下段のトレイに連続的に落下するようにすることが好ましい。この場合、堰の高さは、4〜30cmが好ましく、より好ましくは、6〜20cmで、さらに好ましくは8〜15cmである。バッフルトレイの場合、この堰がバッフルである単純なトレイが特に好ましい。
好ましいD の範囲は、1.2D<D≦5Dであり、より好ましくは 1.5D<D≦4D、さらに好ましくは、1.7D<D≦3Dである。
また、nは、2段以上であるが、好ましいnの範囲は、3≦n≦20 であり、より好ましくは、4≦n≦15 であり、さらに好ましくは、5≦n≦10 である。
連続多段蒸留塔Cの濃縮部に設置されるチムニートレイとは、トレイの平面に断面積S(cm)の開口部を有するチムニー(煙突状の物体)が1つ以上設けられたものである。そして、それらのチムニーの上部開口部には、チムニーカバーが設置されていることが好ましい。このチムニーカバーは、下段から上昇してくるガス成分がチムニーの上部開口部(ガス出口)で横向きに流れることに役立つと同時に、上段から落下してくる液体成分が直接、下段に落下するのを防ぐのに役立っている。
このチムニーの横断面の形状は、3角形、四角形、多角形、円形、楕円系、星型等、いずれでもよいが、四角形、円形が好ましく用いられる。また、このチムニーは上部から下部までその横断面の形や面積が異なるものでもよいが、同じものが製作上容易で安価になるので好ましい。また、2つ以上のチムニーが異なる形状を有するものであってもよいが、同じ形状を有するものが好ましい。
本発明では、このチムニートレイに接続されたチムニーの開口部(該チムニーの横断面における最小部分)の断面積S(cm)が、式(10)を満足していることが必要である。
200 ≦ S ≦ 1000 式(10)
Sが200より小さいと所定の生産量を達成するためには多くのチムニーが必要となり設備費が高くなる。また、Sが1000より大きいとチムニートレイの段におけるガスの流れが不均一になりやすく長期安定運転が困難になる。より好ましいS(cm)は、300≦S≦800 であり、さらに好ましくは、400≦S≦700 である。
また、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口(チムニーの上部開口部下端)までの高さh(cm)が、式(11)を満足していることが必要である。
10 ≦ h ≦ 80 式(11)
本発明で用いられるチムニートレイには、下段へ液成分を落下させるためのダウンカマー部と液成分を保持するための堰が、通常、設置されている。この堰の高さは、hに依存するが、通常、hより5〜20cm程度小さく設定されている。したがって、hが10より小さいとチムニートレイに保持される液量が少なくなり、長期安定運転が困難になる。また、hが80よりも大きいと保持される液量が増大するため設備の強度を高める必要があるので設備費が高くなるだけでなく、精製されたジオールの塔内での滞留時間が増えるので好ましくない。より好ましいh(cm)は、15≦ h ≦60 であり、さらに好ましくは、20≦ h ≦50 である。
また、該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)は、10〜40%の範囲であることが好ましい。該開口比が10%より小さいと長期安定運転が困難になる。また、40%より大きくするとチムニーの数を増やすか、チムニーを高くする必要があり、いずれも設備費が高くなる。より好ましい開口比は、13〜35%の範囲であり、さらに好ましくは、15〜30%の範囲である。
本発明では、1つ以上のチムニートレイが多段蒸留塔Cの濃縮部(塔への供給口よりも上部で塔頂より下部の部分)に設置され、その液溜り部の底部に接続されたサイドカット抜き出し口からジオールよりも沸点が低く、脂肪族1価アルコールよりも沸点の高い中間沸点物質を主成分とする留分が連続的に抜き出される。チムニートレイの数は必要に応じて2つ以上とすることもできるが、通常は1つで実施される。このチムニートレイの設置される段は、濃縮部のどの位置でもよいが、濃縮部の段の下から3段目以上で、濃縮部の段の上から10段目以下の段が好ましい。より好ましくは、濃縮部の段の下から4段目以上で、濃縮部の段の上から15段目以下の段であり、さらに好ましくは、濃縮部の段の下から5段目以上で、濃縮部の段の上から24段目以下の段である。
本発明の連続多段蒸留塔Cの回収部及び濃縮部は、インターナルとしてトレイ及び/又は充填物を有する蒸留塔であることが好ましい。本発明でいうインターナルとは、蒸留塔において実際に気液の接触を行わせる部分のことを意味する。このようなトレイとしては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ等が好ましく、充填物としては、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔も用いることができる。なお、本発明で用いる用語「インターナルの段数n及びn」とは、トレイの場合は、トレイの数を意味し、充填物の場合は、理論段数を意味する。したがって、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ連続多段蒸留塔の場合、n及びnはトレイの数と、理論段数の合計である。
本発明においては連続多段蒸留塔Cの回収部のインターナル及び濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、それぞれトレイ及び/又は充填物である場合が好ましい。さらに回収部のインターナルがトレイであり、濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、トレイ及び/又は規則充填物である場合が特に好ましいことが見出された。また、該トレイが多孔板部とダウンカマー部を有する多孔板トレイが機能と設備費との関係で特に優れていることが見出された。そして、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有していることが好ましいことも見出された。より好ましい孔数は該面積1mあたり150〜900個であり、さらに好ましくは、200〜800個である。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmであることが好ましいことも見出された。より好ましい孔1個あたりの断面積は、0.7〜4cmであり、さらに好ましくは0.9〜3cmである。さらには、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1mあたり100〜10000個の孔を有しており、且つ、孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmである場合、特に好ましいことが見出された。
連続多段蒸留塔Cの回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)は、2〜15%の範囲であることが好ましく、より好ましくは2.5〜12%の範囲であり、さらに好ましくは3〜10%の範囲である。また、連続多段蒸留塔Cの濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)は、1.5〜12%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2〜11%の範囲であり、さらに好ましくは2.5〜10%の範囲である。なお、本発明においては、濃縮部に設置されているチムニートレイは、段数には数えるが、その開口比は前記のとおり、多孔板トレイの開口比とは異なるものである。
連続多段蒸留塔Cに上記の条件を付加することによって、本発明の課題が、より容易に達成されることが判明したのである。
本発明では、連続多段蒸留塔A内での反応蒸留によって生成するジアルキルカーボネートは、通常過剰に用いられ未反応で残っている脂肪族1価アルコールとの低沸点反応混合物(A)として、塔上部よりガス状で連続的に抜出される。そして、生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)は塔下部より液状で連続的に抜きだされる。ジオールを主成分とするこの高沸点反応混合物(A)中には、通常、残存する脂肪族1価アルコールが10〜45質量%、微量のジアルキルカーボネート、非常に少量(通常0.2質量%以下)の未反応環状カーボネート、少量(通常0.4質量%以下)のジオールよりも低沸点の副生物(2−アルコキシエタノール等)及び触媒を含む少量(通常1質量%以下)のジオールよりも高沸点の副生物(ジアルキレングリコール等)が含まれている。
したがって、連続多段蒸留塔C内に連続的に供給された該高沸点反応混合物(A)中のジオールよりも低沸点の物質(脂肪族1価アルコール、微量のジアルキルカーボネート及び副生CO、低沸点副生物)と少量のジオールが、塔頂成分(C)及び/又はサイドカット成分(C)として連続的に抜き出され、触媒と少量の高沸点副生物を含むジオール類が塔底成分(C)として連続的に抜き出されることになる。本発明においては、この塔底成分(C)中のジオールの濃度は、通常、95質量%以上であり、好ましくは97質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である。
また、本発明の方法では、連続多段蒸留塔Cに供給された非常に少量(通常0.2質量%以下)の未反応環状カーボネートは、この蒸留塔C内で大量に存在するジオールと反応させてジアルキレングリコールとすることができ、未反応環状カーボネートの存在量を実質的に0にすることは容易であるので、本発明においては、通常、未反応環状カーボネートが実質的に存在しない塔底成分(C)が、連続的に得られることになる。
なお、通常、ジオール中に含まれる可能性のある極微量のアルデヒド含有量をさらに減少させた超高純度ジオールや、紫外線透過率の高い超高純度ジオールを得る目的で、特許文献9又は10に記載の方法に従って、連続多段蒸留塔Cの下部に少量の水を供給することも好ましい方法である。
本発明で行われる連続多段蒸留塔Cの蒸留条件は、蒸留塔のインターナルの形状や段数、供給される高沸点反応混合物(A)の種類と組成と量、必要とするジオールの純度などによって異なるが、通常、塔底温度が150〜250℃の範囲の特定の温度で行うことが好ましい。より好ましい塔底の温度範囲は、170〜230℃であり、さらに好ましい温度範囲は、190〜210℃である。塔底圧力は、塔内組成と使用する塔底温度によって異なるが、通常、50000〜300000Paの範囲であり、好ましくは、80000〜250000Paの範囲であり、より好ましくは、100000〜200000Paである。
また、連続多段蒸留塔Cの還流比は、0.3〜5の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜3の範囲であり、さらに好ましくは0.8〜2の範囲である。
本発明においては、連続多段蒸留塔Cの塔頂成分(C)中のジオールの含有量は、通常、100ppm以下であり、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは5ppm以下である。本発明では、塔頂成分(C)中のジオールの含有量をゼロにすることも可能である。
連続多段蒸留塔Cのサイドカット成分(C)は、通常、脂肪族1価アルコール、ジオールよりも低沸点の副生物(2−アルコキシエタノール等)、ジオール、少量のジオールよりも高沸点の不純物(ジアルキレングリコール等)から成っているが、その量は、通常、連続多段蒸留塔Cに供給された高沸点反応混合物(A)の4%以下であり、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
また、本発明においては、サイドカット成分(C)中のジオールの含有量を連続多段蒸留塔Cに供給されたジオールの、通常、0.5%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下に容易にすることができる。そして、連続多段蒸留塔Cの塔底成分(C)として、ジオールよりも高沸点の副生物(ジアルキレングリコール等)を、通常、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下と、微量の触媒成分を含むジオールが連続的に取得できることになる。塔底成分(C)として取得されるジオールは、連続多段蒸留塔Cに供給されたジオールの通常、99.5%以上、好ましくは99.6%以上、より好ましくは99.7%以上である。このように高い回収率でジオールが取得できるのが、本発明のひとつの特徴である。
また、本発明の好ましい実施態様では、ハロゲンを含まない原料や触媒を用いて反応が実施されるので、製造するジオールには、まったくハロゲンを含まないようにすることができる。したがって、本発明ではハロゲン含有量が0.1ppm以下、好ましくは、1ppb以下のジオールを製造することは容易である。
本発明では、反応収率及び精製収率が高いので、使用した環状カーボネート基準で、通常、97%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の高収率でジオールが製造することが可能である。
本発明で用いられる連続多段蒸留塔A及びCを構成する材料は、主に炭素鋼、ステンレススチールなどの金属材料であるが、製造されるジアルキルカーボネートとジオールの品質の面からは、ステンレススチールが好ましい。
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、ハロゲンはイオンクロマトグラフィーで測定した。
実施例1
図1に示されるようなL=1100cm、D=110cm、L/D=10、n=10、L=3000cm、D=110cm、L/D=27.3、n=60からなる連続多段蒸留塔Cを用いた。なお、塔底部から約500cmの間は、内径(D)を200cmと大きくしてあり、この部分にはダウンカマー部を有し、堰(高さ、10cm)がバッフルであるバッフルトレイKが8段設置されている。このバッフルトレイKの最上段のトレイはその下部から、液の一部が連続的に抜き出されるように工夫されており、抜き出された液はリボイラーによって加熱された後、その段の上部に供給される。また、濃縮部においては上部に理論段数52段のメラパックが充填されており、その下部にチムニートレイ1段が設置され、さらにその下部に8段のトレイが設けられている。この実施例では、回収部のインターナルとして多孔板トレイを用い、濃縮部のトレイとして多孔板トレイを用いた。これらの多孔板トレイは、孔1個あたりの断面積=約1.3cmであった。回収部での多孔板トレイの孔数は約250〜300個/mの範囲であり、開口比は3〜4%の範囲であった。また、濃縮部での多孔板トレイの孔数は約150〜300個/mの範囲であり、開口比は2.8〜3.6%の範囲であった。チムニートレイは、4個のチムニーを有しており、各チムニーのS=約500cm、h=25cmであり、その開口比は18〜25%の範囲であった。このチムニートレイはダウンカマー部を有しており、堰の高さは10cmであった。
エチレンカーボネート(EC)とメタノール(MeOH)からなる原料(モル比:MeOH/EC=8.4)と触媒(KOHをエチレングリコール中で加熱脱水処理したもの:K濃度としてECに対して0.1質量%)を連続多段蒸留塔Aに連続的に供給し、反応蒸留を行うことによって、塔底成分(A)3.205トン/hrが連続的に抜き出された。エチレンカーボネートの反応率は100%で、エチレングリコールの選択率は99.8%であった。メタノール0.99トン/hr、ジメチルカーボネート0.001トン/hr、2−メトキシエタノール0.009トン/hr、エチレングリコール2.186トン/hr、ジエチレングリコール及び触媒成分0.019トン/hrからなるこの塔底成分(A)が、連続多段蒸留塔Cに導入口から連続的に供給された。この導入口は、連続多段蒸留塔Cの下から10段目と11段目のトレイの間に設置されている。
連続多段蒸留塔Cは、塔底温度約200℃、塔頂圧力約11000Pa、還流比0.9で連続的に運転された。また、塔底液面レベルは、該多孔板トレイKの最下段のトレイよりも下に維持されていた。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。
連続多段蒸留塔Cの塔頂成分(C)として、メタノール0.968トン/hr、ジメチルカーボネート0.001トン/hrが連続的に抜き出され、サイドカット成分(C)として、メタノール0.022トン/hr、2−メトキシエタノール0.009トン/hr、エチレングリコール0.004トン/hrが連続的に抜き出され、塔底成分(C)として、エチレングリコール2.182トン/hr、ジエチレングリコール、触媒成分及び高沸点副生物0.019トン/hrが連続的に抜き出された。
塔頂成分(C)中のエチレングリコールの含有量は5ppm以下であり、実質的にゼロであった。また、サイドカット成分(C)中のエチレングリコールの含有量は、連続多段蒸留塔Cに供給されたエチレングリコールの0.18%であった。
塔底成分(C)中のエチレングリコールの濃度は99.1質量%であった。また、連続多段蒸留塔Cに供給されたエチレングリコールの99.82%が塔底成分(C)として回収された。エチレンカーボネート基準のエチレングリコールの収率は99.6%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、2000時間後、4000時間
後、5000時間後、6000時間後の1時間あたりのエチレングリコールの製造量は、2.182トン、2.182トン、2.182トン、2.182トン、2.182トンであり、非常に安定していた。
実施例2
エチレンカーボネート(3.565トン/hr)とメタノール(モル比MeOH/EC=8)からなる原料と触媒(KOHをエチレングリコール中で加熱脱水処理したもの:K濃度としてECに対して0.1質量%)を連続多段蒸留塔Aに連続的に供給し、反応蒸留を行うことによって、実施例1と同様な反応成績でジメチルカーボネートとエチレングリコールが製造され、エチレングリコールを主成分とする塔底成分(A)が連続的に抜き出された。実施例1と同じ連続多段蒸留塔Cを用いて、同様な方法でエチレングリコールの蒸留分離を行った。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。
連続多段蒸留塔Cから2.472トン/hrで連続的に抜き出された塔底成分(C)は、エチレングリコール2.439トン/hr、ジエチレングリコール、触媒成分及び高沸点副生物0.033トン/hrから成っていた。塔底成分(C)中のエチレングリコールの濃度は99.1質量%であった。また、連続多段蒸留塔Cに供給されたエチレングリコールの99.8%が塔底成分(C)として回収された。エチレンカーボネート基準のエチレングリコールの収率は99.5%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。1000時間後、2000時間後、3000時間後、5000時間後の1時間あたりのエチレングリコールの製造量は、2.439トン、2.439トン、2.439トン、2.439トンであり、非常に安定していた。
実施例3
実施例1とほぼ同じ連続多段蒸留塔Cを用いた。ただし、回収部及び濃縮部の多孔板トレイの孔数は約550〜650個/mの範囲であり、開口比は6.5〜8.5%の範囲であった。
エチレンカーボネート(8.20トン/hr)とメタノール(モル比MeOH/EC=9)からなる原料と触媒(KOHをエチレングリコール中で加熱脱水処理したもの:K濃度としてECに対して0.1質量%)を連続多段蒸留塔Aに連続的に供給し、反応蒸留を行うことによって、実施例1と同様な反応成績でジメチルカーボネートとエチレングリコールが製造され、エチレングリコールを主成分とする塔底成分(A)が連続的に抜き出された。連続多段蒸留塔Cを用いて、実施例1と同様な方法でエチレングリコールの蒸留分離を行った。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。
連続多段蒸留塔Cから5.852トン/hrで連続的に抜き出された塔底成分(C)は、エチレングリコール5.754トン/hr、ジエチレングリコール、触媒成分及び高沸点副生物0.098トン/hrからなっていた。塔底成分(C)中のエチレングリコールの濃度は98.3質量%であった。また、連続多段蒸留塔Cに供給されたエチレングリコールの99.8%が塔底成分(C)として回収された。エチレンカーボネート基準のエチレングリコールの収率は99.6%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、1000時間後、1500時間後の1時間あたりのエチレングリコールの製造量は、5.754トン、5.754トン、5.754トンであり、非常に安定していた。
本発明によれば、環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、続いて、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを1時間あたり1トン以上、好ましくは2トン以上、より好ましくは3トン以上の量で、長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)安定的に製造できる具体的な安価な工業的装置及び工業的製造方法が提供されるので、産業上、非常に有用である。
本発明を実施するのに好ましい連続多段蒸留塔Cの例を示す概略図である。胴部内部にはインターナルとして回収部にはn段のトレイが、また、濃縮部には下部にトレイと上部に規則充填物(合計段数n段)が設置されており、導入口1よりも上部にある濃縮部にはチムニートレイ1段が設置されている(本図では、チムニートレイ以外の回収部及び濃縮部のトレイは省略されている)。なお、塔下部の塔径(D)は回収部の塔径(D)よりも大きくしてあり、内部にはトレイK(n段)が設けられている。 図1で使用した符号の説明は、以下のとおりである:1 : 導入口、2 : 塔頂成分(C)抜出し口、3 : 塔底成分(C)抜出し口、4 : サイドカット成分(C)抜出し口、5 : インターナル(充填物)、6 : 熱交換器、7 : リボイラー、8 : 還流液導入口、9 : チムニートレイ、h : チムニートレイの開口部からチムニーのガス出口までの高さ(cm)、L : 連続多段蒸留塔Cの回収部の長さ(cm)、L : 連続多段蒸留塔Cの濃縮部の長さ(cm)、D : 連続多段蒸留塔Cの回収部の内径(cm)、D : 連続多段蒸留塔Cの濃縮部の内径(cm)、D : 連続多段蒸留塔Cの塔下部の内径(cm)、K : トレイ

Claims (30)

  1. 環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、続いて、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを製造するにあたり、該連続多段蒸留塔Cが、
    (a)下記式(1)〜(9)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる連続多段蒸留塔であり、
    300 ≦ L ≦ 3000 式(1)
    50 ≦ D ≦ 700 式(2)
    3 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
    3 ≦ n ≦ 30 式(4)
    1000 ≦ L ≦ 5000 式(5)
    50 ≦ D ≦ 500 式(6)
    10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
    20 ≦ n ≦ 100 式(8)
    ≦ D 式(9)
    (b)該連続多段蒸留塔Cの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイには、式(10)を満足する断面積S(cm)の開口部を有するチムニーが1個以上設置されており、
    200 ≦ S ≦ 1000 式(10)
    且つ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さh(cm)が、式(11)を満足するチムニーであり、
    10 ≦ h ≦ 80 式(11)
    (c)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Cの該チムニートレイの液溜り部に接続されている、
    連続多段蒸留塔であることを特徴とするジオールの工業的製造方法。
  2. 製造されるジオールの量が、1時間あたり1トン以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 該連続多段蒸留塔Cの塔下部にある回収部最下部のインターナルの下部にさらに複数(n段)のトレイKを設け、該トレイKの最上段から液を一部連続的に抜き出し、リボイラーで蒸留に必要な熱量を与えた後、該加熱された液を回収部最下部のインターナルと該最上段トレイKとの間に設けられた供給口から蒸留塔Cに戻し、残りの液を下部のトレイに順に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 該トレイKが、バッフルトレイであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 該トレイKの存在する場所の塔の内径(D)が、D≦Dであることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
  6. 該連続多段蒸留塔CのL、D、L/D、n、L、D、L/D、n、nが、それぞれ、500≦L≦2000、 70≦D≦500、 5≦L/D≦20、 5≦n≦20、 1500≦L≦4000、 70≦D≦400、 15≦L/D≦40、 30≦n≦90、 3≦n≦20 であることを特徴とする請求項3ないし5のうち何れか一項に記載の方法。
  7. 該連続多段蒸留塔Cの回収部のインターナル及び濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、それぞれ、トレイ及び/又は充填物であることを特徴とする請求項1ないし6のうち何れか一項に記載の方法。
  8. 該連続多段蒸留塔Cの回収部のインターナルがトレイであり、濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、トレイ及び/又は規則充填物であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 該トレイが、多孔板トレイであることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
  10. 該多孔板トレイが、多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有しており、且つ、孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 該連続多段蒸留塔Cの回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、2〜15%の範囲であることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
  12. 該連続多段蒸留塔Cの濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、1.5〜12%の範囲であることを特徴とする請求項9ないし11のうち何れか一項に記載の方法。
  13. 該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)が、10〜40%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし12のうち何れか一項に記載の方法。
  14. 該連続多段蒸留塔Cの塔底温度が、150〜250℃の範囲であることを特徴とする請求項1ないし13のうち何れか一項に記載の方法。
  15. 該連続多段蒸留塔Cの塔頂圧力が、50000〜300000Paの範囲であることを特徴とする請求項1ないし14のうち何れか一項に記載の方法。
  16. 該連続多段蒸留塔Cの還流比が、0.3〜5の範囲であることを特徴とする請求項1ないし15のうち何れか一項に記載の方法。
  17. 該塔頂成分(C)中のジオールの含有量が、100ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし16のうち何れか一項に記載の方法。
  18. 該サイドカット成分(C)中のジオールの含有量が、該連続多段蒸留塔Cに供給されたジオールの0.5%以下であることを特徴とする請求項1ないし17のうち何れか一項に記載の方法。
  19. 環状カーボネートと脂肪族1価アルコールとを原料とし、この原料を触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔A内で反応蒸留を行い、塔上部より生成するジアルキルカーボネート及び該脂肪族1価アルコールを含む低沸点反応混合物(A)をガス状で連続的に抜出し、塔下部より生成するジオール類を含む高沸点反応混合物(A)を液状で連続的に抜出し、続いて、該高沸点反応混合物(A)中に含有するジオールよりも低沸点の物質を分離するために該高沸点反応混合物(A)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、ジオールよりも低沸点の物質を塔頂成分(C)及びサイドカット成分(C)として連続的に取得し、塔底成分(C)として、ジオールよりも低沸点の物質を実質的に含まないジオールを連続的に取得することによって、ジオールを製造するための連続多段蒸留塔Cであって、
    (a)該連続多段蒸留塔Cが、下記式(1)〜(9)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる蒸留塔であり、
    300 ≦ L ≦ 3000 式(1)
    50 ≦ D ≦ 700 式(2)
    3 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
    3 ≦ n ≦ 30 式(4)
    1000 ≦ L ≦ 5000 式(5)
    50 ≦ D ≦ 500 式(6)
    10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
    20 ≦ n ≦ 100 式(8)
    ≦ D 式(9)
    (b)該連続多段蒸留塔Cの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイには、式(10)を満足する断面積S(cm)の開口部を有するチムニーが1個以上設置されており、
    200 ≦ S ≦ 1000 式(10)
    且つ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さh(cm)が、式(11)を満足するチムニーであり、
    10 ≦ h ≦ 80 式(11)
    (c)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Cの該チムニートレイの液溜り部に接続されている、
    ことを特徴とする連続多段蒸留塔。
  20. 該連続多段蒸留塔Cの塔下部にある回収部最下部のインターナルの下部にさらに複数(n段)のトレイKを設け、該トレイKの最上段から液を一部連続的に抜き出し、リボイラーで蒸留に必要な熱量を与えた後、該加熱された液を回収部最下部のインターナルと該最上段トレイKとの間に設けられた供給口から蒸留塔Cに戻し、残りの液を下部のトレイに順に供給することができることを特徴とする請求項19に記載の連続多段蒸留塔。
  21. 該トレイKが、バッフルトレイであることを特徴とする請求項20に記載の連続多段蒸留塔。
  22. 該トレイKの存在する場所の塔の内径(D)が、D≦Dであることを特徴とする請求項20又は21に記載の連続多段蒸留塔。
  23. 、D、L/D、n、L、D、L/D、n、nが、それぞれ、500≦L≦2000、 70≦D≦500、 5≦L/D≦20、 5≦n≦20、 1500≦L≦4000、 70≦D≦400、 15≦L/D≦40、 30≦n≦90、 3≦n≦20 であることを特徴とする請求項19ないし22に記載の連続多段蒸留塔。
  24. 回収部のインターナル及び濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、それぞれトレイ及び/又は充填物であることを特徴とする請求項19ないし23に記載の連続多段蒸留塔。
  25. 回収部のインターナルがトレイであり、濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、トレイ及び/又は規則充填物であることを特徴とする請求項24に記載の連続多段蒸留塔。
  26. 該トレイが、多孔板トレイであることを特徴とする請求項24又は25に記載の連続多段蒸留塔。
  27. 該多孔板トレイが、多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有しており、且つ、孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmであることを特徴とする請求項26に記載の連続多段蒸留塔。
  28. 回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、2〜15%の範囲であることを特徴とする請求項26又は27に記載の連続多段蒸留塔。
  29. 濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)が、1.5〜12%の範囲であることを特徴とする請求項26ないし28のうち何れか一項に記載の連続多段蒸留塔。
  30. 該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)が、10〜40%の範囲であることを特徴とする請求項19ないし29のうち何れか一項に記載の連続多段蒸留塔。
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