JP5074161B2 - 中空二重壁構造体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は熱可塑性樹脂製の中空二重壁構造体及びその製造方法に関する。
現在、軽量且つ安価な板状部材として合成樹脂製のパネルがある。
このパネルは汎用性が高く、様々な場面で用いられている。
例えば、耐腐食性の高さを利用して洗面台若しくは浴室の棚の材質に使われたり、軽量という特性を活かして車両用の内装パネルに使われたりする。
また、パネルの剛性を構造的な面から高めるために、パネルを構成する前面板と後面板との間の空間に、格子状に補強板(いわゆるインナーリブ)を形成したインナーリブ付きのパネルも開発されている(特許文献1参照)。
特開昭56−120319号公報 特開昭57−118965号公報 特開平10−16079号公報
ところで、上述したインナーリブ付きパネルをブロー成形により形成する場合、長手方向に形成されたインナーリブ(以下「縦インナーリブ」という)と縦インナーリブに対して垂直な方向に形成されたインナーリブ(以下「横インナーリブ」という)を十字状に連結させて形成すると交差部において、パリソンが過度に引き伸ばされて薄肉となり、パリソンの破れまたは逆に剛性の低下を招くこととなり、さらには成形時の吹き込みエアの流通を阻害して成形不良の原因となる(特許文献1の第6図を参照)。
このため、縦インナーリブと横インナーリブを連結させずに交差部において所定の間隔をおいた状態で形成することが考えられる(特許文献2の第4図を参照)。
しかしながら、縦インナーリブと横インナーリブを連結させずに間隔を設けた場合には、曲げ方向の剛性が不十分となりインナーリブによる補強効果を十分に得ることができない。
このため、交差部分をスライド金型を用いずに成形し、凹状のリブ(取付穴)とすることもなされているが、凹状のリブの付け根が引き伸ばされて薄肉となることは解消されておらず、さらに交差部において吹き込みエア(加圧流体)の流通が阻害されるため成形不良の要因となり、複数の交差部を設ける場合には成形自体が困難となる(特許文献3の第3図を参照)。
本発明は以上の課題を解決すべく開発されたものである。
すなわち、縦インナーリブと横インナーリブとの間に間隔が形成されてなく、縦インナーリブと横インナーリブとが一連となって一体化している曲げ剛性の高い中空二重壁構造体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、以上のような課題背景をもとに鋭意研究を重ねた結果、縦インナーリブと横インナーリブとを交差部において連結させるとともに、交差部の近傍に空部を形成することで上記の課題を解決できることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成させたものである。
すなわち本発明は、()、第一金型及び第二金型からなる分割金型を用いた中空二重壁構造体の製造方法であって、前記第一金型がパリソンを引き伸ばすためのスライドコアを備え、前記スライドコアは縦インナーリブを形成する縦スライドコアと、該縦スライドコアと垂直な方向に配置され横インナーリブを形成する横スライドコアと、縦スライドコア及び横スライドコアと間隔を空けて配置され交差部を形成する十字スライドコアとからなり、前記分割金型の間に、溶融状態にある熱可塑性樹脂のパリソンを配置し、パリソンを配置した後、分割金型を閉じる工程と、前記第一金型のキャビティ面から突出させたスライドコアによって、一方のパリソンの壁面を引き伸ばして、対向する他方のパリソンの壁面に衝合させ融着させる工程と、パリソンの壁面の一部を融着させた後、スライドコアをパリソンから引き抜いて、金型のキャビティ面まで後退させる工程と、スライドコアを後退させた後、パリソン内に加圧流体を導入する工程とからなり、縦インナーリブ、横インナーリブ及び交差部を形成すると共に、該交差部と、縦インナーリブ及び横インナーリブとの間に、空部を形成する中空二重壁構造体の製造方法に存する。
また本発明は、()、厚さが25mm以下の中空二重壁構造体を製造する際に用いられる上記(1)記載の中空二重壁構造体の製造方法に存する。
また本発明は、()、分割金型を閉じる前に、前記第二金型とパリソンとの間に表皮材を配置することにより、表皮材の裏面をパリソンの壁面に一体に貼着させる上記()記載の中空二重壁構造体の製造方法に存する。
また本発明は、()、第一金型及び第二金型からなる分割金型を用いた中空二重壁構造体の製造方法であって、前記第一金型及び前記第二金型がパリソンを引き伸ばすためのスライドコアを備え、前記スライドコアは縦インナーリブを形成する縦スライドコアと、該縦スライドコアと垂直な方向に配置され横インナーリブを形成する横スライドコアと、縦スライドコア及び横スライドコアと間隔を空けて配置され交差部を形成する十字スライドコアとからなり、前記分割金型の間に、溶融状態にある熱可塑性樹脂のパリソンを配置し、パリソンを配置した後、分割金型を閉じる工程と、前記第一金型及び第二金型のキャビティ面からスライドコアを突出させ、第一金型のスライドコアによって内側に引き伸ばされたパリソンの壁面と、第二金型のスライドコアによって内側に引き伸ばされたパリソンの壁面と、が衝合融着する工程と、パリソンの壁面の一部を融着させた後、両スライドコアをパリソンから引き抜き金型のキャビティ面まで後退させる工程と、スライドコアを後退させた後、パリソン内に加圧流体を導入する工程とからなり、縦インナーリブ、横インナーリブ及び交差部を形成する と共に、該交差部と、縦インナーリブ及び横インナーリブとの間に、空部を形成する中空二重壁構造体の製造方法に存する。
また本発明は、()、厚さが25mmを超える中空二重壁構造体を製造する際に用いられる上記()記載の中空二重壁構造体の製造方法に存する。
また本発明は、()、前記スライドコアと金型キャビティとの隙間から真空吸引を行う上記()又は()記載の中空二重壁構造体の製造方法に存する。
なお、本発明の目的に添ったものであれば上記の発明を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
本発明の中空二重壁構造体に形成されるインナーリブは、構造体のある一方向に向かって形成される縦インナーリブと、縦インナーリブに直行して形成される横インナーリブと、縦インナーリブと横インナーリブとの交点に当たる場所に形成される十字状の交差部と、で構成されており、各インナーリブ同士は結合して一体化している。
そのため、本発明のインナーリブを有する中空二重壁構造体は、従来のインナーリブを有する中空二重壁構造体と比較して高い曲げ剛性を有する。
また、交差部近傍に空部が形成されていることにより、空部付近が肉厚となり、補強される。
また、ブロー成形時において、空部を介してエアを全体に行き渡らせることができる。
〔第1の実施形態〕
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は本実施形態の中空二重壁構造体を示すための断面斜視図である。
また、図2は図1のA−A断面図である。
本実施形態の中空二重壁構造体Aは熱可塑性樹脂で成形される板状の部材で、その内部に形成された空間に特殊なリブ構造を有するものであって、その加工性の高さから汎用的な利用が可能である。
例えば、車両用内装パネル(いわゆるデッキボード)や、OA機器の筺体、輸送・搬送用のパレット等に用いることが可能である。
本実施形態の中空二重壁構造体Aを、車両用内装パネルとして用いた場合、中空二重壁構造体の第一壁または第二壁に、不織布等の装飾材7を貼り付けることが好ましい。
装飾材7を貼り付けることで、車両用内装パネルの外観が向上すると共に、車両用内装パネルの表面に傷等がつき難くなる。
さて、図1に示すように、中空二重壁構造体Aにおいては、第一壁21と第二壁22とは所定の距離離間した状態にあるので、第一壁21と第二壁22との間には空間Vが形成される。
空間Vが形成されることにより、中空二重壁構造体Aはその大きさに比して非常に軽量となっている。
また、空間Vにはインナーリブ1が第一壁21と第二壁22とを連結するように形成されている。
インナーリブ1は空間Vに交差状に形成されており、そのため、中空二重壁構造体Aは矢印X方向の曲げに対して、また矢印Y方向の曲げに対して高い剛性を示す。
インナーリブ1は、縦インナーリブ11と、横インナーリブ12と、交差部13と、で構成されており、縦インナーリブ11と横インナーリブ12とは直行して形成される。
交差部13は縦インナーリブ11と横インナーリブ12とが交差する位置に形成される十字状の中実なリブで、縦インナーリブ11と横インナーリブ12とは、この交差部13を介して一連となり一体化している。
そのため、インナーリブ1は従来の縦インナーリブ及び横インナーリブとは異なり、本実施形態の縦インナーリブ11と横インナーリブ12との間に切れ目がない、連続的で中実なリブとなっている。
その結果、中空二重壁構造体Aの剛性は、従来のインナーリブ付きの中空二重壁構造体の剛性よりも高い。
交差部13の近傍、すなわち縦インナーリブ11と第二壁22との接合部の近傍、及び横インナーリブと第二壁22との接合部の近傍には略半円形の空部Hが形成されている。
この空部Hが形成される理由は後述するが、空部Hが形成されることで、中空二重壁構造体Aをダイレクトブロー成形で製造するにあたり、この空部Hを介して加圧流体(吹き込みエア)がパリソンに行き渡るため、一つのエアの吹き込み口だけで製造することが可能になる。
具体的には、空間Vは縦インナーリブ11と横インナーリブ12によりそれぞれ4辺を囲われた複数の小空間(セル)に仕切られるが、交差部13の近傍に空部Hが形成されているため、セル毎に吹き込み手段を設けることなく加圧流体を全体に流通させることができる。
また、縦インナーリブ11及び横インナーリブ12において、空部Hの上の部分の肉厚は、それ以外の部分の肉厚に比べて厚くなっている(図2の囲い部分Q参照)。
このようにインナーリブ1に厚い部分が形成されるため、インナーリブ1は従来のように厚い部分がないインナーリブよりも強度が高くなる。
なお、第一壁21の表面にはインナーリブ1に対応した折れ肉線5が格子状に形成されるが、後述するスライドコアに対応する位置に浅い凹溝である縦スライドコア痕6A1、十字スライドコア痕6A2、及び横スライドコア痕6A3を形成することで、この折れ肉線5の位置が各スライドコア痕の底に沈む。
そのため、折れ肉線5が表面に現れず、中空二重壁構造体Aの平滑性が低下するのを防止することができる。
各スライドコア痕は、スライドコアを後退させた際に、金型のキャビティ面より若干突出させた状態で成形を行なうことにより形成される。
次に、本実施形態の中空二重壁構造体の製造方法について、ダイレクトブロー成形による製造方法を例として説明する。
本実施形態の中空二重壁構造体をブロー成形によって製造する場合、インナーリブは分割金型に設けられたスライドコアを、加圧流体を導入する前のパリソンに突き入れ(押入れ)、パリソンの一部をパリソンの内側へと引き伸ばすことにより形成される。
具体的な製造方法は次の通りである。
第一の工程(分割金型を閉じる工程)として、図示しないダイから押し出されたパリソンPをプリブローした状態で分割金型によって挟み込む、いわゆる型締めを行う(図3(A)、図4(A)参照)。
この実施の態様による分割金型は、中空二重壁構造体の第一壁と第二壁との離間距離が25mm以下になるように、設計されている。
第一壁と第二壁との離間距離が25mmを超えると、後述するスライドコアのパリソンPへの突出を行った際に、パリソンPが引き伸ばされて破れる恐れがある。
一方の分割金型3Aは縦インナーリブ11、横インナーリブ12及び交差部13を作るためのスライドコア3aを備えている。
スライドコア3aはキャビティ面から突出される金型の一部である板状部材で、通常の状態においては、スライドコア3aの端面と、キャビティ面とが面一になるように分割金型内に収納されている。
第二の工程(融着させる工程)として、パリソンPが固化する前に、スライドコア3aをパリソンPの一方の壁面に向かって突出させて、パリソンPの一部(以下、「伸出部」という)を引き伸ばし、伸出部を他方の壁面に衝合させ、融着させる(図3(B)、図4(B)参照)。
第三の工程(スライドコアを後退させる工程)として、パリソンPに向かって突出させていたスライドコア3aを、その端面がキャビティ面と同一面となる位置まで後退させる。
スライドコア3aがパリソンPから引き抜かれると、スライドコア3aが突き入れられていた部分には凹部4が形成される(図6(A)参照)。
ここで、スライドコア3aについて説明する。
図5は、スライドコアの構成を示す斜視図である。
図5に示すように、スライドコア3aは縦スライドコア3A1と、該縦スライドコア3A1と直行する方向に形成される横スライドコア3A3と、十字スライドコア3A2と、により構成されている。
縦スライドコア3A1は縦インナーリブ11を形成するため、十字スライドコア3A2は交差部13を形成するため、そして横スライドコア3A3は横インナーリブ12を形成するためのものである。
縦スライドコア3A1及び十字スライドコア3A2は、一直線上に所定の間隔を空けて交互に配置されており、また同様に、横スライドコア3A3及び十字スライドコア3A2も、一直線上に所定の間隔を空けて交互に配置されている。
縦スライドコア3A1及び横スライドコア3A3の長さは、20〜125mm程度であることが好ましい。
また、縦スライドコア3A1及び横スライドコア3A3の幅は、1〜7mm程度あることが好ましい。
十字スライドコア3A2の4本の腕の長さは、全て等しいことが好ましく、更にこれらの腕の長さは2〜10mm程度あることが好ましい。
なお、縦スライドコア3A1と十字スライドコア3A2との間隔d1は、中空二重壁構造体の厚みをLとすると、d1<Lであることが好ましい。
d1≧Lであると、縦インナーリブ11と交差部13とが確実に結合されていない状態で中空二重壁構造体Aが成形される恐れがある。
また同様に、横スライドコア3A3と十字スライドコア3A2との間隔d2も、上記と同様の理由によりd2<Lであることが好ましい。
さらに、交差部13が形成される際の間隔、すなわち十字スライドコア3A2が形成される間隔(形成ピッチ)d3は、L<d3<5Lであることが好ましく、さらに好ましくは2L≦d3≦3Lである。
形成ピッチd3がLよりも短い場合、十字スライドコア3A2同士の間隔が詰まり過ぎて、パリソンが過度に引き伸ばされる状態となるため、成形不良が生じ易くなる。
また、形成ピッチd3が5Lよりも長い場合、中空二重壁構造体Aに形成される縦インナーリブ11及び横インナーリブ12の本数が少なくなり、中空二重壁構造体Aの剛性が十分なものでなくなる。
三つのスライドコアの端面は同一平面上にあり、その状態を維持したまま、一体となって平行移動する。
ただし、縦インナーリブ11と横インナーリブ12とが連結した状態で、且つ交差部13近傍の第二壁側に空部Hが形成された状態であれば、交差部13の形状を調節する目的で十字スライドコア3A2の高さを低く、または十字スライドコア3A2を無くすことも可能である。
この場合、交差部13は第二壁22の内面に溶着されていない状態となるが、十字状の折れ肉となって縦インナーリブ11と横インナーリブ12を連結し、かつ第二壁22の内面との間に比較的大きな空部Hが形成されることとなる。
縦スライドコア3A1と十字スライドコア3A2とは所定の間隔を空けて配置されているため、図4(B)に示すように、パリソンPのうち、縦スライドコア3A1または十字スライドコア3A2のいずれにも接触しない部分は、スライドコア3aによって直接的に成形されないためにつられて引き伸ばされる。
しかし、十分には引き伸ばされずに弛んだ状態となり、第二壁22の内面に溶着されずにその後の加圧エアの吹き込みにより折り畳まれて所謂折れ肉となってインナーリブの一部を形成する。
その結果、縦スライドコア3A1によって引き伸ばされた部分と、十字スライドコア3A2によって引き伸ばされた部分との間には空部Hが形成される。
そして空部Hから上の第一壁側のパリソンPの壁肉は、それ以外のパリソンPの壁肉よりも厚くなる。
そのため製品となった状態では、縦インナーリブ11及び横インナーリブ12における空部Hの上の部分の肉厚(図2の破線による囲い部分Q参照)は、それ以外の部分の肉厚に比べて厚くなるのである。
当然、大きい肉厚の部分は他の部分と比べて剛性が高くなる。
同様に、十字スライドコア3A2、及び図示しない横スライドコア3A3も所定の間隔を空けて配置されているため、上記と同じ理由により、横スライドコア3A3によって引き伸ばされた部分と、十字スライドコア3A2によって引き伸ばされた部分との間に空部Hが形成される。
説明を中空二重壁構造体の製造方法へと戻すが、製造方法の第四の工程(加圧流体を導入する工程)として、パリソンPに突き刺された吹き込み口(ブローピン)から加圧流体を導入して、パリソンPを分割金型の形状に沿って膨張させる。
このとき、空部Hが形成されているので、吹き込み口を少なくとも一つ設ければ加圧流体は空部Hを通ってパリソンPの隅々にまで行き渡る。
尚、上述の通り縦インナーリブ11、横インナーリブ12および交差部13が連続的に形成されることにより、連続した一直線状の折れ肉線5が交差部13の根本を交点にして交差状に、第一壁21及び第二壁22の表面に形成される。
加圧流体がパリソンPに導入されると、図6(B)に示すように、ブロー圧によって凹部4はパリソンが折れ肉状となって閉じられて融着し中実となり、インナーリブ1が形成される。
より具体的に述べると、縦スライドコア3A1によって形成された凹部4は縦インナーリブ11になり、十字スライドコア3A2によって形成された凹部4は交差部13になり、横スライドコア3A3によって形成された凹部4は横インナーリブ12になる。
加圧流体の導入後、分割金型を冷却して、縦インナーリブ11、横インナーリブ12、及び交差部13を硬化させ、これらを完全に一体化させる。
各インナーリブが完全に硬化したら、分割金型3を開いて、中空二重壁構造体Aを取り出す。
これで中空二重壁構造体の製造が完了する。
なお第二の工程において、スライドコア3aを突出させる際、金型キャビティとスライドコア3aの摺動部分の隙間から金型キャビティとパリソンPとの間の空気を真空吸引することが好ましい。
真空吸引することで、スライドコア3aの根元部分にパリソンを引き寄せることができる。
このことにより、形成されたインナーリブの根元が薄肉になることを防止することができる。
(第2の実施形態)
ところで、中空二重壁構造体の使用態様によっては第一壁と第二壁との離間距離、すなわち厚みが25mmを超えるものが必要となることがある。
このような厚みが大きいものを製造する場合、第1の実施形態で説明したような製造方法を用いると、スライドコアの突出距離が長くなり、伸出部が薄くなり破れる恐れが生じる。
そのため、スライドコアを各金型から同時に突き出す方法を採用する。
このスライドコアを同時に突き出す中空二重壁構造体の製造方法を、ダイレクトブロー成形を使って説明する。
この場合、上述した第1の実施形態における製造方法との違いは、分割金型を構成する第一金型及び第二金型が共にスライドコアを備えているという点である。
第一の工程(分割金型を閉じる工程)として、パリソンPを分割金型3の間に配置した後、プリブローしながら型閉めを行う(図7(A)参照)。
なお、ここで第1の実施形態で述べたように、スライドコアと、金型キャビティとの隙間から真空吸引を行うことで、最もブロー比が高くなる伸出部の根元部分にパリソンを引き寄せることができ、パリソンPの破裂による成形不良を防止し、さらには形成されたインナーリブの根元が薄肉になることを防止することができる。
第二の工程(融着させる工程)として、パリソンPが固化する前に、第一金型3Aに設けられたスライドコア3aをパリソンPの一方の壁面に向かって、また同時に第二金型3Bに設けられたスライドコア3bをパリソンPの他方の壁面に向かってゆっくりと突出させる。
そして、スライドコア3a(縦スライドコア3A1、横スライドコア3A3、十字スライドコア3A2)により引き伸ばされた部分(以下、「上伸出部」という)と、スライドコア3b(縦スライドコア3B1、横スライドコア3B3、十字スライドコア3B2)により引き伸ばされた部分(以下、「下伸出部」という)とが空間Vの略中間位置で互いに突き合わされて衝合融着するまで、スライドコア3a及びスライドコア3bを移動させる(図7(B)参照)。
このとき、上伸出部と下伸出部との境界領域において、縦スライドコア3A1と十字スライドコア3A2との間、及び横スライドコア3A3と十字スライドコア3A2との間のパリソンPは融着されずに折れ肉状となる。
その結果、縦スライドコア3A1と十字スライドコア3A2との間に空部Hが形成され、横スライドコア3A3と十字スライドコア3A2との間にも空部Hが形成される。
このため、形成されるインナーリブ1は交差部において過度に引き伸ばされることがなく、薄肉による破裂が好適に防止される。
そして空部Hから上伸出部側に、他の部分より壁肉の厚い部分が生じ、同様に空部Hから下伸出部側に他の部分より壁肉の厚い部分が生じる。
そのため製品となった状態では、縦インナーリブ11及び横インナーリブ12における空部Hの上下の部分の壁肉(図11の破線による囲い部分Q参照)は、それ以外の部分の壁肉に比べて厚くなる。
当然、大きい肉厚の部分は剛性が高くなる。
なお、このとき用いられる第一金型3A及び第二金型3Bに備えられたスライドコアも第1の実施形態と同様に、縦スライドコア、横スライドコア、及び十字スライドコアで構成されており、各スライドコアの配置の仕方も同様である。
すなわち、第一金型3Aが備える縦スライドコア3A1及び十字スライドコア3A2は、一直線上に所定の間隔を空けて交互に配置されており、横スライドコア3A3及び十字スライドコア3A2も、一直線上に所定の間隔を空けて交互に配置されている。
そして、第二金型3Bが備える縦スライドコア3B1及び十字スライドコア3B2は、一直線上に所定の間隔を空けて交互に配置されており、横スライドコア3B3及び十字スライドコア3B2も、一直線上に所定の間隔を空けて交互に配置されている(図8参照)。
そして、縦スライドコア3A1と十字スライドコア3A2との間隔d1は、中空二重壁構造体の厚みをLとした場合、d1<Lであることが好ましく、横スライドコア3A3と十字スライドコア3A2との間隔d2はd2<Lであることが好ましい。
十字スライドコア3A2の形成ピッチd3についても、h<d3<5Lであることが好ましく、さらに好ましくは2L≦d3≦3Lである。
また同様に、縦スライドコア3B1と十字スライドコア3B2との間隔d1は、中空二重壁構造体の厚みをLとした場合、d1<Lであることが好ましく、横スライドコア3B3と十字スライドコア3B2との間隔d2はd2<Lであることが好ましい。
十字スライドコア3B2の形成ピッチd3についても、h<d3<5Lであることが好ましく、さらに好ましくは2L≦d3≦3Lである。
第三の工程(スライドコアを後退させる工程)として、パリソンPに向かって突出させたスライドコア3a及びスライドコア3bを、それぞれの端面がキャビティ面と同一面となる位置まで後退させる(図7(C)参照)。
スライドコア3a及びスライドコア3bがパリソンPから引き抜かれると、スライドコア3a及びスライドコア3bが突き入れられていた部分には凹部4が形成される(図9(A)参照)。
第四の工程(加圧流体を導入する工程)として、パリソンPに突き刺された吹き込み口(ブローピン)から加圧流体を導入して、パリソンPを分割金型の形状に沿って膨張させる。
このとき、空部Hが形成されているので、吹き込み口を少なくとも一つ設ければ加圧流体は空部Hを通ってパリソンPの隅々にまで行き渡る。
加圧流体がパリソンPに導入されると、図9(b)に示すように、ブロー圧によって凹部4は閉じられて融着し、中実となり両スライドコアによって形成された凹部4はインナーリブ1となる。
加圧流体の導入後、分割金型3を冷却して、縦インナーリブ11、横インナーリブ12、及び交差部13を硬化させ、これらを完全に一体化させる。各インナーリブが硬化したら、分割金型3を開いて、中空二重壁構造体Aを取り出す。
以上により、中空二重壁構造体の製造が完了する。
図10は、この製造方法によって製造された中空二重壁構造体の断面斜視図であり、図11は、図10のA−A断面図である。
このように、パリソンの両側から(すなわち、各金型から)スライドコアを突出させることで、スライドコアの移動距離を、中空二重壁構造体の厚みの半分の長さに抑えることができる。
その結果、インナーリブを形成する際に、パリソンを過度に引き伸ばす必要が無くなり、パリソンが破れる可能性を極力排除することができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく種々の変形例が可能である。
例えば、本発明の中空二重壁構造体に形成されるインナーリブの本数、厚さ、または交差部の数等は、その中空二重壁構造体の使用目的によって、適宜設定される。
本発明の中空二重壁構造体を車両用内装パネル(1000mm×500mm)に用いた場合、縦横に形成される交差部の数は50〜500個、形成されるインナーリブの本数は縦横それぞれ5〜30本、さらにその厚みは1〜5mm程度に確保されていれば十分といえる。
ここで、参考までに図12に本発明の中空二重壁構造体を用いた車両用内層パネルの使用態様を示す。
また、本発明の中空二重壁構造体の製造方法を、ダイレクトブロー成形を例に説明したが、本発明の中空二重壁構造体はシートブロー成形でも製造可能である。
また、製造された中空二重壁構造体の中に強化部材(いわゆるリンフォース)を配設することで、剛性をさらに高めることができる。
図1は、第1の実施形態の中空二重壁構造体を示すための断面斜視図である。 図2は、図1のA−A断面図である。 図3は、本発明に係る中空二重壁構造体の成形工程を示す断面図である。 図4は、図3の拡大図であり、(A)は図3(A)のA−A断面図、(B)は図3(B)のB−B断面図、(C)は図3(C)C−Cの断面図である。 図5は、スライドコアの構成を示す説明図である。 図6は、インナーリブが成形される過程を示す断面図である。 図7(A)は、第2の実施形態の中空二重壁構造体の成形工程を示す断面図である。 図7(B)は、第2の実施形態の中空二重壁構造体の成形工程を示す断面図である。 図7(C)は、第2の実施形態の中空二重壁構造体の成形工程を示す断面図である。 図8は、第2の実施形態におけるスライドコアの構成を示す説明図である。 図9は、スライドコアをパリソンから引き抜いたときの状態を示す断面図である。 図10は、第2の実施形態の中空二重壁構造体を示すための断面斜視図である。 図11は、図10のA−A断面図である。 図12は、本発明の中空二重壁構造体を用いた車両用内装パネルの使用態様を示す説明図である。
符号の説明
1・・・インナーリブ
11・・・縦インナーリブ
12・・・横インナーリブ
13・・・交差部
21・・・第一壁
22・・・第二壁
3・・・分割金型
3a・・・スライドコア
3b・・・スライドコア
3A・・・分割金型
3B・・・分割金型
3A1・・・縦スライドコア
3A2・・・十字スライドコア
3A3・・・横スライドコア
3B1・・・縦スライドコア
3B2・・・十字スライドコア
3B3・・・横スライドコア
4・・・凹部
5・・・折れ肉線
6A1・・・縦スライドコア痕
6A2・・・十字スライドコア痕
6A3・・・横スライドコア痕
7・・・装飾材
A・・・中空二重壁構造体
H・・・空部
P・・・パリソン
V・・・空間

Claims (6)

  1. 第一金型及び第二金型からなる分割金型を用いた中空二重壁構造体の製造方法であって、
    前記第一金型がパリソンを引き伸ばすためのスライドコアを備え、
    前記スライドコアは縦インナーリブを形成する縦スライドコアと、該縦スライドコアと垂直な方向に配置され横インナーリブを形成する横スライドコアと、縦スライドコア及び横スライドコアと間隔を空けて配置され交差部を形成する十字スライドコアとからなり、
    前記分割金型の間に、溶融状態にある熱可塑性樹脂のパリソンを配置し、パリソンを配置した後、分割金型を閉じる工程と、
    前記第一金型のキャビティ面から突出させたスライドコアによって、一方のパリソンの壁面を引き伸ばして、対向する他方のパリソンの壁面に衝合させ融着させる工程と、
    パリソンの壁面の一部を融着させた後、スライドコアをパリソンから引き抜いて、金型のキャビティ面まで後退させる工程と、
    スライドコアを後退させた後、パリソン内に加圧流体を導入する工程とからなり、
    縦インナーリブ、横インナーリブ及び交差部を形成すると共に、該交差部と、縦インナーリブ及び横インナーリブとの間に、空部を形成することを特徴とする中空二重壁構造体の製造方法。
  2. 厚さが25mm以下の中空二重壁構造体を製造する際に用いられることを特徴とする、請求項記載の中空二重壁構造体の製造方法。
  3. 分割金型を閉じる前に、前記第二金型とパリソンとの間に表皮材を配置することにより、表皮材の裏面をパリソンの壁面に一体に貼着させることを特徴とする、請求項記載の中空二重壁構造体の製造方法。
  4. 第一金型及び第二金型からなる分割金型を用いた中空二重壁構造体の製造方法であって、
    前記第一金型及び前記第二金型がパリソンを引き伸ばすためのスライドコアを備え、
    前記スライドコアは縦インナーリブを形成する縦スライドコアと、該縦スライドコアと垂直な方向に配置され横インナーリブを形成する横スライドコアと、縦スライドコア及び横スライドコアと間隔を空けて配置され交差部を形成する十字スライドコアとからなり、
    前記分割金型の間に、溶融状態にある熱可塑性樹脂のパリソンを配置し、パリソンを配置した後、分割金型を閉じる工程と、
    前記第一金型及び第二金型のキャビティ面からスライドコアを突出させ、第一金型のスライドコアによって内側に引き伸ばされたパリソンの壁面と、第二金型のスライドコアによって内側に引き伸ばされたパリソンの壁面と、が衝合融着する工程と、
    パリソンの壁面の一部を融着させた後、両スライドコアをパリソンから引き抜き金型のキャビティ面まで後退させる工程と、
    スライドコアを後退させた後、パリソン内に加圧流体を導入する工程とからなり、
    縦インナーリブ、横インナーリブ及び交差部を形成すると共に、該交差部と、縦インナーリブ及び横インナーリブとの間に、空部を形成することを特徴とする中空二重壁構造体の製造方法。
  5. 厚さが25mmを超える中空二重壁構造体を製造する際に用いられることを特徴とする、請求項記載の中空二重壁構造体の製造方法。
  6. 前記スライドコアと金型キャビティとの隙間から真空吸引を行うことを特徴とする、請求項又は記載の中空二重壁構造体の製造方法。
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