図1及び図2は、本発明による直進案内機構を備えたズームレンズ鏡筒ZLの一実施形態を示している。このズームレンズ鏡筒ZLの撮像光学系は、物体(被写体)側から順に第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ25及び撮像素子26を備えている。以下の説明中で光軸方向とは、この撮影光学系の光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。
ローパスフィルタ25と撮像素子26はユニット化されて撮像素子ホルダ23に固定され、撮像素子ホルダ23がハウジング(固定環)22の後部に固定される。
第3レンズ群LG3を保持する3群レンズ枠51は、ハウジング22に対して光軸方向に移動可能に支持されていて、AFモータ160(図3)によって駆動される。
ハウジング22は光軸Oを略中心とする筒状部22aを有し、該筒状部22aの内側には、図3に示すように、可動レンズ(カム環)ブロック110が移動可能に支持されている。可動レンズ(カム環)ブロック110は、図4に示すように、2群用直進案内環10、カム環(回転環)11、第2繰出筒(別の環状部材、光学要素の保持部材)12、第1繰出筒13、カム環結合環14及び2群レンズブロック80を含んでいる。
可動レンズ(カム環)ブロック110は、ズームモータ150によって駆動制御される。図3に示すように、ウォームギヤ103を正逆に回転駆動させるズームモータ150がハウジング22に支持され、ハウジング22と撮像素子ホルダ23の間には、ズームモータ150の駆動力を伝達するズームギヤ列120が支持されている。図11Aないし図11Dに示すように、ズームギヤ列120は、ウォームギヤ103に噛合する第1ギヤ104から順に、第2ギヤ105、第3ギヤ106を介してカム環駆動ギヤ(回転環駆動ギヤ)28に回転伝達を行う。ウォームギヤ103の回転軸は光軸Oに対して略直交しているが、次の第1ギヤ104で回転が直交変換して伝えられ、該第1ギヤ104からカム環駆動ギヤ28までのズームギヤ列120の各ギヤは、光軸Oと略平行な回転軸で回転するように支持されている。図3に示すように、第1ギヤ104、第2ギヤ105及び第3ギヤ106は歯数の異なる大径ギヤと小径ギヤを同軸上に有するダブルギヤであり、第1ギヤ104の大径ギヤ104aがウォームギヤ103に噛合し、第1ギヤ104の小径ギヤ104bが第2ギヤ105の大径ギヤ105aに噛合し、第2ギヤ105の小径ギヤ105bが第3ギヤ106の大径ギヤ106aに噛合する。さらにカム環駆動ギヤ28も、歯数の異なる長ギヤ部28aと大径ギヤ部28bを同軸上に一体形成したダブルギヤとなっており、大径ギヤ部28bは長ギヤ部28aの光軸方向後端に位置し、該長ギヤ部28aよりも大径である。第3ギヤ106の小径ギヤ106bが大径ギヤ部28bに対して噛合して、ズームモータ150の回転駆動力がカム環駆動ギヤ28に伝達される。長ギヤ部28aは、後述するカム環11の光軸方向移動に対応させるべく光軸方向に長く形成されており、ハウジング22には、この長ギヤ部28aが収納される長ギヤ収納部22b(図3、図7)が形成されている。長ギヤ収納部22bの前端部には軸突起22c(図1、図2及び図7)が突設され、撮像素子ホルダ23には該軸突起22cの後方に位置する軸突起23a(図1、図2及び図3)が突設され、この前後の軸突起22c、23aによってカム環駆動ギヤ28の前端部と後端部に形成した軸孔が支持されている。軸突起22c、23aによる軸支状態で、長ギヤ部28aが筒状部22aの内側に露出する。
図5や図9に示すように、カム環11は、光軸Oを略中心とする筒状部11aと、筒状部11aの後端から外径方向へ突出する後端フランジ11bを有している。後端フランジ11bには、ハウジング22の筒状部22aの内周面に形成した3つのカム環ガイド溝(回転環支持機構)22dに対して摺動可能に嵌る3つのガイド突起(回転環支持機構)11cが突設されている。図3及び図7に示すように、カム環ガイド溝22dは、光軸Oに対して傾斜するリード溝部22d1と、該リード溝部22d1の前端部に接続する光軸Oを中心とした環状溝部22d2とを有している。後端フランジ11b上にはさらに、ガイド突起11cと重ならない後端位置に周面ギヤ11dが形成され、この周面ギヤ11dに対してカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aが噛合する。ズームギヤ列120の最終ギヤであるカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aから周面ギヤ11dを介してズームモータ150の回転駆動力が伝達されると、カム環11は、ズームレンズ鏡筒ZLの収納状態(図2)からズーム撮影領域(図1)までの間は、ガイド突起11cがリード溝部22d1の案内を受けて回転しながら光軸方向に移動し、ズーム撮影領域(図1)では、ガイド突起11cが環状溝部22d2の案内を受けて光軸方向には定位置で回転される。カム環11の後端には大径ギヤ収容部11eが形成されている(図7)。大径ギヤ収容部11eは、周面ギヤ11dの一部の後端(後面)位置を前方にシフトさせるように後端フランジ11bの後端の一部を切り欠いて形成した凹部である。周面ギヤ11dのうち大径ギヤ収容部11eの前方に位置する領域は、周面ギヤ11dの他の領域に比べて前方にオフセットして形成されたオフセットギヤ部11d1となっている。
第1繰出筒13と2群用直進案内環10は、カム環11(カム環11とカム環結合環14の結合体)の前後に位置している。第1繰出筒13は、光軸Oを中心とする筒状部13aの後端部から外径方向に突出する直進案内突起13bを、直進案内溝22eに対して摺動可能に係合させることで、ハウジング22に対して光軸方向に相対移動可能に直進案内されている。2群用直進案内環10も同様に、ハウジング22の直進案内溝22eに対して直進案内突起10aを摺動可能に係合させて光軸方向に直進案内されている。2群用直進案内環10は、カム環11の後端部付近の内周面に形成した回転案内爪11fと係合する回転案内爪10bを有し、この爪係合によって、カム環11に対して相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように結合(バヨネット結合)されている。第1繰出筒13は、カム環11に結合されたカム環結合環14の外周面に設けた回転案内爪14aと、筒状部13aの後端部付近の内周面に形成した回転案内爪13cの摺接関係によって、カム環11に対して相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように結合(バヨネット結合)されている。つまり、2群用直進案内環10、カム環11及び第1繰出筒13の3つの部材は、光軸方向には共に移動し、ハウジング22に対して光軸方向に直進案内された2群用直進案内環10と第1繰出筒13に対してカム環11が相対回転可能という関係になっている。
2群用直進案内環10は、光軸方向前方に突出する3つの直進案内バー10cを介して、2群レンズブロック80(図4)を光軸方向へ相対移動可能に直進案内している。2群レンズブロック80は、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ保持枠2(図1、図2)を内部に支持した2群レンズ移動枠(光学要素の保持部材)8を有し、この2群レンズ移動枠8に形成した光軸方向の直進案内溝8aに対して直進案内バー10cが摺動可能に係合することで直進案内される。2群レンズ移動枠8には、2群レンズ保持枠2の前後にそれぞれ位置させて、可変開口絞機構70とシャッタブロック100がそれぞれ光軸方向に可動に支持されている(図1、図2)。
第1レンズ群LG1を保持する第2繰出筒12には、図6に示すように、筒状部12aから後方に突出する3つ(図6には2つ表れている)の外側直進案内キー12bと、筒状部12aの内方に支持された3つの内側直進案内キー12cが設けられている。外側直進案内キー12bは第1繰出筒13の筒状部13aの内周面に形成した直進案内溝13d(図4)に係合可能で、内側直進案内キー12cは2群レンズ移動枠8の内周面に形成した直進案内溝8b(図4)に係合可能である。これら直進案内溝13d、8bと直進案内キー12b、12cの摺動関係によって、第2繰出筒12はハウジング22に対して光軸方向に相対移動可能に直進案内されている。
第2繰出筒12には、外側直進案内キー12bの後方にカムフォロア支持座12dが形成されている(図6)。カムフォロア支持座12dは周方向に位置を異ならせて3つ設けられており、それぞれのカムフォロア支持座12dは内径方向に突出する1群用カムフォロアCF1を支持し、この3つの1群用カムフォロアCF1はそれぞれ、カム環11の筒状部11aの外周面に形成した1群制御カム溝CG1に摺動可能に係合している。第2繰出筒12は第1繰出筒13と2群レンズ移動枠8を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、1群用カムフォロアCF1が1群制御カム溝CG1の案内を受けて第2繰出筒12が光軸方向へ所定の軌跡で移動される。これにより第1レンズ群LG1の光軸方向移動が制御される。図9に示すR、W、Tはそれぞれ、ズームレンズ鏡筒ZLの収納状態(図2)、ワイド端(図1の上半)、テレ端(図1の下半)における、1群制御カム溝CG1の軌跡上の1群用カムフォロアCF1の位置を示している。また、同図のCG1-Pは、1群制御カム溝CG1における収納用位置Rからワイド端位置Wまでの収納制御領域であり、同じくCG1-Zは、ワイド端位置Wからテレ端位置Tまでのズーム制御領域である。1群制御カム溝CG1はさらに、テレ端位置Tの先に組立分解領域CG1-Xを有している。組立分解領域CG1-Xの端部はカム環11の筒状部11aの前端面に開口されており、1群用カムフォロアCF1を光軸方向に挿脱させることができる。
カム環11の内周面に形成した2群制御カム溝CG2に対し、2群レンズ移動枠8の外周面に設けた2群用カムフォロアCF2が係合している。2群レンズ移動枠8は2群用直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群制御カム溝CG2の形状に従って、2群レンズ移動枠8すなわち第2レンズ群LG2が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
2群レンズ移動枠8と第2繰出筒12の間には、圧縮ばねからなる群間付勢ばね27が挿入されており、2群レンズ移動枠8と第2繰出筒12は互いに離間する方向に付勢されている。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒ZLは次のように動作する。図2に示す鏡筒収納状態では、図1に示す撮影状態よりも光軸方向の光学系の長さ(第1レンズ群LG1の物体側の面から撮像素子26の撮像面までの距離)が短くなっている。この鏡筒収納状態では、カム環11は光軸方向の後方移動端に位置しており、カム環駆動ギヤ28との関係が図8A(収納状態)、図10A、図11Aに示すものとなっている。すなわち、カム環駆動ギヤ28と周面ギヤ11dは、長ギヤ部28aの後端部付近(大径ギヤ部28bとの境界部付近)と、大径ギヤ収容部11e前方のオフセットギヤ部11d1で噛合している。そして、大径ギヤ部28bが大径ギヤ収容部11eに進入して、該大径ギヤ部28bが周面ギヤ11dの一部と光軸方向に重なる関係になっている。換言すれば、大径ギヤ部28bと周面ギヤ11dの後方一部が、光軸Oと直交する同一平面内に位置している。そのため、カム環11を、大径ギヤ部28bとの間で干渉を生じることなく光軸方向後方の深い位置まで後退させることができる。このとき、1群用カムフォロアCF1が収納用位置Rに位置している。
鏡筒収納状態において撮影状態への移行信号(例えば、ズームレンズ鏡筒ZLが搭載されるカメラに設けたメインスイッチのオン)が入力されると、ズームモータ150が鏡筒繰出方向に駆動され、ウォームギヤ103の回転がズームギヤ列120によって減速されつつカム環11に伝達される。ここでダブルギヤからなるカム環駆動ギヤ28自体も減速機能を有し、第3ギヤ106から大径ギヤ28bへ伝達された回転をさらに減速して長ギヤ部28aから周面ギヤ11dに伝える。こうして回転駆動力が伝達されたカム環11は、カム環ガイド溝22dのリード溝部22d1とガイド突起11cの関係によって、ハウジング22に対して回転しながら光軸方向前方へ繰り出される。この鏡筒繰出時のカム環11の回転方向を図8A以降に矢印N1で示した。光軸方向位置が固定されたカム環駆動ギヤ28に対してカム環11が回転しながら前方に繰り出されるため、長ギヤ部28aに対する周面ギヤ11dの噛合位置が徐々に前方に変化し、これに伴いカム環11の大径ギヤ収容部11eが大径ギヤ28bと重なる位置から前方に離脱する。この離脱が完了するまでにカム環11は所定角回転されて、大径ギヤ28bに対する大径ギヤ収容部11eの周方向位置が変位するが、当該離脱完了までのカム環11の回転では周面ギヤ11d(後端フランジ11d)と大径ギヤ28bの干渉が生じないように、大径ギヤ収容部11eの周方向の形成領域が大径ギヤ28bの直径よりも余裕を持たせて広く設定されている。2群用直進案内環10と第1繰出筒13は、カム環11と共に前方へ直進移動する。
カム環11が繰出方向N1に回転すると、その外側では、2群レンズ移動枠8と第1繰出筒13を介して直進案内された第2繰出筒12が、1群制御カム溝CG1の収納制御領域CG1-P内を1群用カムフォロアCF1が移動することにより、カム環11と第1繰出筒13と2群用直進案内環10の結合体に対して光軸方向前方に繰り出され、第2繰出筒12の筒状部12aが徐々に第1繰出筒13からの突出量を大きくする。また、カム環11が回転すると、その内側では、2群用直進案内環10を介して直進案内された2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロアCF2と2群制御カム溝CG2の関係によって、カム環11に対して第2繰出筒12とは異なる所定の軌跡で光軸方向に移動される。
やがて、ズームレンズ鏡筒ZLが所定量繰り出されると、図1の上半断面に示すズーム撮影領域のワイド端に達する。ズーム撮影領域では、カム環11のガイド突起11cがカム環ガイド溝22dの環状溝部22d2内に位置され、カム環11の光軸方向移動が停止される。図8Aに示すように、ワイド端では、カム環11の周面ギヤ11dはカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aの前端付近に噛合している。また、ワイド端では、図9に示す1群制御カム溝CG1のワイド端位置Wに1群用カムフォロアCF1が位置する。
鏡筒収納状態からの第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出量はそれぞれ、前者が、ハウジング22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する第2繰出筒12のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、ハウジング22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する2群レンズ移動枠8のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸Oに沿って移動することにより行われる。図1の上半断面に示すワイド端の繰出状態からズームモータ150を、望遠方向(鏡筒収納状態からワイド端までの繰出時と同じ方向)に駆動させると、やがて図1の下半断面に示すテレ端の繰出状態となる。このワイド端からテレ端までのズーム撮影領域では、カム環11はカム環ガイド溝22dの環状溝部22d2に案内されて光軸方向の一定位置で回転を行い、光軸方向へは進退しない。よって、ズーム撮影領域ではカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aに対する周面ギヤ11dの光軸方向の相対位置は変化せず、図8Aや図10Bに示すように、ワイド端からテレ端に至るまでの間、長ギヤ部28aの前端付近が周面ギヤ11dに対して噛合を維持し、カム環11に回転駆動力を与えることができる。ズーム撮影領域での第1レンズ群LG1の光軸方向位置は、1群制御カム溝CG1のズーム制御領域CG1-Zと1群用カムフォロアCF1の関係によって制御され、テレ端では、図9に示す1群制御カム溝CG1のテレ端位置Tに1群用カムフォロアCF1が達する。
撮影状態(ズーム撮影領域)から収納状態への移行信号(例えば、カメラのメインスイッチのオフ)が入力されると、ズームモータ150が鏡筒収納方向に駆動され、ズームレンズ鏡筒ZLは以上の繰出動作とは逆の収納動作を行う。カム環11は、カム環駆動ギヤ28を含むズームギヤ列120を介してズームモータ150の回転駆動力が伝達され、鏡筒繰出時とは逆方向に回転される。この鏡筒収納時のカム環11の回転方向を図8A以降に矢印N2で示した。収納方向N2に回転するカム環11は、ワイド端を過ぎると、ガイド突起11cがカム環ガイド溝22dのリード溝部22d1の案内を受けることで、回転しながら光軸方向後方へ移動される。すると、カム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aに対する周面ギヤ11dの噛合位置が徐々に後方へ変化する。第1繰出筒13と2群用直進案内環10はカム環11に伴って光軸方向に直進移動される。第1レンズ群LG1を保持する第2繰出筒12は、1群用カムフォロアCF1が1群制御カム溝CG1の収納制御領域CG1-Pに案内されることで、後退動作を行っているカム環11に対してさらに光軸方向後方に相対移動される。また、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロアCF2と2群制御カム溝CG2の関係によって、カム環11に対して第2繰出筒12とは異なる所定の軌跡で光軸方向に相対移動される。
やがて、図2に示す鏡筒収納状態まで達すると、カム環11は、カム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aの後端部付近(大径ギヤ部28bとの境界部付近)に対して周面ギヤ11dのオフセットギヤ部11d1を噛合させる後方移動端に達する。この後方移動端では、大径ギヤ部28bと大径ギヤ収容部11eの周方向位相が一致し、大径ギヤ部28bが大径ギヤ収容部11eに進入する。つまり、前述のように、大径ギヤ部28bと周面ギヤ11dの後方一部の光軸方向位置が重なる関係となり、カム環11は大径ギヤ部28bに規制されずに図2に示す位置まで後退させることができる。
第3レンズ群LG3を支持する3群レンズ枠51は、以上のズームモータ150による第1レンズ群LG1及び第2レンズ群LG2の駆動とは独立して、AFモータ160によって光軸方向に前後移動させることができる。そして、光学系がワイド端からテレ端までのズーム撮影領域にあるとき、測距手段によって得られた被写体距離情報に応じてAFモータ160を駆動することにより、第3レンズ群LG3が光軸方向に移動してフォーカシングが実行される。
以上のように本実施形態のズームレンズ鏡筒ZLでは、カム環11の光軸方向移動に対応した光軸方向長さが必要とされるカム環駆動ギヤ28を、カム環11の周面ギヤ11dへの噛合を担当する長ギヤ部28aと、該長ギヤ部28aの後方に一体形成した大径ギヤ部28bとを備えたダブルギヤとして構成している。カム環駆動ギヤ28自体が減速機能を有するため、ズームギヤ列120の構成ギヤ数を少なくしてコンパクトな構成としながら、所要の減速比を得ることが可能となっている。そして、大径ギヤ部28bを進入させる大径ギヤ収容部11eをカム環11の後端に設けたことにより、該大径ギヤ部28bに制約されずにカム環11を光軸方向後方の深い位置まで沈胴させることができ、カム環駆動ギヤ28に減速機能を持たせつつ、ズームレンズ鏡筒ZLの収納長のコンパクト化を達成することができる。
また、カム環駆動ギヤ28に対してモータ駆動力を伝達する直前の第3ギヤ106も、減速機能を有するダブルギヤとなっており、これもズームギヤ列120の構成ギヤ数減少、コンパクト化に寄与している。仮に、カム環駆動ギヤ28が軸方向の全長に亘って大径ギヤ部28bを備えない一定径の長ギヤであると、この長ギヤに噛合するギヤ(第3ギヤ106)は、該長ギヤと重なる軸方向位置(共通の軸直交平面内)に減速用の大径ギヤ(106a)を配置することができない(長ギヤと干渉してしまうため)。そのため、長ギヤに噛合するギヤは、減速機能を有さないアイドルギヤとするのが従来の一般的な構成であった。これに対し本実施形態では、カム環駆動ギヤ28の大径ギヤ部28bに対して第3ギヤ106の小径ギヤ106bを噛合させることにより、長ギヤ部28aと重なる軸方向位置(共通の軸直交平面内)に大径ギヤ106aを配置することを可能としている。よって、カム環駆動ギヤ28に加えて第3ギヤ106にも減速機能を持たせることができた。
なお、大径ギヤ部28bを大径ギヤ収容部11eに進入させるとき、長ギヤ部28aに対してオフセットギヤ部11d1を噛合させることで、周面ギヤ11dとカム環駆動ギヤ28の間には十分な噛合領域が確保されている。このオフセットギヤ部11d1は、大径ギヤ収容部11eに対応する周方向の一部領域にのみ形成されているので、周面ギヤ11d全体の光軸方向幅を広げてカム環11を光軸方向に大型化させるものではない。
続いて、ハウジング22に対するカム環11とカム環駆動ギヤ28の組付構造を説明する。ハウジング22の3つのカム環ガイド溝22dはそれぞれ、環状溝部22d2の終端部に、筒状部22aの前端面に開口する挿脱開口22d3を有し(図3、図7)、挿脱開口22d3を通して、カム環11の3つのガイド突起11cをそれぞれカム環ガイド溝22dへ挿脱させることができる。ガイド突起11cと挿脱開口22d3の位相が一致するこの回転位置を、カム環11の組立分解位置と呼ぶ。カム環11の後端フランジ11b上には、当該組立分解位置にあるときに長ギヤ収納部22bに対向する位置に、周面ギヤ11dが存在しない無ギヤ領域11gが形成されている。すなわち、ハウジング22に対するカム環11の回転可能範囲は、ガイド突起11cをカム環ガイド溝22dの一端部(挿脱開口22d3の背後に位置する環状溝部22d2の終端部)から他端部(リード溝部22d1の後端部)まで移動させる範囲内(カム環ガイド溝22dの周方向長さの範囲内)であるが、周面ギヤ11dはこの回転可能範囲の全域に亘る周方向位置に形成されているのではなく、当該回転可能範囲の一方の端部領域(ガイド突起11cを挿脱開口22d3の背後に位置させる領域)では、周面ギヤ11dが存在しない無ギヤ領域11gになっている。よって、カム環11は、ズームモータ150の駆動制御では組立分解位置まで回転されることがない。またカム環11自体も第1繰出筒13などに覆われていて外部に露出していないため、手などでカム環11を外側から把持して回転させることもできない。そのため、意図せずにカム環11を組立分解位置まで回転させてしまうおそれがない。ハウジング22からカム環11を取り外すときには、特殊な治具を用いてカム環11を組立分解位置まで手動で回転させる。
ズームレンズ鏡筒ZLの組立時には、ハウジング22と撮像素子ホルダ23の間にカム環駆動ギヤ28を含むズームギヤ列120を組み込んだ状態で、カム環11は、3つのガイド突起11cをそれぞれ挿脱開口22d3を通してカム環ガイド溝22dに挿入させながら、ハウジング22の筒状部22aに対して前方から挿入される。このカム環11の組立分解位置では、図10C及び図11Dに示すように、ハウジング22の長ギヤ収納部22b内に位置するカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aに対して無ギヤ領域11gが対向する位置関係にあるため、長ギヤ部28aと周面ギヤ11dの噛み合いを調整することを要さずにカム環11をハウジング22に組み込むことができる。
続いて、カム環11を組立分解位置から収納方向N2に回転させて周面ギヤ11dをカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aに噛合させる。このときカム環11周りの部材の組み付け順序によっては、カム環11に直接アクセスして回転させることが難しい場合がある。例えば、2群用直進案内環10、カム環11、カム環結合環14及び2群レンズブロック80を組み合わせたユニットをハウジング22の筒状部22aの前方から挿入し、該ユニットをカム環11の組立分解位置に保持させたままにしておく。続いて、1群用カムフォロアCF1を1群制御カム溝CG1の組立分解領域(カムフォロア挿脱開口)CG1-Xに進入させつつ、ハウジング22の筒状部22aに対して第2繰出筒12を前方から挿入する。さらに、第2繰出筒12の外側直進案内キー12bを直進案内溝13dに進入させながら、ハウジング22の筒状部22aに対して第1繰出筒13を前方から挿入する。このような組み付け手順をとった場合、カム環11は、第1繰出筒13や第2繰出筒12で覆われて外部に露出しない状態で組立分解位置に保持されるので、手などで把持して回転操作することが難しい。また、別の組み付け手順として、上記ユニットに第1繰出筒13と第2繰出筒12も合わせた可動レンズ(カム環)ブロック110を先に作り、この可動レンズ(カム環)ブロック110をハウジング22に組み付けることも可能である。この場合も同様に、カム環11が外部に露出しないので、直接に回転操作することが難しい。
ここで図9に示すように、カム環11の外周面上の1群制御カム溝CG1には、組立分解領域CG1-Xの奥に、光軸方向と周方向のいずれに対しても所定の傾斜を有する回転分力付与面(噛合誘導手段)CG1-Kが形成されている。1群用カムフォロアCF1が1群制御カム溝CG1の組立分解領域CG1-Xにある状態で、第2繰出筒12を光軸方向後方に押し込むと、1群用カムフォロアCF1が回転分力付与面CG1-Kに当接してこれを押圧し、回転分力付与面CG1-Kの傾斜形状によってカム環11を収納方向N2に回転させる分力が生じる。すると、カム環11が図11Dに示す組立分解位置から収納方向N2に回転し、図11Cのように周面ギヤ11dの歯がカム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aに接近、当接する。ここでズームモータ150を鏡筒収納方向に回転駆動させると、カム環駆動ギヤ28が空転せずに周面ギヤ11dと噛合させることができ、以後はカム環駆動ギヤ28の回転制御によって図10Bや図11Bに示すテレ端位置から図10Aや図11Aに示す鏡筒収納位置まで、任意にカム環11を回転駆動することが可能となる。つまり、ハウジング22に対するカム環11の組立分解位置ではカム環駆動ギヤ28と対向する領域に周面ギヤ11dが存在しないようにしてギヤの噛合関係に留意する必要をなくしつつ、続く第2繰出筒12の組付作業によってカム環11を回転させて周面ギヤ11dとカム環駆動ギヤ28を噛合させる噛合誘導手段を設けたので、カム環11の全般的な組み付け性が向上している。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態のカム環11は、鏡筒収納状態とズーム撮影領域の間では光軸方向移動を伴って回転するものであるが、これと逆に、ズーム撮影領域でカム環11が図示実施形態のような定位置回転ではなく、回転しながら光軸方向移動を行い、ズーム撮影領域以外でカム環11が定位置回転するものであってもよい。この場合、カム環駆動ギヤ28の長ギヤ部28aを必要に応じて前方に延長すればよい。
また、実施形態はズームレンズ鏡筒への適用例であるが、本発明は、少なくとも回転駆動される回転環を含むものであれば、単焦点のレンズ鏡筒にも適用が可能である。
また、図示実施形態はカム環への適用例であるが、本発明はカム環以外の回転環に対しても適用が可能である。例えば、レンズ鏡筒における光学要素の駆動構造として、回転環と直進環を相対回転可能かつ光軸方向に共に移動するように結合し、回転環に光軸方向へ長い回転伝達溝を形成する一方、直進環には所定の軌跡のガイド溝(例えばカム溝やリード溝)を形成し、光学要素の保持部材に設けたフォロアが直進環のガイド溝と回転環の回転伝達溝に同時に係合した構成が知られている。回転環が回転すると、回転力が伝えられたフォロアが直進環のガイド溝に従って光軸方向に移動され、その結果、光学要素の保持部材の光軸方向位置が変化するものである。このようなタイプの回転環の組付構造においても本発明は適用が可能である。さらには、図示実施形態のカム環11に相当する回転環が、カム溝などを介さずに直接に光学要素の保持部材を支持している構造であっても、本発明は適用可能である。これらの場合には、回転環はカム溝を有していないが、本発明における回転環として機能するものである。つまり、本発明は、固定環に支持された回転環駆動ギヤに対して噛合して回転駆動力を受ける周面ギヤを備えたレンズ鏡筒の回転環であれば、広く適用が可能である。