JP5073367B2 - 遠心成形コンクリート製品の製造法 - Google Patents

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本発明はコンクリート製品の遠心成形工程において、排出スラッジ量を減少させ、通称ノロと呼ばれるスラッジ水をそのまま回収し、自動的に内面仕上げを行い、且つ良質の製品を提供する製造法に関する。
現在、ヒューム管、パイル、ポール等のコンクリート製品は遠心成形法によって製造されている。遠心成形法、特に、ヒューム管の成形法は他のコンクリート製品の製法と異なり、発生するスラッジ水を排出、洗浄するために大量の水を使用する特徴がある。すなわち、練ったコンクリートを成形管に流し込み、成形管を高速で回転させるものである。成形管の内壁にコンクリートが締め固められて付着し、一定厚さのコンクリート管が得られる。これを脱型してコンクリート管を得るものであるが、内面に締め固めに使用されなかった、濃厚なスラッジ水が排出される。
特開平8−309727号公報 特開2003−313061号公報
遠心成形法は排出するスラッジ量が多いという欠点があった。本出願人は特許文献1において、遠心力成形方法により排出されるスラッジ水に遅延剤を添加して活性に保存し、以降のフレッシュコンクリートの練混ぜ水として使用する技術を開示した。更に、特許文献2において、ポリカルボン酸系減水剤を使用することにより排出する廃水のCODを低減する方法を開示した。
しかしながら、遠心成形法は大量のスラッジ水を絞り出し、管内面の洗浄等に大量の水を使用するため、この方法によっても、再使用し切れないスラッジ水が残留する問題があった。
ヒューム管は内面も滑らかな平滑面であることを要する。遠心力成形が終了し、内面のスラッジ水の排出、洗浄が終了した後に成形管を緩く回転させながら棒を入れ人手により平滑な内面を得ている。成形管が回転している状態で行われるこの作業は危険を伴い、しかも長時間を要するものであった。この危険で長時間を要する作業を回避する方法が種々検討された。
内面仕上げは、均等なモルタル層を設けるものであるが、内面仕上げしたモルタル層にひび割れや剥離が生じて遠心成形品の品質を低下させる問題があった。
更に作業時間を短縮するために、コンクリートの締まりを改善すれば、遠心力を加える時間を短縮することができる。
本発明は上記種々の課題を同時に解決する方法を提供する。
本発明の構成は、遠心成形コンクリート製品を製造するにあたり、ポリカルボン酸系高性能減水剤を配合したコンクリートを使用し、成形が終了し成形管の回転が低速になった間に、コンクリート管内面に発生したスラッジ水を吸引管で回収し、スラッジ回収後に、膨張材を含有する仕上げモルタルを成形管内に投入して、コンクリート管の内面仕上げを行うことを特徴とし、仕上げモルタルとして、径200μm以下の粒度の砂を用い、水硬性組成物100質量部に対する砂の質量比率が30〜120質量部であり、膨張材がセメント100質量部に対し、3〜11質量部配合されていることを特徴とする。
本発明はポリカルボン酸系高性能セメント減水剤を使用することにより、スラッジ水の排出量を低下させ、コンクリートの締まりを向上させる効果を有する。更に、遠心管の回転力が低下する遠心成形工程の終了時に、スラッジ水を吸引排出させることにより、洗浄工程を省略し、吸引排出後、膨張材を含有する仕上げモルタルを投入することにより仕上げ工程を簡略化しながら高品質の遠心成形コンクリート二次製品を製造するものである。
本発明によれば、ポリカルボン酸系減水剤を使用することにより、コンクリート管内面の締まりが向上し、遠心管回転時間が減少し、更にスラッジの発生量が減少した。遠心管の回転終了前の回転数が減少した時に、遠心管の内面に発生したスラッジ水をパイプを用いて吸引排出することにより、高濃度のスラッジ水を回収することができ、大量の水を使用する洗浄作業の問題が解消した。仕上げ工程はスラッジ水の排出終了後、この低速回転時に、膨張材を含有するモルタルを遠心管内面に投入することにより行われる。
この方法により、危険である上に長時間を要する仕上げ工程を容易に行うことに成功した。しかも仕上げモルタルには膨張材が配合されているため、剥離やひび割れが発生し難く、製品の品質も向上した。
回収したスラッジ水には遅延剤を添加して緩く撹拌しながら保存し、以後のフレッシュコンクリートの練混ぜ水に使用する。全体工程としてスラッジ水の排出量が激減したためスラッジ水の再使用が容易になった。
コンクリート管の遠心成形とは、高速で回転できる成形管内に練り上げたコンクリートを注入し、成形管を高速で回転するものである。遠心管の回転は最高30〜40Gに達する。高速回転の結果、コンクリートは成形管内壁に締め固められ一定厚さの高強度管を製造することができる。コンクリートの締め固めと同時に微小なセメント粒子や砂等を含有する水分が表面にスラッジ水として絞り出される。
ポリカルボン酸系セメント減水剤は、一般に汎用されている製品を使用することができる。高性能減水作用を有するものが好ましく使用される。例えば、スーパー300CF(グレースケミカルズ社製)やレオビルド8000SS(BASFポソリス社製)等を挙げることができる。
一般に、ポリカルボン酸系高性能減水剤は、不飽和カルボン酸モノマーを一成分として含む重合体、共重合体又はその塩であり、例えば、ポリアルキレングリコールアクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールメタクリル酸エステル等がある。不飽和カルボン酸モノマーを一成分として含む重合体と共重合体又はその塩としては、アクリル酸、メタクリル酸の他に、無水マレイン酸の共重合体やこれらの単量体と共重合可能な単量体から導かれた共重合体等を挙げることができる。これら重合体や共重合体にポリアルキレングリコールがエーテル結合したものが汎用されている。カルボキシル基とポリアルキレングリコールがエステル結合しているものもあり、時には酸イミド結合している場合もある。ポリアルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基等が主として使用される。中でもポリオキシエチレン基が50質量%以上を占める重合体が好ましく、高度の減水作用を有するものが選ばれる。
減水剤の中には調整剤として遅延剤を含むものも存在し、本発明における減水剤はこれらをも含む概念である。なぜなら、夏場等温度の高い時には凝結が異常に早まり、成形不能になる場合があり、全体としての凝結時間を適正に保つ必要があるからである。
本発明は、ポリカルボン酸系減水剤を使用することが前提である。ポリカルボン酸系減水剤を用いると、コンクリート内面の締まりもよく、スラッジ水の発生量及び濃度が低減し、後述するスラッジ水の吸引、回収が円滑に行われる。
本発明はコンクリート管の内面に絞り出されたスラッジ水を吸引回収するものである。コンクリートの締め固めが終了し、回転が緩やかになった時に、吸引管をコンクリート管内面に接触させることにより、スラッジ水を回収できる。吸引管の先端の一部又は全部に刷毛或いは多孔質で柔軟な素材等を装着しておけば、コンクリート管内面を傷つけることなく、より確実にスラッジ水を回収することができる。吸引されたスラッジ水は別途希釈し、或いは希釈することなく遅延剤を添加して緩く撹拌しながら保存し、次回のフレッシュコンクリートの練混ぜ水として使用する。パイプは先端がL字状に曲がっていることが好ましい。
スラッジ水の吸引、回収が終了した後、同一パイプ或いは異なるパイプを使用し、或いは他の手段を利用して膨張材を配合した仕上げモルタルを投入し、遠心管の回転を持続させる。パイプの先端に刷毛や多孔質柔軟素材等が付いていると、遠心管の回転と共にモルタルを平滑にコンクリート管の内面に付着させることができる。回転速度を増加させモルタルが均一に緻密に密着した後、遠心管の回転を終了すれば、改めて仕上げ工程を行わずとも内面平滑なコンクリート管を短時間に製造することができる。
本発明で使用する仕上げモルタルは、粒径200μm以下の粒度の砂を用いる。砂の粒径が大きいと表面がザラつき、美麗な仕上げが得られない。砂の使用量は水硬性物質100質量部に対し、30〜120質量部、好ましくは40〜100質量部、より好ましくは60〜80質量部である。砂の配合量は重要であり、この範囲内では遠心管内面に美麗な仕上げ面が得られ、30質量部未満でも120質量部を超えても内面を美麗に仕上げることはできない。水硬性物質とは水を添加することにより結着性を発現し、骨材を結着して硬い組成物を形成する物質の一般名称であり、本発明においてはセメントと膨張材の総和がこれに該当する。
膨張材とは、水和反応によって主としてエトリンガイトや水酸化カルシウムを生成し、これが膨張源となってモルタルやコンクリートを膨張させる作用を有する混和材である。例えば、カルシウムサルホアルミネート、石灰系膨張材或いは石灰−石こう系膨張材などがある。
膨張材のセメントに対する配合量は、セメント100質量部に対し3〜11質量部、好ましくは4〜9質量部である。3質量部未満では乾燥ひび割れが生じ易く、11質量部を超えると膨張ひび割れが生じる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実験例1
<使用材料>
セメント:太平洋、宇部三菱、住友大阪3銘柄等量混合普通ポルトランドセメント、
密度3.15
細骨材 :大井川旧河川砂 密度2.58
粗骨材 :青梅産砕石1505 密度2.65
水 :地下水(飲料水)
<減水剤>
スーパー300CF(有効成分18.8%の液状品)グレースケミカルズ社製
レオビルド8000SS(有効成分19.3%の液状品)BASFポゾリス社製
マイティ150(ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系(有効成分0.40%の液状品)花王社製
表1に示す配合でモルタルを練混ぜた。減水剤の量は目標スランプ12±2.5cmになるようにコンクリート配合した。強制2軸ミキサを用いてコンクリート量50リットルを練混ぜた後、スランプ及び空気量を測定した。コンクリート温度は21〜22℃であった。各高性能減水剤の単位セメント量に対する必要添加量はスーパー300CFが0.6%(固形分率0.1128%)、レオビルド8000SSは0.6%(固形分率0.1158%)、マイティ150は1.0%(固形分率40%)であった。
コンクリートの遠心成形は遠心成形型枠(内径20cm×長さ30cm)に必要量の練混ぜられたコンクリートを投入し、遠心成形を行った。遠心成形は低速(2G)2分間−中速(10G)2分間−高速(30G)6分間の条件で行った。
遠心成形後のスラッジを遠心成形型枠より採取し、スラッジの発生量と発生率、スラッジの固形分量と固形分率をコンクリート1m3 に換算して表2に示した。更にコンクリート内面の仕上がり状態を観察した。
尚、遠心成形は各々のコンクリートに関し3個作成し、それぞれの平均値を示した。
実施例2
高性能減水剤の添加量を変化させた場合の内面の仕上がり状況、スラッジ水の発生状態を試験した。使用材料は実施例1と同様にしたが、高性能減水剤のみはスーパー300CFを用いた。得られた結果を表3に示した。
表3より、ポリカルボン酸系減水剤は固形分濃度として0.05〜0.20%(対結合材)が好ましい。
表2及び表3より、ポリカルボン酸系高性能減水剤を使用すると、スラッジ水の発生もスラッジ固形分自体の発生量も低減されることが判明した。更に、内面のコンクリートが硬く締まっているためスラッジ水の分離が容易に行われる。
実施例3
遠心成形工場において、表1に示す配合で実施例1をスケールアップした状態で遠心成形によりヒューム管を製造した。遠心成形が終了し、回転が緩やかになったときパイプの先端に刷毛を設けた吸引管を、管内面に接触させて発生したスラッジ水を吸引除去した。刷毛は締め固められた内表面を傷つけることなく、発生したスラッジ水のみを効率よくかき集めて吸引除去することができた。この緩やかな回転を続けつつ後述する仕上げ工程を行った。
仕上げ工程に使用するモルタルは実施例1に用いたセメントと、膨張材としてデンカCSA#20(電気化学工業社製)と、開口部の径が200μmの篩を通過した本発明の砂を細骨材として用いて実験を行った。無振動テーブルフローが250±15mmになるように水の量を調整して、表4に示すセメント、膨張材、砂比のモルタルを調製した。各々のモルタルを内面に押し出されたスラッジ水を回収した後の、遠心成形管内に刷毛付きのパイプから装入し、高速回転後、刷毛を軽く接触させながら緩く回転させ、内面仕上げを行った。得られた内面の状態と砂の量との関係を表4に記した。
無振動テーブルフローを250±15mmになるように水の量を調整し、結合材/砂比を100/70とし、表5に示す量の膨張材を配合してモルタルを調製した。内面に押し出されたスラッジ水を回収した後の、遠心成形管内に刷毛付きのパイプから各々のモルタルを装入し、高速回転後、刷毛を軽く接触させながら緩く回転させ、内面仕上げを行った。得られた内面の状態と砂の量との関係を表5に記した。

Claims (4)

  1. 遠心成形コンクリート製品を製造するにあたり、ポリカルボン酸系高性能減水剤を配合したコンクリートを使用し、成形が終了し成形管の回転が低速になった間に、コンクリート管内面に発生したスラッジ水を吸引管で回収し、スラッジ回収後に、膨張材を含有する仕上げモルタルを成形管内に投入して、コンクリート管の内面仕上げを行うことを特徴とし、ここで、仕上げモルタルには粒径200μm以下の粒度の砂を用い、仕上げモルタルにおける水硬性組成物100質量部に対する砂の質量比率は40〜100質量部であり、且つ、仕上げモルタルにはセメント100質量部に対して膨張材が3〜11質量部配合されている、遠心成形コンクリート製品の製造法。
  2. ポリカルボン酸系高性能減水剤が、ポリエーテルカルボン酸系であることを特徴とする請求項1記載の遠心成形コンクリート製品の製造法。
  3. 吸引管が、先端に刷毛又は多孔質柔軟な素材を設けた吸引管であることを特徴とする請求項1又は2に記載する遠心成形コンクリート製品の製造法。
  4. 回収したスラッジ水に、遅延剤を添加して保存し、次回のフレッシュコンクリートの練混ぜ水の一部として使用することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載する遠心成形コンクリート製品の製造法。
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