JP4509321B2 - セメント混和剤及びそれを含有したコンクリート、並びにその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木、建築分野で使用されるセメント混和剤及びそれを含有したコンクリート、並びにその製造方法に関する。本発明でいうコンクリートとは、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
なお、本発明でいう部や%の単位は、特に規定のない限り質量単位を表す。
【0002】
【従来の技術】
従来から、吹付けコンクリートのリバンド低減方法、及び地下やトンネル背面の空隙充填やひび割れ等の逸流を防止する方法、並びに、これらを水が存在する場所で使用する場合の材料分離を防止する方法として、流動性を極力低下させることが有効であり、その方法として、ケイ酸塩、アルミン酸塩、塩化物及びアルミニウム塩等を添加することが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら添加剤は瞬時にコンクリートの流動性を低下させ、逸流を防止(限定注入)するという点からは有効ではあるが、極端に流れが悪くなり30分から60分程度で固結状態となり、コンクリートの充填性が悪くなるといった課題があった。
【0004】
また、セメント・ベントナイト系の注入材が従来より知られているが、スラリーを作製する際、先にセメントをミキサに投入し、その後ベントナイトを投入すると、セメント中のカルシウムイオンがベントナイト粒子の表面に吸着し、ベントナイトが十分に膨潤しなくなるため、増粘効果は認められるもののその効果は不十分であった。
【0005】
そこで、先にベントナイトのスラリーを作製しベントナイトを十分膨潤させた後、そのスラリーにセメントを混合する方法がとられているが、実際の施工において、ベントナイト投入からセメント投入までの時間が短いとベントナイトの膨潤が進まないうちにセメント中のカルシウムイオンがベントナイト粒子に吸着するためその後の膨潤が妨げられ、十分な増粘効果が得られない場合が多かった。
【0006】
そのため、現場の施工管理においては、セメントとベントナイトの投入順序、ベントナイト投入からセメント投入までの時間間隔をきめ細かく配慮する必要があり、厳しい工程管理を行わなければならなかった。
【0007】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、特定のセメント混和剤及びそれを含有したコンクリートに特定の製造方法を用いることにより、良好な可塑状のコンクリートが得られ、前記課題が解決できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合により得られるアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンと、ベントナイトとから成る、コンクリートを可塑状とするセメント混和剤であり、該セメント混和剤と、セメントと、水とを含有してなり、セメント100部に対して、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンが固形分で0.1〜10部、ベントナイトが10〜150部、水が40〜250部である可塑状のコンクリートであり、ベントナイトを含有してなるコンクリートと、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンとをそれぞれ別々に圧送して、先端で合流混合することを特徴とする該コンクリートの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のセメント混和剤に用いられるアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンとは、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合により得られるポリマーエマルジョンで、自己増粘性を持つものである。重合方法としては、不飽和カルボン酸と、それと共重合可能なエチレン性不飽和化合物とを乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の方法により、共重合することにより得られる。
【0011】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アコニット酸、クロトン酸等が挙げられ、これらの無水物として、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。また、半エステルとして、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸がより優れた効果を示すことから好ましい。
【0012】
これら不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチレン、アクリルニトリル、メタクリロニチリル等のシアノビニルモノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマー、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、ベオバ10(商品名:シェルジャパン)等のC3-18脂肪族カルボン酸のビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族カルボン酸ビニルモノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等の芳香族ビニルモノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテルモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系モノマー、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−トルイルマレイミド等のマレイミド系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィンモノマー、及びジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性ビニルモノマー等が挙げられる。
【0013】
本発明のセメント混和剤に使用されるアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンは、セメント中のアルカリにより、エマルジョン粒子のカルボキシル基が中和・解離され、エマルジョン粒子の表層或いは全体が膨潤又は溶解して系の粘度が上昇することにより増粘する。また、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンに他のエマルジョンをブレンドして使用することも可能である。
【0014】
本発明では、これらの増粘作用によりコンクリートがチキソトロピー性(揺変性)を有し、限定した範囲への注入に適した材料となる。
【0015】
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンの固形分濃度は、特に限定されるものではなくできるだけ高濃度にすることが好ましい。通常、固形分濃度で20〜60%程度が好ましく、30〜50%がより好ましい。
【0016】
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンの使用量は、セメント100部に対して、固形分で0.1〜10部が好ましく、0.2〜5部がより好ましく、0.3〜3部がさらに好ましい。0.1部未満ではこの増粘効果が少ない場合があり、10部を超えると初期強度発現性が悪くなる場合がある。
【0017】
本発明のセメント混和剤に使用されるベントナイトは、さらに増粘させるという点で有効である。ベントナイトの種類は、特に限定されるものではなく、通常のナトリウムベントナイトやカルシウムベントナイト等のモンモリロナイト系粘土鉱物が用いられる。
【0018】
ベントナイトの使用量は、その種類によって異なるが、通常はセメント100部に対して、10〜150部が好ましく、20〜100部がより好ましい。10部未満ではこの増粘効果が少ない場合があり、150部を超えると初期強度発現性が悪くなる場合がある。
【0019】
また、ベントナイトの膨潤力は、大きいほうが高い増粘性が得られその添加量が減少するため、具体的には6ml/2g以上のものが好ましく、9ml/2g以上がより好ましい。6ml/2g未満であると増粘効果が得られない場合がある。
【0020】
なお、ここでいう膨潤力とは、次に示す方法にて測定する。共栓つき100mlメスシリンダーに、ベントナイト2.00gを少量ずつ分けて静かに加え、先に加えたベントナイトがシリンダー内壁に付着せず、スムーズにシリンダー底に沈着するように1回に加える量を調節する。先に加えた試料がほとんど沈着したのち、次の試料を加える。全量加え終わったら栓をして24時間放置後容器内に堆積した試料の見かけ容積を読み取り算出する。
【0021】
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではなく、通常のセメントが使用可能である。具体的には、普通、早強、超早強及び低熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、シリカ、スラグ又はフライアッシュ等を混合した各種混合セメント等の使用が可能である。
【0022】
また、セメントに、砂や砂利等の骨材の他、各種セメント混和材やセメント混和剤を使用することが可能である。
【0023】
本発明で使用する水は特に限定されるものではないが、通常、清水が用いられる。水の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して、40〜250部が好ましい。40部未満では流動性が悪くなる場合があり、250部を越えると強度発現が遅れる場合がある。
【0024】
本発明のセメント混和剤をコンクリートに混合することにより、可塑状コンクリートが得られる。ここで、可塑状とは、静置した状態では流動性が少ないが、加圧する事によって容易に流動する状態を言う。
【0025】
本発明では、水と混練したコンクリートと、セメント混和剤とを混合すると、混合後、数秒で流動性が低下するため、圧送距離を長くする場合や施工性を考えた場合、セメント混和剤と、水と、混練したコンクリートをそれぞれ別々に圧送して、先端で合流混合しながら施工することが好ましい。
【0026】
合流混合の方法としては、Y字管等の混合管を使用する方法、二重管を使用する方法、及びセメント混和剤液をシャワー状に合流混合させるインレットピースを使用する方法等がある。また、合流混合後の管中にスパイラル状のミキサをセットしてさらに混合する方法も可能である。
セメント混和剤とコンクリートとの混合が充分であれば、付着性や可塑性が出て施工性が良くなり、混合が不充分だと、部分的に流動するものがあり、完全に施工することが困難になる場合がある。
【0027】
地下やトンネル背面の空隙に充填する場合は、単に流し込む方法で充分であるが、水が存在する場所やひび割れなどへの逸流を防止する箇所に吹付け施工する場合等は、圧搾空気で吹き飛ばして施工することも有用である。圧搾空気の導入箇所は、特に限定されるものではないが、混合管に導入することが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例に基づいてさらに説明する。
【0029】
実施例1
セメント100部、ベントナイト100部、水250部をミキサで混練してセメントベントナイトミルク(A液)を製造した。一方、固形分濃度30%のアルカリ増粘型ポリマーエマルジョン(B液)を準備した。A液をスクイズ式ポンプにより毎分20リットルの流量で圧送し、また、B液をスパイラルポンプによりセメント100部に対して、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンが固形分で表2示す配合量になるように流量を調節して別々に混合管に圧送し、無駆動ラインミキサで混合しながら連続的に可塑状コンクリートを製造した。製造した可塑状コンクリートのフロー値と、型枠への充填性と、水中に流し込んだ際の材料分離の有無を確認した。結果を表2に併記する。なお、比較のためセメント混和剤を使用しない系、及びアルカリ増粘性を有さないポリマーエマルジョン系で同様な実験を行った。結果を表2に併記する。
【0030】
なお、可塑状コンクリートを水中に流し込んだ際の、材料分離の有無の判断基準を表1に示した。
【0031】
【表1】
Figure 0004509321
【0032】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
水:水道水
ベントナイト:膨潤力9.9ml/2g 、市販品
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンA:エチルアクリレート/メタクリル酸共重合ポリマーエマルジョン(ポリマー組成「質量比」;エチルアクリレート:メタクリル酸 = 50:50)
非アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンB:スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート共重合ポリマーエマルジョン(ポリマー組成「質量比」;スチレン:2−エチルヘキシルアクリレート = 45:55)
【0033】
<測定方法>
フロー値:内径80mm、高さ80mmのフローコーンに可塑状コンクリートを入れコーンを引き抜いた後の広がり、2分後に測定
材料分離:水中で流し込んだ際の水の懸濁具合を目視判定
充填性:型枠(15cm×15cm×55cm)に充填、硬化後脱枠し型枠側面および底面の空隙(未充填部)の有無を目視判定
【0034】
【表2】
Figure 0004509321
【0035】
表2より、本発明のセメント混和剤を混合して製造したコンクリートは、充填性が良好であり、水中において材料分離が無いことが判る。
【0036】
実施例2
セメント100部に対して、ベントナイト量を表2に示す配合になるように変え、水250部を加えミキサで混練してセメントミルク(A液)を製造した。一方、固形分濃度50%のアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンC(B液)をセメント100部に対して、固形分で5%になるように添加した。A液をスクイズ式ポンプにより毎分20リットルの流量で圧送し、また、B液をスパイラルポンプにより、セメント100部に対して、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンが固形分で5%になるように流量を調節して別々に混合管に圧送し、無駆動ラインミキサで混合しながら連続的に可塑状コンクリートを製造した。製造した可塑状コンクリートのフロー値と、型枠への充填性と、水中に流し込んだ際の材料分離の有無を実施例1と同様に確認した。結果を表3に併記する。
【0037】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
ベントナイトA:膨潤力24.0ml/2g、市販品
ベントナイトB:膨潤力9.9ml/2g、市販品
水:水道水
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンC:エチルアクリレート/アクリル酸共重合ポリマーエマルジョン(ポリマー組成「質量比」; エチルアクリレート:アクリル酸 = 50:50)及びエチレン/酢酸ビニル共重合ポリマーエマルジョン(ポリマー組成「質量比」; エチレン:酢酸ビニル = 18:82)とのブレンド物(ブレンド比「質量比」;エチルアクリレート/メタクリル酸共重合ポリマーエマルジョン:エチレン/酢酸ビニル共重合ポリマーエマルジョン = 70:30)
【0038】
【表3】
Figure 0004509321
【0039】
表3より、本発明のセメント混和剤を混合して製造したコンクリートは、充填性が良好であり、水中において材料分離が殆ど無いことが判る。
【0040】
【発明の効果】
本発明のセメント混和剤を用いることにより、良好な可塑状コンクリートの製造が可能となり、吹き付けコンクリートの跳ね返りが少なくなったり、水が存在する場所でも材料分離することなく施工でき、ひび割れ等の空隙のある場所へも充分施工することが出来る。また、セメント混和剤とセメントコンクリートをそれぞれ別々に圧送して、ノズル先端で合流混合することによって、良好な可塑状コンクリートを効率良く製造し、速やかに施工することが可能となる。

Claims (3)

  1. 不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合により得られるアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンと、ベントナイトとから成る、コンクリートを可塑状とするセメント混和剤。
  2. 請求項1に記載のセメント混和剤と、セメントと、水とを含有してなり、セメント100部に対して、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンが固形分で0.1〜10部、ベントナイトが10〜150部、水が40〜250部である可塑状のコンクリート。
  3. ベントナイトを含有してなるコンクリートと、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンとをそれぞれ別々に圧送して、先端で合流混合することを特徴とする請求項2に記載のコンクリートの製造方法。
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