JP5072755B2 - オレフィン系重合体組成物、該組成物を用いて得られるフィルムおよび積層体、ならびに該フィルムまたは積層体からなる離型フィルム - Google Patents

オレフィン系重合体組成物、該組成物を用いて得られるフィルムおよび積層体、ならびに該フィルムまたは積層体からなる離型フィルム Download PDF

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本発明は、耐熱安定剤を含有するオレフィン系重合体組成物、該組成物を用いて得られるフィルムおよび積層体、ならびに該フィルムまたは積層体からなる離型フィルムに関する。詳しくは、プリント配線基板などを製造する際に用いられる離型フィルムの原材料として好適な、耐熱安定剤を含有するオレフィン系重合体組成物、該組成物を用いて得られるフィルムおよび積層体、ならびに該フィルムまたは積層体からなる離型フィルムに関する。
近年、電子機器の発展に伴いプリント配線基板が多く用いられている。プリント配線基板は電子部品を固定して配線するための電子機器の主要な部品の一つであり、リジッド基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブル基板などがある。
例えば、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」ともいう)を製造する際には、電気回路を形成した基板上に、熱硬化型の接着剤層を介してカバーレイ層を形成する工程が通常は設けられている。前記工程は、基板、接着剤層およびカバーレイ層を金属板で挟んで、加熱および加圧して行われる。
上記工程の際には、通常はカバーレイ層と金属板とが接着することを避けるために、その中間に、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニルなどのフッ素系フィルムや、ポリメチルペンテンフィルムなどの離型フィルムが用いられている。
ここで、通常のFPCにおいては、異方導電性フィルム(以下、「ACF」ともいう)などを介して電子部品を電気的に接続する端子部分にはカバーレイ層を被覆せず、電気回路が露出した状態となっている。しかしながら、前記端子部分以外をカバーレイ層によって被覆して加熱および加圧する際に、カバーレイ層に塗布された接着剤が前記端子部分上に溶出して電気回路表面を接着剤層で被ってしまい、その後の電気的接続不良を引き起こすことがある。
上記問題に対しては、良好な離型性とクッション性とを有する離型フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、ここでクッション性とは、カバーレイ層やFPC表面の凸凹に追従することで、カバーレイ層の端面から接着剤が電気回路上に流れ出すことを防止する性質を指すものである。
また、離形性に優れたフィルムとして、4−メチル−1−ペンテン系重合体、特定のリン含有酸化防止剤、および特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤を特定の比率で含有する重合体組成物からなる離型フィルムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記特許文献1および2に記載の離型フィルムでは、該離型フィルムを剥離した後に行われる電気回路の端子部分とACFとの接続において、その接着性が充分ではなく、さらなる改善が望まれている。
国際公開2006−120983号公報パンフレット 特開2006−094909号公報
本発明の課題は、プリント配線基板の製造において、上述のように加熱および加圧する際に用いられる離型フィルムの原材料として好適なオレフィン系重合体組成物を提供することにある。すなわち、離型フィルムを剥離した後に行われる、プリント配線基板の電気回路の端子部分とACFなどを介して電子部品とを電気的に接続する際に、端子部分とACFなどとの接着性を向上させることが可能な離型フィルムの原材料として好適なオレフィン系重合体組成物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、オレフィン系重合体に硫黄系耐熱安定剤を特定の量で配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[9]に関する。
[1]オレフィン系重合体(A)と硫黄系耐熱安定剤(B)とを含有する組成物であって、該オレフィン系重合体(A)100重量部に対する該硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量が、0.5重量部以上であることを特徴とするオレフィン系重合体組成物。
[2]前記オレフィン系重合体(A)100重量部に対する前記硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量が、0.5〜5.0重量部であることを特徴とする前記[1]に記載のオレフィン系重合体組成物。
[3]前記オレフィン系重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテン系重合体であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のオレフィン系重合体組成物。
[4]前記4−メチル−1−ペンテン系重合体の融点(Tm)が、200℃以上であることを特徴とする前記[3]に記載のオレフィン系重合体組成物。
[5]前記オレフィン系重合体(A)が、プロピレン系重合体であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のオレフィン系重合体組成物。
[6]前記[1]〜[5]の何れかに記載のオレフィン系重合体組成物からなるフィルム。
[7]少なくとも一方の表面層が前記[1]〜[5]の何れかに記載のオレフィン系重合体組成物からなる層であることを特徴とする積層体。
[8]前記[6]に記載のフィルムまたは前記[7]に記載の積層体からなる離型フィルム。
[9]前記[6]に記載のフィルムまたは前記[7]に記載の積層体からなるプリント配線基板製造用離型フィルム。
本発明のオレフィン系重合体組成物を用いることにより、離型フィルムを剥離した後に行われる、プリント配線基板の電気回路の端子部分とACFなどを介して電子部品とを電気的に接続する工程において、端子部分とACFなどとの接着性を向上させることが可能な離型フィルムを提供することができる。
次に本発明のオレフィン系重合体組成物、該組成物を用いて得られるフィルムおよび積層体、ならびに該フィルムまたは積層体からなる離型フィルムについて詳細に説明する。
〔オレフィン系重合体組成物〕
本発明のオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体(A)と硫黄系耐熱安定剤
(B)とを含有する組成物であって、該硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量が特定の範囲にあることを特徴とする。
<オレフィン系重合体(A)>
本発明で用いられるオレフィン系重合体(A)としては、例えば、α−オレフィンの単独重合体、少なくとも2種のα−オレフィンの共重合体、α−オレフィンと該α−オレフィンと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−イコセンが挙げられる。
上記α−オレフィンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの不飽和カルボン酸エステル;マレイン酸などの多塩基性不飽和カルボン酸;該多塩基性不飽和カルボン酸の酸無水物;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどの共役ジエン;ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。
オレフィン系重合体(A)の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのエチレン系重合体;プロピレン系重合体;ブテン系重合体;第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明において、オレフィン系重合体とは、該オレフィンに由来する構成単位の含有量が50重量%を超える重合体をいう。
これらの中では、得られるフィルムの離型性および耐熱性が優れることから、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体およびプロピレン系重合体が好ましく用いられ、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体が特に好ましく用いられる。
≪第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体≫
上記第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体は、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィンに由来する構成単位を有する重合体である。剛性および弾性率が良好なフィルムが得られることから、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィンの単独重合体、および第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィンとそれ以外の上記の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましく、該ランダム共重合体がより好ましい。
上記第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体において、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90〜99.9重量%、さらに好ましくは95〜99.9重量%、特に好ましくは97〜99.9重量%であり、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%である。上記第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体において、該α−オレフィンに由来する構成単位の含有量が前記範囲にあると、本発明のオレフィン系重合体組成物を用いることにより弾性率の高いフィルムを得ることができ
る。
上記第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体としては、例えば、4−メチル−1−ペンテン系重合体、3−メチル−1−ブテン系重合体、4−メチル−1−ヘキセン系重合体、5−メチル−1−ヘキセン系重合体、5−メチル−1−ヘプテン系重合体が挙げられる。これらの中では、得られるフィルムの離型性および耐熱性が優れることから、4−メチル−1−ペンテン系重合体が好ましく用いられる。
上記4−メチル−1−ペンテン系重合体が、4−メチル−1−ペンテンとそれ以外の上記の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体の場合には、剛性および弾性率が良好なフィルムが得られることから、上記の炭素原子数2〜20のα−オレフィンの中では、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンが好ましく、1−デセンが特に好ましい。また、これらのα−オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記4−メチル−1−ペンテン系重合体の示差走査熱量計によって測定される融点(Tm)は、好ましくは200℃以上、より好ましくは220〜245℃、さらに好ましくは225〜245℃である。4−メチル−1−ペンテン系重合体の融点が前記範囲にあると、本発明のオレフィン系重合体組成物を用いることにより耐熱性に優れ、また弾性率の高いフィルムを得ることができる。
上記4−メチル−1−ペンテン系重合体などの、第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体は、従来公知の方法で製造することができ、重合触媒や重合方法も特に制限されない。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒(担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物とアルミニウム化合物との組み合わせに基づく触媒)、フィリップス型触媒(担持酸化クロムに基づく触媒)、カミンスキー型触媒(担持または非担持メタロセン型化合物と、有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンとの組み合わせに基づく触媒)が挙げられる。
重合方法としては、上記重合触媒の存在下でのスラリー重合方法、気相流動床重合法、溶液重合法、または圧力が20MPa以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などの公知の重合方法が挙げられる。
具体的には、特開昭61−113604号公報、特開2003−105022号公報に記載されているように、重合触媒の存在下に、4−メチル−1−ペンテンを単独で、または4−メチル−1−ペンテンとそれ以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとを共重合することで、4−メチル−1−ペンテン系重合体を得ることができる。また、4−メチル−1−ペンテン系重合体以外の第3級炭素を側鎖に有するα−オレフィン系重合体も、前記方法に準じて得ることができる。
≪プロピレン系重合体≫
上記プロピレン系重合体は、剛性および弾性率が良好なフィルムが得られることから、プロピレンの単独重合体、およびプロピレンとプロピレン以外の上記の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体(以下、「プロピレン・α−オレフィン共重合体」ともいう)であることが好ましい。
上記プロピレン単独重合体としては、例えば、立体規則性が高く高結晶性のプロピレン単独重合体、立体規則性が低く非晶性または低結晶性のプロピレン単独重合体が挙げられ
る。これらの中では、耐熱性に優れるという点から、立体規則性が高く高結晶性のプロピレン単独重合体が好ましい。
また、上記プロピレン・α−オレフィン共重合体の場合には、上記の炭素原子数2〜20のα−オレフィンの中では、エチレン、ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。また、これらのα−オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記プロピレン・α−オレフィン共重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは85〜99.9重量%、より好ましくは95〜99.9重量%であり、プロピレン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
また、上記プロピレン系重合体の示差走査熱量計によって測定される融点(Tm)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは150〜170℃、さらに好ましくは160〜170℃である。プロピレン系重合体の融点が前記範囲にあると、本発明のオレフィン系重合体組成物を用いることにより耐熱性に優れたフィルムを得ることができる。
上記プロピレン系重合体は、従来公知の方法で製造することができ、重合触媒や重合方法も特に制限されず、プロピレンを単独重合、またはプロピレンとそれ以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとを共重合することにより得ることができる。
重合触媒としては、例えば、周期律表第IV族の遷移金属を用いるメタロセン化合物と、メチルアルミノキサンまたはアルキルアルミニウムもしくはアルキルアルミニウムハライドとからなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒、三塩化チタンまたは四塩化チタンを塩化マグネシウムなどのマグネシウム化合物に担持させたチタン系触媒、アニオン重合触媒、ラジカル重合触媒が挙げられる。
重合方法としては、スラリー重合、バルク重合、気相重合、液相重合などの何れの方法でもよい。こうした重合は、バッチ式、セミバッチ式、連続式による何れの方式を採用してもよく、また、単段重合あるいは多段重合の何れの方式を採用してもよい。なお、かかる多段重合においては、上記プロピレン系重合体は、気相重合または液相重合で製造してもよく、気相重合と液相重合とを組み合わせて製造してもよい。また、重合中、水素を導入することにより分子量を調節してもよい。
本発明のオレフィン系重合体組成物において、硫黄系耐熱安定剤(B)を除いた組成物全体に対するオレフィン系重合体(A)の含有量は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%である。オレフィン系重合体(A)の含有量が前記範囲にあると、前記組成物を用いることにより離型性に優れたフィルムを得ることができる。
<硫黄系耐熱安定剤(B)>
本発明で用いられる硫黄系耐熱安定剤(B)とは、分子中に硫黄原子を含有し、過酸化物分解機能を有する有機化合物をいう。
硫黄系耐熱安定剤(B)としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどの硫黄含有アミド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、ジオクタデシルジスルフィドなどのジスルフィド類;ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸亜鉛類;2−メルカプトベンゾチアゾールの
シクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、N,N'−ジフェニルチオウレア、下記式(
1)で表される基を有する硫黄系耐熱安定剤、下記式(2)で表される硫黄系耐熱安定剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、下記式(1)で表される基を有する硫黄系耐熱安定剤を用いることが好ましく、特に下記式(1)で表される基を有する硫黄系耐熱安定剤として、下記式(1’)で表される硫黄系耐熱安定剤を用いることが好ましい。
1−S−R2−COO− ・・・(1)
式(1)中、R1は炭素原子数が好ましくは3〜20、より好ましくは5〜20の炭化水
素基を表す。また、R2は炭素原子数が好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3の二価
の炭化水素基を表す。
(R1−S−R2−COO−CH2−)4C ・・・(1’)
式(1’)中、R1およびR2はそれぞれ式(1)におけるR1およびR2と同じ意味を表す。なお、炭素原子に結合している4個の硫黄含有基は、同一でも異なっていてもよい。
上記式(1’)で表される硫黄系耐熱安定剤としては、例えば、ペンタ(エリスリチル−テトラ−β−メルカプトラウリル)プロピオネートが挙げられる。
S(−R4−COOR32 ・・・(2)
式(2)中、R3は炭素原子数が好ましくは12〜18のアルキル基を表し、R3中には硫黄原子が含まれていてもよい。また、R4はアルキルを有してもよい二価の芳香族基、ア
ルキル基を有してもよい二価の脂環族アルキル基、二価のアルキル基または単結合を表す。
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ミリスチルステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジ−1,1'−メチルブチレート、ジステアリルチオジブチレートが挙げられる。これらの
中では、ジラウリルチオジプロピオネートが好ましい。
本発明のオレフィン系重合体組成物において、オレフィン系重合体(A)100重量部に対する硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量は、0.5重量部以上、好ましくは0.5〜5.0重量部、より好ましくは0.5〜1.0重量部である。
本発明において、硫黄系耐熱安定剤(B)を上記の量で配合した組成物からなるフィルムを、プリント配線基板を製造する際に行われる加熱および加圧工程において離型フィルムとして用いることにより、硫黄系耐熱安定剤(B)または該安定剤(B)の反応物(過酸化物など)が該基板の電気回路の端子部分上に適量移行し、この移行物が端子部分とACFなどとの接着性の向上に寄与していると推定される。このため、硫黄系耐熱安定剤(B)以外の、例えばヒンダードフェノール系やリン系の耐熱安定剤のみを同程度量添加しても本発明ほどの接着性の向上は見られない。
<その他の耐熱安定剤>
本発明のオレフィン系重合体組成物には、硫黄系耐熱安定剤(B)とともに、本発明の目的を損なわない範囲でその他の耐熱安定剤を配合してもよい。前記その他の耐熱安定剤としては、例えば、フェノール系耐熱安定剤、リン系耐熱安定剤が挙げられる。
上記フェノール系耐熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3
−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガノックス1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガノックス1076)、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガノックス259)、3,9−ビス{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン(住友化学製、スミライザーGA80)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。
これらの中では、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,
9−ビス{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましく、
ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert-ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが特に好ましい。
また、上記フェノール系耐熱安定剤の示差走査熱量計によって測定される融点は、好ましくは20〜160℃、より好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは40〜140℃である。フェノール系耐熱安定剤の融点が前記範囲にあると、得られるフィルムから発生する移行物を少なくすることができる。
上記フェノール系耐熱安定剤の配合量は、オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.15重量部、より好ましくは0.02〜0.15重量部、さらに好ましくは0.03〜0.12重量部である。フェノール系耐熱安定剤の配合量が前記範囲にあると、フィルム成形時にオレフィン系重合体(A)の熱分解を低く抑えることができるため、機械的強度に優れたフィルムが得られ、かつ、フィルムから発生する移行物を少なくすることができる。
上記リン系耐熱安定剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト(ADEKA製、アデカスタブHP−10)、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸塩(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガフォス38)、ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガフォス126)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:イルガフォス168)、ジステアリル[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガフォス1093)、ジエチル{[(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート}(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガムド295)、6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プ
ロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェピン(住友化学製、スミライザーGP)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(GE製、ウエストン624)が挙げられる。
上記リン系耐熱安定剤の配合量は、オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.02〜0.4重量部、さらに好ましくは0.03〜0.3重量部である。リン系耐熱安定剤の配合量が前記範囲にあると、機械的強度に優れたフィルムが得られ、かつ、フィルムから発生する移行物を少なくすることができる。
<その他の添加物>
本発明のオレフィン系重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの塩酸吸収剤;耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、顔料、染料などのオレフィン系重合体に配合される公知の添加剤を配合してもよい。
<オレフィン系重合体組成物の調製>
本発明のオレフィン系重合体組成物は、上述の各成分を種々公知の方法、例えば、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルヘキサー、タンブラーブレンダーで混合して、または該ブレンダーで混合した後、単軸押出機、副軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練して造粒または粉砕して得ることができる。
〔フィルム〕
本発明のフィルムは、上述のオレフィン系重合体組成物を種々公知の方法、例えば、単軸押出機、副軸押出機、インフレーション成形などの方法で成形して得ることができる。また、このようにして得られたフィルムを延伸することにより、さらに機械的強度が付与されたフィルムが得られる。
本発明のフィルムの厚みは、通常は20〜300μm、好ましくは20〜200μmである。フィルムの厚みが前記範囲にあれば、フィルムの生産性に優れ、フィルム成形時にピンホールなどを生じることなく、充分な強度を有するフィルムを得ることができる。
〔積層体〕
本発明の積層体は、表面層(α)/必要に応じて設けられる1層以上の中間層/表面層(β)からなり、少なくとも表面層(α)が上述のオレフィン系重合体組成物からなる層であることを特徴とする。特に、離型フィルムとして使用する際に表裏の区別が不要であるため、表面層(α)および(β)が上述のオレフィン系重合体組成物からなる層であることが好ましい。
上記積層体を構成する、上述のオレフィン系重合体組成物からなる層以外の表面層および中間層は、高い耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなることが好ましい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル;ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド11、ポリアミド12などのポリアミド;エチレン・アクリル酸エステル共重合体;ポリメチルペンテン;フッ素系樹脂が挙げられる。また、前記熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、ノバデュラン(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)、アミラン(商品名、東レ(株)製)、TPX(商品名、三井化学(株)製)が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤などのポリオレフィン系重合体に配合される公知の添加剤を配合してもよい。なお、上記熱可塑性樹脂および添加剤の混合方法としては、ドライブレンドや押出機による溶融ブレンドなどの公知の方法が挙げられる。
本発明の積層体は上記構成を有する積層体であれば特に限定されないが、FPCなどのプリント配線基板を製造する際に離型フィルムとして好適に用いることができることから、融点が特定の範囲にある耐熱性樹脂(1)および軟質樹脂(2)を含有する樹脂組成物からなるクッション層を中間層として有する積層体であることが好ましい。
ここで、クッション層とは、カバーレイ層やFPC表面の凸凹に追従することで、カバーレイ層の端面から該カバーレイ層とFPCとの間に設けられる接着剤層が電気回路の端子部分上に溶出すること(はみ出すこと)を防止する、いわゆるクッション性を有する層をいう。
また、一般にその他の樹脂との接着性が弱いオレフィン系重合体(A)を含む上述のオレフィン系重合体組成物からなる層と、クッション層との接着性を向上させるために、これらの層間に接着剤層を設けてもよい。このような接着剤としては、例えば、国際公開2006−120983号公報パンフレット(8〜12頁)に記載の樹脂組成物が好ましく用いられる。
<クッション層>
上記クッション層は、融点が190℃以上の耐熱性樹脂(1)、および融点が170℃以下の軟質樹脂(2)を含有する樹脂組成物からなる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、融点が170℃を超えて190℃未満である熱可塑性樹脂、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤などのポリオレフィンに配合される公知の添加剤を配合してもよい。
上記樹脂組成物において、耐熱性樹脂(1)の含有量は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは10〜45重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。また、軟質樹脂(2)の含有量は、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%である。なお、耐熱性樹脂(1)および軟質樹脂(2)と、上記添加剤との合計を100重量%とする。
また、上記樹脂組成物の、ASTM D1238に準じ、荷重2.16kg、温度230℃で測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常は0.4〜10g/10分、好ましくは0.4〜9g/10分、より好ましくは0.4〜5g/10分、さらに好ましくは0.5〜4g/10分、特に好ましくは0.5〜3g/10分である。
上記樹脂組成物からなるクッション層を有する積層体を、例えばFPCを製造する際に離型フィルムとして用いることで、カバーレイ層とFPCとの間に設けられる接着剤層や積層体自体が有する接着剤層のはみ出しを防止できるとともに、クッション層自体のはみ出しも防止することができる。
≪耐熱性樹脂(1)≫
耐熱性樹脂(1)は、示差走査熱量計によって測定される融点が190℃以上、好ましくは190〜250℃、さらに好ましくは200〜250℃の樹脂である。融点が190℃以上であると、FPCの製造において加熱および加圧工程の際に該樹脂が溶出することなく、クッション層のはみ出しを低減することができる。また、融点が250℃以下であ
ると、押出機を用いて溶融混練することにより、耐熱性樹脂(1)と軟質樹脂(2)との分散性が良好な樹脂組成物を得ることができる。
また、耐熱性樹脂(1)の、ASTM D1238に準じ、荷重5kg、温度260℃で測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常は0.5〜200g/10分、好ましくは1〜150g/10分、より好ましくは10〜100g/10分である。
上記の条件を満たす耐熱性樹脂(1)としては、例えば、上述のオレフィン系重合体組成物で例示した4−メチル−1−ペンテン系重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル;ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド11、ポリアミド12などのポリアミドが挙げられる。これらの樹脂は市場から容易に入手することができ、例えば、ノバデュラン(商品名、三菱エンプラ(株)製)、アミラン(商品名、東レ(株)製)が挙げられる。また、これらの耐熱性樹脂(1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪軟質樹脂(2)≫
軟質樹脂(2)は、示差走査熱量計によって測定される融点が170℃以下、好ましくは70〜170℃、さらに好ましくは80〜165℃、特に好ましくは90〜130℃の樹脂である。軟質樹脂(2)は融点が低く、FPCの製造において加熱および加圧工程の際に該樹脂(2)が容易に変形して、電気回路を形成した基板表面の凹凸に追従し、該基板とカバーレイ層との間に設けられた接着剤層がFPCの電気回路上に溶出することを防止する、いわゆるクッション機能を有する樹脂である。
軟質樹脂(2)の融点が170℃以下であれば、FPCの製造において加熱および加圧工程の際に該樹脂(2)が容易に変形して電気回路を形成した基板表面の凹凸に追従することができる。また、融点が70℃以上であれば、軟質樹脂(2)が多量に溶出することがなく、クッション層のはみ出しを少なくできる。
また、軟質樹脂(2)の、ASTM D1238に準じ、荷重2.16kg、温度230℃で測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常は0.8〜25g/10分、好ましくは1〜20g/10分、より好ましくは1〜15g/10分である。
上記の条件を満たす軟質樹脂(2)としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、ブテンの単独重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体が挙げられる。また、耐熱性樹脂(1)としてポリエステルやポリアミドを用いる場合、該樹脂(1)との相溶性を良くするために、これらの軟質樹脂を不飽和カルボン酸やその誘導体によりグラフト変性した樹脂を用いてもよい。
また、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、およびこれらの部分イオン架橋物が挙げられる。
これらの中では、温度130℃付近で溶融することから、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(エチレンに由来する構成単位の含有量が80重量%以上の、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体)、プロピレンの単独重合体、プロピレン・ブテン共重合体、および無水マレイン酸でグラフト変性したポリエチレンが好ましい。
これらの軟質樹脂(2)は市場から容易に入手することができ、例えば、エバフレックス(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)、ニュクレル、エバテート、スミテート(商品名、住友化学(株)製)が挙げられる。また、これらの軟質樹脂(2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<積層体の製造>
本発明の積層体は、Tダイ装置を用いた共押出成形法、加熱プレス法や溶媒キャスト法で各層を単層で製膜し、これを積層して加熱圧着する方法などの公知の方法によって製造できる。これらの中では、各層の膜厚を均一にでき、また幅広の積層体が得られる点で、Tダイ装置を用いた共押出成形法が好ましい。
本発明の積層体は、その全厚みが通常は20〜300μm、好ましくは20〜200μmであり、上述のオレフィン系重合体組成物からなる層の厚み(表面層(α)および(β)がともに該組成物からなる層である場合には、それぞれの層の厚み)が通常は5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。また、中間層としてクッション層を設ける場合には、その厚みが通常は10〜200μm、好ましくは10〜140μmである。積層体の全厚みおよび各層の厚みが前記範囲にあると、適度なクッション性を有し、成形時にピンホールなどを生じることなく、充分な強度を有する積層体を得ることができる。
〔離型フィルム〕
本発明の離型フィルムは、上述のフィルムまたは積層体からなり、例えば、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板、リジッドフレキシブル基板などのプリント配線基板製造用離型フィルム、航空機部品に使用されるACM(Advanced Composite Material)用離型フィルム、エポキシ系やフェノール系などの半導体封止材用離型フィルム、FRP(Fiber Reinforced Plastics)成形用離型フィルム、ゴムシート硬化用離型フィルム、特殊粘着テープ用離型フィルムとして用いることができる。なお、本発明において離型フィルムとは、前記基板やフィルムなどを製造・成形する際に、これらが他の部材と接着しないように分離する目的で使用されるフィルムをいう。
これらの中でも、熱硬化型の接着剤を用いて、電気回路を形成した基板とカバーレイ層とを金属板に挟んで加熱および加圧して接着する際に、カバーレイ層と金属板とが接着することを避けるために、その中間に挟んで使用するFPC製造用の離型フィルムとして好適に用いることができる。
上記のようにFPCを製造する際に本発明の離型フィルムを用いることにより、離型フィルムを剥離した後に行われる、FPCの電気回路の端子部分と異方導電性フィルム(ACF)や異方導電性ペースト(ACP)を介して電子部品とを電気的に接続する工程において、端子部分と電子部品との接着性を向上させることが可能となる。また、上述の積層体からなる本発明の離型フィルムは、少なくとも一方の表面層がオレフィン系重合体(A)を含む上述のオレフィン系重合体組成物からなるため、耐熱性および離型性に優れる。
次に本発明のオレフィン系重合体組成物について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<融点(Tm)>
オレフィン系重合体(A)の融点(Tm)は以下のようにして測定した。
示差走査熱量計(DSC)(パーキンエルマー社製、PYRIS−I型)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下、280℃で5分間加熱して溶融させた後、20℃/分の降温速度
で室温まで冷却して結晶化させ、室温にて10分間保った後、10℃/分の昇温速度で加熱した際の試料の吸熱曲線を求め、そのピーク温度を試料の融点とした。
[実施例1]
オレフィン系重合体(A)として4−メチル−1−ペンテン・1−デセン共重合体粉末(1−デセン由来の構成単位の含有量=3.0重量%、融点230℃)100重量部、硫黄系耐熱安定剤(B)としてペンタ(エリスリチル−テトラ−β−メルカプトラウリル)プロピオネート(シプロ化成(株)、商品名:シーノックス412S)0.5重量部、その他の耐熱安定剤としてテトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)、商品名:イルガノックス1010)0.12重量部、およびステアリン酸亜鉛(堺化学(株)、SZ−2000)0.03重量部を混合し、タンブラーにて20分間攪拌した。得られた混合物を2軸押出機を用いて280℃の条件で溶融混練し、オレフィン系重合体組成物からなるペレットを得た。
[実施例2]
実施例1において、ペンタ(エリスリチル−テトラ−β−メルカプトラウリル)プロピオネートの配合量を1.0重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。
[比較例1]
実施例1において、ペンタ(エリスリチル−テトラ−β−メルカプトラウリル)プロピオネートの配合量を0.2重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。
[比較例2]
実施例1において、硫黄系耐熱安定剤(B)に代えてリン系耐熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)、商品名:イルガフォス168)0.5重量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。
〔評価〕
以上の実施例および比較例で得られたペレットを用いて、下記条件により離型フィルムを製造し、該フィルムを用いて下記のようにしてACF接着強度を測定した。結果を表1に示す。
(1)離型フィルムの製造条件
押出機:サーモプラスティックス工業(株)社製、30mmφ
シリンダー温度:C1/C2/C3/C4/DA/D1/D2=300/310/310/310/310/310/310(℃)
冷却ロール温度:60℃
引取速度:7m/分
膜厚:50μm
(2)プリント配線基板と離型フィルムとの接着
プリント配線基板としてネオフレックス(登録商標)NFX−2ABEPFE(25T、三井化学(株)製、構成:銅箔/ポリイミド/銅箔)を用い、これを40ポーメ・35℃に設定された塩化第二鉄水溶液中に10分間浸漬することで銅箔層を完全にエッチングオフし、ポリイミドフィルムを得た。
次いで、上記ポリイミドフィルムと上記離型フィルムとを積層し、温度200℃、圧力
5MPaの条件で90分間熱プレスを行い、積層物を得た。
(3)プリント配線基板とACFとの接着
上記積層物から上記離型フィルムを剥離し、次いでポリイミドフィルムを短冊状に切り出した。この短冊状ポリイミドフィルムとダミーチップとを、ACF(ソニーケミカル(株)製、FP16613 7.5mm幅)を介して、温度80℃にて10秒間仮圧着し、さらに、温度230℃、荷重15kg/cm2の条件で10秒間熱圧着を行った。得られ
た積層物に対して、23℃、100mm/minにて90°ピール試験を行い、ポリイミドフィルムとACFとの接着強度を測定した。
Figure 0005072755

Claims (4)

  1. オレフィン系重合体(A)と硫黄系耐熱安定剤(B)とを含有する組成物であって、該オレフィン系重合体(A)100重量部に対する該硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量が、0.5重量部以上であり、前記オレフィン系重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテン系重合体であるオレフィン系重合体組成物
    からなるプリント配線基板製造用離型フィルム
  2. 少なくとも一方の表面層が
    オレフィン系重合体(A)と硫黄系耐熱安定剤(B)とを含有する組成物であって、該オレフィン系重合体(A)100重量部に対する該硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量が、0.5重量部以上であり、前記オレフィン系重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテン系重合体であるオレフィン系重合体組成物
    からなる層である積層体からなるプリント配線基板製造用離型フィルム
  3. 前記オレフィン系重合体(A)100重量部に対する前記硫黄系耐熱安定剤(B)の含有量が、0.5〜5.0重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線基板製造用離型フィルム
  4. 前記4−メチル−1−ペンテン系重合体の融点(Tm)が、200℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリント配線基板製造用離型フィルム
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