JP5071751B2 - 発光素子の指向性調整装置 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は発光素子の指向性調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
距離測定装置は、発光ダイオード等の発光素子から出射したレーザ光を測定対象物に照射し、測定対象物からの反射光を受光素子で受光し、レーザ光を出射してから受光素子で受光されるまでの時間を測定することによって測定対象物までの距離測定を行なう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、発光素子には指向性のバラツキが存在する。この指向性のバラツキが許容限度を超えた場合にはケラレ等を生じ光出力が減少し、距離測定装置の性能を高めることができないという問題が発生する。
【0004】
この問題に対して、従来においてはバラツキが許容限度内にある発光素子を選別して使用していたが、選別された発光素子であっても光軸中心と完全に一致する指向性を有するものを選択することは困難である。
【0005】
そのため、従来装置では性能を向上させることが困難なだけでなく、使用できない発光素子を大量に出してしまうことになり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は発光素子の指向性のバラツキをなくして性能を高めることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる発光素子の指向性調整装置を提供することである。
【0007】
前述の課題を解決するため請求項1記載の発明は、対物レンズを通して発光素子からの出射光を測定対象物に照射し、前記測定対象物からの反射光を受光することにより前記測定対象物までの距離を測定する距離測定装置、に組み込まれる前記発光素子の指向性を調整する発光素子の指向性調整装置において、前記発光素子を保持する第1の固定手段と、前記第1の固定手段を前記発光素子を中心に転動可能に保持し、前記発光素子からの出射光の方向を調整する第2の固定手段と、この第2の固定手段と係合し、前記第1の固定手段を前記第2の固定手段に押し付けて前記第1の固定手段の転動を阻止する第3の固定手段と、前記第3の固定手段と係合し、発光レンズを保持する発光レンズ鏡筒とを備え、前記発光レンズの光軸に対して前記発光素子の指向性を調整することを特徴とする。
【0008】
発光素子の指向性が光軸中心からズレているとき、発光素子を保持する第1の固定手段を転動させて発光素子の出射方向を光軸中心に合わせることができる。その後、第3の固定手段によって第1の固定手段を第2の固定手段に係合させて第1の固定手段が回転しないように固定する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発光素子の指向性調整装置において、前記第1の固定手段の形状は、一部がくりぬかれた球面形状を有し、当該第1の固定手段はくりぬかれた部分でかつ前記球面形状のほぼ中心部に前記発光素子を配置しており、外周面に球面凸部が形成され、前記第2の固定手段の内周面に前記第1の固定手段の外周面と摺動可能に嵌合する球面部が形成され、前記第3の固定手段の内周面に前記発光レンズを保持する発光レンズ鏡筒の外周面と螺合するねじが形成されていることを特徴とする。
【0010】
球面凹部の第2の固定手段に対して球面凸部の第1の固定手段を任意の方向へ回転させることができる。
【0012】
発光素子の指向性のバラツキがない距離測定装置を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1はこの発明の一実施例に係る距離測定装置の正面図、図2はその上面図、図3はその側面図である。
【0015】
距離測定装置1の正面及び背面にはそれぞれ側板11がねじ12によってボディ13に取り付けられている。
【0016】
距離測定装置1の一方の側面には対物レンズ14と受光レンズ15とが配置されている。また、距離測定装置1の他方の側面の接眼部には目当てゴム16が取り付けられている。
【0017】
距離測定装置1の上面には電源・測定スイッチ17とモードスイッチ18とが配置されている。
【0018】
モードスイッチ18を押す毎に、測定距離単位(メートル(m)とヤード(YD))、間隔測定モード(測定距離>100)が順番に切り替わる(図7参照)。
【0019】
図4は図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【0020】
距離測定装置1は、レーザ発光部20と、光路変換ミラー21と、プリズム22と、対物レンズ14と、LCD表示部23と、接眼レンズ24と、受光レンズ15と、受光部25と、電源部26とを備える。
【0021】
レーザ発光部20には例えばレーザダイオードが用いられる。このレーザ発光部20は指向性調整装置30を備えている。
【0022】
光路変換ミラー21は発光部20から出射され、発光レンズ31を通過した出射光をプリズム22、対物レンズ14を介してターゲット5へ向けるように導く。
【0023】
LCD表示部23は対物レンズ14と接眼レンズ24とを結ぶ光軸L上に配置されている。
【0024】
受光部25は例えばフォトダイオードが用いられる。受光部25の受光電流は演算・制御回路40(図5参照)へ出力される。
【0025】
図5は演算・制御回路を説明するブロック構成図である。
【0026】
演算・制御回路40は、CPU41と、LCDドライバ42と、カウンタ43と、タイミングコントローラ44と、LDドライバ45と、増幅回路46と、コンパレータ47とを備えている。
【0027】
タイミングコントローラ44はクロック発生回路44Aとスタート信号回路44Bとを備える。
【0028】
クロック発生回路44Aは、水晶発振子やセラミック発振子を用いて発生したマスタクロックを、例えばフリップフロップで分周して基準クロックとなるクロック信号44aを発生させる。このクロック信号44aは、トリガ信号41aが入力したとき、カウンタ43へ出力される。
【0029】
スタート信号回路44Bはクロック信号44aの入力に同期してスタート信号44bを出力する。
【0030】
LDドライバ45は、スタート信号44bを入力したとき、投光信号45aを発生する。
【0031】
このLDドライバ45は、npnトランジスタと、エミッタ抵抗を備え、スタート信号に基づいてレーザ発光部20を定電流駆動して一定時間点灯させる構成とする。
【0032】
増幅回路46は受光素子25の受光電流を光パワーに応じた電圧信号に変換して増幅する。
【0033】
コンパレータ47は増幅回路46の出力と閾値となる基準電圧とを入力し、増幅回路46の出力が閾値レベルを越えたとき、例えばHレベルのストップ信号47aを出力する。
【0034】
カウンタ43は、スタート信号44bを入力したとき、カウントを開始し、ストップ信号47aを入力したとき、カウントを終了し、カウント値をCPU41に出力する。
【0035】
CPU41は距離計算部(測定手段)41Aを備えている。
【0036】
距離計算部41Aは基準クロックの周波数とカウント値とから得られたターゲット5までの往復時間と光速とからターゲット5までの距離dを計算し、表示信号41bを出力する。
【0037】
CPU41は、電源・測定スイッチ17が押されて測定スタート信号17aが入力したとき、タイミングコントローラ44へトリガ信号41aを出力する。
【0038】
なお、電源・測定スイッチ17が一定時間(例えば8秒)操作されないとき、CPU41はLCD表示部23等への電力の供給を止める。
【0039】
LCDドライバ42は表示信号41bを入力したとき、点灯信号42aを出力してLCD表示部23を点灯させる。
【0040】
次に、この距離測定装置を用いて直線距離を測定する方法を説明する。
【0041】
図6は距離測定装置とターゲットとの関係を説明する図、図7は図6におけるLCD表示部の拡大図である。
【0042】
図6では木(ターゲット5)までの距離をdとしている。
【0043】
まず、電源・測定スイッチ17を押して、このLCD表示部23にレチクル23A、単位23B、電池残量23C、モード23D等を表示させる。これらの表示はターゲット5の像と重ね合せて接眼レンズ24を通して見ることができる(図7参照)。
【0044】
次に、ターゲット5にレチクル23Aの位置を合わせ、電源・測定スイッチ17を再度押してターゲット5に向けてレーザ光を照射する。
【0045】
ターゲット5からの反射光が受光部25で受光され、距離計算部41Aでターゲット5までの距離dが計算され、LCD表示部23に距離dが表示される。
【0046】
図8は図4の部分拡大図である。
【0047】
指向性調整装置30は、発光素子20を保持する第1の固定部材(第1の固定手段)32と、第1の固定部材32をYZ方向へ転動可能に保持し、発光素子20からの出射光の方向を調整する第2の固定部材(第2の固定手段)33と、この第2の固定部材33と係合し、第1の固定部材32の回転を阻止する第3の固定部材(第3の固定手段)34とを備えている。
【0048】
第1の固定部材32の外周面の形状は球面であり、球の中間部をくり抜き、球のほぼ中心部に発光素子を設置した状態になっている。
【0049】
この第2の固定部材33の内周面には第1の固定部材32の外周面と摺動可能に嵌合する球面凹部が形成されている。
【0050】
したがって、第1の固定部材32は第2の固定部材33中で発光素子20を中心に全ての方向へ位置設定できるようになっている。そのため、発光素子20から出射されるレーザ光の光軸を上下左右の全ての方向へ自由に設定することができる。
【0051】
第2の固定部材33はボディ13に支持されている。第2の固定部材33の内周面には雌ねじ33aが形成されている。
【0052】
第3の固定部材34の外周面には雌ねじ33aと螺合する雄ねじ34aが形成されている。そのため、第3の固定部材34を第2の固定部材33に対して締め込んで第1の固定部材32を第2の固定部材33に押し付けることができる。
【0053】
第3の固定部材34の内周面には発光レンズ鏡筒35の外周面に形成された雄ねじ35aと螺合する雌ねじ34bが形成されている。そのため、発光レンズ鏡筒35を第3の固定部材34に対して光軸L方向(X方向)へ矢印のように移動させて発光素子20とミラー21との間隔Dを調整することができる。
【0054】
また、この第3の固定部材34には光軸Lに直交する方向へ延びる雌ねじ34cが形成されている。この雌ねじ34cには発光レンズ鏡筒35の移動を阻止するための雄ねじ36が螺合している。
【0055】
次に、発光素子の指向性の調整方法を説明する。
【0056】
図9は発光素子の指向性を調整する前の状態を示す指向性調整装置の断面図、図10は発光素子の指向性を調整した後の状態を示す指向性調整装置の断面図である。
【0057】
発光素子20の指向性が光軸Lに対してズレているとき(図9参照)、第1の固定部材32を転動させ、発光素子20の指向性を光軸Lに一致させ(図10参照)、光軸L方向に対する発光素子20からの出射光のズレをゼロにする。
【0058】
その後、第3の固定部材34を締め込んで第1の固定部材32の球面凸部を第2の固定部材33の球面凹部に押し付け、第1の固定部材32が回転しないように固定する。
【0059】
光軸Lに一致させる方法としては、テレビコリメータを用いた方法がある。この方法では、まずテレビコリメータの測定部に設けられた指標と距離測定装置のLCD表示部のレチクルとを合わせ、レーザ光を出射する。出射されたレーザ光のスポットはテレビコリメータの測定部に表示される。このレーザ光のスポットとテレビコリメータの指標とが一致するように発光素子20の向きを調整する。
【0060】
なお、距離測定装置1は、発光素子20の指向性を調整する以外に、発光出力を最大にして対物レンズ14の光軸Lとレチクル23Aの中心から投射させるための光軸との調整をしたり、ピント調整(間隔Dを調整する)をしたりする。
【0061】
この実施形態によれば、光軸Lに対する発光素子20の指向性のバラツキをなくすことができるので、高性能な距離測定装置1を得ることができる。
【0062】
また、従来のように多くの発光素子20の中から許容限度内のものを選別する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明の指向性調整装置によれば、光軸に対する発光素子の指向性のバラツキをなくすことができるとともに、従来のようにバラツキの少ない発光素子を選択するための作業を省略でき、製造コストを低減することができる。
【0064】
請求項2記載の発明の指向性調整装置によれば、第1の固定手段を転動させるだけで発光素子の出射方向を変えて光軸中心に対する発光素子の指向性のバラツキをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の一実施例に係る距離測定装置の正面図である。
【図2】図2はこの発明の一実施例に係る距離測定装置の上面図である。
【図3】図3はこの発明の一実施例に係る距離測定装置の側面図である。
【図4】図4は図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図5は演算・制御回路を説明するブロック構成図である。
【図6】図6は距離測定装置とターゲットとの関係を説明する図である。
【図7】図7は図6におけるLCD表示部の拡大図である。
【図8】図8は図4の部分拡大図である。
【図9】図9は発光素子の指向性を調整する前の状態を示す指向性調整装置の断面図である。
【図10】図10は発光素子の指向性を調整した後の状態を示す指向性調整装置の断面図である。
【符号の説明】
1 距離測定装置
20 発光素子
30 指向性調整装置
32 第1の固定部材(第1の固定手段)
33 第2の固定部材(第2の固定手段)
34 第3の固定部材(第3の固定手段)

Claims (2)

  1. 対物レンズを通して発光素子からの出射光を測定対象物に照射し、前記測定対象物からの反射光を受光することにより前記測定対象物までの距離を測定する距離測定装置、に組み込まれる前記発光素子の指向性を調整する発光素子の指向性調整装置において、
    前記発光素子を保持する第1の固定手段と、
    前記第1の固定手段を前記発光素子を中心に転動可能に保持し、前記発光素子からの出射光の方向を調整する第2の固定手段と、
    この第2の固定手段と係合し、前記第1の固定手段を前記第2の固定手段に押し付けて前記第1の固定手段の転動を阻止する第3の固定手段と、
    前記第3の固定手段と係合し、発光レンズを保持する発光レンズ鏡筒とを備え、
    前記発光レンズの光軸に対して前記発光素子の指向性を調整することを特徴とする発光素子の指向性調整装置。
  2. 前記第1の固定手段の形状は、一部がくりぬかれた球面形状を有し、当該第1の固定手段はくりぬかれた部分でかつ前記球面形状のほぼ中心部に前記発光素子を配置しており、外周面に球面凸部が形成され、前記第2の固定手段の内周面に前記第1の固定手段の外周面と摺動可能に嵌合する球面部が形成され、前記第3の固定手段の内周面に前記発光レンズを保持する発光レンズ鏡筒の外周面と螺合するねじが形成されていることを特徴とする請求項1記載の発光素子の指向性調整装置。
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