JP2004101421A - 光学式測距装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学式測距装置において、効率的で正確な光軸位置調整を実現する。
【解決手段】光学式測距装置は、光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と、対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、対象物の光軸方向距離を測定する。投光部は、光軸方向に光束を集束するレンズ21と、レンズ21を保持する保持枠22と、光束を放射する発光素子23を搭載し且つレンズ21に対向して保持枠22に取り付けられる基板26とからなる。互いに対向するレンズ21と発光素子23との間の溝29に透明板を挿入可能とし、レンズ21に対する発光素子23の光軸方向位置を光学的に調整する。
【選択図】 図2
【解決手段】光学式測距装置は、光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と、対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、対象物の光軸方向距離を測定する。投光部は、光軸方向に光束を集束するレンズ21と、レンズ21を保持する保持枠22と、光束を放射する発光素子23を搭載し且つレンズ21に対向して保持枠22に取り付けられる基板26とからなる。互いに対向するレンズ21と発光素子23との間の溝29に透明板を挿入可能とし、レンズ21に対する発光素子23の光軸方向位置を光学的に調整する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学式測距装置に関する。より詳しくは、カメラなどに組み込まれ、自動焦点合わせなどに使われる小型の光学式測距装置の実装構造に関する。更に詳しくは、投光用のレンズに対する発光素子の位置調整技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学式測距装置は、光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、対象物の光軸方向距離を測定するものである。係る光学式測距装置はカメラなどに組み込まれて自動焦点合わせなどに多用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−132722号公報
【特許文献2】
特開平11−287946号公報
【特許文献3】
特開平11−304472号公報
【特許文献4】
特開2000−338391号公報
【0004】
図6に示す様に、従来の光学式測距装置1は光軸方向にある対象物(図示省略)に向かって光束LBを投光する投光部2と、対象物から戻って来る光束LBを受光する受光部3とを用いて、対象物の光軸方向距離を三角測量の原理に基づいて測定するものである。投光部2は、光軸方向に光束LBを集光するレンズ21と、このレンズ21を保持する保持枠22と、この保持枠22に取り付けられ、レンズ21に向かって光束LBを発する発光素子23とから構成されている。発光素子23は例えば赤外LEDチップからなり、金属のフレーム24に取り付けられている。赤外LEDチップはフレーム24に搭載されたままモールド25でパッケージされている。フレーム24は基板26に半田付けされる。この様にして、発光素子23は基板26を介し保持枠22に取り付けられる。一方受光部3は対象物から戻ってきた光束LBを集束するレンズ31と、このレンズ31を保持する為の保持枠32と、保持枠32に取り付けられたPSDなどの受光素子33とからなる。尚、受光素子33は基板36に搭載された状態で、対応する保持枠32に取り付けられる。
【0005】
対象物の光軸方向位置に応じて、投光部2から発した光束LBと対象物から反射して受光部3に向かう光束LBとの成す角θが変化する。このθの値に応じ受光素子33の受光位置が変化する。受光素子33はこの受光位置を電気的に検出して、対応する検出信号をカメラの制御側に送る。カメラの制御部は検出信号を解析して対象物の光軸方向位置を測定する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
正確な測定結果を得る為には、光軸に対して発光素子を精密に位置決め調整する必要がある。第一に、レンズと発光素子との間の光軸間距離を調整する必要があり、以下本明細書では光軸距離調整と呼ぶ場合がある。この光軸距離調整は対象物に投光する光束のスポット像のボケを抑制することを主目的としており、その意味でボケ調整と呼ぶ場合がある。第二に、光軸に対して発光素子の傾きを調整する必要があり、本明細書ではパララックス調整と呼ぶ。パララックス調整はレンズの光軸と直交する方向に発光素子を移動して行なう。前述した様に、発光素子は基板に取り付けられている。従って、光軸距離調整やパララックス調整では、基板を保持枠に対して正確に位置決めする必要がある。しかしながら、光学式測距装置が小型化すると、基板や保持枠も微小になる為、正確な位置決め或いは位置出しが困難になっている。
【0007】
以下、ボケ調整及びパララックス調整に分けて、課題を具体的に説明する。一般に、投光部は投光のスポット像(投光像)を被写体面に集光させる為、測距レンジの中間域に投光像が結像する様に光学系が設定されている。この場合、レンズと発光素子の光軸間距離が光学的に定まる。このレンズと発光素子との間の光軸距離(正確にはレンズと発光素子の発光面との間の光軸間距離)は、僅かな誤差でも結像点が大きく変動する。結像点のずれは被写体面上の投光像にボケを生じ、見掛け上像が拡大される。この為、距離によっては像欠けなどの現象が生じる。又、受光部側のPSDでも受光像が拡大する為、測距誤差が生じ易くなる。
【0008】
発光素子のモールドパッケージは外形誤差やチップ位置誤差を有しており、このばらつき幅による投光像のボケは許容限界を超えるものであり、調整が必要である。これとは別に、発光素子は投光パララックス調整を必要としている。しかしながら、パララックス調整に影響を及ぼすことなく、これとは独立して光軸距離調整を行なう適切な手段が求められており、解決すべき課題となっている。
【0009】
発光素子を用いたアクティブ方式の測距装置は、投光像を被写体上に正確に当てる必要がある。この為、投光部には投光パララックス、投光像の大きさ、投光量などが適切に設定される。投光部構成において、各部品のばらつきや取り付け精度により投光パララックスはばらつきを生じ、所定の設計値(許容値)に収める為には、パララックス調整を必要としている。一般には、発光素子の取り付け位置を変化させてパララックス調整を行なっている。この場合、発光素子の位置出しは、光軸と直交する平面に沿った二次元位置調整となる。その為、発光素子を搭載した基板を保持枠に取り付ける部分に、調整しろとして取付ガタを設けていた。
【0010】
パララックス調整は二次元位置調整(面位置調整)となる為、少なくとも二方向の移動を要し、別途保持枠にガイド壁などを設けることができない。仮に、ガイド壁を設けると、基板の移動方向が一次元に限定される。この為、従来は発光素子を搭載した基板を保持枠に対して直接手動で位置合わせしていた。この場合、満足できる調整精度は得られ難く、パララックス許容値も限定されていた。一般に、発光素子パッケージは、発光素子の位置とモールドにずれがあり、外形基準ではパララックスのずれが生じる。パララックスは、例えばカメラに応用する場合±1度以内が要求される。現実には、発光素子パッケージのばらつきにより、パララックスのずれが二倍程度になってしまう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は効率的で正確な光軸位置調整を実現することを目的とする。この場合、発光素子は投光パララックス調整の為、光軸に対して垂直な面上に沿って調整可能にしておく必要がある。そこで、光軸距離調整とパララックス調整の両者を満足する簡便な手段を講じることを目的とする。係る目的を達成するために以下の手段を講じた。即ち、光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と、該対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、該対象物の光軸方向距離を測定する光学式測距装置であって、前記投光部は、光軸方向に光束を集束するレンズと、該レンズを保持する保持枠と、該光束を放射する発光素子を搭載し且つ該レンズに対向して該保持枠に取り付けられる基板とからなり、互いに対向する該レンズと該発光素子との間に透明板を挿入可能とし、該レンズに対する該発光素子の光軸方向位置を光学的に調整することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、該透明板の有無で該光軸方向位置を二段階に調整可能とする。或いは、厚み若しくは屈折率の異なる複数枚の透明板を選択的に挿入可能として、該光軸方向位置を多段的に調整しても良い。前記保持枠は、該光軸と直交する方向に溝が形成されており、該透明板は該発光素子のパララックスに影響を与えることなく該溝に挿入可能である。該受光部が受光する光束のスポット径に応じて透明板の挿入の有無を決定することができる。
【0013】
好ましくは、該レンズの光軸と直交する方向に関し該発光素子を搭載した該基板の位置を調整するパララックス調整手段を含む。前記パララックス調整手段は、該基板に形成された貫通孔と、該保持枠の該貫通孔と対応する部位に形成された凹部とを含み、該貫通孔を通して該凹部に細棒を挿入し、その先端と該凹部の底面とが接する部分を支点とし該細棒をテコとして、該保持枠に対する該基板の位置を調整可能にする。前記凹部の底面は、該細棒の先端を支持する為に粗面加工されている。前記細棒の先端は尖っており、該凹部の底面に杭い込む様にすると良い。
【0014】
本発明によれば、投光レンズと発光素子との間にガラス又はアクリル樹脂などからなる透明板を挿入可能としている。挿入された透明板の屈折率により、光路長差が生ずる。この光路長差を調整値として、投光像のボケ量調整機構を実現している。投光像のボケ量により、発光素子の光軸方向位置分布をあらかじめ把握しておく。この分布を二区分して、無調整段階では発光素子の位置を短い方の光路長に設定しておく。長い方の光路長差に相当する透明板を挿入可能とすることで、発光素子を上述の二区分(二ゾーン)で使用する様にする。これにより、投光パララックス調整とは無関係に投光像のボケ調整が可能になる。尚、透明板の厚みや屈折率などを変えて、光路長差の値を複数用意し、調整範囲を多ゾーン化することは可能である。
【0015】
又、パララックス調整は、発光素子を搭載した基板に穴部もしくは切欠部を設け、保持枠の対向部位には凹部を設ける。基板の穴部もしくは切欠部に調整棒を挿入し、調整棒と保持枠凹部の底面との当接による押圧摩擦を利用して、調整棒と穴部もしくは切欠部との間に移動力を発生させる。この場合、調整棒は保持枠凹部の底面を支点とし、基板の穴部又は切欠部と調整棒との接触点を作用点として機械的な増幅作用が生じ、パララックスの微調が可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は投光部の光学構成を示す模式図である。投光像はレンズと発光素子との間の光軸距離で結像位置Lが決まる。その関係はL=f2/Δlで表わされる。ここで、fはレンズの焦点距離を表わし、Δlはレンズの後方焦点位置から測った発光素子の発光面までの長さである。又、結像面に現われた投光像のスポットサイズφBは、φB=φA(1+L/f)で表わされる。ここでφAは発光面のサイズを表わしている。尚、発光素子パッケージにドームレンズ付のものを用いた場合、f値は投光用のレンズとドームレンズの合成となり、ほぼドームレンズの倍率分f値が短かくなる。上式においてΔlの値が小さく、発光素子の位置の微小なずれが結像面上における大きな差となって現われる。この関係は、ドームレンズ付の発光素子パッケージを用いた場合には倍加されるものである。例えば、L=3mでf=10mmとした場合、Δlは設計値で0.030mmである。これに対し、ドームレンズ付の発光素子パッケージを用いた場合、ドームレンズの倍率を2.5とすると、Δlは約0.013mmとなり、高精度で光軸方向位置を合わせる必要がある。
【0017】
図2は、本発明に係る光学式測距装置の要部となる投光部を示す模式図である。(A)は投光部の断面構造を表わし、(B)は平面構造を表わしている。尚、本光学式測距装置の全体構成は、図6に示した通りである。図示する様に、投光部は基本的にレンズ21と保持枠22と基板26とからなる。レンズ21は光束を集束する。保持枠22は鏡胴枠とも呼ばれ、その前面部に前述した投光用のレンズ21を保持している。この保持枠22は例えばモールド樹脂の成形品からなる。基板26は光束を放射する発光素子23を搭載している。本実施形態では、発光素子23はフレーム24に組み込まれた状態で全体的にモールド25で固められたパッケージ構成となっている。尚、モールド25にはドーム状のレンズも形成されており、投光用のレンズ21と合わせて発光素子23から放射される光束を対象物に向けて集束している。このパッケージが基板26に半田付けなどで取り付けられている。基板26はレンズ21と対向して保持枠22の後面側にネジ51,52で取り付けられている。
【0018】
(B)に示す様に、基板26は保持枠22よりも一回り小さく矩形である。保持枠22の中央部に開口22aが形成されており、ここに発光素子のモールド25が基板26に搭載された状態で組み込まれている。
【0019】
(A)に示す様に、本発明の特徴事項として、互いに対向するレンズ21と発光素子23との間に透明板を挿入可能とし、レンズ21に対する発光素子23の光軸方向位置Dを光学的に調整する。尚、図ではレンズ21の後面とドームレンズの前面との間の間隔を、光軸方向位置Dで表わしている。具体的には、保持枠22は光軸と直交する方向に溝29が形成されており、透明板は発光素子23のパララックスに影響を与えることなくこの溝29に挿入可能である。尚、パララックス調整は、保持枠22の後面に対する基板26の取付位置を変えることで行なっている。これについては、後で詳細に説明する。本実施形態では、透明板の有無で二段階に光軸距離Dを調整可能としている。場合によっては、厚みもしくは屈折率の異なる複数枚の透明板を選択的に溝29に挿入可能とすることで、多段的に光軸距離Dを調整することも可能である。二段階で光軸距離Dを調整する場合、受光部(図示せず)が受光する光束のスポット径に応じて透明板の挿入の有無を決定することができる。
【0020】
図3は、投光像スポット径と調整対象となる光軸距離Dとの関係を示すグラフである。縦軸は被写体距離を3mとした場合の投光像スポット径を表わし、横軸は設計基準となる光軸位置Dからの誤差ΔDを表わしている。理想的な場合、誤差ΔDが0の時、スポット径φは100mmとなる様に投光部の光学系が設計されている。しかしながら現実にはレンズなどの収差がある為、点線で示す様に誤差ΔDが0の場合でも、スポット径は110mm程度になる。この様に、スポット径は様々な要因により拡大方向にぼける訳であるが、例えばφ=120mmまでが許容範囲であるとする。一方、ΔDは機械的なガタ要因や寸法誤差などから−0.2mmから+0.2mmの間で変動する。ΔDが−0.2になるとスポット径は140mmに達し許容範囲を超える。同様に、ΔDが+0.2になるとスポット径は140mmまで拡大し、許容範囲を超えてしまう。従って、現実にはボケを除く為光軸距離調整が必要であり、本発明に従って透明板が調整部材として用いられる。
【0021】
(B)は透明板を用いた具体的な調整手法を模式的に表わしたグラフである。(A)と同様に、縦軸にスポット径を取り、横軸にΔDを取ってある。本実施形態は、透明板の挿入の有無で、二段階調整を行なっている。まず、透明板無しの状態では、あらかじめΔDの分布の中央値から負側に−0.1だけずれた位置に、Dの設計値を設けている。従って、透明板が無い状態では、ΔDとスポット径φとの関係はV字形の直線V1で表わされる。この場合、実際の製品でΔDが−0.2から0の範囲にあればスポット径は120mm以下となり、ボケが許容範囲に収まる。しかしながら、ΔDが正側にずれた場合、スポット径φは120mmを超えて許容範囲外となる。そこで、この場合には透明板を挿入することでDの値を−0.1から+0.1に光学的に移動する。その結果、ΔDとスポット径φとの関係はV字形の直線V2で表わされる。これによれば、ΔDが0から+0.2の間で正側に分布しても、スポット径φは120mm以下に抑えることができる。この様に、二段階調整を行なうことで、スポット径を許容範囲の120mm以下に抑えることが可能となる。
【0022】
透明板として例えば厚みtのアクリル板を使うと、D値の変化ΔD’はΔD’=t(1−1/1.47)で表わされる。尚1.47はアクリル板の屈折率を表わしている。この式から明らかな様に、透明板を挿入することで、光路長が約板厚tの1/3程度長くなることになる。(B)に示す様に、透明板を挿入した時、初期の分布V1を挿入後の分布V2に切り換える為、光路差を−0.1から+0.1まで0.2だけ増加させる必要がある。アクリル板の厚みtを0.6mmとすることで、対応が可能である。
【0023】
尚、透明板の挿入は光軸に対して垂直に行なわれる為、パララックスには基本的に関係せず、独立して投光像のスポット径を許容値に入れることができる。アクリル板の挿入の有無の選択は、実際の投光像のスポット径により判定する。本実施形態の場合、二ゾーンに設定している為アクリル板無しを基準としスポット径の大きい場合アクリル板挿入とすることで対応できる。尚、投光像のスポット径は投光パララックス調整時に確認すればよく、特にボケ調整を行なうことはない。尚、アクリル板厚の差や枚数の組み合わせにより、三ゾーン以上の多ゾーン設定も可能である。アクリル板挿入による光量減衰は約7%程度と見られ、実用上問題ないレベルである。
【0024】
図4は、本発明に係る光学式測距装置の光学構成を示す模式図である。測距対象となる対象物0が光軸上にある場合で距離をLで表わしてある。又、投光部2と受光部3との間の距離をBで表わしている。対象物0上に投光される投光像のスポット径φBは、φB=φA(1+L/f)で表わされる。φAは発光素子23のサイズを表わし、fはレンズ21の焦点距離を表わしている。尚、図示の様に発光素子23のモールド25にドームレンズが含まれる場合、上式のfは投光レンズ21とドームレンズの合成焦点距離fAで置き換えることになる。
【0025】
投光パララックスと投光像の大きさで対象物0上に投光された投光像の距離Lが決まる。投光パララックスのずれは投光像と対象物0の関係とともに、PSDなどからなる受光素子33の受光位置の変動として現われる。この為投光パララックスのずれ量が大きいとPSDの位置調整が必要となる。受光部3においては、PSDのチップ位置ばらつきは電気的にデータをシフトすることで、ある程度補正することが可能であるが、投光パララックスの量が大きくなると投光部2側で調整を必要とする。
【0026】
図5は、パララックス調整手段を示す模式図である。(A)はパララックス調整手段を組み込んだ投光部の断面図、(B)は同じく背面図、(C)はパララックス調整手段を示す要部拡大図である。尚、理解を容易にする為、図2に示した投光部と対応する部分には対応する参照番号を付してある。本パララックス調整手段は、レンズ21の光軸と直交する方向に関して発光素子23を搭載した基板26の位置を調整する。(B)及び(C)によく表われている様に、このパララックス調整手段は基板26に形成された貫通孔28と、保持枠22の貫通孔28と対応する部位に形成された凹部27とを含む。(C)に最もよく表われている様に、貫通孔28を通して凹部27に細棒70を挿入し、その先端と凹部27の底面とが接する部分を支点とし細棒70をテコとして、保持枠22に対する基板26の位置を調整可能にする。凹部27の底面は細棒70の先端を支持する為に粗面加工されている。細棒70の先端は尖っており、凹部27の底面に食い込む様になっている。
【0027】
図示する様に、基板26に形成された調整用の貫通孔28はその開口径が比較的小さい。これに対し、保持枠22の対応する部分に形成された調整用の凹部27はその開口寸法が比較的大きい。両者がおおよそ重なる様にまず粗調整を行なう。この後、貫通孔28を通して凹部27に細棒70を挿入する。細棒70の先端と凹部27の底部とが接する部分を支点とし細棒70の後端部をテコとして、保持枠22に対する基板26の位置を微調整可能である。
【0028】
調整用凹部27は例えば偏平円筒形状を有する。その開口径は基板26に形成された貫通孔28の開口径よりも大きい。従って、細棒70は360度所望の方向に傾けて凹部27に挿入することができる。凹部27の底は好ましくは粗面となっており、細棒70の先端と摩擦的に固定される。固定された先端を支点とし貫通孔28と細棒70の接する部分を作用点とし細棒70の後端部に力を加えることで、テコの原理により基板26を所望の方位に微小量移動可能である。その際、基板26の移動量に比べ細棒70の後端の移動量は拡大される為、微調整が容易になる。しかも、調整すべき方向にあらかじめ細棒70を傾けて貫通孔28及び凹部27に挿入することで、360度全方位に亘って自在に基板26の位置決めを行なうことが可能である。実際の調整は受光部の出力をモニタしながら、最適な結果が得られる様に手動操作で行なわれる。
【0029】
基板26は、光軸と直交する方向の位置を調整可能とする為、あらかじめ取付ガタを設けてある。図示の例はネジ51,52で基板26を保持枠22に固定する構造となっている。ネジ締めを行なう前に、上述したパララックス調整手段を用いて基板26の位置決めを行なっている。すなわち、基板26の一部に貫通孔を設け、保持枠22との間で細棒70により作用力を働かせ、所望の方向に調整できる様にしている。この場合、保持枠の表面を支点としたテコの原理により、作用点の微調が可能となる。ここで保持枠22に凹部27を設けることで基板26との間に隙間が生じ、作用点の移動割合を適度に設定することができる。細棒70の先端を尖らせたり保持枠22の表面の粗さを増して、支点の滑りを防止することが有効である。基板26に形成する貫通孔28の形状は切欠きなどでもよく、場合により複数個設けてもよい。なお、実際の製品では図2の実施形態と図5の実施形態を組み合わせて、光軸距離調整とパララックス調整を両立させる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、透明板を用いて光軸距離を調整することにより、発光素子の形状ばらつきなどに起因する投光像のボケ量を許容レベルに収めることが可能である。透明板を用いた光軸距離調整はパララックス調整とは独立的に行なうことができる。又、パララックス調整時に投光像のスポットをモニタする際、同時に透明板を用いた光軸距離調整が可能となり、調整工数の削減化に寄与する。又、テコの原理を利用したパララックス調整により微調が可能となり、調整精度が高くなり、作業時間も短縮できた。加えて、発光素子側のパララックス調整精度が高まることで、その分受光素子側に要求される位置精度も緩和され、無調整化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学式測距装置の投光部を示す光学図である。
【図2】本発明に係る光学式測距装置の実施形態を示す断面図及び平面図である。
【図3】図2に示した光学式測距装置の動作説明に供するグラフである。
【図4】本発明に係る光学式測距装置の全体的な光学構成を示す模式図である。
【図5】本発明に係る光学式測距装置の実施形態を示す断面図、平面図及び要部拡大図である。
【図6】従来の光学式測距装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・測距装置、2・・・投光部、3・・・受光部、21・・・レンズ、22・・・保持枠、23・・・発光素子、24・・・フレーム、25・・・モールド、26・・・基板、27・・・凹部、28・・・貫通孔、29・・・溝
【発明の属する技術分野】
本発明は光学式測距装置に関する。より詳しくは、カメラなどに組み込まれ、自動焦点合わせなどに使われる小型の光学式測距装置の実装構造に関する。更に詳しくは、投光用のレンズに対する発光素子の位置調整技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学式測距装置は、光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、対象物の光軸方向距離を測定するものである。係る光学式測距装置はカメラなどに組み込まれて自動焦点合わせなどに多用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−132722号公報
【特許文献2】
特開平11−287946号公報
【特許文献3】
特開平11−304472号公報
【特許文献4】
特開2000−338391号公報
【0004】
図6に示す様に、従来の光学式測距装置1は光軸方向にある対象物(図示省略)に向かって光束LBを投光する投光部2と、対象物から戻って来る光束LBを受光する受光部3とを用いて、対象物の光軸方向距離を三角測量の原理に基づいて測定するものである。投光部2は、光軸方向に光束LBを集光するレンズ21と、このレンズ21を保持する保持枠22と、この保持枠22に取り付けられ、レンズ21に向かって光束LBを発する発光素子23とから構成されている。発光素子23は例えば赤外LEDチップからなり、金属のフレーム24に取り付けられている。赤外LEDチップはフレーム24に搭載されたままモールド25でパッケージされている。フレーム24は基板26に半田付けされる。この様にして、発光素子23は基板26を介し保持枠22に取り付けられる。一方受光部3は対象物から戻ってきた光束LBを集束するレンズ31と、このレンズ31を保持する為の保持枠32と、保持枠32に取り付けられたPSDなどの受光素子33とからなる。尚、受光素子33は基板36に搭載された状態で、対応する保持枠32に取り付けられる。
【0005】
対象物の光軸方向位置に応じて、投光部2から発した光束LBと対象物から反射して受光部3に向かう光束LBとの成す角θが変化する。このθの値に応じ受光素子33の受光位置が変化する。受光素子33はこの受光位置を電気的に検出して、対応する検出信号をカメラの制御側に送る。カメラの制御部は検出信号を解析して対象物の光軸方向位置を測定する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
正確な測定結果を得る為には、光軸に対して発光素子を精密に位置決め調整する必要がある。第一に、レンズと発光素子との間の光軸間距離を調整する必要があり、以下本明細書では光軸距離調整と呼ぶ場合がある。この光軸距離調整は対象物に投光する光束のスポット像のボケを抑制することを主目的としており、その意味でボケ調整と呼ぶ場合がある。第二に、光軸に対して発光素子の傾きを調整する必要があり、本明細書ではパララックス調整と呼ぶ。パララックス調整はレンズの光軸と直交する方向に発光素子を移動して行なう。前述した様に、発光素子は基板に取り付けられている。従って、光軸距離調整やパララックス調整では、基板を保持枠に対して正確に位置決めする必要がある。しかしながら、光学式測距装置が小型化すると、基板や保持枠も微小になる為、正確な位置決め或いは位置出しが困難になっている。
【0007】
以下、ボケ調整及びパララックス調整に分けて、課題を具体的に説明する。一般に、投光部は投光のスポット像(投光像)を被写体面に集光させる為、測距レンジの中間域に投光像が結像する様に光学系が設定されている。この場合、レンズと発光素子の光軸間距離が光学的に定まる。このレンズと発光素子との間の光軸距離(正確にはレンズと発光素子の発光面との間の光軸間距離)は、僅かな誤差でも結像点が大きく変動する。結像点のずれは被写体面上の投光像にボケを生じ、見掛け上像が拡大される。この為、距離によっては像欠けなどの現象が生じる。又、受光部側のPSDでも受光像が拡大する為、測距誤差が生じ易くなる。
【0008】
発光素子のモールドパッケージは外形誤差やチップ位置誤差を有しており、このばらつき幅による投光像のボケは許容限界を超えるものであり、調整が必要である。これとは別に、発光素子は投光パララックス調整を必要としている。しかしながら、パララックス調整に影響を及ぼすことなく、これとは独立して光軸距離調整を行なう適切な手段が求められており、解決すべき課題となっている。
【0009】
発光素子を用いたアクティブ方式の測距装置は、投光像を被写体上に正確に当てる必要がある。この為、投光部には投光パララックス、投光像の大きさ、投光量などが適切に設定される。投光部構成において、各部品のばらつきや取り付け精度により投光パララックスはばらつきを生じ、所定の設計値(許容値)に収める為には、パララックス調整を必要としている。一般には、発光素子の取り付け位置を変化させてパララックス調整を行なっている。この場合、発光素子の位置出しは、光軸と直交する平面に沿った二次元位置調整となる。その為、発光素子を搭載した基板を保持枠に取り付ける部分に、調整しろとして取付ガタを設けていた。
【0010】
パララックス調整は二次元位置調整(面位置調整)となる為、少なくとも二方向の移動を要し、別途保持枠にガイド壁などを設けることができない。仮に、ガイド壁を設けると、基板の移動方向が一次元に限定される。この為、従来は発光素子を搭載した基板を保持枠に対して直接手動で位置合わせしていた。この場合、満足できる調整精度は得られ難く、パララックス許容値も限定されていた。一般に、発光素子パッケージは、発光素子の位置とモールドにずれがあり、外形基準ではパララックスのずれが生じる。パララックスは、例えばカメラに応用する場合±1度以内が要求される。現実には、発光素子パッケージのばらつきにより、パララックスのずれが二倍程度になってしまう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は効率的で正確な光軸位置調整を実現することを目的とする。この場合、発光素子は投光パララックス調整の為、光軸に対して垂直な面上に沿って調整可能にしておく必要がある。そこで、光軸距離調整とパララックス調整の両者を満足する簡便な手段を講じることを目的とする。係る目的を達成するために以下の手段を講じた。即ち、光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と、該対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、該対象物の光軸方向距離を測定する光学式測距装置であって、前記投光部は、光軸方向に光束を集束するレンズと、該レンズを保持する保持枠と、該光束を放射する発光素子を搭載し且つ該レンズに対向して該保持枠に取り付けられる基板とからなり、互いに対向する該レンズと該発光素子との間に透明板を挿入可能とし、該レンズに対する該発光素子の光軸方向位置を光学的に調整することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、該透明板の有無で該光軸方向位置を二段階に調整可能とする。或いは、厚み若しくは屈折率の異なる複数枚の透明板を選択的に挿入可能として、該光軸方向位置を多段的に調整しても良い。前記保持枠は、該光軸と直交する方向に溝が形成されており、該透明板は該発光素子のパララックスに影響を与えることなく該溝に挿入可能である。該受光部が受光する光束のスポット径に応じて透明板の挿入の有無を決定することができる。
【0013】
好ましくは、該レンズの光軸と直交する方向に関し該発光素子を搭載した該基板の位置を調整するパララックス調整手段を含む。前記パララックス調整手段は、該基板に形成された貫通孔と、該保持枠の該貫通孔と対応する部位に形成された凹部とを含み、該貫通孔を通して該凹部に細棒を挿入し、その先端と該凹部の底面とが接する部分を支点とし該細棒をテコとして、該保持枠に対する該基板の位置を調整可能にする。前記凹部の底面は、該細棒の先端を支持する為に粗面加工されている。前記細棒の先端は尖っており、該凹部の底面に杭い込む様にすると良い。
【0014】
本発明によれば、投光レンズと発光素子との間にガラス又はアクリル樹脂などからなる透明板を挿入可能としている。挿入された透明板の屈折率により、光路長差が生ずる。この光路長差を調整値として、投光像のボケ量調整機構を実現している。投光像のボケ量により、発光素子の光軸方向位置分布をあらかじめ把握しておく。この分布を二区分して、無調整段階では発光素子の位置を短い方の光路長に設定しておく。長い方の光路長差に相当する透明板を挿入可能とすることで、発光素子を上述の二区分(二ゾーン)で使用する様にする。これにより、投光パララックス調整とは無関係に投光像のボケ調整が可能になる。尚、透明板の厚みや屈折率などを変えて、光路長差の値を複数用意し、調整範囲を多ゾーン化することは可能である。
【0015】
又、パララックス調整は、発光素子を搭載した基板に穴部もしくは切欠部を設け、保持枠の対向部位には凹部を設ける。基板の穴部もしくは切欠部に調整棒を挿入し、調整棒と保持枠凹部の底面との当接による押圧摩擦を利用して、調整棒と穴部もしくは切欠部との間に移動力を発生させる。この場合、調整棒は保持枠凹部の底面を支点とし、基板の穴部又は切欠部と調整棒との接触点を作用点として機械的な増幅作用が生じ、パララックスの微調が可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は投光部の光学構成を示す模式図である。投光像はレンズと発光素子との間の光軸距離で結像位置Lが決まる。その関係はL=f2/Δlで表わされる。ここで、fはレンズの焦点距離を表わし、Δlはレンズの後方焦点位置から測った発光素子の発光面までの長さである。又、結像面に現われた投光像のスポットサイズφBは、φB=φA(1+L/f)で表わされる。ここでφAは発光面のサイズを表わしている。尚、発光素子パッケージにドームレンズ付のものを用いた場合、f値は投光用のレンズとドームレンズの合成となり、ほぼドームレンズの倍率分f値が短かくなる。上式においてΔlの値が小さく、発光素子の位置の微小なずれが結像面上における大きな差となって現われる。この関係は、ドームレンズ付の発光素子パッケージを用いた場合には倍加されるものである。例えば、L=3mでf=10mmとした場合、Δlは設計値で0.030mmである。これに対し、ドームレンズ付の発光素子パッケージを用いた場合、ドームレンズの倍率を2.5とすると、Δlは約0.013mmとなり、高精度で光軸方向位置を合わせる必要がある。
【0017】
図2は、本発明に係る光学式測距装置の要部となる投光部を示す模式図である。(A)は投光部の断面構造を表わし、(B)は平面構造を表わしている。尚、本光学式測距装置の全体構成は、図6に示した通りである。図示する様に、投光部は基本的にレンズ21と保持枠22と基板26とからなる。レンズ21は光束を集束する。保持枠22は鏡胴枠とも呼ばれ、その前面部に前述した投光用のレンズ21を保持している。この保持枠22は例えばモールド樹脂の成形品からなる。基板26は光束を放射する発光素子23を搭載している。本実施形態では、発光素子23はフレーム24に組み込まれた状態で全体的にモールド25で固められたパッケージ構成となっている。尚、モールド25にはドーム状のレンズも形成されており、投光用のレンズ21と合わせて発光素子23から放射される光束を対象物に向けて集束している。このパッケージが基板26に半田付けなどで取り付けられている。基板26はレンズ21と対向して保持枠22の後面側にネジ51,52で取り付けられている。
【0018】
(B)に示す様に、基板26は保持枠22よりも一回り小さく矩形である。保持枠22の中央部に開口22aが形成されており、ここに発光素子のモールド25が基板26に搭載された状態で組み込まれている。
【0019】
(A)に示す様に、本発明の特徴事項として、互いに対向するレンズ21と発光素子23との間に透明板を挿入可能とし、レンズ21に対する発光素子23の光軸方向位置Dを光学的に調整する。尚、図ではレンズ21の後面とドームレンズの前面との間の間隔を、光軸方向位置Dで表わしている。具体的には、保持枠22は光軸と直交する方向に溝29が形成されており、透明板は発光素子23のパララックスに影響を与えることなくこの溝29に挿入可能である。尚、パララックス調整は、保持枠22の後面に対する基板26の取付位置を変えることで行なっている。これについては、後で詳細に説明する。本実施形態では、透明板の有無で二段階に光軸距離Dを調整可能としている。場合によっては、厚みもしくは屈折率の異なる複数枚の透明板を選択的に溝29に挿入可能とすることで、多段的に光軸距離Dを調整することも可能である。二段階で光軸距離Dを調整する場合、受光部(図示せず)が受光する光束のスポット径に応じて透明板の挿入の有無を決定することができる。
【0020】
図3は、投光像スポット径と調整対象となる光軸距離Dとの関係を示すグラフである。縦軸は被写体距離を3mとした場合の投光像スポット径を表わし、横軸は設計基準となる光軸位置Dからの誤差ΔDを表わしている。理想的な場合、誤差ΔDが0の時、スポット径φは100mmとなる様に投光部の光学系が設計されている。しかしながら現実にはレンズなどの収差がある為、点線で示す様に誤差ΔDが0の場合でも、スポット径は110mm程度になる。この様に、スポット径は様々な要因により拡大方向にぼける訳であるが、例えばφ=120mmまでが許容範囲であるとする。一方、ΔDは機械的なガタ要因や寸法誤差などから−0.2mmから+0.2mmの間で変動する。ΔDが−0.2になるとスポット径は140mmに達し許容範囲を超える。同様に、ΔDが+0.2になるとスポット径は140mmまで拡大し、許容範囲を超えてしまう。従って、現実にはボケを除く為光軸距離調整が必要であり、本発明に従って透明板が調整部材として用いられる。
【0021】
(B)は透明板を用いた具体的な調整手法を模式的に表わしたグラフである。(A)と同様に、縦軸にスポット径を取り、横軸にΔDを取ってある。本実施形態は、透明板の挿入の有無で、二段階調整を行なっている。まず、透明板無しの状態では、あらかじめΔDの分布の中央値から負側に−0.1だけずれた位置に、Dの設計値を設けている。従って、透明板が無い状態では、ΔDとスポット径φとの関係はV字形の直線V1で表わされる。この場合、実際の製品でΔDが−0.2から0の範囲にあればスポット径は120mm以下となり、ボケが許容範囲に収まる。しかしながら、ΔDが正側にずれた場合、スポット径φは120mmを超えて許容範囲外となる。そこで、この場合には透明板を挿入することでDの値を−0.1から+0.1に光学的に移動する。その結果、ΔDとスポット径φとの関係はV字形の直線V2で表わされる。これによれば、ΔDが0から+0.2の間で正側に分布しても、スポット径φは120mm以下に抑えることができる。この様に、二段階調整を行なうことで、スポット径を許容範囲の120mm以下に抑えることが可能となる。
【0022】
透明板として例えば厚みtのアクリル板を使うと、D値の変化ΔD’はΔD’=t(1−1/1.47)で表わされる。尚1.47はアクリル板の屈折率を表わしている。この式から明らかな様に、透明板を挿入することで、光路長が約板厚tの1/3程度長くなることになる。(B)に示す様に、透明板を挿入した時、初期の分布V1を挿入後の分布V2に切り換える為、光路差を−0.1から+0.1まで0.2だけ増加させる必要がある。アクリル板の厚みtを0.6mmとすることで、対応が可能である。
【0023】
尚、透明板の挿入は光軸に対して垂直に行なわれる為、パララックスには基本的に関係せず、独立して投光像のスポット径を許容値に入れることができる。アクリル板の挿入の有無の選択は、実際の投光像のスポット径により判定する。本実施形態の場合、二ゾーンに設定している為アクリル板無しを基準としスポット径の大きい場合アクリル板挿入とすることで対応できる。尚、投光像のスポット径は投光パララックス調整時に確認すればよく、特にボケ調整を行なうことはない。尚、アクリル板厚の差や枚数の組み合わせにより、三ゾーン以上の多ゾーン設定も可能である。アクリル板挿入による光量減衰は約7%程度と見られ、実用上問題ないレベルである。
【0024】
図4は、本発明に係る光学式測距装置の光学構成を示す模式図である。測距対象となる対象物0が光軸上にある場合で距離をLで表わしてある。又、投光部2と受光部3との間の距離をBで表わしている。対象物0上に投光される投光像のスポット径φBは、φB=φA(1+L/f)で表わされる。φAは発光素子23のサイズを表わし、fはレンズ21の焦点距離を表わしている。尚、図示の様に発光素子23のモールド25にドームレンズが含まれる場合、上式のfは投光レンズ21とドームレンズの合成焦点距離fAで置き換えることになる。
【0025】
投光パララックスと投光像の大きさで対象物0上に投光された投光像の距離Lが決まる。投光パララックスのずれは投光像と対象物0の関係とともに、PSDなどからなる受光素子33の受光位置の変動として現われる。この為投光パララックスのずれ量が大きいとPSDの位置調整が必要となる。受光部3においては、PSDのチップ位置ばらつきは電気的にデータをシフトすることで、ある程度補正することが可能であるが、投光パララックスの量が大きくなると投光部2側で調整を必要とする。
【0026】
図5は、パララックス調整手段を示す模式図である。(A)はパララックス調整手段を組み込んだ投光部の断面図、(B)は同じく背面図、(C)はパララックス調整手段を示す要部拡大図である。尚、理解を容易にする為、図2に示した投光部と対応する部分には対応する参照番号を付してある。本パララックス調整手段は、レンズ21の光軸と直交する方向に関して発光素子23を搭載した基板26の位置を調整する。(B)及び(C)によく表われている様に、このパララックス調整手段は基板26に形成された貫通孔28と、保持枠22の貫通孔28と対応する部位に形成された凹部27とを含む。(C)に最もよく表われている様に、貫通孔28を通して凹部27に細棒70を挿入し、その先端と凹部27の底面とが接する部分を支点とし細棒70をテコとして、保持枠22に対する基板26の位置を調整可能にする。凹部27の底面は細棒70の先端を支持する為に粗面加工されている。細棒70の先端は尖っており、凹部27の底面に食い込む様になっている。
【0027】
図示する様に、基板26に形成された調整用の貫通孔28はその開口径が比較的小さい。これに対し、保持枠22の対応する部分に形成された調整用の凹部27はその開口寸法が比較的大きい。両者がおおよそ重なる様にまず粗調整を行なう。この後、貫通孔28を通して凹部27に細棒70を挿入する。細棒70の先端と凹部27の底部とが接する部分を支点とし細棒70の後端部をテコとして、保持枠22に対する基板26の位置を微調整可能である。
【0028】
調整用凹部27は例えば偏平円筒形状を有する。その開口径は基板26に形成された貫通孔28の開口径よりも大きい。従って、細棒70は360度所望の方向に傾けて凹部27に挿入することができる。凹部27の底は好ましくは粗面となっており、細棒70の先端と摩擦的に固定される。固定された先端を支点とし貫通孔28と細棒70の接する部分を作用点とし細棒70の後端部に力を加えることで、テコの原理により基板26を所望の方位に微小量移動可能である。その際、基板26の移動量に比べ細棒70の後端の移動量は拡大される為、微調整が容易になる。しかも、調整すべき方向にあらかじめ細棒70を傾けて貫通孔28及び凹部27に挿入することで、360度全方位に亘って自在に基板26の位置決めを行なうことが可能である。実際の調整は受光部の出力をモニタしながら、最適な結果が得られる様に手動操作で行なわれる。
【0029】
基板26は、光軸と直交する方向の位置を調整可能とする為、あらかじめ取付ガタを設けてある。図示の例はネジ51,52で基板26を保持枠22に固定する構造となっている。ネジ締めを行なう前に、上述したパララックス調整手段を用いて基板26の位置決めを行なっている。すなわち、基板26の一部に貫通孔を設け、保持枠22との間で細棒70により作用力を働かせ、所望の方向に調整できる様にしている。この場合、保持枠の表面を支点としたテコの原理により、作用点の微調が可能となる。ここで保持枠22に凹部27を設けることで基板26との間に隙間が生じ、作用点の移動割合を適度に設定することができる。細棒70の先端を尖らせたり保持枠22の表面の粗さを増して、支点の滑りを防止することが有効である。基板26に形成する貫通孔28の形状は切欠きなどでもよく、場合により複数個設けてもよい。なお、実際の製品では図2の実施形態と図5の実施形態を組み合わせて、光軸距離調整とパララックス調整を両立させる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、透明板を用いて光軸距離を調整することにより、発光素子の形状ばらつきなどに起因する投光像のボケ量を許容レベルに収めることが可能である。透明板を用いた光軸距離調整はパララックス調整とは独立的に行なうことができる。又、パララックス調整時に投光像のスポットをモニタする際、同時に透明板を用いた光軸距離調整が可能となり、調整工数の削減化に寄与する。又、テコの原理を利用したパララックス調整により微調が可能となり、調整精度が高くなり、作業時間も短縮できた。加えて、発光素子側のパララックス調整精度が高まることで、その分受光素子側に要求される位置精度も緩和され、無調整化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学式測距装置の投光部を示す光学図である。
【図2】本発明に係る光学式測距装置の実施形態を示す断面図及び平面図である。
【図3】図2に示した光学式測距装置の動作説明に供するグラフである。
【図4】本発明に係る光学式測距装置の全体的な光学構成を示す模式図である。
【図5】本発明に係る光学式測距装置の実施形態を示す断面図、平面図及び要部拡大図である。
【図6】従来の光学式測距装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・測距装置、2・・・投光部、3・・・受光部、21・・・レンズ、22・・・保持枠、23・・・発光素子、24・・・フレーム、25・・・モールド、26・・・基板、27・・・凹部、28・・・貫通孔、29・・・溝
Claims (7)
- 光軸方向にある対象物に対して光束を投光する投光部と、該対象物から戻って来る光束を受光する受光部とを備え、該対象物の光軸方向距離を測定する光学式測距装置であって、
前記投光部は、光軸方向に光束を集束するレンズと、該レンズを保持する保持枠と、該光束を放射する発光素子を搭載し且つ該レンズに対向して該保持枠に取り付けられる基板とからなり、
互いに対向する該レンズと該発光素子との間に透明板を挿入可能とし、該レンズに対する該発光素子の光軸方向位置を光学的に調整することを特徴とする光学式測距装置。 - 該透明板の有無で該光軸方向位置を二段階に調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の光学式測距装置。
- 厚み若しくは屈折率の異なる複数枚の透明板を選択的に挿入可能として、該光軸方向位置を多段的に調整することを特徴とする請求項1記載の光学式測距装置。
- 前記保持枠は、該光軸と直交する方向に溝が形成されており、該透明板は該発光素子のパララックスに影響を与えることなく該溝に挿入可能であることを特徴とする請求項1記載の光学式測距装置。
- 該受光部が受光する光束のスポット径に応じて透明板の挿入の有無を決定することを特徴とする請求項1記載の光学式測距装置。
- 該レンズの光軸と直交する方向に関し該発光素子を搭載した該基板の位置を調整するパララックス調整手段を含み、
前記パララックス調整手段は、該基板に形成された貫通孔と、該保持枠の該貫通孔と対応する部位に形成された凹部とを含み、
該貫通孔を通して該凹部に細棒を挿入し、その先端と該凹部の底面とが接する部分を支点とし該細棒をテコとして、該保持枠に対する該基板の位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項1記載の光学式測距装置。 - 前記凹部の底面は、該細棒の先端を支持する為に粗面加工されていることを特徴とする請求項6記載の光学式測距装置。
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JP2009505043A (ja) * | 2005-08-08 | 2009-02-05 | ライカ ジオシステムズ アクチェンゲゼルシャフト | 光波距離測定装置 |
JP2012003128A (ja) * | 2010-06-18 | 2012-01-05 | Nikon Corp | 自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法 |
WO2012124208A1 (ja) * | 2011-03-16 | 2012-09-20 | 三洋電機株式会社 | 発光装置、情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置 |
-
2002
- 2002-09-11 JP JP2002265599A patent/JP2004101421A/ja active Pending
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