JP5071704B2 - 車両の駆動制御装置 - Google Patents
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Description
特許文献1の制御システムでは、予め記憶したエンジンマップに基づいて、エンジンに対するエネルギー入力と、バリエータにおける反動トルクの双方を調整するようにしている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、燃費とドライバビリティを両立することができる、車両の駆動制御装置を提供することを目的とする。
また、上記運転者要求変換部は、検出されたアクセル操作量および検出された車速に基づいて、目標車速を演算する目標車速演算部と、この目標車速演算部により演算された目標車速および検出された車速の比較に基づいて、目標車速を補正して補正目標車速を得る目標車速補正部と、上記補正目標車速に基づいて、目標エンジン回転速度および目標トランスミッション入力トルクを演算する状態量演算部とを含むので、下記の利点がある。すなわち、目標車速と実際の車速との比較に基づいて目標車速を補正することにより、エンジン動力を人工的にブーストすることができる。実際の車速と比較することによって目標車速を補正するので、制御ループを低容量化することができる。
図1は本発明の一実施の形態の、車両の駆動制御装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、変速比無限大無段変速機1(以下、IVT1という)は、エンジン2の出力軸3にトーショナルダンパ4を介して連結されたIVT入力軸5と、フルトロイダル型無段変速機からなるCVT6と、遊星ギヤ機構7と、IVT入力軸5と平行に設けられ駆動輪に連結されたIVT出力軸8とを備えている。上記のCVT6は、いわゆるトルク制御型のCVTである。
CVT4は、IVT入力軸5と同軸上に設けられたCVT入力軸9と、CVT入力軸9を挿通させる中空のCVT出力軸10とを備えている。CVT入力軸9には、一対の入力ディスク11,12が一体回転可能に設けられている。これらの入力ディスク11,12は、背中合わせに配置され、それぞれ、トロイダルレースを形成している。また、CVT出力軸10には、一対の入力ディスク11,12のトロイダルレースにそれぞれ対向するトロイダルレースをそれぞれ形成した一対の出力ディスク13,14が、一体回転可能に設けられている。
キャリッジ17に支持されたローラ15,16は、トルクを伝達することによりキャリッジ17に生ずるリアクション力と、出力ディスク13,14を駆動するのに必要なトルクとのアンバランスを解消するべく、キャリッジ17の軸線回りにローラ15,16の回転軸線が揺動角度を生ずるように傾斜させる。これにより、ローラ15,16の姿勢が変化し、両ディスク11,13;12,14間の速度比が連続的に変化するようになっている。
遊星ギヤ機構7は、CVT入力軸9とCVT出力軸10との間に介在している。具体的には、まず、リングギヤ25が、IVT出力軸8に一体回転可能に連結されている。
また、CVT入力軸9の回転が、ギヤ列26および連結状態の動力循環モードクラッチ27(ロークラッチともいう)を介して、キャリア23に伝達されるようになっている。ギヤ列26は、CVT入力軸9と一体回転可能に連結されたギヤ26aと、このギヤ26aに噛み合いIVT出力軸8に回転自在に支持されたギヤ26bとを有している。動力循環モードクラッチ27は、ギヤ26bとキャリア23とを連結/解放可能な、例えば多板クラッチからなる。動力循環モードクラッチ27は、連結されたときに、変速比無限大を含む変速比範囲で動力を伝達する動力循環モードを実現する。
このとき、リングギヤ25にかかる駆動負荷による反力がサンギヤ22にもトルクを及ぼす。このサンギヤ22に作用するトルクは、ギヤ列28およびCVT出力軸10を介してCVT6に戻り、CVT入力軸9側でエンジン2の出力トルクと合わさって、ギヤ列26および動力循環モードクラッチ27を介して再びキャリア23に伝達される。
一方、動力循環モードクラッチ27が解放され、直結モードクラッチ29が連結された状態では、エンジン2の動力は、CVT6を経てサンギヤ22に伝達され、直結モードクラッチ29を介して、IVT出力軸8から出力される、直結モードとなる。この直結モードは、中速走行時、高速走行での加速時等のさほど大きな駆動トルクが必要とされないときに選択される。
IVT1およびエンジン2の動作を制御する制御部34は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。
IVT制御部43は、運転者要求変換部42から与えられた目標トランスミッション入力トルクTTRN,T 、CVT入力軸回転速度センサ38により検出されたCVT入力軸回転速度ωi 、CVT出力軸回転速度センサ39により検出されたCVT出力軸回転速度ωo 、および圧力センサ40により検出された差圧Pを入力し、これらに基づいて、第1および第2の圧力制御弁31,33の例えばソレノイドにそれぞれ指令信号を出力する。また、IVT制御部43は、CVT入力軸回転速度センサ38により検出されたCVT入力軸回転速度ωi (IVT入力軸回転速度に相当)、およびIVT出力軸回転速度センサ80により検出されたIVT出力軸回転速度ωIVT,o を入力し、これらに基づいて、動力循環モードクラッチ27および直結モードクラッチ29に、モード切り換えのための接離指令信号を出力する。
ここで、車両走行抵抗TRLは、駆動輪回転速度ωW の関数TRL(ωW )として表される。すなわち、式TRL=TRL(ωW )が成立する。したがって、駆動輪回転速度ωW は、エンジン出力Peの関数として表すことが可能である。すなわち、式ωW =ωW (Pe)が成立する。したがって、上記の第2のエンジンマップ72と目標エンジン出力Pe,T を用いて、目標駆動輪回転速度、すなわち、目標車速VT を求めることができる。
目標車速補正部47は、上記の目標車速VT を入力し、上記目標車速VT と車速センサ36の検出による実際の車速Vとの偏差(VT −V)に、制御ゲイン乗算部49において制御ゲインk1 を乗じ、得られた補正量k1 ×(VT −V)を目標車速VT に加算することにより、補正目標車速VATを得る。
VAT=VT +k1 ×(VT −V) …(1)
得られた補正目標車速VATは、状態量演算部48に出力される。状態量演算部48は、上記の補正目標車速VATを入力し、この補正目標車速VATに基づいて、エンジン2に最大効率を与えるための目標エンジン回転速度ωe,T および目標トランスミッション入力トルクTTRN,T を演算する。
補正後目標エンジン出力演算部50は、補正目標車速VATを入力し、上記の第1のエンジンマップ71を用いて、補正目標車速VATに応じた補正後目標エンジン出力Pe,ATを演算する。すなわちブーストされた目標エンジン出力を得ることになる。
目標トランスミッション入力トルク演算部52は、上記の目標エンジン回転速度ωe,T および目標エンジントルクTe,T を入力し、下記の式(2)を用いて、目標トランスミッション入力トルクTTRN,T を演算する。
式(2)より、目標トランスミッション入力トルクTTRN,T が得られる。
次いで、図5を参照して、IVT制御部43は、実トランスミッション入力トルク演算部53と、CVTトルク制御部としての目標トランスミッション入力トルク補正部54と、要求差圧演算部55と、信号出力部56と、モード切り換え部76とを備えている。
ただし、
kr :幾何学的定数
Rv:CVTの変速比(Rv=ωo /ωi )
ωi :CVT入力軸回転速度
ωo :CVT出力軸回転速度
目標トランスミッション入力トルク補正部54は、実トランスミッション入力トルク演算部53により演算された実トランスミッション入力トルクTTRN,R を入力し、この実トランスミッション入力トルクTTRN,R と運転要求変換部42の目標トランスミッション入力トルク演算部52から与えられた目標トランスミッション入力トルクTTRN,T との偏差(TTRN,T −TTRN,R )に、制御ゲイン乗算部57において制御ゲインk2 を乗じ、得られた補正量k2 ×(TTRN,T −TTRN,R )を目標トランスミッション入力トルクTTRN,T に加算することにより、補正目標トランスミッション入力トルクTTRN,ATを得る。
TTRN,AT=TTRN,T +k2 ×(TTRN,T −TTRN,R ) …(4)
要求差圧演算部55は、目標トランスミッション入力トルク補正部54により演算された補正目標トランスミッション入力トルクTTRN,ATを入力するとともに、CVT6の変速比Rvを演算するためにCVT入力軸回転速度ωi およびCVT出力軸回転速度ωo を入力し、下記の線形化された逆関数モデルの式(5)を用いて、油圧シリンダ19の第1および第2の油室20,21間に付与されるべき、要求差圧PD を演算する(ただし、これは、直結モードの場合の例である。)。
信号出力部56は、要求差圧演算部55により演算された要求差圧PD を入力し、これを第1の圧力制御弁31および第2の圧力制御弁33の各ソレノイドに対する電圧指令信号に変換して出力することになる。これにより、ローラ15,16に所望のリアクション力を働かせ、CVT6に所望の伝達トルクを伝達させることができる。
目標エンジン回転加速度演算部58は、運転者要求変換部42の目標エンジン回転速度及び目標エンジントルク演算部51から入力した目標エンジン回転速度ωe,T とエンジン回転速度センサ37により検出されたエンジン回転速度ωe との偏差(ωe,T −ωe )に、制御ゲイン乗算部62において制御ゲインk3 を乗じることにより、目標エンジン回転加速度ω’e,ATを得る。すなわち、ω’e,AT=k3×(ωe,T −ωe )である。演算された目標エンジン回転加速度ω’e,ATは、要求エンジントルク演算部60に出力される。
Te,D =Ie ×ω’e,AT+TTRN,R …(6)
ただし、
Ie :エンジンイナーシャ
であり、式(6)の右辺のIe ×ω’e,ATは、エンジンの慣性トルクに相当する。このエンジンの慣性トルクに実トランスミッション入力トルクTTRN,R を加えることで、要求エンジントルクTe,D が得られる。
本実施の形態によれば、下記の優れた利点がある。すなわち、運転者がアクセルペダルを介して車両に求める要求を、運転者要求変換部42の働きで、エンジン2に最大効率を与えることのできる、目標エンジン回転速度ωe,T および目標トランスミッション入力トルクTTRN,T という状態量に変換する。これにより、可及的に、運転者の要求に応じて、車両の加速性能を損なうことなく、エンジン2を最大効率で動作させることができる。その結果、燃費とドライバビリティを両立させることができる。
すなわち、IVTのようにパワーフローがコントロールされる方式でトルク制御型のCVT6を用いる場合、エンジン慣性が車両慣性から切り離されている。換言すると、エンジントルクTe が駆動輪速度(実質的に車速Vに相当)に直接、影響を与えない。このような前提のもと、IVT制御部43によるCVT6のトルク制御と、エンジン制御部44によるエンジン2のトルク制御とを組み合わせて、システムのパワーフローを制御し、その制御則として、上記のニュートンの第2法則による上記式(6)を用いる。
また、エンジン制御部44は、エンジン応答をCVT6の入力トルク(負荷)から分離し、エンジン速度応答を線形化して、系の応答が1次系の単調増加(減少)となるようにする役割を果たす。したがって、制御ゲインk2 ,k3 に拘らず、エンジン2の回転速度ωe と駆動輪の回転速度(実質的に車速Vに相当)を安定的に応答させることができるという利点もある。
図7〜図10は本発明の別の実施の形態を示している。すなわち、前述の図1〜図6の実施の形態は、IVTを有する車両の駆動制御装置に係る実施の形態であったが、本実施の形態は、IVTを構成しないトルク制御型のCVTを備える車両の駆動制御装置に係る実施の形態である。
また、図9を参照して、本実施の形態の制御部34Aの運転者要求変換部42の目標トランスミッション入力トルク演算部52によって演算された目標トランスミッション入力トルクTTRN,T が、CVT制御部43Aに与えられる。
本実施の形態においても、図1〜図6の実施の形態と同様の作用効果を奏することができ、燃費とドライバビリティを両立することができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、遊星ギヤ機構7は、CVT入力軸9に連結される要素、CVT出力軸10に連結される要素、および駆動輪に連結される要素を有していればよい。ギヤ列26,28の少なくとも一方に代えて、チェーン・スプロケット機構を用いてもよい。また、CVTは、フルトロイダル式に限らず、ハーフトロイダル式であってもよく、また、ベルト式、チェーン式その他の各種のタイプのCVTであってもよい。その他、本発明の特許請求の範囲で種々の変更を施すことができる。
Claims (7)
- 変速比を無段階で変更することのできるトルク制御型無段変速機構(以下、CVTという)と、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
車両の速度を検出する車速検出手段と、
CVTおよびエンジンの動作を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、運転者の要求する車両の駆動状態を実現するための状態量を求める運転者要求変換部を含み、
この運転者要求変換部は、アクセル操作量検出手段により検出されたアクセル操作量および車速検出手段により検出された車速に基づいて、目標車速を演算する目標車速演算部と、この目標車速演算部により演算された目標車速および検出された車速の比較に基づいて、目標車速を補正して補正目標車速を得る目標車速補正部と、上記補正目標車速に基づいて、上記状態量として、目標エンジン回転速度および目標トランスミッション入力トルクを演算する状態量演算部とを含むことを特徴とする車両の駆動制御装置。 - 変速比を無段階で変更することのできるトルク制御型無段変速機構(以下、CVTという)と、このCVTの入力軸および出力軸の間に介装された遊星ギヤ機構と、変速比無限大を含む変速比範囲で動力を伝達する動力循環モードを実現するときに連結される動力循環モードクラッチと、CVTのみで動力を伝達する直結モードを実現するときに連結される直結モードクラッチとを含む変速比無限大無段変速機(以下、IVTという)と、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
車両の速度を検出する車速検出手段と、
IVTおよびエンジンの動作を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、運転者の要求する車両の駆動状態を実現するための状態量を求める運転者要求変換部を含み、
この運転者要求変換部は、アクセル操作量検出手段により検出されたアクセル操作量および車速検出手段により検出された車速に基づいて、目標車速を演算する目標車速演算部と、この目標車速演算部により演算された目標車速および検出された車速の比較に基づいて、目標車速を補正して補正目標車速を得る目標車速補正部と、上記補正目標車速に基づいて、上記状態量として、目標エンジン回転速度および目標トランスミッション入力トルクを演算する状態量演算部とを含むことを特徴とする車両の駆動制御装置。 - 請求項1または2において、上記目標車速補正部は、目標車速演算部により演算された目標車速および検出された車速の偏差に所定のゲインを乗じて得られる補正量を上記目標車速に加算して、補正目標車速を得ることを特徴とする車両の駆動制御装置。
- 請求項1から3の何れか1項において、上記状態量演算部は、
補正目標車速に対応するエンジン出力に基づいて、エンジンに最大効率を与えるための目標エンジン回転速度および目標エンジントルクを演算する目標エンジン性能演算部と、 目標エンジン性能演算部により演算された目標エンジン回転速度および目標エンジントルクに基づいて目標トランスミッション入力トルクを演算する目標トランスミッション入力トルク演算部と
を含むことを特徴とする車両の駆動制御装置。 - 請求項4において、上記制御部は、CVTの伝達トルクを制御するための制御部を含み、上記目標トランスミッション入力トルク演算部により演算された目標トランスミッション入力トルクは、上記CVTの伝達トルクを制御するための制御部に出力されることを特徴とする車両の駆動制御装置。
- 請求項5において、上記制御部は、エンジンのトルクを制御するためのエンジン制御部を含み、目標エンジン性能演算部により演算された目標エンジン回転速度は、エンジン制御部に出力されることを特徴とする車両の駆動制御装置。
- 請求項5または6において、上記CVTはフルトロイダル型のCVTを含むことを特徴とする車両の駆動制御装置。
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