以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態による車両用指示計器1を示している。車両用指示計器1は、車速計として車両内の運転席前方に設置されている。
図1〜3に示すように車両用指示計器1は、計器板10、指針20、回動内機30、基板40、並びに「制御手段」としての制御ユニット50を備えている。
図1,2に示す計器板10は、その表示面10aを運転席側へ向けて配置されており、車両状態値として車速値を表示する車速表示部11を有している。車速表示部11は複数の車速値を、その基準として設定された零値(0km/h)から上限値(180km/h)にかけて、円弧状に表示している。
指針20は、回動内機30の指針軸30bに基端部21側にて連結されており、計器板10の表示面10aに沿って回転可能となっている。これにより、車速表示部11に表示される車速値のうち回転位置に応じた値を指示する指針20は、零値を指示する零位置に帰零方向X(図1参照)への回転によって復帰可能となっている。
回動内機30は、内機本体30a、指針軸30b及びケーシング30cを備えている。内機本体30aは、計器板10に略平行な基板40の背面側に配置されている。内機本体30aは、図4に示す二相式ステップモータM、減速歯車列G、並びに「ストッパ手段」としてのストッパ機構Sを、ケーシング30cに内蔵してなる。指針軸30bは、基板40の背面に固定されたケーシング30cによって支持されており、基板40及び計器板10を貫通して指針20の基端部21を支持している。したがって、内機本体30aは、ステップモータMの回転に伴う減速歯車列Gの減速回転により、当該減速歯車列Gの出力段歯車34と同軸上の指針軸30b、ひいては指針20を回転駆動可能となっている。
図4,5に示すようにステップモータMは、ステータMs及びマグネットロータMrを組み合わせてなる。ステータMsは、ヨーク31及び二相の界磁巻線32,33を有している。ヨーク31は、ポール状を呈する一対の磁極31a,31bを形成しており、磁極31aにはA相の界磁巻線32が巻装される一方、磁極31bにはB相の界磁巻線33が巻装されている。マグネットロータMrは、減速歯車列Gの回転軸35aに同軸上に固定されている。ヨーク31の各磁極31a,31bの先端面との間に隙間をあけるマグネットロータMrの外周面には、磁極としてのN,S極が周方向に交互に形成されている。
このような構成のステップモータMにおいてA相の界磁巻線32には、電気角に対する電圧の正負の上限値(以下、単に「電圧の上限値」という)が図6の如く余弦関数状に交番する交流のA相駆動信号が、印加される。一方、B相の界磁巻線33には、電気角に対する電圧の上限値が図6の如く正弦関数状に交番する交流のB相駆動信号が、印加される。このように互いに位相が90度ずれたA,B各相の駆動信号が界磁巻線32,33に印加されることで、それら各巻線32,33に発生する交流磁束がマグネットロータMr及びヨーク31の磁極間を通過することになる。したがって、マグネットロータMrの回転位置が、電気角に応じたA,B各相の駆動信号の電圧変化に従って変化することになるのである。
図4に示すように減速歯車列Gは、出力段歯車34、入力段歯車35及び中間歯車36,37を有している。出力段歯車34は、指針軸30bに同軸上に連結されている。入力段歯車35は、ケーシング30cに固定された回転軸35aにより同軸上に支持されている。中間歯車36,37は、ケーシング30cに固定された回転軸36aにより同軸上に支持されることで、一体に回転可能となっている。中間歯車36は出力段歯車34と噛合している一方、中間歯車37は入力段歯車35と噛合している。
このような構成により減速歯車列Gは、入力段歯車35に回転軸35aを介して接続されたステップモータMのマグネットロータMrの回転を減速し、出力段歯車34に指針軸30bを介して接続された指針20へと当該減速回転を伝達する。したがって、電気角に応じたA,B各相の駆動信号の変化に従ってマグネットロータMrの回転位置が変化することにより、指針20の回転位置も変化することになる。そして、特に本実施形態では、指針20の零位置に対応する電気角が、図6に示す零点θ0(0度)又はその近傍の電気角となるように、車両用指示計器1が製造されている。これにより本実施形態では、電気角を減少させる方向が指針20の帰零方向Xに対応し、電気角を増大させる方向が指針20の反帰零方向Y(図1参照)に対応しているのである。
図4に示すようにストッパ機構Sは、当接部材38及びストッパ部材39を有している。当接部材38は、出力段歯車34から突出する短冊板状に形成されており、当該歯車34と一体に回転可能となっている。ストッパ部材39は、ケーシング30cから内部へ突出するL字状に形成されており、当該突出側の先端部39aが当接部材38の回転軌道上に位置している。これにより、当接部材38がストッパ部材39の先端部39aに当接して係止されるときには、指針20が図1の零位置に復帰し、指針20の帰零方向Xへの回転が停止することになる。このように本実施形態では、帰零方向Xへ回転して零位置に復帰した指針20が、ストッパ機構Sによって間接的に停止するようになっている。
図2に示す制御ユニット50はマイクロコンピュータを主体に構成されて、基板40に実装されている。制御ユニット50は、図3に示す内蔵のメモリ52に予め記憶のコンピュータプログラムを給電下において実行することにより、所定の作動を実現可能となっている。
制御ユニット50は、車両のドアセンサ60、イグニッションスイッチIG及びバッテリ電源Bと電気接続されている。制御ユニット50は、ドアセンサ60により車両のドアの開放が検出された場合に、バッテリ電源Bからの直接的な給電によって始動する。始動した制御ユニット50は、設定時間(例えば2分)が経過するまでにイグニッションスイッチIGがオンされた場合、バッテリ電源Bからの給電によって作動状態を維持し、その後にイグニッションスイッチIGがオフされることによって作動停止する。また一方、始動した制御ユニット50は、設定時間が経過するまでにイグニッションスイッチIGがオンされない場合には一旦作動停止し、その後にイグニッションスイッチIGがオンされた場合には再始動して、イグニッションスイッチIGのオフによって作動停止する。尚、一度始動した後の制御ユニット50の再始動については、イグニッションスイッチIGのオンに応答して行う以外にも、例えば車両のドアの開放や、ブレーキペダルの踏み込み等に応答して行うようにしてもよい。
制御ユニット50は、さらにステップモータMの各界磁巻線32,33と電気接続されており、それら界磁巻線32,33への給電を作動状態において実施する。そして、特に本実施形態の制御ユニット50は、後に詳述する帰零処理として、ステップモータMの各界磁巻線32,33へ印加するA,B両相の駆動信号の電圧上限値を制御することで、指針20を零位置に復帰させる。また、制御ユニット50は車両の車速センサ62とも電気接続されており、帰零処理後においてA,B両相の駆動信号の電圧上限値を制御することで、車速センサ62の検出車速値を指針20に指示させる。
以下、制御ユニット50によって帰零処理を実施するための制御フローを、図7を参照しつつ詳細に説明する。この制御フローは、制御ユニット50が始動することによりスタートし、A,B各相の駆動信号として指針20を帰零方向Xへ回転駆動するための帰零駆動信号について、電気角をステップ状に多段変化させる一連の帰零処理を複数回繰り返すように、制御するものである。
具体的に、制御フローのS1では、メモリ52に記憶される帰零処理の繰り返し回数Nを零値にリセットし、次のS2において、当該繰り返し回数Nをインクリメントする。続くS3では、A,B各相の帰零駆動信号を制御するための電気角としてメモリ52に記憶される制御電気角θcを基準角θbにリセットし、次のS4において、当該基準角θbに対応する信号電圧の上限値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。ここで、本実施形態のS3においては、制御ユニット50の始動による界磁巻線32,33への給電開始前に指針20の零位置からのずれ(以下、「給電前指針ずれ」という)が生じているか否かに拘らず、零点θ0と一致する0度に基準角θbを強制リセットするようになっている。さらに続くS5では、制御電気角θcの保持時間を制御するために計時される制御タイマTcを零値にリセットし、その計時を開始してからS6へと移行する。
S6では、メモリ52に記憶の制御電気角θcを、現在値から120度を減算することによって更新し、続くS7において、最新の制御電気角θcに対応する信号電圧の上限値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。これにより、ステップモータMの意図しない脱調を防止可能とする180度未満の位相幅Δθc、本実施形態では120度の位相幅θc(図8〜10参照)にて、制御電気角θcが帰零方向Xの対応側へステップ状に変化する。ここで、ステップモータMを強制脱調させるための脱調臨界角θth(図8〜10参照)は、通常、ストッパ機構Sによって指針20が停止作用を受ける零位置に対応の電気角から、帰零方向Xの対応側へ180度位相のずれた電気角となる。故に、このような脱調臨界角θthが今回の位相幅Δθc内に存在している場合には、当該位相幅Δθcでの変化によって制御電気角θcが脱調臨界角θthを跨ぐことになるので、ステップモータMの強制脱調が生じる。この強制脱調により指針20は、ステップ状変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置へと向かって、回転しようとする。したがって、変化後の制御電気角θcから360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置が、実際の零位置よりも反帰零方向Yに存在する場合の指針20については、当該零位置よりも跳ね上がるように反帰零方向Yへと回転することになる。
この後のS8では、制御タイマTcについて、制御電気角θcの保持時間に関する設定時間Tcs以上となったか否かを、判定する。ここで設定時間Tcsとしては、後述のS9によりS5へと戻って制御電気角θcを再度ステップ状に変化させる前に、制御電気角θcを保持して安定させることで、その変化量として位相幅Δθcを正確に確保可能な値が、メモリ52に予め記憶されて利用されるようになっている。
S8において否定判定がなされた場合には、S7へと戻って当該S7及び後続のS8を再度実行する。故に、制御タイマTcが設定時間Tcs以上となるまでは、制御電気角θcが保持されて安定することになる。これに対し、S8において肯定判定がなされた場合にはS9へと移行して、現在の制御電気角θcが−360度であるか否かを判定する。その結果、否定判定がなされた場合には、S5へと戻って当該S5及び後続のS6〜S9を再度実行することにより、制御電気角θcのステップ状変化並びに保持を繰り返す一方、肯定判定がなされた場合には、一回の帰零処理が終了したとしてS10へ移行する。
S10では、帰零処理の繰り返し回数Nが設定回数Ns(例えば10回)に達したか否かを、判定する。その結果、否定判定がなされた場合には、S2へと戻ることにより帰零処理が繰り返される一方、肯定判定がなされた場合には、本制御フローが終了することになる。
以下、制御ユニット50が実施する帰零処理によって実現される作動例を、図8〜10を参照しつつ説明する。尚、図8〜10の各分図(a)において、一点鎖線グラフは、電気角の時間変化を表したものであり、実線グラフは、指針20の回転位置の時間変化をそれに対応する電気角の時間変化にて表したものである。また、図8〜10の各分図(b)において、線幅の異なる二つの実線グラフは、制御電気角θcに応じて決まるA,B各相の帰零駆動信号の時間変化をそれぞれ表している。
(作動例I)
図8は、ストッパ機構Sにより指針20が停止作用を受ける零位置と、ステップモータMにおいてマグネットロータMr及びヨーク31の磁極の着磁位置に応じて決まる電気角の零点θ0とが対応している場合であって、給電前指針ずれがない場合を示している。この場合においてステップモータMの脱調臨界角θthは、指針20の零位置に対応する零点θ0に対して帰零方向Xの対応側へ180度位相のずれた電気角となる。
まず、制御ユニット50が始動すると、制御電気角θcが一旦基準角θbとしての0度にリセットされて指針20が零点θ0と対応の零位置にてストッパ機構Sにより停止した(t0)後、当該電気角θcが帰零方向Xの対応側へ、120度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t1)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内に存在していないので、ステップモータMの強制脱調は生じず、指針20はストッパ機構Sによって停止したままとなる。
このような一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する0度の基準角θbから120度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持され、指針20がストッパ機構Sの停止作用を継続して受ける状態となる(t1〜t2)。このとき本実施形態の指針20は、弾性変形して捩じられながら、図8の如く零位置から帰零方向Xへ僅かにずれるようになっている。
そして、一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、120度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t2)。このとき、今回の位相幅Δθc内には脱調臨界角θthが存在することになる。また、このとき変化後の制御電気角θcは、零点θ0と一致する基準角θbに対して位相が帰零方向Xの対応側へ240度ずれたものとなるので、当該変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角に見かけ上対応する指針20の位置は、零位置よりも反帰零方向Yに存在することとなる。これらのことから、ステップ状変化によってステップモータMの強制脱調が生じ、電気角換算で(120+α)度の位相幅に対応する跳ね上がり量J1にて、指針20が零位置よりも反帰零方向Yへ回転する。ここでα度とは、反帰零方向Yへ回転する指針20のイナーシャに応じて変化する値であり、指針20の反帰零方向Yへの加速度が高いほど増大する。
このような二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから240度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持される(t2〜t3)。これにより指針20は、変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置、即ち零位置に対応の零点θ0から反帰零方向Yの対応側へ120度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置に、留められることとなる。
そして、二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、120度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t3)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内には存在していないので、ステップモータMの強制脱調は生じない。したがって、変化前に零点θ0から120度位相のずれた電気角との対応位置に留められていた指針20は、ストッパ機構Sの停止作用を受ける零位置まで回転駆動されることになる。
このような三段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから360度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持され、指針20が零位置に留められた状態となる(t3〜t4)。そして、三段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、初回の帰零処理が終了する。尚、以上の後においては、繰り返し回数Nが設定回数Nsとなるまで、制御電気角θcのステップ状変化並びに保持を三段階実施する帰零処理が繰り返されるので、指針20が正確な零位置に復帰し得るのである。
ここまで説明したように第一実施形態では、ストッパ機構Sの零位置と電気角の零点θ0とが対応している状況下、制御電気角θcをステップ状に変化させたときのみに、ステップモータMの強制脱調を生じさせることを可能にしている。故に、指針20の反帰零方向Yへの跳ね上がり量J1をステップ状変化の位相幅Δθcに応じた分に確実に抑えて、見栄えを向上させることができるのである。
(作動例II)
図9は、温度特性や製造公差等に起因して指針20の零位置が、零点θ0から反帰零方向Yの対応側へ45度位相ずれした電気角θ45と対応している場合、即ち零位置と零点θ0とが対応していない場合であって、給電前指針ずれがない場合を示している。この場合においてステップモータMの脱調臨界角θthは、指針20の零位置に対応する電気角θ45に対して帰零方向Xの対応側へ180度位相のずれた電気角、即ち零点θ0に対しては帰零方向Xの対応側へ135度位相のずれた電気角となる。
まず、制御ユニット50が始動すると、制御電気角θcが一旦基準角θbとしての0度にリセットされて指針20が電気角θ45と対応の零位置にてストッパ機構Sにより停止(t0)後、帰零方向Xの対応側へ、当該電気角θcで120度の位相幅Δθcによりステップ状に変化する(t1)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内に存在していないので、ステップモータMの強制脱調は生じず、指針20はストッパ機構Sによって停止したままとなる。
このような一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する0度の基準角θbから120度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持され、指針20がストッパ機構Sの停止作用を継続して受ける状態となる(t1〜t2)。このとき本実施形態の指針20は、弾性変形して上記作動例Iの場合よりも大きく捩じられながら、図9の如く零位置(θ45)から帰零方向Xへ僅かにずれるようになっている。
そして、一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、120度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t2)。このとき、今回の位相幅Δθc内には脱調臨界角θthが存在することになる。また、このとき変化後の制御電気角θcは、零点θ0と一致する基準角θbに対して位相が帰零方向Xの対応側へ240度ずれたものとなるので、当該変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角に見かけ上対応する指針20の位置は、零位置よりも反帰零方向Yに存在することとなる。これらのことから、ステップ状変化によってステップモータMの強制脱調が生じ、電気角換算で(75+α)度の位相幅に対応する跳ね上がり量J2にて、指針20が零位置よりも反帰零方向Yへ回転する。
このような二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから240度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持される(t2〜t3)。これにより指針20は、変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置、即ち零位置に対応の電気角θ45から反帰零方向Yの対応側へ75度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置に、留められることとなる。
そして、二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、120度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t3)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内に存在していないので、ステップモータMの強制脱調は生じない。したがって、変化前に電気角θ45から75度位相のずれた電気角との対応位置に留められていた指針20は、零位置へ向けて回転駆動されてストッパ機構Sにより停止させられることになる。
このような三段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから360度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持され、指針20がストッパ機構Sの停止作用を継続して受ける状態となる(t3〜t4)。そして、三段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、初回の帰零処理が終了する。尚、以上の後においては、繰り返し回数Nが設定回数Nsとなるまで、制御電気角θcのステップ状変化並びに保持を三段階実施する帰零処理が繰り返されるので、指針20が正確な零位置に復帰し得るのである。
ここまで説明したように第一実施形態では、ストッパ機構Sの零位置と電気角の零点θ0とが対応していない状況であっても、制御電気角θcをステップ状に変化させたときのみに、ステップモータMの強制脱調を生じさせることを可能にしている。故に、指針20の反帰零方向Yへの跳ね上がり量J2を、ステップ状変化の位相幅Δθcと電気角θ45とに応じて十分に且つ確実に抑えて、見栄えを向上させることができるのである。
(作動例III)
図10は、指針20の零位置と電気角の零点θ0とが対応している場合であって、零点θ0よりも反帰零方向Yの対応側へ630度の位相ずれが給電前指針ずれによって生じている場合を示している。この場合においてステップモータMの脱調臨界角θthは、上記作動例Iの場合と同様に、零点θ0に対して帰零方向Xの対応側へ180度位相のずれた電気角となる。
まず、制御ユニット50が始動すると、制御電気角θcが基準角θbとしての0度にリセットされることで、零点θ0よりも反帰零方向Yの対応側へ720度位相ずれした電気角の対応位置に指針20が回転駆動される(t0)。故に、この後においては、120度の位相幅Δθcでのステップ状変化並びに保持を制御電気角θcについて三段階実施する帰零処理が二回終了する(t6)までは、各段階での位相幅Δθc内に脱調臨界角θthが入らない。故に指針20は、二回の帰零処理によってはステップモータMの強制脱調を生じさせることなく帰零方向Xへと回転駆動され、当該処理の終了時において零点θ0にストッパ機構Sによって停止させられるのである。
このような第一実施形態においては、二回目の帰零処理の終了後、繰り返し回数Nが設定回数Nsとなるまで帰零処理が繰り返されることで、上記作動例Iに準じてステップモータMを強制脱調させる帰零処理(t0〜t4)が三回目の帰零処理として実施されることになる。したがって、給電前指針ずれが生じている場合であっても、指針20の反帰零方向Yへの跳ね上がり量J1をステップ状変化の位相幅Δθcに応じた分、確実に抑えて見栄えを向上させることができるのみならず、指針20を正確な零位置に復帰させることもできるのである。
(第二実施形態)
図11に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。第二実施形態の制御フローは、いずれの回の帰零処理においても、A,B両相の帰零駆動信号の電圧を上限値よりも小さくする。
具体的に制御フローにおいて、制御電気角θcを基準角θbにリセットするS3後に実行のS204では、当該基準角θbに対応する信号電圧について上限値よりも小さい中間値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。また、制御電気角θcを更新するS6後等に実行のS207では、最新の制御電気角θcに対応する信号電圧について上限値よりも低い中間値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。
尚、204,S207において出力される信号電圧につき、中間値の上限値に対する比率はそれぞれ適宜に設定可能であるが、例えばいずれも同一の50%に設定される。
このような第二実施形態では、図12,13の各分図(b)に示すように、A,B各相の帰零駆動信号の信号電圧が、ステップ状変化の前においても後においても、上限値(二点鎖線)よりも小さな中間値(実線)とされる。これによれば、ステップモータMを強制脱調させる二段目のステップ状変化前(t1〜t2)には、ストッパ機構Sによる指針20の捩じれ量を低減できると共に、当該ステップ状変化後(t2〜t3)には、指針20の反帰零方向Yへの加速度を抑えることもできる。したがって、図12,13の各分図(a)に示すように、二段目のステップ状変化後における指針20の跳ね上がり量J1,J2が低減されて、見栄えの向上効果が高められるのである。
(第三実施形態)
図14に示すように、本発明の第三実施形態は第一実施形態の変形例である。第三実施形態の制御フローは、いずれの回の帰零処理においても、A,B両相の帰零駆動信号の電圧をステップ状変化後に上限値よりも小さくする。
具体的に制御フローにおいて、制御電気角θcを更新するS6後等に実行のS307では、最新の制御電気角θcに対応する信号電圧について、上限値よりも低い中間値を第一制御時間T1(図14,15参照)だけ出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。また、これに続くS311では、最新の制御電気角θcに対応する信号電圧について、第二制御時間T2(図14,15参照)にてS307の中間値から上限値まで漸次増大するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。
尚、S307,S311において出力される信号電圧につき、中間値の上限値に対する比率はそれぞれ適宜に設定可能であるが、例えばいずれも同一の50%に設定される。また、S307,S311において、第一及び第二設定時間T1,T2については、それらの和が設定時間Tcs以下となるように、適宜な時間配分にて設定される。
このような第三実施形態では、図15,16の各分図(b)に示すように、A,B各相の帰零駆動信号の信号電圧が、ステップ状変化の後において上限値よりも小さな中間値に一旦設定された後、漸次増大によって当該上限値まで戻されることになる。これによれば、ステップモータMを強制脱調させる二段目のステップ状変化後(t2〜t3)には、指針20の反帰零方向Yへの加速度を十分に抑えることができる。したがって、図15,16の各分図(a)に示すように、二段目のステップ状変化後における指針20の跳ね上がり量J1,J2の低減作用、ひいては見栄えの向上効果が飛躍的に高められるのである。
(第四実施形態)
図17に示すように、本発明の第四実施形態は第一実施形態の変形例である。第四実施形態において「制御手段」としての制御ユニット450は、A,B両相の帰零駆動信号を制御しつつ、スイッチング部454に電気接続された界磁巻線32,33に発生する誘起電圧を検出することで、指針20を零位置に復帰させるように帰零処理を実施する。ここで、A,B各相の駆動信号について信号電圧の上限値が零(0V)より大きくなる電気角では、スイッチング部454の機能により、対応する界磁巻線32,33へ信号印加するための経路を電気接続する共に、当該対応巻線に発生した誘起電圧を検出するための経路を遮断する。一方、A,B各相の駆動信号について信号電圧の上限値が零(0V)となる電気角では、スイッチング部454の機能により、対応する界磁巻線32,33へ信号印加するための経路を遮断すると共に、当該対応巻線に発生した誘起電圧を検出するための経路を電気接続する。尚、スイッチング部454については、例えば、制御ユニット450を構成するマイクロコンピュータ内でのスイッチング処理により経路の接続及び遮断を行うものであってもよいし、当該マイクロコンピュータの入出力ポートをスイッチングすることにより経路の接続及び遮断を行うものであってもよい。
したがって、図18に示すA,B各相の駆動信号について、電気角に対する電圧上限値が第一実施形態と同様に交番する第四実施形態では、同図に黒丸で示す零点θ0並びに当該零点θ0から90度ずつ位相のずれた電気角が、誘起電圧の検出点θdに設定されている。即ち、誘起電圧の検出間隔Δθdは、電気角で90度の位相幅に設定されているのである。尚、このような第二実施形態において電気角の零点θ0は、指針20の零位置と正確に対応するように、予め調整されている。
また、帰零処理後の作動状態において制御ユニット450は、メモリ452に記憶されている電気角の零点θ0に基づいてA,B両相の駆動信号の電圧上限値を制御することにより、車速センサ62の検出車速値を指針20に指示させる。ここで、メモリ452に記憶の零点θ0については、後に詳述するように、帰零処理によって更新される最新のものが利用されるようになっている。
以下、制御ユニット450によって帰零処理を実施するための制御フローを、図19〜21を参照しつつ詳細に説明する。この制御フローは、制御ユニット450が始動することによってスタートし、A,B各相の帰零駆動信号について、電気角をステップ状に多段変化させた後、零点θ0を更新するための更新条件が正規に成立する電気角まで継続して制御するものである。
具体的に、制御フローの図19のS401では、A,B各相の駆動信号としての初期駆動信号を、電気角の零点θ0に対応する電圧に制御し、続くS402において、現在の電気角を基準角θbにセットする。その結果、給電前指針ずれによる電気角の位相ずれが零点θ0に対して180度よりも小さい場合には、電気角の零点θ0への変化によって指針20が零位置へと回転駆動され、当該零点θ0が基準角θbと一致することになる。一方、給電前指針ずれによる電気角の位相ずれが零点θ0に対して180度よりも大きい場合には、零点θ0から360度ずつ位相ずれした電気角のうちいずれかに対応する位置まで指針20が回転駆動され、当該いずれかの電気角が基準角θbと一致することになる。
次にS403では、同期サブ処理を実施する。この同期サブ処理では、A,B各相の駆動信号としての同期駆動信号を、帰零方向Xへの指針20の回転駆動によって電気角とマグネットロータMrの磁極とを同期させるように制御する。さらに同期サブ処理では、A,B各相の駆動信号としてのリターン駆動信号を、反帰零方向Yへの指針20の回転駆動によって電気角を基準角θbに戻すように制御する。
続いてS404では、A,B各相の駆動信号としての振り上げ駆動信号について、反帰零方向Yへの回転駆動により指針20を振り上げるように制御する。このとき、指針20の振り上げ量R(図22〜24参照)としては、電気角換算で180度未満とすることが好ましく、本実施形態では90度に設定されている。
また続いて図20のS405では、指針20の振り上げ量Rに対応する電気角としての90度を基準角θbに加算した角度を、制御電気角θcとしてメモリ452に記憶した後、S406へ移行する。S406では、制御タイマTcを零値にリセットし、その計時を開始してからS407へと移行して、最新の制御電気角θcに対応する信号電圧の上限値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。
さらに続いてS408では、制御タイマTcが設定時間Tcs以上となったか否かを判定する。その結果、否定判定がなされた場合には、S407へと戻って当該S407及び後続のS408を再度実行する。故に、制御タイマTcが設定時間Tcs以上となるまでは、制御電気角θcが保持されて安定することになる。
一方、S408において肯定判定がなされた場合には、S409へ移行する。S409では、メモリ452に記憶の制御電気角θcを、現在値から150度を減算することによって更新し、続くS410において、最新の制御電気角θcに対応する信号電圧の上限値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する。これにより、ステップモータMの意図しない脱調を防止可能とする180度未満の位相幅Δθc、本実施形態では150度の位相幅Δθc(図22〜24参照)にて、制御電気角θcがステップ状に変化する。このとき、ステップモータMの脱調臨界角θth(図22〜24参照)が今回の位相幅Δθc内に存在している場合には、制御電気角θcが当該位相幅Δθcでの変化によって脱調臨界角θthを跨ぐことになるので、ステップモータMの強制脱調が生じる。この強制脱調により指針20は、変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置へ向かって、回転しようとする。故に、変化後の制御電気角θcから360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置が零位置よりも反帰零方向Yに存在する場合の指針20については、当該零位置よりも跳ね上がるように反帰零方向Yへ回転することとなる。
この後のS411では、現在の制御電気角θcについて、基準角θbから帰零方向Xの対応側へ360度位相ずれした検出点θdと一致したか否かを、判定する。その結果、否定判定がなされた場合には、S406へと戻って当該S406及び後続のS407〜S411を再度実行することにより、制御電気角θcの保持並びにステップ状変化を繰り返す一方、肯定判定がなされた場合には、S412へ移行する。
S412では、A,B各相の界磁巻線32,33のうち、基準角θbから360度位相ずれした検出点θdと一致する現在の制御電気角θcにて帰零駆動信号の電圧が零となる検出対象巻線(ここでは界磁巻線33)の誘起電圧を検出し、その検出結果が設定電圧以下となる更新条件の成立を判定する。その結果、肯定判定がなされた場合には、指針20が零位置に復帰したものとしてS413へ移行することで、現在の制御電気角θcにより零点θ0を更新し、その更新結果をメモリ452に記憶する。
一方、S412において否定判定がなされた場合には、指針20は零位置に復帰しておらず、検出対象巻線の誘起電圧が設定電圧を上回る回転状態にあるとして、上記S406,S407,S408と同一内容となる図21のS414,S415,S416を実行する。また続くS417では、メモリ452に記憶の制御電気角θcを、現在値から90度を減算することによって更新し、続くS418において、更新された制御電気角θcに対応する信号電圧の上限値を出力するように、A,B各相の帰零駆動信号を制御する
以上の後のS419では、A,B各相の界磁巻線32,33のうち、いずかの検出点θdとなっている現在の制御電気角θcにて帰零駆動信号の電圧が零となる検出対象巻線の誘起電圧を検出し、その検出結果が設定電圧以下となる更新条件の成立を判定する。その結果、否定判定がなされた場合には、S414へと戻って当該S414及び後続のS415〜S419を再度実行することにより、制御電気角θcの保持並びにステップ状変化を繰り返す。一方、肯定判定がなされた場合には、指針20が零位置に復帰したものとしてS420へと移行し、零点θ0を現在の制御電気角θcにより更新且つその更新結果をメモリ452に記憶する。
尚、図20のS413,図21のS420によって零点θ0の更新並びに記憶がなされた後のS421においては、補正サブ処理を実施する。この補正サブ処理は、ストッパ機構Sによって零位置に停止された指針20の回転位置と、車速表示部11に表示される零値との間にずれが存在している場合において、メモリ452に記憶の特性データに基づき当該ずれを補正するために、実施される。そして、補正サブ処理の終了時には、電気角が最新の零点θ0に制御されるようになっており、以上にて本制御フローが終了することとなる。
以下、制御ユニット450が実施する帰零処理によって実現される作動例を、図22〜24を参照しつつ説明する。尚、図22〜24において、一点鎖線グラフは、電気角の時間変化を表したものであり、実線グラフは、指針20の回転位置の時間変化をそれに対応する電気角の時間変化にて表したものである。
(作動例I)
図22は、ストッパ機構Sにより指針20が停止作用を受ける零位置と、ステップモータMにおいてマグネットロータMr及びヨーク31の磁極の着磁位置に応じて決まる電気角の零点θ0とが対応している場合であって、給電前指針ずれがない場合を示している。この場合において制御ユニット50が始動すると、零点θ0と一致する基準角θbまで電気角が変化して、指針20が零位置まで回転駆動される(t0)。続いて、同期サブ処理が実施された(t0〜t1)後、指針20が零位置よりも反帰零方向Yへ振り上げ量Rにて振り上げられる(t1〜t2)。
この指針20の振り上げから設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから振り上げ量R(90度)位相のずれた状態にて制御電気角θcが保持され、指針20が当該電気角θcに対応する位置に留められる(t2〜t3)。そして、指針20の振り上げから設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcが帰零方向Xの対応側へ、150度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t3)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内に存在していないが、指針20の零位置に対応する零点θ0は今回の位相幅Δθc内に存在しているので、ステップモータMの強制脱調が生じないようにして、指針20がストッパ機構Sによって当該零位置に停止する。
このような一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから60度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持され、指針20がストッパ機構Sの停止作用を継続して受ける状態となる(t3〜t4)。このとき本実施形態の指針20は、弾性変形して捩じられながら、図22の如く零位置から帰零方向Xへ僅かにずれるようになっている。
そして、一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、150度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t4)。このとき、零点θ0と一致する基準角θbに対して位相が帰零方向Xの対応側へ180度ずれている脱調臨界角θthは、今回の位相幅Δθc内に存在することになる。また、このとき変化後の制御電気角θcは、零点θ0と一致する基準角θbに対して位相が帰零方向Xの対応側へ210度ずれたものとなるので、当該変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する指針20の位置は、零位置よりも反帰零方向Yに存在することとなる。これらのことから、ステップ状変化によってステップモータMの強制脱調が生じ、電気角換算で150+α度の位相幅に対応する跳ね上がり量J3にて、指針20が零位置よりも反帰零方向Yへ回転する。
このような二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから210度位相のずれた状態にて、変化後の制御電気角θcが保持される(t4〜t5)。これにより指針20は、変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置、即ち零位置に対応の零点θ0から反帰零方向Yの対応側へ150度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置に、留められることとなる。
そして、二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、150度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t5)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内には存在していないので、ステップモータMの強制脱調は生じない。したがって、変化前に零点θ0から150度位相のずれた電気角との対応位置に留められていた指針20は、ストッパ機構Sの停止作用を受ける零位置まで回転駆動されることとなる。
このような三段目のステップ状変化によって制御電気角θcは、零点θ0と一致する基準角θbから帰零方向Xの対応側へ360度位相ずれした検出点θdとなる。このとき、指針20はストッパ機構Sによって停止しているので、A,B各相の界磁巻線32,33のうち検出対象巻線の誘起電圧が設定電圧以下となって更新条件が成立し、当該成立時の制御電気角θcが最新の零点θ0として更新される。そして、この更新後には、補正サブ処理(t5〜t6)が実施されるので、最新の零点θ0と正確に対応する零位置に指針20が復帰し得るのである。尚、零点θ0の更新については、上述の如く補正サブ処理の前に実施する以外にも、例えば、補正サブ処理の終了時(t6)に実施するようにしてもよい。
ここまで説明したように第四実施形態においても、ストッパ機構Sの零位置と電気角の零点θ0とが対応している状況下、制御電気角θcをステップ状に変化させたときにのみ、ステップモータMの強制脱調を生じることを可能にしている。故に、指針20の反帰零方向Yへの跳ね上がり量J3をステップ状変化の位相幅Δθcに応じた分、確実に抑えて見栄えを向上させることができるのである。
(作動例II)
図23は、温度特性や製造公差等に起因して指針20の零位置が、零点θ0から反帰零方向Yの対応側へ45度位相ずれした電気角θ45と対応している場合、即ち零位置と零点θ0とが対応していない場合であって、給電前指針ずれがない場合を示している。この場合において制御ユニット50が始動すると、零点θ0と一致する基準角θbまで電気角が変化し、ストッパ機構Sによって指針20が零位置にて停止する(t0)。続いて、同期サブ処理が実施された(t0〜t1)後、指針20が零位置よりも反帰零方向Yへ振り上げ量Rにて振り上げられる(t1〜t2)。
この指針20の振り上げから設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから90度の振り上げ量R分位相のずれた状態にて制御電気角θcが保持され、指針20が当該電気角θcに対応する位置に留められる(t2〜t3)。そして、指針20の振り上げから設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcが帰零方向Xの対応側へ、150度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t3)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内に存在していないが、指針20の零位置に対応する電気角θ45は今回の位相幅Δθc内に存在しているので、ステップモータMの強制脱調は生じず、ストッパ機構Sによって指針20が当該零位置に停止する。
このような一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから60度位相のずれた状態にて変化後の制御電気角θcが保持され、指針20がストッパ機構Sの停止作用を継続して受ける状態となる(t3〜t4)。このとき本実施形態の指針20は、弾性変形して上記作動例Iの場合よりも大き捩じられながら、図23の如く零位置から帰零方向Xへ僅かにずれるようになっている。
そして、一段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、150度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t4)。このとき、零点θ0と一致する基準角θbに対して帰零方向Xの対応側へ位相が135度ずれている脱調臨界角θthは、今回の位相幅Δθc内に存在することになる。また、このとき変化後の制御電気角θcは、零点θ0に対して位相が帰零方向Xの対応側へ210度ずれたものとなるので、当該変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する指針20の位置は、零位置よりも反帰零方向Yに存在することとなる。これらのことから、ステップ状変化によってステップモータMの強制脱調が生じ、電気角換算で105+α度の位相幅に対応する跳ね上がり量J4にて、指針20が零位置よりも反帰零方向Yへ回転する。
このような二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過するまでは、零点θ0と一致する基準角θbから210度位相のずれた状態にて、変化後の制御電気角θcが保持される(t4〜t5)。これにより指針20は、変化後の制御電気角θcに対して360度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置、即ち零位置に対応の電気角θ45から反帰零方向Yの対応側へ105度位相のずれた電気角と見かけ上対応する位置に、留められることとなる。
そして、二段目のステップ状変化から設定時間Tcsが経過すると、制御電気角θcがさらに帰零方向Xの対応側へ、150度の位相幅Δθcにてステップ状に変化する(t5)。このとき、脱調臨界角θthは今回の位相幅Δθc内に存在していないので、ステップモータMの強制脱調は生じない。したがって、変化前に電気角θ45から105度位相のずれた電気角との対応位置にあった指針20は、零位置へ向けて回転駆動されてストッパ機構Sにより停止させられることとなる。
このような三段目のステップ状変化によって制御電気角θcは、零点θ0と一致する基準角θbから帰零方向Xの対応側へ360度位相ずれした検出点θdとなる。このとき、指針20はストッパ機構Sによって停止しているので、A,B各相の界磁巻線32,33のうち検出対象巻線の誘起電圧が設定電圧以下となって更新条件が成立し、当該成立時の制御電気角θcが最新の零点θ0として更新されるのである。尚、この更新後には、補正サブ処理(t5〜t6)が実施され、最新の零点θ0と正確に対応する零位置に指針20が復帰し得るのである。
ここまで説明したように第四実施形態においても、ストッパ機構Sの零位置と電気角の零点θ0とが対応していない状況にも拘らず、制御電気角θcをステップ状に変化させたときにのみ、ステップモータMの強制脱調を生じさせることを可能にしている。故に、指針20の反帰零方向Yへの跳ね上がり量J4を、ステップ状変化の位相幅Δθcと電気角θ45とに応じて十分に且つ確実に抑えて、見栄えを向上させることができるのである。
(作動例III)
図24は、指針20の零位置と電気角の零点θ0とが対応している場合であって、零点θ0よりも反帰零方向Yの対応側へ630度の位相ずれが給電前指針ずれによって生じている場合を示している。この場合において制御ユニット50が始動すると、零点θ0から720度位相ずれした基準角θbまで電気角が変化して、零位置よりも反帰零方向Yにて当該基準角θbと対応する位置まで指針20が回転駆動される(t0)。続いて、同期サブ処理が実施された(t0〜t1)後、指針20が基準角θbの対応位置よりも反帰零方向Yへ振り上げ量Rだけ振り上げられて、電気角が零点θ0から(720+R)度、即ち810度位相のずれた状態となる(t1〜t2)。
故に、この後においては、制御電気角θcについて保持並びに150度の位相幅Δθcでのステップ状変化を三段階実施した後、さらに制御電気角θcについて保持並びに90度の位相幅でのステップ状変化を四段階実施するまで(t7)は、各段階での位相幅Δθc内に脱調臨界角θthが入ることはない。故に指針20は、ステップモータMの強制脱調を生じさせることなく帰零方向Xへ回転駆動され、ストッパ機構Sの停止作用を受ける零位置まで到達することになる。この零位置への到達時の電気角となる検出点θdでは、A,B各相の界磁巻線32,33のうち検出対象巻線の誘起電圧が設定電圧以下となって更新条件が成立するので、当該成立時の制御電気角θcが最新の零点θ0として更新される。尚、この更新後には、補正サブ処理(t5〜t6)が実施されるので、最新の零点θ0と正確に対応する零位置に指針20が復帰し得るのである。
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
具体的には、第一〜第四実施形態において「ストッパ手段」としては、指針20を間接的に係止して停止させるストッパ機構S以外にも、指針20を直接的に係止して停止させる構成のものを採用してもよい。また、第一〜第四実施形態においてA,B各相の駆動信号としては、電気角に応じて交番する信号であれば、電圧が余弦関数状又は正弦関数状に変化する信号以外、例えば台形波状や三角波状等に変化する信号を採用してもよい。さらに第一〜第四実施形態において、指針20によって指示する車両状態値については、車両の各種状態に関する値であれば、例えば燃料残量や冷却水温度、エンジン回転数等であってもよい。
第一〜第四実施形態において、ステップモータMを強制脱調させるために帰零駆動信号の電気角をステップ状に変化させる位相幅Δθcについては、ステップモータMの意図しない脱調を防止可能な180度未満であれば、適宜設定してもよい。また、第四実施形態の制御フローにおいては、同期サブ処理を実施するS403、指針20を振り上げるS404、並びに補正サブ処理を実施するS421のうちいずれかについては、実行しないようにしてもよい。さらに、第四実施形態において帰零駆動信号の電圧については、第二実施形態に準じてステップ状変化の前後に上限値よりも小さくしてもよいし、第三実施形態に準じてステップ状変化後に上限値よりも小さくしてもよいし、さらに後者の場合、第三実施形態に準じて上限値を小さくしてから漸次増大させてもよい。またさらに、第一及び第四実施形態において帰零駆動信号の電圧については、ステップ状変化前にのみ上限値よりも小さくしてもよい。
1 車両用指示計器、10 計器板、11 車速表示部、20 指針、30 回動内機、31 ヨーク、32,33 界磁巻線、38 当接部材、39 ストッパ部材、40 基板、50,450 制御ユニット(制御手段)、52,452 メモリ、454 スイッチング部、B バッテリ電源、G 減速歯車列、M ステップモータ、Mr マグネットロータ、Ms ステータ、S ストッパ機構(ストッパ手段)