以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の各実施の形態では、本発明の無線データ通信システムに適用する無線通信方式としてWireless USB規格を適用した例について説明するが、本発明の無線データ通信システムに適用可能な無線通信方式はこれに限定されず、その他の無線PANまたは無線LAN等の無線通信方式を適用してもよい。
また、以下の各実施の形態では、本発明の無線データ通信システムにおける処理対象データとして印刷データを適用した例について説明するが、本発明において処理対象データはこれに限定されず、例えば、ファクシミリ装置によって送信される画像データ等であってもよい。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の構成を示す機能ブロック図である。
図1において、無線データ通信システム1は、パーソナルコンピュータまたはデジタルカメラ等のコンピュータによって構成される無線データ送信装置2と、プリント専用機または複合機等のプリンタ装置によって構成される無線データ受信装置3とを備えている。
なお、無線データ送信装置2および無線データ受信装置3は、コンピュータおよびプリンタ装置にそれぞれ内蔵される電気回路によって構成されてもよく、コンピュータおよびプリンタ装置にそれぞれ接続されるPCカードやその他の外部装置によって構成されてもよい。
無線データ送信装置2は、無線信号を送受信するアンテナ201と、アンテナ201を送信または受信に切り替える切り替えスイッチ202と、変更可能に設定されるゲインで信号を増幅するゲイン可変パワーアンプ203と、Wireless USB規格に準拠してデータを変調しゲイン可変パワーアンプ203およびアンテナ201を介して送信する無線送信部204と、アンテナ201を介して受信した信号をWireless USB規格に準拠して復調する無線受信部205と、制御部206と、パワー制御部207と、処理速度受信部208と、SNR受信部209と、送信速度調整部210と、必要SNR計算部211とを備えている。
制御部206は、印刷データを生成するアプリケーションから、図示しない入出力インタフェースおよびバッファを介して入力される印刷データを無線送信部204に出力するようになっている。
また、制御部206は、無線送信部204から信号を送信する際にはアンテナ201が無線送信部204に接続されるよう切り替えスイッチ202を制御し、無線受信部205が信号を受信する際にはアンテナ201が無線受信部205に接続されるよう切り替えスイッチ202を制御する他、無線データ送信装置2の各部を制御するようになっている。
パワー制御部207は、ゲイン可変パワーアンプ203のゲインを変更することにより、アンテナ201から送信される信号の送信電力を制御するようになっている。
また、パワー制御部207は、ゲイン可変パワーアンプ203のゲインの初期値として、Wireless USBの規格に準拠した最大の送信電力の−10.3dBmでアンテナ201から信号を送信できるゲインを設定するようになっている。なお、日本における電波法ではUWBの最大送信電力として−41.3dBm/MHzが定められており、Wireless USB規格における信号帯域幅528MHzおよび信号送出時間を考慮すると、Wireless USBの規格に準拠した最大の送信電力は−10.3dBmとなる。
処理速度受信部208およびSNR受信部209は、無線受信部205によって復調されたデータを解析することにより、無線データ受信装置3においてデータが印刷される処理速度および無線データ受信装置3において受信されたデータの信号雑音比SNR(Signal to Noise Ratio: 以下、受信SNRという)をそれぞれ取得するようになっている。
送信速度調整部210は、Wireless USBの規格に準拠した複数のデータ送信速度から最適なものを選択して、無線送信部204からのデータ送信速度を調整するようになっている。また、送信速度調整部210は、Wireless USBの規格に準拠した最大データ送信速度の480Mbpsを初期値として設定するようになっている。
必要SNR計算部211は、後述する必要SNRテーブルをあらかじめ記憶しており、この必要SNRテーブルを参照することにより、送信速度調整部210によって調整されたデータ送信速度を確保するために必要となる受信SNR(以下、必要SNRという)を計算するようになっている。また、必要SNR計算部211は、計算した必要SNRと、無線データ受信装置3における受信SNRとに基づいて、送信速度調整部210によって調整されたデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するのに必要な送信電力の値を算出するようになっている。
なお、無線受信部205は本発明における制御データ受信手段を構成し、送信速度調整部210は本発明における送信速度調整手段を構成し、必要SNR計算部211は本発明における送信電力算出手段を構成し、パワー制御部207は本発明における送信電力制御手段を構成している。
無線データ受信装置3は、無線信号を送受信するアンテナ301と、アンテナ301を送信または受信に切り替える切り替えスイッチ302と、アンテナ301を介して受信した処理対象データを表す信号をWireless USB規格に準拠して復調する無線受信部303と、Wireless USB規格に準拠してデータを変調しアンテナ301を介して送信する無線送信部304と、制御部305と、処理速度決定部306と、SNR受信部307とを備えている。
制御部305は、無線送信部304から信号を送信する際にはアンテナ301が無線送信部304に接続されるよう切り替えスイッチ302を制御し、無線受信部303が信号を受信する際にはアンテナ301が無線受信部303に接続されるよう切り替えスイッチ302を制御する他、無線データ受信装置3の各部を制御するようになっている。
また、制御部305は、無線受信部303によって復調されたデータを、印刷処理を実行するアプリケーションに対して、図示しないバッファおよび入出力インタフェースを介して出力するとともに、出力したデータに対する処理速度を表す情報を、このアプリケーションから取得するようになっている。
処理速度決定部306は、データに対する処理速度を、制御部305から取得した処理速度に関する情報に基づいて決定するようになっている。なお、処理速度決定部306は、データに対する処理速度を表す情報を、受信したデータの種類等に対応づけてあらかじめ記憶しておいてもよい。
SNR受信部307は、無線受信部303によって受信された信号の受信SNRを取得するようになっている。ここで、Wireless USBがPHY(physical layer)層の規格として採用しているWiMedia AllianceのPHY規格では、信号を復調する過程で受信SNRの指標であるLQI(Link Quality Indicator)が算出されることが定められており、SNR受信部307は、無線受信部303によって復調される過程のデータに含まれるLQIを参照することにより、受信SNRを取得するようになっている。
なお、無線送信部304および処理速度決定部306は本発明における制御データ送信手段を構成し、SNR受信部307は本発明における信号雑音比取得手段を構成している。
図2を参照して、必要SNR計算部211が記憶する必要SNRテーブルについて説明する。図2(a)は、Wireless USB規格に準拠した各データ送信速度において、受信SNRと実効データ転送レートとの関係の一例を表すグラフであり、図2(b)は、必要SNR計算部211が記憶する必要SNRテーブルである。
図2(a)を参照すると、例えばデータ送信速度を480Mbpsとした場合、受信SNRが7dB以上であれば、実効データ転送レート480Mbpsを確保することができるが、受信SNRが7dB未満であると実効データ転送レートは劣化することがわかる。また、データ送信速度が480Mbpsである場合において、受信SNRが7dBより大きくなっても実効データ転送レートは480Mbps以上にはならない。
したがって、実効データ転送レート480Mbpsを確保するための必要SNRは7dBとなる。同様に、各データ送信速度53.3Mbps、106Mbps、200Mbpsに対する必要SNRは、それぞれ−4dB、−1dB、3dBとなる。
図2(a)に示したような受信SNRと実効データ転送レートとの関係は、無線データ送信装置および無線データ受信装置の受信性能として定まるため、必要SNR計算部211は、各データ送信速度に対する必要SNRを表すデータを、図2(b)に示すようなテーブルとしてあらかじめ記憶している。
以上のように構成された無線データ通信システム1について、図3を用いてその動作を説明する。
なお、以下の動作の開始時に、無線送信部204からのデータ送信速度の初期値は最大の480Mbpsが設定され、ゲイン可変パワーアンプ203におけるゲインの初期値は最大送信電力の−10.3dBmでアンテナ201から信号を送信できるゲインが設定されているものとする。
図3において、まず、無線データ送信装置2において、無線送信部204は、アプリケーションから出力された印刷データを処理対象データとしてWireless USB規格に準拠して変調し、変調した処理対象データを表す信号をゲイン可変パワーアンプ203およびアンテナ201を介して設定されたデータ送信速度で送信する(ステップS1)。
次に、無線データ受信装置3において、無線受信部303は、処理対象データを表す信号をアンテナ301を介して受信し、Wireless USB規格に準拠して復調する(ステップS2)。
次に、SNR受信部307は、処理対象データが復調される過程のデータに含まれるLQIの値を参照し、受信した処理対象データを表す信号の受信SNRを取得する(ステップS3)。
次に、制御部305は、ステップS2で復調された処理対象データを、処理対象データの印刷処理を実行するアプリケーションに対して出力すると同時に、このアプリケーションから、処理対象データを印刷する処理速度に関する印刷性能等の情報を取得し、処理速度決定部306は、処理対象データの処理速度を決定する(ステップS4)。
例えば、無線データ受信装置3がインクジェットプリンタで印刷性能が5ppmである場合、処理速度決定部306は、印刷性能が5ppmの場合に1秒間で処理できるデータ量を20Mbとし、処理速度として20Mbpsを決定する。
次に、無線送信部304は、ステップS3で取得された受信SNRと、ステップS4で決定された処理速度をそれぞれ表す情報を制御データとしてこれを変調し、変調した制御データを表す信号を無線データ送信装置2に対して送信する(ステップS5)。
無線データ送信装置2において、無線受信部205は、制御データを表す信号をアンテナ201を介して受信し、復調する(ステップS6)。
次に、処理速度受信部208は、処理対象データの処理速度を表す情報を制御データから取得し、送信速度調整部210は、処理対象データの処理速度に基づいて無線送信部204からのデータ送信速度を調整する(ステップS7)。
例えば、処理対象データの処理速度として20Mbpsを表す情報が制御データに含まれていた場合、Wireless USBに準拠したデータ送信速度のうち、20Mbpsより大きく最も小さいデータ送信速度53.3Mbpsを選択する。
次に、必要SNR計算部211は、あらかじめ記憶してある必要SNRテーブルを参照し、調整したデータ送信速度に対する必要SNRを計算する(ステップS8)。
例えば、調整したデータ送信速度が53.3Mbpsである場合、必要SNR計算部211は図2(b)に示した必要SNRテーブルを参照して必要SNRを−4dBと計算する。
次に、SNR受信部209は、無線データ受信装置3における受信SNRを表す情報を制御データから取得し、必要SNR計算部211は、受信SNRと、ステップS8で計算した必要SNRとに基づいて、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力の値を算出する(ステップS9)。
すなわち、ステップS9において必要SNR計算部211は、受信SNRと必要SNRとの差を受信SNRの余裕分として算出し、算出した余裕分だけ現在の送信電力を減少させた値を算出する。
例えば、無線データ受信装置3における受信SNRが22.8dBであれば、必要SNRである−4dBに基づいて、受信SNRの余裕分は26.8dBと算出される。アンテナ201における現在の送信電力が−10.3dBmである場合、送信電力を受信SNRの余裕分の26.8dBだけ減少させて−37.1dBmとしても、実効データ転送レートとして53.3Mbpsを確保することができることになる。
次に、パワー制御部207が、ステップS9で算出した値の送信電力になるようゲイン可変パワーアンプ203のゲインを変更する(ステップS10)。
以降、無線データ送信装置2では、印刷データを生成するアプリケーションからの処理対象データの出力が終了するまで、処理対象データを表す信号をステップS10で変更したゲインで増幅するとともにステップS7で調整したデータ送信速度で無線データ受信装置3に対して送信し、無線データ受信装置3は、受信した処理対象データに対して印刷等の処理を実行する。
以上で、無線データ通信システム1は動作を終了する。
なお、本発明の第1の実施の形態の説明において、無線データ受信装置3のSNR受信部307は、WiMedia Allianceで定められた指標LQIを用いて受信SNRを取得する例について説明したが、本発明において、無線データ受信装置の信号雑音比取得手段が受信SNRを取得する手法はこれに限定されない。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1は、無線データ送信装置2が、無線データ受信装置3から受信した制御データに含まれる処理対象データの処理速度および受信SNRに基づいて、データ送信速度を調整するとともに調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力の値を算出して送信電力を制御する。これにより、無線データ受信装置3における処理対象データの処理速度が低い場合にデータ送信速度が低く調整されて送信時間が長くなっても、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力まで送信電力を減少させることができ、無線データ送信装置2における消費電力が増大することを防止することができる。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る無線データ通信システム4の構成を示す機能ブロック図である。なお、図4に示す無線データ通信システム4の構成のうち、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の構成と同一なものには同一の符号を付して説明を省略する。
図4において、無線データ通信システム4は、パーソナルコンピュータまたはデジタルカメラ等のコンピュータによって構成される無線データ送信装置5と、プリント専用機または複合機等のプリンタ装置によって構成される無線データ受信装置6とを備えている。
なお、無線データ送信装置5および無線データ受信装置6は、コンピュータおよびプリンタ装置にそれぞれ内蔵される電気回路によって構成されてもよく、コンピュータおよびプリンタ装置にそれぞれ接続されるPCカードやその他の外部装置によって構成されてもよい。
無線データ送信装置5は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ送信装置2に対して、必要SNR計算部211に替えて必要SNR計算部511を、SNR受信部209に替えて距離計算部504と、フレームタイミング検出部502と、タイマー503とを備える点で相違している。
フレームタイミング検出部502は、タイマー503のカウントに基づいて無線送信部204および無線受信部205によって送受信される信号の所定のタイミングを検出するようになっている。
距離計算部504は、フレームタイミング検出部502の検出結果に基づいて無線データ送信装置5と無線データ受信装置6との間の距離を計算するようになっており、例えば、後述するWiMedia AllianceのPHY規格に示されたranging measurement手法に従った距離測定を行うようになっている。
必要SNR計算部511は、必要SNR計算部211と同様に図2に示した必要SNRテーブルをあらかじめ記憶しており、必要SNRテーブルを参照して、送信速度調整部210によって調整されたデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するための必要SNRを計算するようになっている。
また、必要SNR計算部511は、受信SNRの基準値をあらかじめ記憶している。ここで、受信SNRの基準値は、装置間の距離が1メートルである場合の受信SNRの理論値である。以下、受信SNRの理論値の算出方法について説明する。
受信SNRは、受信電力および受信した信号のノイズレベルの比として算出する。
まず、無線データ受信装置6のアンテナ301における受信電力を、送信電力および空中における伝送ロスから算出する。
無線データ送信装置5のアンテナ201からの送信電力は、Wireless USB規格に準拠した最大の送信電力の−10.3dBmであるものとする。
また、空中1メートルにおける伝送ロスL1は、キャリア周波数の中心周波数をf、光速をcとした場合、L1=20log10(4πf・c)で計算することができ、f=3882MHzとした場合、L1=44.2dBとなる。
よって、無線データ受信装置6のアンテナ301における受信電力は、アンテナ201の送出電力である−10.3dBmおよび伝送ロスである44.2dBに基づいて、−54.5dBmとなる。
次に、無線データ受信装置6で受信される信号のノイズレベルを算出する。
無線データ受信装置6で受信される信号のノイズレベルは、無線データ受信装置6の図示しないRF(Radio Frequency)回路による熱雑音(−86.4dBm)、RFアンプのノイズ(6.6dB)、量子化ノイズやチャンネル推定エラー等の受信アーキテクチャに関する実装ロス(2.5dB)を考慮すると、−77.3dBmとなる。
したがって、装置間の距離が1メートルである場合の受信SNRの理論値は、受信電力の−54.5dBmおよびノイズレベルの−77.3dBmに基づき、22.8dBと算出される。
このように、必要SNR計算部511は、アンテナ間の距離が1メートルである場合の受信SNRの理論値を、受信SNRの基準値としてあらかじめ記憶している。
必要SNR計算部511は、受信SNRの基準値、距離計算部504によって計算された距離、および、計算した必要SNRに基づいて、送信速度調整部210によって調整されたデータ送信速度を実行データ転送レートで確保するために最適な送信電力の値を算出するようになっている。
なお、必要SNR計算部511および距離計算部504は、本発明における送信電力算出手段を構成している。
無線データ受信装置6は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ受信装置3に対して、SNR受信部307に替えて距離測定フレーム作成部601、フレームタイミング検出部602およびタイマー603を備える点で相違している。
距離測定フレーム作成部601は、無線データ送信装置5に対して送信するための距離測定フレームを作成するようになっている。距離測定フレームは、例えば、後述するranging measurement手法に従ったフレームとして作成される。
フレームタイミング検出部602は、タイマー603のカウントに基づいて無線送信部304および無線受信部303によって送受信される信号の所定のタイミングを検出するようになっている。
なお、距離測定フレーム作成部601、フレームタイミング検出部602およびタイマー603は本発明における距離検出手段を構成している。
ここで、図5を参照して、距離測定部504が行う距離測定について、WiMedia Allianceのranging measurement手法を例として説明する。
まず、無線データ送信装置5のタイマー503および無線データ受信装置6のタイマー603をオンにしておく。
無線データ送信装置5の無線送信部204が処理対象データであるフレームRM1を無線データ受信装置6に対して送信する。このとき、フレームタイミング検出部502はタイマー503のカウントに基づいて、送信中のフレームRM1に含まれるプリアンブルの終端タイミングT1を検出する。
フレームRM1を受信する無線データ受信装置6では、フレームタイミング検出部602がタイマー603のカウントに基づいて、受信中のフレームRM1のプリアンブルの終端タイミングR1を検出する。
次に、無線データ受信装置6の距離測定フレーム作成部601は、距離測定フレームRM2を作成し、無線送信部304はフレームRM2を無線データ送信装置5に対して送信する。このとき、フレームタイミング検出部602はタイマー603のカウントに基づいて、送信中のフレームRM2のプリアンブルの終端タイミングT2を検出する。
フレームRM2を受信する無線データ送信装置5では、フレームタイミング検出部502がタイマー503のカウントに基づいて、受信中のフレームRM2のプリアンブルの終端タイミングR2を検出する。
次に、無線データ受信装置6の無線送信部304は、測定したタイミングR1およびT2を制御データとして無線データ送信装置5に対して送信する。
制御データを受信した無線データ送信装置5では、距離計算部504が、受信した制御データに含まれるR1、T2、および、フレームタイミング検出部502によって検出されたT1、R2に基づいて、以下の式(1)に従って無線データ送信装置5および無線データ受信装置6の間の距離を計算する。
このようにして、無線データ送信装置5の距離測定部504は、無線データ送信装置5と無線データ受信装置6との間の距離を計算するようになっている。
以上のように構成された無線データ通信システム4について、図6を用いてその動作を説明する。
なお、以下の動作の開始時には、第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の動作と同様に、無線送信部204からのデータ送信速度の初期値は最大の480Mbpsが設定され、ゲイン可変パワーアンプ203におけるゲインの初期値は最大の送信電力である−10.3dBでアンテナ201から信号を送信できるゲインが設定されているものとする。
まず、無線データ送信装置5において、無線送信部204は、アプリケーションから出力された印刷データを処理対象データとしてWireless USB規格に準拠して変調し、変調した処理対象データを表す信号をゲイン可変パワーアンプ203およびアンテナ201を介して設定されたデータ送信速度で送信する。このとき、フレームタイミング検出部502は、タイマー503のカウントに基づいて、送信中の処理対象データを表す信号の所定のタイミングT1を距離に関する情報として検出する(ステップS21)。
一方、無線データ受信装置6において、無線受信部303は、処理対象データを表す信号をアンテナ301を介して受信し、Wireless USB規格に準拠して復調する。このとき、フレームタイミング検出部602は、タイマー603のカウントに基づいて、受信中の処理対象データを表す信号の所定のタイミングR1を距離に関する情報として検出する(ステップS22)。
次に、距離測定フレーム作成部601は距離測定フレームを作成し、無線送信部304は距離測定フレームを送信する。このとき、フレームタイミング検出部602は、タイマー603のカウントに基づいて、送信中の距離測定フレームの所定のタイミングT2を距離に関する情報として検出する。(ステップS23)。
無線データ送信装置5において、無線受信部205は、距離測定フレームをアンテナ301を介して受信する。このとき、フレームタイミング検出部502は、タイマー503のカウントに基づいて、受信中の距離測定フレームの所定のタイミングR2を距離に関する情報として検出する(ステップS24)。
無線データ受信装置6において、ステップS23が実行された後、制御部305は、ステップS22で復調された処理対象データを、印刷処理を実行するアプリケーションに対して出力すると同時に、このアプリケーションから処理対象データに対する処理速度に関する印刷性能等の情報を取得し、処理速度決定部306は、処理対象データの処理速度を決定する(ステップS25)。
例えば、無線データ受信装置6がインクジェットプリンタで印刷性能が5ppmである場合、処理速度決定部306は、印刷性能が5ppmの場合に1秒間で処理できるデータ量を20Mbとし、処理速度として20Mbpsを決定する。
次に、無線送信部304は、ステップS22およびステップS23で検出された距離に関する情報としてタイミングR1、T2、および、ステップS25で決定された処理速度をそれぞれ表す情報を制御データとしてこれを変調し、変調した制御データを表す信号を無線データ送信装置5に対して送信する(ステップS26)。
無線データ送信装置5において、無線受信部205は、送信された制御データをアンテナ201を介して受信し、復調する(ステップS27)。
次に、処理速度受信部208は、処理対象データの処理速度を表す情報を制御データから取得し、送信速度調整部210は、処理対象データの処理速度に基づいてデータ送信速度を調整する(ステップS28)。
例えば、処理対象データの処理速度として20Mbpsを表す情報が制御データに含まれていた場合、送信速度調整部210は、Wireless USBに準拠したデータ送信速度のうち、20Mbpsより大きく最も小さい53.3Mbpsにデータ送信速度を調整する。
次に、制御データに含まれる距離に関する情報R1、T2、および、ステップS21およびステップS24で検出した距離に関する情報T1、R2に基づいて、距離測定部504は、無線データ送信装置5および無線データ受信装置6間の距離を算出する。(ステップS29)。
次に、必要SNR計算部511は、あらかじめ記憶してある必要SNRテーブルを参照し、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するための必要SNRを計算する(ステップS30)。
例えば、ステップS29で調整したデータ送信速度が53.3Mbpsである場合、必要SNR計算部511は図2(b)のテーブルを参照して必要SNRを−4dBと計算する。
次に、必要SNR計算部511は、あらかじめ記憶してある受信SNRの基準値と、ステップS29で算出した距離と、ステップS30で計算した必要SNRとに基づいて、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するのに最適な送信電力の値を算出する(ステップS31)。
すなわち、ステップS31において必要SNR計算部511は、算出した距離に応じた受信SNRを受信SNRの基準値に基づいて計算し、計算した受信SNRと必要SNRとの差を受信SNRの余裕分として、この余裕分だけ現在の送信電力を減少させた値を算出する。
例えば、ステップS29で算出した装置間の距離が1メートルであれば、装置間の距離が1メートルの場合の受信SNRの基準値22.8dBと必要SNRである−4dBとに基づいて、受信SNRの余裕は26.8dBと算出される。アンテナ201における現在の送信電力が−10.3dBmである場合、送信電力を受信SNRの余裕分の26.8dBだけ減少させて−37.1dBmとしても、実効データ転送レートとして53.3Mbpsを確保することができることになる。
ステップS31における必要SNR計算部511の動作の別の例として、ステップS29で算出した装置間の距離が2メートルである場合について説明する。装置間の距離がdメートルの場合の受信SNRは、装置間の距離が1メートルの場合の受信SNRより20log10(d)dBだけ小さくなる。すなわち、装置間の距離がdメートルの場合、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力としては、装置間が1メートルの場合の送信電力に比べて、20log10(d)dB大きい送信電力が必要となる。
したがって、装置間の距離が2メートルであれば、装置間の距離が1メートルの場合の受信SNRは受信SNRの基準値22.8dBより6dB小さくなり、16.8dBとなる。データ送信速度が53.3Mbpsの場合の必要SNRは−4dBなので、受信SNRの余裕は20.8dBと算出される。アンテナ201における現在の送信電力が−10.3dBmである場合、アンテナ201における送信電力を余裕分の20.8dBだけ減少させて−31.1dBとしても、実効データ転送レートとして53.3Mbpsを確保できることになる。すなわち、調整したデータ送信速度53.3Mbpsを実効データ転送レートで確保できる送信電力の値は、装置間の距離が1メートルの場合の−37.1dBmより6dB大きい−31.1dBとなる。
次に、パワー制御部207は、ステップS31で算出された値の送信電力になるようゲイン可変パワーアンプ203のゲインを変更する(ステップS32)。
以降、無線データ送信装置5では、印刷データを生成するアプリケーションからの処理対象データの出力が終了するまで、処理対象データを表す信号をステップS31で変更したゲインで増幅するとともにステップS28で調整したデータ送信速度で無線データ受信装置6に対して送信し、無線データ受信装置6は、受信した処理対象データに対して印刷処理を実行する。
以上で、無線データ通信システム4は動作を終了する。
なお、本発明の第2の実施の形態の説明において、無線データ送信装置5の距離計算部504は、WiMedia Allianceに示されたranging measurement手法を用いて装置間の距離を測定する例について説明したが、本発明において、無線データ送信装置および無線データ受信装置間の距離を測定する手法はこれに限定されない。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る無線データ通信システム4は、無線データ送信装置5が、無線データ受信装置6から受信した制御データに含まれる処理対象データの処理速度に基づいてデータ送信速度を調整するとともに、制御データに含まれる距離に関する情報に基づいて無線データ送信装置5および無線データ受信装置6間の距離を計算し、計算した距離に基づいて、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するのに必要な送信電力の値を算出して送信電力を制御する。これにより、無線データ送信装置5における消費電力の増大を防止する最適な送信電力として、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するのに必要な送信電力の値を、装置間の距離に応じて算出することができる。
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る無線データ通信システム7の構成を示す機能ブロック図である。なお、図7に示す無線データ通信システム7の構成のうち、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の構成と同一なものには同一の符号を付して説明を省略する。
図7において、無線データ通信システム7は、パーソナルコンピュータまたはデジタルカメラ等のコンピュータによって構成される無線データ送信装置8と、プリント専用機または複合機等のプリンタ装置によって構成される無線データ受信装置9とを備えている。
なお、無線データ送信装置8および無線データ受信装置9は、コンピュータおよびプリンタ装置にそれぞれ内蔵される電気回路によって構成されてもよく、コンピュータおよびプリンタ装置にそれぞれ接続されるPCカードやその他の外部装置によって構成されてもよい。
無線データ送信装置8は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ送信装置2に対して、必要SNR計算部211に替えて必要SNR計算部811を、SNR受信部209に替えてRSSI測定部801と、受信レベル測定部802と、送信レベル受信部803とを備える点で相違している。
RSSI測定部801は、無線受信部205によって受信された信号がWireless USB規格に準拠して復調される過程でRSSI(Received Signal Strengh Indicator)信号を測定するようになっている。ここで、RSSI信号とは、WiMedia AllianceのPHY規格において信号を復調する過程で測定するよう定められたもので、受信した信号の強度を表す信号である。
受信レベル測定部802は、測定されたRSSI信号に基づいて受信レベルを測定するようになっている。なお、受信レベルとRSSI信号の値との関係は無線データ送信装置および無線データ受信装置の受信性能として定まるため、受信レベル測定部802は、受信レベルとRSSI信号の値との関係を表す情報をあらかじめ記憶している。
送信レベル受信部803は、無線受信部205によって復調されたデータを解析することにより、無線データ受信装置9における送信レベルを表す情報を取得するようになっている。
必要SNR計算部811は、必要SNR計算部211と同様に図2に示した必要SNRテーブルをあらかじめ記憶しており、必要SNRテーブルを参照して、送信速度調整部210によって調整されたデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するための必要SNRを計算するようになっている。
また、必要SNR計算部811は、無線データ送信装置8が受信する信号のノイズレベルの値をあらかじめ記憶している。受信する信号のノイズレベルは無線データ送信装置および無線データ受信装置の受信性能として所定の値が定まっており、例えばWireless USBに準拠した無線通信を行う無線データ送信装置および無線データ受信装置におけるノイズレベルは−77.3dBmである。
必要SNR計算部811は、ノイズレベルの値、受信レベル測定部802によって測定された受信レベル、送信レベル受信部803によって取得された無線データ受信装置9における送信レベル、および、計算した必要SNRに基づいて、送信速度調整部210によって調整されたデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するために最適な送信電力の値を算出するようになっている。
なお、RSSI測定部801および受信レベル測定部802は本発明における受信レベル測定手段を構成し、必要SNR計算部811は本発明における送信電力算出手段を構成している。
無線データ受信装置9は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ受信装置3に対して、SNR受信部307に替えて送信レベル情報部901を備える点で相違している。
送信レベル情報部901は、無線送信部304から送信される信号がアンテナ301から送信される際の送信レベルを表す情報を記憶している。例えば、無線送信部304から送信される信号のデータ送信速度がWireless USB規格に準拠した最大のデータ送信速度に設定され、図示しないパワーアンプのゲインがWireless USB規格に準拠した最大送信電力の−10.3dBmで送信できる値に設定されている場合、送信レベル情報として、−10.3dBmを表す情報を記憶している。なお、送信レベル情報部901は本発明における送信レベル取得手段を構成している。
以上のように構成された無線データ通信システム7について、図8を用いてその動作を説明する。
なお、以下の動作の開始時には、第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の動作と同様に、無線送信部204からのデータ送信速度の初期値は最大の480Mbpsが設定され、ゲイン可変パワーアンプ203におけるゲインの初期値は最大の送信電力である−10.3dBでアンテナ201から信号を送信できるゲインが設定されているものとする。
まず、無線データ送信装置8において、無線送信部204は、アプリケーションから出力された印刷データを処理対象データとしてWireless USB規格に準拠して変調し、ゲイン可変パワーアンプ203およびアンテナ201を介して設定されたデータ送信速度で送信する(ステップS41)。
無線データ受信装置9において、無線受信部303は、処理対象データを表す信号をアンテナ301を介して受信し、Wireless USB規格に準拠して復調する(ステップS42)。
次に、制御部305は、ステップS42で復調された処理対象データを、印刷処理を実行するアプリケーションに対して出力すると同時に、このアプリケーションから処理対象データに対する処理速度に関する情報を取得する。また、処理速度決定部306は、処理速度に関する印刷性能等の情報に基づいて処理対象データの処理速度を決定する(ステップS43)。
例えば、無線データ受信装置9がインクジェットプリンタで印刷性能が5ppmである場合、処理速度決定部306は、印刷性能が5ppmの場合に1秒間で処理できるデータ量を20Mbとし、処理速度として20Mbpsを決定する。
次に、無線送信部304は、送信レベル情報部901から取得した送信レベル情報と、ステップS43で決定された処理速度を表す情報とを制御データとしてこれを変調し、変調した制御データを表す信号を無線データ送信装置8に対して送信する(ステップS44)。
無線データ送信装置8において、無線受信部205は、制御データを表す信号をアンテナ201を介して受信し、復調する(ステップS45)。
次に、RSSI測定部801は、制御データが復調される過程のデータからRSSI信号を測定し、受信レベル測定部802は、測定されたRSSI信号に基づいて受信レベルを測定する(ステップS46)。
次に、処理速度受信部208は、処理対象データに対する処理速度を表す情報を制御データから取得し、送信速度調整部210は、処理対象データに対する処理速度に基づいてデータ送信速度を調整する(ステップS47)。
例えば、処理対象データの処理速度として20Mbpsを表す情報が制御データに含まれていた場合、送信速度調整部210は、Wireless USBに準拠したデータ送信速度のうち、20Mbpsより大きく最も小さい53.3Mbpsを選択してデータ送信速度を調整する。
次に、必要SNR計算部811は、あらかじめ記憶してある必要SNRテーブルを参照し、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保するための必要SNRを計算する(ステップS48)。
例えば、ステップS47で調整されたデータ送信速度が53.3Mbpsである場合、必要SNR計算部811は図2(b)のテーブルを参照して必要SNRを−4dBと計算する。
次に、送信レベル受信部803は、復調された制御データを解析して無線データ受信装置9の送信レベルを取得し、必要SNR計算部811は、この送信レベルと、ステップS46で測定された受信レベルと、ステップS48で計算した必要SNRと、あらかじめ記憶してあるノイズレベルの値とに基づいて、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力の値を算出する(ステップS49)。
すなわち、ステップS49において必要SNR計算部811は、測定した受信レベルとあらかじめ記憶してあるノイズレベルとに基づいて無線データ送信装置8が制御データを受信したときの受信SNRを算出し、算出した受信SNRと計算した必要SNRとの差を受信SNRの余裕分として、無線データ受信装置9の送信レベルをこの余裕分だけ減少させた値を、無線データ送信装置8の送信電力として算出する。
例えば、ステップS46で測定された受信レベルが−60.5dBmの場合、あらかじめ記憶してあるノイズレベルである−77.3dBmに基づいて受信SNRは16.8dBであると算出され、受信SNR16.8dBと必要SNRである−4dBとに基づいて受信SNRの余裕は20.8dBであると算出される。無線データ受信装置9の送信レベルが−10.3dBmである場合、これを受信SNRの余裕分の20.8dBだけ減少させた−31.1dBmを、無線データ送信装置8の送信電力としても、実効データ転送レートとして53.3Mbpsを確保できることになる。
次に、パワー制御部207は、ステップS49で算出した値の送信電力になるようゲイン可変パワーアンプ203のゲインを変更する(ステップS50)。
以降、無線データ送信装置8では、印刷データを生成するアプリケーションからの処理対象データの出力が終了するまで、処理対象データを表す信号をステップS50で変更したゲインで増幅するとともにステップS47で調整したデータ送信速度で無線データ受信装置9に対して送信し、無線データ受信装置9は、受信した処理対象データに対して印刷処理を実行する。
以上で、無線データ通信システム7は動作を終了する。
なお、本発明の第3の実施の形態の説明において、無線データ送信装置8のRSSI測定部801および受信レベル測定部802が、WiMedia Allianceで定められたRSSI信号を用いて受信レベルを測定する例について説明したが、本発明において、無線データ送信装置の受信レベル測定手段が受信レベルを測定する手法はこれに限定されない。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係る無線データ通信システム7は、無線データ送信装置8が、無線データ受信装置9から受信した制御データに含まれる処理対象データの処理速度に基づいてデータ送信速度を調整するとともに、制御データに含まれる送信レベルを表す情報と、制御データを受信した際に測定した受信レベルとに基づいて、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力の値を算出して送信電力を制御する。これにより、無線データ送信装置8における消費電力の増大を防止する最適な送信電力として、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力の値を、装置間での電力レベルの劣化に応じて算出することができる。
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る無線データ通信システム10の構成を示す機能ブロック図である。なお、図9に示す無線データ通信システム10の構成のうち、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の構成と同一なものには同一の符号を付して説明を省略する。
図9において、無線データ通信システム10は、パーソナルコンピュータまたはデジタルカメラ等のコンピュータによって構成される無線データ送信装置20と、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ受信装置3とを備えている。
なお、無線データ送信装置20は、コンピュータに内蔵される電気回路によって構成されてもよく、コンピュータに接続されるPCカードやその他の外部装置によって構成されてもよい。
無線データ送信装置20は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ送信装置2と同一の構成に加えて、さらに、外部に接続されたディスプレイ等の表示装置に表示する情報を出力する表示部250を備えている。表示部250は本発明における通知手段を構成している。
なお、無線データ送信装置20は、表示部250に替えて、スピーカ等の出力装置に出力させる音声データを出力する出力部を備えていてもよい。
以上のように構成された無線データ通信システム10の動作について、図10を参照して説明する。なお、図10において、図3に示した本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1の動作と同様に動作するステップについては同一の符号を付して説明を省略する。
図10において、無線データ通信システム10は、ステップS1〜ステップS9まで本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1と同様に動作することにより、無線データ送信装置20から処理対象データを送信するデータ送信速度を、無線データ受信装置3における処理対象データの処理速度に適した値に調整するとともに、調整した送信速度を実効データ転送レートで確保するために最適な送信電力の値を算出する。
次に、表示部250は、算出した値まで送信電力を下げることが可能であることを表す情報を表示装置に出力して表示させる(ステップS60)。
例えば、現在の送信電力が−10.3dBmであり、算出された最適な送信電力が−37.1dBmである場合、表示部250は、「送信ゲインを下げることが可能」、「送信電力を26.8dBm下げることが可能」または「送信電力を−37.1dBmまで下げることが可能」等のテキスト情報を表示装置に出力して表示させる。
表示部250は、さらに、送信ゲインを下げるか否かを問い合わせる情報を表示装置に出力して表示させるようにしてもよい。この場合、パワー制御部207は、図示しない入力装置からゲイン変更の指示を表す情報を取得し、取得したゲイン変更の指示を表す情報に応じてゲイン可変パワーアンプ203のゲインを変更する。
また、表示部250は、ステップS60で、送信電力を下げることが可能であることを表す情報に替えて送信電力を下げることを予告する情報を表示装置に出力して表示させるようにしてもよい。この場合、予告する情報を表示させた時点から所定の時間経過後に、パワー制御部207はゲイン可変パワーアンプ203のゲインを変更する。
以上で、無線データ通信システム10は動作を終了する。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態に係る無線データ通信システム10は、無線データ送信装置20から無線データ受信装置3に処理対象データを送信する際のデータ送信速度を、無線データ受信装置3におけるデータの処理速度に適したデータ送信速度に調整するとともに、調整したデータ送信速度を実効データ転送レートで確保できる送信電力の値を算出し、算出した値まで送信電力を下げることが可能であることを利用者に通知する。これにより、無線データ送信装置20において消費電力の増大を防止できることを利用者に知らせることができ、利便性を向上させることができる。
なお、本発明の第4の実施の形態に係る無線データ通信システム10を構成する無線データ送信装置20は、本発明の第1の実施の形態に係る無線データ通信システム1を構成する無線データ送信装置2の構成に表示部250を加えた構成として説明したが、これに替えて、本発明の第2の実施の形態に係る無線データ通信システム4を構成する無線データ送信装置5、または、本発明の第3の実施の形態に係る無線データ通信システム7を構成する無線データ送信装置8の構成に表示部250を加えた構成としてもよい。
また、本発明の各実施の形態に係る無線データ通信システムにおいて、無線データ受信装置が送信する制御データには処理速度を表す情報に加えて、受信SNRを表す情報、装置間の距離に関する情報、または、送信レベルを表す情報の何れかが含まれる例について説明したが、本発明において制御データに含まれる情報はこれらに限定されない。本発明における制御データには処理速度を表す情報に加えて、装置間でデータが送受信される際の受信SNRを計算可能なその他の情報が含まれていてもよく、この場合、無線データ送信装置は、制御データに含まれる情報に基づいて計算した受信SNRおよび必要SNRから受信SNRの余裕分を算出し、送信電力を算出した余裕分だけ減少させることにより適切な送信電力の値を算出すればよい。