JP5067729B2 - エラストマ樹脂組成物およびこのエラストマ樹脂組成物からなる駆動伝達部品 - Google Patents

エラストマ樹脂組成物およびこのエラストマ樹脂組成物からなる駆動伝達部品 Download PDF

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Description

本発明は、良好な成形性、摺動性、機械物性を有し、なかでも小型部品、特にギアに適した熱可塑性エラストマ樹脂組成物、およびこのエラストマ樹脂組成物からなる駆動伝達部品に関する。
エラストマ樹脂は、優れた強度、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などの機械的性質を有しているため、自動車、電気・電子部品、消費材などの用途に広く使用されている。中でも、結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位及び/又はポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位をソフトセグメントとするポリエステルブロック共重合体(ポリエステルエラストマ)は、低温、高温特性に優れ、打撃音による消音効果に優れることから、ギア用途への適用が増えている。
しかしながら、エラストマ樹脂は、固化速度が遅いことこら成形サイクルが長く、寸法精度が悪いことから小型部品への成形が困難であるという問題を有していた。
エラストマ樹脂の寸法精度と成形性を改善するための方法としては、ガラス繊維等の無機フィラーを添加する方法があるが、この場合にはエラストマ樹脂の重要な特性である柔軟性が損なわれるという問題があった。
また、エラストマ樹脂の成形性を改善するための従来技術としては、炭素クラスターを配合した組成物(例えば、特許文献1参照)が提案されており、さらに微細なフィラーを配合する組成物に関しては、500nm以下のカーボンナノチューブを配合した組成物(例えば、特許文献2参照)、および膨潤化された層状チタン酸ナノシートを配合した組成物(例えば、許文献3参照)が提案されている。
しかしながら、上記した従来の提案では、成形性の改善、剛性向上、導電性の付与などには効果があるが、エラストマ樹脂の重要特性である表面硬度を抑えることや、消音特性を維持することが不十分であり、さらに成形性の改善も不十分であった。
特開平10−310709号公報 特開2004−124086号公報 特開2003−138145号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、柔軟で消音特性に優れるエラストマ樹脂の特徴を有し、成形性や寸法安定性に優れたエラストマ樹脂組成物を提供することにあり、さらには当該エラストマ樹脂組成物からなる小型部品、特にギア製品を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、エラストマ樹脂にナノスケールフィラーを配合して特定の特性を得ることにより、上記の目的を効果的に達成することを見出し本発明に到達した。
すなわち、上記目的を達成するために本発明によれば、エラストマ樹脂(A)85.0〜99.5重量%と、ナノスケールフィラー(B)0.5〜15.0重量%からなるエラストマ樹脂組成物であって、融点+25℃、荷重2160gの条件下で測定したメルトインデックスの値が35g/10分〜200g/10分であり、Dスケールショアー硬度が50〜80であるエラストマ樹脂組成物であって、エラストマ樹脂(A)が、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)90〜10重量%と、主として脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)10〜90重量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体であるエラストマ樹脂組成物が提供される。
なお、本発明のエラストマ樹脂組成物においては
融点結晶性重合体セグメント(a1)がポリブチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とし、低融点セグメント(a2)がポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位を主たる構成成分とすること、
ナノスケールフィラー(B)が炭素系材料であること、および
ナノスケールフィラー(B)がカーボンナノチューブであること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明の駆動伝達部品は、上記の熱可塑性エラストマ樹脂組成物からなることを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、エラストマ樹脂の特徴である柔軟性、表面硬度、優れた消音特性を有し、成形性、寸法安定性を改善したエラストマ樹脂組成物およびそれらを使用した小型部品、特に駆動を伝達する部品、例えばギアやカム等の成形品を得ることができる。
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられるエラストマ樹脂(A)は、中でも消音特性に優れるポリエステル系エラストマ樹脂であり、高融点結晶性重合体セグメント(a1)は、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成されるポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4' −ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。主として芳香族ジカルボン酸を用いるが、必要によっては、芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4' −ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
ジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' −ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシ−p−ターフェニル、および4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用してもよい。そして、好ましい高融点結晶性重合体セグメント(a1)の例は、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位である。また、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸および/またはジメチルイソフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるものも好ましく用いられる。
これら本発明に用いられるポリエステル系エラストマ樹脂(A)の低融点重合体セグメント(a2)は、脂肪族ポリエーテルであり、脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル系エラストマ樹脂(A)の低融点重合体セグメント(a2)の共重合量は、10〜90重量%であり、好ましくは30〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、公知の方法で製造することができる。その具体例としては、例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、およびジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法などのいずれの方法をとってもよい。
本発明に用いられるナノスケールフィラー(B)とは、モンモリロナイト、シリカ、雲母、炭素系材料が挙げられ、中でもカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノフラーレンなどの炭素系のナノスケールフィラーによれば成形性の改善効果が大きく、寸法精度や耐摩耗性の面からはカーボンンナノチューブが特に好ましい。
本発明のエラストマ樹脂組成物は、上述のエラストマ樹脂(A)85.0〜99.5重量%に対し、ナノスケールフィラー(B)0.5〜15.0重量%を配合してなる樹脂組成物であり、より好ましくはエラストマ樹脂(A)90.0〜98.0重量%に対しナノスケールフィラー(B)2.0〜10.0重量%配合してなるエラストマ組成物である。
エラストマ樹脂(A)が85.0重量%未満では、エラストマ樹脂が持つ柔軟性や消音特性が得られず、また99.5重量%を越えると、成形性改良効果、寸法安定性改良効果が不十分となる。
エラストマ樹脂(A)とナノスケールフィラー(B)の混練方法には制限がなく、(A)と(B)の一括混合、エラストマ樹脂(A)を溶融した後にナノスケールフィラー(B)を混合する方法などが挙げられ、混練方法としては、押出機、バンバリーミキサー等の公知の方法を採用することができる。ナノスケールフィラーを予めエラストマ樹脂でマスターペレット化し、ナノスケールフィラーの配合割合に希釈するとともに押出機やバンバリーミキサー等の公知の方法でエラストマ樹脂組成物を得ることが、ナノスケールフィラーの分散性を向上させる点で好ましい。
さらに、本発明のエラストマ樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、金属フレーク等の添加剤や補強剤を添加することができる。
本発明のエラストマ樹脂組成物のメルトインデックス(MI)の値は、組成物の融点+25℃、荷重2160gの測定条件下で35g/10分〜200g/10分であることが、さらに好ましくは35g/10分〜100g/10分である。MI値が35g/10分より小さいと、成形時に溶融樹脂の流動が劣り、特に小型部品では溶融樹脂が金型キャビティの細部にまで完全に流れず成形できない問題が発生する可能性がある。また、MI値が200g/10分より大きいと靭性が劣る傾向となる。
本発明のエラストマ樹脂組成物のDスケールショアー硬度は50〜80、さらに好ましくは50〜75である。Dスケールショアー硬度が50より小さいと、成形品剛性が劣り、特に小型部品で充分な形状保持性も得られない、また80より大きいと、ナノスケールフィラーによる効果が小さくなるため好ましくない。
本発明のエラストマ樹脂組成物は、その優れた成形性、寸法特性から小型部品に好適であり、さらに優れた消音特性と良好な強度と柔軟性のバランスからギアやカム等の駆動を伝達する部品に適している。中でも寸法特性と消音特性が重要な要求特性であるギアへの適応が最も好ましい。
本発明のエラストマ樹脂組成物から成形体を得る方法には特に制限が無く、一般的な熱可塑性樹脂で溶融成形される方法を使用することができ、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形などが挙げられるが、小型部品の成形には射出成形が好適に用いられる。
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、例中に示される物性は次のように測定した。
[表面硬度(デュロメーターD)]
ASTM D−2240にしたがって測定した。
[機械的特性]
JIS K7113にしたがって、引張強さ、引張伸び、10%歪み時の応力を測定した。
[線膨張係数]
JIS K7197にしたがって、20〜100℃の範囲で測定した。
[成形性]
結晶化速度の目安としてエラストマ樹脂組成物を示差走査熱量計により10℃/分の昇温、降温速度で融点と結晶化温度を測定した。(融点)−(結晶化温度)が小さいと結晶化速度が早くなり、溶融状態の樹脂が固化し易くなるため、射出成形時の冷却時間を短くすることが可能となり成形性が改善される。
[消音特性]
縦150mm、横100mm、厚み2mmのエラストマ樹脂組成物角板を、縦170mm、横150mm、厚み10mmの鋼板の上に置き、エラストマ樹脂組成物角板の中央に重さ5.5gの鋼球を落下させ、打撃点から80mm離れた位置の音圧を騒音計で測定した。
[メルトインデックス]
ASTM D1238にしたがい、下記に示すエラストマ樹脂(A−1)では230℃、エラストマ樹脂(A−2)では240℃の温度条件で、荷重2160gの値を測定した。
[耐摩耗性]
厚み2mmの円板状の成形品を用いて、JIS K7218に準じた方法で鋼材との摩擦係数とエラストマ樹脂組成物の摩耗量を測定した。測定温度23℃、負荷応力0.5MPa、速度100mm/sec、測定時間1時間の条件で実施した。
[参考例]
[エラストマ樹脂(A−1)の製造]
テレフタル酸50.5部、1,4−ブタンジオール43.8部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール35.4部を、チタンテトラブトキシド0.04部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.02部を共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行った。反応混合物にテトラ−n−ブチルチタネート0.2部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行った。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした。
[エラストマ樹脂(A−2)の製造]
テレフタル酸59.3部、1,4−ブタンジオール51.4部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール22.9部を、チタンテトラブトキシド0.04部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.02部を共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行った。反応混合物にテトラ−n−ブチルチタネート0.15部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行った。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした。
[カーボンナノチューブの製造]
径7mm、長さ48mmのグラファイト製スティックに、先端から中心軸に沿って径3mm、深さ29mmの穴を開け、この穴にロジウム:白金:グラファイト=5:5:2の混合粉末を詰めてカーボンナノチューブ製造用陽極を作成した。一方、99.998%純度のグラファイトからなる径14mm、長さ31mmの陰極を作成した。これらの電極を真空チャンバーの中に設置し、純度99.9%ヘリウムガスでチャンバー内部を置換し、直流アーク放電を行った。陽極と陰極の間隔を常に1〜2mmに制御し、圧力600torr、電流70Aで放電を行った。陰極上に生成したカーボンナノチューブを取り出した。内径5nm、外径10nm、長さ1〜10μmの単層および多層のグラファイト層からなるカーボンナノチューブが得られた。
[カーボンナノチューブマスターバッチ(B−1)、(B−2)の製造]
得られたカーボンナノチューブ20%と上記エラストマ樹脂(A−1)、(A−2)各々80%とを直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて240℃で溶融混練し、エラストマ樹脂(A−1)ベースのマスターバッチ(B−1)、エラストマ樹脂(A−2)ベースの(B−2)を得た。
[実施例および比較例で用いた配合材]
タルク(B−3):竹原化学工業(株)製ハイトロン(平均粒径4μm)
ガラス繊維(B−4):平均繊維径φ11μmチョップドストランド(長さ3mm)、ビスフェノールAエポキシ、γ−グリシドキシプロピリトリメトキシシラン(表面処理剤)
[実施例1〜6]、[比較例1〜8]
参考例で得られたエラストマ樹脂(A−1)、(A−2)とカーボンナノチューブマスターバッチ(B−1)、(B−2)、フィラー(B−3)、(B−4)を表1に示す配合比率(重量%)でVブレンダーを用いて混合し、直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて240℃で溶融混練しペレット化した。表1、表2に、実施例1〜6、比較例1〜8の組成物中のエラストマ樹脂含有量と組成物中のナノスケールフィラー含有量を記載した。
得られたペレットを80℃で4時間乾燥後、シリンダ温度240℃、金型温度50℃のインラインスクリュー型射出成形機を用いてJIS2号ダンベル試験片と縦120mm×横70mm×厚み2mmの角板成形品を射出成形した。各々の試験について特性を調べた結果を表1および表2に示す。
Figure 0005067729
Figure 0005067729
以上の結果より、実施例1〜6に示した本発明のエラストマ樹脂組成物は、フィラーを配合したにも関わらず表面硬度の上昇を抑えることができ、引張強さ、伸びにおいても強度と柔軟性のバランスに優れていた。また、線膨張係数が小さいことから寸法特性にも優れ、(融点)−(結晶化温度)が小さいことから成形性にも優れていた。音圧も低く消音特性にも優れ、摩擦係数が小さく摩耗量も少ない事から耐摩耗性にも優れるものであった。
一方、ナノスケールフィラーを配合しない比較例1、5は、寸法安定性、成形性、耐摩耗性が劣り、ナノスケールフィラーを多く配合した比較例2、6は、伸びが小さくなり充分な靭性が得られない。また、タルクやガラス繊維等の一般的なフィラーを配合した比較例3、4、7、8は表面硬度が高く柔軟性も低下し、充分な消音特性も得られず耐摩耗性も劣る。
本発明のエラストマ樹脂組成物は、上記した優れた特性を活かして、自動車、電子・電気機器、精密機器、および一般消費財用途の各種成形品などに有用であり、なかでも小型部品、特に駆動伝達部品としてギアやカムに好適に適応することができる。

Claims (5)

  1. エラストマ樹脂(A)85.0〜99.5重量%と、ナノスケールフィラー(B)0.5〜15.0重量%からなるエラストマ樹脂組成物であって、融点+25℃、荷重2160gの条件下で測定したメルトインデックスの値が35g/10分〜200g/10分であり、Dスケールショアー硬度が50〜80であるエラストマ樹脂組成物であって、エラストマ樹脂(A)が、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)90〜10重量%と、主として脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)10〜90重量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体であるエラストマ樹脂組成物。
  2. 高融点結晶性重合体セグメント(a1)がポリブチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とし、低融点セグメント(a2)がポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位を主たる構成成分とする請求項記載のエラストマ樹脂組成物。
  3. ナノスケールフィラー(B)が炭素系材料である請求項1または2に記載のエラストマ樹脂組成物。
  4. ナノスケールフィラー(B)がカーボンナノチューブである請求項1〜のいずれか1項記載のエラストマ樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載のエラストマ樹脂組成物からなる駆動伝達部品。
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