JP5067700B2 - 金属酸化物粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックス原料をはじめ各種用途に使用される金属酸化物粒子の製造方法に関する。
従来、セラミックス原料、着色原料等に使用される金属酸化物微粒子の製造方法は、出発相によってCVDやガス中蒸発法などの気相法、沈殿法や噴霧法などの液相法、機械的粉砕法などの固相法に分類される。また、これらは、機械的粉砕法に代表される、バルク材を微細化することで得られるいわゆるブレイクダウン方式、分子レベルから成長させることによって得られるビルドアップ方式に分類されるが、ブレイクダウン方式は機械的粉砕による微細化に限界があること、粉砕機器からの不純物の混入があることから、高純度な微粒子の製造には主としてビルドアップ方式が適用されている。ここでその代表的なものとして液相法を例にとると、金属塩の水溶液にアルカリ等のpH調整剤を加えて水酸化物等を沈殿させ、かかる水酸化物等を500℃〜700℃程度に昇温し、分解することによって所望の金属酸化物微粒子を得ることができる。その具体例として、例えば特許文献1ではカルボン酸化合物を分散等させた水溶液中に、金属塩の水溶液と中和剤の水溶液とを同時に添加して、上記金属の水酸化物等の微粒子を生成させ、得られた微粒子を焼成する微粒子状金属酸化物の製造方法が開示されている。
特開平5−139704号公報
金属酸化物微粒子を製造する場合、前記液相法の適用によって効率よく金属酸化物微粒子を製造する方法が検討されており、その製造工程においては通常水酸化物等の生成を経た後、熱処理炉等で加熱分解することで酸化物を得ており、液相法での反応工程に加えて、高温まで昇温し処理する工程を必要とする。例えば酸化銅の製造では、水酸化銅、硝酸銅、炭酸銅などを700℃程度で加熱分解することで酸化銅を得ており、この高温処理が製造工程の簡略化を阻害していた。また、塩化第二銅などの銅化合物の溶液を加温しつつ、アルカリ溶液を添加することによって酸化銅などの銅酸化物を生成させ、水洗、乾燥後、粉砕する直接湿式法等によって直接銅酸化物を生成させることも可能であるが、このような方法では銅酸化物の生成の反応プロセスが急激に起こるため、粒子径の制御が困難であり、均一な微粒子を得ることが困難という問題があった。
上記のような問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、金属酸化物前駆体として、金属硝酸塩又は酸化金属硝酸塩の溶液を調整する調整工程と、前記溶液を加熱する加熱工程と、を有する金属酸化物粒子の製造方法において、前記加熱工程では、前記加熱工程中の100℃からの昇温速度が一定となるように制御することを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の金属酸化物粒子の製造方法において、前記金属酸化物における金属がLi、Cu、Zn、Al、Mg、Co,Sr、Ba、Al、Y、In、Ce、Si、Ti、Zr、Sn、Nb、Sb、Ta、Bi、Cr、W、Mn、Fe、Ni、Ru、U、Pu、Np、Am、Cmから選ばれる1種類の金属であることを特徴とする。
本発明の金属酸化物粒子の製造方法によれば、加熱工程では、昇温速度が一定となるように制御するので、金属酸化物粒子の生成の反応プロセスをコントロールでき、生成される金属酸化物粒子の平均粒子径の制御を行うことが可能となる。
また、本発明の金属酸化物粒子の製造方法によれば、加熱工程では、昇温速度が一定となるように制御するので、金属酸化物粒子の生成の反応プロセスをコントロールでき、生成される金属酸化物粒子の平均粒子径の制御を行うことが可能となり、さらにこの金属酸化物粒子を原料とした焼結体の密度を、焼結体の粒径を変えることでコントロールできる可能性があるため、焼結体製造分野での原料粉調整工程への応用も可能である。
金属酸化物粒子の試料を作成するために用いられた装置の概略を説明する図である。 実施例で使用した各試料を説明する図である。 Cu(NO32・3H2Oの加熱工程を示す図である。 加熱工程中の各温度にサンプリングした試料をXRDにて分析した結果を示す図である。 熱天秤にてCu(NO32・3H2OのTGを取得した結果を示す図である。 Cu(NO32・3H2Oの加熱工程におけるヒーター12の温度変化を示す図である。 加熱工程における昇温速度と生成された粒子の平均粒子径との関係を示す図である。 Ni(NO32・6H2Oの加熱工程におけるヒーター12の温度変化を示す図である。 加熱工程における昇温速度と生成された粒子の平均粒子径との関係を示す図である。 Fe(NO32・9H2Oの加熱工程におけるヒーター12の温度変化を示す図である。 加熱工程における昇温速度と生成された粒子の平均粒子径との関係を示す図である。
以下、本発明の金属酸化物粒子の製造方法について適宜図面を参照しつつ説明する。本発明の金属酸化物粒子の製造方法によって製造される金属酸化物における金属とはLi、Cu、Zn、Al、Mg、Co,Sr、Ba、Al、Y、In、Ce、Si、Ti、Zr、Sn、Nb、Sb、Ta、Bi、Cr、W、Mn、Fe、Ni、Ru、U、Pu、Np、Am、Cmから選ばれる1種類の金属であり、本発明の製造方法では、製造されるこれら金属酸化物の平均の粒子径をコントロールすることをその目的としていている。本発明の金属酸化物粒子の製造方法では、まず金属酸化物前駆体として、これらの金属の金属硝酸
塩又は酸化金属硝酸塩の溶液を調整する。そして、次に、調整された前記の溶液を加熱することによって、脱硝して金属酸化物を得るが、この加熱工程においては昇温速度が一定となるように制御することを特徴としている。本発明では、加熱工程で昇温速度を一定とするが、この昇温速度を速くすると製造される金属酸化物の平均粒子径を小さくすることができ、昇温速度を遅くすると製造される金属酸化物の平均粒子径を大きくすることができる。
以上のように本発明の金属酸化物粒子の製造方法によれば、加熱工程では、昇温速度が一定となるように制御するので、金属酸化物粒子の生成の反応プロセスをコントロールでき、生成される金属酸化物粒子の平均粒子径の制御を行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、生成される金属酸化物粒子の平均粒子径の制御を行うことが可能となるので、さらにこの金属酸化物粒子を原料とした焼結体の密度を、焼結体の粒径を変えることでコントロールできる可能性があるため、焼結体製造分野での原料粉調整工程への応用も可能である。
また、加熱工程において、上記のように製造される金属酸化物の平均粒子径を決定する上で重要な温度領域であるのが、金属硝酸塩又は酸化金属硝酸塩の溶液が脱硝され、金属酸化物が析出する温度域であり、この温度域より低い温度までの昇温速度は、金属酸化物の平均粒子径をコントロールする上では重要ではない。そこで、本発明の金属酸化物粒子の製造方法では、加熱工程中の所定温度からの昇温速度が一定となるように制御することとも特徴点とするものである。このような、加熱工程によれば、前記所定温度までは素早く昇温させて、所定温度からの昇温速度を一定とするように制御することで、金属酸化物の平均粒子径をコントロールすることが可能となる共に、金属酸化物を製造する時間の総和を短縮することができ、生産性を向上させることが可能となる。前記所定温度としては、水の沸点である100℃を第1の例として挙げることができ、また、脱硝反応温度域より低い温度を第2の例として挙げることできる。
(実施例)
次に、本発明の金属酸化物粒子の製造方法を実施例に基づいてより詳しく説明する。図1は本発明の金属酸化物粒子の製造方法で試料を作成するために用いられた装置の概略を説明する図である。図1において、11は制御部、12はヒーター、13は温度検出部、14は反応炉、15は試料容器をそれぞれ示している。
図1において、加熱のために用いるヒーター12としては、温度の制御が比較的容易であり、早い昇温速度も設定できるという観点から、赤外線集光炉(I.R.炉と略記)を採用した。I.R.炉(アルバック理工社製 RHL−E210P(楕円反射面型赤外線ゴールドイメージ炉)は、赤熱管から発振された赤外線を反射させて集光し、管状炉の中芯部に設置されたボート上の試料を強力に加熱するものである。このヒーター12によっての反応炉14内の試料容器15内の試料を加熱することで、本発明に係る加熱工程を実現することができた。
試料容器15内の試料には、熱電対などの温度検出部13がセットされ、試料の温度を計測するようになっている。この計測値は制御部11に入力され、試料の温度に対応してヒーター12の出力を制御する。制御部11は、ヒーター12の出力を制御するPIDコントローラなどである。
反応炉14は円管状であり、その両端In−Outがガス配管に接続されている。In側からは、不図示の圧縮空気供給システムによって、160ml/secで圧縮空気を流入させて、Out側からは脱硝反応で生じたH2OやN成分ガスが排出される。
不図示の排ガス処理システムでは、Out側から排出されるガスを分析する。この排ガス処理システムにおいて、排出されたH2Oをコンデンサにて完全に凝縮させ重量を計測
した。また、N成分ガスは水洗瓶にて吸収させ、pHを計測後に全Nが硝酸となったと仮定してN成分ガスの発生量を逆算した。
また、各サンプルの同定にはXRD(Rigaku社製 RINT−2000)を用い、熱天秤(Shimadzu社製 TGA−50)によるTG(10℃/min、空気雰囲気)と併せて反応式を推定した。生じた脱硝体の粒子径測定にはヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に試料を分散させて、超音波分散を施した後に、レーザー散乱式粒度分布測定機(HORIBA社製 LA−920)で測定した。なお、超音波分散を2分、30分とし、それぞれを2次粒子、1次粒子として評価した。
実施例で使用した各試料を図2に示す。試料は、Cu、Ni及びFeを選定した。各金属硝酸塩水和物6gを水4.5mlに溶解させたものを反応炉14内の試料容器15に注入して、本発明における加熱工程を実施した。
加熱工程における加熱のプロファイルを理論的に検討するためには、脱硝反応プロセスを特定する必要がある。よって、温度、発生した水分量及びN成分ガス量の経時変化を測定・図示し、続いて到達温度の異なるサンプルを数点取得し、XRDにて物質を同定することで、ある温度域における反応式を推定した。
また、反応プロセスから、粒子径に影響を与えていると考えられる温度域において加熱プロファイルに関する予備試験を実施し、粒子径と加熱プロファイルとの関係を把握した。
ここで、脱硝のプロセスについて検討する。代表サンプルとしてCu(NO32・3H2Oの加熱工程を図3に示す。図3の横軸には経過時間がとられ、縦軸の一方に温度が、
また他方にはサンプルから発生したN成分ガスの全量が、回収された水中でHNO3とな
ったと仮定した時のHNO3の発生速度がとられている。図3において、実線が温度変化
を示し、点線がHNO3の発生速度を示している。
また、120、180、200、250及び300℃の時点でサンプリングした試料をXRDにて分析した結果を図4に示す。180〜320℃付近にNOxの発生ピークが存在し、200℃付近から最終生成物のCuOが発生し始めていることが示された。
上記の試験とは別に、熱天秤にてCu(NO32・3H2OのTGを取得した結果を図
5に示す。200℃付近になだらかな変曲がみられ、反応が2段階以上あることを示唆している。図4の結果と併せて考えると、それぞれの温度域における反応は次のような経路を取ると考えられる。
まず、水の沸点である100℃付近までは溶媒のH2Oが蒸発・沸騰により排出される
。180℃付近では水和水が離脱してCu(NO32・2.5H2Oが生成し、さらに硝
酸根NO3の一部が脱硝されて中間体であるCu2(NO3)(OH)3が生成する。200℃付近では完全な脱硝体である最終生成物のCuOが発生し始め、300℃付近で完全脱硝に至って反応が終了すると考えられる。
これらの反応経路を化学反応式で記述すると以下の通りとなる。
[〜120℃]
Cu(NO32・3H2O+mH2
−−−−−−−−> Cu(NO32・3H2O+nH2O+(m−n)H2O↑
[120℃〜180℃付近]
Cu(NO32・3H2O+nH2
−−−−−−−−> Cu(NO32・3H2O+kH2O+(n−k)H2O↑
Cu(NO32・3H2O−−−−−−−−>Cu(NO32・2.5H2O+0.5H2
O↑
[180℃〜250℃付近]
Cu(NO32・2.5H2
−−−−−−−−> Cu2(NO3)(OH)3+NOx↑+yH2O↑
Cu2(NO3)(OH)3−−−−−−−−>CuO+NOx↑+H2O↑
[250 ℃付近〜]
Cu2(NO3)(OH)3−−−−−−−−>CuO+NOx↑+H2O↑
以上から、(1)溶媒H2Oの蒸発、(2)水和水の脱離、(3)中間体Cu2(NO3
(OH)3への脱硝反応及び中間体の脱硝反応によるCuO発生の3つの過程にて脱硝が
進行することが示された。
次に、酸化金属粉末の粒子径と加熱工程における昇温速度の関係について検討する。前述の(1)〜(3)の反応過程と、粒成長の関係を考えると、(1)は溶媒H2Oの蒸発
・沸騰現象を示しているに過ぎず、(2)についても水和水の脱離現象が液相で生じているにすぎない。よって、この過程の加熱方法の変更が、固相であるCuO粒子径に影響を与えるとは考えにくい。よって(3)の酸化反応領域である180℃付近〜の温度操作が最もCuO粒子の粒成長に寄与している可能性が高いと考えられる。なお、本発明においては、図5に示すようなCuOが生成し始める温度以上(180℃付近〜)の温度域を脱硝反応温度域として定義し、これに基づいて特許請求の範囲が表現されている。
次に、昇温速度と平均粒子径の関係について説明する。まず、Cu系の金属硝酸塩の溶液を調整して、これを加熱した場合について説明する。図6はこのときの昇温プロフィールを示す図であり、Cu(NO32・3H2Oの加熱工程におけるヒーター12の温度変
化を示す図である。実施例では制御部11によって、装置の最高出力(100%)を基準として、100、70、30、25%の4種の出力によって昇温速度を4段階に変化させて加熱工程を実施して金属酸化物粒子を生成した。
また、図7は加熱工程における昇温速度と生成された粒子の平均粒子径との関係を示す図である。ここで、図7における、昇温速度は図6に示す昇温プロフィールにおけるCu系の反応温度域(180−320℃)に基づいて計算されている。図7に示すように、2次粒子、1次粒子は共に、昇温速度が小さくなるにつれて、生成される粒子の平均粒子径が大きくなる傾向があることがわかる。
次に、Ni系の金属硝酸塩の溶液を調整して、これを加熱した場合について説明する。図8はこのときの昇温プロフィールを示す図であり、Ni(NO32・6H2Oの加熱工
程におけるヒーター12の温度変化を示す図である。実施例では制御部11によって、装置の最高出力(100%)を基準として、50、30、25、22%の4種の出力によって昇温速度を4段階に変化させて加熱工程を実施して金属酸化物粒子を生成した。
また、図9は加熱工程における昇温速度と生成された粒子の平均粒子径との関係を示す図である。ここで、図9における、昇温速度は図8に示す昇温プロフィールにおけるNi系の反応温度域(250−320℃)に基づいて計算されている。Cu系の場合と同様に、図9に示すように、2次粒子、1次粒子は共に、昇温速度が小さくなるにつれて、生成される粒子の平均粒子径が大きくなる傾向があることがわかる。
次に、Fe系の金属硝酸塩の溶液を調整して、これを加熱した場合について説明する。
図10はこのときの昇温プロフィールを示す図であり、Fe(NO32・9H2Oの加熱
工程におけるヒーター12の温度変化を示す図である。実施例では制御部11によって、装置の最高出力(100%)を基準として、50、30、25、22%の4種の出力によって昇温速度を4段階に変化させて加熱工程を実施して金属酸化物粒子を生成した。
また、図11は加熱工程における昇温速度と生成された粒子の平均粒子径との関係を示す図である。ここで、図11における、昇温速度は図10に示す昇温プロフィールにおけるFe系の反応温度域(130−170℃)に基づいて計算されている。Cu系、Ni系の場合と同様に、図11に示すように、2次粒子、1次粒子は共に、昇温速度が小さくなるにつれて、生成される粒子の平均粒子径が大きくなる傾向があることがわかる。
以上のような実施例から、脱硝反応が起こる温度域の昇温速度を変更することで、粒子径を制御できることがわかった。また、脱硝反応が生じる温度域において、加熱出力を抑えて昇温速度を減少させると、粒子径が大きくなる傾向があることがわかった。
11・・・制御部
12・・・ヒーター
13・・・温度検出部
14・・・反応炉
15・・・試料容器

Claims (2)

  1. 金属酸化物前駆体として、金属硝酸塩又は酸化金属硝酸塩の溶液を調整する調整工程と、
    前記溶液を加熱する加熱工程と、を有する金属酸化物粒子の製造方法において、
    前記加熱工程では、前記加熱工程中の100℃からの昇温速度が一定となるように制御することを特徴とする金属酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記金属酸化物における金属がLi、Cu、Zn、Al、Mg、Co,Sr、Ba、Al、Y、In、Ce、Si、Ti、Zr、Sn、Nb、Sb、Ta、Bi、Cr、W、Mn、Fe、Ni、Ru、U、Pu、Np、Am、Cmから選ばれる1種類の金属であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
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