JP5066269B2 - 板バネ式マグネットキャッチ - Google Patents

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Description

本発明は、戸やカバー類などの開閉部材(扉を含め、以下、これらの総称として「戸」と記す)を枠体に係着した後、再び開く時(以下、「戸開時」と記す)の抵抗を軽減すると共に、戸の跳ね返りによる隙間発生を少なくする、板バネ式マグネットキャッチに関する。
マグネットキャッチは、戸を枠体に係着する簡便な装置として広く利用されているが、幾つかの問題点がある。その一つは、比較的大きな係着力を得ようとすると、戸開時の抵抗が大きくなり、軽い力で滑らかに開けないことがしばしば起こることである。
また、引戸には、特に戸車を備えた軽快な引戸に於いて、閉めた時(以下、「戸閉時」と記す)に跳ね返りによる隙間が生じ易いという問題がある。これと上記戸開時抵抗力の問題も含めた対策案として、磁石を円柱状とし、磁石の底部にコイルスプリングを組み込んだ構造の発明が既になされている。
特開2000−248811号公報 特開2001−73619号公報
磁石の底部にコイルスプリングを組込む上記発明2件は、引戸の跳ね返り防止効果に優れ、磁石が受体に及ぼす吸着力は従来装置と同じままであるが、戸が枠体から離れて受体が磁石を振り切るまでの間に慣性を得て、実感としての戸開時抵抗力を減少させるであろう。これはバネの効果により、戸開時抵抗力は磁石吸着力に等しいという従来概念を破る端緒を与えたものとして、注目される。しかし、コイルスプリングの付いた磁石の埋設作業等、その取り付けが一般家庭では容易に行えないことや、コスト高がその普及を妨げていると思われる。また、装置による吸着力はバネ力に等しくなるから、戸を閉じた状態での吸着力は微弱であり、そのため不安定となり、例えば震動が起こった場合に騒音を発したりすることが懸念される。
本発明が解決しようとする課題は、戸開時抵抗の軽減及び円滑化と、安定した戸閉状態の維持を両立させると共に、戸の跳ね返りによる隙間発生を減少させるようなマグネットキャッチを、簡単構造で、かつ、既存の戸への取付けも容易なように、提供することである。
請求項1記載の発明は、可動体たる戸を枠体に係着するため、その一方に磁石を固定し、他の一方に板バネをその片端だけで固定する構成のマグネットキャッチに於いて、磁着受部の少なくとも一部の板厚及び/または板幅を、板バネ主体部以上とし、かつ、板バネを固定する時点で板バネの固定面を押す方向へ初期バネ力が生じ、その力で板バネ静止時に自身を常に固定面に押し付けるようにした。
磁着受部板厚を主体部より厚くする方法としては、磁着受部を折り曲げて接合する方法が簡便であるが、磁石に対向する鉄片を設け、その全面で板バネと接合しても良く、本発明ではその方法に拘らない。
前記初期バネ力を与える方法としては、板バネ側面視形状が「く」の字形であって、くの字の谷側が板バネ固定面に向くよう前記主体部に僅かな変形を与える方法、または、主体部に前記変形を与え、かつ、板バネ磁着受部の板厚を主体部より大きくし、板厚の段差がある側を固定面に向けて主体部後端を固定する方法ある。
請求項2の発明は、請求項1記載の発明に対し、磁石に対向する鉄片を設けて磁着受部とし、その長さ方向中央部で溶接等の手段により板バネと局部的に接続し、接続していない重なり部は離着自由とした。
図1は、請求項1の発明に掛かる板バネ式マグネットキャッチの基本原理を説明するため、装置の骨子を横方向に誇張し、その挙動を段階的に示した断面図である。
ある重さの戸に固定されたマグネットキャッチの剛性受体が、枠体に固定された磁石の全面に吸着された時の吸着力をM0、磁石と受体間(即ち、戸と枠体間)の距離をx、受体が磁石から離れた位置から吸引力Nにより引寄せられてしまう限界位置をx、その時の吸引力をNとすると、磁石吸引力NはM0(x=0、図1「イ」の状態)からほぼx2に反比例して減衰することが一般に知られている。従って明らかに、バネが組み込まれていない従来のマグネットキャッチでは、戸を開くためにはM0以上の強い外力が初め一挙に必要であり、受体が磁石から離脱後も吸引力Nが働くものの、それは急激に減衰してx>xとなれば、跳ね返った戸が引き戻されることはない。
ところが、受体を板バネに置き換えると、磁石吸着力をM、バネ力をPとして、xの位置では図1「ロ」の状態になり、x>xとなっても、M>Pである限り、磁石は依然として板バネの少なくとも一部を吸着したままであり、外力が弱まればバネ力Pにより戸は引戻される。外力が強まるとxが増していき、板バネは戸の動きに引きずられて図1「ハ」の状態となる。磁石と板バネの接触面積は縮小するから、磁石吸着力Mは急速に減少し、遂にxに比例して増大するバネ力Pの方が大きくなり、板バネは磁石の吸着を振り切って離れる。その限界の状態を図1「ニ」、x=x、M=Mとすると、当然、x<x、M<M0である。即ち、板バネ式マグネットキャッチでは、M0より小さな力Mで戸を開くことができ、明らかに従来のマグネットキャッチで戸開時の抵抗が大きいという弱点を、軽減することができる。しかも、このように本発明の装置としての吸着力(以下、「装置吸着力」と記す。これは、ばね力Pに等しい)は、磁石と受体間の距離xに伴い磁石吸着力Mが徐々にバネ力Pとして蓄積され、従来装置の場合とは全く様相が異なって逆に最大値Mまで増大していくから、従来より滑らかに戸を開くことができる。
一方、マグネットキャッチの跳ね返った戸を引戻す能力は、バネが組み込まれていない従来のマグネットキャッチでは、受体が磁石から離脱してしまえば、磁石吸引力Nは急速に減衰するから僅かな距離xで戸を引戻すことができなくなるのに対し、板バネ式マグネットキャッチでは、既述したように、戸の引戻し可能領域がxを大きく超えてxまで拡大する。しかも、バネ力Pと距離xは比例関係にあるから、従来装置とは全く逆に戸が枠体から離れるほど引戻し力が増大する。但し、前記のM<M0という限界がある。
既述のように、装置吸着力の最大値MはM0以下であるが、これは戸を係着する力そのものであるし、跳ね返り防止能力を左右する因子でもあるため、小さ過ぎても不満足である。そこで請求項1記載の発明では、磁着受部の少なくとも一部の板幅及び/または板厚を主体部以上として、断面2次モーメントを大きくできるようにしたから、x=xの場面でも板バネと磁石の接触面積の縮小は抑制され、その結果として主体部の柔軟性を維持しながら、装置吸着力の最大値Mの過小化を防ぐことができる。他方、板バネがMで降伏しない範囲で積極的に主体部の板幅を磁着受部より縮小すれば、磁着受部は元のまま主体部のバネ定数が低下するから、同値のMを維持しながらxを拡大し、跳ね返り防止能力を高めることができる。
また、戸開時の抵抗を減少させることは、一方では、戸閉状態を保持する力、即ちx=0に於ける装置吸着力、を低下させることを意味するので、僅少な間隙は発生しても直ぐに引戻されるとは言え、戸閉状態が不安定となる可能性がある。そこで本発明では、図1、2、5及びに示すように、主体部に予め変形を与えて板バネ固定時に初期バネ力を蓄えたから、戸閉状態で一定のバネ力を確保できるようにした。板バネへの初期バネ力を得るには、前記方法に加え、に示すように、板バネ磁着受部を主体部より厚くし板厚の段差がある側を固定面に向けて主体部後端を固定す方法と併用しても良い。
上記の通り、請求項1記載の発明ではある程度Mを大きくすることができるが、戸開時の外力の増大と共に板バネは片持ちで磁石から後方より徐々に引き離されていくから、MはM0と等値まではなり得ない。そこで請求項2記載の発明では、磁石と対向する部分を剛性鉄片とし、その長さ方向中央部にバネ力が負荷され、戸開時鉄片は片端から徐々にではなく一挙に磁石から離脱するようにしたから、MをM0と等値まで高めることができる。即ち、請求項1の発明は、一挙に大きな戸開時抵抗力を発生させるという従来装置の弱点を改善することができるものの、戸を係着する力は大きく減じたくないという要求には、磁石吸着力を上げるしかないのに対し、請求項2の発明は磁石をそのままで、該要求を満足させることができる。このことにより戸開時抵抗力は従来抵抗値M0に接近してしまうが、該抵抗を円滑化する効果は維持し、かつ、一定のバネ定数の下では戸閉時の跳ね返り防止能力を最大に高めることができる。
以上述べた通り、本発明による装置は何れも極めて簡単な構造であり、かつ、取付け容易であるため、経済的にも有利である。
請求項1記載の発明の基本原理を説明するための図である。 請求項2記載の発明装置の実施例を説明するための図である。(実施例 請求項1記載の発明装置の開き戸への実施例を説明するための図である。(実施例 請求項1または2に記載の発明装置を、戸袋に収納される形式の引戸に、隙間防止材を用いて簡易的に取付けた場合を示す、概観図である。(実施例1、 請求項1記載の発明装置の引戸への実施例を説明するための図である。(実施例 板バネが磁石に吸着された状態での、図に於ける装置中央での縦断面図である。(実施例
戸開時の抵抗の軽減及び円滑化と、安定した戸閉状態の維持を両立させると共に、戸の跳ね返りによる隙間発生を減少させ、戸袋に収納される形式の引戸にも利用できるようなマグネットキャッチを、簡単構造で、かつ、既存の戸への取付けも容易に行えるように、実現した。
に、請求項2記載の発明装置の実施例を示すが、磁石1に対向する鉄片14は、その長さ方向中央部で板バネ2と溶接等の手段で局部的に固着されている。板バネ2の固定部2Bより下方の重なり部は、鉄片14に対して離着自由であるから、バネ力は鉄片14の長さ方向中央部を中心に均等に働く。板バネ2の主体部には、板バネ側面視が「く」の字形となるよう予め僅かに変形を与えているため、くの字の谷側が板バネ固定面に向くよう板バネを取付けた時に、固定部2Bが固定面より押し上げられて初期バネ力が生成され、これにより戸閉時に引戸11へ一定のバネ力が働く。
は、請求項1記載の発明装置の開き戸(以下、「開き戸」と記した場合は、片開き戸と枠体を含めた戸の形態を意味し、「開き戸10」と記した場合は、扉単体を意味する。引戸も同じ)への実施例を示す説明図である。
に示すように、開き戸では先ず、戸口枠体12の上角の近傍に、上下着磁の磁石1を一対の鉄板からなるヨーク5Dで上下に挟んで形成した磁石ユニット15Dを、合成樹脂製のケース6D内に収めて複数のネジ4で固定する。このケース6Dは、開口した一側面から磁石ユニット15Dを露出させ、戸当りの機能も果たしている。そして、開き戸10の磁石1と磁着受部2Aが対向するよう、板バネ主体部後端を座板3及びネジ4で固定している。この座板3には長孔3Aが設けられており、これに沿って座板3をスライドさせ、板バネ2の先端から座板先端までの長さを拡大または縮小させることにより、装置吸着力を一定範囲内で調整することができる。
は請求項1または2に記載の発明装置を戸袋13に収納される形式の引戸に、隙間防止材9を用いて装置部材を埋設せず簡易的に取付けた場合を示す、概観図である。
は請求項1記載の発明装置の引戸への実施例の詳細を示す斜視図、図は板バネ2が磁石1に吸着された状態での、図に於ける装置中央での縦断面図である。上下着磁の磁石1を凹状のヨーク5内に収めて成る磁石ユニット15は、合成樹脂製ケース6内に収められている。先ず、これを引戸11と当接する戸口枠体12の側面の任意の位置に、2本のネジ4で固定する。
本例に示した板バネ2は磁着受部2Aを折り曲げて二重にした上、ケース6と同一幅とし、主体部の幅を一定量縮小しているから、磁着受部2Aの断面2次モーメントは主体部より十分に高められている。そして、主体部には、磁着受部2Aの板厚差による初期バネ力効果に加えて、側面視が「く」の字形の変形を与えている。この主体部後端の上に既述の座板3を重ね、磁石1と対向する位置に2本のネジ4で引戸11に固定する。
及びに示すように、磁石ユニット15は合成樹脂製ケース6内に収納されているが、ケース6の開口部周縁の高さを僅かにヨーク表面以上として、そこで板バネ2との主たる衝撃を受けるようにする。更に、板バネ2の裏側に対しては、当接する引戸11の部分に弾性皮膜8を貼付しているから、戸開閉時の作動音を減ずることができる。この弾性皮膜8は、板バネ2の表または裏面、またはケース6周縁部や磁石1表面に重複して貼付しても良い。
ところで、上記した何れの発明装置でも、袋戸形式の引戸のように戸の表または裏側に取付けることが困難なため、走行方向面に取付けたい場合、そのまま取付けては、それらの厚み分だけ引戸11と枠体12間に隙間を発生させるので、図1に概略示したように、予めそれぞれの取付け位置に各厚み分の溝を掘り、埋設しなくてはならない。
本実施例では図及びに示すように、枠体12の引戸11走行方向面と当接する面に於いて、装置部材を埋設せずに取付けたことにより発生する両者間の隙間を埋めるよう、隙間防止材9を設けた。これにより、上記した袋戸形式の引戸で必要であった溝設置を不要とすることができ、本発明装置の取付けは極めて簡易化される。
M 磁石吸着力
0 剛性受体が磁石の全面に吸着された時の吸着力
板バネが磁石の吸着を振り切って離れる位置での磁石吸着力
N 磁石吸引力
剛性受体が引寄せられてしまう限界位置での磁石吸引力
P バネ力
x 磁石と受体間、即ち、戸と枠体間の距離
剛性受体が磁石吸引力により引寄せられてしまう限界位置でのx値
板バネが磁石の吸着力を振り切って離れる限界位置でのx値
1 磁石
2 板バネ
2A 磁着受部
2B 板バネ固定部
3 座板
3A 長孔
4 ネジ
5 ヨーク
5D ヨーク
6 ケース
6D ケース
9 隙間防止材
10 開き戸
11 引戸
12 戸口枠体
13 戸袋
14 鉄片
15 磁石ユニット
15D 磁石ユニット

Claims (2)

  1. 戸を枠体に係着するため、その何れか一方に磁石を固定し、他の一方に板バネをその片端だけで固定する構成のマグネットキャッチに於いて、板バネの磁石と対向する部分(磁着受部)の少なくとも一部の板厚及び/または板幅を、それ以外の部分(主体部)以上とし、
    かつ、板バネ側面視形状が「く」の字形であって、くの字の谷側が板バネ固定面に向くよう、前記主体部に変形を与えるか、
    または、主体部に前記変形を与え、かつ、前記磁着受部の板厚を主体部より大きくし、板厚の段差がある側を板バネ固定面に向けて主体部後端を固定することにより、
    戸が閉じられた状態で板バネ固定面を押す方向へ初期バネ力が掛かるようにしたことを特徴とする、板バネ式マグネットキャッチ。
  2. 磁石に対向する鉄片を設けて磁着受部とし、その長さ方向中央部で板バネと接続した請求項1記載の板バネ式マグネットキャッチ。
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