以下、添付図面に従って本発明に係る像回転用アダプタの好ましい実施の形態について詳述する。
図1は、本発明に係る像回転用アダプタが組み込まれたテレビカメラシステムの光学系の概略構成図である。
同図に示すように、このテレビカメラシステム10は、テレビカメラ12と、撮影レンズ14と、像回転用アダプタ16とで構成されている。
像回転用アダプタ16は、特殊効果撮影を行う際に使用され、この像回転用アダプタ16をテレビカメラ12と撮影レンズ14との間に装着することにより、テレビカメラ12で撮影される映像を回転させたり、上下を逆さまにしたり、傾けたりすることができるようになる。
このように像回転用アダプタ16は、特殊効果撮影行う際に使用するものであり、特殊効果撮影を行わない場合は取り外される。したがって、この場合は撮影レンズ14がテレビカメラ12に直接装着される。なお、後述するように、像回転用アダプタ16を装着したままでも通常撮影は可能である。
撮影レンズ14は、その後端部にレンズ側マウント18が設けられており、このレンズ側マウント18をテレビカメラ12のカメラ本体12Aの先端部に設けられたカメラ側マウント20に取り付けることにより、カメラ本体12Aに装着される。
像回転用アダプタ16は、その後端部にレンズ側マウント18と同一構成の後側マウント22が設けられており、この後側マウント22をテレビカメラ12のカメラ側マウント20に取り付けることにより、テレビカメラ12に装着できるように構成されている。
また、像回転用アダプタ16の先端部には、カメラ側マウント20と同一構成の前側マウント24が設けられており、この前側マウント24に撮影レンズ14のレンズ側マウント18を取り付けることにより、撮影レンズ14を像回転用アダプタ16に装着できるように構成されている。
なお、テレビカメラ12と撮影レンズ14には、既存(公知)のテレビカメラと撮影レンズが使用される。
本実施の形態では、撮影レンズ14にレシオコンバータが搭載された撮影レンズが用いられている。この撮影レンズ14は、いわゆるスイッチャブルカメラ(有効撮像画面のアスペクト比を4:3と16:9とに選択的に切り替えることができるテレビカメラ)に使用されるレンズであり、撮影光路中にレシオコンバータレンズ(イメージサークル補正用レンズ)を挿脱することにより結像倍率を変換(=イメージサークルを変換)し、アスペクト比が切り替えられても、ほぼ同じ視野範囲で撮影できるようにするものである。
以下、この撮影レンズ14の構成について説明する。なお、図1において各レンズの構成は簡略化して示されており、複数のレンズからなるレンズ群を1つのレンズで示しているものもある。
図1に示すように、撮影レンズ14のレンズ鏡筒30内には、前側(被写体側)から順にフォーカスレンズ群を構成する第1群L1と、ズームレンズ群を構成する第2群L2及び第3群L3と、アイリスIと、マスターレンズ群を構成する第4群L4及び第5群L5が配置されている。レシオコンバータレンズLCは、マスターレンズ群を構成する第4群L4と第5群L5との間に挿脱され、これにより、結像倍率が変換される。
レシオコンバータレンズLCの挿脱は、ターレット32により行われる。図2は、このレシオコンバータレンズLCの挿脱を行うターレット32の概略構成を示す斜視図である。
同図に示すように、円筒状に形成されたターレット32には、その中心軸Sを挟んで対称にレシオコンバータレンズLCと1倍レンズLAとが保持されている。このターレット32の外周面にはリングギア32Aが形成されており、リングギア32Aにはターレット駆動モータ34の出力軸に設けられたターレット駆動ギア34Aが噛み合わされている。ターレット32は、このターレット駆動モータ34を駆動することにより、その中心軸Sを回転中心として回転する。
このように構成されたターレット32は、図1に示すように、マスターレンズ群を構成する第4群L4と第5群L5との間に配置され、図示しない支持部によってその中心軸Sを回転中心として回転自在に支持される。そして、その中心軸Sを中心に回転させられることにより、光軸O上にレシオコンバータレンズLCと1倍レンズLAとが切り替えられて配置される。
なお、本実施の形態において、レシオコンバータレンズLCは0.8倍のアフォーカル倍率を有するレンズで構成され、1倍レンズLAは1倍のアフォーカル倍率を有するレンズで構成される。したがって、レシオコンバータレンズLCが光路中に挿入されると、倍率は0.8倍となり、イメージサークルも0.8倍となる。たとえば、非挿入時におけるイメージサークルがφ11mmの場合、挿入することでφ8.9mmになる。
一方、1倍レンズLCが光路中に挿入された場合には、倍率は変わらず、イメージサークルの大きさもそのままとなる(φ11mm)。
また、図示されていないが、レンズ鏡筒30の外周には、このレシオコンバータレンズLCと1倍レンズLAの切り換えを行う操作ボタンが設けられており、この操作ボタンの操作に従ってターレット駆動モータ34が駆動され、レシオコンバータレンズLCと1倍レンズLAの切り換えが行われる。
なお、本例ではターレット32をモータで回転させているが、手動で回転させる構成とすることもできる。
また、本例ではターレット32でレシオコンバータレンズLCを挿脱しているが、ターレット以外の構成でレシオコンバータレンズを挿脱させることもできる。
以上のように構成された撮影レンズ14では、第1群L1に入射した被写体光が、第2群L2、第3群L3、アイリスI、第4群L4を介してレシオコンバータレンズLC又は1倍レンズLAに入射し、第5群L5を通過して、その後端部から出射される。そして、レシオコンバータレンズLCが挿入された場合は倍率が0.8倍とされて、像回転用アダプタ16(像回転用アダプタ16が装着された場合)又はテレビカメラ12(撮影レンズ14が直接接続された場合)に入射される。
テレビカメラ12は、そのカメラ本体12A内に色分解プリズム52が配置されており、像回転用アダプタ16の後端から出射した被写体光は、この色分解プリズム52によってR(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分に分解される。そして、各色成分に分解された被写体光は、それぞれ各色成分用の撮像素子54R、54G、54Bの受光面に入射される。各撮像素子54R、54G、54Bの受光面に入射された被写体光は、各撮像素子54R、54G、54Bで電気信号に変換されたのち、周知の画像信号処理手段によって信号処理され、所定形式の映像信号として出力又は記録媒体に記録される。
図3は、本発明に係る像回転用アダプタの一実施形態の概略構成を示す概略図である。
同図に示すように、像回転用アダプタ16は、ケース40内に撮影レンズ14の光軸O上に、第1プリズム42、第2プリズム44、第1リレーレンズ46、第2リレーレンズ48が配置され、撮影レンズ14の後端から出射した被写体光は、第1プリズム42、第2プリズム44、第1リレーレンズ46、第2リレーレンズ48を通過して、像回転用アダプタ16の後端から出射される。
ケース40は、円筒状に形成され、その前端面に前側マウント24、後端面に後側マウント22が形成される。
第1プリズム42は、ペチャンプリズムで構成され、図示しない保持枠に保持されて、撮影レンズ14の光軸O上に固定して設置されている。
ペチャンプリズムは、三角プリズムをわずかの空気層を介して対向配置したプリズムの一種であり、図4に示したような光路が形成される。すなわち、撮影レンズ14を介して第1の三角プリズム42Aに入射した光は、面A1で反射した後、面A2で反射し、面A1から射出して空気層Hに出る。空気層Hを出た光は、第2の三角プリズム42Bの面B1に入射し、面B2で反射した後、さらに面B3と面B1で反射して、面B2から射出する。この際、光は光軸Oに沿って出射する。
このように、ペチャンプリズムで構成された第1プリズム42は、光軸Oに沿って入射された光を5回反射させることにより、光軸Oに沿って出射させる。そして、この反射は奇数回であることから、像は反転されて出射される。
なお、この第1プリズム42は、その光路長は、カメラ本体12Aに内蔵された色分解プリズム52の光路長と同じ長さに形成される。
第1プリズム42から出射された被写体光は、合焦状態において、第1プリズム42と第2プリズム44との間で一度結像し、その後、第2プリズム44に入射する。以下、この第1プリズム42と第2プリズム44との間で被写体像が結像する位置を第1の結像位置という。
ここで、上記のように、第1プリズム42は、カメラ本体12Aに内蔵された色分解プリズム52と同じ光路長で形成されているため、第1の結像位置で結像する像は、撮影レンズ14が想定した収差等が考慮された像が結像する。
すなわち、撮影レンズ14は、カメラ本体12A内に色分解プリズム52を有するテレビカメラ12に対して、色分解プリズム52の存在を考慮して、収差等の設計が行われる。したがって、第1プリズム42の光路長を色分解プリズム52の光路長と同じにすることにより、収差等が考慮された良好な像を第1の結像位置に結像させることができる。
第2プリズム44も第1プリズム42と同様にペチャンプリズムで構成され、第1プリズム42から出射される被写体光の光軸上に配置される。本例では、第1プリズム42がペチャンプリズムで構成され、その入射光軸と出射光軸とが同軸上に形成されているため、第1プリズム42と同様に第2プリズム44も撮影レンズ14の光軸O上に配置される。
また、この第2プリズム44は、第1プリズム42と同様にペチャンプリズムで構成されることから、第2プリズム44に入射した被写体光は、プリズム内で5回反射されたのち、光軸Oに沿って出射される。この反射は奇数回であることから、像は反転されて出射される。
ここで、第2プリズム44に入射される像は、第1プリズム42で反転された像が入射されることから、反転された像が、さらに反転されて、元に戻される。すなわち、第2プリズム44から出射される像は、撮影レンズ14から出射された像(=第1プリズム42に入射する像)と同じ像が出射される。
このように、第2プリズム44は、第1プリズム42で反転された像は奇数回反射させることにより、さらに反転させて、元に戻す機能を有する。
この第2プリズム44は、プリズム保持枠60に保持されて、撮影レンズ14の光軸O上に配置されている。
プリズム保持枠60は円筒状に形成されており、その内周部に第2プリズム44が収容されて保持されている。このプリズム保持枠60は、ケース40内に設置されたベアリング62によって、光軸O回りに回転自在に支持されている。第2プリズム44は、このプリズム保持枠60を回転させることにより、光軸Oの回りを回転する。
プリズム保持枠60の外周には、ギア64が一体的に形成されている。このギア64には、駆動ギア66が噛み合わされている。駆動ギア66は、ケース40内に設置されたプリズム回転駆動モータ68の出力軸に連結されており、このプリズム回転駆動モータ68を駆動することにより正逆回転する。そして、この駆動ギア66が回転することにより、プリズム保持枠60が回転し、第2プリズム44が光軸O回りに回転する。
このように、第2プリズム44は、プリズム回転駆動モータ68を駆動することにより、光軸O回りに回転する。そして、この第2プリズム44が光軸O回りに回転することにより、第2プリズム44から出射される被写体像が光軸O回りに回転する。この回転は、第2プリズム44の二倍の速度で回転する。すなわち、第2プリズム44が45度回転すると、第2プリズム44から出射される像は90度回転し、第2プリズム44が90度回転すると、第2プリズム44から出射される像は180度回転する。
プリズム回転駆動モータ68の駆動は、マイコン70によって制御されており、マイコン70は、操作部72からの操作情報に基づいてプリズム回転駆動モータ68の駆動を制御する。
操作部72は、たとえば、正方向への回転(時計回り)を指示する正回転ボタン、逆方向への回転(反時計回り)を指示する逆回転ボタン、強制的に正立位置(被写体像が正立する位置)に戻すリセットボタン、回転速度を設定する速度ボリューム等で構成され、ケース40の外周部に設けられる。操作部72は、各操作ボタン類の操作に応じた信号をマイコン70に出力する。
また、プリズム回転駆動モータ68には、エンコーダ74が設けられており、このエンコーダ74で検出された出力軸の回転位置情報がマイコン70に出力される。
マイコン70は、この操作部72とエンコーダ74から入力される信号に応じてモータドライバ76に駆動信号を出力し、プリズム回転駆動モータ68を回転駆動する。
第2プリズム44から出射した被写体光は、リレー光学系を構成する第1リレーレンズ46と第2リレーレンズ48を通過して、像回転用アダプタ16から出射される。この第1リレーレンズ46と第2リレーレンズ48は、第2プリズム44から出射された被写体光を集光し、イメージサークルを所定の倍率で拡大させて(結像倍率を拡大させて)、カメラ本体12Aに内蔵された撮像素子54R、54G、54Bの受光面上に被写体像を再結像させる。
ここで、本実施の形態の像回転用アダプタ16では、第1リレーレンズ46と第2リレーレンズ48とによって、イメージサークルを1.25倍に拡大させて、被写体像を再結像させる。したがって、上述したレシオコンバータ付きの撮影レンズを使用し、その撮影光路中にレシオコンバータレンズを挿入した場合には、像回転用アダプタ16を装着していないときと同じ状態で撮影することができる。すなわち、レシオコンバータ付きの撮影レンズを使用し、その撮影光路中にレシオコンバータレンズを挿入すると、イメージサークルは0.8倍となるが、第1リレーレンズ46と第2リレーレンズ48とによって1.25倍に拡大されるので、イメージサークルは、ほぼ元の大きさに戻り、像回転用アダプタ16を装着していないときと同じ状態で撮影することができる。
なお、レシオコンバータのない通常の撮影レンズを使用した場合やレシオコンバータ付きのレンズで1倍レンズを挿入した場合には、イメージサークルは1.25倍されるので、エクステンダ効果が得られる。
以上のように構成された本実施の形態のテレビカメラシステム10の作用は、次のとおりである。
上記のように、像回転用アダプタ16は、必要に応じて映像を回転させたり、上下を逆さまにしたりする特殊効果撮影時に使用する。したがって、特殊効果撮影を行わない場合は、撮影レンズ14をカメラ本体12Aに直接装着して撮影する。この場合、撮影レンズ14を通過した光は、直接カメラ本体12Aに入射し、色分解プリズム52を介して撮像素子54R、54G、54Bに受光される。
なお、後述するように、像回転用アダプタ16を装着したままでも通常の撮影(映像を回転させたりしない撮影)は可能である。
また、テレビカメラ12がスイッチャブルカメラの場合には、上述したレシオコンバータ付きの撮影レンズを使用し、使用するアスペクト比に応じてレシオコンバータレンズを挿脱する。
一方、必要に応じて映像を回転させたり、上下を逆さまにしたりして撮影する場合は、図1に示すように、撮影レンズ14とカメラ本体12Aとの間に像回転用アダプタ16を装着して撮影する。
なお、以下の例では、撮影レンズにレシオコンバータ付きの撮影レンズを使用し、テレビカメラ12には、有効撮像画面のアスペクト比が16:9のものを使用した例で説明する。この場合、撮影光路中にレシオコンバータレンズLCを挿入すると、テレビカメラ12で撮影される映像は、像回転用アダプタ16を装着していないときとほぼ同じ映像を撮影することができる。一方、撮影光路中に1倍レンズLAを挿入すると、テレビカメラ12で撮影される映像は、約1.25倍拡大された映像を撮影することができる。
像回転用アダプタ16を介して撮影レンズ14がカメラ本体12Aに装着されると、撮影レンズ14を通過した光は、像回転用アダプタ16を介して撮像素子54R、54G、54Bに受光される。具体的には、撮影レンズ14を通過後、像回転用アダプタ16内に入射し、第1プリズム42、第2プリズム44、第1リレーレンズ46、第2リレーレンズ48を介してテレビカメラ12に出射される。
この際、被写体光は、第1プリズム42を通過する際に第1プリズム42内を5回反射されて光軸O上に出射される。これにより、像が反転される。
第1プリズム42を通過した被写体光は、一度第1の結像位置で結像した後、第2プリズム44に入射する。そして、第2プリズム44で5回反射されて光軸O上に出射される。これにより、反転された像が、再度反転されて、元に戻される。
第2プリズム44を通過した被写体光は、リレー光学系を構成する第1リレーレンズ46と第2リレーレンズ48を通過し、イメージサークルの大きさが1.25倍にされて、像回転用アダプタ16から出射される。そして、この像回転用アダプタ16から出射された被写体光が、テレビカメラ12の色分解プリズム52を介して撮像素子54R、54G、54Bの受光面上に結像される。
このように、像回転用アダプタ16を装着すると、イメージサークルの大きさが1.25倍されるので、撮影レンズにレシオコンバータ付きの撮影レンズを使用して、その撮影光路中にレシオコンバータレンズLCを挿入した場合は、像回転用アダプタ16を装着していないときとほぼ同じ映像を撮影することができる。すなわち、レシオコンバータ付きの撮影レンズでレシオコンバータレンズLCを光路中に挿入すると、撮影レンズ14から出射される被写体光は、そのイメージサークルの大きさが0.8倍されるので、像回転用アダプタ16を装着すると、像回転用アダプタ16でイメージサークルの大きさが1.25倍されて、元の大きさに戻される。したがって、この場合は像回転用アダプタ16を装着していないときとほぼ同じ映像が撮影される。
一方、撮影光路中に1倍レンズLAを挿入した場合、撮影レンズ14から出射される被写体光は、そのイメージサークルの大きさが変わらない(1倍)ので、像回転用アダプタ16を装着した場合は、像回転用アダプタ16でイメージサークルの大きさが1.25倍されて、テレビカメラ12に入射する。したがって、この場合は通常よりも(像回転用アダプタ16を装着せず、撮影光路中に1倍レンズLAを挿入したときよりも)1.25倍された映像が撮影される。
さて、このようにして撮像素子54R、54G、54Bの受光面上に結像される被写体像は、第2プリズム44を回転させることにより、各撮像素子54R、54G、54Bの中心を回転中心にして回転する。そして、その回転は第2プリズム44の回転の2倍となる。すなわち、第2プリズム44を1回転させると、各撮像素子54R、54G、54Bに結像される被写体像は2回転する。したがって、第2プリズム44を90度回転させると、各撮像素子54R、54G、54Bに結像される被写体像は180度回転する。
ここで、この第2プリズム44の回転操作は、像回転用アダプタ16に備えられた操作部72で行われ、この操作部72からの操作入力に基づいて、第2プリズム44が回転駆動される。たとえば、操作部72の正回転ボタンを操作(押下)すると、その操作信号がマイコン70に入力される。マイコン70は、操作部72からの操作信号に基づいてモータドライバ76に駆動信号を出力し、プリズム回転駆動モータ68を回転駆動させる。これにより、第2プリズム44が所定の回転速度(速度ボリュームで設定された回転速度)で正回転し、各撮像素子54R、54G、54Bに結像される被写体像が正回転する。また、操作部72の逆回転ボタンを操作(押下)すると、その操作信号がマイコン70に入力される。マイコン70は、操作部72からの操作信号に基づいてモータドライバ76に駆動信号を出力し、プリズム回転駆動モータ68を回転駆動させる。これにより、第2プリズム44が所定の回転速度で逆回転し、各撮像素子54R、54G、54Bに結像される被写体像が逆回転する。
このように、操作部72を操作すると、第2プリズム44が回転し、各撮像素子54R、54G、54Bに結像される被写体像が回転する。
なお、第2プリズム44は、初期状態において、所定の基準位置に位置している。この位置において、撮像素子54R、54G、54Bの受光面上には、像回転用アダプタ16を装着していない時と同じ像が結像される。すなわち、撮像素子54R、54G、54Bの受光面上に結像する被写体像は、第2プリズム44の回転位置に応じて変化(回転)するため、初期状態においては、像回転用アダプタ16を装着していない時と同じ被写体像が撮像されるように、所定の基準位置に位置する。
このように、像回転用アダプタ16は、テレビカメラ12に装着したままにしておいても、通常の撮影を行うことができる。これにより、通常の撮影と特殊効果撮影とを切り替えて行う場合においても、面倒な着脱操作を行うことなく使用することができる。
また、操作部72に備えられたリセットボタンが操作されると、第2プリズム44は、強制的に基準位置に復帰する。これにより、像回転用アダプタ16を装着していない時と同じ被写体像(傾き(回転)のない正立した被写体像)を撮像することができる。
なお、操作部72を操作して、第2プリズム44を回転させる態様は、種々の態様を採用することができる。たとえば、正回転ボタン又は逆回転ボタンを押下している間、第2プリズム44を回転させる態様や、正回転ボタン又は逆回転ボタンを1回押下すると、書低回数回転する態様等、種々の態様を採ることができる。
以上説明したように、本実施の形態の像回転用アダプタ16を装着することにより、必要に応じて映像を回転させたり、上下を逆さまにしたり、傾けたりして撮影することができる。そして、この像回転用アダプタ16は、既存の撮影レンズ14とテレビカメラ12に使用することができるので、簡単に既存のテレビカメラシステムに特殊撮影機能を付加することができる。
また、本実施の形態の像回転用アダプタ16は、像回転用アダプタ16内で一度像を結像させる構成とし、その結像させる前の光路中にテレビカメラ12内の色分解プリズム52の光路長と同じ光路長の第1プリズム42を配置しているため、収差等が考慮された良好な像を結像させることができる。これにより、撮影レンズ14の性能を損なわずに、良好な映像をテレビカメラ12で撮影することができる。
さらに、本実施の形態の像回転用アダプタ16は、リレー光学系でイメージサークルを拡大させているので、通常の撮影レンズを使用した場合には、エクステンダの効果を与えることができる。また、レシオコンバータ付きの撮影レンズを使用し、レシオコンバータレンズLCを光路中に挿入した場合には、像回転用アダプタ16を装着していないときと同じ映像を撮影することができ、通常の撮影と同じ操作感で撮影することができるようになる。
また、このように光の開口角が小さい状態で第1プリズムに入射し、該第1プリズムを通過した後、リレー光学系でイメージサークルを拡大させることにより、内部に配置されるプリズムをコンパクト化することができ、全体の構成もコンパクトにすることができる。すなわち、単にプリズムをコンパクト化するだけならば、その内部での反射回数を増やせばよいが、上記のように、本発明では、第1プリズムの光路長をテレビカメラ内のプリズムとほぼ同じ光路長にする必要があるので、この要件を充たしつつ、反射回数を増やして、プリズムのコンパクト化を図ると、プリズムの入射面における開口角が小さくなり、ケラレが生じるおそれがある。しかし、本発明では、光の開口角が小さい状態で第1プリズムに入射し、該第1プリズムを通過した後、リレー光学系でイメージサークルを拡大させているので、コンパクトなプリズムを使用した場合であって、テレビカメラでは、ケラレのない良好な映像を撮影することができる。
なお、本発明はテレビカメラで撮影される被写体像を回転させるものであるが、被写体像を単に回転させるだけであれば、撮影光路中に被写体光を奇数回反射させるプリズムを配置し、そのプリズムを回転させればよいだけである。
しかし、奇数回反射のプリズムを使用すると、プリズムに入射する前の画像に対して、出射した後の画像が、裏画(左右反転した画像)になってしまうという問題がある。したがって、その裏画の画像をどこかで表画(左右反転していない画像)に戻す必要がある。裏画を表画に戻すには、奇数回反射プリズムを再度使用すればよいが、その奇数回反射プリズムを配置するためのスペースが必要になり、本発明のようなアダプタの場合、全体が大型化するという問題がある。
また、撮影された画像に対して画像処理で表画に戻すこともできるが、この方法の場合、当該機能をテレビカメラ側に付加しなければならないという問題がある。
一方、既存の撮影レンズと既存のテレビカメラとの間に本発明のようなアダプタを配置した場合、アダプタの厚み分、撮影レンズとテレビカメラとの位置関係がズレ、結像位置もズレることになる。
そこで、本発明は、アダプタ内で一度結像させ、さらにリレー光学系でリレーして、テレビカメラ内の撮像素子に再結像させる構造としている。
この際、一旦結像させる前の光路中にテレビカメラ内のプリズム(色分解プリズム)と同じ光路長を持つプリズムを配置させると、既存の撮影レンズが収差等を考慮した最適な状態で結像させることができる。
この結像前の光路中に配置されるプリズムとしては、テレビカメラ内のプリズム(色分解プリズム)と同じ光路長を持つプリズムであれば性能上は問題ないが、このプリズムを配置するためのスペースが必要になり、本発明のようなアダプタの場合、アダプタが大型化してしまうという問題がある。
以上のように、単純に考えれば、一旦結像させる前のプリズム、被写体回転用の奇数回反射プリズム、裏画を表画に戻す奇数回反射プリズムをそれぞれ配置すれば性能的には問題ないが、アダプタが大型化するという問題は依然として残ってしまう。
本発明は、一旦結像させる前のプリズムと裏画を表画に戻す奇数回反射プリズムとを兼用させることで、上述したようなアダプタが大型化してしまうという問題をも解決したものである。
なお、上記実施の形態の像回転用アダプタ16では、第1プリズム42の光路長をテレビカメラ12内の色分解プリズム52の光路長と同じに設定しているが、第1プリズム42の光路長とテレビカメラ12内の色分解プリズム52の光路長は、必ずしも完全に一致させる必要はなく、許容される範囲内で近い値に設定することができる。すなわち、第1プリズム42の光路長は、テレビカメラ内に設置されるプリズムの光路長と同じであることが好ましいが、±5mm程度の範囲内であれば、問題なく良好な映像を撮影することができる。好ましくは、テレビカメラ内に設置されるプリズムの光路長に対して±2mm程度の範囲内に設定するのがよい。
また、第1プリズム42の材質についても、テレビカメラ12内に設置されるプリズムと同じものを使用することが好ましいが、必ずしも同じものを使用する必要はなく、同様の作用効果の得られるものであれば、他の材質のものを使用することができる。
また、上記実施の形態では、操作部72の構成として、正回転ボタン、逆回転ボタン、リセットボタン、速度ボリュームを例示しているが、操作部72の構成は、これに限定されるものではない。必要に応じて種々の回転操作指令を入力できるように構成することが好ましい。
また、上記実施の形態では、第2プリズム44をプリズム回転駆動モータ68で回転駆動する構成としているが、第2プリズム44は、手動で回転させる構成としてもよい。たとえば、図5に示すように、ケース40の外周に回転操作リング80を回転自在に設け、この回転操作リング80と、プリズム保持枠60とを連結して、手動で回転できるようにしてもよい。この場合、基準位置及び回転量が目視で確認できるように、ケース40の外周に目盛を形成することが好ましい。
また、上記実施の形態では、第1プリズム42及び第2プリズム44をペチャンプリズムで構成しているが、第1プリズム42及び第2プリズム44を構成するプリズムは、これに限定されるものではない。すなわち、入射した光を奇数回反射させることにより、像を反転させて出射する構成のプリズムであれば、他の構成のプリズムを用いてもよい。この場合、第2プリズム44については、入射光軸と出射光軸が同軸上に位置する構成のものを用いることとするが、第1プリズム42については、少なくとも入射光軸と出射光軸が平行になる構成のものであればよい。また、第1プリズム42と第2プリズム44は、必ずしも同じ構成のプリズムを用いる必要はない。
図6は、このように入射した光を奇数回反射させることにより、像を反転させて出力する構成のプリズムの一例を示す図である。
同図(a)は、入射した光を1回反射させることにより、像を反転させて出力する構成のプリズム(いわゆる、ダブプリズム)である。面C1に入射した光は、面C2で反射された後、面C3から出射される。
同図(b)は、入射した光を3回反射させることにより、像を反転させて出力する構成のプリズムである。面D1に入射した光は、面D2、面D3、面D4で反射された後、面D5から出射される。
同図(c)は、入射した光を5回反射させることにより、像を反転させて出力する構成のプリズムである。面E1に入射した光は、面E2、面E1、面E3、面E5、面E4で反射された後、面E5から出射される。
同図(d)は、三角プリズムを三つ貼り合わせた構成のプリズムであり、入射した光を3回反射させることにより、像を反転させて出力する。面F1に入射した光は、面F2、面F3、面F4で反射された後、面F5から出射される。なお、当該構成のプリズムにおいて、面F1に入射する光の光軸と面F5から出射する光の光軸は平行となるが、同軸上には位置しない。したがって、当該構成のプリズムは、第1プリズム42にのみ使用することができる。
なお、このように第1プリズム42に使用するプリズムは、必ずしも入射光軸と出射光軸とが同軸上に位置する必要はない。また、必ずしも平行である必要もない。すなわち、第1プリズム42は、光を奇数回反射させる構成のものであればよい。
このように、入射した光を奇数回反射させることにより、像を反転させて出射する構成のプリズムであれば、いかなる構成のプリズムを用いてもよい。
ただし、装置のコンパクト化を考慮すれば、少なくとも内部で3回以上反射させて、出力させる構成のプリズムを用いることが好ましい。すなわち、複数回反射させて出力させることにより、プリズムの光軸方向の全長を短くすることができ、これにより、像回転用アダプタ16の全長を短くすることができる。
特に、第1プリズム42については、その光路長を色分解プリズム52の光路長と同じにする必要があることから、この要求を満足しつつ、装置のコンパクト化を図るために、少なくとも3回以上反射させて出力させる構成のプリズムを用いることが好ましい。
また、上記実施の形態では、第1リレーレンズ46と第2リレーレンズ48とで構成されるリレー光学系によって、イメージサークルの大きさを1.25倍に拡大する構成としているが、リレー光学系で拡大するイメージサークルの大きさは、これに限定されるものではない。ただし、上記実施の形態のように、1.25倍とすることにより、既存のレシオコンバータ付きの撮影レンズを用いて通常撮影と同じ撮影を行うことができるようになり、レシオコンバータ付きの撮影レンズを有効活用することができるようになる。
なお、上記実施の形態では、本発明に係る像回転用アダプタ16をテレビカメラシステムに適用した場合について説明したが、本発明はカメラ本体と交換可能な撮影レンズとから構成される全てのタイプのカメラシステムに適用することができる。
10…テレビカメラシステム、12…テレビカメラ、12A…カメラ本体、14…撮影レンズ、16…像回転用アダプタ、18…レンズ側マウント、20…カメラ側マウント、22…後側マウント、24…前側マウント、30…レンズ鏡筒、32…ターレット、32A…リングギア、34…ターレット駆動モータ、34A…ターレット駆動ギア、40…ケース、42…第1プリズム、44…第2プリズム、46…第1リレーレンズ、48…第2リレーレンズ、52…色分解プリズム、54R、54G、54B…撮像素子、60…プリズム保持枠、62…ベアリング、64…ギア、66…駆動ギア、68…プリズム回転駆動モータ、70…マイコン、72…操作部、74…エンコーダ、76…モータドライバ、L1…第1群、L2…第2群、L3…第3群、L4…第4群、L5…第5群、LC…レシオコンバータレンズ、LA…1倍レンズ、O…光軸、S…中心軸