JP5063960B2 - レーザピアシング方法及び加工装置 - Google Patents
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Description
この貫通孔は、材料歩留を低下させずに、被加工材の仕上り精度を高くするうえで重要であり、後工程の切断加工に支障がない範囲で可能な限り小さく、かつ所望の寸法に形成されることが望ましい。
また、ノズル102の開口部102bは、集光レンズ104を通過したレーザ光L2と同軸とされている。
また、ノズル102には、照射したレーザ光L2により被加工材Wを溶融、蒸発させる際に、酸化反応により被加工材Wを燃焼させるためのアシストガスGをノズル102に導入するための導入経路103が設けられている。
次いで、レーザトーチ100からレーザ光L1が照射されると、集光レンズ104によって、被加工材Wの表面近傍に焦点をもつレーザ光L2に集光される。このようにして、被加工材Wの表面近傍の焦点に集光したレーザ光L2は被加工材Wを溶融、蒸発させて溶融池105を形成するとともに開口部102bから噴射されたアシストガスGにより酸化、燃焼されることにより、アシストガスGの噴流によって溶融物が除去される。このような、レーザ光によるピアシング孔H2の加工を行なう技術として、例えば、特許文献1に示すようなものが開示されている。
一方、例えばレーザ光をパルスの形態で発振してピアシング孔加工をした場合、ピアシング孔径の精度は向上するものの加工効率が著しく低下する。
そこで、レーザ光によるピアシング孔加工を行なう場合に、ピアシング孔H2の切断精度を向上させる技術として、例えば、特許文献2に示すようなものが開示されている。
そのため、高い加工効率を維持しつつ、所望の寸法のピアシング孔を高精度に加工できるレーザピアシング方法及び加工装置が望まれていた。
請求項1記載の発明は、被加工物の加工部にレーザ光を照射しつつ、前記レーザ光と同軸に配置されたノズルから前記加工部に向けてアシストガスを噴射してアシストガスによって前記加工部を覆い、該加工部にピアシング孔を加工するレーザピアシング方法であって、前記レーザ光を照射開始後に、前記加工起点から5mmの範囲内で前記ノズルを移動させて、前記溶融池の開口部におけるアシストガスの圧力分布を前記溶融池の開口部の中心に非対称として前記溶融池の開口部における圧力バランスを偏らせることで溶融物を排出させながらピアシング孔を加工することを特徴とする。
その結果、溶融池内に貯留される溶融物が少なくなり、過剰な酸化反応や燃焼が抑制されることで、ピアシング孔径が小さくなる。
その結果、溶融したドロスが溶融池内に留まるのが抑制され、ピアシング孔の拡大が抑制される。
その結果、レーザ光を連続的に照射した場合においても、連続照射による高い生産性を確保しつつ、孔径精度が高いピアシング孔を容易かつ確実に形成することができる。
ここで、加工起点から5mmの範囲内でノズルが移動することの意義は、加工起点から5mm以上離れると加工されるピアシング孔が大きくなり、ノズルを移動させない場合との差が見出せなくなるためである。
ノズルが、軌跡が簡潔な往復移動をすることで、ノズルの移動が容易で高速移動が可能となり、溶融池内の溶融物に対して急激な圧力の偏りを与えて大きな圧力変動によって溶融池外への溶融物の排出が促進される。その結果、溶融池内の溶融物が少なくなり、酸化反応や燃焼が抑制されることで、ピアシング孔径が小さくなる。
ノズルが、軌跡が簡潔な往復移動と、この往復移動と直交する方向への移動をともなうジグザグ移動するので、ノズルの移動が容易で高速移動が可能となり、また、往復移動方向と直交する移動をすることにより、溶融池内の広範囲にわたって圧力の偏りを付与するので溶融池内の溶融物に対して急激な圧力の偏りを与えて溶融池外への溶融物の排出が促進される。その結果、溶融池内の溶融物が少なくなり、酸化反応や燃焼が抑制されることで、ピアシング孔径が小さくなる。
前記ノズルから噴射されるアシストガスの酸素濃度Cは、前記ピアシング孔加工をする加工部の厚さtに対応して決定され、
前記酸素濃度Cは、
0<t<8mmの範囲において、 0<C<99.9
8≦t<13.5mmの範囲において、 0<C≦−1.65t+111.2
13.5≦t≦26.33mmの範囲において、
5.28t−71.28≦C≦−1.65t+111.2
C;酸素濃度(Vol%)、t;加工部の厚さ(mm)
であることを特徴とする。
また、アシストガスの酸素濃度Cを調整することで、レーザ光を連続的に照射した場合であっても、過剰な酸化、燃焼が抑制され、連続照射による高い生産性を確保しつつ、孔径が小さいピアシング孔を容易かつ確実に形成することができる。
また、レーザ光を連続的に照射した場合においても、アシストガスの酸素濃度Cを調整することで過剰な酸化、燃焼が抑制され、連続照射による高い生産性を確保しつつ、孔径精度が高いピアシング孔を、熟練技術者に依存せずに容易かつ確実に行なうことができる。
また、ノズルを周回移動させて、前記レーザ光を照射してドロスを再溶融させながら近距離からアシストガスを噴射するので、小さな流量のアシストガスにて、確実にドロスの除去を行なうことができ、その結果、加工時間と加工コストを大幅に削減することができる。
図1は、この実施の形態に係るレーザトーチ2およびピアシング孔Hを加工する状態を示す図であり、レーザトーチ2は、ノズル3と、集光レンズ6とを備えており、ノズル3は筒状体に形成され、集光レンズ6を通過したレーザ光L1が集光されレーザ光L2として噴射口3bから照射されるようになっている。
また、レーザ光L2の光軸とノズル3は同軸に構成されて軸線O1を共有するとともに、軸線O1は、ノズル3から噴射されるアシストガスGの圧力分布の中心軸OGと同軸とされている。
この実施の形態において、被加工材Wにピアシング孔加工するときの加工起点と、ピアシング孔Hの中心の位置は略一致しており、ピアシング孔Hの中心を通りピアシング孔Hが延在する方向に延びる軸線OHは、加工起点を通過するため、被加工材Wの表面において加工起点が特定可能とされる。
加工装置1は、レーザトーチ2と、ピアシング制御部10と、加工データ入力部30と、酸素供給源41と、窒素供給源43と、レーザ発振器45と、レーザトーチ2に設けられたノズル3の噴射口の位置を3次元空間のXYZ座標方向(この実施形態においては、被加工材の表面を、XY座標方向、Z座標は高さ方向としている)に移動させるXYZテーブル等の駆動部材80とを備えている。
また、加工データ入力部30は、板厚入力部(厚さ入力部)31aと、ピアシング孔サイズ入力部31bと、ピアシング孔加工条件入力部31cと、圧力モード入力部31dと、ドロス除去モード入力部31eとを備えている。
また、この実施の形態においては、アシストガスGは、酸素供給源41及び窒素供給源43から供給される酸素及び窒素の量を調整及び混合することで、所望のピアシング孔径のピアシング孔Hを加工するのに適した酸素濃度Cに生成されるようになっており、また、必要に応じて、ノズル3からピアシング孔Hの周囲の被加工材Wの表面に堆積したドロスを除去するためのアシストガスGを噴射するようになっている。
ここで、レーザトーチ2を移動することは、ノズル3の軸線O1およびアシストガスGの中心軸OGを移動することを意味している。
データテーブル13aには、この実施の形態においては、加工データ入力部30のピアシング加工条件入力部31cから入力された板厚tと、ピアシング孔径d1に対応する、レーザトーチ2の移動軌跡の形式が格納されており、例えば、(1)周回制御手段を構成するデータである、周回移動軌跡(円形又は多角形等の移動する軌跡の形状と、その大きさ)と、トーチ速度、周回回数と、周回移動速度等、(2)往復制御手段を構成するデータである、往復移動を含む軌跡(往復のストローク等)と、トーチ速度、往復移動等の回数、(3)ジグザグ制御手段を構成するデータである、ジグザグ移動((例えば、往復移動と、この往復移動に直交する方向の移動の組合せ)における往復のストローク、直交する方向の移動量等)と、トーチ速度、往復移動等の回数等のデータが格納されている。
また、データテーブル13aには、その他の移動軌跡を格納させておくことも可能であり、例えば、ジグザグ移動において、レーザトーチ2をZ型に移動させるような場合が含まれる。
また、データテーブル13bには、酸素流量調整回路21a、窒素流量調整回路21b、及び圧力調整弁25において所定の酸素濃度及び噴射圧のアシストガスGを得るための制御データが格納されている。
窒素流量調整回路21bは、マスフローコントローラ27bと、配管とを備えるとともに、窒素供給源43と混合器24との間を接続し、窒素供給源43から配管を通じて供給された窒素の流量をマスフローコントローラ27bで調整するようになっている。
また、必要に応じて、例えば、ノズル3において所定の噴射圧PのアシストガスGを得るために、処理部12aからの制御データによって圧力調整弁25で噴射圧Pに対応した所定の圧力に調整されるようになっている。この実施の形態において、ノズル3は、噴射口に対して充分大きな容積のアシストガスGの貯留部を備えており、噴射口におけるアシストガスGの噴射圧Pは、圧力調整弁25から供給されたアシストガスGの圧力と略同等に保持されるようになっている。
この実施の形態において、酸素流量調整回路21a及び窒素流量調整回路21bを制御する制御データは、マスフローコントローラ27a、27bの開度データにより構成されている。
また、データテーブル13cには、ピアシング孔Hの軸線OHからオフセットする距離(この実施の形態においては、(円軌跡の直径d2)/2)、被加工材Wの表面からの高さ、ノズルの周回移動速度、周回回数、及び周回移動軌跡等の制御データが格納されている。
ピアシング孔サイズ入力部31bは、ピアシング加工するための加工データのうち、鋼板Wの板厚tに対するピアシング孔径d1のデータが入力されるようになっている。
ドロス除去モード入力部31eは、ピアシング孔加工後にドロス除去制御部を動作させるか要否かについての指示を入力するようになっている。
〔ノズル移動制御部〕
まず、図示しない操作部により、レーザトーチ2を鋼板Wに沿った面の直交する2方向により定義されるX座標、Y座標方向に移動させて、ピアシング孔Hの加工予定位置(加工起点に相当)にあわせて停止させる。
次に、ピアシング孔加工条件を設定し、加工データ入力部30の板厚入力部31a、ピアシング孔サイズ入力部31bに板厚t、ピアシング孔径d1のデータを入力する。(図3ステップ S1)
この場合、ピアシング孔加工条件入力部31cに、周回移動、往復を含む移動、ジグザグ移動等に関するデータを人が直接入力して、手動制御させることも可能である。
処理部12aは、板厚入力部31a、ピアシング孔サイズ入力部31bから送信された、鋼板Wの板厚t及びピアシング孔径d1に関するデータをデータテーブル13aに送信して、その板厚t及びピアシング孔径d1に対応するノズル位置制御に関するデータをデータテーブル13aから取得する。(図3ステップ S2)
処理部12は、データテーブル13から受け取るこれらのデータに基づいて、駆動部材80を移動させるための時間・位置情報を演算し、起動スイッチ(図示せず)がONにされてピアシング孔加工が開始されたら、その演算結果を、信号ケーブル15a、15b、15cを介してXドライバ16a、Yドライバ16b、Zドライバ16cに送信し、各ドライバを駆動する。
この実施の形態の説明においては、Xドライバ16a、Yドライバ16bが、駆動部材80をX座標方向、Y座標方向に移動してレーザトーチ2の軸線O1を加工起点廻りに周回移動させている。
このとき、アシストガスGは、レーザ光L1の照射に先立って、レーザトーチ2のノズル3内に導入され、ノズル3の先端の噴射口3bから、鋼板Wの加工部に向けてアシストガスGが噴射され、ノズル3と鋼板Wの間にアシストガスGの被覆が形成される。
レーザトーチ2からのレーザ光L2の照射は、ノズル3からのアシストガスGの噴射が開始され、ピアシング孔加工が始まると同時に、レーザトーチ2の周回制御(周回制御手段)が起動される。(図3ステップ S3)
このとき、溶融物64は、アシストガスGおよびのアシストガスGの被覆により、酸化、燃焼される。
ノズル周回制御が開始されると、レーザトーチ2は、処理部12bからの指示によって、レーザトーチ2は、移動を開始する。(図3ステップ S4)
この周回移動軌跡71を移動する場合においては、加工起点廻りに周回移動する円の半径に相当する距離だけ、加工起点からオフセットされ、図4に示すように、レーザトーチの軸線O1が、加工起点から偏心してピアシング孔加工が行なわれる。(図3ステップ S5 1))
引き続いて加工起点廻りに所定の周回回数Nの円運動を行う。(図3ステップ S5 2)、3))
再び加工起点に戻ってくる。(図3ステップ S5 4))
周回移動は、処理部12bの指示に従い複数回行なう場合もあり、周回移動が終了すると、直線71cに沿って、加工起点に戻る。
円軌跡の場合であれば、その直径d2は、例えば、直径約0.1mmから10mmが好適である。
レーザトーチ2の、周回移動に要する時間T(SEC)、周回回数N(回)、周回移動速度V(mm/min)、描く円軌跡の直径d2(mm)の関係は、
T(sec)=((d2)+πN(d2))/(V/60)
で表され、T(sec)が、そのレーザトーチ2によって板厚t(mm)の鋼板Wのピアシング孔Hを貫通するのに要する時間以上であればよい。
この実施の形態では、オフセット量は、円軌跡の半径(d2)/2である。
図7は、圧力分布の中心での圧力が、約0.0255(MPa)のアシストガスGの圧力分布の例を示したものであるが、この圧力分布においても、レーザトーチ2の軸線O1と、加工起点とが、例えば、0.25mmオフセットすると、0.0015MPaの圧力差が発生することになる。
その結果、レーザ光を連続的に照射した場合においても、連続照射による高い生産性を確保しつつ、孔径精度が高いピアシング孔を容易かつ確実に形成することができる。
また、図5Cに示すように、レーザトーチ2が直線73aに沿って加工起点からオフセットされ、その後、直線73b、73c、・・・、に沿って、辺がnの多角形を描きながら移動し、周回移動(複数回の場合もある)が完了した後に、直線73n+2に沿って、加工起点に戻る多角形を含む周回移動軌跡73を適用することも可能である。
ジグザグ移動においては、例えば、1往復あたりの移動が往復移動する方向に90°以外の所定の角度である場合やZ型に移動させることも可能である。
上記のように、レーザトーチ2を往復移動含む移動軌跡75やジグザグに移動する移動軌跡76で移動させる場合、レーザトーチ2は、必ずしも加工起点に対応する位置に戻ることは要件とされない。
まず、処理部12bは、板厚入力部31a、ピアシング孔サイズ入力部31bから鋼板Wのピアシング孔加工をする板厚t(加工部の厚さt)及びピアシング孔径d1に関するデータを受け取る。
入力された鋼板Wの板厚t及びピアシング孔径d1から、ノズル3から噴射されるアシストガスGの酸素濃度Cの調整の要否を判定し、酸素濃度Cの調整が必要な場合は、鋼板Wの板厚さtに対応してアシストガスGの酸素濃度Cが下記(1)から(3)の数式によって決定される。
前記酸素濃度Cは、
0<t<8mmの範囲において、
0<C<99.9 ・・・(1)
8≦t<13.5mmの範囲において、
0<C≦−1.65t+111.2 ・・・(2)
13.5≦t≦26.33mmの範囲において、
5.28t−71.28≦C≦−1.65t+111.2 ・・・(3)
C;酸素濃度(Vol%)、t;鋼板Wの板厚(mm)
0<t<13mmの範囲において、 0.015≦P≦0.05・・・(4)
13≦t≦26.33mmの範囲において、
0.002t−0.011≦P≦0.002t+0.024・・・(5)
と、することが、好適であり、
また、アシストガスの噴射圧Pを、
0<t<13mmの範囲において、 P=0.03 ・・・(6)
13≦t≦26.33mmの範囲において、
P=0.002t+0.004・・・(7)
P;アシストガスGの噴射圧(MPa)、t;鋼板Wの板厚(mm)
とすると、溶融池60内の溶融物64が略完全に排出されて、ピアシング孔径d1を小さくするうえで最適である。
混合器24に供給された所定量の酸素及び窒素は、混合器24で混合され、所定の酸素濃度のアシストガスGとされてノズル3に供給され、ノズル3の噴射口3bから鋼板Wに噴射されるとともに、レーザ光L2が鋼板Wに照射されてピアシングが行なわれる。
この場合、レーザ光L2をパルス照射ではなく、連続照射においても過剰な酸化、燃焼が生じないようにアシストガスGの酸素濃度を調整することで、高効率にピアシング孔Hを形成することができる。
この場合、圧力調整弁25は、処理部12bから送信された制御データにより制御され、ノズル3に供給されるアシストガスGが所望の噴射圧Pとされる。
また、アシストガスGの酸素濃度を調整することで、レーザ光を連続的に照射した場合であっても、過剰な酸化、燃焼が抑制され、連続照射による高い生産性を確保しつつ、孔径が小さいピアシング孔を容易かつ確実に形成することができる。
まず、ピアシング孔加工後にドロス除去動作を行なうかどうかを決定して、必要であれば、ピアシング孔加工後にドロス除去動作を選択して、ドロス除去モード入力部31eに指示を入力する。
ドロス除去モード入力部31eから入力された信号は、データケーブル33eを介して処理部12cに送信される。
処理部12cは、板厚入力部31a、ピアシング孔サイズ入力部31bから送信された、鋼板Wの板厚t及びピアシング孔径d1に関するデータをデータテーブル13cに送信して、加工するピアシング孔Hの孔径及びそのピアシング孔Hのドロス除去に適したノズル3の位置及び動作に関するデータをデータテーブル13cから受け取る。
処理部12cは、データテーブル13cから受け取るこれらのデータに基づいて、駆動部材80を移動させるための、時間・位置情報を演算するとともに、その演算結果を、信号ケーブル15a、15b、15cを介してXドライバ16a、Yドライバ16b、Zドライバ16cに送信し、各ドライバを駆動する。
Xドライバ16a、Yドライバ16b、Zドライバ16cは、駆動部材80を駆動してレーザトーチ2を移動する。
レーザトーチ2が所定の位置、例えば、加工起点に配置する。
ドロス除去制御は、自動運転においては、ピアシング孔加工に引き続いて自動起動される。また、ドロス除去制御は、起動スイッチをONすることにより手動操作で行なってもよい。
レーザトーチ2が、Zドライバ16cにより、所定の高さまで上昇される。
次に、レーザトーチ2からレーザ光L2が照射されるとともに、ノズル3からアシストガスGが噴射される。
ここで、レーザトーチ2の上昇と、レーザ光L2の照射及びアシストガスGの噴射を同時に行なうようにしてもよい。
次いで、Xドライバ16a、Yドライバ16bにより、駆動部材80を駆動してレーザトーチ2をピアシング孔Hの周囲の鋼板Wの表面の上方にて周回移動させながら、レーザ光L2により堆積したドロスを加熱するとともに溶融するとともにアシストガスGにより酸化、燃焼させ、溶融、酸化されたドロスをアシストガスGにより除去する。
所定の周回回数の間、加工起点の周囲を周回移動したら、レーザ光L2の照射とアシストガスGの噴射を終了し、加工起点に戻りドロス除去制御を完了する。
また、ピアシング孔Hに対するレーザトーチ2の軸線O1は、通常はピアシング孔Hの周縁から、例えば、径方向外方に0(ピアシング孔Hの周縁に相当)以上3.0mm以下の位置の鋼板W表面の上方が好適である。
連続照射のレーザ出力6kW、鋼板Wの板厚t22mmの場合において、
鋼板Wの表面からのノズル3の高さ:50mm、アシストガス圧力:0.1MPa、レーザトーチ2の軸線O1が描く円軌跡の位置:ピアシング孔径d1=4.5mmのピアシング孔に対して、ピアシング孔の軸線OHから半径4.25mmの位置、すなわち、ピアシング孔径の径方向外方2mmに軸線O1を移動させて、周回移動したところ、良好な結果が得られた。
また、ピアシング孔Hの周囲にノズル3を周回移動させて、ドロスに対して近距離からアシストガスGを噴射するので、小さな流量にて、確実にドロスの除去を行なうことができ、その結果、加工時間と加工コストを大幅に削減することができる。
上記実施の形態においては、鋼板Wにレーザ光Lを連続的に照射する連続照射の場合について説明したが、照射するレーザ光Lは、パルス照射でもよく、特に、90%以上のデューティのパルス照射においては連続照射の場合と略同等の効果が得られる。
また、アシストガスGを構成する気体の一部として、不活性ガス、例えばアルゴン、ヘリウム等を使用することも可能である。
図10において示したのは、レーザトーチ2が加工起点廻りに描く周回移動の軌跡が、円を含む周回移動軌跡71の場合の検証結果であり、F、J、Kは、それぞれ、比較例1、実施例1、実施例2を表しており、それぞれ、板厚が6mm、9mm、12mm、16mm、19mmの鋼板にレーザ加工機によりレーザ光を照射するとともに、ノズルからアシストガスを噴射してピアシング孔を加工したときの、鋼板Wの板厚t(mm)とピアシング孔径d1(mm)の関係を示している。
レーザ加工機の加工条件は、以下のとおりである。
(1)レーザ加工機の照射形態、出力 ;連続照射、2.5kw
(2)鋼板Wからのノズル開口部までの距離;6mm
は、実施例1、実施例2、比較例1に共通している。
実施例1は、鋼板へのピアシング孔加工を開始後、レーザトーチ2の軸線O1を、加工起点からオフセットさせ、その後、加工起点廻りに円軌跡を描きながら所定の周回回数N(回)ほど周回移動させ、再び加工起点に戻して、ピアシング孔を加工した。
実施例2は、実施例1の加工条件に加えて、アシストガスGの酸素濃度Cを、52.6(vol%)に調整してピアシング孔を加工した。
比較例は、ピアシング孔Hの加工を開始した後もノズル3の軸線O1を加工起点と一致させたまま、ピアシング孔を加工した。
また、鋼板の板厚tによって変化をもたせた加工条件は、以下のとおりであり、ここで、トーチの速度、周回回数、円軌跡の直径d2は、実施例1、実施例2に関わる条件である。
〔加工条件〕
鋼板の板厚t トーチの速度 周回回数 円軌跡の直径 アシストガス圧力
6mm 1500mm/min 1回 0.5mm 0.04MPa
9mm 500mm/min 2回 2.0mm 0.04MPa
12mm 500mm/min 5回 4.0mm 0.04MPa
16mm 1500mm/min 5回 4.0mm 0.23MPa
19mm 1500mm/min 5回 4.0mm 0.23MPa
上記加工条件において加工したピアシング孔径d1は以下のとおりである。
鋼板の板厚t 実施例1 実施例2 比較例1
6mm 2.2mm 2.2mm 4.1mm
9mm 3.3mm 3.2mm 4.4mm
12mm 3.4mm 3.3mm 4.8mm
16mm 7.1mm 4.5mm 8.7mm
19mm 6.5mm 5.2mm 9.7mm
以上のように、実施例1、実施例2ともに、鋼板の板厚6mm、9mm、12mm、16mm、19mmのいずれにおいても、比較例1に対して効果が確認された。
また、実施例2と実施例1とを比較した場合、実施例2は、板厚tが、6mmから12mmまでの範囲については、変化が小さかったが、板厚tが、16mm、19mmにおいては大きな変化(縮小率 最大で約37%)があり、アシストガスの酸素濃度を調整することによりさらなる効果があることが確認できた。
レーザ加工機の加工条件は、以下のとおりである。
(1)レーザ加工機の照射形態、出力 ;連続照射、6.0kw
(2)鋼板Wからのノズル開口部までの距離;4mm
は、実施例3、実施例4、比較例2に共通しており、加工条件は、実施例1、実施例2、比較例1と同様であり、トーチの速度;150mm/min、周回回数;2回、円軌跡の直径d2;0.5mm、アシストガス圧力;0.04MPaとした。
上記加工条件において加工したピアシング孔径d1は以下のとおりである。
鋼板の板厚t 実施例3 実施例4 比較例2
22mm 6.2mm 4.5mm 7.6mm
以上のように、実施例3、実施例4ともに、比較例2に対して効果が確認された。
また、実施例4と実施例3との比較においても大きな変化(縮小率 約28%)があり、アシストガスの酸素濃度を調整することによりさらなる効果があることが確認できた。
実施例5、実施例6におけるレーザ加工機の加工条件は、以下のとおりである。
(1)レーザ加工機の照射形態、出力 ;連続照射、6.0kw
(2)鋼板Wからのノズル開口部までの距離;6mm
(3)トーチの速度;600mm/min、アシストガス圧力;0.35MPa
(3)実施例5におけるレーザトーチ2の往復移動を含む軌跡は、往復移動のストロークst1;0.5mm、往復回数;5回
(4)実施例6におけるレーザトーチ2のジグザグ移動軌跡は、往復移動方向のストロークst2;0.5mm、往復回数;5回、往復移動方向と直交する方向成分の1往復移動あたりの移動量M;0.2mm
なお、比較例2は、前述の実施例3、実施例4に係るものを採用した。
上記加工条件における実施例5のピアシング孔径d1は、
鋼板の板厚t 実施例5 比較例2
22mm 3.5mm 7.6mm
であり、また、
上記加工条件における実施例6のピアシング孔径d1は、
鋼板の板厚t 実施例6 比較例2
22mm 3.5mm 7.6mm
である。
以上のように、実施例5、実施例6は、比較例2に対して大きな効果が得られることが確認された。
L1、L2 レーザ光
t 板厚(加工部の厚さ)
OH ピアシング孔の軸線
G アシストガス
W 鋼板(金属製の被加工材)
C 酸素濃度
1 加工装置
2 レーザトーチ
3 ノズル
10 ピアシング制御部(制御手段)
11 ノズル移動制御部
20 酸素濃度調整部(酸素濃度調整手段)
40 ドロス除去制御部(ドロス除去手段)
60 溶融池
64 溶融物
Claims (12)
- 被加工物の加工部にレーザ光を照射しつつ、前記レーザ光と同軸に配置されたノズルから前記加工部に向けてアシストガスを噴射してアシストガスによって前記加工部を覆い、該加工部にピアシング孔を加工するレーザピアシング方法であって、
前記レーザ光を照射開始後に、前記加工起点から5mmの範囲内で前記ノズルを移動させて、前記溶融池の開口部におけるアシストガスの圧力分布を前記溶融池の開口部の中心に非対称として前記溶融池の開口部における圧力バランスを偏らせることで溶融物を排出させながらピアシング孔を加工することを特徴とするレーザピアシング方法。 - 請求項1記載のレーザピアシング方法であって、
前記ノズルを、
加工起点の廻りに周回移動させることを特徴とするレーザピアシング方法。 - 請求項1記載のレーザピアシング方法であって、
前記ノズルを、
往復移動を含む軌跡で移動させることを特徴とするレーザピアシング方法。 - 請求項1記載のレーザピアシング方法であって、
前記ノズルを、
ジグザクに移動させることを特徴とするレーザピアシング方法。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載のレーザピアシング方法であって、
前記ノズルから噴射されるアシストガスの酸素濃度Cは、前記ピアシング孔加工をする加工部の厚さtに対応して決定され、
前記酸素濃度Cは、
0<t<8mmの範囲において、 0<C<99.9
8≦t<13.5mmの範囲において、 0<C≦−1.65t+111.2
13.5≦t≦26.33mmの範囲において、
5.28t−71.28≦C≦−1.65t+111.2
C;酸素濃度(Vol%)、t;加工部の厚さ(mm)
であることを特徴とするレーザピアシング方法。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載のレーザピアシング方法であって、
前記ピアシング孔を貫通した後に、前記ノズルを前記ピアシング孔の周囲の被加工材の表面の上方に移動させ、前記レーザ光を照射してドロスを再溶融するとともに前記ノズルからアシストガスを噴射しながら前記ピアシング孔の周囲を周回移動し、前記ピアシング孔の周囲に形成されたドロスを除去することを特徴とするレーザピアシング方法。 - 被加工物の加工部にレーザ光を照射しつつ、前記レーザ光と同軸に配置されたノズルから前記加工部に向けてアシストガスを噴射してアシストガスによって前記加工部を覆い、該加工部にピアシング孔を加工する加工装置であって、
前記レーザ光を照射開始後に、前記加工起点から5mmの範囲内で前記ノズルを移動させて、前記溶融池の開口部におけるアシストガスの圧力分布を前記溶融池の開口部の中心に非対称として前記溶融池の開口部における圧力バランスを偏らせることで溶融物を排出させながらピアシング孔を加工する制御手段を備えることを特徴とする加工装置。 - 請求項7に記載の加工装置であって、
前記制御手段は、
前記ノズルを、加工起点の廻りに周回移動させる周回制御手段を備えていることを特徴とする加工装置。 - 請求項7に記載の加工装置であって、
前記制御手段は、
前記ノズルを、往復移動を含む軌跡で移動させる往復制御手段を備えていることを特徴とする加工装置。 - 請求項7に記載の加工装置であって、
前記制御手段は、
前記ノズルを、ジグザグに移動させるジグザク制御手段を備えていることを特徴とする加工装置。 - 請求項7から請求項10のいずれかに記載の加工装置であって、
前記制御手段は、
前記ノズルから噴射されるアシストガスの酸素濃度Cを、前記ピアシング孔加工をする加工部の厚さtに対応して決定する酸素濃度調整手段を備えていることを特徴とする加工装置。 - 請求項7から請求項11のいずれかに記載の加工装置であって、
前記制御手段は、
前記ピアシング孔を貫通した後に、前記ノズルを前記ピアシング孔の周囲の被加工材の表面の上方に移動させ、前記レーザ光を照射してドロスを再溶融するとともに前記ノズルからアシストガスを噴射しながら前記ピアシング孔の周囲を周回移動し、前記ピアシング孔の周囲に形成されたドロスを除去するドロス除去手段を備えていることを特徴とする加工装置。
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