JP5063182B2 - ビニル系重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
ところが、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤は、塗料、インク、接着剤等に使用されるバインダー樹脂の溶解性に乏しいため、単に芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤などから、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に置き換えるだけでは、バインダー樹脂を溶解させた際に溶液が白濁したり、樹脂成分が分離したりするといった問題が生じることがあった。従って、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に対して溶解性に優れたバインダー樹脂の開発が必要とされていた。
また、高度な塗膜性能が要求される塗料などの用途では、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に可溶であると共に、塗膜外観、塗膜硬度などの性能に優れた塗膜を形成できる塗料に有用なバインダー樹脂の開発が必要とされていた。
また、特許文献2には、溶解パラメーター(SP値)が7.5〜9.0(cal/cm3)1/2であり、特定の単量体を共重合させたアクリル樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、特定の単量体を乳化重合して得られる、パラフィン系溶剤に可溶な塗料用樹脂が開示されている。
また、特許文献2に記載のアクリル樹脂組成物は、SP値は高いものの、Tgが低く、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤への溶解性と塗膜硬度を必ずしも両立できるものはなかった。
また、特許文献3に記載の塗料用樹脂には、重合の際に使用する乳化剤や、得られるラテックスを凝固させる際に通常使用する凝固剤が少なからず残存するため、該塗料用樹脂を脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に溶解させると、乳化剤や凝固剤に起因する不溶物が発生することがあった。従って、該塗料用樹脂は、顔料を配合するエナメル塗料用のバインダー樹脂としては有用であるが、高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂としては使用が困難であった。さらに、該塗料用樹脂は、芳香環を有する単量体単位を必須成分として含有するため、塗料とした際に得られる塗膜の耐候性は、必ずしも満足できるものではなかった。
1/Tg=Σ(wi/Tgi)・・・(1)
δ=Σ(miδi)・・・(2)
式(1)中、wiは単量体iの質量分率を表し、Tgiは単量体iのホモポリマーのTgを表す。
式(2)中、miは単量体iのモル分率を表し、δiは単量体iの溶解性パラメーターを表す。
また、前記単量体組成物としてt−ブチルメタクリレート単位を含有することが好ましい。
さらに、本発明は、懸濁重合法で製造する前記ビニル系重合体の製造方法である。
また、本発明のビニル系重合体によれば、より高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂として、特に好適に使用することができる。
本発明のビニル系重合体は、ガラス転移点(Tg)が20〜70℃、溶解性パラメーター(δ)が18.60〜18.90(J/cm3)1/2である単量体組成物を重合することにより得られる。
Tgは、25〜65℃であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。Tgが20℃以上であれば、塗膜硬度が向上する傾向にある。一方、Tgが70℃以下であれば、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤(以下、「脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤」という場合がある。)に対する溶解性(溶剤溶解性)や、塗膜外観が向上する傾向にある。
1/Tg=Σ(wi/Tgi)・・・(1)
(式(1)中、wiは単量体iの質量分率を表し、Tgiは単量体iのホモポリマーのTgを表す。尚、式(1)中のTg及びTgiは、絶対温度(K)で表した値であり、Tgiは、「POLYMER HANDBOOK、FOURTH EDITION、VI/193〜VI/253」に記載されている値である。)
δ=Σ(miδi)・・・(2)
(式(2)中、miは単量体iのモル分率を表し、δiは単量体iの溶解性パラメーターを表す。を表す。)
δi={Σ(njEj)/Σ(njVj)}1/2・・・(3)
(式(3)中、njは単量体iを構成する原子団jの個数を表し、Ejは原子団jの凝集エネルギー(J/mol)を表し、Vjは原子団jのモル体積(cm3/mol)を表す。尚、Ej及びVjは、上記非特許文献中に記載されている値である。)
単量体組成物としては、t−ブチルメタクリレート単位を含有するのが好ましい。t−ブチルメタクリレートは、ホモポリマーのTgが108℃、δが18.57(J/cm3)1/2であり、高いTgと低いδを兼ね備えた単量体である。従って、t−ブチルメタクリレート単位を含有することにより、ビニル系重合体は塗膜硬度と溶剤溶解性を両立し易くなる。さらに、t−ブチルメタクリレート単位を含有するビニル系重合体は、耐候性や耐水性が向上する傾向にある。
t−ブチルメタクリレート単位の含有量は、単量体組成物100質量%中、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。含有量が50質量%以上であれば、塗膜硬度、耐候性、耐水性が向上する傾向にある。一方、含有量が90質量%以下であれば、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。
その他の単量体単位としては、特に制限されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、5−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルシュウ酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルシュウ酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ソルビン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシへプチル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシへプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトン又はε−カプロラクトン等との付加物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の二量体又は三量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体などの単量体単位が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、溶剤溶解性や塗膜外観を向上させる成分として、炭素数5〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。また、顔料の分散性や基材との密着性を向上させる成分として、(メタ)アクリル酸が好ましい。
その他の単量体単位の含有量は、単量体組成物100質量%中、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及び/またはメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/またはメタクリル酸」を、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」を、「(メタ)アクリロニトリル」は「アクリロニトリル及び/またはメタクリロニトリル」をそれぞれ意味する。
また、組み合わせ2の場合、t−ブチルメタクリレート単位を50〜90質量%、ラウリル(メタ)アクリレート10〜50質量%配合するのが好ましく、より好ましくは、t−ブチルメタクリレート単位を50〜85質量%、ラウリル(メタ)アクリレート15〜50質量%である。さらに、ラウリル(メタ)アクリレート以外のその他の単量体単位を配合させてもよく、これにより、組み合わせ1と同様の効果が得られる。
一方、不定形粒子の場合は、溶剤中に投入すると比表面積の大きい粒子が速やかに溶解するので、溶剤の粘度が急速に上昇し、粒子の分散性が低下する傾向にある。分散性が低下すると粒子は合一し、大きな塊状となって、溶解に多大な時間を要することとなる。
ところで、通常、懸濁重合法で製造される粒状のビニル系重合体は、質量平均粒子径が10〜3000μm程度で、ほぼ真球に近い一次粒子となる。一方、乳化重合後に凝集またはスプレードライして製造される粒状のビニル系重合体は、一次粒子径が0.01〜1μm程度の凝集粒子となる。また、塊状重合、あるいは溶液重合後に脱溶剤して得た重合体を粉砕した場合には、重合体粒子の形状は不定形となり、粒度分布が広くなる。このような観点からも、本発明のビニル系重合体は懸濁重合法で製造するのが好ましい。
重合温度は、特に制限されないが、30〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましい。重合温度が30℃以上であれば、比較的短時間で重合が進行し、生産性が向上する傾向にある。一方、重合温度が150℃以下であれば、重合発熱が緩和され、重合温度の制御が容易となる傾向にある。
また、懸濁重合時の分散安定性を向上させる目的で、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン等の電解質を使用してもよい。
さらに、ビニル系重合体の酸価は、特に制限されないが、0.1〜100mgKOH/gが好ましく、0.2〜50mgKOH/gが好ましい。ビニル系重合体の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、塗膜の基材に対する密着性が向上する傾向にある。一方、酸価が100mgKOH/g以下であれば、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。
脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤としては、特に制限されないが、例えば、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素系溶剤などが挙げられる。また、市販のものを用いてもよい。例えば、エクソンモービル(株)製の「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「エクソールDSP100/140」、「エクソールD30」、「エクソールD40」、「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD130」;シェルケミカルズジャパン(株)製の「シェルゾールS」、「シェルゾールTG」、「シェルゾールTK」、「シェルゾールTM」、「シェルゾールD40」、「シェルゾールD70」;出光興産(株)製の「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、「IPソルベント2028」、「IPソルベント2835」、「IPクリーンLX」、「IPクリーンHX」;丸善石油化学(株)製の「スワクリーン150」などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、i−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール系溶剤;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸エチル、乳酸n−ブチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の有機溶剤を併用する場合、含有量が全有機溶剤100質量%中、10質量%以下となるように用いるのが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
また、懸濁重合法により製造したビニル系重合体は、その製造過程において乳化剤や凝固剤を使用しないため、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に溶解させても不要物が発生しにくい。従って、より高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂として、特に好適に使用することができる。
ここで、物性測定及び評価方法を以下に示す。
Tg及びδは、上記式(1)、(2)より算出した。
ビニル系重合体を0.4質量%溶解したTHF溶液を調製した。該THF溶液を100μL採取し、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、「HLC−8120」)を用いて、40℃にて測定を行った。カラムは、東ソー(株)製の「TSKgel G5000HXL」と「GMHXL−L」を直列に連結したものを用いた。検量線は、F288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(東ソー(株)製、標準ポリスチレン)及びスチレンモノマーを用いて作成した。検量線より、標準ポリスチレン換算にてMw(質量平均分子量)、Mn(数平均分子量)、Mw/Mn(質量平均分子量/数平均分子量)を算出した。
固形分約1gのビニル系重合体を精秤し、溶剤50g(トルエン/エタノール=50/50質量%)を加えて溶解させた。これにフェノールフタレインの変色点を基準にして0.2規定の水酸化カリウム(KOH)−エタノール溶液を滴定し、固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数(酸価)を下記式(4)より算出した。
酸価(mgKOH/g)=A×0.2×f×56.1/試料固形分質量(g)・・・(4)
ただし、Aを滴定量(ml)、fを0.2規定の水酸化カリウム溶液の力価とする。
固形分が30質量%になるように、ビニル系重合体をエクソールD40(エクソンモービル(株)製)に溶解させサンプル溶液を調製した。サンプル溶液を直径5cmのガラス瓶に入れ、20℃に設定した恒温装置内で2時間保持した後、恒温装置から取り出した直後のサンプル溶液の透明性を目視観察した。結果は下記基準にて判定した。
尚、エクソールD40は、芳香族含有量0.01質量%、アニリン点69℃の脂肪族炭化水素系溶剤であり、溶解性が極めて低い溶剤である。
○:透明。
△:僅かに濁りがある。
×:白濁。
前記(4)の溶剤溶解性の評価で調製したサンプル溶液と同様のものを直径5cmのガラス瓶に入れ、−20℃に設定した恒温装置内で2時間保持した。その後、恒温装置から取り出し、室温にて1時間保持し、さらに20℃に設定した恒温装置内で2時間保持した。恒温装置から取り出した直後のサンプル溶液の透明性及びその状態を目視観察した。結果は下記基準にて判定した。
○:前記(4)の溶剤溶解性結果と相違なし。
△:前記(4)の溶剤溶解性結果に比べ、透明性が低下した。
×:重合体成分が相分離し、析出した。
試験板の塗膜表面を目視観察し、下記基準にて判定した。
○:ブツが無く、平滑性にも異常がない。
△:ブツは無いが、平滑性に僅かな異常がある。
×:多量のブツが見られる。
水研中塗ダル鋼板と塗膜との密着性をJIS K 5600−5−6:1999に準じたクロスカット法により測定した。
尚、表2に示す数値は、剥離せずに残った面積を%表示したものであり、100%に近づくほど、密着性が良好であることを意味する。
塗膜の鉛筆硬度をJIS K 5600−5−4:1999に準じた手かき法により測定した。尚、2B以上を合格とし、3B以下を不合格とする。
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部、メチルメタクリレート12部を加えて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃(重合温度)に昇温し、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加して60℃に昇温した。重合開始剤の添加と同時に、滴下ポンプを使用して、メチルメタクリレートを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な重合体水溶液である分散剤1を得た。この分散剤1の固形分は10%、粘度は950mPa・sであった。
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部、分散剤1(固形分10%)1部を加えて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、表1に示す組成の単量体の混合物(単量体組成物:t−ブチルメタクリレート60.5部、2−エチルヘキシルアクリレート39部、メタクリル酸0.5部)と、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.37部、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド1.5部を加え、水性懸濁液とした。次に、重合装置内を窒素置換し、70℃(重合温度)に昇温して約1.5時間反応させ、さらに、重合率を上げるため90℃(後処理温度)に昇温して1時間保持した後、30℃に冷却して、ビニル系重合体を含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、30℃で16時間乾燥して、ビニル系重合体1を得た。このビニル系重合体1の酸価は1.3mgKOH/g、Mwは82,200、Mw/Mnは2.46であった。なお、単量体組成物のTgは25.4℃、δは18.73(J/cm3)1/2であった。結果を表1に示す。
単量体、連鎖移動剤、重合開始剤の組成と、重合温度を表1に示すように変更した以外は、製造例2と同様にして、ビニル系重合体2〜11を製造した。ビニル系重合体2〜11の特性を表1に示す。
t−BMA:t−ブチルメタクリレート、
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート、
LMA:ラウリルメタクリレート、
i−BMA:i−ブチルメタクリレート、
n−BA:n−ブチルアクリレート、
MAA:メタクリル酸、
LPO:ラウロイルパーオキサイド、
n−DM:n−ドデシルメルカプタン。
撹拌機、冷却管、温度計を備えた溶解装置中に、エクソールD40(エクソンモービル(株)製)70部、製造例2で得られたビニル系重合体1を30部加えて撹拌し、60℃に昇温して1時間保持した後、室温に冷却して固形分30%のエクソールD40溶液を得た。この溶液の溶剤溶解性、低温安定性を上記の試験により評価した。
また、得られた溶液を塗料として使用し、水研中塗ダル鋼板(日本ルートサービス(株)製、標準試験板)にバーコーターNo.44で塗布し、室温で0.5時間保持した後、90℃で1時間乾燥して、試験板を作成した。この試験板の塗膜外観、密着性、塗膜硬度を上記の試験により評価した。
得られた結果を表2に示す。
ビニル系重合体を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分30%のエクソールD40溶液の調製及び試験板の作成を行い、各々評価した。結果を表2に示す。
ビニル系重合体1の代わりにビニル系重合体9を用いた以外は、実施例1と同様にして、固形分30%のエクソールD40溶液の調製を行った。しかし、ビニル系重合体9はエクソールD40に溶解しなかったため、それ以降の操作は中止した。結果を表2に示す。
これに対し、比較例1で用いたビニル系重合体は、式(2)を用いて算出したδが19.01(J/cm3)1/2の単量体組成物を重合したものであるため、溶剤溶解性や低温安定性が実施例に比べて劣っていた。また、これを用いて得られた溶液から形成される塗膜の外観も、実施例に比べて劣っていた。
比較例2で用いたビニル系重合体は、比較例1よりもさらにδが大きかったため、エクソールD40に溶解できなかった。
比較例3で用いたビニル系重合体は、式(1)を用いて算出したTgが15.8℃の単量体組成物を重合したものであるため、これを用いて得られた溶液から形成される塗膜の硬度が、実施例に比べて劣っていた。
比較例4で用いたビニル系重合体は、式(1)を用いて算出したTgが77.8℃の単量体組成物を重合したものであるため、溶剤溶解性や低温安定性が実施例に比べて劣っていた。また、これを用いて得られた溶液から形成される塗膜の外観も、実施例に比べて劣っていた。
さらに、本発明のビニル系重合体は塗料用途以外においても、例えば、インク、接着剤、レジスト材料、焼成材料、成形材料、スペーサービーズ、光拡散膜用微粒子などの各種分野において幅広く使用することが可能であり、工業上極めて有益なものである。
Claims (2)
- 下記式(1)を用いて算出したガラス転移点(Tg)が20〜70℃、
下記式(2)を用いて算出した溶解性パラメーター(δ)が18.60〜18.90(J/cm3)1/2 、かつ、
t−ブチルメタクリレート単位の含有量が50〜90質量%である単量体組成物を重合したビニル系重合体。
1/Tg=Σ(wi/Tgi)・・・(1)
δ=Σ(miδi)・・・(2)
式(1)中、wiは単量体iの質量分率を表し、Tgiは単量体iのホモポリマーのTgを表す。
式(2)中、miは単量体iのモル分率を表し、δiは単量体iの溶解性パラメーターを表す。 - 懸濁重合法で製造する請求項1に記載のビニル系重合体の製造方法。
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