JP5063182B2 - ビニル系重合体及びその製造方法 - Google Patents

ビニル系重合体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5063182B2
JP5063182B2 JP2007130211A JP2007130211A JP5063182B2 JP 5063182 B2 JP5063182 B2 JP 5063182B2 JP 2007130211 A JP2007130211 A JP 2007130211A JP 2007130211 A JP2007130211 A JP 2007130211A JP 5063182 B2 JP5063182 B2 JP 5063182B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meth
vinyl polymer
acrylate
mass
monomer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007130211A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008285542A (ja
Inventor
浩二 寺田
知己 小松
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp, Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2007130211A priority Critical patent/JP5063182B2/ja
Publication of JP2008285542A publication Critical patent/JP2008285542A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5063182B2 publication Critical patent/JP5063182B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Description

本発明は、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤に可溶で、特に塗料のバインダー樹脂として好適なビニル系重合体及びその製造方法に関する。
従来、塗料、インク、接着剤等の分野においては、溶解性が高く、安価な芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤などが多用されてきた。しかし、近年、人体や環境に対する負荷低減の要求が高まり、より負荷の低い脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤(以下、「脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤」という場合がある。)への置き換えが進められている。
ところが、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤は、塗料、インク、接着剤等に使用されるバインダー樹脂の溶解性に乏しいため、単に芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤などから、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に置き換えるだけでは、バインダー樹脂を溶解させた際に溶液が白濁したり、樹脂成分が分離したりするといった問題が生じることがあった。従って、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に対して溶解性に優れたバインダー樹脂の開発が必要とされていた。
また、高度な塗膜性能が要求される塗料などの用途では、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に可溶であると共に、塗膜外観、塗膜硬度などの性能に優れた塗膜を形成できる塗料に有用なバインダー樹脂の開発が必要とされていた。
そこで、特許文献1には、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤を主成分とする有機溶剤中、特定の単量体を共重合して得られる分散安定剤成分の存在下で、分散粒子成分を共重合することによって得られる非水分散性樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、溶解パラメーター(SP値)が7.5〜9.0(cal/cm1/2であり、特定の単量体を共重合させたアクリル樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、特定の単量体を乳化重合して得られる、パラフィン系溶剤に可溶な塗料用樹脂が開示されている。
特開平6−73261号公報 特開平8−27410号公報 特開平8−259633号公報
しかしながら、特許文献1では、分散安定剤成分を溶解させる溶剤や、塗装剤に用いられる溶剤として、芳香族炭化水素系溶剤を約30質量%含有するロウス(LAWS)を使用しており、環境に対する負荷を充分に低減できなかった。また、該分散安定剤成分は、ガラス転移点(Tg)が低く、塗装剤とした際に得られる塗膜の硬度が低くなるといった問題があった。
また、特許文献2に記載のアクリル樹脂組成物は、SP値は高いものの、Tgが低く、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤への溶解性と塗膜硬度を必ずしも両立できるものはなかった。
また、特許文献3に記載の塗料用樹脂には、重合の際に使用する乳化剤や、得られるラテックスを凝固させる際に通常使用する凝固剤が少なからず残存するため、該塗料用樹脂を脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に溶解させると、乳化剤や凝固剤に起因する不溶物が発生することがあった。従って、該塗料用樹脂は、顔料を配合するエナメル塗料用のバインダー樹脂としては有用であるが、高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂としては使用が困難であった。さらに、該塗料用樹脂は、芳香環を有する単量体単位を必須成分として含有するため、塗料とした際に得られる塗膜の耐候性は、必ずしも満足できるものではなかった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤に対して優れた溶解性を有し、塗膜外観、塗膜硬度などの性能が良好な塗膜を形成できる塗料のバインダー樹脂として有用なビニル系重合体及びその製造方法を実現すること目的とする。
本発明者らは、上記目的を解決するべく鋭意検討した結果、ガラス転移点(Tg)と溶解性パラメーター(δ)を規定することで、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤に対して優れた溶解性を示し、優れた性能の塗膜を形成できる塗料のバインダー樹脂となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のビニル系重合体は、下記式(1)を用いて算出したガラス転移点(Tg)が20〜70℃、下記式(2)を用いて算出した溶解性パラメーター(δ)が18.60〜18.90(J/cm1/2である単量体組成物を重合したビニル系重合体である。
1/Tg=Σ(w/Tg)・・・(1)
δ=Σ(mδ)・・・(2)
式(1)中、wは単量体iの質量分率を表し、Tgは単量体iのホモポリマーのTgを表す。
式(2)中、mは単量体iのモル分率を表し、δは単量体iの溶解性パラメーターを表す。
また、前記単量体組成物としてt−ブチルメタクリレート単位を含有することが好ましい。
さらに、本発明は、懸濁重合法で製造する前記ビニル系重合体の製造方法である。
本発明によれば、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤に対して優れた溶解性を有し、塗膜外観、塗膜硬度などの性能が良好な塗膜を形成できる塗料のバインダー樹脂として有用なビニル系重合体及びその製造方法を実現できる。
また、本発明のビニル系重合体によれば、より高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂として、特に好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「塗膜硬度」、「塗膜外観」とは、本発明のビニル系重合体をバインダー樹脂として用いた塗料から形成される塗膜の硬度、及びその外観のことである。
本発明のビニル系重合体は、ガラス転移点(Tg)が20〜70℃、溶解性パラメーター(δ)が18.60〜18.90(J/cm1/2である単量体組成物を重合することにより得られる。
Tgは、25〜65℃であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。Tgが20℃以上であれば、塗膜硬度が向上する傾向にある。一方、Tgが70℃以下であれば、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤(以下、「脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤」という場合がある。)に対する溶解性(溶剤溶解性)や、塗膜外観が向上する傾向にある。
本発明においてTgは、下記式(1)を用いて算出した値である。
1/Tg=Σ(w/Tg)・・・(1)
(式(1)中、wは単量体iの質量分率を表し、Tgは単量体iのホモポリマーのTgを表す。尚、式(1)中のTg及びTgは、絶対温度(K)で表した値であり、Tgは、「POLYMER HANDBOOK、FOURTH EDITION、VI/193〜VI/253」に記載されている値である。)
一方、溶解性パラメーター(δ)は、18.60〜18.90(J/cm1/2であり、18.65〜18.85(J/cm1/2であることが好ましい。δが18.60(J/cm1/2以上であれば、塗料に顔料を配合させる場合でも分散性が向上したり、塗膜と基材(塗料を塗布する対象物)との密着性が向上したりする傾向にある。一方、δが18.90(J/cm1/2以下であれば、溶剤溶解性や、塗膜外観が向上する傾向にある。
本発明においてδは、R.F.Fedors、「Polym.Eng.Sci.」、(1974)、14(2)、p.147、p.472に記載されている公知の方法により求めることができ、下記式(2)を用いて算出した値である。
δ=Σ(mδ)・・・(2)
(式(2)中、mは単量体iのモル分率を表し、δは単量体iの溶解性パラメーターを表す。を表す。)
尚、単量体iの溶解性パラメーター(δ)は、下記式(3)より、算出できる。
δ={Σ(n)/Σ(n)}1/2・・・(3)
(式(3)中、nは単量体iを構成する原子団jの個数を表し、Eは原子団jの凝集エネルギー(J/mol)を表し、Vは原子団jのモル体積(cm/mol)を表す。尚、E及びVは、上記非特許文献中に記載されている値である。)
このようなビニル系重合体を得るためには、ビニル系重合体を構成する単量体組成物の単量体単位の種類や配合量、重合条件などを調整すればよい。
単量体組成物としては、t−ブチルメタクリレート単位を含有するのが好ましい。t−ブチルメタクリレートは、ホモポリマーのTgが108℃、δが18.57(J/cm1/2であり、高いTgと低いδを兼ね備えた単量体である。従って、t−ブチルメタクリレート単位を含有することにより、ビニル系重合体は塗膜硬度と溶剤溶解性を両立し易くなる。さらに、t−ブチルメタクリレート単位を含有するビニル系重合体は、耐候性や耐水性が向上する傾向にある。
t−ブチルメタクリレート単位の含有量は、単量体組成物100質量%中、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。含有量が50質量%以上であれば、塗膜硬度、耐候性、耐水性が向上する傾向にある。一方、含有量が90質量%以下であれば、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。
単量体組成物は、t−ブチルメタクリレート単位以外にも、必要に応じて、その他の単量体単位を含有することができる。
その他の単量体単位としては、特に制限されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、5−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルシュウ酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルシュウ酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ソルビン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシへプチル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシへプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトン又はε−カプロラクトン等との付加物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の二量体又は三量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体などの単量体単位が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、溶剤溶解性や塗膜外観を向上させる成分として、炭素数5〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。また、顔料の分散性や基材との密着性を向上させる成分として、(メタ)アクリル酸が好ましい。
その他の単量体単位の含有量は、単量体組成物100質量%中、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及び/またはメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/またはメタクリル酸」を、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」を、「(メタ)アクリロニトリル」は「アクリロニトリル及び/またはメタクリロニトリル」をそれぞれ意味する。
上述したような、t−ブチルメタクリレート単位と、その他の単量体単位の組み合わせは特に制限されないが、例えば、t−ブチルメタクリレート単位と2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの組み合わせ(組み合わせ1)、t−ブチルメタクリレート単位とラウリル(メタ)アクリレートの組み合わせ(組み合わせ2)等が挙げられる。組み合わせ1の場合、t−ブチルメタクリレート単位を50〜90質量%、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを10〜50質量%配合するのが好ましい。特に2−エチルヘキシルアクリレートの場合は、t−ブチルメタクリレート単位を55〜85質量%、2−エチルヘキシルアクリレートを15〜45質量%配合するのがより好ましい。一方、2−エチルヘキシルメタクリレートの場合、t−ブチルメタクリレート単位を50〜85質量%、2−エチルヘキシルメタアクリレートを15〜50質量%配合するのがより好ましい。尚、組み合わせ1では、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート以外のその他の単量体単位を配合させてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸を配合させると、溶剤溶解性や塗膜外観が向上すると共に、顔料の分散性や基材との密着性も良好となる。
また、組み合わせ2の場合、t−ブチルメタクリレート単位を50〜90質量%、ラウリル(メタ)アクリレート10〜50質量%配合するのが好ましく、より好ましくは、t−ブチルメタクリレート単位を50〜85質量%、ラウリル(メタ)アクリレート15〜50質量%である。さらに、ラウリル(メタ)アクリレート以外のその他の単量体単位を配合させてもよく、これにより、組み合わせ1と同様の効果が得られる。
本発明のビニル系重合体の形態は、特に制限されないが、輸送、保管等の物流コストの削減、溶剤選択の自由度、法的規制の緩和などの観点から、固形であることが好ましい。また、溶剤溶解時の取り扱い性や溶解時間の短縮などの観点から、その形状は、粒状であることがより好ましく、球形粒子であることが特に好ましい。ビニル系重合体の形状が球形粒子であると、粒子の流動性が向上し、溶剤中への均一な投入が容易となる。さらに、比表面積が小さくなるため、溶剤中に投入した直後の溶解速度が比較的遅くなり、溶剤中への均一な分散が可能となる。溶剤中で均一分散した粒子は、各粒子表面から溶剤が浸透するため、溶解時間が短縮する傾向にある。
一方、不定形粒子の場合は、溶剤中に投入すると比表面積の大きい粒子が速やかに溶解するので、溶剤の粘度が急速に上昇し、粒子の分散性が低下する傾向にある。分散性が低下すると粒子は合一し、大きな塊状となって、溶解に多大な時間を要することとなる。
ビニル系重合体が粒状である場合、その質量平均粒子径は、特に制限されないが、20〜2000μmであることが好ましく、50〜1000μmがより好ましい。質量平均粒子径が20μm以上であれば、粒子の取り扱い性や溶剤中への均一分散性が向上する傾向にある。一方、質量平均粒子径が2000μm以下であれば、溶解時間が短縮する傾向にある。
このようなビニル系重合体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法などの公知の重合方法を用いることができる。中でも、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に不溶な乳化剤や凝固剤を使用しない点で、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法が好ましい。さらに、重合後に濾過、洗浄、脱水、乾燥するだけで、好ましい形態である球形粒子を容易に得ることができる点で、懸濁重合法が特に好ましい。
ところで、通常、懸濁重合法で製造される粒状のビニル系重合体は、質量平均粒子径が10〜3000μm程度で、ほぼ真球に近い一次粒子となる。一方、乳化重合後に凝集またはスプレードライして製造される粒状のビニル系重合体は、一次粒子径が0.01〜1μm程度の凝集粒子となる。また、塊状重合、あるいは溶液重合後に脱溶剤して得た重合体を粉砕した場合には、重合体粒子の形状は不定形となり、粒度分布が広くなる。このような観点からも、本発明のビニル系重合体は懸濁重合法で製造するのが好ましい。
本発明のビニル系重合体を懸濁重合法で製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、水性媒体中に、ビニル系重合体を構成する単量体の混合物(単量体組成物)、分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤などを添加し、これを撹拌して懸濁化させた後、加熱して重合を進行させる方法が挙げられる。さらに、重合後の水性懸濁液を濾過、洗浄、脱水、乾燥することによって、粒状のビニル系重合体が得られる。
重合温度は、特に制限されないが、30〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましい。重合温度が30℃以上であれば、比較的短時間で重合が進行し、生産性が向上する傾向にある。一方、重合温度が150℃以下であれば、重合発熱が緩和され、重合温度の制御が容易となる傾向にある。
分散剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、またはこれら単量体の組み合わせからなる共重合体;ケン化度70〜100%のポリビニルアルコ−ル、メチルセルロ−ス、澱粉、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
分散剤の配合量は、特に制限されないが、水性懸濁液100質量%中0.002〜5質量%が好ましく、0.005〜1質量%がより好ましい。分散剤の配合量が0.002質量%以上であれば、懸濁重合時の分散安定性が向上する傾向にある。一方、分散剤の配合量が5質量%以下であれば、重合後の洗浄性、脱水性、乾燥性、及び得られる粒状のビニル系重合体の流動性が向上する傾向にある。
また、懸濁重合時の分散安定性を向上させる目的で、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン等の電解質を使用してもよい。
重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ラウロイルパーオキサイドが好ましい。
重合開始剤の配合量は、特に制限されないが、単量体組成物100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。重合開始剤の配合量が0.05質量部以上であれば、比較的短時間で重合が進行し、生産性が向上する傾向にある。一方、重合開始剤の配合量が10質量部以下であれば、重合発熱が緩和され、重合温度の制御が容易となる傾向にある。
連鎖移動剤は、ビニル系重合体の分子量を調整する目的で配合される。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)等のチオグリコール酸エステル類;β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸3−メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)等のメルカプトプロピオン酸エステル類;α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、n−ドデシルメルカプタンが好ましい。
連鎖移動剤の配合量は、特に制限されないが、単量体組成物100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。連鎖移動剤の配合量が0.05質量部以上であれば、ビニル系重合体の分子量が低下し、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。一方、連鎖移動剤の配合量が10質量部以下であれば、塗膜硬度が向上する傾向にある。
このようにして得られるビニル系重合体の質量平均分子量は、特に制限されないが、5,000〜200,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましい。ビニル系重合体の質量平均分子量が5,000以上であれば、塗膜硬度が向上する傾向にある。一方、質量平均分子量が200,000以下であれば、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。
また、ビニル系重合体の質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は、特に制限されないが、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。ビニル系重合体のMw/Mnが4以下であれば、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。
さらに、ビニル系重合体の酸価は、特に制限されないが、0.1〜100mgKOH/gが好ましく、0.2〜50mgKOH/gが好ましい。ビニル系重合体の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、塗膜の基材に対する密着性が向上する傾向にある。一方、酸価が100mgKOH/g以下であれば、溶剤溶解性や塗膜外観が向上する傾向にある。
このように、本発明のビニル系重合体は、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に対して優れた溶解性を有する。従って、本発明のビニル系重合体を塗料などに使用する際に、溶剤として脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤を用いることで、人体や環境に対する負荷を低減した塗料を得ることができる。
脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤としては、特に制限されないが、例えば、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素系溶剤などが挙げられる。また、市販のものを用いてもよい。例えば、エクソンモービル(株)製の「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「エクソールDSP100/140」、「エクソールD30」、「エクソールD40」、「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD130」;シェルケミカルズジャパン(株)製の「シェルゾールS」、「シェルゾールTG」、「シェルゾールTK」、「シェルゾールTM」、「シェルゾールD40」、「シェルゾールD70」;出光興産(株)製の「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、「IPソルベント2028」、「IPソルベント2835」、「IPクリーンLX」、「IPクリーンHX」;丸善石油化学(株)製の「スワクリーン150」などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤の含有量は、特に制限されないが、例えば塗料とする場合、全有機溶剤100質量%中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤の含有量が90質量%以上であれば、人体や環境に対する負荷が低減する傾向にある。特に、上塗り塗料や補修用塗料として使用した場合には、下地の塗面を侵し難くなる傾向にある。
また、本発明のビニル系重合体を塗料などに用いる場合には、溶剤として上述した脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤以外のその他の有機溶剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で併用してもよい。
その他の有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、i−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール系溶剤;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸エチル、乳酸n−ブチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の有機溶剤を併用する場合、含有量が全有機溶剤100質量%中、10質量%以下となるように用いるのが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
以上のように、本発明によれば、Tgが20〜70℃、δが18.60〜18.90(J/cm1/2である単量体組成物を重合するので、得られるビニル系重合体は脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に対して優れた溶解性を有する。また、塗料のバインダー樹脂として用いた場合、塗膜外観、塗膜硬度などに優れた塗膜を形成できる。さらに、溶剤として脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤を用いることにより、人体や環境に対する負荷を低減できる。
また、懸濁重合法により製造したビニル系重合体は、その製造過程において乳化剤や凝固剤を使用しないため、脂肪族/脂環式炭化水素系溶剤に溶解させても不要物が発生しにくい。従って、より高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂として、特に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は「質量部」を表す。
ここで、物性測定及び評価方法を以下に示す。
(1)ガラス転移点(Tg)及び溶解性パラメーター(δ)
Tg及びδは、上記式(1)、(2)より算出した。
(2)質量平均分子量及び数平均分子量の測定
ビニル系重合体を0.4質量%溶解したTHF溶液を調製した。該THF溶液を100μL採取し、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、「HLC−8120」)を用いて、40℃にて測定を行った。カラムは、東ソー(株)製の「TSKgel G5000HXL」と「GMHXL−L」を直列に連結したものを用いた。検量線は、F288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(東ソー(株)製、標準ポリスチレン)及びスチレンモノマーを用いて作成した。検量線より、標準ポリスチレン換算にてMw(質量平均分子量)、Mn(数平均分子量)、Mw/Mn(質量平均分子量/数平均分子量)を算出した。
(3)酸価の測定
固形分約1gのビニル系重合体を精秤し、溶剤50g(トルエン/エタノール=50/50質量%)を加えて溶解させた。これにフェノールフタレインの変色点を基準にして0.2規定の水酸化カリウム(KOH)−エタノール溶液を滴定し、固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数(酸価)を下記式(4)より算出した。
酸価(mgKOH/g)=A×0.2×f×56.1/試料固形分質量(g)・・・(4)
ただし、Aを滴定量(ml)、fを0.2規定の水酸化カリウム溶液の力価とする。
(4)溶剤溶解性の評価
固形分が30質量%になるように、ビニル系重合体をエクソールD40(エクソンモービル(株)製)に溶解させサンプル溶液を調製した。サンプル溶液を直径5cmのガラス瓶に入れ、20℃に設定した恒温装置内で2時間保持した後、恒温装置から取り出した直後のサンプル溶液の透明性を目視観察した。結果は下記基準にて判定した。
尚、エクソールD40は、芳香族含有量0.01質量%、アニリン点69℃の脂肪族炭化水素系溶剤であり、溶解性が極めて低い溶剤である。
○:透明。
△:僅かに濁りがある。
×:白濁。
(5)低温安定性の評価
前記(4)の溶剤溶解性の評価で調製したサンプル溶液と同様のものを直径5cmのガラス瓶に入れ、−20℃に設定した恒温装置内で2時間保持した。その後、恒温装置から取り出し、室温にて1時間保持し、さらに20℃に設定した恒温装置内で2時間保持した。恒温装置から取り出した直後のサンプル溶液の透明性及びその状態を目視観察した。結果は下記基準にて判定した。
○:前記(4)の溶剤溶解性結果と相違なし。
△:前記(4)の溶剤溶解性結果に比べ、透明性が低下した。
×:重合体成分が相分離し、析出した。
(6)塗膜外観の評価
試験板の塗膜表面を目視観察し、下記基準にて判定した。
○:ブツが無く、平滑性にも異常がない。
△:ブツは無いが、平滑性に僅かな異常がある。
×:多量のブツが見られる。
(7)密着性の評価
水研中塗ダル鋼板と塗膜との密着性をJIS K 5600−5−6:1999に準じたクロスカット法により測定した。
尚、表2に示す数値は、剥離せずに残った面積を%表示したものであり、100%に近づくほど、密着性が良好であることを意味する。
(8)塗膜硬度の評価
塗膜の鉛筆硬度をJIS K 5600−5−4:1999に準じた手かき法により測定した。尚、2B以上を合格とし、3B以下を不合格とする。
[製造例1]分散剤1の製造
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部、メチルメタクリレート12部を加えて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃(重合温度)に昇温し、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加して60℃に昇温した。重合開始剤の添加と同時に、滴下ポンプを使用して、メチルメタクリレートを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な重合体水溶液である分散剤1を得た。この分散剤1の固形分は10%、粘度は950mPa・sであった。
[製造例2]ビニル系重合体1の製造
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部、分散剤1(固形分10%)1部を加えて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、表1に示す組成の単量体の混合物(単量体組成物:t−ブチルメタクリレート60.5部、2−エチルヘキシルアクリレート39部、メタクリル酸0.5部)と、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.37部、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド1.5部を加え、水性懸濁液とした。次に、重合装置内を窒素置換し、70℃(重合温度)に昇温して約1.5時間反応させ、さらに、重合率を上げるため90℃(後処理温度)に昇温して1時間保持した後、30℃に冷却して、ビニル系重合体を含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、30℃で16時間乾燥して、ビニル系重合体1を得た。このビニル系重合体1の酸価は1.3mgKOH/g、Mwは82,200、Mw/Mnは2.46であった。なお、単量体組成物のTgは25.4℃、δは18.73(J/cm1/2であった。結果を表1に示す。
[製造例3]ビニル系重合体2〜11の製造
単量体、連鎖移動剤、重合開始剤の組成と、重合温度を表1に示すように変更した以外は、製造例2と同様にして、ビニル系重合体2〜11を製造した。ビニル系重合体2〜11の特性を表1に示す。
Figure 0005063182
表中の略号は以下の通りである。
t−BMA:t−ブチルメタクリレート、
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート、
LMA:ラウリルメタクリレート、
i−BMA:i−ブチルメタクリレート、
n−BA:n−ブチルアクリレート、
MAA:メタクリル酸、
LPO:ラウロイルパーオキサイド、
n−DM:n−ドデシルメルカプタン。
[実施例1]
撹拌機、冷却管、温度計を備えた溶解装置中に、エクソールD40(エクソンモービル(株)製)70部、製造例2で得られたビニル系重合体1を30部加えて撹拌し、60℃に昇温して1時間保持した後、室温に冷却して固形分30%のエクソールD40溶液を得た。この溶液の溶剤溶解性、低温安定性を上記の試験により評価した。
また、得られた溶液を塗料として使用し、水研中塗ダル鋼板(日本ルートサービス(株)製、標準試験板)にバーコーターNo.44で塗布し、室温で0.5時間保持した後、90℃で1時間乾燥して、試験板を作成した。この試験板の塗膜外観、密着性、塗膜硬度を上記の試験により評価した。
得られた結果を表2に示す。
[実施例2〜7、比較例1、3、4]
ビニル系重合体を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分30%のエクソールD40溶液の調製及び試験板の作成を行い、各々評価した。結果を表2に示す。
[比較例2]
ビニル系重合体1の代わりにビニル系重合体9を用いた以外は、実施例1と同様にして、固形分30%のエクソールD40溶液の調製を行った。しかし、ビニル系重合体9はエクソールD40に溶解しなかったため、それ以降の操作は中止した。結果を表2に示す。
Figure 0005063182
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜7で用いた各ビニル系重合体は、溶剤溶解性や低温安定性が良好であった。また、これらを用いて得られた溶液(塗料)は、塗膜外観、密着性、塗膜硬度に優れた塗膜を形成できた。
これに対し、比較例1で用いたビニル系重合体は、式(2)を用いて算出したδが19.01(J/cm1/2の単量体組成物を重合したものであるため、溶剤溶解性や低温安定性が実施例に比べて劣っていた。また、これを用いて得られた溶液から形成される塗膜の外観も、実施例に比べて劣っていた。
比較例2で用いたビニル系重合体は、比較例1よりもさらにδが大きかったため、エクソールD40に溶解できなかった。
比較例3で用いたビニル系重合体は、式(1)を用いて算出したTgが15.8℃の単量体組成物を重合したものであるため、これを用いて得られた溶液から形成される塗膜の硬度が、実施例に比べて劣っていた。
比較例4で用いたビニル系重合体は、式(1)を用いて算出したTgが77.8℃の単量体組成物を重合したものであるため、溶剤溶解性や低温安定性が実施例に比べて劣っていた。また、これを用いて得られた溶液から形成される塗膜の外観も、実施例に比べて劣っていた。
本発明のビニル系重合体は、脂肪族及び/または脂環式炭化水素系溶剤に対して優れた溶解性を有する。従って、人体や環境への負荷が低い塗料用のバインダー樹脂として使用することができる。特に、より高度な塗膜外観が要求されるクリア塗料用のバインダー樹脂として好適である。また、本発明のビニル系重合体を用いることにより、塗膜外観、塗膜硬度などの塗膜性能が良好な塗料を得ることができる。
さらに、本発明のビニル系重合体は塗料用途以外においても、例えば、インク、接着剤、レジスト材料、焼成材料、成形材料、スペーサービーズ、光拡散膜用微粒子などの各種分野において幅広く使用することが可能であり、工業上極めて有益なものである。

Claims (2)

  1. 下記式(1)を用いて算出したガラス転移点(Tg)が20〜70℃、
    下記式(2)を用いて算出した溶解性パラメーター(δ)が18.60〜18.90(J/cm1/2 、かつ、
    t−ブチルメタクリレート単位の含有量が50〜90質量%である単量体組成物を重合したビニル系重合体。
    1/Tg=Σ(w/Tg)・・・(1)
    δ=Σ(mδ)・・・(2)
    式(1)中、wは単量体iの質量分率を表し、Tgは単量体iのホモポリマーのTgを表す。
    式(2)中、mは単量体iのモル分率を表し、δは単量体iの溶解性パラメーターを表す。
  2. 懸濁重合法で製造する請求項1記載のビニル系重合体の製造方法。
JP2007130211A 2007-05-16 2007-05-16 ビニル系重合体及びその製造方法 Active JP5063182B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007130211A JP5063182B2 (ja) 2007-05-16 2007-05-16 ビニル系重合体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007130211A JP5063182B2 (ja) 2007-05-16 2007-05-16 ビニル系重合体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008285542A JP2008285542A (ja) 2008-11-27
JP5063182B2 true JP5063182B2 (ja) 2012-10-31

Family

ID=40145598

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007130211A Active JP5063182B2 (ja) 2007-05-16 2007-05-16 ビニル系重合体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5063182B2 (ja)

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3201908B2 (ja) * 1993-04-06 2001-08-27 日本カーバイド工業株式会社 高固形分非水性重合体分散液
AU681145B2 (en) * 1994-05-20 1997-08-21 Nippon Carbide Kogyo Kabushiki Kaisha Coating resin composition
JPH115940A (ja) * 1997-06-18 1999-01-12 Nippon Shokubai Co Ltd 成膜用組成物
JP2001049078A (ja) * 1999-08-05 2001-02-20 Nippon Shokubai Co Ltd 耐候性樹脂組成物
JP4173261B2 (ja) * 1999-10-25 2008-10-29 三菱レイヨン株式会社 水性被覆組成物
JP2003313487A (ja) * 2002-04-24 2003-11-06 Mitsubishi Rayon Co Ltd 水性被覆材
JP4630534B2 (ja) * 2003-10-24 2011-02-09 日本カーバイド工業株式会社 水性被覆用組成物
JP4511493B2 (ja) * 2005-05-20 2010-07-28 日本ペイント株式会社 クリアーアニオン電着塗料組成物及び塗膜形成方法
CN101589105B (zh) * 2007-01-23 2014-08-27 三菱丽阳株式会社 (甲基)丙烯酸系聚合物粒子、其制造方法、使用(甲基)丙烯酸系聚合物粒子的增塑溶胶组合物以及使用其的物品

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008285542A (ja) 2008-11-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5876175B2 (ja) シーラー用塗料組成物
JP2008138218A (ja) 水性樹脂分散体、水性樹脂組成物および水性樹脂組成物の製造方法
JP5468802B2 (ja) 水性塗料用組成物及びトップコート用塗料
JP5572948B2 (ja) 粉体塗料用熱流動性調整剤とその製造方法、及び粉体塗料
JP5404222B2 (ja) ビニル系ポリマーの製造方法
JP5637500B2 (ja) ビニル系ポリマーの製造方法及びビニル系ポリマー
JP5695823B2 (ja) シーラー用塗料組成物
WO2010061586A1 (ja) シーラー用樹脂エマルション
TWI682809B (zh) 氧化鋯粒子分散體組成物及其硬化物
JP6639819B2 (ja) コーティング材用表面調整剤
JP5063182B2 (ja) ビニル系重合体及びその製造方法
JP6855866B2 (ja) マクロモノマー共重合体および成形材料
JP2010241991A (ja) アクリロニトリル共重合体組成物およびアクリロニトリル共重合体の製造方法
JP5355360B2 (ja) シーラー用樹脂組成物
JP5547460B2 (ja) シーラー用樹脂組成物
JP7035327B2 (ja) マクロモノマー共重合体の製造方法
JP2007177199A (ja) 粒状ビニル系重合体、その製造方法、及び熱硬化性樹脂組成物
JP5001829B2 (ja) 水性樹脂分散体、水性樹脂組成物および水性樹脂組成物の製造方法
JP2006282935A (ja) 粒状ビニル系重合体及び熱硬化性樹脂組成物
JP7302685B2 (ja) 共重合体、樹脂組成物、成形体、フィルム状成形体、及び共重合体の製造方法
JP2018080297A (ja) 水性塗料組成物
JP4070017B2 (ja) 水性樹脂分散体及びその製造方法
JP2023144752A (ja) 共重合体、樹脂組成物及び樹脂成形体
KR20220132999A (ko) 현탁중합을 이용한 알칼리 수용성 수지 및 이의 제조방법
JP2008308523A (ja) 組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100514

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110404

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120328

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120403

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120601

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20120601

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120724

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120807

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5063182

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150817

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150817

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250