JP5063139B2 - フォトニック構造体 - Google Patents
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Description
また、例えばファイバオプティクスジャイロスコープ(以下、FOGと言う。)の光ファイバ部分をフォトニック結晶光導波路で代替することができれば、FOGの小型化を図ることができる。FOGの感度は光ファイバが囲む面積に比例するため、フォトニック結晶光導波路を光ファイバの代わりに使用する際には、面内で単位面積あたりの行路長を長くする工夫が必要となる。この場合、フォトニック結晶光導波路をスパイラル状に形成することが有効となる。
円座標系フォトニック結晶については、ある一つの同心円を構成するロッドを欠損させることにより、円形の光導波路が作製可能であるが、スパイラル形状にすることができないという問題がある。
また、この発明では、並進対称性を有さず、半径方向の長さ及び円周方向の角度で特定される円座標系の半径方向と円周方向とに周期性をもって屈折率の変化が配列されることでフォトニックバンドギャップが現出しているフォトニック構造体は、各々が互いに相違する前記半径方向の屈折率の変化の配列の周期をもつ、複数の、半径方向と円周方向とに周期性をもって屈折率の変化が配列される円座標系フォトニック結晶の領域から構成され、それら複数の円座標系フォトニック結晶が、隣り合う領域どうしの界面としてのヘテロ界面を介して接合されたヘテロ界面構造を有するものとする。
さらに、この発明によれば、並進対称性と、回転対称性と、円座標系で定義される規則性のいずれの秩序性も有さない屈折率の変化の配列によってフォトニックバンドギャップが現出しているフォトニック構造体は、前記屈折率の変化の配列が、その各配列の基準点からの距離が徐々に変化するスパイラル状の配列の少なくとも一部を有するものとされる。
〈第1の実施形態〉
図1はこの発明によるフォトニック構造体の第1の実施形態の構成例を示したものであり、この形態ではフォトニック構造体は半径方向の長さ及び円周方向の角度で特定される円座標系の周期性をもって屈折率が変化する構造とされた扇形の円座標系フォトニック結晶が5個組み合わされた構成となっている。5個の扇形円座標系フォトニック結晶は同一構造を有するものとされている。図1中、P1〜P5はこれら5個の扇形円座標系フォトニック結晶がそれぞれ位置する領域を示す。
図1に示したような構造を有するフォトニック構造体は、例えば空気中(屈折率1)にシリコン(屈折率3.4)の円柱を配列させた構造とされ、この構造は例えば以下のような工程により作製することができる。
2)熱酸化膜の上に電子線レジストを塗布し、シリコンの円柱が配列されるパターン構造を電子線描画装置により露光する。
3)レジストを現像後、レジストパターンをマスクとして熱酸化膜を反応性イオンエッチング装置でエッチングする。
4)レジストを除去した後、熱酸化膜をマスクとしてシリコンを高周波誘導結合プラズマ法反応性イオンエッチング装置を用いてエッチングする。
5)その後、熱酸化膜をアッシングにより除去し、フォトニック構造体が完成する。
この構造に対する光伝播特性をFDTD(Finite Difference Time Domain)法により計算した。ロッド21の半径rは0.22μmとし、同心円の半径方向の周期(ロッド21の半径方向の配列周期)aは0.88μmとした。なお、シミュレーションは2次元(X−Z平面)で行い、Y方向(ロッド21の中心軸方向)は無限大とした。以下の結果はすべてTE偏光(電場の振動方向が紙面と垂直)の結果である。
フォトニックバンドギャップ中の波長である1.8μmの波長の連続光を位置Aから入射した結果、図4に示したように光導波路22中のみに強い電場の強度を確認できた。このことは光導波路22に入射した光が側壁のロッド配列により形成されるフォトニックバンドギャップに反射されて、光導波路22中のみを伝播していることを示している。以上のことから、この光導波路構造がスパイラル光導波路として機能していることがわかった。
図1では同一構造の扇形円座標系フォトニック結晶を1周期分シフトさせて接合させた構造としているが、屈折率変化周期の整数倍(2以上)のシフトであっても同様にスパイラル形状の光導波路を作製することができる。また、上記の原理を用いると、図1に示したように5回対称(5回転対称)ではなく、4回対称や6回対称といった異なる対称性の扇形円座標系フォトニック結晶を中心位置を整数周期分シフトさせて接合しても、同様にスパイラル状にロッドがなめらかに連続する構造を作製することができる。接合面(界面)毎にロッドの中心からの距離が小さくなっていくため、接合面が増加するほど、360°周回した位置(図1ではS5)においてロッド間が接続する周期のずれが大きくなるという特徴がある。なお、各扇形円座標系フォトニック結晶の周期構造は、導波させたい光の波長や偏光の条件によって、周期やロッドの半径を選択して設計することができる。
図5はこの発明によるフォトニック構造体の第2の実施形態の構成例を示したものである。この形態では第1の実施形態と同様、フォトニック構造体は扇形の円座標系フォトニック結晶が5個組み合わされた構成となっているものの、5個の扇形円座標系フォトニック結晶は第1の実施形態のように同一構造ではなく、相似形をなすものとされている。即ち、領域P2の扇形円座標系フォトニック結晶は領域P1の扇形円座標系フォトニック結晶を全体に縮小した相似形となっており、配列周期aとロッド21の半径rが共に同じ割合で縮小された構造となっている。同様に、領域P3〜P5の扇形円座標系フォトニック結晶も領域P2〜P5の扇形円座標系フォトニック結晶をそれぞれ縮小した構造になっている。つまり、扇形円座標系フォトニック結晶は領域P1からP5に行くに従い、順次縮小された構造になっており、界面(ヘテロ界面)S1〜S5においては屈折率が変化する周期が不連続に変化している。なお、図5では倍率(縮小率)は94%となっている。
このように円座標系で定義される扇形の構造を相似形で接合していくと、同じ周にあるロッド21の各同心円の中心からの距離は接合面が増加するに従って小さくなり、そのため360°周回した位置(図5では界面S5の位置)においてはある周にあるロッド21を異なる周にあるロッド21となめらかに接続することが可能となる。図5ではS1〜S4の各界面(各接合面)において11周目のロッド21がなめらかに接続するよう、各領域P1〜P5のロッド21の円座標中心C1〜C5(図示せず)の位置を制御している。これにより、界面S5においては領域P5の11周目に位置するロッド21は領域P1の8周目の位置にあるロッド21となめらかに接続しているが、相似形の倍率を制御することにより、界面S5において領域P1の任意の周のロッド21に接続させることができる。
一方、図6は倍率(縮小率)を98%として、相似形の扇形円座標系フォトニック結晶を5個組み合わせたものであり、以下、この図6に示したフォトニック構造体の光伝播特性を第1の実施形態と同様に説明する。なお、光伝播特性のシミュレーション条件等は第1の実施形態と同様である(以下の第3及び第4の実施形態においても同様)。
・領域P1 a=0.880μm , r=0.220μm
・領域P2 a=0.862μm , r=0.216μm
・領域P3 a=0.845μm , r=0.211μm
・領域P4 a=0.828μm , r=0.207μm
・領域P5 a=0.812μm , r=0.203μm
また、各領域P1〜P5の同心円の中心C1〜C5(図示せず)はそれぞれ異なる位置にあり、ここでは界面S5において領域P5の11番目の周と領域P1の10番目の周が一致するよう中心位置C1〜C5を制御して接合させた。
以上、相似形の扇形円座標系フォトニック結晶を5個組み合わせる構成を例として説明したが、上記の原理を用いると、5個に限らず、例えば4個や6個(この場合、扇形の中心角が90度や60度になる)組み合わせても、同様にスパイラル状にロッドがなめらかに連続する構造を作製することができる。また、相似形の扇形円座標系フォトニック結晶間の相似形の倍率は各界面(各ヘテロ界面)毎に異なっていてもよく、360°周回した部分の接合面(界面)において、接合する一方の扇形円座標系フォトニック結晶のある周にあるロッドを他方の扇形円座標系フォトニック結晶の別の周にあるロッドとなめらかに接合させることができればスパイラル光導波路を作製することが可能である。さらに、組み合わせる扇形円座標系フォトニック結晶は扇形の中心角が等しいものに限らず、中心角が異なるものであってもよい。
図9はこの発明によるフォトニック構造体の第3の実施形態の構成例を示したものであり、この形態ではフォトニック構造体は並進対称性、回転対称性及び円座標系で定義される規則性のいずれの秩序性も有さず、屈折率要素の基準点からの距離が徐々に変化するスパイラル状の配列を有するものとされており、つまり中心Cを同一とし、半径が単調に変化する位置にロッド21が配列された構造となっている。
図10に示したように、Rn-mのロッドの中心Cからの距離をD(n,m)とすると、D(n,m)は次の式で表される。
以下、この図9に示したフォトニック構造体の光伝播特性を説明する。
フォトニック構造体は空気中にシリコンの円柱を配列させた構造とした。各周のDn,Bn及びθnは図11の表に示した値とし、ロッド21の半径rは0.22μmとした。
図14はこの発明によるフォトニック構造体の第4の実施形態の構成例を示したものであり、この形態では第3の実施形態と同様、ロッド21が式(1)で表されるように配列されており、さらに式(1)においてθ(n,m)が以下の式で表される場合の構造体である。
ここで、φn,Δn,Nnはnによって異なる定数である。
φn,Δn,Nnの各値と式(1)で定義されるDn,Bnの各値は例えば図15に示した表のように設定される。式(2)によれば、θ(n,m)はmの値と共に大きくなる。ロッド21の半径rは0.264μmとし、このフォトニック構造体の光伝播特性を調べた結果を以下に示す。なお、フォトニック構造体は空気中にシリコンの円柱を配列させた構造とした。
次に、図17に示したようにロッド21をスパイラル状に欠損させて光導波路22を形成した。導波特性を調べるために、図17中、Aの位置から光を矢印の方向に入射させて、光導波路22中を導波する電場の強度を調べた。1.95μmの波長の連続光を入射した結果、光導波路22中のみに強い電場の強度を確認できた。このことは光導波路22に入射した光が側壁のロッド配列により形成されるフォトニックバンドギャップに反射されて、光導波路22中のみを伝播していることを示している。以上のことから、この光導波路構造がスパイラル光導波路として機能していることがわかった。
一方、第3の実施形態や第4の実施形態においても図18Bに示したようなうねり形状の光導波路を作製することができる。この場合、複数の基準点に基づく複数のスパイラル状配列の一部を接合することにより、うねり形状の光導波路を作製することが可能となる。
また、上記においてはロッド(シリコン円柱)の高さを無限大として光伝播特性の計算を行ったが、実用上は高さ方向(上下方向)に光を閉じ込めることが必要となる。従来の2次元フォトニック結晶においても、2次元フォトニック結晶をスラブ(薄い板状)にし、その上下を屈折率の低い材料(空気など)で挟むことにより、屈折率差による全反射で上下方向の光の閉じ込めを行っている。従って、この発明においても、上下を屈折率の異なる材料で挟み込んだスラブ形状のフォトニック構造体としても、その効果を発揮することはいうまでもない。
Claims (11)
- 並進対称性を有さず、半径方向の長さ及び円周方向の角度で特定される円座標系の半径方向と円周方向とに周期性をもって屈折率の変化が配列されることでフォトニックバンドギャップが現出しているフォトニック構造体であって、
各々が互いに相違する円座標中心をもつ、複数の、半径方向と円周方向とに周期性をもって屈折率の変化が配列される円座標系フォトニック結晶の領域から構成され、それら複数の円座標系フォトニック結晶が、隣り合う領域どうしの界面としてのヘテロ界面を介して接合されたヘテロ界面構造を有していることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項1記載のフォトニック構造体において、
前記へテロ界面構造における隣り合う前記領域どうしの円座標中心の位置の相違が半径方向の屈折率変化周期の整数倍であることを特徴とするフォトニック構造体。 - 並進対称性を有さず、半径方向の長さ及び円周方向の角度で特定される円座標系の半径方向と円周方向とに周期性をもって屈折率の変化が配列されることでフォトニックバンドギャップが現出しているフォトニック構造体であって、
各々が互いに相違する前記半径方向の屈折率の変化の配列の周期をもつ、複数の、半径方向と円周方向とに周期性をもって屈折率の変化が配列される円座標系フォトニック結晶の領域から構成され、それら複数の円座標系フォトニック結晶が、隣り合う領域どうしの界面としてのヘテロ界面を介して接合されたヘテロ界面構造を有していることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項3記載のフォトニック構造体において、
前記複数の円座標系フォトニック結晶は、互いに相似形をなす扇形であることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項2乃至4のいずれかに記載のフォトニック構造体において、
前記周期性をもって屈折率の変化が配列される配列中に、曲率半径が変化する曲線状に配列の欠陥が設けられていることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項5記載のフォトニック構造体において、
前記曲線がスパイラル形状をなすことを特徴とするフォトニック構造体。 - 並進対称性と、回転対称性と、円座標系で定義される規則性のいずれの秩序性も有さない屈折率の変化の配列によってフォトニックバンドギャップが現出しているフォトニック構造体であって、
前記屈折率の変化の配列は、その各配列の基準点からの距離が徐々に変化するスパイラル状の配列の少なくとも一部を有していることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項7記載のフォトニック構造体において、
各々が互いに相違する基準点をもつ、複数の、前記スパイラル状の配列の一部を、相互に接合することにより得られる構造を有していることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項7又は8記載のフォトニック構造体において、
前記屈折率の変化の配列に、線状の配列の欠陥が設けられていることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項7記載のフォトニック構造体において、
前記屈折率の変化の配列に、前記基準点を中心とするスパイラル形状をなす線状の配列の欠陥が設けられていることを特徴とするフォトニック構造体。 - 請求項8記載のフォトニック構造体において、
前記屈折率の変化の配列に、うねり形状をなす線状の配列の欠陥が設けられていることを特徴とするフォトニック構造体。
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