JP5060052B2 - カソード防食された埋設金属体の防食管理方法、防食管理装置、防食管理プログラム、情報記録媒体 - Google Patents

カソード防食された埋設金属体の防食管理方法、防食管理装置、防食管理プログラム、情報記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、カソード防食されている埋設金属体の防食状況を管理する防食管理方法、防食管理装置、防食管理プログラム、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体であって、特には、塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の金属対電解質電位を計測し、その計測結果に基づいて、埋設金属体の迷走電流腐食リスクを評価することができる防食管理方法、防食管理装置、防食管理プログラム、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に関するものである。
外部電源又は流電陽極を用いて金属体をカソードとして通電する防食手法をカソード防食といい、パイプライン等の埋設金属構造物に対して有効な防食手法であることが知られている。
カソード防食された埋設金属体の防食状況を管理する方法の一つに、金属対電解質電位の計測による方法がある。カソード防食された埋設金属体の金属対電解質電位は金属体表面とその近傍の電解質(土壌等)に設置された照合電極との電位差であって、金属体表面と照合電極間に直流電圧計を挿入することで計測される。この金属対電解質電位による防食管理は、前記のように計測された金属対電解質電位の値を防食電位と照査し、計測値が防食電位よりマイナス側であることを確認することによって行われている。
図1は、埋設金属体の一例である埋設パイプラインの金属対電解質電位(管対地電位)計測を説明する説明図である。塗覆装Cが施された埋設パイプラインPには、塗覆装欠陥部Cpにカソード防食電流を流入させカソード防食が施されている。この埋設パイプラインPに沿って設定間隔(通常250m間隔)でターミナルボックスが設置され、このターミナルボックス内で地表面GLに照合電極Ec(飽和硫酸銅電極)が設置されており、一端が埋設パイプラインPの表面に接続された導線L1と一端が照合電極Ecに接続された導線L2が管対地電位計測器(直流電圧計)Vに接続されている。
このような埋設パイプラインの管対地電位によるカソード防食管理では、管対地電位の計測値とカソード防食基準との照査がなされている。ここでいうカソード防食基準とは、管対地電位が限界臨界電位以上で防食電位以下である領域にあって、この領域で埋設パイプラインを構成する金属の腐食速度が0.01mm/year未満になるカソード防食達成領域を指す。具体例として、鋼製パイプラインの管対地電位を指標としたカソード防食基準は、下記非特許文献1に、「−1200mVCSE≦(管対地電位)≦−950mVCSE(VCSEは、飽和硫酸銅電極基準電位)」と記載されている。
一方、カソード防食された埋設金属体の防食状況を管理するもう一つの方法として、プローブ電流密度管理がある。これは、塗覆装を施した埋設金属体に対して、塗覆装欠陥部を模擬したプローブを近接配置し、このプローブと埋設金属体とを電気的に接続して、プローブと埋設金属体に流れる電流を計測評価するものである。
図2は、埋設パイプラインを例にし、プローブ電流密度によってカソード防食状況を評価する計測評価システムを示した説明図である。ここでは、塗覆装Cを施した埋設パイプラインPに対して塗覆装欠陥を模擬したプローブPr(パイプライン材料と同じ材料からなる所定面積の試験片)を近接させ、また、地表面には照合電極Ec(飽和硫酸銅電極)を設置し、埋設パイプラインPとプローブPr間を電気的に接続する導線L3内に電流計AとスイッチSを設け、プローブPrと照合電極Ec間を電気的に接続する導線L4内に電圧計V1を設けたシステムが用いられ、スイッチSのON時の電圧計V1の出力によって得られるプローブオン電位EON、スイッチSのOFFの直後に電圧計V1の出力によって得られるプローブオフ電位EOFF、スイッチSのON時の電流計Aの出力によって得られるプローブ電流Iによって、カソード防食状況の計測評価を行うものである。
このようなカソード防食状況の管理において、前者の金属対電解質電位による管理は、簡易且つ安価な計測によって防食状況の評価ができる、金属対電解質電位である直流電圧を計測するので防食対象物のカソード防食効率が低下する問題が生じない、といった利点があり、現状の管理の大半はこれによって行われている。しかしながら、計測された金属対電解質電位の静的な値(計測平均値等)を用いてカソード防食基準との照査が行われているので、防食状況の時間的な変化を適切に把握するには限界がある。
一方、後者のプローブ電流密度管理は、防食対象の埋設金属体の周辺に直流又は交流電気鉄道施設や高圧交流送電線が存在することで、迷走電流腐食が懸念される場合のみに行われており、例えば、直流又は交流電気鉄道システムの稼働時にこれら電気鉄道車両の走行に伴う高速現象に対応できるサンプリング間隔を設定してプローブ直流電流密度及びプローブ交流電流密度(両者を総称してプローブ電流密度という)を同時に計測し、その結果を、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準と照査してカソード防食状況を評価することが行われている。プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準としては、下記非特許文献2に記載のものがある。
INTERNATIONAL STANDARD、Petroleum and natural gas industries−Cathodic protection of pipeline transportation systems−Part1:On land pipelines、ISO 15589−1、2003年、p5−6 細川裕司,梶山文夫,中村康朗「プローブ電流密度を指標とした土壌埋設パイプラインのカソード防食管理基準に関する検討」、材料と環境、腐食防食協会、2002年、第51巻,第5号,p221−226
埋設金属体の腐食の中で、迷走電流腐食は最も激しい腐食として位置付けられており、先ずその腐食の兆候を把握(リスク把握)し、さらに兆候のカソード防食状況に及ぼす影響度を評価(リスク評価)し、この影響度によっては適切且つ迅速な対策を講じること(リスク低減)が必要になる。ここでいう迷走電流腐食は、迷走電流が直流の場合の直流迷走電流腐食と、迷走電流が交流の場合の交流迷走電流腐食とを分けて考えることができるが、以後の説明で単に「迷走電流腐食」とした場合には、直流迷走電流腐食又は交流迷走電流腐食或いはその両者の複合現象を総称したものを指すことにする。
この迷走電流腐食のリスク評価には、前述したプローブ電流密度管理が有効であるが、プローブの設置には設置孔の掘削等、施工上の負担を強いられるだけでなく、一つの防食対象物に多数のプローブを設置した場合にはプローブにカソード防食電流が多量に流入するので、防食対象物のカソード防食効率が低下する問題があり、迷走電流腐食リスクの有無が明確でない段階でプローブ電流密度管理を行うことは適切でない。
一方、従来の金属対電解質電位による管理は、ローパスフィルタを内蔵している直流電圧計が用いられ、低周波数成分のみの静的な計測値を防食電位と比較する管理であるため、高速電気鉄道車両の走行のような高速現象、高圧交流送電線や交流電気鉄道車両の走行のような交流現象を把握することはできず、防食状況の時間的な変化を適正に評価することができなかった。
すなわち、例えば、図3に示すように、埋設金属体が直流又は交流電気鉄道施設或いは高圧交流送電線等の影響を受けて金属対電解質電位が時間的に変動している場合には、計測された時間平均値が防食電位以下であっても斜線で示した変動領域で腐食領域又は腐食懸念領域が存在することになり、従来の金属対電解質電位による管理では、このような迷走電流腐食の兆候を見逃してしまうことになる。
また、従来は、防食対象の埋設金属体の周辺環境を調査して、防食対象物の周辺に直流又は交流電気鉄道施設等が存在する場合に、迷走電流腐食の懸念ありと判断してプローブ電流密度管理を行っていた。しかしながら、例えば、交流誘導の影響等は防食対象物との距離がある程度離れている場合でも大きく影響することがあり、また、一般に防食対象の埋設金属体構造物は長期の管理期間を要するので、周辺環境調査を行った後に新たな電気鉄道施設の建設等によって環境変化が起きることも十分に考えられ、周辺環境の調査のみでは迷走電流腐食のリスクを適正に把握することができなかった。また、周辺環境の調査では定量的なリスク把握ができないため、安全サイドの判断をせざるを得ず、無駄なプローブ設置・計測評価によって過剰な設備投資になる懸念もあった。
特に、埋設パイプラインにおけるプローブ電流密度計測は、埋設パイプラインと直流又は交流電気鉄道輸送路や高圧交流送電線等との予め設定された離隔距離範囲内、及び高圧交流送電線との設定された並行区間内にあるターミナルボックスを対象にして行われている。しかしながら、埋設パイプラインが迷走電流腐食リスクを有するか否かは、計測評価対象の埋設パイプラインと他の埋設金属体との配設関係、土壌等の電解質の不均質な電気抵抗率、或いは回生制動車両による電気鉄道車両の運行系統、近接する複数の送電系統等が諸々の支配因子となる。これらの支配因子は、判断基準となる固有値を設定することが実質的に不可能であるから、コンピュータシミュレーションによって埋設パイプラインの迷走電流腐食リスク地点を特定することができない。そうなると、設定された離隔距離範囲外や並行区間外のターミナルボックスにおいて、埋設パイプラインの迷走電流腐食リスクを見逃すことが起こり得る。
また、図4に示すように、直流電気鉄道車両の走行により発生するレール漏えい電流が、この電流発生地点近傍の埋設パイプラインP(塗覆装:C)における塗覆装欠陥部Cp1に流入し、そこから離れた遠方の塗覆装欠陥部Cp2から電解質中に流出し埋設パイプラインが腐食するという直流迷走電流腐食リスクが考えられる。近年の電気抵抗率の高い塗覆装ほど、このような直流迷走電流腐食リスク地点(図4における塗覆装欠陥部Cp2の地点)は、レール漏えい電流発生地点からかなり遠方になる可能性がある。これに対して、現状は、懸念される直流又は交流迷走電流腐食発生源(レール,高圧交流送電線,等)からある離隔距離を超えると金属対電解質電位(管対地電位)管理となっており、現状の金属対電解質電位管理では、前述した現象による迷走電流腐食リスクを見逃すことになる。
一方、金属対電解質電位の時間的変動を計測して埋設金属体の迷走電流腐食リスクを評価しようとした場合、計測値と基準値との関係を如何に設定するかが問題になる。すなわち、防食電位(金属対電解質電位を指標としたカソード防食基準)と照査すべき金属対電解質電位の計測値は、埋設金属体とその周辺の電解質との界面において生じる電位であって、前述した照合電極は埋設金属体と周辺電解質との界面直近に設置されなければならない。しかしながら、防食対象の埋設金属体は地下の所望の深さ(埋設パイプラインの場合は通常地下1.2m以上)に埋設されているので、照合電極を前述の界面近くに設置することは実際上不可能であり、金属対電解質電位は前述したように地上に設置された照合電極を用いて計測されている。そのため、計測値にカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)が含まれることになり、それを見込んだカソード防食基準の値を如何に設定するかが問題になる。また、時間変動する金属対電解質電位をどのように捉えて基準値と比較するかも問題になる。
また、金属対電解質電位の時間変動の計測から迷走電流腐食の兆候を定量的に把握できた場合に、この兆候の把握から全てのケースを一律に扱ってプローブ電流密度管理に移行するのでは、扱う対象が多数存在する場合に、より危険度の高い対象物への対処が遅れることになりかねない。したがって、金属対電解質電位による計測評価で迷走電流腐食リスクの原因を大まかに掴んで、それに応じて適切な対応(優先順位の設定等)をすることが好ましい。
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであって、地上の照合電極と防食対象の埋設金属体との間で簡易に計測することができる金属対電解質電位によって、埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を定量的に把握することができること、迷走電流腐食の兆候を把握した場合に、迷走電流腐食リスクの大凡の原因を把握し、それに応じた適切な対応を可能にすること、等が本発明の課題である。
本発明は、この課題を解決するために以下に示す特徴を有する。
一つには、塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理方法であって、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、所望の計測期間で計測された前記金属対電解質電位の最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の計測値の時系列データを取得し、前記最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定し、該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別することを特徴とする。
また一つには、塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理方法であって、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、この計測値の時系列データを一時的に保存する工程と、前記単位計測期間の一期間又は複数期間を基本計測期間に設定して、該基本計測期間毎に前記単位計測期間毎の計測値の平均値及び最大値を少なくとも求める演算処理を行い、該演算処理の結果を保存すると共に、前記基本計測期間内での最大値を含む前記単位計測期間内の前記時系列データを保存する工程と、前記基本計測期間の一期間又は複数期間を含む計測期間で、前記演算処理によって求めた平均値及び最大値から前記計測期間の平均値及び最大値を求め、この最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の前記時系列データを取得する工程と、前記計測期間の平均値及び最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する工程と、該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、取得された前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する工程と、を有することを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記サンプリング間隔を0.1msecに設定したことを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記カソード防食基準は、前記埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも前記塗覆装欠陥部から前記照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)を見込んで許容最大値を設定し、前記計測期間の最大値が前記許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定することを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記許容最大値は、前記IRドロップに加えて、計測器の精度誤差電圧、前記照合電極の温度特性誤差電位を見込んで設定されることを特徴とする。
また一つには、前記許容最大値のマイナス電位側に安全率と過防食防止を考慮した基準値(平均基準値)を設定し、前記計測期間の平均値を当該基準値(平均基準値)程度にすることを合格判定に加えることを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記判別は、取得された前記時系列データ内の値で、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し且つ最大値と平均値の差と平均値と最小値の差が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合に直流迷走電流の影響と判別することを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記判別は、取得された前記時系列データ内の値で、平均値よりプラス電位側の時間積分とマイナス電位側の時間積分が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合は直流迷走電流の影響と判別することを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記判定によって迷走電流腐食の兆候ありと判定された埋設金属体の防食管理をプローブ電流密度管理に移行することを特徴とする。
また一つには、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理方法において、前記判別で交流迷走電流の影響が確認された場合に、取得された前記時系列データにおける最大値Emaxと最小値Etminから次式で求められる交流管対地電位ACPSを基準値と比較して、交流管対地電位ACPSが基準値を超える対象物をプローブ電流密度管理の最優先対応にすることを特徴とする。
Figure 0005060052
また、塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理装置であって、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測する手段と、所望の計測期間で計測された前記金属対電解質電位の最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の計測値の時系列データを取得する手段と、前記最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する手段と、該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段とを備えることを特徴とする。
また、塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理装置であって、前記金属対電解質電位の計測処理を行う計測処理部と、計測値に基づく評価を行う評価部と、を備え、前記計測処理部は、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、この計測値の時系列データを一時的に保存する手段と、前記単位計測期間の一期間又は複数期間を基本計測期間に設定して、該基本計測期間毎に前記単位計測期間毎の計測値の平均値及び最大値を求める演算処理を行い、該演算処理の結果を保存すると共に、前記基本計測期間内での最大値を含む前記単位計測期間内の前記時系列データを保存する手段と、を備え、前記評価部は、前記基本計測期間の一期間又は複数期間を含む計測期間で、前記演算処理によって求めた平均値及び最大値から前記計測期間の平均値及び最大値を求め、この最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の前記時系列データを取得する手段と、前記計測期間の平均値及び最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する手段と、該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、取得された前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段と、を備えることを特徴とする。
また、前述した特徴を有するカソード防食された埋設金属体の防食管理装置において、前記評価部は、取得した前記時系列データを時刻軸と金属対電解質電位軸のグラフで表示する表示手段を備えることを特徴とする。
また、本発明は、塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理プログラムであって、前記金属対電解質電位の計測処理を行う計測処理部に接続されるコンピュータを、計測期間の平均値及び最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する手段、該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、前記最大値を含む商用周波数の1周期に相当する単位計測期間の時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段、として機能させるためのカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム、或いはこのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体であり、このプログラムによって、前述した防食管理方法の各構成要件を実現することを特徴とする。
このような特徴を有する本発明によると、以下の作用が得られる。
地上に設置した照合電極と防食対象の埋設金属体との間の金属対電解質電位を計測するに際して、商用周波数(50Hz又は60Hz)の1周期に相当する単位計測期間(20msec等)毎に、設定されたサンプリング間隔で計測された金属対電解質電位の時系列データから、計測値の最大値を求め、この単位計測期間を繰り返した計測期間全体での最大値と、その最大値を含む単位計測期間内の時系列データ(波形)から、埋設金属体の迷走電流腐食リスクを評価する。
そして、計測期間全体での最大値とカソード防食基準と照査することによって、埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定するので、時間的な変動を伴う金属対電解質電位に対しても腐食領域の発生を見逃すことなく、定量的に迷走電流腐食リスクを評価することができる。
更に、判定結果が兆候ありと判定された場合には、前述した最大値を含む単位計測期間内の時系列データ(波形)に基づいて、波形が単位計測期間(商用周波数の1周期に相当)内で正弦波の波形を示す場合には、交流迷走電流腐食リスクがあると判別し、波形が正弦波から崩れたものである場合には、直流迷走電流腐食リスクがあると判別する。このように、迷走電流腐食リスクの原因を大まかに捉えることができるので、多数存在する防食管理対象物に対して、金属対電解質電位管理からプローブ電流密度管理に移行する際の優先順位や対応の緊急性等の目安にすることができる。
更に具体的には、単位計測期間毎の時系列データを一時的に保存し、単位計測期間の一期間又は複数期間を基本計測期間に設定して、この基本計測期間毎に一時保存した時系列データから単位計測期間毎の平均値及び最大値(及び必要に応じて最小値)を求める演算処理を行う。
そして、基本計測期間毎に求めた平均値と最大値を保存すると共に、その最大値を含む単位計測期間内の時系列データを保存する。すなわち、基本計測期間毎の最大値を含む単位計測期間内の時系列データが保存された後は、一時保存した時系列データは破棄することができ、また、最終的には計測期間全体での最大値を含む単位計測期間内の時系列データが得られれば良いので、基本計測期間毎の演算処理で最大値が更新される度に既に保存されている時系列データを破棄して新たな時系列データを保存することができる。これによって、長期間の計測期間に対してもデータ保存に要するメモリ容量を最小限に抑えることができる。
また、最大値だけでなく平均値を用いた迷走電流腐食リスクの評価を加えることで、更に信頼性の高い評価を行うことが可能になる。
更に、単位計測期間内でのデータサンプリング間隔を0.1msecに設定することで、埋設金属体が直流又は交流電気鉄道車両の走行などによる高速現象や交流誘導の影響を受けている場合にも、これらに伴う金属対電解質電位の時間変動を的確に捉えることができ、また、適度のサンプリング間隔を有することでフィールドでのノイズによる誤判定を防ぐことができる。
また、計測期間全体での最大値と比較がなされるカソード防食基準は、計測値が地上の照合電極と埋設金属体との間の金属対電解質電位であるため、カソード防食電流によるIRドロップを考慮に入れた基準値の設定が必要になる。本発明では、カソード防食基準として、埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも塗覆装欠陥部から照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップを見込んで許容最大値を設定し、計測期間の最大値が許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定しているので、簡易な地上の照合電極を用いた計測であっても、信頼性の高い迷走電流腐食リスクの評価が可能になる。
更に、前述の許容最大値を、IRドロップに加えて、計測器の精度誤差電圧や照合電極の温度特性誤差電位等を見込んで設定することで、実際の計測に即したより信頼性の高い迷走電流腐食リスクの評価が可能になる。
また、計測期間全体での最大値が前述した許容最大値以下であっても、金属対電解質電位の計測値の平均的な値がプラスよりの(許容最大値に近い)場合には、今後の環境変化などで直ぐに最大値が許容最大値を超えてしまうことが予測される。また、金属が鋼の場合、金属対電解質電位の計測値の平均的な値がかなりマイナスの値になると、塗覆装の損傷リスク且つ又は金属の水素割れリスクが高くなる過防食現象が生じることが懸念される。これに対応するために、記許容最大値のマイナス電位側に安全率と過防食防止を考慮した基準値(平均基準値)を設定し、計測期間の平均値を当該基準値(平均基準値)程度にすることを合格判定に加える。これによって、より信頼性の高い防食状況の健全性評価が可能になる。
前述した時系列データ(波形)を用いた迷走電流腐食リスクの原因判別は、この時系列データの波形を時刻軸と金属対電解質電位軸のグラフで表示することで、時系列データの変動が正弦波に近い場合には交流迷走電流腐食リスク、正弦波と異なる場合には直流迷走電流腐食リスクと、視覚的に判別することができる。しかしながら、視覚的な判別では人為的な判別のばらつきが生じるので、電算処理による演算結果からこれらの判別をすることが必要である。
その一手法として、取得された時系列データ内の値で、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し且つ最大値と平均値の差と平均値と最小値の差が等しい場合に交流迷走電流腐食リスクありと判別し、そうでない場合に直流迷走電流腐食リスクありと判別する。これによると、簡易な演算処理での判別が可能になる。
また、他の手法としては、取得された時系列データ内の値で、平均値よりプラス電位側の時間積分とマイナス電位側の時間積分が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合は直流迷走電流の影響と判別する。これによると、より詳細な判別が可能になる。
前述した計測期間全体での最大値、又は計測期間全体での最大値と平均値による迷走電流腐食リスクの評価によって、迷走電流腐食の兆候ありと判定された場合(最大値>許容最大値、或いは最大値>許容最大値且つ平均値>平均基準値)には、現状の埋設金属体に対する金属対電解質電位管理からプローブ電流密度管理に移行して、プローブ電流密度計測によるより詳細な評価が行われる。
この際に、多数存在する防食対象の埋設金属体に対して、プローブ電流密度管理に移行する優先順位を定量的に設定することが重要になる。本発明では、特に交流迷走電流腐食リスクが確認された場合に、「交流管対地電位ACPS」を前述した時系列データの最大値と最小値から求め、この交流管対地電位ACPSが基準値を超える場合をプローブ電流密度管理への最優先対応にしている。
以上説明したように、本発明の前述した特徴によると、地上の照合電極と防食対象の埋設金属体との間で簡易に計測することができる金属対電解質電位によって、埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を定量的に把握することできる。また、迷走電流腐食の兆候を把握した場合に、迷走電流腐食リスクの大凡の原因を把握し、それに応じた適切な対応を行うことができる。
また、現状では、迷走電流腐食発生源となる直流又は交流電気鉄道施設等からある離隔距離を超えると金属対電解質電位管理になるが、本発明によると、金属対電解質電位計測で迷走電流腐食リスクを把握・評価することができるので、例えば、直流電気鉄道車両の走行により発生するレール漏えい電流が、この電流発生地点近傍の埋設パイプラインにおける塗覆装欠陥部に流入し、そこから離れた遠方の塗覆装欠陥部から電解質中に流出し埋設パイプラインが腐食するという直流迷走電流腐食リスクに対しても、十分に対応することが可能になる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の防食管理対象である埋設金属体は、各種の埋設パイプラインや他の埋設構造物を含むものであり、塗覆装が施され且つカソード防食がなされているものである。
図5によって、本発明の実施形態に係る防食管理方法の概要を説明する。本発明の実施形態に係る防食管理方法は、地上に設置した照合電極(例えば、飽和硫酸銅電極等)と埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて、埋設金属体のカソード防食状況を評価するものであり、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、計測値から最大値等を求める演算処理を行う計測・処理工程S1、所望の計測期間で計測された金属対電解質電位の最大値を含む単位計測期間を抽出して、この単位計測期間内の計測値の時系列データを取得するデータ取得工程S2、計測期間内の金属対電解質電位の計測値から求められる最大値をカソード防食基準と照査することによって、埋設金属体の迷走電流腐食の兆候(迷走電流腐食リスク)を判定する迷走電流腐食リスク判定工程S3、前述のデータ取得工程S2で取得された時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4を有する。
防食管理方法の開始から、前述した計測・処理工程S1、データ取得工程S2を経て、迷走電流腐食リスク判定工程S3が実行され、迷走電流腐食の兆候無しの場合には管理を終了し、迷走電流腐食の兆候ありの場合には前述した迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4が実行される。
このような実施形態に係る防食管理方法によると、金属対電解質電位の計測期間内における最大値を求めて、これをカソード防食基準と照査することで迷走電流腐食リスクを評価しているので、金属対電解質電位が時間的に変動する場合であっても腐食領域又は腐食懸念域の存在を確実に捉えることが可能になり、簡易に計測できる地上の照合電極基準における金属対電解質電位の計測によって、時間的に変化する埋設金属体の迷走電流腐食リスクを評価することができる。また、必要最小限の時系列データの取得によって、迷走電流腐食リスクが直流迷走電流に起因するものか交流迷走電流に起因するものかを判別することができるので、軽装備の装置によって、大まかな迷走電流腐食リスクの原因把握が可能になり、その後の対応を適切に判断することができる。
図6は、前述した計測・処理工程S1のより詳細な具体例を示した説明図である。計測・処理工程S1が開始されると、金属対電解質電位計測値のサンプリングがなされ(S11)、商用周波数(50Hz又は60Hz)の1周期(50Hzの場合は20msec、60Hzの場合は約16.67msec)に相当する単位計測期間内であれば(S12)、当該期間内の時系列データが一時保存される。
ここで単位計測期間は商用周波数の1周期丁度である必要はなく、この1周期が含まれる期間を設定すればよい。また、計測値のサンプリング間隔は、予想される迷走電流腐食リスク原因の高速現象に対応でき且つ計測フィールドでの計測ノイズの影響を受け難い間隔が設定されるが、直流又は交流電気鉄道車両の走行や交流誘導電圧の影響を把握するためのサンプリング間隔としては、0.1msecが適切である。また、ここでいう時系列データとは、サンプリング時刻tnとそのサンプリング時刻tnでの計測値Eが対応したデータE(tn)を時系列順に並べたものであり、金属対電解質電位の時間変動を示す波形に相当するものである。
一つの単位計測期間(例えば20msec)が経過すると、この単位計測期間(20msec)分の時系列データE(tn)が一時保存されることになり、この処理が基本計測期間内で続けられることになる(S14)。基本計測期間は、単位計測期間の一期間又は複数期間によって設定されるものであるが、単位計測期間の一期間毎に設定する場合には、実質的に基本計測期間を設定しないことと同等になる。
そして、単位計測期間毎に一時保存された時系列データE(tn)から最大値,平均値,必要に応じて最小値を求める演算処理がなされる(S15)。基本計測期間を複数の単位計測期間毎に設定している場合には、単位計測期間毎に最大値,平均値,必要に応じて最小値を求めて一時保存し、複数の単位計測期間から求めたそれぞれの最大値,平均値,最小値から基本計測期間毎の最大値,平均値,最小値を求める。
そして、求められた最大値,平均値,或いは最小値が保存され(S16)、最大値が得られた時刻tmaxを含む単位計測期間が抽出され、その期間内の時系列データE(tn)が保存される(S17)。
ここまでの処理を計測期間が終了するまで繰り返し(S18)、S16における最大値,平均値,或いは最小値の保存は、最大値と最小値に関しては、これらが更新される度に保存し、平均値に関してはその時点の計測開始からの平均値を求めて保存する。また、S17では、最大値が更新される度に保存される時系列データも更新されることになる。
したがって、計測期間が終了した段階(S19)では、計測期間全体での金属対電解質電位計測値の最大値,平均値,必要に応じて最小値が保存されており、その最大値が得られた時刻tmaxを含む単位計測期間内の時系列データが保存されていることになる。
データ取得工程S2では、図7に示すように、最終的に保存された最大値,平均値,必要に応じて最小値、即ち、計測期間全体での金属対電解質電位計測値の最大値,平均値,最小値が取得される(S21)。また、最終的に保存・更新された単位計測期間内の時系列データ、即ち、計測期間全体での最大値を得た時刻を含む単位計測期間内の時系列データが取得される(S22)。
そして、データ取得工程S2で取得された最大値と平均値に基づいて迷走電流腐食リスク判定工程S3が実行され、データ取得工程S2で取得された時系列データに基づいて迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4が実行される。
図8(a)は迷走電流腐食リスク判定工程S3を示すもので、取得した最大値,平均値(又は最大値のみ)とカソード防食基準との照査がなされ、最大値と平均値の一方(又は最大値)が基準を超えている場合には、次の迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4の実行に移り、最大値と平均値の両方(又は最大値)が基準内である場合には処理を終了する(S32)。
図8(b)は迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4を示すもので、取得した時系列データの波形が正弦波か否かの判別がなされ、正弦波とみなされない場合には、直流迷走電流腐食リスクありと判別され(S42)、正弦波とみなされた場合には、交流迷走電流腐食リスクありと判別される(S43)。
この実施形態に係る防食管理方法によると、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、交流迷走電流腐食リスクを把握する上で必要最小限の時系列データを取得するようにしている。また、迷走電流腐食リスクの原因判別工程で採用する時系列データは、計測期間全体での最大値を含む一つの単位計測期間内の時系列データであるため、長期の計測期間に対しても多量のデータ保存を必要としない。
また、単位計測期間毎に前述の時系列データを一時保存して金属対電解質電位計測値の最大値,平均値,必要に応じて最小値を求め、最大値が更新されない場合は、最大値,平均値,最小値を求めた時系列データを破棄することができるので、時系列データを保存するために必要なメモリ容量としては、単位計測期間内の時系列データ(単位計測期間が20msecでサンプリング間隔が0.1msecの場合は200個のデータ)を一時保存及び保存・更新するために必要な容量が有れば良く、長期の計測期間に対しても大きなメモリ容量を必要としない。
図9は、迷走電流腐食リスク判定工程S3と迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4の具体例を説明する説明図である。
迷走電流腐食リスク判定工程S3におけるカソード防食基準では、許容最大値Eperを設定する。許容最大値Eperは防食管理対象の埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも塗覆装欠陥部から照合電極までのIRドロップを見込んで設定され、更に必要に応じて、計測器の精度誤差電圧、照合電極の温度特性誤差電位を見込んで設定することもできる。即ち、
許容最大値Eperは防食管理対象物とその設置状況、或いは計測設備の状況によって決まる基準定数である。
この例の迷走電流腐食リスク判定工程S3では、データ取得工程S2で取得された時系列データの最大値Emaxを許容最大値Eperと照査し、図9(a)に示すように、最大値Emaxが許容最大値Eperを超えた場合(Emax>Eper)に迷走電流腐食の兆候あり(不合格)と判定する。また、同図(b)に示すように、最大値Emaxが許容最大値Eper以下の場合(Emax≦Eper)にカソード防食基準に合格していると判定する。
これによると、計測期間内の金属対電解質電位計測値の最大値が許容最大値以下の場合に合格と判定するので、金属対電解質電位の時間的な変動を考慮しても合格判定が出された場合には腐食領域又は腐食懸念領域が存在しないことになり、時間変動に伴って生じる腐食領域又は腐食懸念領域を見逃すことがない。
また、最大値のみの判定では、金属対電解質電位の全般的な大小を判断指標にすることができない。そこで、許容最大値Eperのマイナス電位側に安全率と過防食防止を考慮した基準値(平均基準値)を設定し、計測期間の平均値がこの平均基準値程度であることを合格判定に加える。この場合には、最大値Emaxが許容最大値Eper以下(Emax≦Eper)、且つ計測期間の平均値が平均基準値程度の場合を合格とし、それ以外の場合を不合格とする。したがって、図9(a)示す例では、平均値は平均基準値に近いが、最大値Emaxが許容最大値Eperを超えているので不合格になる。
最大値Emaxが許容最大値Eper以下であっても、平均値が許容最大値Eperに安全率を見込んだ平均基準値を超えているような場合は、今後の環境変化等で直ぐに腐食領域又は腐食懸念領域が発生することが予測できる。また、金属対電解質電位の平均値が大きくマイナス値になると、塗覆装の損傷リスク且つ又は水素割れリスクが高くなる過防食現象が生じる懸念がある。これらの状況を適正に評価するために、前述した平均基準値を設定し、計測期間の平均値が平均基準値程度になる場合に合格判定とする。平均基準値程度の度合は防食管理対象物やその設置状況或いはカソード防食状況によって適宜設定することができる。これによって、埋設金属体の健全な防食状況を更に厳密に把握することができる。
そして、迷走電流腐食リスク判定工程S3で不合格判定がなされた場合には、迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4が実行される。この原因判別工程S4は、データ取得工程S2で取得された時系列データ(波形)のグラフ表示(時刻軸と金属対電解質電位軸のグラフ表示;図9参照)を目視判定して、この波形が正弦波か否かで判断することも可能であるが、これによると人為的な判定のばらつきが起きる可能性があるので、電算処理の演算結果による判別を行う。
一つの判別方法は、図9(a)に示すように、データ取得工程S2で取得された時系列データ内の値で、最大値Emaxを示した時刻tmaxと最小値Etminを示した時刻tminとの時差taが商用周波数の1周期の1/2(商用周波数が50Hzの場合には10msec)に該当し且つ最大値Emaxと平均値Etave(単位計測期間内の時系列データにおける平均値)の差E1と最小値Etminと平均値Etaveの差E2の絶対値が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合に直流迷走電流の影響と判別する。即ち、電算処理によって、ta≒10(msec)、且つ、E1≒E2の場合に交流迷走電流腐食ありと判別し、それ以外の場合に直流迷走電流腐食リスクありと判別する。
また、もう一つの判別方法は、図9(a)に示すように、データ取得工程S2で取得された時系列データ内の値で、平均値よりプラス電位側の時間積分M1とマイナス電位側の時間積分M2が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合は直流迷走電流の影響と判別する。即ち、電算処理によって、ta≒10(msec)、且つ、M1≒M2の場合に交流迷走電流腐食ありと判別し、それ以外の場合に直流迷走電流腐食リスクありと判別する。
これらの判別方法によると、人為的な判別のばらつきがない客観的な判別が可能であり、前者の方法では、簡便な演算処理での判定が可能になり、後者の方法では、比較的詳細な判定が可能になる。
図10は、防食管理対象の埋設金属体の一例として埋設パイプラインを取り上げ、前述した防食管理方法を実現する防食管理装置の構成例を示した説明図である。以後の説明では、防食管理対象を埋設パイプラインとして説明するが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、以後の説明は他の埋設金属体に対しても同様に適用可能である。また以後、防食管理対象を埋設パイプラインとすることで、「金属対電解質電位」を「管対地電位」と言い換えて説明する。
図10における埋設パイプラインPは塗覆装Cが施され且つ外部電源方式等によるカソード防食が施されているものである。この埋設パイプラインPには所定の間隔(通常250m間隔)で埋設パイプラインPに沿った地上部にターミナルボックスBが形成されており、このターミナルボックスB内の地上部に照合電極(例えば、飽和硫酸銅電極)Ecが設置されている。そして、埋設パイプラインPの表面が導線2の一端に接続され、照合電極Ecが導線3の一端に接続されて、導線2,3の他端が防食管理装置1の計測部11に接続されている。
防食管理装置1は、埋設パイプラインPの防食状況を照合電極Ecと埋設パイプラインPとの間の管対地電位Eの計測値に基づいて評価するものであって、前述した防食管理方法を実現するために、商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に管対地電位Eを計測する手段と、所望の計測期間で計測された管対地電位Eの最大値を含む単位計測期間を抽出して、この単位計測期間内の計測値の時系列データを取得する手段と、最大値をカソード防食基準と照査することによって、埋設パイプラインPの迷走電流腐食の兆候を判定する手段と、この判定の結果が兆候ありと判定された場合には、時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段とを備える。
更に具体的に説明すると、防食管理装置1は、管対地電位Eの計測処理を行う計測処理部10と計測値に基づく評価を行う評価部20とからなる。そして、計測処理部10は、計測部11,演算処理部12,データ記憶部13を少なくとも具備し、評価部20は、計測処理部10に対してノートパソコン等の携帯情報処理端末21を接続することによって構成され、その機能として、データ取得手段22,迷走電流腐食リスク判定手段23,迷走電流腐食リスクの原因判別手段24を有している。ここでは、ターミナルボックス内で導線2,3に接続される計測処理部10と携帯情報処理端末21によって構成される評価部20が分離可能な構成のものを示しているが、これに限らず両者が一体の装置を構成するものであってもよい。
ここで、計測処理部10は前述した計測・処理工程S1を実行する機能を有するものであり、評価部20は、前述したデータ取得工程S2をデータ取得手段22によって、迷走電流腐食リスク判定工程S3を迷走電流腐食リスク判別手段23によって、迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4を原因判別手段24によって、それぞれ実行する機能を有するものである。
その動作を更に具体的に説明する。図11は、前述した計測処理部10の動作を説明する説明図である。ここでは、サンプリング間隔を0.1msecに設定し、50Hzの商用周波数に対して、20msecの単位計測期間を設定すると共に、1基本計測期間として11secを設定した例を説明する。計測処理部10では、演算処理部12からの指令信号によって計測部11が管対地電位Eのサンプリングを行い、サンプリングされた計測値及び演算処理部12による演算処理結果がデータ記憶部13に保存される。
図11(a)は、計測処理部10の動作を示したタイムチャートである。演算処理部12では、計測予約された計測開始時刻になると最初の1基本計測期間の処理が開始され、その最初に1secの初期待機期間<1>が設けられる。この初期待機期間<1>よって電源投入後の計測部11における回路の安定化を図り、その後にサンプリング間隔0.1msecで単位計測期間20msec毎の計測値サンプリングを行う単位計測<2>が実行される。ここでは、計測開始から1sec後に開始される1番目の単位計測期間から順次499番目の単位計測期間までの単位計測が実行されることになり、単位計測期間20msec毎の200個の計測値が時系列データとしてデータ記憶部13に一時的に保存される。
図11(b)は、単位計測期間内でサンプリングされる計測値の時系列データE(tn)を概念的に示したものであるが、単位計測期間の開始(t0)からサンプリング時刻tn(t1,t2,…t199,t200)とそれに対応する計測値E(tn)(E(t1),E(t2),…,E(t199),E(t200))がそれぞれセットで時系列順に保存されることになる。
そして、一時保存された単位計測期間毎の時系列データE(tn)に対して演算処理部12で以下の内容の演算処理<3>が実行される。
[処理1]単位計測期間毎で、E(t1),E(t2),…,E(t199),E(t200)から最大値Emaxを抽出・保存する共に、その最大値Emaxを得た時刻tmaxを抽出・保存する。
[処理2]単位計測期間毎で、E(t1),E(t2),…,E(t199),E(t200)から最小値Eminを抽出・保存すると共に、その最小値Eminを得た時刻tmimを抽出・保存する。
[処理3]単位計測期間毎で、E(t1),E(t2),…,E(t199),E(t200)から平均値Eaveを求める。
更に、1基本計測期間の最後に、演算処理<4>が実行され、その演算処理<4>では、以下の処理がなされる。
[処理4]単位計測期間毎に抽出した最大値Emax,最小値Emin,平均値Eaveから1基本計測期間の最大値Emax,最小値Emin,平均値Eaveを求める。
[処理5]1基本計測期間の最大値Emaxを得た時刻tmaxを抽出して、その時刻を含む単位計測期間内の時系列データEmax(tn)を保存する。
この演算処理<4>が実行されると、先の単位計測<2>及び演算処理<3>で一時保存又は保存されたデータは実質的に破棄される。
そして、次の基本計測期間<5>では、前述の単位計測<2>及び演算処理<3>が同様に実行されることになる(初期待機期間<1>は設けない)が、その基本計測期間<5>の最後になされる演算処理<4>では、その基本計測期間での最大値Emaxが前の基本計測期間での最大値Emaxより大きい場合だけ、保存されている最大値Emax及び時系列データEmax(tn)をこの基本計測期間での値に更新する。また、その基本計測期間での最小値Eminが前の基本計測期間での最大値Eminより小さい場合だけ、保存されている最小値Eminをこの基本計測期間での値に更新する。また、平均値Eaveは以前の基本計測期間全体の平均値を求めてこれに更新する。
このようにして計測処理部10は、以上の計測・処理を基本計測期間毎に繰り返し、計測期間全体が終了した時点では、管対地電位E計測値の計測期間全体での最大値,最小値,平均値と、計測期間全体での最大値が得られた時刻を含む単位計測期間内の時系列データEmax(tn)をそれぞれデータ記憶部13に記憶する。
次に、評価部20の動作を説明する。図12は、評価部20の動作とそれに基づく防食管理手順を説明する説明図である。
先ず、データ取得手段22によって、前述の計測処理部10で得た管対地電位E計測値の計測期間全体での最大値Emax,最小値Emin,平均値Eaveと、計測期間全体での最大値Emaxが得られた時刻を含む単位計測期間内の時系列データEmax(tn)の取得が実行される(S100:データ取得)。
そして、迷走電流腐食リスク判定手段23によって、最大値Emaxと平均値Eaveとをカソード防食基準と照査してカソード防食基準に合格しているか否かのリスク判定が行われる(S110)。
ここで、埋設パイプラインにおけるカソード防食基準の具体例を説明する。ISO 15589−1:2003(E)に定める防食電位は、一例として、−950mVCSE(VCSE:飽和硫酸銅電極基準電位)と規定されている(パイプラインが硫酸塩還元菌等の悪影響を及ぼす微生物が多く生息する嫌気性環境に有る場合の規定)。この防食電位に対応する管対地電位は、照合電極(飽和硫酸銅電極)を埋設パイプラインと土壌との界面に設置して計測すべきものであるが、ターミナルボックス内では、照合電極を地表面に設置しており、埋設パイプラインは地表面から通常1.2m以上の深さに設置されているから、カソード防食電流Iと土壌抵抗Rの積であるIRドロップ分を150mVマイナス側に見込み、更に、計測器の精度誤差電圧20mV、照合電極(飽和硫酸銅電極)の温度特性誤差電位30mVを見込んで、−950−(150+20+30)=−1150(mVCSE)を、管対地電位を指標としたカソード防食基準と考えた。
そして、この−1150mVCSEを許容最大値Eperとし、更に、これに安全係数分の150mVを見込んだ−1300mVCSEを平均基準値として、前述した最大値Emax≦−1150mVCSE(許容最大値)且つ、平均値Eaveが−1300mVCSE(平均基準値)程度の場合をカソード防食基準に合格、最大値Emax>−1150mVCSE且つ又は平均値Eaveが−1300mVCSEから離れている場合をカソード防食基準に不合格とする。
カソード防食基準に合格した場合は、例えば、携帯情報処理端末21の表示画面21Aに「判定:合格○」を表示し、実質的な対策が不必要であることを明示する(S111)。
これに対して、カソード防食基準に不合格の場合には、迷走電流腐食リスクの原因判別手段24によって、取得された時系列データEmax(tn)の波形解析がなされる(S120)。ここでは、先ず、単位計測期間20msec内の時系列データEmax(tn)における最大値Emax(計測期間全体での最大値Emaxと一致)と最小値Etmin(計測期間全体での最小値Eminとは必ずしも一致しない)を抽出し、その差が小さいにも拘わらずカソード防食基準に不合格となる場合を、防食電流不足リスクありとして不合格と判定する。すなわち、基準値(例えば600mV)と{(最大値Emax)−(最小値Etmin)}とを比較し(S121)、600mV<{(最大値Emax)−(最小値Etmin)}とならない場合、携帯情報処理端末21の表示画面21Aに「判定:不合格×(防食電流不足リスクあり)」を表示する。これに対する対処としては、メタルタッチ(埋設パイプラインと他の金属対との接触)、塗覆装劣化等の観点から詳細調査が行われ(S123)、調査結果に基づく対策指示がなされ(S124)、それに対する効果確認(S125)が行われることになる。
一方、前述の最大値Emaxと最小値Etminとの差が大きい場合、すなわち、600mV<{(最大値Emax)−(最小値Etmin)}となる場合には、迷走電流腐食リスクありと判断して、時系列データEmax(tn)の波形が商用周波数の周期と一致する正弦波であるか否かの判別がなされる(S130)。
この判別は、商用周波数50Hzでは、前述した図9(a)における、ta≒10(msec)、且つ、E1≒E2、或いは、ta≒10(msec)、且つ、M1≒M2が求められ、その結果がYESの場合は、交流迷走電流腐食リスクありと判別し(S131)、その結果がNOの場合には、直流迷走電流腐食リスクありと判別する(S132)。
交流迷走電流腐食リスクありと判別した場合には、管対地電位管理からプローブ電流密度管理に移行する優先順位を決定するために、交流管対地電位ACPSを基準値(3.0V)と比較する。この交流管対地電位ACPSは、正弦波の波形で時間変動する管対地電位1周期の実効値に相当するものであって、交流理論から次式で求めることができる。
Figure 0005060052
ここで、Emaxは、波形解析の対象である時系列データEmax(tn)における最大値であり、Etminは、時系列データEmax(tn)における最小値である。
そして、交流管対地電位ACPSが基準値(3.0V)以上の場合(ACPS≧3.0V)にはプローブ電流密度管理への移行を最優先し、交流管対地電位ACPSが基準値(3.0V)より小さい場合には、リスクの高い地点(ACPSが基準値に近い地点)から順次プローブ電流密度管理へ移行することにする(S140)。
すなわち、時系列データEmax(tn)から交流管対地電位ACPSを求め、ACPS<3.0VがNOの場合には、例えば、携帯情報処理端末21の表示画面21Aに「判定:不合格×(交流腐食リスクあり、最優先対応)」を表示し(S141)、最優先で、そのターミナルボックス付近にプローブを設置して、プローブ電流密度を計測する(S143)。また、ACPS<3.0VがYESの場合には、例えば、携帯情報処理端末21の表示画面21Aに「判定:不合格×(交流腐食リスクあり)」を表示し(S142)、リスクの高い地点より順次プローブを設置し、プローブ電流密度を計測する(S144)。
プローブ電流密度管理に移行後は、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準に合格しているか否かが判定され(S145)、合格の場合には対策不必要と判断され(S146)、不合格の場合は、必要な対策措置指示がなされた後(S147)、効果確認がなされる(S148)。
また、S130での判別の結果が直流迷走電流腐食ありの場合には(S132)、例えば、携帯情報処理端末21の表示画面21Aに「判定:不合格×(直流腐食リスクあり)」を表示し(S133)、その対処として、原因究明のための詳細調査を行った後(S134)、必要な対策措置指示を行う(S135)。その後、プローブ電流密度管理に移行して、プローブを設置し、プローブ電流密度を計測する(S136)。プローブ電流密度管理に移行後は、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準に合格しているか否かが判定され(S137)、合格の場合には対策不必要と判断され(S138)、不合格の場合は、再度原因究明のための詳細調査が行われる(S134)。
ここで、前述した交流管対地電位ACPSの基準値について説明する。
いま、円形の塗覆装欠陥部の接地抵抗をRとすると、Rは次式(1)で表されることが知られている。(W.V.Baeckman,W.Schwenk「Handbuch des kathodischen Korrosionsschutzes,WILEY-VCH Verlag GmbH,1999年」参照)
Figure 0005060052
そして、塗覆装欠陥部の面積Sm2における交流電流密度IAC(A/m2)は、交流管対地電位ACPSを用いて表すと、下記式(2)のようになる。
Figure 0005060052
塗覆装欠陥部の交流迷走電流腐食速度は、この部位の交流電流密度に直接関係するので、(2)式は、塗覆装欠陥部の交流迷走電流腐食速度が、交流迷走電流腐食の駆動力である交流管対地電位ACPSがプラスよりの大きい値であるほど、塗覆装欠陥部の面積が小さいほど、塗覆装欠陥部の環境の電解質の電気抵抗率が低いほど、大きくなることを表している。そこで、前述した非特許文献2に示す交流電流密度の許容最大値70A/m2を用いて、交流電流密度が70A/m2を超えると塗覆装欠陥部の交流迷走電流腐食リスクが高いと判定する。すなわち、交流迷走電流腐食リスクが高い場合を次式(3)で表すことができる。
Figure 0005060052
そこで、交流迷走電流腐食速度が最大となる塗覆装欠陥部の面積S、及び腐食性が大きい電解質の電気抵抗率ρを(3)式に代入すれば、交流迷走電流腐食リスクの極めて高い条件を導き出すことができ、これをもって、プローブ電流密度管理の最優先対応を判定するための交流管対地電位ACPSの基準値にすることができる。
例えば、文献G.Heim,G.Peez「Wechselstrombeeinflussung von erdverlegten kathodisch geschutzten Erdgas-Hochdruckleitungen」,Gas・Erdgas,1992年,第3号,p137−142における交流迷走電流腐食の事例解析結果、文献W.Prinz「AC-Induced Corrosion on Cathodically Protected Pipelines」,UK CORROSION'92,The Institute of Corrosion,1992年,p1−17における交流迷走電流腐食リスク地点における0.5cm2から5cm2の種々の面積を有するプローブの試験結果が示すように、交流迷走電流腐食速度は、塗覆装欠陥部の面積が1cm2で最大になることが知られている。また、塗覆装欠陥部の環境の電解質の電気抵抗率については、電気学会・電食防止研究委員会「電食・土壌腐食ハンドブック」,電気学会,1977年,p31に示すように、電気抵抗率10Ωm以下の土壌中で土壌の腐食性が大きいとされている。そこで、塗覆装欠陥部の面積Sとして10-42(1cm2)、塗覆装欠陥部の環境の電解質の電気抵抗率ρとして10Ωmを(3)式に代入すると、ACPS>3.1となるので、ここから、プローブ電流密度管理の最優先対応と判定するための交流管対地電位ACPSの基準値3.0Vを導き出した。
図13及び図14は、本発明による実測例とこれに基づく評価結果を示す説明図であって、時系列データEmax(tn)の実測例をグラフ表示したものである。
図13は、交流迷走電流腐食リスクありと評価された例であり、高圧交流送電線と並行するターミナルボックスにおいて、飽和硫酸銅電極を照合電極として、管対地電位Eをサンプリング間隔0.1msec、計測期間15分間で計測したものであって、計測期間全体での平均値Eaveは−1.91VCSE、最大値Emaxは1.60VCSE、最小値Eminは−5.49VCSEであった。この例では、最大値Emax:1.60VCSEは許容最大値Eper:−1.15VCSEを大きく超えており、平均値Eave:−1.91VCSEは平均基準値:−1.30VCSEよりかなり離れているので、カソード防食基準には不合格になる。
そして、最大値Emaxを含む単位計測期間20msecの時系列データEmax(tn)を時刻軸(時間msec)と管対地電位軸(VCSE)のグラフで表示すると、図示のように綺麗な正弦波が描かれていることが判る。したがって、携帯情報処理端末21の表示画面21Aにこのグラフを表示する手段を設けることで、交流迷走電流腐食リスクありの目視判別が可能になる。
時系列データEmax(tn)の波形解析を行うと、時系列データEmax(tn)は、図示のように、最大値Emax:1.60VCSE,平均値Etave:−1.62VCSE,最小値Etmin:−4.84VCSEとなっており、(最大値Emax−最小値Etmin)は6.44Vと大きな変動を示し、最大値Emax:1.60VCSEを示した時刻tmaxと最小値Etmin:−4.84VCSEを示した時刻tminとの時差taが商用周波数50Hzの半周期10msecに一致し、(最大値Emax−平均値Etave)=(平均値Etave−最小値Etmin)=3.22Vであることから、交流迷走電流腐食リスクありの判別がなされた。
更に、時系列データEmax(tn)の最大値Emax:1.60VCSE,最小値Etmin:−4.84VCSEからACPSを求めると、2.3Vとなり、基準値3.0Vより小さいので最優先対応ではないが、このターミナルボックスは次回の定期点検よりプローブ電流密度管理に移行することになる。
図14は、直流迷走電流腐食リスクありと評価された例であり、複線の直流電気鉄道輸送路に近接するターミナルボックスにおいて、飽和硫酸銅電極を照合電極として、管対地電位Eをサンプリング間隔0.1msec、計測期間15分間で計測したものであって、計測期間全体での平均値Eaveは−2.40VCSE、最大値Emaxは0.40VCSE、最小値Eminは−4.81VCSEであった。この例では、最大値Emax:0.40VCSEは許容最大値Eper:−1.15VCSEを大きく超えており、平均値Eave:−2.40VCSEは平均基準値:−1.30VCSEよりかなり離れているので、カソード防食基準には不合格になる。
そして、時系列データEmax(tn)の波形解析を行うと、時系列データEmax(tn)は、図示のように、最大値Emax:0.40VCSE,平均値Etave:−1.80VCSE,最小値Etmin:−3.58VCSEとなっており、(最大値Emax−最小値Etmin)は3.98Vと大きな変動を示し、最大値Emax:0.40VCSEを示した時刻tmaxと最小値Etmin:−3.58VCSEを示した時刻tminとの時差ta=7.52msecが商用周波数50Hzの半周期10msecに一致しておらず、(最大値Emax−平均値Etave)≠(平均値Etave−最小値Etmin)であることから、直流迷走電流腐食リスクありの判別がなされた。
その後は、原因究明のための詳細調査、プローブの設置、プローブ電流密度の計測後、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準との照査がなされ、原因と計測結果に応じて、外部電源方式の適用等の対策を講じることが必要になる。次回の定期点検から、このターミナルボックスはプローブ電流密度管理になる。
図15は、本発明の実施形態に係るカソード防食管理システムの構築例を示した説明図である。ここで示す例は、インターネット等のネットワークシステムを活用したものであるが、本発明の実施形態としては特にこれに限定されるものではない。
ここで示すカソード防食管理システムのシステム構成要素は、インターネット等のネットワークNW上に構築されたウェブサーバ100、ネットワークに接続可能なクライアントPC110、計測処理装置120からなる。クライアントPC110は前述した評価部20を構成する携帯情報処理端末21に相当するものであり、このクライアントPCにはコンピュータを前述した評価部20として機能させるプログラムがインストールされている。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な情報記録媒体に記録させて、各クライントPCがこの情報記録媒体から同じプログラムをインストールできるようにしてもよい。また、計測処理装置120は前述の計測処理部10を構成するものである。
ウェブサーバ100は、カソード防食管理情報(計測データを含む)を一元管理する、いわば司令塔として位置付けられるものである。クライアントPC110は、ウェブサーバ100と同じ情報を合わせ持つが、複数台のクライアントPC110を用いることにより、長距離に亘って敷設された埋設パイプラインPに対する厖大な数のターミナルボックスの管対地電位を計測対象とする場合に、効率的な計測を行うことができるだけでなく、複数ターミナルボックスに対しての同時計測を可能にする。一つの埋設パイプラインPに対しての複数台のクライアントPC110の計測データが、ウェブサーバ100で合成され、一元管理されることになる。
ウェブサーバ100はネットワークNWを介してデータ送信(計測条件等のデータ)を行い([1])、クライアントPC110は、ネットワークNWを介してウェブサーバ100から送信されるデータを受信する([2])。クライアントPC110は、計測処理装置120に接続(USB接続等)して、ウェブサーバから送信されたデータに基づく計測予約を行う([3])。
計測予約が施された計測処理装置120は、ターミナルボックス内でパイプラインPと照合電極(飽和硫酸銅電極)Ecに接続され、予約された計測期間で管対地電位Eの計測を行う([4])。計測終了後、計測処理装置120をターミナルボックスから取り出し、この計測処理装置120をクライアントPC110に接続(USB接続)し、接続されたクライアントPC110は計測処理装置120から計測データを受信(取得)する([5])。クライアントPCは、ネットワークNWを介して計測データ及び評価結果を送信し([6])、ウェブサーバ100はネットワークNWを介して計測データ及び評価結果を受信し、保存する([7])。
このシステムによると、ウェブサーバ100の管理の下で、複数のターミナルボックスに対してそれぞれクライアントPC110と計測処理装置120を配置し、ネットワークNWを介して計測情報(計測データを含む)の授受を行うことができる。これによって、長距離埋設パイプラインにおける複数のターミナルボックスでの計測を同時計測できると共に、この計測結果をウェブサーバ100で一元管理することが可能になる。また、ウェブサーバ100で管理されるデータ(計測データ及び評価結果)はネットワークを介して各クライアントPC110でいつでもどこでも観ることができる([9])。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るカソード防食された埋設金属体の防食管理方法及び防食管理装置によると、地上の照合電極と防食対象の埋設金属体(埋設パイプライン)との間で簡易に計測することができる金属対電解質電位(管対地電位)によって、埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を定量的に把握することできる。また、迷走電流腐食の兆候を把握した場合に、迷走電流腐食リスクの大凡の原因を把握し、それに応じた適切な対応を行うことができる。
また、現状では、迷走電流腐食発生源となる直流又は交流電気鉄道施設等からある離隔距離を超えると金属対電解質電位管理になるが、本発明の実施形態によると、金属対電解質電位計測で迷走電流腐食リスクを把握・評価することができるので、例えば、直流電気鉄道車両の走行により発生するレール漏えい電流が、この電流発生地点近傍の埋設パイプラインにおける塗覆装欠陥部に流入し、そこから離れた遠方の塗覆装欠陥部から電解質中に流出し埋設パイプラインが腐食するという直流迷走電流腐食リスクに対しても、十分に対応することが可能になる。
従来技術の説明図(埋設金属体の一例である埋設パイプラインの金属対電解質電位(管対地電位)計測を説明する説明図)である。 従来技術の説明図(埋設パイプラインを例にし、プローブ電流密度によってカソード防食状況を評価する計測評価システムを示した説明図)である。 本発明の課題を説明する説明図である。 本発明の課題を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理方法の概要を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理方法を部分的に説明する(計測・処理工程を説明する)説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理方法を部分的に説明する(データ取得工程を説明する)説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理方法を部分的に説明する(迷走電流腐食リスク判定工程及び迷走電流腐食リスクの原因判別工程を説明する)説明図である。 迷走電流腐食リスク判定工程S3と迷走電流腐食リスクの原因判別工程S4の具体例を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理装置の構成例を示した説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理装置における計測処理部の動作を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る防食管理装置における評価部の動作とそれに基づく防食管理手順を説明する説明図である。 本発明による実測例とこれに基づく評価結果を示す説明図である。 本発明による実測例とこれに基づく評価結果を示す説明図である。 本発明の実施形態に係るカソード防食管理システムの構築例を示した説明図である。
符号の説明
1 防食管理装置
2,3 導線
10 計測処理部
11 計測部
12 演算処理部
13 データ記憶部
20 評価部
21 携帯情報処理端末
22 データ取得手段
23 迷走電流腐食リスク判定手段
24 迷走電流腐食リスクの原因判別手段
P 埋設パイプライン
C 塗覆装
Ec 照合電極

Claims (20)

  1. 塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理方法であって、
    商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、
    所望の計測期間で計測された前記金属対電解質電位の最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の計測値の時系列データを取得し、
    前記最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定して、該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別し、
    前記カソード防食基準は、前記埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも前記塗覆装欠陥部から前記照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)を見込んで許容最大値を設定し、
    前記計測期間の最大値が前記許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定することを特徴とするカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  2. 塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理方法であって、
    商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、この計測値の時系列データを一時的に保存する工程と、
    前記単位計測期間の一期間又は複数期間を基本計測期間に設定して、該基本計測期間毎に前記単位計測期間毎の計測値の平均値及び最大値を少なくとも求める演算処理を行い、該演算処理の結果を保存すると共に、前記基本計測期間内での最大値を含む前記単位計測期間内の前記時系列データを保存する工程と、
    前記基本計測期間の一期間又は複数期間を含む計測期間で、前記演算処理によって求めた平均値及び最大値から前記計測期間の平均値及び最大値を求め、この最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の前記時系列データを取得する工程と、
    前記計測期間の平均値及び最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する工程と、
    該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、取得された前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する工程を有し、
    前記カソード防食基準は、前記埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも前記塗覆装欠陥部から前記照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)を見込んで許容最大値を設定し、
    前記計測期間の最大値が前記許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定することを特徴とするカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  3. 前記サンプリング間隔を0.1msecに設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  4. 前記許容最大値は、前記IRドロップに加えて、計測器の精度誤差電圧、前記照合電極の温度特性誤差電位を見込んで設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  5. 前記許容最大値のマイナス電位側に安全率と過防食防止を考慮した基準値(平均基準値)を設定し、前記計測期間の平均値を当該基準値(平均基準値)程度にすることを合格判定に加えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  6. 前記判別は、取得された前記時系列データ内の値で、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し且つ最大値と平均値の差と平均値と最小値の差が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合に直流迷走電流の影響と判別することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  7. 前記判別は、取得された前記時系列データ内の値で、平均値よりプラス電位側の時間積分とマイナス電位側の時間積分が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合は直流迷走電流の影響と判別することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  8. 前記判定によって迷走電流腐食の兆候ありと判定された埋設金属体の防食管理をプローブ電流密度管理に移行することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
  9. 前記判別で交流迷走電流の影響が確認された場合に、取得された前記時系列データにおける最大値Emaxと最小値Etminから次式で求められる交流管対地電位ACPSを基準値と比較して、交流管対地電位ACPSが基準値を超える対象物をプローブ電流密度管理の最優先対応にすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理方法。
    ACPS={(Emax tmin )/2}/(21/2
  10. 塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理装置であって、
    商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測する手段と、
    所望の計測期間で計測された前記金属対電解質電位の最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の計測値の時系列データを取得する手段と、
    前記最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する手段と、
    該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段とを備え、
    前記カソード防食基準は、前記埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも前記塗覆装欠陥部から前記照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)を見込んで許容最大値を設定し、
    前記計測期間の最大値が前記許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定することを特徴とするカソード防食された埋設金属体の防食管理装置。
  11. 塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理装置であって、
    前記金属対電解質電位の計測処理を行う計測処理部と、
    計測値に基づく評価を行う評価部と、を備え、
    前記計測処理部は、
    商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、この計測値の時系列データを一時的に保存する手段と、
    前記単位計測期間の一期間又は複数期間を基本計測期間に設定して、該基本計測期間毎に前記単位計測期間毎の計測値の平均値及び最大値を求める演算処理を行い、該演算処理の結果を保存すると共に、前記基本計測期間内での最大値を含む前記単位計測期間内の前記時系列データを保存する手段と、を備え、
    前記評価部は、
    前記基本計測期間の一期間又は複数期間を含む計測期間で、前記演算処理によって求めた平均値及び最大値から前記計測期間の平均値及び最大値を求め、この最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の前記時系列データを取得する手段と、
    前記計測期間の平均値及び最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する手段と、
    該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、取得された前記時系列データに基づいて影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段とを備え、
    前記カソード防食基準は、前記埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも前記塗覆装欠陥部から前記照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)を見込んで許容最大値を設定し、
    前記計測期間の最大値が前記許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定することを特徴とするカソード防食された埋設金属体の防食管理装置。
  12. 前記評価部は、取得した前記時系列データを時刻軸と金属対電解質電位軸のグラフで表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項11に記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理装置。
  13. 塗覆装が施され且つカソード防食された埋設金属体の防食状況を、地上に設置した照合電極と前記埋設金属体との間の金属対電解質電位の計測値に基づいて評価する防食管理プログラムであって、
    前記金属対電解質電位の計測処理を行う計測処理部に接続されるコンピュータを、
    計測期間の平均値及び最大値をカソード防食基準と照査することによって、前記埋設金属体の迷走電流腐食の兆候を判定する手段、
    該判定の結果が兆候ありと判定された場合には、前記最大値を含む商用周波数の1周期に相当する単位計測期間の時系列データに基づいて、影響する迷走電流が直流か交流かを判別する手段として機能させ、
    前記カソード防食基準は、前記埋設金属体の塗覆装欠陥部と土壌界面の防食電位に、少なくとも前記塗覆装欠陥部から前記照合電極までのカソード防食電流によるIRドロップ(カソード防食電流×土壌抵抗による電圧)を見込んで許容最大値を設定し、
    前記計測期間の最大値が前記許容最大値を超えた場合に、迷走電流腐食の兆候ありと判定することを特徴とするカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム。
  14. 前記許容最大値は、前記IRドロップに加えて、計測器の精度誤差電圧、前記照合電極の温度特性誤差電位を見込んで設定されることを特徴とする請求項13に記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム。
  15. 前記許容最大値のマイナス電位側に安全率と過防食防止を考慮した基準値(平均基準値)を設定し、前記計測期間の平均値を当該基準値(平均基準値)程度にすることを合格判定に加えることを特徴とする請求項13又は14に記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム。
  16. 前記判別は、前記時系列データ内の値で、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し且つ最大値と平均値の差と平均値と最小値の差が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合に直流迷走電流の影響と判別することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム。
  17. 前記判別は、前記時系列データ内の値で、平均値よりプラス電位側の時間積分とマイナス電位側の時間積分が等しい場合に交流迷走電流の影響と判別し、そうでない場合は直流迷走電流の影響と判別することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム。
  18. 前記判別で交流迷走電流の影響が確認された場合に、
    前記コンピュータを、
    前記時系列データにおける最大値Emaxと最小値Etminから次式で求められる交流管対地電位ACPSを基準値と比較して、交流管対地電位ACPSが基準値を超える対象物をプローブ電流密度管理の最優先対応にする指示出力手段、
    として更に機能させることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載のカソード防食された埋設金属体の防食管理プログラム。
    ACPS={(Emax tmin )/2}/(21/2
  19. 前記計測処理部が、
    商用周波数の1周期に相当する単位計測期間を設定して、該単位計測期間内で設定されたサンプリング間隔毎に前記金属対電解質電位を計測し、この計測値の時系列データを一時的に保存する手段と、
    前記単位計測期間の一期間又は複数期間を基本計測期間に設定して、該基本計測期間毎に前記単位計測期間毎の計測値の平均値及び最大値を求める演算処理を行い、該演算処理の結果を保存すると共に、前記基本計測期間内での最大値を含む前記単位計測期間内の前記時系列データを保存する手段と、を備えるものであり、
    前記コンピュータを、
    前記基本計測期間の一期間又は複数期間を含む計測期間で、前記演算処理によって求めた平均値及び最大値から前記計測期間の平均値及び最大値を求め、この最大値を含む前記単位計測期間を抽出して、該単位計測期間内の前記時系列データを取得する手段、
    として更に機能させることを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載の埋設金属体の防食管理プログラム。
  20. 請求項13〜19のいずれかに記載の埋設金属体の防食管理プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な情報記録媒体。
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