JP4767145B2 - 流電陽極方式によるカソード防食システム及びカソード防食方法、パイプライン健全性評価システム及び健全性評価方法 - Google Patents

流電陽極方式によるカソード防食システム及びカソード防食方法、パイプライン健全性評価システム及び健全性評価方法 Download PDF

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本発明は、高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象とした流電陽極方式によるカソード防食システム、このシステムを用いたカソード防食方法、また、このシステムに基づくパイプライン健全性評価システム及び健全性評価方法、に関するものである。
土壌等の電解質中に存在する金属体の腐食を防止するためには、金属体表面と土壌等の電解質を隔絶することに加えて、金属体表面に電流(防食電流)を流入させてアノード反応を起こさせないようにする(金属全体にカソード反応を起こさせる)カソード防食法が最も有効な方法であることが知られている。
現在、土壌埋設パイプライン等に対して行われているカソード防食法には、流電陽極方式と外部電源方式がある。外部電源方式は、土壌中に設置した電極(アノード)と防食対象パイプライン(カソード)との間に直流電源装置を接続して電圧を与え、電極から土壌を介してパイプラインに直流電流を流入させて腐食を防止する方法である。この外部電源方式では、通常、防食対象区間を絶縁継手で区画して、その区間に対応した出力を有する直流電源装置を区間毎に一つ又は複数設置し、この出力を調整することで所望のカソード防食状況を得るようにしている。
一方、流電陽極方式は、防食対象パイプラインよりも腐食電位が低い金属を、アノード(流電陽極)として、パイプラインと電線で結び、流電陽極とパイプライン間の異種金属電池作用によってパイプラインへ防食電流を流入させ腐食を防止する方法である。鋼製の土壌埋設パイプラインに対しては流電陽極としてMg陽極が用いられることが多い。
このような流電陽極方式によるカソード防食方法によると、カソード防食対象がポリエチレン被覆鋼管のような高抵抗率塗覆装パイプラインの場合には、塗覆装に欠陥が無くパイプラインの金属部分と電解質との接触がない健全な状態では、パイプラインはカソード分極しないので、これをカソード防食しようとしても防食電流は流れない。塗覆装に欠陥が発生してはじめて、流電陽極から流出する防食電流が塗覆装欠陥部に流入し、カソード防食がなされることになる。
したがって、高抵抗率塗覆装パイプラインを流電陽極方式によってカソード防食する場合には、設置時或いは設置直後の防食状況を把握することはできず、その後パイプラインと流電陽極間の電線を流れる電流をモニタリングすることで、防食状況或いはパイプラインの健全性を把握することが可能になる。
図1は、下記特許文献1に示された従来技術の説明図である。この従来技術によると、流電陽極となるMg陽極J1からパイプラインLに向かって流れる電流(流電陽極発生電流)をモニタリング回路J2によってモニタリングし、この値に変化が起きたときの最大と2番目の区間に塗覆装欠陥部Pが発生しているものと判断し、且つ前記の2点間の電流値の大きさの割合から塗覆装欠陥箇所までの距離を計算して塗覆装欠陥位置を特定している。モニタリング回路J2はターミナルボックスJ3内に配備され、電線J4,J5によってパイプラインL及びMg陽極J1と接続されている。
また、流電陽極方式では、塗覆装欠陥が発生している状況で流電陽極が消耗して発生電流がゼロになると、パイプラインは無防食状態になり、腐食進行を許容することになる。加えて、パイプラインが交流誘導の影響下にある場合、流電陽極がパイプラインの交流誘導電圧を低減するアース電極としての役割もあることから、流電陽極が消耗すると塗覆装欠陥部の交流腐食進行も許容することになる。そこで、流電陽極発生電流のモニタリングは流電陽極の寿命を見極めるためにも必須である。
下記特許文献2に記載の従来技術は、流電陽極となるMg陽極から埋設パイプラインに流れる電流を定期的にモニタリングすると同時にMg陽極から発生する交流電流をアナログ計測回路でモニタリングし、この計測値を平滑化することにより、Mg陽極の電気容量の消耗度を交流電流消失分も含めて演算し、この値によりMg陽極の寿命を数値的に予測するものである。
特開平7−294478号公報 特許第3214778号公報
高抵抗率塗覆装パイプラインを流電陽極方式でカソード防食しようとした場合、前述したように、塗覆装欠陥が発生する等してパイプラインと電解質とが接触しないと防食電流は流れないので、前述したモニタリング手段を装備したシステムであっても塗覆装が高品質のまま維持されている状態ではカソード防食状況を評価することができない。このような場合、塗覆装欠陥部を模擬したプローブ(パイプライン材料と同じ材料からなる所定面積の試験片)をパイプラインに常時電気的に接続しておき、プローブオフ電位(導通されたプローブとパイプを電気的に遮断した直後のプローブの照合電極に対する電位差で、主に防食電流Iと電解質抵抗Rとの積であるIRを含まない真の管対地電位)を計測することにより、パイプラインのカソード防食状況を評価する方法が一般に知られている(例えば、ISO 15589-1:2003(E) INTERNATIONAL STANDARD Petroleum and natural gas industries−Cathodic protection of pipeline transportation systems−Part 1:On-land pipeline)。
しかしながら、前述のISOによる評価においても、プローブが設置されている箇所近傍でのカソード防食状況が把握できるだけで、パイプラインにおける所定区間全域でのカソード防食状況の良否を定量的に把握することはできない問題がある。前記のISOでは、プローブの設置間隔は都市や工業地帯においては1kmを超えるべきではないことが記述されているが、プローブを過密に設置すると、流電陽極発生電流は増加しカソード防食効率が低下すると共に流電陽極の寿命を低下させることになり、また、欠陥のない高抵抗率塗覆装ではプローブ間で電流の流出入が行われてカソード防食状況を正確に評価できないことから、プローブ間隔はある程度の間隔をもって設定しなければならない。
また、高抵抗率塗覆装パイプラインを流電陽極方式でカソード防食する際には、塗覆装欠陥部が何処に発生するか予測できない設置段階では防食状況を定量的に把握することはできない。したがって、流電陽極方式によるカソード防食システムは、前述したモニタリング手段を備えたものも含めて、定量的なシステム設計を行うことができず、流電陽極の設置位置,設置本数,これらとプローブの設置位置との関係等は経験的な設計に委ねられていた。これによると、流電陽極から離れた箇所に塗覆装欠陥が発生して防食電流が十分に届かない状況や流電陽極の近くに塗覆装欠陥が発生して過防食になるといった防食管理上の不具合に対して全て経験的に対処せざるを得ない問題があった。
また、図1に示した従来技術(特許文献1)によると、2箇所の流電陽極A,B間に塗覆装欠陥部が1箇所発生した場合には、文献に記載されるように塗覆装欠陥位置を把握することが可能であるが、例えば、Bの流電陽極設置箇所直近に、Pよりも接地抵抗の低い塗覆装欠陥部P’が発生した場合には、Bの流電陽極からP’への流入電流が発生し、この電流はBの流電陽極からPに流入する電流よりも大きくなるので、A設置位置での流電陽極発生電流とB設置位置での流電陽極発生電流から塗覆装欠陥部Pの位置を特定することは不可能になる。つまり、複数の塗覆装欠陥部が同時期に発生した場合には、単純な流電陽極発生電流のモニタリングでは欠陥位置等を適正に把握することができないことになり、十分なパイプラインの健全性評価を行うことができない問題がある。
更には、前述した特許文献2の従来技術によると、流電陽極発生電流の直流成分と交流成分を求めて交流誘導発生検知を行っていないので、流電陽極からの交流腐食による消耗分を具体的に定量化しておらず、正確な寿命予測ができない問題があった。
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものであって、流電陽極方式による高抵抗率塗覆装パイプラインのカソード防食において、明確な防食範囲を設定して、その範囲全域でのカソード防食状況を評価しながら、塗覆装欠陥発生検知や流電陽極寿命の予測等を含むパイプラインの健全性をより正確に評価すること、明確な防食範囲に基づく定量的なシステム設計を可能にすること、等を目的とするものである。
前述した目的を達成するために、本発明は以下の特徴を具備するものである。
一つには、高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行うシステム又は方法であって、パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定すること、この区間の両端で、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブをパイプラインに接続すること、この区間の中央位置でパイプラインに流電陽極を接続すること、設定された区間の両端に接続されたプローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極からの発生電流を設定することを特徴とする。
また、前述の特徴に加えて、前記流電陽極から発生する直流電流は、1本の流電陽極から発生する直流電流又は複数本の流電陽極から発生する総発生電流の直流電流が、防食電位,防食電流通電前のプローブ対地電位,プローブの接地抵抗,及びプローブが接している電解質の電気抵抗率から求められる所要防食電流以上になるように設定されることを特徴とする。
また、前述の特徴に加えて、前記区間の長さを1kmとし、前記塗覆装欠陥部面積を10cm2として、前記所要防食電流Ipは下記式(a)で求められることを特徴とする。
Figure 0004767145
また、前述の特徴に加えて、前記流電陽極をn本のMg陽極とし、下記式(b)からなる総発生電流の直流電流I(DC)が前記所要防食電流Ip以上になるように、Mg陽極n本の総接地抵抗RMg(n)を設定することを特徴とする。
Figure 0004767145
また、前述の特徴に加えて、前記Mg陽極n本の総接地抵抗RMg(n)を下記式(c)で求められるMg陽極本数nで設定することを特徴とする。
Figure 0004767145
高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行いながらパイプラインの健全性を評価するシステム又は方法の特徴としては、パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定すること、この区間の両端でパイプラインに同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブを接続すること、この区間の中央位置でパイプラインに流電陽極を接続すること、パイプラインと流電陽極間を接続する電線間に電流モニタリング手段を設置し、この電流モニタリング手段で流電陽極からの発生電流をモニタリングすること、を前提の特徴とする。
そして、前記区間の両端に接続されたプローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極からの発生電流の直流電流を設定した状態で、電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値の増加を検知して、この区間内に塗覆装欠陥が発生したことを検知すること、を一つの特徴とする。
また、前述した前提の特徴に加えて、前記区間の両端に接続されたプローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極からの発生電流の直流電流を設定した状態で、電流モニタリング手段でモニタリングされたデータの中で最大値を含む単位計測時間の時系列データ値から、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し、且つ前記最大値と前記時系列データ値の平均値との差と当該平均値と前記最小値との差が等しいことを検知して前記区間に作用する交流誘導を検知することを特徴とする。
また、前述の特徴に加えて、前記区間に作用する交流誘導が検知された場合に、前記電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値から、下記式(d)によって前記流電陽極の寿命LSを予測することを特徴とする。
Figure 0004767145
また、前述の特徴に加えて、前記プローブのプローブ電流密度を計測し、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準と前記計測の結果とを照査することを特徴とする。
このような特徴によると、以下に示すような作用を得ることができる。
[カソード防食対象区間の設定及び区間内の流電陽極接続位置について]
従来の流電陽極方式によるカソード防食システムのように、所定間隔で流電陽極をパイプラインに接続しただけでは、高抵抗率塗覆装パイプラインを防食対象とする場合には、システム設置時に防食電流が流れない。したがって、一つの流電陽極がパイプラインのどの範囲をカバーしているのか明確に特定することができず、システム設計を定量的に行うことができなかった。
これに対して、本発明では、パイプラインに接続された一対のプローブ間をカソード防食対象区間に設定して、その区間内のパイプラインに流電陽極を接続することで、流電陽極からプローブに流入する電流を、設定されたカソード防食対象区間の末端に供給される防食電流と考えて、システム設計を定量的に行うことが可能になる。
この際、プローブによって模擬される塗覆装欠陥部の面積を左右同面積にしており、且つ流電陽極の接続位置を設定されたカソード防食対象区間の中央位置にしているので、防食対象距離をできるだけ長くしてカソード防食効率を高くすることができ、しかも区間の末端2地点への防食電流を均一にすることができる。
[流電陽極発生電流の設定による定量的なシステム設計について]
システムの稼働(防食電流の通電)時点から、流電陽極発生電流によって防食対象区間の末端に均一な防食電流が流れるシステム構成にしているので、流電陽極発生電流に基づく定量的なシステム構成が可能になる。基本的な考え方としては、システム設置時には、プローブ交流電流密度はカソード防食基準に合格している(つまり、交流誘導の影響が無い又は排除されている)ことを前提にして、プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極発生電流の直流成分を設定することで、区間内の全ての部位が防食電位以下となる良好なカソード防食状況を実現することができる。
具体的には、1本の流電陽極から発生する直流電流又は複数本の流電陽極から発生する総発生電流の直流電流が、上記式(a)で求められる所要防食電流以上になるように流電陽極発生電流を設定すれば良く、これによって、設定された区間長さ(例えば1km)に応じて、流電陽極をn本のMg陽極とする場合には、Mg陽極n本の総接地抵抗RMg(n)或いはMg陽極の本数を決定することができる。
[流電陽極発生電流のモニタリングによるパイプライン健全性評価]
(塗覆装欠陥検知)
本発明のシステム構成では、高抵抗率塗覆装パイプラインの塗覆装が健全であれば区間内で計測される流電陽極発生電流は一定値を示すことになる。そして、区間内で一つ又は複数個の塗覆装欠陥が発生すると、プローブに流入する電流に対して発生した塗覆装欠陥部に流入する電流が加わることになるので、流電陽極発生電流は増加し、その増加した状態が継続することになる。したがって、パイプラインに接続された一対のプローブで区画された区間内に設置された一つの電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値の増加を検知することで、隣接する区間の状況とは無関係に、その区間内に塗覆装欠陥が発生したことを確実に検知することができる。
(交流誘導発生検知)
加えて、流電陽極発生電流をモニタリングして交流成分を検知することで、パイプラインに接続された一対のプローブで区画された区間内に交流誘導が発生したことを確実に検知することができる。前述したように本発明のシステムでは、システム設置時には、プローブ交流電流密度はカソード防食基準に合格している(つまり、交流誘導の影響が無い又は排除されている)ことを前提にしている。したがって、流電陽極発生電流のモニタリングで交流成分が検知された時点で新たに区間内に交流誘導が発生したことになる。
(流電陽極の寿命予測)
更に加えて、この流電陽極発生電流をモニタリングして、このモニタリング値から寿命予測を行い、交流誘導発生が検知された場合に流電陽極の交流腐食による消耗分を定量的に加味することで、より正確な寿命予測が可能になる。
[プローブ電流密度によるカソード防食維持管理]
設定されたカソード防食対象区間の末端でパイプラインに接続されたプローブのプローブ電流密度を計測し、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準と計測結果とを照査し、計測結果がカソード防食基準に合格していることを確認することで、システム稼働後に、設定された区間内でカソード防食が健全に行われていることを確認することができる。
本発明は、このような特徴を具備することで、流電陽極方式による高抵抗率塗覆装パイプラインのカソード防食において、明確な防食範囲を設定して、その範囲全域でのカソード防食状況を評価しながら、塗覆装欠陥発生検知,交流誘導発生検知,流電陽極寿命の予測を含むパイプラインの健全性をより正確に評価することができる。また、明確な防食範囲に基づく定量的なカソード防食システム或いはカソード防食方法の設計を行うことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は、本発明の実施形態に係るカソード防食システム及びパイプライン健全性評価システムを示す説明図である。
[カソード防食システム/カソード防食方法の構成及び設計の技術思想]
本発明の実施形態に係るカソード防食システムは、高抵抗率塗覆装が施されたパイプライン1を防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行うシステムであって、まず、パイプライン1のカソード防食対象となる区間(カソード防食対象区間)をパイプライン1に沿って所定の長さ(例えば1km)で設定し、その区間の両端でパイプライン1にプローブ2A,2Bを接続している。つまり、パイプライン1に接続された一対のプローブ2A,2Bで区画された区間をカソード防食対象区間に設定している。
プローブ2A,2Bは、同面積(例えば10cm2)の塗覆装欠陥部を模擬するものであって(先端の黒色が模擬された塗覆装欠陥部)、図示のようにパイプライン1の金属面に電線20を介して接続される。プローブ2A,2Bは、前述したカソード防食対象区間の末端に塗覆装欠陥部が形成されることを模擬するものであるから、プローブ2A,2Bの先端位置及び電線20とパイプライン1の金属面との接続位置が共にカソード防食対象区間の末端に位置するように設置される。
電線20とパイプライン1の金属面との接続部分にはシール21が施されている。電線20には、その導通を遮断・接続するためのスイッチ22が設けられ、必要に応じてプローブ2A,2Bのプローブ電流密度を計測するための電流計(図示省略)が接続される。また、電線20は照合電極(例えば飽和硫酸銅電極)24にも接続され、その間の電位差を電圧計23で計測してプローブ対地電位(後述するプローブオフ電位或いは防食電流通電前のプローブ対地電位)を求めることができるようにしている。
そして、一対のプローブ2A,2Bで設定されるカソード防食対象区間の中央位置で、パイプライン1に流電陽極3を接続する。流電陽極3としては、鋼製のパイプライン1に対してはMg陽極を用いることができる。流電陽極3は、電線30を介してパイプライン1の金属面と接続されるが、この接続位置と流電陽極3の埋設位置が共にカソード防食対象区間の中央位置になるように設置される。
このようなカソード防食システムによると、流電陽極3の通電及びプローブ2A,2Bの導通直後からカソード防食対象区間の末端に向けて防食電流が流れるシステムを構築することができる。
図3は、プローブ2A,2Bの設置によって塗覆装欠陥部が模擬された本発明の実施形態に係るカソード防食システムの防食状況を示す説明図である。このシステムによると、同面積(例えば10cm2)の塗覆装欠陥部Phがカソード防食対象区間の左右末端に発生しているのと同等の状況になり、流電陽極3から流出した防食電流が左右等しい面積の塗覆装欠陥部Phに流入することになる。
ここで面積の等しい塗覆装欠陥部Phを設定し、流電陽極3をカソード防食対象区間の中央位置に設置しているので、左右の塗覆装欠陥部Phに流入する防食電流は等しい値になり、パイプライン1における通電直後の(Probe/S)pro(プローブオフ電位)は、カソード防食対象区間の中央位置で最も低く(マイナス側のシフト量が大きく)、当該区間の末端位置で最も高い(マイナス側のシフト量が小さい)値になる(図中の(Probe/S)corは防食電流通電前のプローブ対地電位であって、通常は周辺環境が均一であれば一定値を示す)。なお、プローブオフ電位(Probe/S)proは、導通されたプローブ2A,2Bとパイプライン1とをスイッチ22で電気的に遮断した直後のプローブ2A,2Bの照合電極24に対する電位差で、防食電流Iと電解質抵抗Rとの積であるIRを含まない真の管対地電位である。
このように、設定されたカソード防食対象区間の末端に同面積の塗覆装欠陥部が形成され、区間中央位置に流電陽極を設置した状態を設定することで、カソード防食状況をシステム設置時から把握することができることになり、流電陽極3の設置地点である区間中央位置が過防食にならず、区間末端でのプローブオフ電位(Probe/S)proが防食電位Ep以下になるようにシステム構成を設計すれば、流電陽極方式によるカソード防食システムに対して定量的なシステム設計を行うことが可能になる。
高抵抗率塗覆装が施されたパイプライン1の場合には、パイプライン1の金属と電解質が接触していないため管対地電位が計測不可能である。よって、カソード防食対象区間の末端2地点に設置されたプローブ2A,2Bで計測されるプローブオフ電位が防食電位Ep以下になる(カソード防食基準に合格する)ようにカソード防食設計を行う。ここで、プローブ2A,2Bを同面積の塗覆装欠陥部を模擬するものとしているのは、流電陽極3からカソード防食対象区間の末端2地点へ向けて流れる防食電流を均一なものとし、カソード防食対象区間の距離をできるだけ長くするためである。
なお、ここでは、システム設置時には、プローブ交流電流密度がカソード防食基準に合格していること(交流誘導の影響がパイプライン1に及んでいないか或いは既に交流誘導低減対策が取られていること)を前提にしている。この前提は、システム設置時に交流誘導の影響があれば、当然交流誘導低減対策を施した上でシステムの設置がなされること、流電陽極の設置自体が交流誘導低減のためのアース電極の作用をなし、1km間隔程度の流電陽極の分散設置によって交流誘導を効果的に低減させることができることを考慮すると、システム設計上適正な前提である。
システム設計のパラメータは、カソード防食対象区間の長さと流電陽極3の発生電流の大きさである。これらについて以下に説明する。
[カソード防食対象区間の設定]
区間の中央位置が過防食にならないようにするためには、区間の長さをできる限り短くする方が良いことは自明である(区間が長くなると末端でのマイナス側へのシフト量が小さくなるので、末端のプローブオフ電位を防食電位以下にしようとすれば中央位置でのシフト量が大きくなり過ぎる)。しかしながら、区間を短くしてプローブを過密に設置すると、流電陽極発生電流が増加してカソード防食効率が低下し、さらに、塗覆装欠陥のない高抵抗率塗覆装ではプローブ間で電流の流出入が行われカソード防食状況を正確に評価できなくなるので、プローブ設置間隔はある程度の間隔をもって決定されるべきである。
このように、a.流電陽極設置地点の過防食リスクの低減、b.プローブ設置間隔、c.防食電流の均一化、d.交流誘導低減のアース電極としての流電陽極の分散設置、及び、e.1箇所当たりの流電陽極の現実的な設置本数を考慮すると、カソード防食対象区間を1km程度に設定するのが適当である。
また、カソード防食対象区間では、その末端2地点以外にはプローブを設置しないことが重要である。末端2地点以外の区間内にプローブを設置したならば、流電陽極発生電流が区間内のプローブに流入し、区間末端が防食電流不足の傾向になるから本発明のシステム設計の基本思想が成り立たなくなる。
カソード防食対象区間を1kmにすると、プローブ設置間隔は前述のISO 15589-1:2003(E)と同様になる。なお、プローブ面積に関しては、1cm2から10cm2が一般に推奨されている(EN 13636:Cathodic protection of buried metallic tanks and related piping,2004)。プローブが接触する電解質が土壌の場合、防食電流を塗覆装欠陥部に流入させるために、プローブの塗覆装欠陥部を模擬した金属面と土壌との接触を良好にすることが必要である。そのためには、できるだけプローブの金属面を大きくすることが必要であることから、本発明の実施形態ではプローブ面積を10cm2にしている。
[流電陽極発生電流に基づくカソード防食システム/カソード防食方法の設計]
本発明のシステム構成では、稼働時にはプローブ2A,2Bをパイプライン1に常時接続しておき、通電時には流電陽極3からの発生電流(流電陽極発生電流)は、防食電流として、常時これらのプローブ2A,2Bに流入する。このとき、前述したシステム設計の基本思想に基づいて、プローブ2A,2Bによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極発生電流(流電陽極が複数本からなる場合には総発生電流)を設定するには、流電陽極発生電流は以下に示す所要防食電流Ip以上になるように設定される。
(所要防食電流の導出)
所要防食電流Ipを防食電流通電前のプローブ対地電位(Probe/S)corを防食電流通電後のプローブオフ電位(Probe/S)proまでシフトさせるのに要する電流であると定義すると、下記式(a1)で表すことができる。
Figure 0004767145
式(a1)において、防食電流通電前のプローブ対地電位(Probe/S)corは、流電陽極3を接続する前にスイッチ22を閉じて電圧計23で計測することができ、防食電流通電後のプローブオフ電位(Probe/S)proは、流電陽極3を接続した後に、スイッチ22を開いた直後に電圧計23で計測できる電圧値として求めることができる。パイプライン1の接地抵抗Rpipeは、下記式(a2)のように表すことができる。
Figure 0004767145
塗覆装抵抗は、塗膜抵抗とも称され、塗覆装構成物質の電気抵抗と、塗覆装の欠陥部で周囲の土壌等の電解質に接しているパイプライン金属面の接地抵抗の合計値である。しかし、本発明の対象とするシステム構成では、対象としている塗覆装はポリエチレンのような高抵抗率塗覆装であるから、塗覆装構成物質の電気抵抗は接地抵抗と比較して著しく高い値になる。したがって、塗覆装抵抗は、塗覆装欠陥部の接地抵抗で決定されると見なすことができる。
本発明の実施形態に係るシステム構成では、パイプライン1の表面積Sm2は、外径Dmでカソード防食対象区間の距離が1km(1000m)とすると、下記式(a3)のようになる。
Figure 0004767145
式(a3)を式(a2)に代入することにより、下記式(a4)を得る。
Figure 0004767145
一方、ωは、塗覆装欠陥部の接地抵抗RcΩと塗覆装欠陥部存在率n個/m2を用いて、下記式(a5)のように表すことができる。
Figure 0004767145
ここで、Rcは、塗覆装欠陥部を円形と仮定すると下記式(a6)で表される(W.V.Baeckman,W.Schwenk:Handbuch des kathodischen Korrosionsschutzes
,WILEY-VCH Verlag GmbH,1999)。
Figure 0004767145
面積10cm2の塗覆装欠陥部の接地抵抗Rcは、式(a6)のScに10-3を代入することにより下記式(a7)を得る。
Figure 0004767145
このRcは、プローブ1本の接地抵抗に等しい。また、塗覆装欠陥部存在率n個/m2は、下記式(a8)のようになる。
Figure 0004767145
なお、ここでは、n個の塗覆装欠陥部は、面積及び塗覆装欠陥部が接している電解質の電気抵抗率は同じと仮定する。式(a7)と式(a8)を式(a5)に代入することにより、下記式(a9)を得る。
Figure 0004767145
式(a9)と式(a4)に代入すると、下記式(a10)を得る。
Figure 0004767145
式(a10)を式(a1)に代入することにより、下記式(a11)が得られる。そして、プローブ2A,2Bで計測されるプローブオフ電位を防食電位Ep以下に設定することで、下記式(a)が得られる。
Figure 0004767145
即ち、本発明のカソード防食システムは、流電陽極発生電流が式(a)を満足する所要防食電流以上になるように、カソード防食設計を行えばよいことになる。なお、このときの流電陽極発生電流は極力流電陽極の寿命を長くするためと、他埋設金属構造物に干渉を与えないためにも必要最小限の値にしなければならない。
(流電陽極の総接地抵抗或いは総設置本数の設計)
ここでは、流電陽極をn本のMg陽極として、その総接地抵抗及び総設置本数を求める。すなわち、Mg陽極n本(n≧1)の総発生電流の直流電流I(DC)が所要防食電流Ip以上であればよい。よって、下記式(b1)が得られ、上記(a)式を代入すると下記式(b2)が得られる。なお、I(DC)は、後述する電流モニタリング手段によって0.1msec間隔でサンプリングされた値の計測時間平均値である。
Figure 0004767145
すなわち、上記(b2)を満足するように、Mg陽極n本の総接地抵抗RMg(n)Ωを調整することになる。この際に、Mg陽極1本の接地抵抗RMg及び1箇所当たりのMg陽極の設置本数に対する補正係数Kが既知であるから、Mg陽極の総設置本数nを下記式(c)のように求めることができる。
Figure 0004767145
[パイプライン健全性評価システム(方法)とその機能]
(パイプライン健全性評価システム(方法)の全体構成)
本発明の実施形態に係るパイプライン健全性評価システム又は健全性評価方法は、高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、前述したカソード防食システムによってカソード防食を行いながら、パイプラインの健全性を評価するものである。
図2によって、システムの全体構成を説明すると、前述したカソード防食システムで説明したように、パイプライン1のカソード防食対象となる区間を設定し、この区間の両端でパイプライン1に同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブ2A,2Bが接続され、この区間の中央位置でパイプライン1に流電陽極3が接続されており、このカソード防食システムに対して、健全性評価装置6を接続することで、カソード防食システム稼働中のパイプラインの健全性を評価する。
健全性評価装置6は、パイプライン1と流電陽極3間を接続する電線30間に設置され、流電陽極3の発生電流をモニタリングする電流モニタリング手段4と、この電流モニタリング手段4のモニタリング値を演算処理する演算処理手段5とからなる。
演算処理手段5は、例えば、モニタリング値のデータを取得して演算処理を行うCPUとモニタリング値のデータ及び演算処理結果を記憶するメモリと演算処理結果等を表示するディスプレイ等を備えるもので、モニタリングデータの平均値,最大値,最小値を求める演算処理、或いは残存寿命予測演算を行う演算処理等を行い、その演算処理結果をグラフ表示等によってディスプレイに表示し、またメモリに記憶させるものである。
この演算処理手段5は、演算処理機能として、塗覆装欠陥検知手段5A、交流誘導発生検知手段5B、流電陽極寿命予測手段5Cを備えている。各機能は、そのうちの一つ或いは複数を選択して備えていればよいが、3つの機能を全て備えることで、パイプライン1の健全性を大きく脅かす現象の兆候を全て把握できるシステムを構築することができる。
(電流モニタリング手段(工程))
前述した本発明の実施形態に係るカソード防食システムでは、システムの通電開始後から防食電流が流れ、流電陽極発生電流がモニタリング可能になる。また、プローブ2A,2Bの設置によって区画されたカソード防食対象区間を形成できるので、区間内の一箇所に設置される流電陽極3の流電陽極発生電流は隣接する他の区間の流電陽極の影響を受けることがない。したがって、区間内の一箇所に設置される流電陽極3の流電陽極発生電流をモニタリングすることで、区間全域でのカソード防食状況を他の区間とは無関係に把握することができる。
電流モニタリング手段4は、パイプライン1と流電陽極3とを接続する電線30に介在される電流計の計測値を時系列データとして出力するものである。時系列データのサンプリング間隔は、例えば、0.1msec間隔とする。サンプリング間隔を0.1msecとすることで、a.流電陽極発生電流の直流成分と交流成分とを精度良く求めることができる(パイプライン1が交流誘導を受けている場合、商用周波数と一致するか否かの評価を行うことができる)、b.最大値と最小値の値と発生時刻とが正確に把握できる、c.新幹線のような高速交流電気鉄道の通過による影響現象を逃すことなく捉えることができる、といった利点が得られる。
また、電流モニタリング手段4の実施例としては、1日に1回、設定された時刻から開始して15分間のモニタリングを行う。計測されたデータは時刻との対応がなされた時系列データとして出力される。モニタリング開始時刻は適宜設定可能であり、例えば、流電陽極3の設置位置が高圧交流架空送電線の並行部且つ又は交差部の場合には、設定時刻は送電電流が最大になる14時とし、流電陽極3の設置位置が電気鉄道輸送路近傍の場合には、設定時刻は電気鉄道の朝夕のラッシュ時(例えば18時等)とする。
図4は、電流モニタリング手段4によるモニタリング工程の一例を示す説明図である。ここでは、1日1回の15分間の基本計測時間が設定され、その基本計測時間の中で20msecの単位計測時間が設定されて、各単位計測時間では0.1msecのサンプリング間隔でデータサンプリングが行われる。
単位計測時間は、データの計測評価を行うための一期間となるもので、200個のサンプリングデータI(t1)〜I(t200)が時刻t1〜t200に対応して一次保存される。そして、この単位計測時間の200個のデータI(ta)によって単位計測時間毎の平均値I(DC)m(m=1〜45000)が求められる。すなわち、15分間の基本計測時間では、45000個のデータI(DC)1〜I(DC)45000が求められることになる。
そして、下記式(e)によって、基本計測時間での平均値I(DC)aveを求める。この実施例では基本計測時間を15分間に設定しているが、この基本計測時間は任意に設定可能である。そして、任意に設定された基本計測時間において同様に求めたI(DC)aveを1日分の平均値であると仮定して、後述する健全性の評価を行う。ここで、基本計測時間は、評価対象パイプラインの環境、例えば周辺で運行される電気鉄道の運行頻度等によって任意に決定される。例えば、都市部の電気鉄道の影響を考慮するのであれば、運行頻度が高いラッシュアワー時のみ計測することで、短時間の基本計測時間で健全性評価のための安全率を見込んでいることになる。
Figure 0004767145
また、単位計測時間毎に最大値Imax及び最小値Iminを求めて、その値とその値を示した時刻を保存する。各単位計測時間の最大値Imax及び最小値Iminを比較して、基本計測時間での最大値Imax及び最小値Iminを求め、その最大値Imaxが存在する時刻の単位計測時間(図4では3番目の単位計測時間)を抽出して、その単位計測時間の波形(サンプリングデータI(t1)〜I(t200))を保存する(その波形を保存波形と称する)。基本計測時間において、平均値I(DC)ave,最大値Imax,最小値Imin及び保存波形が求められた段階で、これらをメモリに記憶し、基本計測時間での200×45000個のデータはその時点で消去する。
(塗覆装欠陥検知手段(工程))
塗覆装欠陥検知手段5Aでは、前述した電流モニタリング手段4でモニタリングされた時系列データ値の増加を検知して、カソード防食対象区間内に塗覆装欠陥が発生したことを検知する。
具体的には、前述した基本計測時間における平均値I(DC)aveをその日の流電陽極発生電流の平均値と考え、日単位で平均値I(DC)aveの変化を観測し、I(DC)aveの増加からプローブ2A,2Bで区画されたカソード防食対象区間に一つ又は複数の塗覆装欠陥が発生したことを検知する。ここでは、カソード防食対象区間内の電流モニタリング手段4から取得したデータは、他の区間の影響を受けない値と考えることができるので、I(DC)aveの増加によって区間内に塗覆装欠陥が発生したことを確実に検知することができる。
図5は、塗覆装欠陥検知手段5Aの具体的な検知手法を示した説明図である。ここでは、塗覆装欠陥が発生した場合には流電陽極発生電流が増加して、その増加した状態が維持されることに着目したものであり、ある日の平均値I(DC)aveがその前日の平均値I(DC)aveの15%以上増になった段階で塗覆装欠陥発生を検知し、その後、3日間連続してこのレベルを維持したならば、塗覆装欠陥発生の可能性が極めて高いと判断して、アラームを発生して塗覆装欠陥について詳細評価を行う。
高抵抗率塗覆装パイプラインは、当然のことながら交流誘導電圧は、含水率の高い瀝青質塗覆装パイプラインよりも高くなるので、高抵抗率塗覆装パイプラインの塗覆装欠陥においては、特に交流腐食の影響を考慮する必要がある。これまでの研究成果から、交流腐食速度は、高抵抗率塗覆装欠陥部の面積が1cm2で最大になることが明らかになっている。そこで、パイプラインの維持管理上、面積1cm2の高抵抗率塗覆装欠陥の発生を検知することが求められる。本発明の実施例(カソード防食対象区間1km、プローブ面積各10cm2)で、この面積1cm2の高抵抗率塗覆装欠陥の発生を検知することが可能であるか否かを以下に検証する。
本発明の実施例では、カソード防食対象区間1kmの末端2地点でそれぞれ面積10cm2の塗覆装欠陥部が模擬されており、当該区間では、総面積20cm2を超える塗覆装欠陥の発生を許容しないシステムになっている。ここでは、20cm2の塗覆装欠陥面積が有る状態から、さらに交流腐食速度が最大になる塗覆装欠陥部面積1cm2が発生したとき、流電陽極発生電流の増加分が検知可能か否かを検証することにする。
塗覆装欠陥部の面積1cm2(10-42)の接地抵抗R1cm2は、式(a6)により、R1cm2=44.3ρ(Ω)となる。また、塗覆装欠陥部の面積1cm2のn個の接地抵抗が塗覆装欠陥部の面積10cm2の2個の接地抵抗と等しいとすると、式(a10)を用いて、44.3ρ/n=7.0ρとなり、よって、n=6.33(個)となる。
塗覆装欠陥部の面積1cm2の6.33個がさらに1個増えたとすると、この場合の接地抵抗は、44.3ρ/(6.33+1)=6.04ρ(Ω)となる。
面積1cm2の塗覆装欠陥部がさらに1個発生した場合、接地抵抗は6.04ρΩとなるため、このときの所要防食電流をIp’とすると、下記式(f)となる。
Figure 0004767145
この式(f)を式(a)と比較すると、流電陽極発生電流は16%増加することになる。(Probe/S)corを−500mVCSE,(Probe/S)proを−1400mVCSE,ρを15Ωmとすると、Ip’は、式(f)より9.96mAとなる。よって、1.38mAの増加となる。これは、汎用的な電流計の最小分解能0.01mAによって、十分に検知可能な増分電流値である。
(交流誘導発生検知手段(工程))
前述したように、本発明の実施形態に係るカソード防食システムの設計は、プローブ交流電流密度がカソード防食基準に合格している(システム設置時にパイプライン1に交流誘導の影響がない又は影響が排除されている)ことが前提となっている。しかしながら、その後の周辺環境変化等によって、パイプライン1が交流誘導の影響を受けることがあり、交流誘導発生検知手段5Bは、このような周辺環境変化等に伴う交流誘導発生を流電陽極発生電流のモニタリングによって検知するものである。
パイプライン1が、カソード防食対象区間で、ある時点において高圧交流架空送電線の影響等により交流誘導を受けると、保存波形(基本計測時間内で最大値Imaxを示した単位計測時間20msecのサンプリングデータ)が商用周波数と同じ周波数になる。したがって、保存波形の周波数が商用周波数と同じであることを判定して、パイプライン1に交流誘導が発生したことを検知する。
保存波形が商用周波数と同じとみなす判定は、20msec単位で保存されている時系列データ内の値で、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し、且つ最大値と平均値との差と平均値と最小値との差が等しい場合とする。そして、例えば、3日連続して交流誘導が検知されたら、アラームを発生させる。
図6は、交流誘導発生検知手段5Bの具体的な検知手法を示した説明図である。ここでは、交流誘導発生が検知された場合に、下記式(g)で表される保存波形の交流電流値I(AC)save(m番目の単位計測期間が保存波形の場合)を求め、これを監視する。そして、3日間連続で交流誘導の発生が検知された場合には、プローブ電流密度の計測を行い、プローブ交流電流密度がカソード防食基準に合格していない場合は、対策措置を施すことにする。
Figure 0004767145
(流電陽極寿命予測手段(工程))
流電陽極寿命予測手段5Cは、電流モニタリング手段4による流電陽極発生電流のモニタリングデータに基づいて、流電陽極3の寿命を予測するものであり、下記式(d)による寿命予測演算を実行する手段である。
本発明の実施形態によると、交流誘導発生検知手段5Bによってカソード防食対象区間に作用する交流誘導が検知された場合には、交流腐食による消耗分を加味して寿命予測を行う。ここで、「有効電気容量」とは、流電陽極の理論電気容量から自己腐食分(一般に50%とみる、電流効率とも称される)を差し引いた電気容量である。この「有効電気容量」が、防食電流である流電陽極発生電流の直流電流,及び交流電流として消費されるので、流電陽極の寿命は、有効電気容量の消費速度で決定されることになる。本発明の実施形態では、有効電気容量の実際の消費速度で予測するため、正確な値となる。
Figure 0004767145
具体的には、式(d)において、換算係数aは、1年が8760時間(24時間×365日)であることから、1日(24時間)を年(Y)単位に換算したものであり、24/8760=0.00274となる。また、電流モニタリング手段の実施例では、1日に1回、設定された時刻から開始して15分間のモニタリングを行うこととしている。式(d)によると、1日の流電陽極発生電流の直流電流の平均値I(DC)aveが翌日の設定された時刻までこの値を継続すると仮定しており、1日の流電陽極の交流腐食電気量Tは、保存波形によって求められる交流腐食電気量が1日継続すると仮定して求められる。
図7は、Mg陽極の交流腐食電気量の導出方法を示した説明図である。保存波形において、図示の斜線部の面積を、Tm(mA・msec/m2)=2×(2/π)×IAC max×10で求める。ここで、IAC max=Imax−I(DC)ave(Imax:保存波形(単位計測時間)内の最大値、I(DC)ave:保存波形内の平均値)である。そして、交流腐食電気量ΣTは、交流誘導の発生が継続している期間(継続している日)だけ上記のTmが継続するとして求められる。なお、式(d)は、任意に設定された基本計測時間から求められるものであって、1日の計測時間には依存しない。また、毎日の計測結果から流電陽極の寿命を予測するので、レール漏れ抵抗の低い雨天の日を飛ばして楽観視した結果を導き出すことが無く、カソード防食状況を適正に評価した寿命予測を行うことができる。
[パイプライン健全性評価方法]
図8〜図10は、本発明の実施形態に係るパイプライン健全性評価システムを用いたパイプライン健全性評価方法を説明するフローである。
先ず、カソード防食システム設計(S1)では、前述したように、パイプライン1のカソード防食対象となる区間(カソード防食対象区間)を設定し、該区間の両端で、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブ2A,2Bをパイプライン1に接続し、前記区間の中央位置でパイプライン1に流電陽極3を接続するに際して、プローブ2A,2Bによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極3からの発生電流を設定する。
その後、その設計されたシステムを設置した後、稼働させて、カソード防食対象区間内に防食電流を通電する(S2)。同時に、電流モニタリング手段4によって、流電陽極発生電流のモニタリングを行う(S3)。
そして、プローブ2A,2Bによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように流電陽極3からの発生電流を防食電流として流しながら、塗覆装欠陥検知手段5Aによる塗覆装欠陥検知工程(S4)によって、パイプライン1の健全性評価を行う。
塗覆装欠陥検知工程(S4)では、電流モニタリング手段4による流電陽極発生電流のモニタリングに基づいて、流電陽極発生電流に前回(前日)の値の15%超増の値が出現するか否かを検知し(S5)、出現した場合に検知有り(YES)として、図9に示す(A)のフローに移行する。
塗覆装欠陥検知工程(S4)で前述した15%超増の値が出現しない場合(S5:NO)或いは塗覆装欠陥検知工程(S4)を行わない場合は、交流誘導発生検知手段5Bによる交流誘導発生検知工程(S6)によって、パイプライン1の健全性評価を行う。
交流誘導発生検知工程(S6)では、電流モニタリング手段4による流電陽極発生電流のモニタリングに基づいて、保存波形に商用周波数の周期と一致する正弦波が出現するか否かを検知し(S7)、出現した場合に検知有り(YES)として、図10に示す(B)のフローに移行する。
交流誘導発生検知工程(S6)で前述した正弦波が出現しない場合(S7:NO)或いは交流誘導発生検知工程(S6)を行わない場合は、流電陽極寿命予測工程(S8)に移行する。
この場合の流電陽極寿命予測工程(S8)では、交流誘導発生が検知されていないので、直流腐食消費分のみを考慮して前述した寿命予測演算処理が行われ、再び、流電陽極発生電流のモニタリングを継続する(S3)。
そして、塗覆装欠陥検知工程(S4)で検知有り(S5:YES)の場合には、図9に示す対策措置フローが実行される。すなわち、流電陽極発生電流のモニタリング結果が、3日連続して同レベルの値を維持しているか否かを判断する(S10)。維持している場合には(S10:YES)、カソード防食対象区間に塗覆装欠陥が発生していると判断して、この区間に対して塗覆装欠陥検査(ACVG等)を実施(S11)することで、具体的な欠陥部の位置を特定し、必要な対策措置をとる(S12)。本発明の実施形態では、設定された1km程度の区間に検査範囲が特定されるので、塗覆装欠陥位置の検査及び対策措置を容易に行うことができる。
また、S10で3日連続して同レベルの値を維持していない場合(S10:NO)、I(DC)aveがS5以前のレベルに戻ったか否かを判定し(S13)、戻っている場合(S13:YES)には、引き続き流電陽極発生電流のモニタリングを継続する(S3)。S13でI(DC)aveがS5以前のレベルに戻っていない場合には(S13:NO)、塗覆装欠陥検査(ACVG等)を行い(S14)、必要な対策措置をとる(S12)。そして、対策措置(S12)が実施された後には、I(DC)aveがS5以前のレベルに戻ったことを確認して(S15)、引き続き流電陽極発生電流のモニタリングを継続する(S3)。
更に、交流誘導発生検知工程(S6)で検知有り(S7:YES)の場合には、図10に示す対策措置フローが実行される。すなわち、流電陽極発生電流のモニタリング結果から、3日連続して保存波形が商用周波数の周期と一致する正弦波であるか否かを判断し(S20)、正弦波である場合には(S20:YES)、プローブ2A,2Bによってプローブ電流密度(プローブ直流電流密度及びプローブ交流電流密度)の計測を行う(S21)。そして、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準と計測の結果とを照査し、カソード防食基準に合格しているか否かを判断する(S22)。合格している場合には(S22:YES)、判定○で対策不必要と判定して(S23)、流電陽極寿命予測工程(S24)に移行する。この場合の流電陽極寿命予測工程(S24)では、交流誘導が検知された期間のみ交流腐食による消耗分を加味した寿命予測演算処理が行われ、再び、流電陽極発生電流のモニタリングを継続する(S3)。
また、S22でカソード防食基準に合格していない場合には(S22:NO)、流電陽極の増設等の対策措置を実行した後(S26)、プローブ電流密度の計測を繰り返し(S21)、プローブ電流密度の計測結果がカソード防食基準に合格するまで対策措置を継続する。
また、S20で3日連続して交流誘導発生が検知されなかった場合には(S20:NO)、I(AC)aveがS7以前のレベルに戻ったか否かを判定し(S25)、戻っている場合(S25:YES)には、引き続き流電陽極発生電流のモニタリングを継続する(S3)。S25でI(AC)aveがS7以前のレベルに戻っていない場合には(S25:NO)、前述したプローブ電流密度の計測フロー(S21)に移行する。
従来技術の説明図である。 本発明の実施形態に係るカソード防食システム及びパイプライン健全性評価システムを示す説明図である。 本発明の実施形態に係るカソード防食システムの防食状況を示す説明図である。 本発明の実施形態における電流モニタリング手段によるモニタリング工程の一例を示す説明図である。 本発明の実施形態における塗覆装欠陥検知手段の具体的な検知手法を示した説明図である。 本発明の実施形態における交流誘導発生検知手段の具体的な検知手法を示した説明図である。 流電陽極の交流腐食電気量の導出方法を示した説明図である。 本発明の実施形態に係るパイプライン健全性評価システムを用いたパイプライン健全性評価方法を説明するフローである。 本発明の実施形態に係るパイプライン健全性評価システムを用いたパイプライン健全性評価方法を説明するフローである。 本発明の実施形態に係るパイプライン健全性評価システムを用いたパイプライン健全性評価方法を説明するフローである。
符号の説明
1 パイプライン
2A,2B プローブ(先端の黒色が模擬された塗覆装欠陥部)
20 電線
21 シール
23 電圧計
24 照合電極
3 流電陽極
30 電線
4 電流モニタリング手段
5 演算処理手段
5A 塗覆装欠陥検知手段
5B 交流誘導発生検知手段
5C 流電陽極寿命予測手段
6 健全性評価装置

Claims (16)

  1. 高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行うシステムであって、
    前記パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定し、
    該区間の両端で前記パイプラインに接続され、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブと、前記区間の中央位置で前記パイプラインに接続される流電陽極とを備え、
    前記プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように前記流電陽極からの発生電流を設定することを特徴とする流電陽極方式によるカソード防食システム。
  2. 前記流電陽極から発生する直流電流は、1本の流電陽極から発生する直流電流又は複数本の流電陽極から発生する総発生電流の直流電流が、防食電位,防食電流通電前のプローブ対地電位,プローブの接地抵抗,及びプローブが接している電解質の電気抵抗率から求められる所要防食電流以上になるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の流電陽極方式によるカソード防食システム。
  3. 前記区間の長さを1kmとし、前記塗覆装欠陥部面積を10cm2として、前記所要防食電流Ipは下記式(a)で求められることを特徴とする請求項2に記載の流電陽極方式によるカソード防食システム。

    Figure 0004767145
  4. 前記流電陽極をn本のMg陽極とし、下記式(b)からなる総発生電流の直流電流I(DC)が前記所要防食電流Ip以上になるように、Mg陽極n本の総接地抵抗RMg(n)を設定することを特徴とする請求項3に記載の流電陽極方式によるカソード防食システム。

    Figure 0004767145
  5. 前記Mg陽極n本の総接地抵抗RMg(n)を下記式(c)で求められるMg陽極本数nで設定することを特徴とする請求項4に記載の流電陽極方式によるカソード防食システム。

    Figure 0004767145
  6. 高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行う方法であって、
    前記パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定する工程と、
    該区間の両端で、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブを前記パイプラインに接続する工程と、
    前記区間の中央位置で前記パイプラインに流電陽極を接続する工程とを有し、
    前記プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように前記流電陽極からの発生電流を設定することを特徴とする流電陽極方式によるカソード防食方法。
  7. 前記流電陽極から発生する直流電流は、1本の流電陽極から発生する直流電流又は複数本の流電陽極から発生する総発生電流の直流電流が、防食電位,防食電流通電前のプローブ対地電位,プローブの接地抵抗,及びプローブが接している電解質の電気抵抗率から求められる所要防食電流以上になるように設定されることを特徴とする請求項6に記載の流電陽極方式によるカソード防食方法。
  8. 前記区間の長さを1kmとし、前記塗覆装欠陥部面積を10cm2として、前記所要防食電流Ipは下記式(a)で求められることを特徴とする請求項7に記載の流電陽極方式によるカソード防食方法。

    Figure 0004767145
  9. 高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行いながらパイプラインの健全性を評価するシステムであって、
    前記パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定し、
    該区間の両端で前記パイプラインに接続され、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブと、
    前記区間の中央位置で前記パイプラインに接続される流電陽極と、
    前記パイプラインと前記流電陽極間を接続する電線間に設置され前記流電陽極からの発生電流をモニタリングする電流モニタリング手段と、
    前記電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値の増加を検知して、前記区間内に塗覆装欠陥が発生したことを検知する塗覆装欠陥検知手段と、を備え、
    前記プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように前記流電陽極からの発生電流の直流電流を設定した状態で、前記塗覆装欠陥検知手段によって前記パイプラインの健全性を評価することを特徴とするパイプライン健全性評価システム。
  10. 高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行いながらパイプラインの健全性を評価するシステムであって、
    前記パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定し、
    該区間の両端で前記パイプラインに接続され、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブと、
    前記区間の中央位置で前記パイプラインに接続される流電陽極と、
    前記パイプラインと前記流電陽極間を接続する電線間に設置され前記流電陽極からの発生電流をモニタリングする電流モニタリング手段と、
    前記電流モニタリング手段でモニタリングされたデータの中で最大値を含む単位計測時間の時系列データ値から、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し、且つ前記最大値と前記時系列データ値の平均値との差と当該平均値と前記最小値との差が等しいことを検知して前記区間に作用する交流誘導を検知する交流誘導発生検知手段と、を備え、
    前記プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように前記流電陽極からの発生電流の直流電流を設定した状態で、前記交流誘導発生検知手段によって前記パイプラインの健全性を評価することを特徴とするパイプライン健全性評価システム。
  11. 前記交流誘導発生検知手段によって前記区間に作用する交流誘導が検知された場合に、前記電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値から、下記式(d)によって前記流電陽極の寿命LSを求める寿命予測手段を更に備えることを特徴とする請求項10に記載のパイプライン健全性評価システム。

    Figure 0004767145
  12. 前記プローブのプローブ電流密度を計測し、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準と前記計測の結果とを照査するカソード防食維持管理手段を更に備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のパイプライン健全性評価システム。
  13. 高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行いながら健全性を評価する方法であって、
    前記パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定する工程と、
    該区間の両端で、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブを前記パイプラインに接続する工程と、
    前記区間の中央位置で前記パイプラインに流電陽極を接続する工程と、
    前記パイプラインと前記流電陽極間を接続する電線間に電流モニタリング手段を設置し、該電流モニタリング手段で前記流電陽極からの発生電流をモニタリングする工程と、
    前記電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値の増加を検知して、前記区間内に塗覆装欠陥が発生したことを検知する塗覆装欠陥検知工程と、を有し、
    前記プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように前記流電陽極からの発生電流の直流電流を設定した状態で、前記塗覆装欠陥検知工程によって前記パイプラインの健全性を評価することを特徴とするパイプライン健全性評価方法。
  14. 高抵抗率塗覆装が施されたパイプラインを防食対象として、流電陽極方式によってカソード防食を行いながら健全性を評価する方法であって、
    前記パイプラインのカソード防食対象となる区間を設定する工程と、
    該区間の両端で、同面積の塗覆装欠陥部を模擬するプローブを前記パイプラインに接続する工程と、
    前記区間の中央位置で前記パイプラインに流電陽極を接続する工程と、
    前記パイプラインと前記流電陽極間を接続する電線間に電流モニタリング手段を設置し、該電流モニタリング手段で前記流電陽極からの発生電流をモニタリングする工程と、
    前記電流モニタリング手段でモニタリングされたデータの中で最大値を含む単位計測時間の時系列データ値から、最大値を示した時刻と最小値を示した時刻との時差が商用周波数の1周期の1/2に該当し、且つ前記最大値と前記時系列データ値の平均値との差と当該平均値と前記最小値との差が等しいことを検知して前記区間に作用する交流誘導を検知する交流誘導発生検知工程と、を有し、
    前記プローブによって計測されるプローブオフ電位が防食電位以下になるように前記流電陽極からの発生電流の直流電流を設定した状態で、前記交流誘導発生検知工程によって前記パイプラインの健全性を評価することを特徴とするパイプライン健全性評価方法。
  15. 前記交流誘導発生検知工程で前記区間に作用する交流誘導が検知された場合に、前記電流モニタリング手段でモニタリングされた時系列データ値から、下記式(d)によって前記流電陽極の寿命LSを求める寿命予測工程を更に備えることを特徴とする請求項14に記載のパイプライン健全性評価方法。

    Figure 0004767145
  16. 前記プローブのプローブ電流密度を計測し、プローブ電流密度を指標としたカソード防食基準と前記計測の結果とを照査するカソード防食維持管理工程を更に有することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載のパイプライン健全性評価方法。
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