JP4601155B2 - 防食監視方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に埋設され陰極防食の施されている防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間における防食状態を監視する防食監視用電極及び防食監視方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気防食としては、金属構造物に陰極(カソード)電流を通じて防食する陰極防食が一般的であり、この陰極防食には、外部電源法(外電法ともいう)と、犠牲陽極法(流電陽極法ともいう)の2方式がある。
図5は陰極防食の2方式を説明する図であり、同図の(a)は外部電極法を、(b)は犠牲陽極法を説明する図である。
【0003】
外部電極法は、図5(a)のように、例えば商用電源を整流して直流電源3aとし、不溶性の電極(図示の対極2a)を正極として、被防食体1aを負極(カソード)として、正極から負極に通電する。この場合、通電する電流値が適当な値となるように出力電圧値を調整する。
犠牲陽極法は、図5(b)のように、例えば亜鉛、アルミニウム、マグネシウム合金等の犠牲陽極2bの溶解に伴って発生する電流を被防食体1aに通電する。この場合、出力調整用の可変抵抗器によりなる出力調整器3bの抵抗値を調整して通電する電流値を調整する。
【0004】
図6は従来の防食電位測定法を説明する図である。図6において、1は地中に埋設された防食被覆鋼材、2は対極又は犠牲陽極、3は直流電源又は出力調整器、4は疑似部材、5は参照電極、7は常時閉で、動作時に開となるスイッチ、8は電流計、9は電圧計、13は鋼材露出部である。
従来、地中に埋設され電気防食が施されている被防食体(この例では防食被覆鋼材1)の防食管理法として、地中に埋設されている被防食体と地表面に配設されている参照電極5との間の電位差を計測する防食電位を用いていた。
【0005】
防食電位計測法としては、ON電位あるいはOFF電位による検出方法が一般的である。この方法は、防食被覆鋼材1と同一材質(この場合鋼)よりなる小片の疑似部材4を地中の防食被覆鋼材1の近傍に埋め、通常状態(非測定時)においては、この疑似部材4を、常時閉のスイッチ7と電流計8を介して防食被覆鋼材1に短絡させておき、測定時に、スイッチ7を開として短絡状態を切り、この瞬間(100ms以内)における疑似部材4と参照電極5との間の電位差を測定し、これを防食被覆鋼材1の防食電位とするものである。
なお、参照電極5の電位をできるだけ防食被覆鋼材1が埋設された近傍の電位となるようにして、正確に防食電位を計測する発明として特開平6−265511号公報に示されたものがある。
【0006】
図7は防食被覆鋼材に発生する欠陥の種類ないし態様を説明する図である。同図の(a)は、鋼材14の防食被覆15の一部に破損した箇所があり、その破損した箇所の防食被覆15が完全にとれた状態の鋼材露出部13が存在する場合であり、(b)は防食被覆の重なり部における隙間、例えば、防食被覆鋼管の溶接継手部に施された熱収縮チューブの端がめくれて隙間16ができ、この隙間16から地中の水が流入し、内部が腐食するような場合である。
防食被覆鋼材の欠陥が、図7(a)に示した鋼材露出部13の場合には、図6に示したようにこの鋼材露出部13に防食電流が流入するので、防食効果がある。従って、この鋼材露出部13がある欠陥に対しては、従来の防食電位測定法は、防食被覆鋼材の防食管理法としても、有効な方法と考えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、被防食体が防食被覆鋼材であり、さらにこの防食被覆鋼材の欠陥として、図7(b)に示したような防食被覆の隙間(一般に0.5〜20mm程度の隙間)があると多くの場合、地下水が流入する。地下水があると電気的導電ができるが、この隙間の大小により、隙間の電気抵抗値が大きく変わる。すなわち、隙間が小さい場合には、電気抵抗が大きいので、防食電流はこの隙間にはあまり流入しない。さらに地中には、電気鉄道を起点とする迷走電流が存在し防食被覆の隙間から、この迷走電流が流出する。このため、隙間に流入する防食電流は少ないうえ、迷走電流が流出するので、隙間内部の鋼が腐食することが多い。
しかし、これまで、この隙間内部の鋼の腐食状態を外部より計測する方法はなかった。言い換えると、従来の防食管理技術は、図7(a)の鋼材露出部13のような表面の防食被覆15が完全にオープンとなっている欠陥だけにしか適用できなかった。従って、図7(b)に例示するような、防食重なり部の防食被覆15が一部剥離し、しかもその剥離した箇所の防食被覆15間の隙間16を通じて鋼材面17が外部に連通しているような欠陥に対しては防食電位を測定することさえ不可能であった。
【0008】
この問題に対する一つの解決策が特開平2000−192265号公報にて提案されている。この方法は、防食重なり部の防食被覆間の隙間と等価な状態を電極部に形成するものである。しかし、この方法により防食電位等を測定することにより防食管理を行うことはできるが、防食被覆鋼材の腐食の進行度合すなわち、腐食速度を測定するものではなかった。
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥に対しても適用することができ、しかも腐食速度を正確に検知することができる防食監視方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る防食監視方法は、地中に埋設され陰極防食が施されている防食被覆鋼材の防食状況を監視する方法において、
防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間の大きさをシミュレートした穴を有する有底筒状部材であって、該有底筒状部材の前記穴の内部に防食被覆鋼材と同一材質の線材または帯板からなるオープンループ状の電極と参照電極を配設した防食監視用電極を前記防食被覆鋼材の近傍に埋設し、
平常時は前記オープンループ状の電極と前記防食鋼材とを短絡させる第1の測定回路により前記オープンループ状の電極に通じる電流の向きと電流密度及び前記オープンループ状の電極と参照電極との間の電位を測定することにより、前記防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥の防食状況を監視し、
定期的あるいは必要時には前記第1の測定回路にスイッチを介して接続された第2の測定回路により前記オープンループ状の電極の電気抵抗を測定することにより、前記防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥の腐食速度をチェックすることを特徴とするものである。
【0012】
まず第1に、本発明においては、有底筒状部材と、この有底筒状部材に設けた穴の内部に配設され、防食被覆鋼材と同一材質の線材または帯板からなるオープンループ状の電極と、参照電極とを備えた防食監視用電極を用いることに特徴がある。有底筒状部材の穴は、あらかじめ防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間の大きさをシミュレートすることによって、この穴を通して流入・流出する電流の抵抗を調整しておく。従って、この穴は電流の抵抗調整部となっている。
次に、防食電位を測定するためのオープンループ状の電極と参照電極は、前記穴の内部に配設される。
ここで、オープンループ状の電極とは、例えば、U型、V型、W型、コ字型、円弧型、あるいは棒状、平板状などの電極形状を有するものであり、防食被覆鋼材と同一材質の線材または帯板からなるものである。
すなわち、この防食監視用電極は、オープンループ状の電極に通じる電流の向きと電流密度及びオープンループ状の電極と参照電極との間の電位を測定する第1の測定回路と、この第1の測定回路にスイッチを介して接続され、オープンループ状の電極の電気抵抗を測定する第2の測定回路とを備えている。そして、このように構成された防食監視用電極を防食被覆鋼材の近傍に埋設しておき、オープンループ状の電極と参照電極間の電位を測定することによって、防食被覆鋼材の防食電位を測定することができる。このとき、非測定時にはオープンループ状の電極を防食被覆鋼材に短絡させておき、測定時には前記短絡状態を開放状態にして、開放状態になった瞬間におけるオープンループ状の電極と参照電極との間の電位を測定すると、さらに高精度で計測できる。
一方、オープンループ状の電極の電気抵抗を測定することによって防食被覆鋼材の腐食の進行度合(腐食速度)を検知することができる。この原理は以下のとおりである。
金属は腐食によって厚みを減少するが、そのときの試料の電気抵抗は長さが一定であれば断面積に依存するので、試料の厚み減少によって抵抗値は増大する。表面に付着した腐食生成物の電導度は金属素地に比べて著しく小さいので抵抗値には影響しない。従って、腐食前後の金属の電気抵抗を測定することにより断面積の変化を求め、腐食量が求められる。よって、オープンループ状の電極の電気抵抗値から、防食被覆鋼材の現時点の電気防食状態や腐食の進行度合を正確に確認かつ予測でき、電気防食対策を的確に行うことができる。
【0013】
第2に、本発明は、有底筒状部材からなる防食監視用電極を用いることによって、防食被覆の隙間の流入水の水質の変化を推測でき、これによって防食監視を強化するなど、迅速な電気防食対策を講じることができることである。この場合、防食監視用電極は、上向きとなるように設置して、前記穴の内部をあらかじめ防食被覆鋼材の設置場所近傍の地下水あるいは土壌の比抵抗と同等の電解液または電解液をゲル化もしくはゾル化したもの(以下、同等電解液と称する)で満たしておく。
このように同等電解液で穴の内部を満たしておくことによって、防食被覆の隙間の流入水の水質変化を防食電位測定値の変化から知ることができる。
従って、前記同等電解液を穴の内部に十分に満たしておくために、前記有底筒状部材は、前記穴に連通する拡径された第2の穴を有し、その第2の穴の底部またはその近傍に前記オープンループ状の電極と参照電極を配設してなる防食監視用電極とすることが望ましい。
また、平常時はオープンループ状の電極に通じる電流の向きと電流密度及びオープンループ状の電極と参照電極との間の電位を測定することにより、防食被覆鋼材の防食状況を監視し、定期的あるいは必要時にオープンループ状の電極の電気抵抗を測定することにより、防食被覆鋼材の腐食速度をチェックすればよい。これにより、電気防食管理を万全に実施することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の防食監視方法の説明図であり、図2〜図4は防食監視用電極の構成を示す図である。
【0015】
まず、本発明に係る防食監視用電極の構成について説明する。
この防食監視用電極6は、基本的には、図2に示すように有底筒状部材10に穴11を設け、その穴11の底部または近傍に、例えば、U型形状をしたオープンループ状の電極61と参照電極62を配設したものである。穴11は、防食被覆重なり部の隙間16の大きさをシミュレートしたもので、隙間16の大きさに応じて穴径D及び穴の長さLを調整してある。隙間16の大きさは、防食被覆鋼管の場合、通常0.5〜20mm程度であるので、その中から最も頻度の高い隙間の大きさに合わせるよう穴径等が決められる。
【0016】
有底筒状部材10は、一般的な絶縁材料であるプラスチック材料(例えばアクリル樹脂)からなっている。また、有底筒状部材10は防食監視用電極6を埋設する際に、土砂や振動、埋設後の土圧などによりオープンループ状の電極61の変形や破損を防止する。また、オープンループ状の電極61は防食被覆鋼材1と同一材質の鋼線からなっている。参照電極62は耐食性の高い材料が好ましい。63、64はそれぞれオープンループ状の電極61及び参照電極62に接続された接続ケーブルである。
【0017】
また、この防食監視用電極6は、好ましくは図3に示すように構成されている。図4は図3の断面図である。図1にはこの構成例の防食監視用電極6を示してある。
図3、図4に示す防食監視用電極6の有底筒状部材10は、図2のものと同様に、穴径D及び穴の長さLを調整された第1の穴11と、この穴11に連通する拡径された第2の穴12を有する。オープンループ状の電極61及び参照電極62は、第2の穴12を塞ぐ底板13に取り付けられ、両電極61、62間は、例えばエポキシ樹脂で絶縁されている。
そして、第1の穴11は前述したように防食電流の抵抗調整部を構成し、第2の穴12は電極室となっており、この電極室12は同等電解液で満たされるものである。
この防食監視用電極6は、地中の防食被覆鋼材1の近傍位置に、先端の開口部11aが鉛直方向の上側となる姿勢で設置される。
【0018】
防食電流抵抗調整部を構成する第1の穴11は、その穴径が、防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間16の電気抵抗値と同一の電気抵抗値となるように、隙間をシミュレートした穴径に製作される。
これは古い防食被覆埋設管を掘り出した際に、防食被覆重なり部の隙間を実測し(0.5〜20mm程度ある)、この実測値を多数収集したデータに基づき、最も頻度の高い値、最大値、最小値等をあらかじめ求めておく。
そして、第1の穴11を製作する際に、使用条件や客先仕様等に応じてどの値を採用するかを決定し、この採用した値の隙間をシミュレートした穴径及び長さで製作するようにしている。
【0019】
防食電流抵抗調整部(すなわち、第1の穴)11は、先端の開口部11aが鉛直方向の上側となる姿勢に設置されるので、土壌と通電可能となるが、地中の砂等がこの開口より入らないように、埋設時には、絶縁材よりなる網や海綿(水分は自由に通過できるように)でカバーや栓をすることが望ましい。
そして電極室を構成する第2の穴12は同等電解液で満たされる。
【0020】
電極室すなわち第2の穴12は、所定容量の同等電解液の充填可能な空間を有する。また、同等電解液の注入がしやすいように電極室12に横穴の注入口を設けてもよい。
この電極室12の底部には、互いに電気的に絶縁されたオープンループ状の電極61及び参照電極62が配設され、前記各電極61、62にそれぞれ外部接続ケーブル63、64が配線されている。オープンループ状の電極61及び参照電極62の電極形状や配置は特に限定されない。第2の穴12の底面近くの内周面に各電極61、62を配置してもよい。
【0021】
防食監視用電極6は、地中に埋設される際には、少なくとも電極室12に同等電解液を注入しオープンループ状の電極61及び参照電極62の全体を同等電解液で満たすようにしてから、開口部11aを上向きとして、設置する。
同等電解液の注入によって、電極室12内に配設されたオープンループ状の電極61及び参照電極62の各電極は、同等電解液の電気抵抗を介して、また第1の穴11を介して地中の土壌と通電状態となるとともに、被覆隙間の流入水の水質変化を検知することが可能となる。
【0022】
オープンループ状の電極61は、防食被覆鋼材1と同一材質の鋼で製作される。そして設置時に同等電解液の注入される電極室12内に設けられ、防食被覆鋼材1と同一材質の鋼で製作されるオープンループ状の電極61は、設置後に腐食が生じ、時間経過とともに腐食状態が進行する。この電極61の腐食状態は、実際に地中に埋設され電気防食の施されている防食被覆鋼材1の防食被覆重なり部の隙間16から水が流入し、内部の鋼に生ずる腐食状態と同一状態となるように(腐食状態をシミュレートするために)生成させるものである。
【0023】
参照電極62は、例えば鉛、亜鉛、白金、モリブデン、タングステン等で製作される。なお、この参照電極62は、図5と同様に、防食電位を計測する際の参照電極として用いられるものであるので、同等電解液の注入される電極室12に設置されても長期間腐食しない材料で製作される。また参照電極62をオープンループ状の電極61と共に電極室12内に配設することにより、この防食監視用電極6の埋設時に、参照電極62は防食被覆鋼材1の近傍に設置されるから、防食電位計測時に、防食被覆鋼材1への防食電流と土壌抵抗によるIR損を含まない真の電位計測を行うことができる。
【0024】
次に、図1により、防食電位の測定方法を説明する。
図1において、1は地中に埋設された防食被覆鋼材、2は対極又は犠牲陽極、3は直流電源又は出力調整器であり、2、3は図5で説明した外部電極法又は犠牲陽極法のいずれの電気防食でもよいことを示している。
6は前記のように構成された防食監視用電極、7は常時閉で、動作時に開となるスイッチである。8は電流計、9は電圧計で、これらスイッチ7、電流計8、電圧計9を有する第1の測定回路20は、防食被覆鋼材1と、オープンループ状の電極61の一方の端子と、参照電極62との間に接続されている。また、オープンループ状の電極61の電気抵抗を測定する第2の測定回路22は、電源23、電流計24を有し、スイッチ25、26を介して前記第1の測定回路20とオープンループ状の電極61の他方の端子との間に接続されている。図中、16は図7の(b)に示した防食被覆重なり部の隙間である。
【0025】
通常状態(非測定時)においては、オープンループ状の電極61は、スイッチ7の常時閉回路及び電流計8を介して防食被覆鋼材1に短絡されている。また防食監視用電極6は、防食被覆鋼材1の近傍に設置されている。そしてオープンループ状の電極61に通じる電流の向きを測定し、該電極61に電流が流入していれば防食されており、電流が流出していれば腐食が生じており、防食されていないと判定する。また電流密度を測定し、防食電流が有効に流れていることを監視する。また防食電位計測時には、スイッチ7の回路を開として短絡状態を切り、この開放状態になった瞬間(100ms以内)における電極61と参照電極62との間の電位差を測定し、これを防食被覆鋼材1の防食電位として求めるものである。通常、防食被覆鋼材が軟鋼の場合、電位を銅/硫酸銅電極を基準として−850mV以下に保てば防食電流が流れて腐食を防ぐ。以上の測定は第1の測定回路20を用いて行う。
【0026】
対極又は犠牲陽極2から防食被覆鋼材1に流れる防食電流は、第1の穴11からなる防食電流抵抗調整部を通って電極室12にも流入し、しかも第1の穴11は、図7(b)のような隙間16の大きさをシミュレートして防食電流抵抗を調整したものであるので、このような防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥であっても、前記のように電流の向きと電流密度及び防食電位を測定することによって、その欠陥の防食状態を正確に監視することができる。
【0027】
次に、例えば、電気防食が不十分であるような場合、防食被覆鋼材1の腐食が進行する。そこで、腐食の進行度合(腐食速度)を知るために、オープンループ状の電極61と電源23、電流計24との間に第2の測定回路22がスイッチ25、26を介して接続されている。スイッチ7の回路を開として第2の測定回路22によって、オープンループ状の電極61の電気抵抗を測定し、その測定値(電気抵抗値)から、防食被覆鋼材1の腐食速度を推定するものである。
電気抵抗の測定は、定期的またはその必要があるときに行えばよく、通常は、前記のように電流の向きと電流密度及び防食電位の測定によって電気防食の管理を行っている。そして、このときのモニターに異常がみられたような場合には、まず、スイッチ25、26をそれぞれa接点からb接点へ、c接点からd接点へ切り替え、スイッチ7の回路を開としてオープンループ状の電極61の両端子間で閉ループの電気抵抗測定回路(第2の測定回路)を形成する。この回路22によりオープンループ状の電極61の電気抵抗を測定することができ、その電気抵抗値から電極61の腐食速度、ひいては防食被覆鋼材1の腐食速度がわかる。これにより、防食被覆鋼材1の腐食進行状況を正確に予測することができる。
【0028】
【実施例】
腐食速度計測の実施例を以下に示す。
防食監視用電極には炭素鋼(SS400)から製作したU字型電極を用いた。また、比較のために、重量減少の計測用の試料として、同じ炭素鋼(SS400)、100×150×3.2mm厚の鋼板を用いた。この試料及びU字型電極を3.5%NaCl溶液中に大気中で自然浸漬した。
U字型電極は1週間毎に外観観察を行い、全面腐食していることを確認した後、電極の両端に電圧を印加して電気抵抗を測定し、電気抵抗から断面積を計算した。比較のための試料の鋼板は、3つの試料を同時に前記溶液に浸漬し、1週間毎に1枚ずつ引き上げ、除錆後、重量計測を行った。溶液は、1週間毎に新しいものと取り替えた。重量を計測した後、表面積と密度から腐食速度を計算した。
表1に計算結果を示す。単位は年に換算した値である。
【0029】
【表1】
Figure 0004601155
【0030】
表1より、電気抵抗から計算した腐食速度と重量減少量から計算した腐食速度はほぼ一致していることがわかる。また、錆の無い初期は腐食速度が大きく、表面が錆で覆われると腐食速度が低下する傾向も一致した。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間の大きさをシミュレートした穴を有する有底筒状部材であって、該有底筒状部材の穴の内部に配設され、防食被覆鋼材と同一材質からなるオープンループ状の電極と、参照電極とを備えた防食監視用電極を用い、この防食監視用電極を防食被覆鋼材の近傍に埋設して、オープンループ状の電極に通じる電流の向きと電流密度及びオープンループ状の電極と参照電極間の電位を測定し、またオープンループ状の電極の電気抵抗を測定するものであるので、防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥に対しても防食電位測定が可能であるとともに、オープンループ状の電極の腐食による断面積減少に基づく電気抵抗の増大から防食被覆鋼材の腐食速度の測定が可能である。
また、前記穴またはこの穴に連通する拡径された第2の穴に同等電解液を入れておくことにより、防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥と同様の腐食状態をこの防食監視用電極によって再現でき、その隙間内部の欠陥の腐食状態を地上より検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防食監視方法の説明図である。
【図2】防食監視用電極の一構成例を示す図である。
【図3】防食監視用電極の他の構成例を示す図である。
【図4】図3の断面図である。
【図5】陰極防食の2方式を説明する図である。
【図6】従来の防食電位測定法の説明図である。
【図7】防食被覆鋼材に発生する欠陥の種類を示す説明図である。
【符号の説明】
1 防食被覆鋼材
2 対極又は犠牲陽極
3 直流電源又は出力調整器
4 疑似部材
5 参照電極
6 防食監視用電極
7 スイッチ
8 電流計
9 電圧計
10 有底筒状部材
11 第1の穴(防食電流抵抗調整部)
12 第2の穴(電極室)
16 防食被覆重なり部の隙間
20 第1の測定回路
22 第2の測定回路
61 オープンループ状の電極
62 参照電極

Claims (3)

  1. 地中に埋設され陰極防食が施されている防食被覆鋼材の防食状況を監視する方法において、
    防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間の大きさをシミュレートした穴を有する有底筒状部材であって、該有底筒状部材の前記穴の内部に防食被覆鋼材と同一材質の線材または帯板からなるオープンループ状の電極と参照電極を配設した防食監視用電極を前記防食被覆鋼材の近傍に埋設し、
    平常時は前記オープンループ状の電極と前記防食鋼材とを短絡させる第1の測定回路により前記オープンループ状の電極に通じる電流の向きと電流密度及び前記オープンループ状の電極と参照電極との間の電位を測定することにより、前記防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥の防食状況を監視し、
    定期的あるいは必要時には前記第1の測定回路にスイッチを介して接続された第2の測定回路により前記オープンループ状の電極の電気抵抗を測定することにより、前記防食被覆鋼材の防食被覆重なり部の隙間内部の欠陥の腐食速度をチェックすることを特徴とする防食監視方法。
  2. 前記防食監視用電極は、前記穴が上向きとなるように設置して、前記穴の内部にあらかじめ防食被覆鋼材の設置場所近傍の地下水あるいは土壌の比抵抗と同等の電解液または電解液をゲル化もしくはゾル化したものを入れてなることを特徴とする請求項記載の防食監視方法。
  3. 非測定時には前記オープンループ状の電極を防食被覆鋼材に短絡させておき、測定時には前記短絡状態を開放状態にして、前記開放状態になった瞬間における前記オープンループ状の電極と参照電極との間の電位を測定することを特徴とする請求項または請求項記載の防食監視方法。
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