JP2005241354A - 導管及び付帯設備の健全性評価計測方法、評価計測プログラム、評価計測装置 - Google Patents

導管及び付帯設備の健全性評価計測方法、評価計測プログラム、評価計測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 評価対象の導管に対する付帯設備の影響を定量的に把握して、導管及びその付帯設備の健全性を的確に評価計測する。
【解決手段】 健全性評価計測装置10は、データ入力部11、制御出力部12、計測演算処理部13、データ記憶部21の各機能部を備え、また、計測演算処理部13が、単位計測部14、サブ計測部15、計測結果出力部16、計測結果分別部17、相関演算部18、健全性評価部19として機能する。評価対象導管の対地電位EP/Sと付帯設備に関連する関連電位Eがデータ入力部11に入力され、計測演算処理部13でこれらの相関係数が求められる。この相関係数に基づいて健全性評価部19での評価がなされる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、カソード防食された導管及びその周辺の付帯設備について、防食に係る健全性を評価計測する方法、プログラム、装置に関するものである。
カソード防食された埋設導管の健全性評価計測方法としては、下記非特許文献1に記載の方法が知られている。これを図1に基づいて説明すると、図示のように、評価対象となる導管1に対して塗覆装欠陥を模したプローブ2(導管と同じ材料からなる所定面積の試験片)を近接させ、また、地表面には照合電極(飽和硫酸銅電極)3を設置し、導管1とプローブ2間を電気的に接続する導線内に電流計5とスイッチ6を設け、プローブ2と照合電極3間を電気的に接続する導線内に電圧計8を設けた計測システムが用いられ、スイッチ6ON時の電圧計8の出力によって得られるプローブオン電位EON、スイッチ6OFFの直後に電圧計8の出力によって得られるプローブオフ電位EOFF、スイッチ6ON時の電流計5の出力によって得られるプローブ電流密度Iを指標にして防食管理を行うものである。
この計測システムにおいては、プローブ2と照合電極3間に防食電流や直流迷走電流が流れていると、これらの電流と土壌抵抗の積である電圧分が、プローブオン電位EON(管対地電位)に含まれることになるので、プローブオン電位EONは、照合電極3の位置によって様々な値をとることになり、カソード防食管理基準と照査することができない。この際には、前述の電圧分はスイッチ6をオフにした直後に消失するという現象を利用して、スイッチ6のオフした直後に計測されるプローブオフ電位EOFFによって、導管1の真の管対地電位を計測することが可能になる。ただし、この計測は、導管に電力高圧交流架空送電線等に起因する交流迷走電流腐食リスクが無い場合の防食評価にのみ有効である。
導管に交流迷走電流腐食リスクが予測される場合の防食管理を行うには、プローブ電流密度Iから求められるプローブ電流密度の直流成分(プローブ流入直流電流密度IDC)と交流成分(プローブ交流電流密度IAC)を評価指標としなければならず、交流電気鉄道システムや電力高圧交流架空送電線等によって交流誘導の影響を受けている導管1に対しては、求められたプローブ電流密度(IDC,IAC)をカソード防食管理基準と照査して、これが基準に合格するか否かで交流迷走電流腐食リスクを評価する。なお、この基準は、直流迷走電流腐食のリスクおよび過防食のリスクも合わせて評価することが可能である。
ここで言うカソード防食管理基準とは、プローブ流入直流電流密度IDCとプローブ交流電流密度IACを座標軸とする二次元座標で表される基準領域である。具体的には、下記の表1又はその内容を図示した図2に示す領域I及び領域IIが基準を満たすカソード防食達成領域である。因みに図示の領域IIIはIDCが不足で腐食が懸念され、領域IVはIACが過大で交流迷走電流腐食が懸念され、領域VはIDCが過大で過防食が懸念される不合格領域である。
Figure 2005241354
細川裕司,梶山文夫,中村康朗「材料と環境」腐食防食協会、2002年、第51巻,第5号,P221−226
前述した方法によると、評価対象の導管に対して、プローブ電流密度I,プローブオフ電位EOFF、或いはプローブオン電位EONを定期的に計測して、これをカソード防食管理基準等の基準値と比較することで、異なる原因による直流迷走電流腐食,交流迷走電流腐食(両者を合わせて迷走電流腐食という)を含むあらゆる腐食,及び過防食といったリスクを総合的に評価して、対象導管の健全性を評価することができる。しかしながら、これによると、対象導管自身の評価は可能であるが、対象導管に対してその周辺の付帯設備が如何に影響しているかを具体的且つ定量的に把握することができないので、プローブ電流密度I,プローブオフ電位EOFF等の計測値から迷走電流腐食リスクが確認された場合であっても、周辺付帯設備の影響を考慮した有効な対策を採ることができないという問題がある。
評価対象の導管に対する付帯設備の影響としては、様々なものがあるが、特に重要性の高いもの挙げると以下のものが考えられる。
一つは、評価対象導管における直流迷走電流腐食の問題であり、その原因となる付帯設備は、他導管のカソード防食設備や稼働時の直流電気鉄道システム等である。
カソード防食対象導管に対して、他の埋設導管のカソード防食設備から発生された直流迷走電流が流入すると、過防食状態を引き起こす場合がある。この過防食状態では、カソード反応の結果生成するアルカリ(OH)によって、塗覆装欠陥近傍の塗覆装の粘着力が低下することによりもたらされる陰極剥離、カソード反応の結果生成する水素が鋼内部に侵入して引き起こされる水素応力割れなどが懸念される。近年、高張力鋼が導管材料として採用される傾向にあることから、導管の割れ感受性が高くなっていることが懸念され、過防食防止に対する管理の重要性が益々高くなっている。また、評価対象導管に直流電気鉄道システム稼働時のレール漏れ電流等による直流迷走電流が流入すると、流入した電流が導管から土壌中に流出する部分で腐食のリスクが発生することになる。
また一つは、評価対象導管における交流迷走電流腐食の問題であり、その原因となる付帯設備は、交流電気鉄道システムや電力高圧交流架空送電線等の交流迷走電流発生源である。これらから評価対象導管が受ける交流誘導によって、交流迷走電流腐食のリスクが発生することになる。
他の付帯設備の影響としては、絶縁継手を介して接続された隣接導管の影響を考慮に入れる必要がある。カソード防食対象の導管は、カソード防食の効果範囲を明確にするために、数キロから数十キロに亘る防食区間の両端に絶縁継手を設けて防食区間外の導管との電気的な繋がりを遮断している。この絶縁継手の絶縁性能が不良になると、隣接導管の接地抵抗がカソード防食対象の導管より低い場合には、カソード防食対象のアノードから隣接導管に相当量の防食電流が流入することになり、カソード防食対象導管の防食効率が低下する問題が生じると共に、隣接導管が同様にカソード防食されている場合には、この隣接導管が前述したような過防食状態になる可能性がある。また、隣接導管に流入した電流の流出部分で腐食リスクが発生することになる。
また、この絶縁継手の絶縁性能が良好であっても、絶縁継手を介して接続された隣接導管間の電位差が大きい場合には、その一方に前述した直流迷走電流腐食の問題が発生することになる。更に、導管が落雷を受けた場合には、電気抵抗が高い絶縁継手が焼損等によって破損してしまうという問題も考えられる。この対策としては、絶縁継手を介して接続された隣接導管間の電位差を小さくするために、隣接導管間に整流方向が異なる2つのダイオードを設置することがなされるが、このような措置が必要であるか否かを、絶縁継手を介して接続された導管間の電位差状態から評価する必要がある。
更に他の付帯設備の影響として、導管とその周囲に配備される鋼製鞘管とのメタルタッチを考慮する必要がある。鋼製鞘管は、カソード防食された埋設塗覆装導管を保護するため、或いは推進工法時に敷設されるもので、導管を包囲した状態で導管と伴に埋設されている。この鋼製鞘管は一般に裸状態の低接地物であるため、鋼製鞘管内のカソード防食対象導管が有効に防食されるように、鋼製鞘管と塗覆装が施された導管との間隙にはモルタル等の電解質を充填することがなされている。
このような鋼製鞘管において、カソード防食された導管とのメタルタッチ部(鋼製鞘管と導管とが電気的導通状態になった部分)が存在すると、かなりの量の防食電流は低接地物である鋼製鞘管に流入することになり、カソード防食対象導管の腐食防止効果が得られないことになって、鞘管内腐食のリスクが発生する。また、前述のメタルタッチ部にカソード防食対象導管の塗覆装欠陥部があると、この塗覆装欠陥部にカソード防食電流が到達しないか或いは流入不足になってしまい、この部分において腐食が進行するリスクが発生することになる。
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、評価対象の導管に対する付帯設備の影響を定量的に把握して、導管及びその付帯設備の健全性を的確に評価計測することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明は以下の特徴を具備するものである。
一つには、カソード防食された導管及びその周辺の付帯設備について、防食に係る健全性を評価計測する方法又はプログラムであって、前記導管の対地電位と、前記付帯設備が前記導管に影響することを把握するために計測される関連電位とを計測すると共に、その計測データを演算処理する計測演算処理手段によって、以下の工程が行われることを特徴とする。或いは、前述の計測演算処理手段に以下の手順を実行させることを特徴とする。
一単位計測時間だけ前記導管における対地電位の計測値をサンプリングした後に、一単位計測時間だけ前記関連電位の計測値をサンプリングする単位計測工程又は手順。
該単位計測工程又は手順を繰り返し、各単位計測工程又は手順における前記導管の対地電位と前記関連電位の計測結果を一組の計測結果として複数組出力する計測結果出力工程又は手順。
前記計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する前記導管の対地電位と前記関連電位との相関を求める相関演算工程又は手順。
該相関に基づいて前記導管又は前記付帯設備の健全性を評価する工程を含む健全性評価工程又は手順。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記計測結果を前記付帯設備の稼働情報に基づいて稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する計測結果分別工程又は手順を有し、これによって分別された計測結果に基づく演算処理によって前記相関演算工程又は手順が行われることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記計測結果出力工程又は手順は、サブ計測工程又は手順の繰り返しからなり、該サブ計測工程又は手順は、前記単位計測工程又は手順を設定回数だけ繰り返す計測工程又は手順と、該計測工程又は手順でサンプリングされた前記単位計測時間内の計測値から前記計測結果となる代表値を求める演算処理工程又は手順とからなることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記単位計測時間内のサンプリング間隔を0.1msとすると共に前記単位計測工程又は手順を50ms以下で行うことを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記関連電位は、前記導管の周辺に埋設されたカソード防食対象導管の対地電位であることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記関連電位は、前記導管の周辺に敷設された直流電気鉄道のレール対地電位であることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記導管のプローブ電流を計測すると共に、前記計測演算処理手段は、その計測データを演算処理する手段を備え、前記計測結果出力工程又は手順において、前記プローブ電流密度の直流成分と交流成分の計測結果が出力され、前記健全性評価工程又は手順において、前記プローブ電流の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、前記相関に有意な負相関が認められた場合に、前記関連電位を計測した付帯設備を対策措置対象に定めることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記健全性評価工程又は手順において、前記プローブ電流密度における交流成分の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、前記交流成分の計測結果に対応するプローブ電流計測値の周期と、想定される交流迷走電流発生源の周期が一致した場合に、該交流迷走電流発生源を対策措置対象に定めることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記関連電位は、絶縁継手を介して前記導管と接続された隣接導管と前記導管との間の電位差であることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記健全性評価工程又は手順において、前記関連電位の絶対値が設定許容範囲内にあり、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記絶縁継手の性能が良好であるとの判定がなされる。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムであって、前記健全性評価工程又は手順において、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の下限未満である場合に、前記絶縁継手の性能が不良であると判定し、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の上限以上である場合に、前記絶縁継手両側の電位差低減措置が必要であるとの判定がなされることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムにおいて、前記関連電位は、前記導管とその周囲に配備された鋼製鞘管との間の電位差であることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムであって、前記健全性評価工程又は手順において、前記関連電位が、設定基準値よりプラス側で、前記相関に有意な正相関が認められた場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが有るとの判定がなされることを特徴とする。
また一つには、前述の導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムであって、前記健全性評価工程又は手順において、前記関連電位が、設定基準値よりマイナス側で、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが無いとの判定がなされることを特徴とする。
また一つには、カソード防食された導管及びその周辺の付帯設備について、防食に係る健全性を評価計測する装置であって、前記導管の対地電位と、前記付帯設備が前記導管に影響することを把握するために計測される関連電位の計測データが入力されるデータ入力部と、前記データ入力部に入力された計測データをサンプリングすると共に演算処理する計測演算処理部とを備え、前記計測演算処理部は、一単位計測時間だけ前記導管における対地電位の計測値をサンプリングした後に、一単位計測時間だけ前記関連電位の計測値をサンプリングする単位計測部と、該単位計測部による単位計測を繰り返し、各単位計測における前記導管の対地電位と前記関連電位の計測結果を一組の計測結果として複数組出力する計測結果出力部と、前記計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する前記導管の対地電位と前記関連電位との相関を求める相関演算部とを備えることを特徴とする。
また、前述した導管及び付帯設備の健全性評価計測装置において、前記計測演算処理部は、前記計測結果を前記付帯設備の稼働情報に基づいて稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する計測結果分別部を有し、これによって分別された計測結果に基づいて前記相関演算部の演算処理がなされるようにしてもよい。
また、前述した導管及び付帯設備の健全性評価計測装置において、前記相関に基づいて前記導管又は前記付帯設備の健全性を評価する健全性評価部を更に備えることもできる。
また、前述した導管及び付帯設備の健全性評価計測装置において、前記計測演算処理部は、前記単位計測部の単位計測を設定回数だけ繰り返し、サンプリングされた前記単位計測時間内の計測値から前記計測結果となる代表値を求めるサブ計測部を備え、前記計測結果出力部は前記サブ計測部の動作が繰り返されるようにすることもできる。
また、前述した導管及び付帯設備の健全性評価計測装置において、前記サブ計測部は、プローブ電流の計測値をサンプリングするプローブ電流サンプリング期間が設定され、該期間でサンプリングされた前記プローブ電流の計測値から計測結果となる代表値を求めるようにしてもよい。
また、前述した導管及び付帯設備の健全性評価計測装置において、前記プローブ電流サンプリング期間は、想定される交流迷走電流発生源の周期に応じて設定することができる。
また、前述した導管及び付帯設備の健全性評価計測装置において、前記導線の接続から初期待機時間後に前記単位計測部のサンプリングが開始されるようにすることもできる。
前述の特徴を有する導管及び付帯設備の健全性評価計測方法又はプログラムによると、以下のような作用が得られる。
まず、評価対象導管の対地電位とその周辺付帯設備の関連電位との相関を求めるので、評価対象導管に対する付帯設備の影響を定量的に把握することが可能になり、評価対象導管に直流迷走電流腐食リスクが確認された場合に、その原因を特定して対策を施すことが可能になる。
この相関を求める際には、前記導管の対地電位と前述した関連電位とを計測すると共に、その計測データを演算処理する計測演算処理手段によって、一単位計測時間だけ前記導管の対地電位を計測・サンプリングして、その後に一単位計測時間だけ前記関連電位の計測・サンプリングを行う単位計測工程又は手順がなされるので、前記導管の対地電位と前記関連電位の同時刻とみなされる計測データを、各計測データの同期を取ることなく、一組の計測結果として得ることができる。
前記の単位計測工程又は手順による計測結果を付帯設備の稼働情報に基づいて稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する計測結果分別工程又は手順を有することで、付帯設備稼働時の相関と非稼働時の相関を比較することが可能になり、付帯設備の影響をより確実に把握することができる。
計測結果出力工程又は手順をサブ計測工程又は手順の繰り返しにして、サブ計測工程又は手順を、単位計測工程又は手順が設定回数だけ繰り返される計測工程又は手順と、計測工程又は手順でサンプリングされた単位計測時間内の計測値から計測結果となる代表値を求める演算処理工程又は手順とからなるようにしたので、サブ計測工程又は手順の区間内でサンプリング値を代表値に変換することができ、その後の相関演算工程又は手順でなされる演算処理で扱うデータ数を減らすことができ、その際の演算処理を高速に行うことができる。また、長時間の計測を行う場合にも、サンプリング値を記憶する記憶容量はサブ計測工程又は手順の区間内でのサンプリング数に見合う量で良いから、計測演算処理装置において大きな記憶容量を準備する必要がない。
単位計測工程又は手順の単位計測時間内のサンプリング間隔を0.1msとし、単位計測工程又は手順を50ms以下で行うようにすることで、単位計測工程で得られる一組の計測結果は、ほぼ同時刻のものとして扱うことができ、また、単位計測時間内で比較的多数のサンプリングを行うことができるので、導管及び付帯設備の健全性評価に対しては適正な計測精度を担保することができる。
前記の関連電位を前記導管の周囲に埋設されたカソード防食対象管の対地電位とすることで、評価対象導管に直流迷走電流腐食リスクが確認された場合に、前述の相関に基づいてその原因を周辺のカソード防食設備からの直流迷走電流に特定することができる。これによって、直流迷走電流腐食対策として、外部電源の出力調整等の適正な措置を施すことができる。
前記の関連電位を前記導管の周囲に敷設された直流電気鉄道のレール対地電位とすることで、評価対象導管に直流迷走電流腐食リスクが確認された場合に、前述の相関に基づいてその原因を周辺の直流電気鉄道システムからの直流迷走電流に特定することができる。これによって、直流迷走電流腐食対策として、特定された直流電気鉄道システムのレールに対して選択排流器又は強制排流器を設置する等の適正な措置を施すことができる。また、この場合には、前述した計測結果分別工程又は手順によって、直流電気鉄道が頻繁に運行する日中・夜間の時間帯と運行が停止する深夜の時間帯情報に基づいて計測結果を分別することで、より確実な影響度合いの把握が可能になる。
前記評価対象導管の対地電位に併せてプローブ電流を計測して、プローブ電流密度の直流成分と交流成分を評価指標とすることで、カソード防食管理基準に対応した迷走電流腐食リスクの把握が可能になる。プローブ電流密度は、前記の計測結果出力工程又は手順で計測結果として出力することができる。そして、前記健全性評価工程又は手順において、プローブ電流密度の直流成分がカソード防食管理基準に合格しない場合で、評価対象導管の対地電位と周辺カソード防食対象管の対地電位との相関、或いは評価対象導管の対地電位と周辺直流電気鉄道のレール対地電位との相関に有意な負相関が認められた場合には、このカソード防食設備或いは周辺直流電気鉄道システムを対策措置対象に定めることができる。
また、プローブ電流密度における交流成分の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、この交流成分の計測結果に対応するプローブ電流計測値の周期と、想定される交流発生源の周期が一致した場合には、この交流発生源を対策措置対象に定めて、必要な交流誘導低減措置を施すことができる。
前記の関連電位を、絶縁継手を介して前記導管と接続された隣接導管と前記導管との間の電位差にすることで、前述の相関に基づいて絶縁継手の継手性能良否の判定を行うことができる。
この際の健全性評価工程又は手順においては、前記の関連電位の絶対値が設定許容範囲内にあり、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記絶縁継手の性能が良好であるとの判定がなされる。また、この際の健全性評価工程又は手順においては、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の下限未満である場合に、前記絶縁継手の性能が不良であると判定し、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の上限以上である場合に、前記絶縁継手両側の電位差低減措置が必要であるとの判定がなされる。これによって、カソード防食対象導管の防食区間を仕切る絶縁継手の継手性能良否の判定が可能であると同時に、隣接導管における直流迷走電流腐食や落雷による継手の損傷を回避することができる。
前記の関連電位を、前記導管とその周囲に配備された鋼製鞘管との間の電位差にすることで、前述の相関に基づいて前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチの有無を判定することができる。
この際の健全性評価工程又は手順においては、前記の関連電位が、設定基準値よりプラス側で、前述の相関に有意な正相関が認められた場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが有るとの判定がなされる。また、この際の健全性評価工程又は手順においては、前記の関連電位が、前記設定基準値よりマイナス側で、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが無いとの判定がなされる。
前述の特徴を有する導管及び付帯設備の健全性評価計測装置によると、データ入力部に入力された対地電位,関連電位,プローブ電流等の計測データを計測演算処理部でサンプリングして演算処理し、この計測演算処理部の各部の機能によって、前述の作用を得る。
必要に応じて、サブ計測部において設定されたプローブ電流サンプリング期間を、想定される交流迷走電流発生源の周期に応じて設定しているので、サブ計測内でのプローブ電流サンプリングにおいても計測された最大プローブ電流の周期を把握することができ、これを想定交流迷走電流発生源の周期と比較することができる。また、単位計測部のサンプリングは、前記導管の対地電位を計測する導線の接続から初期待機時間後に開始されるので、導線を接続する際の計測不安定を回避することができる。
以上に示した特徴を有する導管及び付帯設備の健全性評価計測方法、評価計測プログラム、評価計測装置によると、評価対象の導管に対する付帯設備の影響を定量的に把握して、導管及びその付帯設備の健全性を的確に評価計測することができ、評価対象導管に腐食リスクが確認された場合に周辺付帯設備の影響を考慮に入れた有効な対策措置を施すことができる。
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る導管及び付帯設備の健全性評価計測装置の構成部を示す説明図である。
健全性評価計測装置10は、データ入力部11、制御出力部12、計測演算処理部13、データ記憶部21の各機能部を備え、また、計測演算処理部13が、単位計測部14、サブ計測部15、計測結果出力部16、計測結果分別部17、相関演算部18、健全性評価部19として機能するものである。健全性評価部19は別の装置として切り離して構成することもできる。また、必要に応じて、計測演算処理部13の処理結果を表示装置20に表示するようにしても良く、健全性評価計測装置10自体が計測演算処理部13の処理結果を表示する表示部を備えるものであってもよい。なお、この健全性評価計測装置10は、ここで説明する各部の機能を有する専用装置であってもよいし、汎用コンピュータに各部の機能を実行させるプログラムを組み込んだものであってもよい。
データ入力部11は、図示省略の計測手段からの計測データが入力される機能を有する。入力される計測データは、評価対象導管の対地電位EP/S(図1に示すようなプローブ2を設けた計測システムでは、スイッチ6を閉じた状態のプローブオン電位EONとして計測される。)、周辺付帯設備の関連電位E、必要に応じて入力されるその他の計測データ(プローブ電流密度I、プローブオフ電位EOFF等)である。制御出力部12は、評価対象導管の対地電位を計測する導線を接続・遮断するスイッチの制御、或いは周辺付帯設備の稼働制御等を行う制御信号を出力する機能を有する。データ記憶部21は、データ入力部11からサンプリングされた計測データ或いは計測演算処理部13による演算処理の結果得られた計測結果等を記憶するメモリからなるものである。計測演算処理部13は、データ入力部11からの入力を受けて、以下に示す各部の機能を実行すると共に、制御出力部12を制御するものである。
単位計測部14は、一単位計測時間だけ評価対象導管における対地電位EP/S(或いはEON)の計測値をサンプリングした後に、一単位計測時間だけ周辺付帯設備の関連電位Eの計測値をサンプリングする単位計測の機能を有する。
サブ計測部15は、単位計測部14の単位計測を設定回数だけ繰り返し、サンプリングされた単位時間内の計測データから計測結果となる代表値を求めるサブ計測の機能を有する。
計測結果出力部16は、サブ計測の繰り返しによって得た計測結果を、単位計測毎の一組の計測結果として複数組出力する計測結果出力の機能を有する。
計測結果分別部17は、出力された計測結果を関連電位Eに係る付帯設備の稼働情報に基づいて、稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する計測結果分別機能を有する。
相関演算部18は、計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する評価対象導管における対地電位EP/S(或いはEON)と周辺付帯設備の関連電位Eとの相関を求める相関演算機能を有する。
健全性評価部19は、求められた前記相関に基づいて評価対象導管又はその周辺付帯設備の健全性を評価する機能を有する。
図4及び図5は、計測演算処理部13における各部の機能(これによって実行される健全性評価計測方法又はこの機能を実行するためのプログラム)のフローである。
図4に示すように、計測演算処理部13によって評価計測が開始されると、前述した制御出力部12から制御信号が出力されて評価対象導管の対地電位を計測する導線の接続がなされ(S1)、サブ計測(S2)が設定回数だけ繰り返される(S3)。その後に前記の導線を遮断して(S4)、必要に応じて、プローブオフ電位EOFFのサンプリングがなされる(S5)。このS1〜S5の工程又は手順を1基本計測期間として、所望の計測期間が終了するまでこの基本計測期間を繰り返す(S6)。
その後に、前述の基本計測期間の繰り返しによって得られた計測結果が出力される(S7)。そして、必要に応じて、出力された計測結果を関連電位Eに係る付帯設備の稼働情報に基づいて稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する(S8)。その後、計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する評価対象導管の対地電位EP/S(或いはEON)と関連電位Eの相関を求める相関演算(S9)が行われ、これによって求められた相関に基づいて健全性評価(S10)が行われる。
図5は、サブ計測(S2)とそのサブ計測内で行われる単位計測(S21)のサブ処理ルーチンを示すフローである。
同図(a)に示すように、サブ計測(S2)では、単位計測(S21)が設定回数繰り返される(S22)。この単位計測(S21)では、同図(b)に示すように、一単位計測時間(例えば、0.1msのサンプリング間隔で20ms)だけ評価対象導管における対地電位EP/S(或いはEON)の計測値をサンプリングして(S211)、そのサンプリングデータをメモリに記憶し(S212)、単位計測時間経過後(S213)に、一単位計測時間だけ関連電位Eの計測値をサンプリングして(S214)、そのサンプリングデータをメモリに記憶し(S215)、単位計測時間経過後(S216)に、1回の単位計測を終了する。
1回の単位計測(S21)では、微少時間(例えば、50ms:単位計測時間各20ms+メモリ記憶用待機時間各5ms)内で、評価対象導管における対地電位EP/Sと関連電位Eが複数点サンプリングされ、これらのデータが同時刻の現象を計測したデータとして扱われる。
そして、サブ計測(S2)の処理ルーチンの中で、設定回数分の単位計測(S21)がなされた時点(S22)で、プローブ電流のサンプリングを行い(S23)、その後、演算処理(S24)によって、1回の単位計測(S21)における単位計測時間内の計測データから一つの代表値(平均値、最大値、最小値等)が求められ、1回の単位計測(S21)における対地電位EP/Sと関連電位Eの代表値を一組の計測結果として、設定回数分だけメモリに記憶している(S25)。したがって、サブ計測(S2)終了後の計測結果出力(S7;図4参照)では、同時刻に計測されたとみなされる対地電位EP/Sと関連電位Eの代表値の組が計測結果として複数組出力され、またプローブ電流から求められたプローブ電流密度がサブ計測(S2)毎の代表値として出力されることになる。
相関演算部18による相関演算(S9)では、評価計測開始から計測期間終了時までに出力された全ての計測結果に基づいて、(EP/S,E)の相関係数が求められる。求められた相関係数によって、対象となる付帯設備に応じて、正相関又は負相関の有意性が判断され、それによって、健全性評価部19において評価対象導管への付帯設備の影響度合いが定量的に評価されることになる。
以下に、評価対象の導管に影響を及ぼす付帯設備の具体例を挙げて、本発明の実施形態を更に具体的に説明する。
[周辺直流電気鉄道システムとの関連]
本例では、評価対象導管の周辺に敷設された直流電気鉄道システム稼働時のレール漏れ電流に起因する直流迷走電流腐食のリスクに関する評価を行う。
図6は、この実施形態の実施状況を説明する説明図である。評価対象の導管1から評価指標を計測するシステムは、図1に示す従来技術と同様であるから、ここでは同一符号を付して重複説明を一部省略する。この実施形態では、評価対象となるカソード防食された導管1に対して、その周辺地上部に直流電気鉄道レール30が敷設されている。このような状況においては、直流電気鉄道レール30を流れる電流の一部が枕木や道床を通って地中に流出して直流迷走電流(レール漏れ電流)Iとなり、この直流迷走電流Iが導管1に流入して、変電所ないしはその近傍でこの電流が流出すると、この電流の流出箇所に直流迷走電流腐食リスクが発生することになる。
また、ここでは、導管1の周辺に交流迷走電流発生源となる付帯設備40(電力高圧交流架空送電線や交流電気鉄道システム等)が存在することを想定しており、これによる交流誘導電圧EACが増大すると、交流迷走電流腐食のリスクが発生することになる。
この状況で導管1の健全性を評価計測するには、導管1に対しては、図1と同様の計測システムが構成され、直流電気鉄道レール30に対しては、その対地電位を計測するために、地表面に設置した飽和硫酸銅電極からなる照合電極31と直流電気鉄道レール30とを導線32で電気的に接続し、その導線32内に電圧計33を設けた計測システムが構成される。導管1に対する計測システムは、導管1に沿って所定間隔(約250m間隔)で既設されているターミナルボックス内に設置することができる。また、直流電気鉄道レール30に対する計測システムは計測時に随時設置される。
そして、これらの計測システムに対して前述の健全性評価計測装置10が接続され、電圧計8,33からの計測信号、或いは電流計5からの計測信号が健全性評価計測装置10のデータ入力部11に入力され、制御出力部12からの出力信号によってスイッチ6のON・OFFが制御されることになる。この際の信号入力は、電圧計8,33或いは電流計5の信号出力端子とデータ入力部11の信号入力端子とを信号線で接続することによってなされるが、遠隔計測する場合には、前記の信号出力端子に送信機を設け、前述の信号入力端子に受信機を設けて、無線の信号伝送を行うようにしても良い。
この例では、電圧計8から送られる信号は、評価対象の導管1におけるプローブオン電位EON及びプローブオフ電位EOFFであり、電流計5から送られる信号は導管1におけるプローブ電流密度Iである。また、電圧計33から送られる信号が直流電気鉄道レール30の対地電位(レール対地電位)ER/Sであって、これが前述した周辺付帯設備の関連電位Eに相当する。したがって、このレール対地電位ER/Sと評価対象の導管1における対地電位であるプローブオン電位EONとの相関が計測演算処理部13によって求められることになる。
図7は、本例における計測演算処理部13における動作の一部(主に、単位計測部14及びサブ計測部15の動作)を説明する説明図(タイムチャート図)である。演算処理部13による評価計測が開始されると、同図(a)に示すように、例えば10secの1基本計測期間T1の動作が繰り返されて、所望の時間(例えば24時間)の評価計測がなされる。本例では、1基本計測期間T1は、制御出力部12からの制御信号によってスイッチ6がON状態になり導線4が接続されるプローブオン期間TON(ここでは8.5sec)とスイッチ6がOFF状態になり導線4が遮断されるプローブオフ期間TOFF(ここでは1.5sec)とからなる。
プローブオン期間TONでは、スイッチ6がONされる立ち上がり時の計測不安定を回避するために初期待機時間T(1sec)が設けられ、その後に前述のサブ計測(S2)を設定回数(ここでは7回)行うサブ計測期間TSUB1〜TSUB7が設けられる。サブ計測(S2)の終了(サブ計測期間TSUB7の終了時)はプローブオフ期間のTOFFのスタートに対して余裕を持って設定されており、これによって、スイッチ6がOFFされる時の計測不安定を回避している。
プローブオフ期間TOFFでは、プローブオフ電位EOFFが計測されるプローブオフ電位計測期間TEOFF(ここでは20ms)が設けられ、その後の空き時間に、このプローブオフ電位EOFFの代表値(平均値、最大値、最小値等)を求める演算処理期間を設けることができる。
同図(b)は、各サブ計測期間TSUB1〜TSUB7での動作を示したものである。一つのサブ計測期間(ここでは1sec)では、相関対象の2つの電位(A,B)の計測値がサンプリングされる前述の単位計測(S21)が設定回数(ここでは5回)行われる電位計測期間T(ここでは250ms)とプローブ電流密度Iのサンプリングが行われるプローブ電流サンプリング期間T(ここでは100ms)が設定され、残りの期間が前述の演算処理(S24)を行う演算処理期間に当てられる。
単位計測(S21)が行われる各単位計測期間t1〜t5では、同図(c)に示すように、一単位計測時間tuだけプローブオン電位EONのサンプリングが行われ、その後に所定時間(ここでは5ms)のウエイト期間twが設定され、その後一単位計測時間tuだけレール対地電位ER/Sのサンプリングが行われ、更にその後に所定時間(ここでは5ms)のウエイト期間twが設定されている。ここでは、単位計測期間t1〜t5はそれぞれ50msに設定されており、この期間にサンプリングされた計測値を同時刻の計測データとして扱うようにしている。また、一単位計測時間tuは20msとして、0.1msのサンプリング間隔で計測値をサンプリングするように設定している。
したがって、一つのサブ計測期間TSUB1においては、単位計測期間t1の一単位計測時間tuでプローブオン電位EONの計測値がサンプリングされた後、これがメモリに記憶され、更に一単位計測時間tuでレール対地電位ER/Sの計測値がサンプリングされた後、これがメモリに記憶されることになる。そして、電位計測期間Tの間に設定回数の単位計測(S21)がなされた後に、プローブ電流サンプリング期間Tにプローブ電流密度Iの計測値がサンプリングされ、これがメモリに記憶される。
サブ計測期間TSUB1のその後の演算処理期間は、プローブオン電位EON及びレール対地電位ER/Sに関しては、メモリに記憶された計測値から単位計測期間t1〜t5毎の代表値(平均値,最大値,最小値)が求められ、これがメモリに記憶され、また、プローブ電流密度Iに関しては、プローブ電流サンプリング期間Tにサンプリングされた計測値の20ms期間毎の代表値(平均値,最大値,最小値)が求められ、これがメモリに記憶される。特に、プローブ電流密度Iに関しては、代表値として、プローブ流入直流電流密度IDCとプローブ交流電流密度IAC(プローブ電流密度Iの直流成分と交流成分)が求められることになる。
これによって、一つのサブ計測期間TSUB1においては、単位計測(S21)毎の一組の代表値(例えば、平均値(EON ave,ER/S ave))がサブ計測の設定回数だけ得られると共に、プローブ電流密度Iの代表値が計測結果として得られる。プローブ電流密度Iの代表値としては、100msのプローブ電流サンプリング期間Tでは、20ms期間毎に求められたプローブ流入直流電流密度IDCとプローブ交流電流密度IACの組が5組得られることになる。また、必要に応じて、1基本計測期間毎にプローブオフ電位EOFFの代表値が得られることになる。
また、プローブ電流密度Iに関しては、プローブ電流サンプリング期間Tにサンプリングされた計測値を処理して原波形データを求め、これがメモリに記憶される。このために、プローブ電流サンプリング期間Tは、ターゲットとなる交流迷走電流発生源の周期(例えば電力高圧交流架空送電線の場合には50Hz)に対応するように設定されており、本例では、50Hzの波形が5周期分得られるように100msのサンプリング期間が設定されている。
なお、前述の1単位計測時間tu,単位計測期間t1,電位計測期間Tの設定時間に関しては、交流誘導電圧EACの影響による変位を代表値(平均値)で相殺できるように、想定される交流誘導電圧EACの周期に対応した時間設定がなされている。図7の例では、EACが50Hzの場合の設定例を示しているが、EACが60Hzであると想定する場合には、1単位計測時間tu=16.7ms,単位計測期間t1=43.4ms,電位計測期間T=216.7msとなり、プローブ電流サンプリング期間は、T=83.3ms(5周期分)に設定されることになる。
そして、計測期間が終了すると(S6)、計測結果出力部16の機能によって、前述の動作で得られた計測結果が出力される(S7)。この際の出力形態は、例えば、ショートモードとロングモードのように異なる形態を選択することができる。ここで、ショートモードとは、短時間の計測時間で密度の高い計測結果を得るモードであり、ロングモードとは、長時間の計測時間に対応するように計測結果を例えば1基本計測期間毎にまとめた値にして出力するモードである。ショートモードの場合は、プローブオン電位EONとレール対地電位ER/Sに関しては、単位計測毎に得た代表値の組を計測結果として出力し、プローブ電流密度Iに関してはサブ計測毎に得た代表値を計測結果として出力する。一方、ロングモードでは、得られた計測結果から更に1基本計測期間毎の代表値を求めて、これを出力する。
出力された計測結果は、計測結果分別部17で、付帯設備である直流電気鉄道システムが稼働している時間帯(電気鉄道が運行している時間帯)と稼働していない時間帯(電気鉄道が運行していない時間帯)とに分別され(S8)、分別された計測結果に基づいて相関演算部18での演算処理がなされる(S9)。一般に、電気鉄道の運行時間は時刻表から明らかであるから、この情報を付帯設備の稼働情報として計測演算処理部13に予め入力しておき、得られた計測結果をその計測時間帯によって分別し、分別した計測結果毎に相関演算部18の演算処理を行う。このように関連付帯設備の稼働時と非稼働時との計測結果を分別して、それぞれの計測結果から相関を求めることで、関連付帯設備の影響をより精度良く把握することが可能になる。
相関演算部18では、プローブオン電位EONとレール対地電位ER/Sの計測結果から、これらの時系列変化の相関を求める。すなわち、単位計測毎(ショートモードの場合)、或いは1基本計測期間毎(ロングモードの場合)のプローブオン電位EONとレール対地電位ER/Sの計測結果(代表値)を一組のデータとして、全計測期間内の複数組のデータから相関係数を求める。
そして、相関演算部18で求めた相関係数と計測結果出力部16から出力された計測結果に基づいて、健全性評価部19にて評価対象の導管1及びその周辺付帯設備に関する健全性の評価がなされる(S10)。
この健全性評価部19における評価対策フローの例を図8に示す。健全性評価が開始されると、プローブオン電位EON,プローブ流入直流電流密度IDC,プローブ交流電流密度IACの計測結果がカソード防食管理基準(図2又は表1参照)に合格したか否かが確認され(S30)、これに合格していれば、以後の評価とは無関係に迷走電流腐食のリスクを含むあらゆる腐食のリスク及び過防食のリスクが無いことが確認されたことになる(S31)。
前述の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、特に、プローブオン電位EON又はプローブ流入直流電流密度IDC(プローブ電流密度Iの直流成分)が不合格の場合であって(S32)、A電位:プローブオン電位EONとB電位:レール対地電位ER/S間に有意な負の相関が認められた場合(S33)には、関連付帯設備として対象にした直流電気鉄道レール30を対策措置対象に定めて、適切な対策措置の指示を出力する(S34)。この場合には、対象導管1に対して、選択排流器又は強制排流器の設置指示がなされることになる。一方、A,B電位間に有意な負の相関が無い場合には、導管1自身のカソード防食設備に問題があると見なして、導管1の外部電源を再調整する指示を出力する(S35)。導管1の外部電源を遠隔監視している場合には、遠隔監視データに基づいて再調整の指示が出力される。そして、これらの措置がなされた後に、再度導管1に対する評価指標(プローブ電流密度I)の計測を行い、この計測結果がカソード防食管理基準に合格するか否かの効果確認がなされる(S36)。
また、前述の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、プローブオン電位EON及びプローブ流入直流電流密度IDC(プローブ電流密度Iの直流成分)が合格であるにも拘わらず、プローブ交流電流密度IACが不合格の場合には(S37)、プローブ交流電流密度IACの最大値に対応する20ms期間の原波形データの周期と、想定される交流迷走電流発生源の周期とが一致していることを確認する(S38)。そして、この一致が確認できた場合には、その交流迷走電流発生源を対策措置対象と定めて、適切な対策措置の指示を出力する(S39)。すなわち、プローブ交流電流密度IACの最大値を示した20ms期間の原波形データの波形が、歪みのないきれいな1周期の波形であることが確認できた場合には、この周期が50Hzであるとして、関連対象の交流迷走電流発生源を例えば周辺にある電力高圧交流架空送電線又は交流電気鉄道システムであると特定する。また、これに対する対策措置としては、この関連対象に対する影響度の高い導管に対して、例えば、アース電極の設置又は増設であるとか、交流誘導低減器の設置又は増設といった対策指示が出されることになる。また、これらの措置がなされた後に、再度導管1に対する評価指標(プローブ電流密度I)の計測を行い、この計測結果がカソード防食管理基準に合格するか否かの効果確認がなされる(S40)。
[周辺カソード防食設備との関連]
本例では、評価対象導管の周辺に埋設される他の導管がカソード防食されている場合に、そのカソード防食設備に起因する直流迷走電流腐食のリスクに関する評価を行う。
図9は、この実施形態の実施状況を説明する説明図である。評価対象の導管1から評価指標を計測するシステムは、図1に示す従来技術或いは前述の実施形態と同様であるから、ここでは同一符号を付して重複説明を一部省略する。この実施形態では、評価対象となるカソード防食された導管1に対して、その周辺に導管50が埋設されており、この導管50を防食するための外部電源装置51における外部電極51Aが導管1の周辺の地下に設置されている。このような状況においては、外部電極51Aから流出する防食電流の一部が直流迷走電流(防食電流漏れ)Iとなり、これが導管1に流入して、導管1に過防食のリスクが発生する。また、流入した電流が塗覆装欠陥部から流出すると、その流出箇所に直流迷走電流腐食リスクが発生することになる。
また、ここでも、前述の実施形態と同様に導管1の周辺に交流迷走電流発生源となる付帯設備40(電力高圧交流架空送電線や交流電気鉄道システム等)が存在することを想定しており、これによる導管1の交流誘導電圧EACが増大すると、交流迷走電流腐食のリスクが発生することになる。
この実施形態では、前述した健全性評価計測装置10を用いて、前述した周辺直流電気鉄道システムの場合と同様の工程及び手順によって、評価対象の導管1及びその周辺付帯設備(外部電源装置51又はカソード防食対象導管50)に関する健全性の評価を行うことができる。
本例では、導管1に対しては、前述の実施形態と同様の計測システムが構成され、カソード防食対象導管50に対しては、その対地電位を計測するために、地表面に設置した飽和硫酸銅電極からなる照合電極52と導管50とを導線53で電気的に接続し、その導線53内に電圧計54を設けた計測システムが構成されて、この電圧計54からの計測信号によって導管50の対地電位EP/Sが、前述の関連電位Eとして、健全性評価計測装置10のデータ入力部11に入力されることになる。
すなわち、本例では、図7に示す計測演算処理部13の動作において、A電位:導管1のプローブオン電位EONとB電位:導管50の対地電位EP/Sとの間の相関が前述の実施形態と同様にして求められることになる。前述の実施形態と異なる点として、計測結果分別部17の機能を得るために、外部電源装置51の稼働情報を計測演算処理部13に入力する必要がある。ここでは、外部電源装置51に稼働状況検知装置55を接続して、この稼働状況検知装置55の出力を計測演算処理部13に入力することで、外部電源装置51の稼働情報に基づいた計測結果の分別を可能にしている。
そして、前述の実施形態と同様にして得られた計測結果と相関係数に基づいて、健全性評価部19において、図8に示したような評価対策フローで健全性の評価がなされる。本例では、A電位:導管1のプローブオン電位EONとB電位:導管50の対地電位EP/Sとの間に有意な負相関が認められた場合の対策措置指示(S34)としては、外部電源装置51の出力調整等の指示がなされることになる。
[絶縁継手を介した隣接導管との関連]
本例では、評価対象導管に絶縁継手を介して隣接する導管の安全性と絶縁継手の継手性能良否に関する評価を行う。図10は、この実施形態の実施状況を説明する説明図である。この実施形態では、評価対象となる導管1に対して、絶縁継手60を介して隣接導管1Aが接続されており、評価対象の導管1を防食するために外部電源装置61が設けられ、その外部電極61Aが導管1の周辺の地下に設置されている。
このような状況において、付帯設備となる絶縁継手60の絶縁性能が不良になると、仮に隣接導管1Aの接地抵抗がカソード防食対象の導管1より低い場合には、カソード防食されている導管1から隣接導管1Aに相当量の防食電流が流入することになり、導管1の防食効率が低下する問題が生じることになる。また、隣接導管1Aが同様にカソード防食されている場合には、この隣接導管1Aが過防食状態になる可能性があり、また、隣接導管1Aに流入した電流の流出部分で腐食リスクが発生することになる。
更には、絶縁継手60の絶縁性能が良好であっても、絶縁継手60を介して接続された導管1と隣接導管1A間の電位差が大きい場合には、その一方に前述した直流迷走電流腐食の問題が発生することになる。また、導管1が落雷を受けた場合には、電気抵抗が高い絶縁継手が焼損等によって破損してしまうという問題も考えられる。
そこで、前述した健全性評価計測装置10を用いて、導管1及び付帯設備である絶縁継手60の健全性を評価するために、ここでは、評価対象の導管1に対しては、導管1と地表面に設置された照合電極63Aとを電気的に接続した導線63内に電圧計64を設けて、この電圧計64からの計測信号によって導管1の対地電位EP/Sをデータ入力部11に入力している。また、関連電位Eとして、導管1と隣接導管1Aとの間に電気的に接続された導線65内に電圧計66を設けて、この電圧計66からの計測信号によって、導管1と絶縁継手60を介する隣接導管1Aとの間の電位差(管対管電位)EP/Pをデータ入力部11に入力している。なお、ここでは、評価対象の導管1に対して対地電位EP/Sを計測するシステムを採用しているが、前述した実施形態と同様に、導管1におけるプローブオン電位EON,プローブオフ電位EOFF,プローブ電流密度Iを計測するシステムを設置することも可能である。
図11は、本例での計測演算処理部13における動作の一部を説明する説明図(タイムチャート図)である。ここでは、図7に示す例と比較すると、導管1に対してはプローブオン電位EON,プローブオフ電位EOFF,プローブ電流密度Iに換えて対地電位EP/Sのみを計測しているので、単純にサブ計測部15の機能によってなされるサブ計測を1基本計測期間T1として、これが計測開始から初期待機時間T後に開始され、計測終了まで繰り返されることになる(図11(a)参照)。
また、1基本計測期間T1内のサブ計測部15及び単位計測部14の機能は、プローブ電流密度Iのサンプリングを行わない点を除けば図7(b),(c)で説明した機能と同様である(図11(b),(c)参照)。すなわち、本例では、A電位:導管1の対地電位EP/SとB電位:導管1と隣接導管1Aとの管対管電位EP/Pとの間の相関が前述の実施形態と同様にして求められることになる。前述したように計測結果分別部17の機能を得るために、外部電源装置61に稼働状況検知装置62を接続して、この稼働状況検知装置62の出力を計測演算処理部13に入力して外部電源装置61の稼働情報を得ており、これによって、外部電源装置61の稼働情報に基づいた演算結果の分別を可能にしている。
そして、前述の実施形態と同様にして得られた計測結果と相関係数に基づいて、健全性評価部19において、図12に示したような評価対策フローで健全性の評価がなされる。すなわち本例では、健全性評価が開始されると(S10)、計測結果出力部16によって得られた管対管電位EP/Pの絶対値|EP/P|を設定許容範囲と比較する。
先ず、絶対値|EP/P|を設定許容範囲の下限値(50mV)と比較し(S50)、|EP/P|<50mVのときには、絶縁性能不良との判定がなされる(S51)。そして、この判定に対しては絶縁継手修理/取替指示(S52)がなされて、この後に効果確認(S53)がなされる。
また、|EP/P|≧50mVのときには、絶対値|EP/P|を設定許容範囲の上限値(700mV)と比較する(S54)。そして、700mV≦|EP/P|の場合には、電位差低減措置指示がなされる(S55)。この際には、図10(b)に示すように、導管1と隣接導管1Aとを整流方向が異なる2つのダイオード67A,67Bで繋いで、導管1の方が高電位の場合にはダイオード67Bを介して電流が導管1から隣接導管1Aに流れ、隣接導管1Aの方が高電位の場合にはダイオード67Aを介して隣接導管1Aから導管1に電流が流れるようにし、両者の電位差を低減させる。そして、この後に効果確認がなされる(S56)。
また、|EP/P|≧50mVのときで、700mV>|EP/P|の場合には、|EP/P|が設定許容範囲(50mV以上、700mV未満)内であることが確認されたことになり、この場合には、管対管電位EP/Pと導管1の対地電位EP/Sの相関に有意性が有るか否かが判定され(S57)、有意な相関が有る場合には、詳細調査・対策指示(S58)が出力され、有意な相関が無い場合には、絶縁継手60の継手性能が良好であると判定される(S59)。
そして、絶縁継手60の継手性能が良好であると判定された場合に、更に、導管1の健全性を評価するために、導管1の対地電位EP/Sがカソード防食管理基準(例えば、EP/Sが−850mVより負)に合格しているかを判定し(S60)、合格している場合には、導管1の腐食リスクが無いと判断して、計測結果EP/P,EP/Sを登録する(S62)。一方、合格していない場合には、外部電源装置61の出力電流等の再調整指示を出力し(S61)、それが実行された後に、再度対地電位EP/Sを計測した結果から、その対地電位EP/Sがカソード防食管理基準に合格しているか否かの判定を行う(S60)。
[周囲に敷設された鋼製鞘管との関連]
本例では、評価対象導管の周辺に敷設される鋼製鞘管に対して、評価対象導管と鋼製鞘管とのメタルタッチの可能性に関する評価を行う。図13は、この実施形態の実施状況を説明する説明図である。この実施形態では、評価対象となる導管1に対して、これを包囲するように鋼製鞘管70が設置されており、図示省略しているが、評価対象の導管1を防食するために、前述した例と同様に、外部電源装置が設けられ、その外部電極が導管1の周辺の地下に設置されている。
このような状況において、評価対象の導管1と鋼製鞘管70との間には、導管1にカソード防食電流を供給するためにモルタル等の電解質が充填されている。ここで、導管1と鋼製鞘管70とが電気的に導通状態にある(メタルタッチが有る)と、カソード防食電流のかなりの部分は裸の鋼製鞘管70に流入することになり、導管1の腐食防止が達成されない虞がある。また、メタルタッチ部において、導管1の塗覆装に欠陥部があると、カソード防食電流が塗覆装欠陥部に到達しないか或いは流入不足の状況になり、この部分において腐食が進行するリスクが発生することになる。
そこで、前述した健全性評価計測装置10を用いて、導管1の健全性と付帯設備である鋼製鞘管との関係(メタルタッチの有無)を評価するために、ここでは、評価対象の導管1に対しては、導管1と地表面に設置された照合電極72とを電気的に接続した導線71内に電圧計73を設けて、この電圧計73からの計測信号によって導管1の対地電位EP/Sをデータ入力部11に入力している。また、関連電位Eとして、導管1と鋼製鞘管70との間に電気的に接続された導線74内に電圧計75を設けて、この電圧計75からの計測信号によって、導管1と鋼製鞘管70との間の電位差EP/Cをデータ入力部11に入力している。なお、ここでは、評価対象の導管1に対して対地電位EP/Sを計測するシステムを採用しているが、図1と同様に、導管1におけるプローブオン電位EON,プローブオフ電位EOFF,プローブ電流密度Iを計測するシステムを設置することも可能である。
本例では、図11に示す計測演算処理部13の動作において、A電位:導管1の対地電位EP/SとB電位:導管1と鋼製鞘管との間の電位差EP/Cとの間の相関が前述の実施形態と同様にして求められることになる。
そして、前述の実施形態と同様にして得られた計測結果と相関係数に基づいて、健全性評価部19において、図14に示したような評価対策フローで健全性の評価がなされる。すなわち本例では、健全性評価が開始されると(S10)、計測結果出力部16によって得られた電位差EP/Cを設定基準値(−50mV)と比較する(S70)。
導管1と鋼製鞘管との間の電位差EP/Cが−50mVよりマイナス側の場合に、導管1の対地電位EP/Sとの間に有意な相関が有るか否かが判断され(S71)、有意な相関が有る場合には、詳細調査・対策指示が出力される(S72)。一方、有意な相関が無い場合には、メタルタッチ無しの判定がなされ(S73)、更に、導管1の健全性を評価するために、導管1の対地電位EP/Sがカソード防食管理基準(例えば、EP/Sが−850mVより負)に合格しているかを判定し(S74)、合格している場合には、導管1の腐食リスクが無いと判断して、計測結果EP/C,EP/Sを登録する(S76)。一方、合格していない場合には、外部電源装置61の出力電流等の再調整指示を出力し(S75)、それが実行された後に、再度対地電位EP/Sを計測した結果から、その対地電位EP/Sがカソード防食管理基準に合格しているか否かの判定を行う。
また、導管1と鋼製鞘管との間の電位差EP/Cが−50mVよりプラス側の場合に、導管1の対地電位EP/Sとの間に有意な相関が有るか否かが判断され(S77)、有意な相関が有る場合には、メタルタッチ有りの判定がなされる(S80)。そして、導管1の対地電位EP/Sを確認して(S81)、必要に応じて、詳細調査・対策指示(S82)を出力する。また、有意な相関が無い場合には、対地電位EP/Sの確認指示を出力して(S78)、必要に応じて、詳細調査・対策指示(S79)を出力する。
このような実施形態に係る導管及び付帯設備の健全性評価計測方法、評価計測プログラム、評価計測装置によると、評価対象の導管に対する付帯設備の影響を定量的に把握して、導管及びその付帯設備の健全性を的確に評価計測することができ、評価対象導管に腐食リスクが確認された場合に周辺付帯設備の影響を考慮に入れた有効な対策措置を施すことができる。
従来技術の説明図である。 カソード防食管理基準の説明図である。 本発明の実施形態に係る導管及び付帯設備の健全性評価計測装置の構成部を示す説明図である。 本発明の実施形態に係る計測演算処理部における各部の機能(これによって実行される健全性評価計測方法又はこの機能を実行するためのプログラム)のフローである。 本発明の実施形態に係る計測演算処理部における各部の機能(これによって実行される健全性評価計測方法又はこの機能を実行するためのプログラム)のフローである。 本発明に係る実施形態(周辺直流電気鉄道システムとの関連)の実施状況を説明する説明図である。 本発明の一実施形態に係る計測演算処理部における動作の一部を説明する説明図(タイムチャート図)である。 本発明に係る一実施形態の健全性評価部における評価対策フローの例を示す説明図である。 本発明に係る実施形態(周辺カソード防食設備との関連)の実施状況を説明する説明図である。 本発明に係る実施形態(絶縁継手を介した隣接導管との関連)の実施状況を説明する説明図である。 本発明の一実施形態に係る計測演算処理部における動作の一部を説明する説明図(タイムチャート図)である。 本発明に係る一実施形態の健全性評価部における評価対策フローの例を示す説明図である。 本発明に係る実施形態(周囲に敷設された鋼製鞘管との関連)の実施状況を説明する説明図である。 本発明に係る一実施形態の健全性評価部における評価対策フローの例を示す説明図である。
符号の説明
1 導管 1A 隣接導管
2 プローブ
3,31,52,63A,72 照合電極
4,7,32,53,63,65、71,74 導線
5 電流計
6 スイッチ
8,33,54,64,66、73,75 電圧計
10 健全性評価計測装置
11 データ入力部
12 制御出力部
13 計測演算処理部
14 単位計測部
15 サブ計測部
16 計測結果出力部
17 計測結果分別部
18 相関演算部
19 健全性評価部
20 表示装置
21 データ記憶部
30 直流電気鉄道レール
40 付帯設備(電力高圧交流架空送電線や交流電気鉄道システム等)
50 導管
51,61 外部電源装置
51A,61A 外部電源
55,62 稼働状況検知装置
60 絶縁継手
67A,67B ダイオード
70 鋼製鞘管

Claims (29)

  1. カソード防食された導管及びその周辺の付帯設備について、防食に係る健全性を評価計測する方法であって、
    前記導管の対地電位と、前記付帯設備が前記導管に影響することを把握するために計測される関連電位とを計測すると共に、その計測データを演算処理する計測演算処理手段によって、
    一単位計測時間だけ前記導管における対地電位の計測値をサンプリングした後に、一単位計測時間だけ前記関連電位の計測値をサンプリングする単位計測工程、
    該単位計測工程を繰り返し、各単位計測工程における前記導管の対地電位と前記関連電位の計測結果を一対の計測結果として複数組出力する計測結果出力工程、
    前記計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する前記導管の対地電位と前記関連電位との相関を求める相関演算工程、
    該相関に基づいて前記導管又は前記付帯設備の健全性を評価する工程を含む健全性評価工程が行われることを特徴とする導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  2. 前記計測結果を前記付帯設備の稼働情報に基づいて稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する計測結果分別工程を有し、これによって分別された計測結果に基づく演算処理によって前記相関演算工程が行われることを特徴とする請求項1に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  3. 前記計測結果出力工程は、サブ計測工程の繰り返しからなり、該サブ計測工程は、前記単位計測工程を設定回数だけ繰り返す計測工程と、該計測工程でサンプリングされた前記単位計測時間内の計測値から前記計測結果となる代表値を求める演算処理工程とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  4. 前記単位計測時間内のサンプリング間隔を0.1msとすると共に前記単位計測工程を50ms以下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  5. 前記関連電位は、前記導管の周辺に埋設されたカソード防食対象導管の対地電位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  6. 前記関連電位は、前記導管の周辺に敷設された直流電気鉄道のレール対地電位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  7. 前記導管のプローブ電流を計測すると共に、前記計測演算処理手段は、その計測データを演算処理する手段を備え、
    前記計測結果出力工程において、プローブ電流密度の直流成分と交流成分の計測結果が出力され、
    前記健全性評価工程において、前記プローブ電流密度における直流成分の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、前記相関に有意な負相関が認められた場合に、前記関連電位を計測した付帯設備を対策措置対象に定めることを特徴とする請求項5又は6に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  8. 前記健全性評価工程において、前記プローブ電流密度における交流成分の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、前記交流成分の計測結果に対応するプローブ電流計測値の周期と、想定される交流迷走電流発生源の周期が一致した場合に、該交流迷走電流発生源を対策措置対象に定めることを特徴とする請求項7に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  9. 前記関連電位は、絶縁継手を介して前記導管と接続された隣接導管と前記導管との間の電位差であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  10. 前記健全性評価工程において、前記関連電位の絶対値が設定許容範囲内にあり、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記絶縁継手の性能が良好であるとの判定がなされることを特徴とする請求項9に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  11. 前記健全性評価工程において、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の下限未満である場合に、前記絶縁継手の性能が不良であると判定し、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の上限以上である場合に、前記絶縁継手両側の電位差低減措置が必要であるとの判定がなされることを特徴とする請求項10に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  12. 前記関連電位は、前記導管とその周囲に配備された鋼製鞘管との間の電位差であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  13. 前記健全性評価工程において、前記関連電位が、設定基準値よりプラス側で、前記相関に有意な正相関が認められた場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが有るとの判定がなされることを特徴とする請求項12に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  14. 前記健全性評価工程において、前記関連電位が、前記設定基準値よりマイナス側で、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが無いとの判定がなされることを特徴とする請求項13に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測方法。
  15. カソード防食された導管及びその周辺の付帯設備について、防食に係る健全性を評価計測するプログラムであって、
    前記導管の対地電位と、前記付帯設備が前記導管に影響することを把握するために計測される関連電位とを計測すると共に、その計測データを演算処理する計測演算処理手段に、
    一単位計測時間だけ前記導管における対地電位の計測値をサンプリングした後に、一単位計測時間だけ前記関連電位の計測値をサンプリングする単位計測手順、
    該単位計測手順を繰り返し、各単位計測手順における前記導管の対地電位と前記関連電位の計測結果を一組の計測結果として複数組出力する計測結果出力手順、
    前記計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する前記導管の対地電位と前記関連電位との相関を求める相関演算手順、
    該相関に基づいて前記導管又は前記付帯設備の健全性を評価する手順を含む健全性評価手順を実行させることを特徴とする導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  16. 前記計測結果を前記付帯設備の稼働情報に基づいて稼働時の計測結果と非稼働時の計測結果に分別する計測結果分別手順を有し、これによって分別された計測結果に基づく演算処理によって前記相関演算手順が行われることを特徴とする請求項15に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  17. 前記計測結果出力手順は、サブ計測手順の繰り返しからなり、該サブ計測手順は、前記単位計測手順を設定回数だけ繰り返す計測手順と、該計測手順でサンプリングされた前記単位計測時間内の計測値から前記計測結果となる代表値を求める演算処理手順とからなることを特徴とする請求項15又は16に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  18. 前記単位計測時間内のサンプリング間隔を0.1msとすると共に前記単位計測手順を50ms以下で行うことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  19. 前記関連電位は、前記導管の周辺に埋設されたカソード防食対象導管の対地電位であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  20. 前記関連電位は、前記導管の周辺に敷設された直流電気鉄道のレール対地電位であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  21. 前記導管のプローブ電流を計測すると共に、前記計測演算処理手段は、その計測データを演算処理する手段を備え、
    前記計測結果出力手順において、プローブ電流密度の直流成分と交流成分の計測結果が出力され、
    前記健全性評価手順において、前記プローブ電流密度における直流成分の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、前記相関に有意な負相関が認められた場合に、前記関連電位を計測した付帯設備を対策措置対象に定めることを特徴とする請求項20又は21に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  22. 前記健全性評価手順において、前記プローブ電流密度における交流成分の計測結果がカソード防食管理基準に合格しない場合で、前記交流成分の計測結果に対応するプローブ電流計測値の周期と、想定される交流迷走電流発生源の周期が一致した場合に、該交流迷走電流発生源を対策措置対象に定めることを特徴とする請求項21に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  23. 前記関連電位は、絶縁継手を介して前記導管と接続された隣接導管と前記導管との間の電位差であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  24. 前記健全性評価手順において、前記関連電位の絶対値が設定許容範囲内にあり、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記絶縁継手の性能が良好であるとの判定がなされることを特徴とする請求項23に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  25. 前記健全性評価手順において、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の下限未満である場合に、前記絶縁継手の性能が不良であると判定し、前記関連電位の絶対値が前記設定許容範囲の上限以上である場合に、前記絶縁継手両側の電位差低減措置が必要であるとの判定がなされることを特徴とする請求項24に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  26. 前記関連電位は、前記導管とその周囲に配備された鋼製鞘管との間の電位差であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  27. 前記健全性評価手順において、前記関連電位が、設定基準値よりプラス側で、前記相関に有意な正相関が認められた場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが有るとの判定がなされることを特徴とする請求項26に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  28. 前記健全性評価手順において、前記関連電位が、前記設定基準値よりマイナス側で、前記相関に有意な正相関が認められない場合に、前記導管と前記鋼製鞘管とのメタルタッチが無いとの判定がなされることを特徴とする請求項27に記載された導管及び付帯設備の健全性評価計測プログラム。
  29. カソード防食された導管及びその周辺の付帯設備について、防食に係る健全性を評価計測する装置であって、
    少なくとも、前記導管の対地電位と、前記付帯設備が前記導管に影響することを把握するために計測される関連電位の計測データが入力されるデータ入力部と、
    前記データ入力部に入力された計測データをサンプリングすると共に演算処理する計測演算処理部とを備え、
    前記計測演算処理部は、
    一単位計測時間だけ前記導管における対地電位の計測値をサンプリングした後に、一単位計測時間だけ前記関連電位の計測値をサンプリングする単位計測部と、
    該単位計測部による単位計測を繰り返し、各単位計測における前記導管の対地電位と前記関連電位の計測結果を一組の計測結果として複数組出力する計測結果出力部と、
    前記計測結果に基づく演算処理によって、時系列的に変化する前記導管の対地電位と前記関連電位との相関を求める相関演算部とを備えることを特徴とする導管及び付帯設備の健全性評価計測装置。
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