JP5057032B2 - ゴルフボール - Google Patents

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Description

本発明は、反発性に優れると共に高い生産性を有するゴルフボールに関する。
従来、ゴルフボールに優れた反発性を付与するために、基材ゴムとして使用されるポリブタジエンのムーニー値、重合触媒、溶液粘度、分子量分布、その他の指標の1種又は2種以上に焦点を当てて最適化することが行なわれている(例えば、特許文献1:特開2004−292667号公報、特許文献2:米国特許第6818705号明細書、特許文献3:特開2002−355336号公報、特許文献4:特開2002−355337号公報、特許文献5:特開2002−355338号公報、特許文献6:特開2002−355339号公報、特許文献7:特開2002−355340号公報、特許文献8:特開2002−356581号公報)。
例えば、特許文献1:特開2004−292667号公報には、ムーニー粘度30〜42で、分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜3.8のポリブタジエンが、また、特許文献2:米国特許第6818705号明細書には分子量が20万以上、レジリエンスインデックスが40以上のポリブタジエンが、ゴルフボール用の基材ゴムとして記載されている。
しかし、より飛距離の出るゴルフボールを求めるユーザーは多く、更に反発性に優れるゴルフボールの開発が求められていた。
また、これまで高反発のゴルフボールを得ようとすると、作業性の悪い高ムーニー粘度のゴムを使用する必要があり、必然的に生産性が低下してしまう。このため、生産性が低下せず、高反発のゴルフボールの開発が求められていた。
特開2004−292667号公報 米国特許第6818705号明細書 特開2002−355336号公報 特開2002−355337号公報 特開2002−355338号公報 特開2002−355339号公報 特開2002−355340号公報 特開2002−356581号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、非常に反発性に優れるゴルフボールを効率良く生産することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、基材ゴムと不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩と有機過酸化物とを含むゴム組成物の加熱成形物を構成要素とするゴルフボールを形成するに際し、基材ゴムに特定のT80値を有する2種のポリブタジエンを特定範囲で配合することにより、非常に反発性に優れるゴム組成物の加熱成形物が効率良く得られ、かかる加熱成形物を構成要素とするゴルフボールが非常に反発性に優れるゴルフボールとなり得ることを知見し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下のゴルフボールを提供する。
〔1〕(a)希土類元素系触媒によって形成され、下記のように定義される応力緩和時間(T80)が1.5以上2.3以下であり、ムーニー粘度が30以上65以下、且つシス1,4結合含有率が90%以上の固形状ポリブタジエン70〜90質量%と、希土類元素系触媒によって形成され、応力緩和時間(T80)が4以上20以下であり、ムーニー粘度が30以上60以下、且つシス1,4結合含有率が90%以上の固形状ポリブタジエン30〜10質量%とからなるポリブタジエン混合物を主成分として含む基材ゴムと、(b)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩と、(c)有機過酸化物と、を配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素とすることを特徴とするゴルフボール。
[応力緩和時間(T80)]
ML1+4(100℃)値(ASTM D−1646−96に準じて測定される、100℃におけるムーニー粘度測定値)測定直後にローター回転を停止させてからML1+4の値が80%低下するまでに要する時間(秒)である。
〔2〕前記ゴム組成物が(d)有機硫黄化合物を含む〔1〕記載のゴルフボール。
〔3〕前記ポリブタジエンのうち少なくとも一方が希土類元素系触媒を用いた重合の後に末端変性されて形成されたポリブタジエンである〔1〕又は〔2〕記載のゴルフボール。
本発明のゴルフボールは、生産性及び反発性に優れたものである。
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明のゴルフボールは、次の(a)〜(c)成分、
(a)下記のように定義される応力緩和時間(T80)が1.5以上2.3以下のポリブタジエン(以下、「BR1」と略記することがある。)70〜90質量%と、応力緩和時間(T80)が4以上20以下のポリブタジエン(以下、「BR2」と略記することがある。)30〜10質量%とからなるポリブタジエン混合物を主成分として含む基材ゴム、
(b)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、
を配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素とすることを特徴とするゴルフボールである。
[応力緩和時間(T80)]
ML1+4(100℃)値(ASTM D1646−96に準じて測定される、100℃におけるムーニー粘度測定値)測定直後にローター回転を停止させてからML1+4の値が80%低下するまでに要する時間(秒)。
当該指標については、ASTM D1646−96の第13.1.3.1欄の記載にも準ずるものである。
なお、本発明にいうムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。Mはムーニー粘度、Lは大ローター(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間を示し、100℃の条件下にて測定した値であることを意味する。
本発明において、前記(a)成分に含まれるポリブタジエン応力緩和時間(T80は、1.5以上2.3以下である。
一方、前記(a)成分に含まれるポリブタジエンには応力緩和時間(T80)が4以上のポリブタジエン(BR2)が含まれるが、当該ポリブタジエンのT80値としては、好ましくは4.5以上、より好ましくは5以上であり、上限値は、20以下、好ましくは10以下である。
前記BR1のムーニー粘度(ML1+4(100℃))としては30以上好ましくは40以上、最も好ましくは50以上、上限として65以下、好ましくは60以下である。ムーニー粘度が大き過ぎると作業性が悪化する場合があり、小さすぎると反発性が低下する場合がある。
一方、前記BR2のムーニー粘度(ML1+4(100℃))としては30以上好ましくは40以上、上限として60以下である。ムーニー粘度が大き過ぎると作業性が悪化する場合があり、小さすぎると反発性が低下する場合がある。
また、前記BR1及びBR2のシス1,4結合含有率90%以上好ましくは95%以上であり、1,2ビニル結合含有率としては3%以下、好ましくは2%以下、更に好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1.3%以下である。シス1,4結合含有率や1,2ビニル結合含有率が前記範囲を逸脱すると、反発性が低下する場合がある。
本発明におけるポリブタジエン混合物は、前記BR1と前記BR2とからなる混合物である。このような混合物を採用することにより、反発性を維持しつつ効率の良い生産が可能となり、本発明のゴルフボールは非常に反発性に優れたものとなる。
前記BR2が、前記ポリブタジエン混合物中に占める割合としては、30質量%以下、好ましくは25質量%以下である。当該割合が大きすぎると反発性が低下する場合がある。

また、本発明において前記ポリブタジエン混合物は基材ゴム中に主成分として含まれるが、前記ポリブタジエン混合物が、前記基材ゴム中に占める割合としては50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。当該割合が小さすぎると反発性が低下する場合がある。
なお、前記BR1、BR2以外に前記基材ゴム中に配合してもよいゴム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などを挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
ここで、このような配合用ゴムのムーニー粘度としては通常55以下、好ましくは50以下、更に好ましくは47以下、最も好ましくは45以下、下限として通常10以上、好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、最も好ましくは30以上である。配合用ゴムのムーニー粘度が上記範囲を逸脱すると、前記ゴム組成物の押出し作業性に劣る場合や、その加熱成形物の反発性に劣る場合がある。
本発明における前記BR1、及びBR2は共に、希土類元素系触媒を用いて形成されたポリブタジエンであることが、高反発性の観点から好適である。
ここで、希土類元素系触媒としては公知のものを使用することができ、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、更に、必要に応じルイス塩基の組合せよりなる触媒を使用することができる。
前記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
前記有機アルミニウム化合物としては、例えば、AlR123(ここで、R1、R2及びR3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示されるものを用いることができる。
前記アルモキサンとしては、下記式(I)又は下記式(II)で示される構造を有する化合物を好適に挙げることができる。この場合、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体を用いてもよい。

(式中、R4は、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、nは2以上の整数である。)
前記ハロゲン含有化合物としては、AlXn3-n(ここで、Xはハロゲンを示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3を示す)で示されるアルミニウムハライド、Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3などのストロンチウムハライド、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、四塩化チタンなどの金属ハライド等が用いられる。
前記ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えば、アセチルアセトン、ケトンアルコールなどを挙げることができる。
なお、本発明においては特にランタン系列希土類元素化合物の使用、中でもネオジウム化合物を用いたネオジウム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得る観点から好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例としては、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
ここで、希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合には溶媒を使用してもよいし、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよい。重合温度は通常−30℃〜150℃、好ましくは10〜100℃とすることができる。
また、本発明における前記BR1、及びBR2については、そのうちの少なくとも一方が、前記の希土類元素系触媒による重合に引き続いてポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させて、末端変性ポリブタジエンとして得られるものであることが、安定した品質のゴルフボールを製造する観点から好適である。
末端変性剤としては公知のものを使用することができるが、例えば、下記(1)〜(6)に記載した化合物等を使用することができる。
(1)R5 nM’X4-n、M’X4、M’X3、R5 nM’(−R6−COOR74-n又はR5 nM’(−R6−COR74-n(式中、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R7は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数を示す)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物
(2)分子中に、Y=C=Z結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す)を含有するヘテロクムレン化合物
(3)分子中に下記結合を含有するヘテロ3員環化合物

(式中、Yは、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す)
(4)ハロゲン化イソシアノ化合物
(5)R8−(COOH)m、R9(COX)m、R10−(COO−R11)、R12−OCOO−R13、R14−(COOCO−R15m、又は下記式で示されるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物

(式中、R8〜R16は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは1〜5の整数を示す)
(6)R17 lM”(OCOR184-l、R19 lM”(OCO−R20−COOR214-l、又は下記式で示されるカルボン酸の金属塩

(式中、R17〜R23は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M”はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子、lは0〜3の整数を示す。)
以上の(1)〜(6)に示される末端変性剤の具体例及び反応させる方法については、例えば特開平11−35633号公報、特開平7−268132号公報等に記載されているもの及び方法を挙げることができる。
なお、本発明において、前記BR2については、VIII族触媒で合成されたものであってもよい。VIII族触媒として具体的には、下記のニッケル系触媒、コバルト系触媒を挙げることができる。
即ち、ニッケル系触媒としては、例えば、ニッケルケイソウ土のような1成分系、ラネーニッケル/四塩化チタンのような2成分系、ニッケル化合物/有機金属/三フッ化ホウ素エーテラートのような3成分系のもの等を挙げることができる。なお、ニッケル化合物としては、担体付還元ニッケル、ラネーニッケル、酸化ニッケル、カルボン酸ニッケル、有機ニッケル錯塩などが用いられる。また、有機金属としては、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,4−ジリチウムブタン等のアルキルリチウム、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等のジアルキル亜鉛等を挙げることができる。
また、コバルト系触媒としては、コバルト及びその化合物として、ラネーコバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、酸化コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト、リン酸コバルト、フタル酸コバルト、コバルトカルボニル、コバルトアセチルアセトネート、コバルトジエチルジチオカルバメート、コバルトアニリニウムナイトライト、コバルトジニトロシルクロリド等を挙げることができ、特にこれらの化合物とジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド等のジアルキルアルミニウムモノクロリド、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルミニウムアルキルセスキクロリド、塩化アルミニウム等との組み合わせを好適に挙げることができる。
前記VIII族系触媒、特にニッケル系触媒又はコバルト系触媒を用いて重合する場合は、通常、溶剤、ブタジエンモノマーと併せて連続的に反応機にチャージさせ、例えば、反応温度を5〜60℃、反応圧力を大気圧から70数気圧の範囲で適宜選択して、上記ムーニー粘度のものが得られるように操作する方法を挙げることができる。
前記(b)成分として、不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸を好適に用いることができる。また、不飽和カルボン酸の金属塩としては、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩等を挙げることができ、特にアクリル酸亜鉛を好適に用いることができる。
前記(b)成分の配合量としては、前記基材ゴム100質量部に対して10質量部以上、好ましくは15質量部以上、上限として60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下である。(b)成分の配合量が多すぎるとゴム組成物の加熱成形物が硬くなって耐え難い打感となる場合があり、少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
前記(c)成分としては、市販品を用いることができ、例えばパークミルD(日本油脂社製)、パーヘキサC(日本油脂社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等を使用可能である。必要に応じて2種以上の異なる有機過酸化物を混合して用いてもよい。
前記(c)成分の配合量としては、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、上限として、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下である。配合量が多すぎたり少なすぎたりすると、好適な硬度分布、すなわち打感、耐久性及び反発性に劣る場合がある。
本発明におけるゴム組成物には、更に反発性を向上させる観点から、次の(d)成分、
(d)有機硫黄化合物、
を配合することが好適である。
このような有機硫黄化合物としては、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができ、更に具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
前記(d)成分の配合量としては、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、上限として5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。配合量が多すぎるとゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
本発明におけるゴム組成物には、更に無機充填剤や老化防止剤といった添加剤を配合することができる。無機充填剤としては、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合量は、前記基材ゴム100質量部に対し5質量部以上、好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、最も好ましくは13質量部以上、上限として80質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下である。配合量が多すぎたり少なすぎたりすると、適正な質量、および好適な反発性を得ることができない場合がある。
なお、反発性を上げるという点から無機充填剤中に酸化亜鉛が50質量%以上含有されているものが好ましく、更に好ましくは75質量%以上含有されているもの、特に100質量%(無機充填剤として酸化亜鉛が100%)であるものが好ましい。
また、酸化亜鉛の平均粒径(空気透過法による)は、好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、特に0.1μm以上、上限として好ましくは2μm以下、更に1μm以下が好ましく用いられる。
また、老化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(市販品「ノクラックNS−6」大内新興化学工業社製)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(市販品「ノクラックNS−5」(大内新興化学工業社製)等が挙げられる。その配合量は、前記基材ゴム100質量部に対し0質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、最も好ましくは0.2質量部以上、上限として3質量部以下、好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とすることが、好適な反発性、耐久性を得る観点から推奨される。
本発明におけるゴム組成物の加熱成形物は、上述したゴム組成物を、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって得ることができる。加硫条件としては、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施する条件が挙げられる。
なお、本発明におけるゴム組成物の加熱成形物について、加熱成形物表面のJIS−C硬度から加熱成形物中心のJIS−C硬度を引いた硬度差としては、通常15以上、好ましくは16以上、より好ましくは17以上、更に好ましくは18以上であり、上限として通常50以下、好ましくは40以下である。このように硬度を調整することが、軟らかい打感と良好な反発性と耐久性とを兼ね備えたゴルフボールを実現する観点から好適である。
また、本発明におけるゴム組成物の加熱成形物について、後述するいずれのゴルフボールに適用される場合であっても、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時のたわみ量が、通常2.0mm以上、好ましくは2.5mm以上、更に好ましくは2.8mm以上、上限としては6.0mm以下、好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下、最も好ましくは4.5mm以下であることが推奨される。変形量が少なすぎると打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合があり、一方、軟らかすぎると打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
本発明のゴルフボールは、前記加熱成形物を構成要素として具備するもので、ボールの態様は特に制限されるものではなく、前記加熱成形物がゴルフボールに直接適用されるワンピースゴルフボール、加熱成形物をソリッドコアとしかつその表面にカバーが形成されたツーピースソリッドゴルフボール、加熱成形物をソリッドコアとしかつその外側に2層以上のカバーが形成された3ピース以上のマルチピースソリッドゴルフボール、前記加熱成形物がセンターコアとして適用された糸巻きゴルフボール、前記加熱成形物がソリッドコアを包囲する中間層や最外層として適用されたマルチピースゴルフボール等の種々の態様を採ることができるが、特に、ソリッドコアとして使用するツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールであることが、加熱成形物の特性を有効に活かすことができる。
本発明において、前記加熱成形物をソリッドコアとする場合、ソリッドコアの直径としては30.0mm以上、好ましくは32.0mm以上、更に好ましくは35.0mm以上、最も好ましくは37.0mm以上、上限として41.0mm以下、好ましくは40.5mm以下、更に好ましくは40.0mm以下、最も好ましくは39.5mm以下とすることが推奨される。
特に、ツーピースソリッドゴルフボールのソリッドコアの直径としては37.0mm以上、好ましくは37.5mm以上、更に好ましくは38.0mm以上、最も好ましくは38.5mm以上、上限として41.0mm以下、好ましくは40.5mm以下、更に好ましくは40.0mm以下である。
また、スリーピースソリッドゴルフボールのソリッドコアの直径としては30.0mm以上、好ましくは32.0mm以上、更に好ましくは34.0mm以上、最も好ましくは35.0mm以上、上限として40.0mm以下、好ましくは39.5mm以下、更に好ましくは39.0mm以下とすることが推奨される。
前記ソリッドコアの比重としては通常0.9以上、好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上、上限として通常1.4以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
本発明において、前記加熱成形物をコアとしてツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールを形成する場合、公知のカバー材、中間層材を使用することができ、これらカバー材、乃至中間層材として具体的には、例えば熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー又はこれらの混合物等を挙げることができる。特に、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、アイオノマー樹脂を好適に使用することができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。また、本発明における加熱成形物を、ソリッドコアを包囲する中間層や最外層としてゴルフボールを形成する場合、公知のコア材、中間層材、カバー材を用いることができる。
前記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298、同T7295、同T7890、同TR3080、同T8295、同T8290(DIC・バイエルポリマー社製)等のジイソシアネートが脂肪族又は芳香族であるもの、等が挙げられる。一方、アイオノマー樹脂の市販品としてはサーリン6320、同8120(米国デュポン社製)、ハイミラン1706、同1605、同1855、同1601、同1557(三井・デュポンポリケミカル社製)等を例示できる。
更に、前記カバー材に対しては、任意成分として前記以外の熱可塑性エラストマー等のポリマーを配合することができる。任意成分のポリマーとして具体的には、例えばポリアミド系エラストマー、スチレン系ブロックエラストマー、水添ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体等が挙げられる。
なお、前記ツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールは公知の方法で製造することができる。ツーピースやマルチピースソリッドゴルフボールとする場合には、前記加熱成形物をソリッドコアとして所定の射出成形用金型内に配備し、ツーピースソリッドゴルフボールの場合には前記カバー材を、マルチピースソリッドゴルフボールの場合には、順に前記中間層材、カバー材を所定の方法に従って射出する公知の方法を好適に採用できる。場合によっては、前記カバー材を加圧成形によって製造することもできる。
前記マルチピースソリッドゴルフボールの中間層の厚さとしては0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、上限として3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、最も好ましくは1.6mm以下である。
一方、カバーの厚さとしては、ツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールのいずれであっても0.7mm以上、好ましくは1.0mm以上、上限として3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、最も好ましくは1.6mm以下である。
本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができる。直径の上限としては好ましくは44.0mm以下、更に好ましくは43.5mm以下、最も好ましくは43.0mm以下であり、重量の下限としては好ましくは44.5g以上、特に好ましくは45.0g以上、更に好ましくは45.1g以上、最も好ましくは45.2g以上である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〜4,比較例1〜5〕
下表1,2に示す配合にて各原料をニーダーにて混練してゴム組成物を調製し、球状金型内で155℃×20分間の加硫を行なうことにより、37.3mmφで重量32gの球状成型物を得た。
得られた成型物の物性を評価した。結果を下表1,2に併記した。
EC140
ファイアストンポリマー社製 ポリブタジエン(Nd系触媒にて重合)。T80値:2.3。
BR51
JSR社製 ポリブタジエン(Nd系触媒にて重合)。T80値:5.0。
BR01
JSR社製 ポリブタジエン(Ni系触媒にて重合)。T80値:8.4。
ZDA
日本触媒社製 アクリル酸亜鉛
ZnO
堺化学社製 酸化亜鉛。平均粒径0.6μm(空気透過法)、比表面積3.5m2/g(BET法)。
老化防止剤
大内新興化学工業社製 商品名「ノクラックNS−6」
PO−D
日本油脂社製 ジクミルパーオキサイド
ZnPCTP
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
DPDS
ジフェニルジスルフィド
押出作業性
同一の押出し条件下でゴムを押出し、スラブを作成した。以下の基準に従って評価した。
◎:スラブゴム肌が滑らかで質量が安定。
○:スラブゴム肌がラフになり、質量が不安定。
×:一定形状のスラブを得るのは困難。
コア荷重硬度
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時のたわみ量。
コア初速指数
公認機関USGAと同タイプの初速度計にて初速度を測定し、実施例1の値を基準にした時の比の値を表した。
上記表1の結果より、実施例1,2及び比較例1〜3におけるコア初速指数とコア荷重硬度(mm)との関係をプロットしたものを図1に示した。なお、図中の記号は押し出し作業性を示す。図1に示すように、実施例は比較例1〜3と比べて、高反発性と優れた作業性を兼ね備えていることが分かる。
また、上記表2の結果より、実施例3,4及び比較例4,5におけるコア初速指数とコア荷重硬度(mm)との関係をプロットしたものを図2に示した。なお、図中の記号は押し出し作業性と、添加した有機硫黄化合物の種類を示す。図2に示すように、実施例3と比較例4とを比較すると、同じ有機硫黄化合物を同量添加しているにもかかわらず、実施例3の方が比較例4よりも高反発性と優れた作業性を兼ね備えていることが分かる。実施例4と比較例5との比較についても同様のことが言える。
実施例1,2及び比較例1〜3におけるコア初速指数とコア荷重硬度(mm)との関係を示した図である。 実施例3,4及び比較例4,5におけるコア初速指数とコア荷重硬度(mm)との関係を示した図である。

Claims (3)

  1. (a)希土類元素系触媒によって形成され、下記のように定義される応力緩和時間(T80)が1.5以上2.3以下であり、ムーニー粘度が30以上65以下、且つシス1,4結合含有率が90%以上の固形状ポリブタジエン70〜90質量%と、希土類元素系触媒によって形成され、応力緩和時間(T80)が4以上20以下であり、ムーニー粘度が30以上60以下、且つシス1,4結合含有率が90%以上の固形状ポリブタジエン30〜10質量%とからなるポリブタジエン混合物を主成分として含む基材ゴムと、(b)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩と、(c)有機過酸化物と、を配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素とすることを特徴とするゴルフボール。
    [応力緩和時間(T80)]
    ML1+4(100℃)値(ASTM D−1646−96に準じて測定される、100℃におけるムーニー粘度測定値)測定直後にローター回転を停止させてからML1+4の値が80%低下するまでに要する時間(秒)である。
  2. 前記ゴム組成物が(d)有機硫黄化合物を含む請求項1記載のゴルフボール。
  3. 前記ポリブタジエンのうち少なくとも一方が希土類元素系触媒を用いた重合の後に末端変性されて形成されたポリブタジエンである請求項1又は2記載のゴルフボール。
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