<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図18によって説明する。本実施形態では、自動車に搭載されるインバータ装置への接続に用いられるシールドコネクタ10を例示する。
インバータ装置を構成するケースCは、金属製とされ、図13に示すように、外部に開口した複数の筒部を備えており、そのうち同図右斜め上方に開口する筒部C1に対してシールドコネクタ10が嵌合可能とされている。ケースC内には、シールドコネクタ10に対して接続可能とされる相手端子など(図示せず)が配置されている。なお、以下では、ケースCに対するシールドコネクタ10の挿入方向(図13に示す左側)を前方、その逆方向(図13に示す右側)を後方とする。また、上下方向については、図1などを基準とする。
シールドコネクタ10は、図13及び図14に示すように、全体として前後方向及び上下方向と直交する方向(以下、横方向とする)に沿って細長い横長形状をなしている。シールドコネクタ10は、被覆電線Wの端末に接続された複数の端子金具11と、各被覆電線Wと各端子金具11との接続部分に覆設されるハウジング12と、ハウジング12とケースCとの間に介在して両者間をシール可能なシールリング13と、ハウジング12と各被覆電線Wとの間に介在して両者間をシール可能な複数のゴム栓14と、ハウジング12から各ゴム栓14を抜け止め可能なゴム栓保持部材15と、ハウジング12に対して外装されるブラケット16と、被覆電線W群を一括して包囲するシールド部材17と、シールド部材17をブラケット16との間で挟持可能なかしめリング18とから構成される。なお、ここでいう前後方向は、被覆電線Wの軸方向と一致している。
端子金具11は、金属製とされ、図1及び図2に示すように、被覆電線Wの端末に露出した芯線W1に対してかしめ付けられるバレル部11aと、インバータ装置側の相手端子(図示せず)に対して接続可能な機器接続部11bとから構成される。機器接続部11bは、片持ちの板状をなすとともに、その先端部には相手端子に対して固定するためのボルトを挿通可能な孔部11cが貫通形成されている。また、機器接続部11bは、途中で屈曲されることで、先端部が被覆電線Wの軸方向に対して傾斜した姿勢となっている。なお、本実施形態に例示するシールドコネクタ10は、端子金具11及び被覆電線Wを横並びに3本ずつ備える。
ハウジング12は、図1ないし図3に示すように、被覆電線W及び端子金具11に対してモールド成形される第1ハウジング19と、第1ハウジング19に対して外装される第2ハウジング20とから構成されている。このうち、第1ハウジング19は、合成樹脂製とされ、各被覆電線W及び各端子金具11の接続部分を個別に覆う複数の被覆部21と、隣り合う被覆部21に連なる本体部22とを備える。被覆部21は、被覆電線Wのうち端末に露出した芯線W1の全域と、被覆W2の先端部とを覆うとともに、端子金具11のうちバレル部11aの全域と、機器接続部11bの根元部分とを覆うよう形成されている。被覆部21は、横方向に3つ並んで配されている。各被覆部21の外周面には、組み付けられる第2ハウジング20との間のガタを詰めるためのガタ詰め部21aが複数ずつ突設されている。詳しくは、ガタ詰め部21aは、各被覆部21の上下面の略中央にそれぞれ一対ずつ配されるとともに、両端の被覆部21における外向きの各側面の略中央にも1つずつ配されている。各ガタ詰め部21aは、前後方向について延びる薄肉の突条(リブ)状をなし、第2ハウジング20によって圧潰可能とされる。
各被覆部21のうち中央に配された被覆部21には、第2ハウジング20を組付状態に保持するための保持凸部23が一対設けられている。保持凸部23は、被覆部21の外周面から被覆電線Wにおける径方向の外側へ突出する形態とされており、詳しくは被覆部21の外周面のうち横方向に延びる上面及び下面からそれぞれ上下(第1ハウジング19に対する第2ハウジング20の組付方向と直交する方向)に突出する形態とされる。保持凸部23は、前後方向について端子金具11におけるバレル部11aの後端部とほぼ同じ位置に配置されている(図1)。保持凸部23の後面は、第2ハウジング20の組み付け動作を円滑にするためにテーパ状に形成されているのに対し、保持凸部23の前面は、係止力確保のため上下方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されている。上下の保持凸部23は、図4に示すように、中央の被覆部21においてガタ詰め部21aの側方位置(横方向の中央位置から側方へずれた位置)で、且つ被覆部21の径方向の中心に対して点対称となる位置に配置されている。
本体部22は、図1及び図2に示すように、隣り合う被覆部21を横切りつつその前端部同士を繋いでいる。本体部22には、各被覆部21の外周面よりも径方向の外側へ張り出して、全ての被覆部21を一括して取り囲む横長な鍔(フランジ)状をなす張出部分が形成されている。そして、この張出部分が第2ハウジング20に対する前止まりとして機能するストッパ部24と、後述するシールリング13を前止まりして位置決め可能な第1位置決め部25とを構成している。張出部分のうち径方向の内側部分によって構成されるストッパ部24は、第1ハウジング19における周方向について全周にわたって形成されている。一方、張出部分のうち径方向の外側部分によって構成される第1位置決め部25には、周方向について部分的な切り欠き25aが上下に一対ずつ形成されている。また、第1位置決め部25は、ガタ詰め部21aや保持凸部23よりも径方向の外側に突出している。
ところで、この第1ハウジング19では、本体部22(第1位置決め部25)と保持凸部23とが前後に対向状に配置されている構造であるため、樹脂成形時には、上下方向に沿って型開きされる成形金型が用いられるとともに、その成形金型のパーティングラインが各被覆部21の外周面を横切るようになっている。
また、本体部22における各端子金具11間の位置からは、図2及び図5に示すように、前方へ突出して各機器接続部11b間を仕切る一対の仕切り部22aが設けられている。また、本体部22の両側端位置からは、前方へ突出して両端の機器接続部11bを外側から覆う一対の端子保護部22bが設けられている。
ハウジング12を構成する第2ハウジング20は、上記した第1ハウジング19とは別途に樹脂成形される合成樹脂製とされており、図1ないし図3に示すように、全体として前後に開口した略筒状をなし、第1ハウジング19に対して被覆電線Wの軸方向に沿って後方から組み付けられるとともに内部に被覆電線Wが挿通可能とされる。詳しくは、第2ハウジング20は、第1ハウジング19に対して外嵌される前筒部26と、内部にゴム栓14及びゴム栓保持部材15を収容可能な後筒部27とを前後に繋げた構成とされる。第2ハウジング20内において前後両筒部の境界位置には、図1に示すように、前後両筒部間を仕切る横方向に延びるストッパ壁28が横断形成されており、このストッパ壁28により前筒部26内に挿入される第1ハウジング19と、後筒部27内に収容されるゴム栓14とを前後方向について位置決め可能となっている。また、ストッパ壁28には、被覆電線Wを個別に挿通可能な電線挿通孔28aが3つ横方向に並んで形成されている。
前筒部26は、図6及び図7に示すように、全体としては横長な長円形状をなすとともに、前方へ開口しており、その内部に前後方向に沿って延びる一対の縦長な仕切り壁26aが形成されることで、第1ハウジング19の各被覆部21に対応した3つの被覆部収容室26bが横並びで形成されている。なお、各仕切り壁26aには、肉抜きが形成されている。従って、第1ハウジング19に対して第2ハウジング20を組み付けると、前筒部26の各被覆部収容室26b内に各被覆部21が個別に収容され、前筒部26をなす外周壁及び仕切り壁26aによって各被覆部21が周方向について全周にわたって取り囲まれるようになっている。
前筒部26の内面のうち、中央の被覆部21に形成された保持凸部23に対応した位置には、図1,図7及び図8に示すように、保持凸部23が係止可能な保持凹部29が一対凹み形成されている。保持凹部29は、前筒部26を構成する上下の壁部において保持凸部23と同様の配置とされており、詳しくは前筒部26において横方向の中央位置から少し側方にずれた位置で、且つ前筒部26の径方向の中心に対して点対称となる位置に配置されている。保持凹部29は、平面に見て方形状をなしており、その前面が保持凸部23に対する係止面となっている。保持凹部29は、前後方向について前筒部26の略中央に配されている。なお、前筒部26の外周面のうち保持凹部29に対応した部分は、内側に保持凹部29を形成する都合上外向きに張り出しているが、その張出外端は次述する第2位置決め部31よりも径方向内側に引っ込んでいる。
前筒部26の前端部における外周面には、図1ないし図3に示すように、シールリング13が装着可能とされ、ここがシールリング装着面30となっている。前筒部26の外周面のうち、シールリング装着面30の直後位置には、シールリング13に対して後側から係合することで、既述した第1ハウジング19の第1位置決め部25と共にシールリング13を前後方向について位置決め可能な第2位置決め部31が形成されている。第2位置決め部31は、前筒部26の外周面から径方向の外向きに張り出す鍔状に形成されている。第2位置決め部31は、前後方向について保持凹部29よりも少し前寄りの位置に配されている。
ここで、シールリング13について説明する。シールリング13は、弾縮変形可能なゴム材からなり、シールリング装着面30に沿って長円形の環状に形成されており、その内外両周面に前後3条ずつのリップを備える。シールリング13のうち横長な上部及び下部における前後両端面からは、回り止め突起13aが一対ずつ前後に突出して設けられている。
第2ハウジング20が第1ハウジング19に組み付けられた状態では、図12に示すように、第2位置決め部31は、第1位置決め部25との間にシールリング13の長さ寸法分の間隔を空けて対向状に配されることになる。これら両位置決め部25,31によってシールリング13を前後から挟み込むことで、シールリング13の前後への位置ずれを規制可能とされる。第2位置決め部31は、組付状態において外周端(張出端)位置が第1位置決め部25とほぼ同じとなっている。第2位置決め部31には、図2及び図6に示すように、周方向について部分的に切り欠き31aが上下に一対ずつ形成されており、その周方向の配置が第1位置決め部25側の各切り欠き25aとほぼ一致している。これら第1位置決め部25及び第2位置決め部31の各切り欠き25a,31aには、シールリング13の各回り止め突起13aが進入可能とされ、これによりシールリング13を回り止めできるようになっている。
前筒部26の外周面のうち、第2位置決め部31の後側には、図1ないし図3に示すように、所定の間隔を空けてブラケット位置決め部32が第2位置決め部31と対向状に配置されている。このブラケット位置決め部32は、第2位置決め部31と同様に鍔状をなしているが、切り欠き31aを有していない点で第2位置決め部31とは相違している。このブラケット位置決め部32は、後述するブラケット16に係合してこれを径方向及び前後方向について位置決め可能とされる。このブラケット位置決め部32は、前筒部26の外周面に形成された前後に延びる複数のリブ33によって第2位置決め部31と連結されている。リブ33は、第2位置決め部31における各切り欠き31aに臨む各縁部にそれぞれ連結されるもの(図2)と、上下方向のほぼ中央位置に配置されるもの(図3)とからなる。ブラケット位置決め部32には、周方向について部分的にさらに径方向の外側へ張り出す張出部32aが設けられている。この張出部32aは、ブラケット位置決め部32における上側に一対、下側に1つ、互いに横方向にずれた位置に配置され、すなわち上下非対称配置とされている。また、前筒部26の外側面における後端位置には、後述するブラケット16を取付状態に保持するためのブラケットロック部34が一対突設されている。
一方、後筒部27は、図9に示すように、横長で途中2箇所が窄んだ略瓢箪型に形成され、後方へ開口している。後筒部27における途中の窄んだ部分には、図7及び図9に示すように、それぞれ仕切り壁27aが形成されることで、3つの円形状のゴム栓収容室27bが横並びに形成されており、このゴム栓収容室27b内に後方からゴム栓14が個別に収容可能とされる。なお、各仕切り壁27aには、肉抜きが形成されている。そして、後筒部27のうち、ゴム栓収容室27b(仕切り壁27a)よりも後方へ延出する部分の内部には、全てのゴム栓14を一括して抜け止めするためのゴム栓保持部材15が収容可能な保持部材収容室27cが確保されている。また、後筒部27の上部及び下部には、ゴム栓保持部材15を保持するための係止孔27dが3つずつ上下に貫通して形成されている。
ゴム栓保持部材15は、図10に示すように、一対の半割体15aの端部同士をヒンジ15bにより繋いでなり、ヒンジ15bを支点として両半割体15aが開閉可能とされる。半割体15aは、所定の間隔を空けて並べた3つの半円筒部同士を真直部によって連結した構成とされ、その外周面が後筒部27における後端部の内周面に整合した形状となっている。つまり、両半割体15aを閉じた状態では、ゴム栓保持部材15は、横長で途中2箇所が窄んだ略瓢箪型をなす。各半円筒部の外面における中央位置からは、係止孔に係止可能な係止突部15cがそれぞれ突設されている。
ブラケット16は、金属製とされ、第2ハウジング20に対して後方から外嵌可能とされており、図11に示すように、第2ハウジング20における後筒部27よりも一回り大きな長円筒形状をなすブラケット本体16aを備えている。ブラケット本体16aの前端部には、径方向の外側へ張り出すフランジ部16bが全周にわたって形成されている。フランジ部16bにおける前面には、第2ハウジング20のブラケット位置決め部32(張出部32aを含む)に整合し、これを受け入れ可能な凹部16cが形成されている。ブラケット16を第2ハウジング20に対して組み付けると、ブラケット位置決め部32の外周面が凹部16cの内周面に当接されることで、ブラケット16が径方向について位置決めされるとともに、ブラケット位置決め部32の後面が凹部16cの前面に当接されることで、ブラケット16の前止まりがなされるようになっている(図13及び図17)。
ブラケット本体16aの内側面における前端位置には、図7に示すように、第2ハウジング20のブラケットロック部34に係止可能なハウジングロック部16dが一対設けられている。また、ブラケット本体16aにおける外周面には、後述するかしめリング18を受けるためのリング受け凹部16eが全周にわたって凹み形成されている。また、ブラケット本体16aにおける上下外面には、突起が一対ずつ形成されている。
フランジ部16bにおける上端部からは、図1及び図11に示すように、前方へ突き出す横長な板状をなすケース押さえ部16fが設けられている。ブラケット16を第2ハウジング20に組み付けた状態では、ケース押さえ部16fと第2ハウジング20との間に前方へ開口する所定の空間が空けられ、ここにケースCの一部が介挿可能とされている(図18)。従って、ケース押さえ部16fによってケースCを外部から押さえることが可能とされる。ケース押さえ部16fの両側端からは、それぞれ両側方へ張り出す一対のケース固定部16gが設けられている。ケース固定部16gは、水平方向に対して前傾した姿勢とされるとともに、ケースCに形成されたねじ孔に対して締め付けられるボルト(ねじ孔共々図示せず)を挿通可能なボルト孔16hが貫通形成されている。
シールド部材17は、多数本の金属細線を編み込んでなる編組線により構成され、図1及び図2に示すように、全体として3本の被覆電線Wを一括して取り囲むことが可能な横長な筒状に形成されており、被覆電線Wの軸方向に沿って延びる形態とされている。かしめリング18は、金属製とされ、ブラケット本体16aに対して外装可能な横長な長円筒形状をなしている。かしめリング18は、ブラケット本体16aとの間にシールド部材17の前端部を介在させた状態で外部からかしめ付けられることで、シールド部材17を圧着保持可能とされる。
さて、本実施形態に係るシールドコネクタ10では、図1ないし図3に示すように、シールリング13を前後方向について位置決めするための第1位置決め部25と第2位置決め部31とが互いに別部品である第1ハウジング19と第2ハウジング20とにそれぞれ一体形成されている。そして、シールリング13が装着される第2ハウジング20のシールリング装着面30には、第2位置決め部31に対して前後に対向するような構造物が形成されていない。従って、第2ハウジング20を樹脂成形する際には、少なくとも第2ハウジング20のうちシールリング装着面30については、被覆電線Wの軸方向(両ハウジング19,20の組付方向)に沿って前方へ型開きする成形金型によって成形できるようになっており、シールリング装着面30を成形するため、縦方向または横方向、つまり被覆電線Wの軸方向と直交する方向に型開きする成形金型(スライド金型)を用いる必要がなくなっている。これにより、シールリング装着面30には、成形金型におけるパーティングラインが横切ることがなく、もってパーティングラインに起因するバリがシールリング装着面30に形成される事態が回避されている。
その上、両ハウジング19,20を組付状態に保持する保持構造を構成する保持凸部23及び保持凹部29のうち、保持凸部23が第1ハウジング19の外周面に設けられるのに対し、保持凹部29が第2ハウジング20の内周面に設けられている。ここで、仮に、第1ハウジング19の外周面に保持凹部29を設けた場合には、保持凹部29から被覆電線Wや端子金具11の一部が保持凹部29から突き出して外部に露出する可能性がある。特に、本実施形態においては、保持構造とバレル部11aの端部とが径方向に重畳する配置となっているため(図12)、圧着に伴ってバレル部11aの端部にベルマウスと呼ばれる突起が形成されると、そのベルマウスが外部に露出することが懸念されるので、その分を見越して第1ハウジング19の肉厚を大きく確保する必要がある。その点、本実施形態においては、第1ハウジング19の外周面には、保持凸部23を設けるようにしているから、上記した場合と比べると、第1ハウジング19の肉厚を小さく設定することが可能となり、もって径方向についてシールドコネクタ10の小型化を図ることができる。なお、第2ハウジング20の内周面に形成される保持凹部29については、第2ハウジング20を樹脂成形する際に、径方向の内向きにスライドするスライド金型を用いることで成形されている。
さらには、シールドコネクタ10を組み付けた状態では、保持構造である保持凸部23及び保持凹部29は、図13に示すように、第2ハウジング20における第2位置決め部31とブラケット位置決め部32との間に配されており、ブラケット16におけるケース押さえ部16fに対して径方向の内側に重畳する位置に配されている。そして、ケースCに対してシールドコネクタ10を挿入した状態では、保持凸部23及び保持凹部29は、図18に示すように、ケースCの先端部に対して径方向について重畳する位置関係となる。これにより、仮に第2ハウジング20に後方へ引っ張るような力が作用した場合でも、第2ハウジング20のうち保持凹部29が形成された部分がケースCによって径方向の外側から押さえ付けられるから、その部分が変形して保持凸部23が保持凹部29の周縁に乗り上げるような事態を防ぐことができる。もって、第2ハウジング20の保持力が十分に確保されている。
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用を説明する。まず、シールドコネクタ10の組付手順について説明する。被覆電線Wの端末に端子金具11を圧着接続したら、図1に示すように、それらの接続部分の周りに第1ハウジング19をモールド成形する。その一方、各被覆電線Wに第2ハウジング20、ゴム栓14、ブラケット16、シールド部材17及びかしめリング18を先通ししておく。そして、第2ハウジング20を第1ハウジング19に対して後方から被覆電線Wの軸方向に沿って押し込んで組み付ける作業を行う。
すると、第2ハウジング20の前筒部26が第1ハウジング19の各被覆部21に対して外嵌されるとともに、各保持凸部23が前筒部26内に進入する。第2ハウジング20が正規深さまで押し込まれると、前筒部26の前端部が第1ハウジング19のストッパ部24に突き当たるとともに、各被覆部21の後端部が第2ハウジング20のストッパ壁28に突き当たることで、第2ハウジング20の前止まりが図られる(図12)。このとき、各保持凸部23が対応する各保持凹部29内に進入するとともにその前面同士が係止して抜け止めが図られる。これにより、第1ハウジング19及び第2ハウジング20が互いに前後方向についてがたつきなく保持され、もってハウジング12が形成される。また、この過程では、各ガタ詰め部21aが各被覆部21と前筒部26との間で圧潰されることで、両者が緊密に嵌まり合い、径方向についてがたつきが生じるのが防がれる。
その後、被覆電線Wに先通しされた各ゴム栓14の後側にゴム栓保持部材15を、半割体15aを開閉することで取り付けるとともに、そのゴム栓保持部材15を第2ハウジング20に向けて各ゴム栓14ごと押し込む。すると、各ゴム栓14が第2ハウジング20の後筒部27内のゴム栓収容室27b内に、ゴム栓保持部材15が保持部材収容室27c内にそれぞれ進入する。そして、各ゴム栓14及びゴム栓保持部材15が正規深さまで進入すると、ゴム栓14がストッパ壁28に係合して前止まりされるとともに、係止突部15cが係止孔に進入し、その後面同士が係止して抜け止めが図られる(図12)。これにより、第2ハウジング20に対して各ゴム栓14及びゴム栓保持部材15が前後方向についてがたつきなく保持される。また、各ゴム栓14が第2ハウジング20の内周面と被覆電線Wの外周面との間で弾縮されることで、両者間のシールが図られる。
その一方、第1ハウジング19の第1位置決め部25と、第2ハウジング20の第2位置決め部31との間に位置するシールリング装着面30に対してシールリング13を装着する作業を行う。シールリング13を弾性的に拡径させた状態としつつ、ハウジング12に対して前方から通す。そして、シールリング13が第1位置決め部25を超えたところで、図12に示すように、シールリング13を復元させてシールリング装着面30に装着する。このとき、前側の各回り止め突起13aを第1位置決め部25の各切り欠き25aに、後側の各回り止め突起13aを第2位置決め部31の各切り欠き31aに、それぞれ進入させることで、シールリング13の回り止めが図られる(図17)。この状態では、シールリング13が前側の第1位置決め部25と後側の第2位置決め部31との間に挟まれ、もってシールリング13が前後方向について位置決め状態に保持される。このシールリング装着面30には、第2ハウジング20を成形する過程でバリが形成されることが避けられているので、シールリング13の内周面に対する密着性に優れ、もって高いシール性を得ることができるようになっている。
なお、上記した組み付け手順や組み付け方法は、適宜に変更可能である。例えば、シールリング13を先に第2ハウジング20に組み付けておき、それから第2ハウジング20を第1ハウジング19に対して組み付けるようにしても構わない。さらには、ゴム栓14及びゴム栓保持部材15を先に第2ハウジング20に組み付けておき、それから第2ハウジング20を第1ハウジング19に対して組み付けるようにしても構わない。また、必ずしも各ゴム栓14をゴム栓保持部材15によって押し込む必要はない。
続いて、第2ハウジング20に対してブラケット16を組み付ける作業を行う。ブラケット16を第2ハウジング20に向けて前進させ、凹部16c内にブラケット位置決め部32を進入させる。そして、ブラケット16が正規深さまで押し込まれると、凹部16cの前面に対してブラケット位置決め部32が突き当たることでブラケット16の前止まりがなされる(図13)。このとき、図16に示すように、ブラケットロック部34がハウジングロック部16dに係止されることで、ブラケット16の抜け止めが図られる。
その後、シールド部材17の前端部をブラケット本体16aに対して外嵌させるとともに、そのシールド部材17の前端部に対してかしめリング18を外嵌させる。シールド部材17の前端部をブラケット本体16aとかしめリング18との間に介在させた状態で、かしめリング18を外部からかしめ付けると、図13ないし図15に示すように、シールド部材17がブラケット本体16aとかしめリング18との間で挟持される。以上のようにしてシールドコネクタ10の組み付けが完了する。
続いて、インバータ装置のケースCに対してシールドコネクタ10を接続する作業について説明する。ケースCのうちシールドコネクタ10に対応した筒部C1内にシールドコネクタ10を挿入する。端子金具11の機器接続部11bに続いてハウジング12がケースC内に挿入されるとともに、ケースCの上壁部が第2ハウジング20とブラケット16のケース押さえ部16fとの間の空間に進入する。そして、シールドコネクタ10が正規深さまで挿入されたところで、ブラケット16のケース固定部16gにボルトを締め付けることで、シールドコネクタ10をケースCに対して挿入状態に固定する。この状態では、図18に示すように、シールリング13が第2ハウジング20とケースCとの間で弾縮されるとともに、シール装着面とケースCの内面に対して密着されることで、ケースCとシールドコネクタ10との間のシールが図られる。また、この状態では、各被覆電線Wを一括して取り囲んでいるシールド部材17が、ブラケット16を介してケースCに対して接続されているので、各被覆電線Wのシールドが図られている。
以上説明したように本実施形態のシールドコネクタ10は、被覆電線Wの端末に接続される端子金具11と、被覆電線W及び端子金具11における接続部分に覆設されるとともに、相手のインバータ装置のケースC内に挿入可能とされるハウジング12と、ハウジング12の外周面に装着されるとともに、ケースCに対して密着可能なシールリング13と、シールリング13に対して被覆電線Wの軸方向について前後に配され、ハウジング12に対してシールリング13を位置決め可能な一対の位置決め部25,31とを備え、両位置決め部25,31は、互いに別部品となっている。
このようにすれば、シールリング13は、前後の位置決め部によってハウジング12に対して被覆電線Wの軸方向について位置決めされる。ハウジング12をケースC内に挿入すると、シールリング13がハウジング12の外周面とケースCとに密着してシール性が得られる。ここで、両位置決め部25,31は、別部品となっているので、ハウジング12を樹脂成形によって形成するにあたって、シールリング13が装着される外周面について、被覆電線Wの軸方向に沿って型抜きされる成形金型を用いて成形することが可能となる。これにより、シールリング13に当接するハウジング12の外周面にパーティングラインが形成されるのを回避することができ、もって高いシール性を得ることができる。
また、ハウジング12は、被覆電線W及び端子金具11の接続部分の周りにモールド成形される第1ハウジング19と、第1ハウジング19に対して被覆電線Wの軸方向に沿って組み付けられる第2ハウジング20とから構成されるとともに、シールリング13が前記第2ハウジング20の外周面に装着されており、両位置決め部25,31のうち第1位置決め部25が第1ハウジング19に、第2位置決め部31が第2ハウジング20にそれぞれ形成されている。このようにすれば、シールリング13が装着される第2ハウジング20には、第2位置決め部31のみが形成され、第1位置決め部25が第1ハウジング19に形成されているから、第2ハウジング20を樹脂成形によって形成するにあたって、シールリング13が装着される外周面について、被覆電線Wの軸方向に沿って型抜きされる成形金型を用いて成形することが可能となる。
また、第2ハウジング20には、第1ハウジング19に対して外嵌される前筒部26が設けられており、第1ハウジング19における前筒部26との対向面には、保持凸部23が形成されているのに対し、前筒部26における第1ハウジング19との対向面には、保持凸部23が係止される保持凹部29が形成されている。このようにすれば、保持凸部23と保持凹部29との凹凸係止構造によって第2ハウジング20が第1ハウジング19に対して保持されるから、例えば圧入保持構造のものと比較して高い保持力が得られる。また、仮に第1ハウジング19側に保持凹部を設けた場合、保持凹部から被覆電線Wや端子金具11が外部に露出する可能性があることから、第1ハウジング19の肉厚を大きく確保する必要があるのと比べると、第1ハウジング19側に保持凸部23を設けるようにしたから、第1ハウジング19の肉厚を小さく抑えることができ、もって小型化に好適となる。
なお、第2ハウジング20において保持凹部29を形成するために外面が部分的に張り出しているが、第2ハウジング20には、その張出端よりも外側へ突出する第2位置決め部31などの既存構造が存在しているので、シールドコネクタ10全体の大型化にはならない。
また、保持凸部23及び保持凹部29は、ケースCに対して被覆電線Wの径方向について重畳する位置に配されている。このようにすれば、前筒部26における保持凹部29が形成された部分がケースCによって被覆電線Wの径方向の外側から押さえられるから、保持凸部23及び保持凹部29の係止深さを一定に保つことができ、もって高い保持力を得ることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記した実施形態では、保持凸部及び保持凹部からなる保持構造がケースと径方向について重畳する位置関係としたものを示したが、保持構造とケースとが前後にずれた位置関係のものも本発明に含まれる。
(4)上記した実施形態では、両位置決め部が切り欠きを有するものを示したが、切り欠きを省略し、位置決め部がハウジングの全周にわたって形成されるものも本発明に含まれる。
(7)上記した実施形態では、複数本の被覆電線をシールド部材によって一括してシールドするシールドコネクタを示したが、シールド部材を省略し、被覆電線に代えてシールド層を有するシールド電線(同軸電線)を用いるようにしたものも本発明に含まれる。
(8)上記した実施形態では、シールド機能を備えたシールドコネクタを例示したが、シールド機能(シールド部材、ブラケット及びかしめリング)を省略したものも本発明に含まれる。
(9)上記した実施形態以外にも、被覆電線や端子金具の本数については適宜に変更可能である。
(10)上記した実施形態では、インバータ装置に接続されるものを示したが、インバータ装置以外の機器に接続されるものにも本発明は適用可能である。