JP5055802B2 - 溶接h形鋼の溶接ビード整形装置 - Google Patents

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本発明は、フランジ材とウェブ材とを溶接した際に、その溶接部分に発生する溶接ビードを整形するための溶接H形鋼の溶接ビード整形装置に関する。
従来、図12に示すように、溶接H形鋼300は、2枚の上下フランジ材301,302と1枚のウェブ材303とが連続的に溶接点に供給されつつ、溶接点直前に配置された給電チップ201が上フランジ材301とウェブ材303の上部及び下フランジ材302とウェブ材303の下部に押し当てられて、当該給電チップ201から給電されて、ウェブ材303の上下端面部と各フランジ材301,302の幅中央部とが溶融加熱(高周波抵抗溶接)されるとともに溶接ピンチロール202によって加圧力を付加されて接合形成されていた。なお、給電チップ201は、高周波抵抗溶接電源203により電源が供給されている。一般的にこのような製造方法により溶接H形鋼(以下、単にH形鋼という。)は製造されていた。
この製造方法では、溶接工程において、図13に示すように、フランジ材301,302とウェブ材303の溶接点304には溶接ビード305が生じる。この溶接ビード305をそのまま放置しておくと、H形鋼300の外観が損なわれてしまう。また、溶接ビード305を放置しておくと、H形鋼300に塗装を施す際、塗料を当該溶接ビード305の発生部分に十分に塗布できず、これにより、塗装後極めて短時間で当該部分に錆が発生するといった問題点がある。
これらの問題点を解消するため、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、そのような技術が開示されている。
特開平7−9151号公報
前記特許文献1に開示の技術では、溶接装置の出側において、図14に示すように、圧潰ローラ・ユニット220を固定配置し、各圧潰ローラ(整形ロール)221をそれぞれボルト222によって溶接点304に生じた溶接ビードに40〜50度の角度で押付けて、溶接ビード305を整形している。
しかしながら、溶接ビードが形成されている部分が未だ赤熱している状態ではウェブ材303とフランジ材301,302との接合部の機械的強度が著しく低いので、溶接直後のそのような部分に圧潰ローラ221を押し付けること、即ちウェブ材303とフランジ材301,302との接合部に破断させようとする外力を作用させることは、この接合部を破断し易くしてしまったり、H形鋼300に寸法変化を生じさせたりしてしまう課題がある。
また、溶接時にウェブ材303及びフランジ材301,302の加熱温度差、投入電力の差等によって溶接後のH形鋼に変形(曲りや反り)或いは歪が生じることは周知のことであるが、このような変形が生じた場合、前述したように固定配置されているビード整形装置が相対的に位置変化するH形鋼を強制的に変形させてしまったり、或いはビード整形装置にそのようなH形鋼の変形力により過大な力が作用し、ビード整形装置が破損する課題がある。
また、このような場合には、圧潰ローラ221側にも負荷がかかってしまう課題がある。さらに、通材の停止等により溶接ビードが冷えて固くなってしまうと、圧潰ローラ221、例えばベアリング等の支持部材に過負荷がかかってしまう課題がある。図15は、通材中と通材の停止中とで、圧潰ローラ221(例えばベアリング)にかかる負荷の違いを示す。図15に示すように、通材を一旦停止すると、溶接ビードが冷えて固くなってしまう等の理由で、圧潰ローラ221(例えばベアリング)にかかる負荷が大きくなるのがわかる。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、最適な力で溶接ビードを整形することができるようにすることである。
前記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
フランジ材の表面とウェブ材とを溶着してH形鋼を製造するときに当該溶着部分に発生した溶接ビードに押し当てて当該溶接ビードを整形する整形ロールと、前記整形ロールの押し当て位置に対応して前記フランジ材の裏面に配置され、前記フランジ材を支える支えロールと、前記溶接ビードに前記整形ロールを押し当てる力を調整する押し当て力調整手段と、を備え、前記押し当て力調整手段は、前記整形ロールを支持する支持部及び前記支えロールを支持する支持部の少なくとも一方が回動自在に支持されるとともに弾性構造を含んで構成されており、回動自在に支持された支持部の一端に前記整形ロールまたは前記支えロールが回転自在に支持され、他端に前記弾性構造を介して当該他端の位置を調整する調整機構が設けられ、前記支持部を介して前記整形ロールまたは前記支えロールの位置が調整されるとともに、前記弾性構造の弾性力が前記支持部を介して前記溶接ビードに前記整形ロールを押し当てる力として伝達されることを特徴とする。
た、請求項に記載の発明では、
前記弾性構造の弾性力を調整する弾性力調整手段を備えることを特徴とする。
また、請求項に記載の発明では、
前記押し当て力調整手段は、前記押し当てる力の水平方向成分と垂直方向成分とを個別に調整することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、溶接ビードに整形ロールを押し当てる力を調整することができるので、最適な力で溶接ビードを整形することができる。
た、弾性構造といった簡単な構成で溶接ビードに整形ロールを押し当てる力を調整することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、弾性構造の弾性力を調整することで、より最適な力で溶接ビードを整形することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、押し当てる力の水平方向成分と垂直方向成分とを個別に調整することで、最適な力で溶接ビードを整形することができる。
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
実施形態は、本発明を適用したビード整形装置である。
(構成)
図1及び図2は、ビード整形装置において溶接ビード305を整形する部分である整形ロール41,51,71,81や支えロール91,101の配置を模式的に示す。
図1及び図2に示すように、ビード整形装置は、通材進行方向が図中矢印A方向であるH形鋼に対して、第1及び第2の溶接ピンチロール11,21の出側に溶接ビードの整形のための複数の第1乃至第4の整形ロール41,51,71,81を備えている。また、第1乃至第4の整形ロール41,51,71,81に対応するように配置した第1及び第2の支えロール91,101を備えている。
第1及び第2の整形ロール41,51は、第1のフランジ材である下フランジ材302とウェブ材303の下端面部(一端部)との溶接部に押し当てるように配置されている。第1の整形ロール41は、H形鋼300の通材進行方向に向かってウェブ材303の左側に配置されており、第2の整形ロール51は、H形鋼300の通材進行方向に向かってウェブ材303の右側に配置されている。第1及び第2の整形ロール41,51が押し当てられる部位に対応する下フランジ材302の裏面に、第1の支えロール91が配置されている。
また、第3及び第4の整形ロール71,81は、H形鋼の通材進行方向で第1及び第2の整形ロール41,51の後方において、第2のフランジ材である上フランジ材301とウェブ材303の上端面部(他端部)との溶接部に押し当てるように配置されている。第3の整形ロール71は、H形鋼300の通材進行方向に向かってウェブ材303の左側に配置されており、第4の整形ロール81は、H形鋼300の通材進行方向に向かってウェブ材303の右側に配置されている。第3及び第4の整形ロール71,81が押し当てられる部位に対応する上フランジ材301の裏面に、第2の支えロール101が配置されている。
図3は、H形鋼300の取り込み側からみたビード整形装置の構成を示す図であって、下フランジ302側の溶接ビード305を圧潰するための第1及び第2の整形ロール41,51及び第1の支えロール91の配置を示す。
図3に示すように、下フランジ材302とウェブ材303との溶接部分に第1及び第2の整形ロール41,51を押し当てるとともに、当該ウェブ材303における第1及び第2の整形ロール41,51の押し当て部分に対応する裏面側に第1の支えロール91を配置している。
ビード整形装置は、以上のような構成部の溶接ピンチロール11、第1及び第2の整形ロール41,51、並びに第1の支えロール91が一体的に、また溶接ピンチロール21、第3及び第4の整形ロール71,81、並びに第2の支えロール101が一体的に、H形鋼300の寸法に応じて垂直方向に移動可能に構成されている。
図4及び図5は、ビード整形装置1の具体的構成を示す。
図4及び図5に示すように、ビード整形装置1は、大別して、回転自在として第1及び第2の溶接ピンチロール11,21を備えている第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20と、第1乃至第4の整形ロール41,51,71,81を備えている第1及び第2の整形ロール機構30,60と、回転自在として第1及び第2の支えロール91,101を備えている第1及び第2の支えロール機構90,100とを備えている。このビード整形装置1は、上下方向に延びるハウジングポスト171に対して昇降自在に支持されている。
第1の溶接ピンチロール機構10は、H形鋼300の下側に配置されており、第2の溶接ピンチロール機構20は、第1の溶接ピンチロール機構10とでH形鋼300を挟むようにして、H形鋼300の上側に配置されている。図4に示すように、第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20はそれぞれ、フレーム12,22におけるH形鋼300の取り込み側に、軸受等からなる図示しない回転支持機構により各溶接ピンチロール11,21を回転自在に支持している。
図6は、H形鋼300の取り出し側からみたビード整形装置の構成を示しており、第1及び2のシャフト110,120近傍の構成を示す。
図6に示すように、第1の溶接ピンチロール機構10には、フレーム12におけるH形鋼300の通材進行方向側(H形鋼300の排出側)に、一対の支持部(或いはブラケット部)12a,12aにより第1のシャフト110が回転自在に取り付けられている。同様に、第2の溶接ピンチロール機構20には、筐体22のH形鋼300の進行方向側に、一対の支持部22a,22aにより第2のシャフト120が回転自在に取り付けられている。
第1のシャフト110は、一対の支持部12a,12aにより支持されて、H形鋼300の通材進行方向に対して垂直になるように配置されている。第1のシャフト110は、その中央が断面円形状の支持部(以下、中央支持部という。)112をなし、その両側が中央支持部112よりも大径の断面四角形状の支持部(以下、側方支持部という。)113,113をなしており、さらにその外側に断面円形状の支持部111からなっている。側方支持部113には、挿通孔113aにピン115が挿通されている。
また、図6で、第2のシャフト120についても、第1のシャフト110と同様に構成されている。すなわち、第2のシャフト120は、前記一対の支持部22a,22aにより支持されて、H形鋼300の通材進行方向に対して垂直になるように配置されている。第2のシャフト120は、その中央が断面円形状の中央支持部122をなし、その両側が中央支持部122よりも大径の断面四角形状の側方支持部123,123をなしており、さらにその外側に断面円形状の支持部121からなっている。側方支持部123には、挿通孔123aにピン125が挿通されている。
図6に示すように、第1及び第2のシャフト110,120はそれぞれ、第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20に対して取り付けられ、且つ回転自在に支持されている。
第1のシャフト110の側方支持部113,113にはピン115,115が貫通していて、側方支持部113,113上面から当該ピン115,115が突出しており、これにより、第1のシャフト110は、側方支持部113,113の上面で、ピン115,115により、水平方向で回転自在に、第1の整形ロール機構30(図4、図5)の第1及び第2の支持アーム31,32をそれぞれ支持している。さらに、第1のシャフト110は、中央部112にて、第1の支えロール機構90の本体部92(図4、図5)を回転自在に支持している。
同様に、第2のシャフト120の側方支持部123,123にはピン125,125が貫通して、側方支持部123,123下面からピン125,125が突出しており、これにより、第2のシャフト120は、側方支持部123,123の下面で、ピン125,125により、水平方向で回転自在に、第2の整形ロール機構60(図4、図5)の第3及び第4の支持アーム61,62をそれぞれ支持している。さらに、第2のシャフト120は、中央部122にて、第2の支えロール機構100の本体部102(図4、図5)を回転自在に支持している。
このように、第1のシャフト110には、第1の整形ロール機構30及び第1の支えロール機構90が組み付けられ、第2のシャフト120には、第2の整形ロール機構60及び第2の支えロール機構100が組み付けられている。
図7は、第1の整形ロール機構30の構成を示す。
図7に示すように、第1の整形ロール機構30は、第1及び第2の支持アーム31,32、第1及び第2の整形ロール41,51、並びに幅調整機構130を備えている。
第1及び第2の支持アーム31,32はそれぞれ、H形鋼300の左右それぞれに配置された略長手棒状体であり、略中央付近31a,32aが前記ピン115,115により回転自在に支持されている。ここで、第1及び第2の支持アーム31,32の略中央付近31a,32aに各ピン115,115を挿通して、当該各ピン115,115の端部に平板35を掛け渡し、各ピン115,115にボルト34,34を螺合して平板35を固定することで、支持アーム31,32はその上下方向の移動が制限されている(上下方向が固定されている)。
そして、第1の支持アーム31は、一端31b側に第1の整形ロール41を備えており、また、第2の支持アーム32は、一端32b側に第2の整形ロール51を備えている。
図8は、H形鋼300の取り込み側からみたビード整形装置の構成を示しており、第1及び第2の整形ロール41,51近傍の構成を示す。
図8に示すように、第1の支持アーム31(図7)の一端31bにボルト42によって支持ブロック43が固定されており、当該支持ブロック43に対して第1の整形ロール41が回転自在に支持されている。例えば、第1の整形ロール41は、下フランジ材302に対して略45°の角度をなすようにして支持されている。第2の整形ロール51についても同様に、第2の支持アーム32(図7)の一端32bにボルト52によって支持ブロック53が固定されており、当該支持ブロック53に対して回転自在に支持されている。そして、第2の整形ロール51は、下フランジ材302に対して略45°の角度をなすようにして支持されている。なお、ボルト42,52により固定される支持ブロック43,53に回転自在に整形ロール41,51を取り付けることで、各支持アーム31,32に対して各整形ロール41,51を容易に脱着できる。
第1の整形ロール41と第2の整形ロール51とは、ウェブ材303を挟むようにして配置されており、互いにその離間距離が自在に変化できるように、水平方向で開閉できるようになされている。これは図7に示したように第1及び第2の支持アーム31,32をピン115,115で第1のシャフト110に取り付けることで実現されている。
図9は、H形鋼300の取り出し側からみたビード整形装置の構成を示しており、支持アーム31,32,61,62の他端側からみた構成を示す。
この図9と図7にも示すように、第1及び第2の支持アーム31,32には、第1の整形ロール41と第2の整形ロール51との幅(距離)を調整するための幅調整機構130が設けられている。
幅調整機構130として、第1の支持アーム31の他端部31cと第2の支持アーム32の他端部32cとに1本のネジ(全ネジ)131を挿通して、第1及び第2の支持アーム31,32の他端部31c,32cの外側面から出た当該ネジ131の両端にナット(以下、外側ナットという。)132をそれぞれ取り付けるとともに、第1及び第2の支持アーム31,32の他端部31c,32cの内側面側にも外側ナット132とで当該他端部31c,32cを挟み込むように、ナット(以下、内側ナットという。)133をそれぞれ取り付ける。
図10は、第1の支持アーム31の他端部31c近傍の構成を示す。
図10に示すように、内側ナット133と他端部31cとの間には、ネジ131が挿通された、2枚の平座金134,135と当該2枚の平座金134,135の間に配置された弾性部材であるバネ136とが取り付けられている。ここで、他端部31cのネジ挿通孔31dの直径D1は、ネジ131の直径d1よりも多少大きい値になっている。なお、第2の支持アーム32の他端部32c近傍の構成もこれと同様な構成になっている。
第1及び第2の支持アーム31,32がピン115,115によって水平方向で回転自在となるように支持されているので、以上のような構成の幅調整機構130において、外側ナット132及び内側ナット133を調整することで、第1の整形ロール41と第2の整形ロール51との間の距離を調整することができる。具体的には、外側ナット132と内側ナット133とを外方(ネジ131の端部側)に移動させていくと、第1の支持アーム31の他端部31cと第2の支持アーム32の他端部32cとの間の距離が長くなっていくことで、第1の整形ロール41と第2の整形ロール51との間の距離は短くなっていき、外側ナット132と内側ナット133とを内方(ネジ131の中間部位側)に移動させていくと、第1の支持アーム31の他端部31cと第2の支持アーム32の他端部32cとの間の距離が短くなっていくことで、第1の整形ロール41と第2の整形ロール51との間の距離は遠くなっていく。これにより、第1及び第2の整形ロール41,51は、H形鋼の溶接ビード部に対して接離可能となり、適当な力で溶接ビード部に押し付けられるようになる。
また、外側ナット132と内側ナット133と間の距離を調整することにより、当該押し付け力を変化させることができる。すなわち、支持アーム31,32を介してバネ136の弾性力が当該押し付け力として伝達されるようになっているから、外側ナット132と内側ナット133との間の距離を短くすると、バネ136が縮むことで(弾性力が大きくなることで)、第1及び第2の整形ロール41,51を溶接ビード部側に付勢する力が大きくなり、当該押し付け力が大きくなる。また、外側ナット132と内側ナット133と間の距離を長くすると、バネ136が伸びることで(弾性力が小さくなることで)、第1及び第2の整形ロール41,51を溶接ビード部側に付勢する力が小さくなり、当該押し付け力が小さくなる。このように、バネ136の弾性力により、第1及び第2の整形ロール41,51を溶接ビード部に押し付ける力が自動的に調整されるようになっている。ここでは、特に水平方向の押し付け力が自動的に調整される。
また、ピン115,115により第1のシャフト110に取り付けられることで、第1のシャフト110を一体的に回転する回転軸として、第1及び第2の整形ロール41,51が上下方向で回動可能とされている。これにより、第1の整形ロール機構30は、第1及び第2の整形ロール41,51を、その間隔を所定間隔に維持しながらも、すなわち、適当な力で溶接ビード部に押し付けながら、上下方向に揺動可能に支持している。
第1の支えロール機構90は、図4及び図5に示すように、本体部92が第1のシャフト110の中央支持部112で回転自在に支持されており、その本体部92の一端側に回転自在にした第1の支えロール91を備えている。第1の支えロール91は、図8に示すように、軸受等からなる回転支持機構94を介して本体部92に対して回転自在に支持されている。
本体部92の他端部92aには、図4、図5及び図9に示すように、高さ調整機構140が設けられている。
高さ調整機構140では、本体部92の他端部92aにネジ(全ネジ)141を挿通して、他端部92aから上側に出たネジ141の端部141aを第1及び第2の支持アーム31,32の他端の下側面31d,32dに当接させている。そして、本体部92の他端部92aを挟み込むように、2つのナット142,143を取り付ける。ここで、本体部92の他端部92aの下側面側に配置されるナット142を下側ナット142といい、反対側(本体部92の他端部92aの上側面側)に配置されているナット143を上側ナット143という。
図11は、本体部92の他端部92a近傍の構成を示す。
図11に示すように、上側ナット143と他端部92aとの間には、ネジ141が挿通された、2枚の平座金144,145と当該2枚の平座金144,145の間に配置された弾性部材であるバネ146とが取り付けられている。ここで、本体部92の他端部92aのネジ挿通孔92bの直径D2は、ネジ141の直径d2よりも多少大きい値になっている。
本体部92が第1のシャフト110に回転自在に支持されているので、以上のような構成の高さ調整機構140において、下側ナット142及び上側ナット143を調整することで、第1及び第2の整形ロール41,51と第1の支えロール91との間の距離を調整することができる。具体的には、下側ナット142と上側ナット143とを下方(第1及び第2の支持アーム31,32の他端から離れる方向)に移動させていくと、第1及び第2の支持アーム31,32の他端と本体部92の他端部92aとの間の距離が長くなっていく一方で、第1及び第2の整形ロール41,51と第1の支えロール91との間の距離は短くなっていき、下側ナット142と上側ナット143とを上方(第1及び第2の支持アーム31,32の他端に近づく方向)に移動させていくと、第1及び第2の支持アーム31,32の他端と本体部92の他端部92aとの間の距離が短くなっていく一方で、第1及び第2の整形ロール41,51と第1の支えロール91との間の距離は遠くなっていく。このように、第1及び第2の整形ロール41,51とで下フランジ材302を挟み込む方向に第1の支えロール91を移動可能にしている。
また、下側ナット142と上側ナット143との間の距離を調整することにより、第1の支えロール91と第1及び第2の整形ロール41,51とで下フランジ材302を挟み込む力、すなわち、溶接ビード部に対する第1及び第2の整形ロール41,51の垂直方向の押し付け力を変化させることができる。すなわち、下側ナット142と上側ナット143との間の距離を短くするほど、バネ146が縮んでいくので(弾性力が大きくなるので)、第1の支えロール91を下フランジ材302に付勢する力が大きくなり、結果として、溶接ビード部に対する第1及び第2の整形ロール41,51の垂直方向の押し付け力が大きくなる。このように、本体部92を介してバネ146の弾性力が当該押し付け力として伝達されるようになっており、バネ146の弾性力により、溶接ビード部に対する第1及び第2の整形ロール41,51の垂直方向の押し付け力が自動的に調整されるようになる。
またさらに、図4及び図5に示したように、第1の整形ロール機構30の第1及び第2の整形ロール41,51が第1のシャフト110を回転軸として回転可能とされているので、第1の支えロール91は、高さ調整機構140により第1及び第2の整形ロール41,51との間の距離を一定に保った状態で、当該第1及び第2の整形ロール41,51とともに上下方向に揺動可能な機構として実現されている。
また、図4及び図5のように、第1のシャフト110が第1の溶接ピンチロール機構10に取り付けられていることから、第1のシャフト110に組み付けられている第1の整形ロール機構30及び第1の支えロール機構90は、第1の溶接ピンチロール機構10とともに変位することになる。
以上、図4及び図5に示した第1のシャフト110に組み付けられた第1の整形ロール機構30及び第1の支えロール機構90について説明したが、第2のシャフト120に組み付けられている第2の整形ロール機構60及び第2の支えロール機構100も同様な構成として実現されている。なお、第2の整形ロール機構60及び第2の支えロール機構100はそれぞれ、第1の整形ロール機構30及び第1の支えロール機構90とH形鋼300の搬送路について略対象的な構成をなしている。
すなわち、例えば、第3及び第4の支持アーム61,62にも、図9に示すように、第3の整形ロール71と第4の整形ロール81との幅(距離)を調整するための幅調整機構150が設けられている。
幅調整機構150として、第3の支持アーム61の他端部61cと第4の支持アーム62の他端部62cとに1本のネジ(全ネジ)151を挿通して、第1及び第2の支持アーム61,62の他端部61c,62cの外側面から出た当該ネジ151の両端に外側ナット152をそれぞれ取り付けるとともに、第3及び第4の支持アーム61,62の他端部61c,62cの内側面側にも外側ナット152とで当該他端部61c,32cを挟み込むように、内側ナット153をそれぞれ取り付ける。そして、内側ナット153と他端部61cとの間には、ネジ151が挿通された、2枚の平座金154,155と当該2枚の平座金154,155の間に配置された弾性部材であるバネ156とが取り付けられている。
第3及び第4の支持アーム61,62がピン125,125によって水平方向で回転自在となるように支持されているので、以上のような構成の幅調整機構150において、外側ナット152及び内側ナット153を調整することで、第3の整形ロール71と第4の整形ロール81との間の距離を調整することができる。具体的には、外側ナット162と内側ナット163とを外方(ネジ151の端部側)に移動させるほど、第3の支持アーム61の他端部61cと第4の支持アーム62の他端部62cとの間の距離が長くなっていくことで、第3の整形ロール71と第4の整形ロール81との間の距離は短くなる。これにより、第3及び第4の整形ロール71,81は、H形鋼の溶接ビード部に対して接離可能となり、適当な力で溶接ビード部に押し付けられるようになる。
また、外側ナット152と内側ナット153と間の距離を調整することにより、当該押し付け力を変化させることができる。すなわち、外側ナット152と内側ナット153と間の距離を短くするほど、バネ156が縮んでいくから、第3及び第4の整形ロール71,81を溶接ビード部側に付勢する力が大きくなっていき、当該押し付け力が大きくなる。このように、バネ156の弾性力により、第3及び第4の整形ロール71,81の溶接ビード部への押し付け力が自動的に調整されるようになっている。ここでは、特に水平方向の押し付け力が自動的に調整される。
また、第2の支えロール機構100の本体部102の他端部102aにも、図4、図5及び図9に示すように、高さ調整機構160が設けられている。
高さ調整機構160では、本体部102の他端部102aにネジ(全ネジ)161を挿通して、他端部102aから上側に出たネジ161の端部161aを第3及び第4の支持アーム61,62の他端の下側面61d,62dに当接させている。そして、本体部102の他端部102aを挟み込むように、2つのナット161,162を取り付ける。ここで、本体部102の他端部102aの上側面側に配置されるナット162を上側ナット162といい、反対側(本体部102の他端部102aの下側面側)に配置されているナット163を下側ナット163という。そして、下側ナット163と他端部102aとの間には、ネジ161が挿通された、2枚の平座金164,165と当該2枚の平座金164,165の間に配置された弾性部材であるバネ166とが取り付けられている。
本体部102が第2のシャフト120に回転自在に支持されているので、以上のような構成の高さ調整機構160において、上側ナット162及び下側ナット163を調整することで、第3及び第4の整形ロール71,81と第2の支えロール101との間の距離を調整することができる。具体的には、上側ナット162と下側ナット163とを上方(第3及び第4の支持アーム61,62の他端から離れる方向)に移動させるほど、第3及び第4の支持アーム61,62の他端と本体部102の他端部102aとの間の距離が長くなっていく一方で、第3及び第4の整形ロール71,81と第2の支えロール101との間の距離は短くなっていく。このように、第3及び第4の整形ロール71,81とで上フランジ材301を挟み込む方向に第2の支えロール101を移動可能にしている。
そして、上側ナット162と下側ナット163と間の距離を調整することにより、第2の支えロール101と第3及び第4の整形ロール71,81とで上フランジ材301を挟み込む力、すなわち、溶接ビード部に対する第3及び第4の整形ロール71,81の垂直方向の押し付け力を変化させることができる。すなわち、上側ナット162と下側ナット163と間の距離を短くするほど、バネ166が縮んでいくから、第2の支えロール101を上フランジ材301に付勢する力が大きくなり、結果として、溶接ビード部に対する第3及び第4の整形ロール71,81の垂直方向の押し付け力が大きくなる。このように、バネ166の弾性力により、溶接ビード部に対する第3及び第4の整形ロール71,81の垂直方向の押し付け力が自動的に調整されるようになる。
またさらに、前述したように、第2の整形ロール機構60の第3及び第4の整形ロール71,81が第2のシャフト110を回転軸として回転可能とされているので、第2の支えロール101は、高さ調整機構160により第3及び第4の整形ロール71,81との間の距離を一定に保った状態で、当該第3及び第4の整形ロール71,81とともに上下方向に揺動可能な機構として実現されている。
また、第2のシャフト120が第2の溶接ピンチロール機構20に取り付けられていることから、第2のシャフト120に組み付けられている第2の整形ロール機構60及び第2の支えロール機構100は、第2の溶接ピンチロール機構20とともに変位することになる。
(動作及び作用)
ビード整形装置は、H形鋼の溶接の際に次のように動作する。
先ず、図4及び図5でH形鋼300が通板される前に、第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20はH形鋼300の寸法等に応じて所定位置に移動し、第1乃至第4の整形ロール41,51,71,81及び第1及び第2の支えロール91,101を所定位置に配置する。例えば、図5に位置Bから位置Cへの変化として示すように第2の整形ロール機構60を搬送して第1の溶接ピンチロール機構10に取り付けて、その後、第1の溶接ピンチロール機構10が所定位置に移動する。このときの所定位置への移動は、図示しないレール172(図7)によって移動自在に支持されている第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20を、図示しない昇降機構が操作することで行う。
続いて、上下フランジ材301,302及びウェブ材303を通板しつつ、溶接を開始する。溶接するための構成としては、前記図1及び図2に示したような構成が挙げられる。すなわち、2枚の上下フランジ材301,302と1枚のウェブ材303とを連続的に溶接点に供給しつつ、溶接点直前に配置された給電チップ201を上フランジ材301とウェブ材303の上部及び下フランジ材302とウェブ材303の下部に押し当てて、当該給電チップ201から給電して、ウェブ材303の上下端面部と各フランジ材301,302の幅中央部とを溶融加熱(高周波抵抗溶接)すると共に溶接ピンチロール11,21によって加圧力を付加して接合する。
このとき、ビード整形装置では、第1の支えロール91により下フランジ材302を下側で支えつつ、第1及び第2の整形ロール41,51で、ウェブ材303の下端部と下フランジ材302との溶接点に発生する溶接ビードを押し潰し、また、第2の支えロール101により上フランジ材301を上側で支えつつ、第3及び第4の整形ロール71,81で、ウェブ材303の上端部と上フランジ材301との溶接点に発生する溶接ビードを押し潰す。
また、溶接ビードへの各整形ロール41,51,71,81の水平方向及び垂直方向の押し付け力が幅調整機構130,150及び高さ調整機構140,160により自動的に調整されるようになっているので、溶接ビードの整形は、必要最小限の力で実現されるようになり、最適な力でなされるようになる。また、バネといった簡単な構成でそれを実現できる。なお、溶接ビードが未凝固な状態で整形することが好ましいことはいうまでもない。
このように、ビード整形装置1は動作するが、ビード整形装置1は、前述したように、第1の整形ロール41と第2の整形ロール51とが互いに距離を一定に保ちつつ上下方向に揺動することができるように構成されているとともに、第1の支えロール91もこの第1及び第2の整形ロール41,51とともに上下方向に揺動できるように構成されている。そして、図示しないが、第1のシャフト110が左右方向に移動自在に支持されていることで、第1及び第2の整形ロール41,51並びに第1の支えロール91が左右方向に揺動できるように構成されている。また、同様に、第3の整形ロール71と第4の整形ロール81とが互いに距離を一定に保ちつつ上下方向に揺動することができように構成されているとともに、第2の支えロール101もこの第3及び第4の整形ロール71,81とともに上下方向に揺動できるように構成されている。そして、第3及び第4の整形ロール71,81並びに第2の支えロール101も、図示しないが、左右方向に揺動できるように構成されている。
これにより、熱変形等によりH形鋼300に曲りや反り等が生じて、H形鋼300の鋼材位置が上下左右どちらかにずれても、各整形ロール41,51,71,81及び各支えロール91,101がそのH形鋼300に追従することができるので、すなわち、H形鋼300の通材位置変化に、整形ロール41,51,71,81及び各支えロール91,101を追求させる追従手段を備えることで、各整形ロール41,51,71,81を溶接ビード部に的確に当てることができるようになる。これにより、例えば、H形鋼300の曲りや反り等の変形によりビード整形装置1がH形鋼300を強制的に変形させてしまったり、ビード整形装置1に過大な力が作用し、ビード整形装置1が破損してしまったりすることを防止することができる。さらに、このような追従構造が簡単な構造により実現されている。
また、ビード整形装置1は、種々の寸法のH形鋼にも対応して、ビード整形することができる。ビード整形装置は、図4、図5及び図9に示したように、第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20が上下方向に移動可能にされている。そして、各整形ロール41,51,71,81及び各支えロール91,101は、この1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20とともに移動するように組み付けられている。これにより、ビード整形装置は、H形鋼300の寸法に合わせて第1及び第2の溶接ピンチロール機構10,20の第1及び第2の溶接ピンチロール11,21を配置すれば、同時に各整形ロール41,51,71,81及び各支えロール91,101もそれに応じた位置に配置されることになるので、種々の寸法のH形鋼に対応してビード整形することができるようになる。
なお、前記実施形態の説明において、整形ロール41,51,71,81は、フランジ材の表面とウェブ材とを溶着してH形鋼を製造するときに当該溶着部分に発生した溶接ビードに押し当てて当該溶接ビードを整形する整形ロールを実現しており、支えロール91,101は、前記整形ロールの押し当て位置に対応して前記フランジ材の裏面に配置され、前記フランジ材を支える支えロールを実現しており、幅調整機構130,150及び高さ調整機構140,160は、前記溶接ビードに整形ロールを押し当てる力を調整する押し当て力調整手段を実現している。
また、バネ136,146,156,166は、前記整形ロールを支持する支持部及び支えロールを支持する支持部の少なくとも一方に含む弾性構造を実現しており、これにより、前記弾性構造の弾性力が前記支持部を介して前記溶接ビードに整形ロールを押し当てる力として伝達されていることを実現している。なお、弾性構造をバネ以外のものによっても構成することもできる。
また、バネ136,146,156,166の長さを調整するためのネジ及びナットは、前記弾性構造の弾性力を調整する弾性力調整手段を実現している。
本発明のビード整形装置における溶接ビードを整形する部分の概略構成を示す側面図ある。 本発明のビード整形装置における溶接ビードを整形する部分の概略構成を示す図であって、前記図2とは反対側からみた側面図である。 第1及び第2の整形ロール及び第1の支えロールの位置関係を示す正面図である。 ビード整形装置を備えている設備の構成を示す側面図である。 ビード整形装置を備えている設備の構成を示す他の側面図である。 ビード整形装置の構成を示す図であって、ビード整形装置を背面から見た断面図である。 ビード整形装置の第1の整形ロール機構を示す平面図である。 ビード整形装置の第1及び第2の整形ロール並びに支えロールの構成を示す図であって、ビード整形装置を正面から見た断面図である。 ビード整形装置を示す背面図である。 第1の支持アームの他端部近傍の構成を示しており、幅調整機構の説明に使用した図である。 本体部の他端部近傍の構成を示しており、高さ調整機構の説明に使用した図である。 従来の溶接H形鋼の製造方法における溶接工程の模式的説明図である。 溶接H形鋼と、そのH形鋼に発生する溶接ビードとを示す図である。 従来の溶接ビード整形装置の構成を示す図である。 通材中と通材の停止中とで、圧潰ローラ(例えばベアリング)にかかる負荷の違いを示す特性図である。
符号の説明
1 ビード整形装置、10,20 溶接ピンチロール機構、11,21 溶接ピンチロール、30,60 整形ロール機構、31,32,61,62 支持アーム、41,51,71,81 整形ロール、90,100 支えロール機構、91,101 支えロール、110,120 シャフト、115,125 ピン、130,150 幅調整機構、140,160 高さ調整機構、136,146,156,166 バネ

Claims (3)

  1. フランジ材の表面とウェブ材とを溶着してH形鋼を製造するときに当該溶着部分に発生した溶接ビードに押し当てて当該溶接ビードを整形する整形ロールと、
    前記整形ロールの押し当て位置に対応して前記フランジ材の裏面に配置され、前記フランジ材を支える支えロールと、
    前記溶接ビードに前記整形ロールを押し当てる力を調整する押し当て力調整手段と、を備え、
    前記押し当て力調整手段は、前記整形ロールを支持する支持部及び前記支えロールを支持する支持部の少なくとも一方が回動自在に支持されるとともに弾性構造を含んで構成されており、
    回動自在に支持された支持部の一端に前記整形ロールまたは前記支えロールが回転自在に支持され、他端に前記弾性構造を介して当該他端の位置を調整する調整機構が設けられ、
    前記支持部を介して前記整形ロールまたは前記支えロールの位置が調整されるとともに、前記弾性構造の弾性力が前記支持部を介して前記溶接ビードに前記整形ロールを押し当てる力として伝達されることを特徴とする溶接H形鋼の溶接ビード整形装置。
  2. 前記弾性構造の弾性力を調整する弾性力調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の溶接H形鋼の溶接ビード整形装置。
  3. 前記押し当て力調整手段は、前記押し当てる力の水平方向成分と垂直方向成分とを個別に調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接H形鋼の溶接ビード整形装置。
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