以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる空調システム1を説明するための概略構成図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
この実施の形態の空調システム1は、置換換気方式によって空調空間10の内部の空調を行うものである。この空調システム1では、空調空間10は、例えば事務室、電算室、客室、宴会場、遊技場、印刷室、病室、便所、厨房、機械室、ボイラ室、工場などであり、空調空間10の内部は、天井10a、床10b及び側壁10cで区画された閉鎖空間になっている。空調空間10の下部は、床10bから2m程度の高さまでが居住域11となっており、居住域11には人間12が存在している。
前記の空調空間10の下部には、複数の給気口15が設けられ、空調空間10の上部には、複数の排気口16が設けられている。給気口15は居住域11の高さ(床から2m程度の高さまで)に配置されており、排気口16は、居住域11よりも上方に配置されている。図示の例では、空調空間10の側壁10cの下部に給気口15を開口させ、天井10aに排気口16を開口させている。
空調空間10の側壁10cの下部背面側には、給気チャンバ20が設けられている。給気チャンバ20の高さは、空調空間10内に形成される居住域11の高さにほぼ等しくなっている。この給気チャンバ20の前面21が、空調空間10の側壁10cの下部に露出した状態になっている。給気チャンバ20は、図示の例では室を構成する壁面4面のうち対向する2面に壁面に沿って、図に従っていえば紙面の奥行方向に間隔をおいて設置されている。
こうして空調空間10の側壁10c下部に露出した給気チャンバ20の前面21には、図2に示すように、複数の給気口15が縦横に並べて配置されている。給気チャンバ20には、外気OAおよび還気RAを空調機22に取り込んで作られた低温空気(給気)SAが、給気チャンバ20ごとに分岐する給気ダクト23を経て供給されている。この給気ダクト23ごとに後述する可変ダンパDが設けられる。これにより、給気チャンバ20の前面21に形成された複数の給気口15から、空調空間10の居住域11に向かって横向きに低温空気SAが給気されるようになっている。この場合、各給気口15から空調空間10内に向かって0.5m/s以上1.2m/s以下、例えば0.9m/sの風速(吹き出し速度)で低温空気SAが給気されることにより、空調空間10の居住域11が置換換気によって空調されるようになっている。
空調機22は、内部に取り込んだ外気OAおよび還気RAをろ過、冷却して低温空気SAを作るためのフィルタ24、図示しない二方弁による冷水流量制御で冷却量を調節できる冷却器25と、低温空気SAを給気ダクト23及び給気チャンバ20を経て空調空間10内に送風する給気ファン(送風機)27を備えている。なお必要に応じ暖房用に加熱器が備えられていてもよい。また、給気ファン27には、送風量を変化させるためのインバータ28が装着されている。インバータ28は、室内温度センサTからの信号を受け、適切な風量を演算し、給気ファン27の送風量を制御することができる。この場合、この空調システム1では、給気チャンバ20から空調空間10内に供給する低温空気SAと、排気口16から排出される排気EAとの温度差(給排気温度差)を所定の温度差以上(例えば10℃〜20℃の温度差以上)に保つように、給気ファン27の送風量が制御されるようになっている。
給気チャンバ20は、一つの空調空間10に対して複数台設置されている。図3に示すように、この空調システム1では、一つの空調空間10に対して5台の給気チャンバ20を備えている。これら5台の給気チャンバ20には、空調機22で作られた低温空気(給気)SAが、給気ダクト23を経てそれぞれ供給されて、各給気チャンバ20のそれぞれから、空調空間10の居住域11に向かって横向きに低温空気SAを給気できるようになっている。
また、図3に示す例では、5台の給気チャンバ20が設置されている。これらは給気ファンの能力(CMH)を台数で割った給気能力(CMH)を1台あたり有する。これらのうち、1台目の給気チャンバ20は基本的に常時給気のベース台として位置づけられ、空調機22で作られた低温空気(給気)SAが、給気ダクト23を経てそのまま供給される。そして、2〜5台目の給気チャンバ20に対しては、空調機22で作られた低温空気(給気)SAが、給気ダクト23に介在させられた可変ダンパD1〜D4を経て供給されている。可変ダンパD1〜D4は、例えばモータダンパなどの開度制御ダンパであり、2〜5台目の給気チャンバ20に対する低温空気(給気)SAの供給を開閉させる制御と、2〜5台目の給気チャンバ20に対する低温空気(給気)SAの供給風量を調整させる制御がいずれも可能である。これら可変ダンパD1〜D4の制御によって、5台の給気チャンバ20において、吹き出し台数を1〜5台に変更することができ、また、2〜5台目の給気チャンバ20に対しては、給気ダクト23からの送風量を任意に調整することができる。
給気ダクト23には、可変ダンパD1〜D4よりも上流側において、給気ダクト23の内部と空調空間10の内部との差圧Pを検出する差圧計29が装着してある。後述するように、空調空間10の居住域11に向かって低温空気SAの送風を行っている給気チャンバ20の内部と空調空間10の内部の差圧Pを、この差圧計29によって測定することが可能である。また、この差圧計29の測定値Pが所定の差圧、例えば20paとなるように、可変ダンパD1〜D4の開閉を制御して、5台の給気チャンバ20のうちの吹き出し台数と、2〜5台目の給気チャンバ20に対する送風量を調整することができる。
給気チャンバ20の前面に形成された各給気口15には、図4、5示すように、複数のフィン40がそれぞれ装着されている。各給気口15の中央に支持部材41が設けてあり、給気チャンバ20に対してこの支持部材41が固定されている。各フィン40は、この支持部材41の周りに適当な等間隔で放射状に取り付けてある。また、給気口15から空調空間10の内部に向かって吹き出す低温空気SAに旋回成分を与えるべく、各フィン40は給気口15の中心軸15’に対してそれぞれ傾斜して配置されており、図4と図5では、フィン40の傾斜方向が逆向きの関係になっている。
このように、各給気口15に傾斜したフィン40を放射状に取り付けたことにより、給気チャンバ20の内部から給気口15に向かって流れ込んできた低温空気SAを、給気口15に通過させる際に、各フィン40に沿わせて強制的に流すことができる。これにより、給気口15から空調空間10に向かって吹き出す低温空気SAに、中心軸15’を中心とする旋回成分を与えるようになっている。
ここで、図4、5では、前述の吹出部材について、フィン40の傾斜方向が互いに逆向きであり、図4に示したフィン40によっては、給気口15を通過する際に、給気チャンバ20の前面21を空調空間10の室内側から見た場合において、反時計回転方向の旋回成分が低温空気SAに与えられる。一方、図5に示したフィン40によっては、給気口15を通過する際に、給気チャンバ20の前面21を空調空間10の室内側から見た場合において、時計回転方向の旋回成分が低温空気SAに与えられる。
前述のように給気チャンバ20の前面(空調空間10を形成している室の内部側の面)21には、複数の給気口15が縦横に並べて配置されているが、隣り合う給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分は、互いに逆の回転方向の関係になっている。即ち、例えば図6に示すように上下方向に並んだ4つの給気口15a、15b、15c、15dを例にして説明すると、1番上の給気口15aと上から3番目の給気口15cでは、フィン40の傾斜方向が図4で説明した状態であり、これら給気口15aと給気口15cからは、反時計回転方向の旋回成分を与えられた低温空気SAが吹き出される。一方、上から2番目の給気口15bと4番目の給気口15dでは、フィン40の傾斜方向が図5で説明した状態であり、これら給気口15bと給気口15dからは、時計回転方向の旋回成分を与えられた低温空気SAが吹き出される。このように、隣り合う給気口15aと給気口15b、給気口15bと給気口15c、給気口15cと給気口15dの間において、それぞれ互いに逆の回転方向に旋回する低温空気SAを吹き出すようになっている。
即ち、図7に示すように、上下方向に並んだ4つの給気口15a、15b、15c、15dからいずれも同じ回転方向に旋回する低温空気SA(図7に示す例では、いずれも反時計回転方向に旋回する低温空気SA)を吹き出した場合、給気口15aと給気口15bの間、給気口15bと給気口15cの間及び給気口15bと給気口15cの間において、互いに打ち消しあう方向に低温空気SAが吹き出されることとなる。そうすると、各給気口15a、15b、15c、15dから吹き出される低温空気SAの旋回成分が相殺されてしまう。
一方、図6で説明したように、各給気口15a、15b、15c、15dから吹き出す低温空気SAの旋回成分を交互に逆の回転方向とすれば、給気口15aと給気口15bの間、給気口15bと給気口15cの間及び給気口15bと給気口15cの間のいずれにおいても、互いに同じ方向に低温空気SAが吹き出されることとなるので、各給気口15a、15b、15c、15dから吹き出される低温空気SAの旋回成分が相殺されず、お互いに旋回運動を助長しあうようになる。
なお、図6では、上下に配列された給気口15の関係について説明したが、先に図2で説明したように、給気チャンバ20の前面21には複数の給気口15が縦横に並べて配置されている。そこで、図8に示すように、上下に配列された給気口15の関係のみならず、横に配置された給気口15の間においても、隣り合う給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるように、各給気口15に設けられたフィン40の傾斜方向が設定されている。
図1に示すように、空調空間10の上部に配置された排気口16には、排気ファン42を備えた排気ダクト43が接続されている。これにより、空調空間10の上部に溜まった空気(空調空間10に存在している人体やOA機器などの熱負荷によって加熱された空気)が、排気ダクト43経て外部に排気EAされるようになっている。排気ファン42には、排気量を変化させるためのインバータ44が装着されている。
また、排気ダクト43には、排気ファン42よりも下流側において、空調空間10の上部から排気された空気の一部を、還気RAとして空調機22に戻すための還気ダクト45が接続されている。これにより、排気口16を通じて空調空間10の上部から排気された空気の一部が排気EAとなって外部に排出されると共に、残りの空気が、還気RAとなって還気ダクト45を経て空調機22に戻されるようになっている。排気ダクト43と還気ダクト45には、ダンパ46、47が設けてあり、これらダンパ46、47の開度調整により、外部に排出される排気EAと還気ダクト45を経て空調機22に戻される還気RAの割合が任意に設定できるようになっている。
さて、以上のように構成された空調システム1において、空調機22で作った低温空気SAを、給気ファン27の稼動により、給気ダクト23及び給気チャンバ20を経て空調空間10内に給気する。この場合、後に詳しく説明するように、給気ファン27の送風量に応じて給気チャンバ20の吹き出し台数が変更されることにより、給気チャンバ20前面の各給気口15から空調空間10内に向かって吐出面での平均流速が0.5m/s以上、1.2m/s以下の流速で清浄空気SAが供給される。具体的には、給気口15を通過する際に、フィン40の作用により、低温空気SAに対して旋回成分が与えられる。ここでの流速は例えば1.8m/sであり、前面21の給気口15から吐出される時点では昇圧されて低速となり0.9m/sとなる。換言すれば吹出風量を前面21の面積で除すと、本例では流速0.9m/sが得られた。こうして、空調空間10下部の居住域11に向かって、各給気口15から旋回しながら低温空気SAが0.5m/s以上、1.2m/s以下の流速で横向きに給気される。
すると、各給気口15の近傍においては、給気口15から吹き出した低温空気SAに、空調空間10内の空気が誘引されて一緒に移動する誘引作用がはたらく。この場合、給気口15から吹き出す低温空気SAに旋回成分が与えられていることにより、低温空気SAに誘引される空調空間10下部の居住域11の空気の誘引量(誘引比)が増加する。これに伴い、運動量保存則に従って低温空気SAの速度は、各給気口15から吹き出した後、速やかに減速することとなる。こうして空調空間10下部の居住域11に供給された低温空気SAは、温度差により、居住域11の下方に下降するように流れ、居住域11を低速で満たしていき、ドラフト感を与えることなく居住域11を快適な環境に保つことが可能となる。その結果、空調空間10の居住域11が好適に空調されることとなる。
また、居住域11に存在する空気に対して低温空気SAが混合されて、希釈効果により居住域11を清浄に保つことができるようになる。この場合、給気ユニット20近傍の誘引量は吹出しフェース面速度の二乗に比例する。各給気口15から0.5m/s、1.2m/s以下以上の流速で低温空気SAを給気することにより、居住域11全体の希釈混合ができ、熱上昇流に直接乗らない浮遊粒子の除去もできるようになる。そして、給気ユニット20からの給気は給気面の高さと同じ距離の位置(例えば前面21の高さが2.1mのとき、前面21から室内側に2.1mの地点)では減速されて、例えば0.3m/s程度の風速となる。また、居住域11に向かって低温空気SAを横向きに給気しているので、空調空間10内において居住域11よりも上部に存在している空気に対しては低温空気SAが混合されず、居住域11のみを低温かつ清浄な状態に保つことができる。
一方、空調空間10内の居住域11には、発熱体としての人間12などが存在しているので、居住域11に供給されて人間11やその他の発熱機器類などに熱的に接触した低温空気SAは、やがて加熱され、緩やかに上昇する。その上昇流により、居住域11において人間12の周りに生じた塵埃やガスなどの汚染物質を空調空間10内の上方に搬送することができる。
そして、空調空間10の居住域11よりも上方に溜まった空気(加熱された空気)は、攪拌されることなく、即ち、空調空間10内の居住域11の温度成層を乱すことなく、排気口16及び排気ダクト43を経て、排気ファン40外部に排気EAされる。また、その際、空調空間10の上部から排気された空気の一部が、還気RAとして空調機22に戻される。こうして、低温空気SAを空調空間10内の下方に供給しつつ、空調空間10の上部から、加熱空気と共に塵埃やガスなどの汚染物質を排気することにより、空調空間10内の換気が行われ、空調空間10内下方の居住域11は清浄な低温空気SAの環境に保たれる。
なお、以上のような置換換気による空調が行われるに際し、給気ファン27の送風量は、インバータ28の調整により、給気チャンバ20から空調空間10内に供給する低温空気SAと、排気口16から排出される排気EAとの温度差(給排気温度差)を所定の温度差以上に保つように制御される。このように給排気温度差を大きく保つように送風量を増減させる変風量方式を行うことにより、給気ファン27による空気搬送動力を低減することができる。
また、このように給気ファン27の送風量が制御されることに伴い、可変ダンパD1〜D4の開閉が制御されて、5台の給気チャンバ20のうちの吹き出し台数と、2〜5台目の給気チャンバ20における送風量が調整される。これにより、各給気口15から空調空間10下部の居住域11に向けて所定の風速で低温空気SAが給気されることになる。
即ち、図9に示すように、給気ファン27の送風量が送風機給気能力の0〜20%の範囲では、可変ダンパD1〜D4を全部閉じ、2〜4台目の給気チャンバ20に対しては、給気ダクト23から送風を行わない。これにより、1台目のダンパなしの給気チャンバ20から低温空気SAの給気を行い、2〜5台目の給気チャンバ20からは低温空気SAの給気を行わない。また、給気ファン27の送風量が20〜40%の範囲では、可変ダンパD1〜D4のうちいずれか一つ(たとえば可変ダンパD1)を開く。これにより、例えば1台目と2台目の給気チャンバ20から低温空気SAの給気を行い、例えば3〜5台目の給気チャンバ20からは低温空気SAの給気を行わない。また、給気ファン27の送風量が40〜60%の範囲では、可変ダンパD1〜D4のうちいずれか二つ(たとえば可変ダンパD1、D2)を開く。これにより、例えば1〜3台目の給気チャンバ20から低温空気SAの給気を行い、例えば4台目と5台目の給気チャンバ20からは低温空気SAの給気を行わない。また、給気ファン27の送風量が60〜80%の範囲では、可変ダンパD1〜D4のうちいずれか三つ(たとえば可変ダンパD1、D2、D3)を開く。これにより、例えば1〜4台目の給気チャンバ20から低温空気SAの給気を行い、例えば5台目の給気チャンバ20からは低温空気SAの給気を行わない。また、給気ファン27の送風量が80〜100%の範囲では、可変ダンパD1〜D4の全部を開く。これにより、1〜5台目の給気チャンバ20の全部から低温空気SAの給気を行う。本実施形態では可変ダンパD1〜D4は開度制御機能は必要ではなくオンオフダンパで十分である。すなわちインバータ28により給気される空調空気がダンパの開いた給気チャンバ20に略均等に供給される。
図10は、このように給気ファン27の送風量に伴って可変ダンパD1〜D4の開閉を制御して、5台の給気チャンバ20のうちの吹き出し台数を変更した場合の、運転される各給気チャンバ20の平均吹出風量(換言すれば運転されるチャンバの設計風量に対する実際の吹出風量の割合(%)で、以下「平均風量」と言う。)の変化を示している。なお、平均風量は給気チャンバ20から給気される低温空気SAの風速(吹き出し速度)と正比例の関係にあり、平均風量を給気口の総面積で割れば、吹き出し速度となる。図9で説明したように、給気ファン27の送風量に応じて可変ダンパD1〜D4の開閉を制御し、5台の給気チャンバ20のうちの吹き出し台数を変更した場合、給気ファン27の送風量が0〜20%の範囲では、1台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、0〜100%に変化する。即ち、例えば給気ファン27の送風量が10%に達した時点で、低温空気SAの平均風量は稼働している給気チャンバ20の吹出能力の50%に達し、その後、給気ファン27の送風量がインバータ制御により段階的に増加するに従い、1台目の給気チャンバ20から給気される平均風量は同様に増加していく。
また、給気ファン27の送風量が20〜40%の範囲では、1台目と2台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、50〜100%に変化する。即ち、2台目の給気チャンバ20からの低温空気SAの給気を開始した時点(給気ファン27の送風量が20%の時点)では、1台目と2台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は給気が分配されていずれも50%となるが、その後、給気ファン27の送風量が増加するに従い、1台目と2台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、いずれも増加していく。
また、給気ファン27の送風量が40〜60%の範囲では、1〜3台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、66.7〜100%に変化する。即ち、3台目の給気チャンバ20からの低温空気SAの給気を開始した時点(給気ファン27の送風量が40%の時点)では、1〜3台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量はいずれも66.7%となるが、その後、給気ファン27の送風量が増加するに従い、1〜3台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、いずれも増加していく。
また、給気ファン27の送風量が60〜80%の範囲では、1〜4台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、75〜100%に変化する。即ち、4台目の給気チャンバ20からの低温空気SAの給気を開始した時点(給気ファン27の送風量が60%の時点)では、1〜4台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量はいずれも75%となるが、その後、給気ファン27の送風量が増加するに従い、1〜4台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、いずれも増加していく。
また、給気ファン27の送風量が80〜100%の範囲では、1〜5台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、80〜100%に変化する。即ち、5台目の給気チャンバ20からの低温空気SAの給気を開始した時点(給気ファン27の送風量が80%の時点)では、1〜5台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量いずれも80%となるが、その後、給気ファン27の送風量が増加するに従い、1〜5台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は、いずれも増加していく。
これに対して、仮に可変ダンパD1〜D4が無く(あるいは、可変ダンパD1〜D4が動作せず、常に開きっ放しで)、常に5台の給気チャンバ20の全部から給気が行われた場合は、給気ファン27の送風量が0〜100%の全範囲において、低温空気SAの平均風量は、給気ファン27の送風量に比例して増減する。即ち、例えば給気ファン27の送風量が50%に達した時点で、低温空気SAの平均風量はようやく50%に達することになる。
このように、本願発明のように給気ファン27の送風量に応じて可変ダンパD1〜D4の開閉を制御して給気チャンバ20の吹き出し台数を変更した場合は、給気ファン27の送風量が例えば10%に達した時点で、低温空気SAの平均風量は既に50%となり、給気ファン27の送風量が10〜100%の範囲では、低温空気SAの平均風量は50%を下回ることが無い。
従って、仮に空調空間10下部の居住域11を置換換気によって空調するために、低温空気SAの平均風量が、最大風量(100%)の半分(50%)以上が必要であると想定すると、本願発明のように給気ファン27の送風量に応じて給気チャンバ20の吹き出し台数を変更した場合は、給気ファン27の送風量が10〜100%の範囲で、低温空気SAの平均風量を50%以上に保つことができる。これにより、近傍空気の誘引量の低下を防ぎ、居住域11の上下温度差を抑制し、汚染質の希釈も十分に可能となる。給気チャンバ20の運転台数制御、ダンパ開度制御をする本実施形態では、同じ空調風量(空調空間への全供給風量)が同じであっても給気チャンバ1台あたりの給気風量が多く、その結果誘引力を高く保て、空調空間の温度成層が良好に形成できる。一方、可変ダンパD1〜D4が無い場合は、給気ファン27の送風量が半分未満(50%未満)の範囲では、低温空気SAの風速が50%を下回るため、誘引量が減少して居住域11の上下温度差が大きくなり、汚染質の希釈も不十分になってしまう。可変ダンパD1〜D4が無い場合は、給気ファン27の送風量が50%に達するまでは、低温空気SAの平均風量は50%に満たないこととなる。
なお、図10では、可変ダンパD1〜D4を順次開いて給気チャンバ20の吹き出し台数を変更していく場合を説明したが、更に加えて、可変ダンパD1〜D4の開度を調整することにより、一部の給気チャンバ20については、低温空気SAの平均風量を最大風速(100%)に維持できるようにさせることも可能となる。ここで、図11は、5台の給気チャンバ20のうちの吹き出し台数を変更することに加えて、更に、給気ファン27の送風量に伴って可変ダンパD1〜D4の開度調整を行った場合の、各給気口15から空調空間10下部の居住域11に向けて供給される低温空気SAの平均風量(%)の変化を示している。
即ち、先に図10で説明した例では、給気ファン27の送風量が0〜20%の範囲において1台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量が一旦100%まで増加したにもかかわらず、給気ファン27の送風量が20%に達して例えば可変ダンパD1を開いた時点で、1台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量は一旦50%に減少してしまう。そこで、このような低温空気SAの平均風量減少を回避するために、例えば可変ダンパDのモータに開度制御信号を送信するようにする。そして、給気ファン27の送風量が20〜40%の範囲では、次に開く例えば可変ダンパD1の開度調整を行い、図11に示すように、2台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量を、0〜100%に徐々に増加させていく。これにより、給気ファン27の送風量が20〜40%の範囲では、1台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量を常に100%に維持することができるようになる。また、給気ファン27の送風量が40〜60%の範囲では、例えば可変ダンパD1を全開にしたまま、次に開く例えば可変ダンパD2の開度調整を行い、図11に示すように、3台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量を、0〜100%に徐々に増加させていく。これにより、給気ファン27の送風量が40〜60%の範囲では、1台目と2台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量をいずれも100%に常に維持することができるようになる。同様に、給気ファン27の送風量が60〜80%の範囲では、例えば可変ダンパD1、D2を全開にしたまま、次に開く例えば可変ダンパD3の開度調整を行い、図11に示すように、4台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量を、0〜100%に徐々に増加させていく。これにより、給気ファン27の送風量が60〜80%の範囲では、1〜3台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量をいずれも100%に常に維持することができるようになる。同様に、給気ファン27の送風量が80〜100%の範囲では、例えば可変ダンパD1〜D3を全開にしたまま、次に開く例えば可変ダンパD4の開度調整を行い、図11に示すように、5台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量を、0〜100%に徐々に増加させていく。これにより、給気ファン27の送風量が80〜100%の範囲では、1〜4台目の給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量をいずれも100%に常に維持することができるようになる。給気チャンバ20から給気される低温空気SAに対して居住域11の空気が誘引される量は、低温空気SAの平均風量の二乗に比例する。そのため、このように給気チャンバ20の吹き出し台数の変更に加えて、更に、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行うことは特に有効である。
なお、以上のような給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行う場合、給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量を測定し、当該風速が所定の範囲となるように、給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行うといった制御が考えられる。一方、給気を行っている給気チャンバ20の内部における圧力と空調空間10内の圧力との差圧Pは、給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量の2乗に比例するといった性質がある。そこで、給気チャンバ20から給気される低温空気SAの平均風量の代わりに、給気を行っている給気チャンバ20の内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧Pを測定し、測定された差圧Pが所定の範囲となるように給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行うといった制御も可能であり、より高い精度での計測が可能である。この場合、給気を行っている給気チャンバ20の内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧Pは、図3に示したように、可変ダンパD1〜D4よりも上流側において給気ダクト23に設けた差圧計29によって測定することができる。この差圧計29によって測定される差圧Pが所定の範囲となるように給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行うといった制御が可能である。より具体的には、温度センサTで測定される室内の要求付加が高くなった時にインバータ28によって総風量が増加し、差圧の所定値、例えば20paより高くなる。すると開度100%未満のダンパD1〜D4の開度を大きくし、またはその時点で開いているダンパD1〜D4が全開のときは次のダンパを開く。
なお、1台目の給気チャンバ20は常に給気を行っているので、図12に示すように、この1台目の給気チャンバ20内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧Pを差圧計29によって測定し、この差圧Pが所定の範囲となるように給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行うことも可能である。また、1〜4台目の給気チャンバ20の内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧P1〜P4を差圧計29によってそれぞれ測定し、例えば1〜4台目の給気チャンバ20で給気を行っている場合には、3台目の給気チャンバ20の内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧P3を測定して、この差圧P3が所定の範囲となるように可変ダンパD4の開度調整を行って4台目の給気チャンバ20への送風量を制御し、例えば1〜3台目の給気チャンバ20で給気を行っている場合には、2台目の給気チャンバ20の内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧P2を測定して、この差圧P2が所定の範囲となるように可変ダンパD3の開度調整を行って3台目の給気チャンバ20への送風量を制御し、例えば1台目と2台目の給気チャンバ20で給気を行っている場合には、1台目の給気チャンバ20の内部の圧力と空調空間10内の圧力との差圧P1を測定して、この差圧P1が所定の範囲となるように可変ダンパD2の開度調整を行って2台目の給気チャンバ20への送風量を制御することもできる。この場合、1〜3台目の給気チャンバ20について、低温空気SAの平均風量を、ほぼ100%に維持できるようになる。
その他、給気ファン27の送風量と給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整の関係を予め定めておき、その関係に従って給気チャンバ20の吹き出し台数の変更、および、可変ダンパD1〜D4の開度調整を行うといった制御も考えられる。
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。例えば、例えば排気口16をクリーンルーム10の上部において側壁10cに形成してもよい。また、給気ファン27の送風量は、低温空気SAと排気EAの温度差(給排気温度差)が所定の温度差以上となるように自動制御(変風量制御)しても良いし、室内負荷に応じて手動で送風量を変更して、所定の温度差を満足するように制御しても良い。また、冷却機25と給気ファン27の両方またはいずれか一方は、給気チャンバ20に内蔵、または給気チャンバのダクト接続口に付設していてもよい。
また図4、5では、支持部材41に複数のフィン40を放射状に取り付けた構成の吹出部材を、各給気口15にそれぞれ装着した例を説明したが、この形態に限定されない。例えば本出願人が先に特開平9-250803号の図5で開示した旋回流形成板の如き、平板からフィンを打ち抜いて形成した構成でも良い。また、給気チャンバ20の前面21に縦横に並べて配置された複数の給気口15において、上下に配列された給気口15の間では、隣り合う給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるが、横に配置された給気口15の間では、隣り合う給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、互いに同じ回転方向の関係となるように設定されていてもよい。また逆に、横に配列された給気口15の間では、隣り合う給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるが、上下に配置された給気口15の間では、隣り合う給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、互いに同じ回転方向の関係となるように設定されていてもよい。また、全部の給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、いずれも同じ回転方向の関係となるように設定されていてもよい。更に、各給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分が、不規則に同じ回転方向となったり逆の回転方向となるように設定されていても良い。各給気口15から吹き出される低温空気SAの旋回成分の回転方向は、任意に設定できる。
また、図14に示すように、各給気口15に装着される複数枚のガイドフィン40の周囲に、円筒52を取付けても良い。このように、給気口15において、複数枚のガイドフィン40の外周を円筒52の内壁面53(給気口15の中心軸15’を中心軸とする円筒形状の内壁面53)によって囲むことにより、低温空気SAに時計回転方向または反時計回転方向の旋回成分をより強制的に与えることができる。この場合、給気口15の中心軸15’に沿った方向における円筒52の長さLは、同じく給気口15の中心軸15’に沿った方向におけるガイドフィン40の幅lの半分以上に設定すると良い。
また、給気チャンバ20前面の各給気口15には、フィン40を取り付けなくても良い。例えば図15に示すように、給気チャンバ20前面において下方の給気口15から低温空気SAを給気し、給気チャンバ20前面において上方に配置された給気口15では、エゼクタ効果を用いて空調空間10内の空気を誘引する方法も考えられる。また、図16に示すように、給気チャンバ20前面を多孔板などで構成することにより、給気口15を小口径の吹き出し開口とし、高速吹き出し噴流を用いて誘引する方法などでも適用できる。
また、本発明は、空調空間10内の空気を混合・希釈させる非層流方式(コンベンショナル方式)のクリーンルームにも適用できる。空調空間10内下方の居住域11に向かって低温空気SAを横向きに給気することにより、居住域11よりも上部に存在している空気に対しては低温空気SAが混合されず、居住域11のみを清浄に保つことができる。
なお、このようにクリーンルームに本発明を適用する場合は、図17に示すように、空調機22内において、低温空気SAから浮遊粒子を除去するための高性能フィルタ55を設けると良い。この場合、高性能フィルタ55は例えばHEPAフィルタ、ULPAフィルタ等で構成される。また、高性能フィルタ55は、空調機22内に設ける他、給気ダクト23内や、給気チャンバ20内に設けても良い。あらかじめ給気ファン27のインバータ28の周波数と風量との関係を求めておき、その周波数信号をモータダンパに連絡して開度制御をしてもよい。この方法では温度センサT→インバータ28→ダンパDの信号の連絡による部材が少なくてすむ。可変ダンパの開度制御法として風速による方法、差圧計による方法を例示したが、給気口15の高さは居住域より低ければよく、足元の高さとしても既存の室内空気はいずれ給気により押し上げられ置換されていき同じ効果を得られる。