JP5053547B2 - 活性酸素種等測定装置 - Google Patents
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Description
このスーパーオキシドアニオンラジカルは、基質の存在しない場合には、式(1)に示されるように不均化反応により過酸化水素(H2O2)と酸素分子(O2)になる。この不均化反応は、スーパーオキシドアニオンラジカルへのプロトン付加によるHO2・の生成、HO2・と酸素分子の反応による過酸化水素と酸素分子の生成、およびHO2・同士の衝突による過酸化水素と酸素分子の生成からなるものである(式(1)〜式(4))。
2H+ + 2O2 −・ → H2O2 + O2 ……(1)
H+ + O2 −・ → HO2・ ……(2)
HO2・ + O2 −・+ H+ → H2O2+ O2 ……(3)
HO2・ + HO2・ → H2O2+ O2 ……(4)
この反応系においては、スーパーオキシドアニオンラジカルは電子受容体(酸化剤)、電子供与体(還元剤)および水素イオンの受容体(塩基)としてはたらくが、このうちの前二者の性質を利用して、スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度測定が試みられていた。例えば、フェリチトクロームc(3価)からフェロチトクロームc(2価)への変換反応や、ニトロブルーテラゾリウム(NBT)からブルーホルマザンの生成反応およびテトラニトロメタン(TNM)の還元反応を利用して、スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度測定が試みられていたが、これらは全て体外(in vitro)での測定方法であった。
一方、生体内(in vivo)のスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を定量的に検出する方法についての検討も行われていた。例えば、マックネイル(McNeil)ら、タリオフ(Tariov)ら、クーパー(Cooper)らは、金や白金電極の表面を酵素であるN−アセチルシステインで修飾し、その上にヘムといわれる鉄錯体を酸化還元中心とした金属蛋白質であるチトクロームcなどの蛋白質をS−Au結合させて固定化させた酵素電極(チトクロームc固定化電極)を作製し、これによりスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を電気化学的に検出することができると報告している(下記文献1から3参照)。
文献1
C.J.McNeil et al.Free Radical Res.Commun.,7,89(1989)
文献2
M.J.Tariov et al.J.Am.Chem.Soc.113,1847(1991)
文献3
J.M.Cooper,K.R.Greenough and C.J.McNeil,J.Electroan al.Chem.,347,267(1993)
この検出方法の測定原理は以下のとおりである。すなわち、チトクロームc(3価)(cyt.c(Fe3+))は、スーパーオキシドアニオンラジカルと式(5)のように反応して、チトクロームc(2価)(cyt.c(Fe2 +))に還元される。次に、式(6)のように、O2 −により還元されたチトクロームc(2価)を電気化学的に再酸化し、その際の酸化電流を測定することにより、間接的にスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を定量的に検出するものである。
cyt.c(Fe3+)+O2 −→ cyt.c(Fe2+)+ O2 ……(5)
cyt.c(Fe2+)→ cyt.c(Fe3+)+ e− ……(6)
しかしながら、チトクロームcは、生体細胞内のミトコンドリアの膜上に存在する電子伝達蛋白質であるため、上記測定に十分な量のチトクロームcを固定化させた電極を作製するには、105〜106個という多量の細胞が必要とされ、また、使用する酵素が数日間で失活してしまうという問題もあった。従って、多量の酸素を必要とせず、かつ使用する酵素の失活の問題もなくスーパーオキシドアニオンラジカル等の活性酸素種等を検出することができる電極の開発が望まれていた。
そこで、本出願人は、特願2000−387899号において、導電性部材の表面に金属ポルフィリン錯体の重合膜を形成してなる活性酸素種用電極、この活性酸素種用電極、対極および参照電極を含む活性酸素種濃度測定用センサーおよび金属ポルフィリン重合膜中の金属と活性酸素種の間で生じる電流を前記センサーで測定する試料中の活性酸素種の検出方法を提案した。
これは、ポルフィリン化合物の中心に金属原子を導入した金属ポルフイリン錯体の重合膜を導電性部材の表面上に形成した電極は、多量の酵素を要せず、また、失活の問題もなく、活性酸素種の存在や濃度を検出できることに基づくものである。
前記目的を達成するために本発明の活性酸素種測定装置は、活性酸素種等の存在を電流として検出可能な電極を備えている活性酸素種センサーと、この活性酸素種センサーに測定電圧を付与する電源手段と、前記活性酸素種センサーが検出した前記電流から前記活性酸素種等の濃度を計測する活性酸素種濃度計測手段とを有することを特徴とする。このように形成することにより電源手段から適正な測定電圧を活性酸素種センサーに付与すると、活性酸素種センサーの電極が活性酸素種等の存在を電流として検出し、活性酸素種濃度計測手段が検出された電流から活性酸素種等の濃度を計測することができる。
また、前記活性酸素種濃度計測手段としては、計測した活性酸素種等の濃度を外部に出力する外部出力手段を備えており、この外部出力手段の出力を受けて活性酸素種等の濃度を監視する遠隔監視手段を有するように形成するとよい。これにより遠隔監視手段を用いて、遠隔地において生体の健康状態を監視することができる。
また、前記遠隔監視手段は、前記活性酸素種測定装置との間でデータを送受信する通信手段と、前記外部出力手段から受けた活性酸素種等の濃度に対してデータ処理を施す演算手段と、前記活性酸素種等の濃度および前記演算手段によって得られたデータ処理結果を表示する表示手段を有しており、前記活性酸素種測定装置においては、前記外部出力手段が前記遠隔監視手段との間でデータを送受信する通信手段によって形成されており、活性酸素種等の濃度および前記遠隔監視手段から受信したデータを表示する表示手段が形成されていることを特徴とする。このように形成することにより、遠隔監視手段側において、演算手段が活性酸素種等の濃度に対してデータ処理を施して被測定対象となった人等の生体の健康状態や生体外の環境状態を求め、表示手段により活性酸素種等の濃度や生体の健康状態や生体外の環境状態を表示することにより生体の健康状態等を遠隔地から監視することができる。更に、遠隔地において求めた生体の健康状態等を遠隔監視手段側と活性酸素種等測定装置側の通信手段を介して活性酸素種等測定装置側に戻して、表示手段によって表示させることにより知らせることができる。また、遠隔監視手段側を基地局とすることにより、複数の活性酸素種等測定装置側に対して同時アクセスしたり、各種データの一元管理行ったり、活性酸素種等測定装置側においては演算不可能なデータ処理を行って、得られた必要な演算処理データを活性酸素種等測定装置側に送ることができる。
また、前記活性酸素種測定装置と遠隔監視手段との間のデータの授受は無線若しくは有線の伝搬系を介して行われることを特徴とする。このように形成することにより、無線の伝搬系を用いると遠隔監視手段側と活性酸素種等測定装置側の距離の大小に関係なく活性酸素種等の濃度を遠隔的に監視制御することができ、特に活性酸素種等測定装置側が移動する場合においても、常に正常な動作を継続することができる。無線の伝搬系としては、電波、可視光線、赤外線、紫外線、超音波等やインターネット、衛生通信等の各種通信方法を用いた公知の方法を利用することができる。また、有線の伝搬系を用いると、確実なデータの送受信が可能であり、更に、他の電子機器等に対する電波障害を与えることがなく、例えば、病院等において有効に利用することができる。
また、前記活性酸素種測定装置の通信手段および表示手段は携帯電話機によって形成されており、前記遠隔監視手段とインターネットを介してデータの授受を行うように形成されていることを特徴とする。これにより極めて携帯性に優れている携帯電話機を用い、更にインターネットも通してデータ交換を行って、完成酸素種等の測定を行うことができ、測定操作が容易となり、携帯電話が通じる地域であればいつでも測定可能であり、緊急性にも確実に対応して活性酸素種等を測定して、生体の健康監視を行うことができる。
また、活性酸素種センサーの電極は、生体内の活性酸素種等の存在を電流として検出可能な形状に形成するとよい。これにより、例えば人体や動物等に電極を装着することにより、生体内の活性酸素種等を測定することができ、更に生体内の活性酸素種等を常時測定することができる。
また、電源手段は、活性酸素種センサーに付与する測定電圧を可変制御自在に形成するとよい。これにより測定すべき活性酸素種等に対応する適正な測定電圧を活性酸素種センサーに付与して、測定対象の活性酸素種等を精度よく測定することができる。
また、活性酸素種濃度計測手段は、活性酸素種センサーが検出した電流に基づいて計測した活性酸素種等の濃度を表示する表示手段と外部に出力する外部出力手段との少なくとも一方を備えるように形成するとよい。これにより、表示手段により計測した活性酸素種等の濃度を明確に表示することができ、外部出力手段によって計測した活性酸素種等の濃度を遠隔地に送信することができ、活性酸素種等の濃度を遠隔監視することができる。
更に、より具体的には、活性酸素種センサーの電極は、活性酸素種等の存在を電流として検出可能な素材を電極表面に備えているように形成するとよい。これにより電極表面の前記素材を生体内または生体外の活性酸素種等が存在する領域に置くことにより、生体内または生体外における活性酸素種等の濃度を確実に計測することができる。
また、活性酸素種等の存在を電流として検出可能な素材は、金属ポルフィリン錯体の重合膜、レドックス性の高分子またはその誘導体、金属複合体および錯体系化合物の中の少なくとも1種によって形成するとよい。このように形成されている素材によれば、活性酸素種等の濃度を精度よく確実に測定することができる。
また、金属ポルフィリン錯体が下記式(I)または式(II)によって形成されたものとするとよい。
但し、式(I)中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チオフリル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示している。
但し、式(II)中、MおよびRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは.イミダゾールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ヒスチジンおよびその誘導体、トリメチルアミンおよびその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよびその誘導体、システインおよびその誘導体、メチオニンおよびその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およびその誘導体、酢酸およびその誘導体、フェノールおよびその誘導体、脂肪族アルコールおよびその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかのの軸配位子または配位子のないものを示す。
これにより電極の表面に金属ポルフィリン錯体を確実に形成することができ、感度の優れた電極を得ることができる。
また、金属ポルフィリン錯体を形成するポルフィリン化合物としては、5,10,15,20−テトラキス(2−チオフリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チオフリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15−トリス(2−チオフリル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チオフリル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ピス(2−チオフリル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チオフリル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チオフリル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チオフリル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チオフリル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンおよび[5−モノ(3−チオフリル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンなる群から選ばれるものによって形成するとよい。これにより電極の表面に金属ポルフィリン錯体を確実に形成することができ、感度の優れた電極を得ることができる。
このように本発明の活性酸素種等測定装置は構成され作用するものであるから、生体内若しくは生体外のスーパーオキシドアニオンラジカル(O2 −・)等の活性酸素種等の濃度を確実に測定することができ、装置全体も小型に形成することができ、生体に常時装着可能であり、また測定したデータを遠隔地に送信することができ、更に遠隔地において求めた生体の健康状態等を活性酸素種等の測定側に戻して知らせることができ、活性酸素種等を測定して監視することにより生体の健康状態を監視することができる等の優れた効果を発揮することができる。
図2(a)は本発明の活性酸素種等測定装置に用いる活性酸素種センサーの1実施形態を示す側面図、同図(b)は同図(a)の左側面図、
図3(a)は本発明の活性酸素種等測定装置に用いる活性酸素種センサーの他の実施形態を示す側面図、同図(b)は同図(a)の左側面図、
図4は本発明の活性酸素種等測定装置に用いる活性酸素種センサーの更に他の実施形態を示す側面図、
図5は本発明の活性酸素種等測定装置に用いる活性酸素種センサーの更に他の実施形態を示す側面図、
図6(a)は本発明の活性酸素種等測定装置に用いる活性酸素種センサーの更に他の実施形態を示すカバーを除いた状態の平面図、(同図b)は同図(a)の縦断面図、同図(c)はカバーを除いた状態の分解斜視図、
図7は本発明の活性酸素種等測定装置の他の実施の形態を示す回路図である。
図1は、本発明の活性酸素種等測定装置の1実施形態を示す。
本実施形態の活性酸素種等測定装置は、活性酸素種等の存在を電流として検出可能な電極を備えている活性酸素種センサー1と、この活性酸素種センサー1に測定電圧を付与する電源手段2と、活性酸素種センサー1が検出した電流から活性酸素種等の濃度を計測する活性酸素種濃度計測手段3とを有している。
本実施形態における活性酸素種センサー1は2電極式に形成されており、作用極4および対極5とシールド6とによって形成されている。なお、図示しない参照極を設けて3電極式に構成してもよい。
前記電源手段2は、ぼたん電池やポテンショスタット等の直流電源7にスイッチ8、分圧抵抗R1、可変抵抗VR1、分圧抵抗R2を直列接続し、可変抵抗VR1および分圧抵抗R2の両端から測定電圧を可変出力するように形成されている。測定電圧は電圧計9によって計測されるようになっている。電源手段2による活性酸素種センサー1に付与する測定電圧は、可変抵抗VR1の抵抗値を変更することにより、測定対象となる活性酸素種等に応じて可変制御される。例えば、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2 −・)は0.5V、酸素分子(O2)は−0.8V、過酸化水素(H2O2)は−1.0V、一酸化窒素ラジカルは0.6V等とするとよい。
電圧手段2の測定電圧は装置抵抗R3を介して活性酸素種センサー1の対極5と作用極4とに付与されるように接続されている。
更に、活性酸素種センサー1の対極5と作用極4との間に流れる活性酸素種等の濃度に対応する微弱電流を増幅して測定する活性酸素種濃度測定手段3が接続されている。この活性酸素種濃度計測手段3は、活性酸素種センサー1が検出した電流に基づいて計測した活性酸素種等の濃度を表示する表示手段10と、送信等によって外部に出力する外部出力手段11とを有している。表示手段10および外部出力手段11は少なくとも一方を備えていればよい。外部出力手段11を設けた場合には、受信手段13を備えている遠隔監視手段12を設けて、活性酸素種濃度測定手段3から送られてくる濃度検出結果を受信して、活性酸素種等の濃度を遠隔監視するようするとよい。具体的には、遠隔監視手段12は、図1に示すように、受信手段13を備えていて、活性酸素種濃度測定手段3の外部出力手段11から送られてくる濃度検出結果を受信して、図示していない演算手段によって活性酸素種測等の濃度に基づいて演算を行って測定対象となった生体や生体外の健康状態や環境状態を求めて、同じく図示していない表示手段によって活性酸素種等の濃度並びに被測定対象となった生体の健康状態や生体外の環境状態を表示して、活性酸素種等の濃度を遠隔監視するように形成するとよい。
更に、活性酸素種センサー1の電極となる作用極4を説明する。
この作用極4としては、生体内の活性酸素種等の存在を電流として検出可能な形状、例えば生体内に外部から差し込むことのできる細いニードル状に形成したり、血管内に挿入できる微小のカテーテル状に形成したり、皮膚表面に接合できる形状例えばピアスの軸部等に形成したりするとよい。これにより、例えば人体に作用極4を装着して人体内の活性酸素種等を測定することができたり、生体内の活性酸素種等を常時測定することができる。この作用極4および対極5の具体的構成については後述する。
また、作用極4は、活性酸素種等の存在を電流として検出可能な素材を作用極表面に備えているように形成するとよい。これにより作用極表面の前記素材を生体の活性酸素種等の存在する領域に置くことにより生体内の活性酸素種等の濃度を確実に計測することができる。
また、活性酸素種等の存在を電流として検出可能な作用極4の素材としては、金属ポルフィリン錯体の重合膜、レドックス性の高分子またはその誘導体、金属複合体および錯体系化合物の中の少なくとも1種によって形成するとよい。このように形成されている素材によれば、活性酸素種等の濃度を精度よく確実に測定することができる。
次に、作用極4自身の素材と表面膜素材として好適な金属ポルフィリン錯体の重合膜を形成することを説明する。
作用極4を構成する導電性部材としては、一般に電極用として使用される部材であれば特に制限なく使用でき、例えばグラッシーカーボン(Glassy Carbon:GC)、グラファイト、パイロリティックグラファイト(PG)、ハイリーオリエンティッドパイロリティックグラファイト(HOPG)、活性炭等のカーボン類、又は白金、金、銀等の貴金属、又はIn2O3/SnO2(ITO)等を使用することができるが、特に経済性、加工性、軽量性などを考慮して、グラッシーカーボンを用いることが好ましい。また、導電性部材の形状は、電極として使用できる形状であれば特には制限はなく、円柱状、角柱状、ニードル状、繊維(ファイバー)状等の各種形状とすることができるが、例えば、生体内での活性酸素種等の濃度を測定するためには、前述したように、ニードル状、カテーテル状、ピアス軸状の形状とすることが好ましい。
作用極4の導電性部材の表面に形成される金属ポルフィリン錯体の重合膜の形成に使用される金属ポルフィリン錯体の例としては、下記の式(I)または式(II)で表されるものが挙げられる。
但し、式(I)中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チオフリル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示す。
但し、式(II)中、MおよぴRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは、イミダゾールおよぴその誘導体、ピリジンおよぴその誘導体、アニリンおよぴその誘導体、ヒスチジンおよぴその誘導体、トリメチルアミンおよぴその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよぴその誘導体、システインおよぴその誘導体、メチオニンおよぴその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およぴその誘導体、酢酸およぴその誘導体、フェノールおよぴその誘導体、脂肪族アルコールおよぴその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかのの軸配位子または配位子のないものを示す。
上記式(I)または式(II)で表される金属ポルフィリン錯体は、ポルフィリン化合物に金属原子を配位させた錯体化合物である。また、このポルフィリン化合物は、4つのピロール環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した環状化合物であり、4つの窒素原子が中心に向かい合って形成されている。この中心部に金属原子を挟み込むことで、錯体化合物(金属ポルフィリン錯体)を形成することができる。該錯体化合物を形成するには、通常使用される金属錯体の形成方法、例えばメタレーション(Metalation)等の方法を用いて、金属原子をポルフィリンの中心に導入すればよい。本発明において、ポルフィリン化合物の中心に導入できる金属としては、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウム等の各種金属を用いることができる。
また、この金属原子は測定対象の活性酸素種等の種類によって使い分けることもできる。例えば、スーパーオキシドアニオンラジカルを測定対象とするする場合は、鉄、マンガン、コバルト等を、分子状酸素を測定対象とする場合は、鉄、コバルト、マンガン、クロム、イリジウム等を、過酸化水素を測定対象とする場合は鉄、マンガン等を、さらに、・OH、NO、ONOO−等を測定対象とする場合は、鉄、マンガン等をそれぞれ用いることが好ましい。
本発明で使用されるポルフィリン化合物は、無置換体であるポルフィンに対して、IUPAC命名法による位置番号の5、10、15、20の4位置のうち少なくとも1位置を、チオフリル基、ピロリル基、フリル基、メルカブトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基等のいずれかの基で置換したものであり、さらに他の位置を、前記の置換基またはアルキル基、アリル基若しくは水素となったものを使用するのが好ましい。その具体例としては、5,10,15,20−テトラキス(2−チオフリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チオフリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカブトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15トリス(2−チオフリル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チオフリル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(2−チオフリル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チオフリル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チオフリル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チオフリル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チオフリル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(3−チオフリル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリン等が例示される。
なお、式(II)で示された化合物のLで表される配位子のうち、イミダゾールの誘導体の例としては、メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、プロピルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、ペンズイミダゾール等が、ピリジンの誘導体の例としては、メチルピリジン、メチルピリジルアセテート、ニコチンアミド、ピリダジン、ピリミジン、ビラジン、トリアジン等が、アニリンの誘導体の例としては、アミノフェノール、ジアミノベンゼン等が、ヒスチジンの誘導体の例としては、ヒスチジンメチルエステル、ヒスタミン、ヒップリル−ヒスチジル−ロイシン等が、トリメチルアミンの誘導体の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等が、チオフェノールの誘導体の例としては、チオクレゾール、メルカブトフェノール、メルカプト安息香酸、アミノチオフェノール、ベンゼンジチオール、メチルベンゼンジチオール等が、システインの誘導体の例としては、システインメチルエステル、システインエチルエステル等が、メチオニンの誘導体の例としては、メチオニンメチルエステル、メチオニンエチルエステル等が、安息香酸の誘導体の例としては、サリチル酸、フタル酸、イソフクル酸、テレフクル酸等が、酢酸の誘導体の例としては、トリフルオロ酢酸、メルカプト酢酸、プロピオン酸、酪酸等が、フェノールの誘導体の例としては、クレゾール、ジヒドロキシベンゼン等が、脂肪族アルコールの誘導体の例としては、エチルアルコール、プロピルアルコール等が挙げられる。
本発明において、作用極4の導電性部材の表面に上記の金属ポルフィリン錯体の重合膜を形成させるには、電解重合法、溶液重合法、不均一重合法等の各種重合法を用いることができる。このうち電解重合法を用いて重合膜を形成するのが好ましく、具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等の有機溶媒中、テトラプチルアンモニウムパークロレート(TBAP:Bu4NCIO4)、テトラプロピルアンモニウムパークロレート(TPAP:Pr4NCIO4)、テトラエチルアンモニウムパークロレート(TEAP:Et4NCIO4)等適当な支持電解質を加え、導電性部材を作用極、白金(Pt)電極等の貴金属電極、チタン電極、カーボン類電極、ステンレス綱電極等の不溶性電極を対極、飽和カロメル電極(SCE)、銀−塩化銀電極等を参照極として、2電極(作用極−対極)式の電解、あるいは3電極(作用極−対極−参照極)式の定電位、定電流、可逆電位掃引、パルス式の電解等を行い、重合させることにより導電性部材の表面に金属ポルフィリン重合膜を形成させることができる。
次に、作用極4および対極5等の電極を備えている活性酸素種センサー1の具体的構成を図2から図5について説明する。
図2(a)(b)は生体内測定、複合化測定、臨床での診断・治療などを考慮して作用極4および対極5を一体化してニードル状の電極に形成した活性酸素種センサー1を示す。図2の活性酸素種センサー1においては、最外側を細いパイプからなる対極5とし、その内部に電気絶縁性材料14を介して作用極4を形成する導電性部材を同心的に設けている。そして、作用極4、電気絶縁性材料14および対極5の先端を鋭利な針先となるように斜めに切断仕上げしてあり、作用極4がニードル状の対極5の先端部から外部に露出している部分に前記の金属ポルフィリン重合膜が形成されている。そして、作用極4および対極5はそれぞれリード線4a、5aをもって電気的に接続されるように形成されている。
この対極5の構成材料としては、白金、金、銀等の貴金属、チタン、ステンレス綱、鉄−クロム合金等の耐食性合金、カーボン類等の材料を使用することができるが、対極は生体内に入ることが多いため、安全性の高い材料(例えば、白金、金、銀等の貴金属、チタン、ステンレス綱、カーボン類等)で構成することが好ましい。また、ニードル状の活性酸素種センサー1を生体内に挿入させる場合には、対極5の外形をできる限り細く形成することが好ましく、例えば、0.2〜1.5mm程度に形成するとよい。また、図示しない参照電極を用いる場合には、その参照電極としては、通常、銀/塩化銀電極、水銀/塩化第二水銀等の各種の参照電極を用いることができ、また、固体の基準電極を用いることもできる。
なお、金属ポルフィリン錯体の重合膜の厚さは、電極および金属ポルフィリン錯体の種類および測定する活性酸素の種類等により適宜決定されるが、電極活性、修飾安定性等という点で、1μm以下であることが好ましい。
図3(a)(b)は図2と同様にニードル状に形成した他の活性酸素種センサー1aを示している。
この図3の実施形態の活性酸素種センサー1aは、不必要な生体内電流、電流ノイズ等の除去、感度、シグナル/ノイズ比(S/N比)等の向上を目指して図2の活性酸素種センサー1を改良したものである。図3に示す電極は、導電性部材からなる作用極4を電気絶縁性材料14中に入れ(2層構造)、それらを対極5中に入れ(3層構造)、更に、それらを電気絶縁性材料14中に入れ(4層構造)、最終的にこの細管の外側をアースとなる金属等の材料で被覆(5層構造)してアース部分15としたものである。そして、作用極4、電気絶縁性材料14、対極5、電気絶縁性材料14およびアース部分15の先端を鋭利な針先となるように斜めに切断仕上げしてあり、作用極4の導電性部材の端面上に金属ポルフィリン重合膜を形成したものである。
なお、金属ポルフィリン錯体の重合膜の厚さは、電極および金属ポルフィリン錯体の種類および測定する活性酸素の種類等により適宜決定されるが、電極活性、修飾安定性等という点で1μm以下であることが好ましい。また、図3の構造を有する活性酸素種センサー1aは複合化測定等にも用いるので、10数層程度までの多層構造が可能である。なお、アースの構成材料としては、白金、金、銀等の真金属、チタン、ステンレス鋼、鉄クロム合金等の耐食性合金、カーボン類等の材料を使用することができるが、アースは生体内に入ることが多いため、安全性の高い材料(例えば、白金、金、銀等の真金属、チタン、ステンレス鋼、カーボン類等)等で構成することが好ましい。
図2および図3に示す各活性酸素種センサー1、1aはそれぞれ電極部分の鋭利な先端を生体内に挿し込むことにより活性酸素種等の測定を行うことができる。
図4はカテーテル状に形成した他の活性酸素種センサー1bを示している。
この図4の実施形態の活性酸素種センサー1bは、図2と同様に作用極4、電気絶縁性材料14および対極5からなる細い電極部分を形成するとともに、電極部分の先端を軸方向と直角に切断仕上げし、更に作用極4および対極5の接続したリード線4a、5aと一緒に電極部分を外形が1mm程度の樹脂製パイプ16の先端に固着して形成されている。樹脂製パイプ16は生体内に挿入しても安全な素材によって形成されている。
図4に示す各活性酸素種センサー1bは、細い電極部分を生体内具体的には血管内、リンパ管内、消化器官内、臓器内等に挿入することにより活性酸素種等の測定を行うことができる。また、先端部の電極部分の進行方向を自由に遠隔操作できるように工夫するとよい。例えば、電極部分を樹脂製パイプ16の軸方向に対して若干傾斜させて取りつけておいて、樹脂製パイプ16を軸回りに回転させることにより電極部分の進行方向を選定できるようにしたり、電極部分の近傍にに小型のバイメタルを設け、通電制御することによってバイメタルを任意の方向に屈曲させて進行方向を選定できるようにしたり、電極部分に小型磁石を設けておいて、生体外より磁場を付与して小型磁石の進行方向を選定できるようにするとよい。
図5はピアス軸状に形成した他の活性酸素種センサー1cを示している。
この図5の実施形態の活性酸素種センサー1cは、図2と同様に作用極4、電気絶縁性材料14および対極5からなる細い電極部分を形成するとともに、電極部分の軸方向の中間部分に対極5の内側の作用極4と電気絶縁性材料14を外周面にそれぞれ露出させ、更にピアスの装飾部17内に設けた小型の電源手段2および活性酸素種濃度測定手段3に作用極4および対極5を接続して形成されている。
図5に示す各活性酸素種センサー1cは、細い電極部分を耳18のピアス孔19に挿通させることにより活性酸素種等の測定を行うことができる。
図6はチップ状に形成した更に他の活性酸素種センサー1dを示している。
前記各実施形態1、1a、1b、1cが生体内に直接刺したり、挿入したり、接触させるものであるが、この図6の実施形態の活性酸素種センサー1dは、生体から取り出した微小の血液等の被測定液体の活性酸素濃度を測定するものである。図6は説明の便を図るために誇張して図示しているが、チップの大きさは例えば平面形状が5mm×20〜30mmで、厚さが0.5〜1.0mm程度の大きさとされている。この活性酸素種センサー1dはガラス、樹脂、セラミックス等の絶縁性基板30の上に中心部に作用極4、その両側に対極5およびアース部分15を形成している。作用極4、対極5およびアース部分15の素材としては、前記各実施形態と同様に金、白金、銅、ニッケル、ニッケル−リンメッキ、ステンレス、カーボン、その他の導電性金属等を用いることができる。更にこれらの素材を、絶縁基板30上にパターン形成する場合に、湿式表面処理としての無電解処理、乾式表面処理としての真空蒸着、イオンプレーティング、インクジェットによるコーティング・焼き付け等から選択して行うとよい。更に、中央の作用極4の端部の円形の計測部4bの表面には、前記実施形態と同様にして、カーボン層4cを薄く形成し、その上に金属ポルフィリン錯体の重合膜4dを形成してある。カーボン層4cはその上の金属ポルフィリン錯体の重合膜4dを設ける場合の計測部4bの材質等との関係からの必要性に応じて設ければよく、省くこともできる。カーボン層4cは作用極4、対極5およびアース部分15と同様の方法によって形成するとよい。金属ポルフィリン錯体の重合膜4dは前記各実施例と同様に電解重合法、溶液重合法、不均一重合法等の各種重合法を用いて形成することができる。また、作用極4、対極5およびアース部分15はそれぞれリード線4a、5a、15aをもって電気的に接続されるように形成されている。また、各リード線4a、5a、15aを接続する部分に対して差し込み接続可能な電極形式に形成して、外部との接続をワンタッチ式に簡単に行うことができるようにしてもよい。更に、絶縁基板30の上には作用極4、対極5およびアース部分15を上から覆う絶縁性のカバー31が固着されて、作用極4の計測部4bのある先端部分に毛管現象によって血液等を内部に吸引する機能を有する計測空間32を形成している。絶縁基板30には計測空間32を外部に連通するための小孔33が穿設されている。なお、絶縁基板30およびカバー31の形状は必要に応じて変形するとよく、血液等の被測定液体の計測空間32への導入が確実かつ容易な形状とするとよい。更に、絶縁基板30およびカバー31の表面の状態が、例えば血液等の被測定液体との親和性の高い状態とすることによって、被測定液体の計測空間32内への侵入を容易とさせるとよい。また、カバー31は必要に応じて省いてもよい。
図6に示す各活性酸素種センサー1dは、例えば耳たぶから採取した微量の血液を計測空間32の先端開口部より毛管現象によって内部に吸引させることにより活性酸素種等の測定を行うことができる。
次に、本実施形態の作用を説明する。
図2および図3に示す活性酸素種センサー1、1aを用いる場合には、尖っている電極の先端部を生体内に差し込み、作用極4および対極5を生体内に入れる。
図4に示す活性酸素種センサー1bを用いる場合には、樹脂製パイプ16の先端に装着されている電極部分を、直接若しくは光ファイバスコープ等を利用して、血管内、リンパ管内、消化器官内、臓器内に導いて、生体内に作用極4および対極5を生体内に入れる。
図5に示す活性酸素種センサー1cを用いる場合には、ピアス軸部を耳18のピアス孔19に挿通させて軸部分に装着されている電極部分をピアス孔19の生体部分に作用極4および対極5を接触させる。
図6に示す各活性酸素種センサー1dを用いる場合には、例えば耳たぶから採取した微量の血液を計測空間32の先端開口部より毛管現象によって内部に吸引させて作用極4および対極5を接触させる。
このようにして活性酸素種センサー1、1a、1b、1c、1dをスーパーオキシドアニオンラジカルが存在する測定系で使用すると、作用極4の表面における重合膜を形成する金属ポルフィリン錯体中の金属がスーパーオキシドアニオンラジカルにより還元される。例えば、当該金属が鉄であれば、スーパーオキシドアニオンラジカルにより、Fe3+からFe2+に還元される(式(7))。
そして、可変抵抗VR1を調節して電源手段2から作用極4および対極5に対してスーパーオキシドアニオンラジカルにより還元されたFe2+を酸化されうる程度の電圧を付与して、還元されたFe2+を電気化学的に再酸化し(式(8))、この時に流れる電流(酸化電流)を測定する。
Por(Fe3+)+O2 − ・ →Por(Fe2+)+ O2 ……(7)
Por(Fe2+) → Por(Fe3+)+ e− ……(8)
(式(7)および式(8)中、「por」はポルフィリンを意味する)
このようにして作用極4および対極5によって検出されたその電流値は、スーパーオキシドアニオンラジカル濃度と対応するため、その電流値に基づいて生体内に存在しているスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度として定量的に検出することができる。すなわち、上記した式(5)および式(6)と同様の原理により、スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度測定が可能とされるものである。本実施形態によれば、活性酸素種濃度測定手段3によって作用極4および対極5によって検出された電流値をスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度として定量的に検出することとなる。
更に、本実施形態においては、活性酸素種濃度計測手段3の表示手段10が各活性酸素種センサー1、1a、1b、1c、1dが検出した電流に基づいて計測した活性酸素種等の濃度を表示するとともに、外部出力手段11が当該測定濃度を送信等によって遠隔監視手段12側に出力する。このようにして活性酸素種濃度測定手段3の外部出力手段11から送られてくる濃度検出結果は遠隔監視手段12の受信手段13によって受信され、図示していない演算手段によって活性酸素種測等の濃度に基づいて演算を行って測定対象となった生体の健康状態や生体外の環境状態を求め、同じく図示していない表示手段によって活性酸素種等の濃度並びに生体の健康状態や生体外の環境状態を表示して、活性酸素種等の濃度の遠隔監視を行うことができる。
また、これと同様な原理により、過酸化水素、・OH等の活性酸素種やNOやONOO−等の他のラジカル活性種等についても同様に定量的に検出することができる。
このように本実施形態の各活性酸素種センサー1、1a、1b、1c、1dを用いると、生体外(in vitro)はもちろん、生体内(in vivo)の環境であっても、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、・OH等の活性酸素種や、他のラジカル活性種(NO、ONOO−等)の検出や、これら活性酸素種等を定量測定できるので、各種分野で広く利用することができる。
すなわち、生体内(in vivo)においては、各種疾病は生体内の活性酵素種や他のラジカル活性種により特定することができるので、例えば血液中の活性酸素種の濃度を測定することにより、ガン等の疾患の特定を行うことが可能とされる。
一方、生体外(in vitro)においても、食品内の活性酸素種等やその濃度を測定することにより、該食品の腐敗状態を観察することができる。また、水道水や下水等の水中のの活性酸素種等やその濃度を測定することにより、水質汚染の状態を観察することができる。
さらに、スーパーオキシドアニオンラジカルおよび該アニオンを消去するはたらきを持つ酵素であるスーバーオキシドジスムターゼ(superoxide Dismutase:以下、「SOD」とする)の濃度も、SODを含む試料を加えたときのスーパーオキシドアニオンラジカルの消失程度を測定することにより、測定することが可能である。
図7は本発明を遠隔監視を可能とするように更に具体的にした他の実施形態を示すものである。
本実施形態においては、活性酸素種測定装置側の活性酸素種濃度計測手段3aと遠隔監視手段12a側の構成を更に具体的に形成したものであり、活性酸素種センサー1および電源手段2は図1の実施形態と同様に形成してある。
本実施形態においては、活性酸素種測定装置側と遠隔監視手段12a側との間でインターネットを利用してデータを双方向で授受できるようにするとともに、より決めの細かい内容で活性酸素種等に基づく遠隔監視制御を行うようにしたものである。
更に説明すると、活性酸素種測定装置側の活性酸素種濃度計測手段3aにおいては、携帯電話機21を設けて遠隔監視手段12a側とデータの送受信を行う通信手段22とデータの表示を行う表示手段23を兼ねるようにしている。また、活性酸素種濃度計測手段3aにおいては、増幅器やCPUやメモリー(共に図示せず)等を備えている演算制御手段24を設けて、活性酸素種センサー1から送られて来る検出電圧を受けて活性酸素種の濃度を求めたり、そのデータを携帯電話機23によって送信可能なデータに変換するようにしている。演算制御手段24からのデータはインターフェイス25を介して携帯電話機21に送られる。携帯電話機21においては、本発明に基づいて形成刷ることのできる遠隔制御式活性酸素種等測定システムの全体制御を行う基地局(ホスト側)となる遠隔監視手段12aから必要なソフト(プログラム)の支給を受けてインストールされており、通信手段22および表示手段23を動作させるようになっている。通信手段22は演算制御手段24から受けた活性酸素種の濃度データをメールに添付してインターネットINを介して遠隔監視手段12aに送信したり、逆に遠隔監視手段12aからインターネットINを介して送られてくるデータを受信するように形成されている。表示手段23は演算制御手段24から受けた活性酸素種の濃度データを表示したり、遠隔監視手段12aから受けた後述する生体の健康状態や生体外の環境状態に関するデータを表示するように形成されている。
遠隔制御式活性酸素種等測定システムの全体制御を行う基地局(ホスト側)となる遠隔監視手段12aにおいては、活性酸素種測定装置側の通信手段22との間でデータをインターネットINを介して送受信する通信手段26と、活性酸素種測定装置側から受けた活性酸素種等の濃度データに対してデータ処理を施したり各部を関連動作させるCPUやメモリー(共に図示せず)等を備えている演算手段27と、活性酸素種等の濃度および演算手段27によって得られたデータ処理結果を表示する表示手段28を設けている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
活性酸素種センサー1および電源手段2を用いて、図1に示す実施形態と同様にして測定された被測定対象となる生体または生体外部分の電流値が活性酸素種濃度計測手段3aに入力される。演算制御手段24は入力された電流値に対して演算を行い活性酸素種濃度を求め、更に必要なデータ処理を施してインターフェイス25を通して携帯電話機21に送る。携帯電話機21は既にインストールしてあるソフトの指示に従って、表示手段23に活性酸素種等の濃度を数値またはグラフ等による画像として表示し、通信手段22により活性酸素種等の濃度データをインターネットINを介してメールによって遠隔監視手段12aに向けて送信する。遠隔監視手段12aにおいては、通信手段26によって受信した活性酸素種等の濃度データに対して演算手段27がデータ処理を施して被測定対象となった人等の生体の健康状態や生体外の環境状態を求める。そして、表示手段28により活性酸素種等の濃度や生体の健康状態や生体外の環境状態を表示する。これにより生体の健康状態等を遠隔地から監視することができる。更に、このようにして遠隔監視手段12a側において求めた生体の健康状態等のデータを、遠隔監視手段12a側と活性酸素種等測定装置側の両通信手段26、22およびインターネットINを介して活性酸素種等測定装置側の携帯電話機21に戻して、表示手段23によって表示させる。これにより活性酸素種の濃度測定現場側に生体の健康状態等のデータを知らせるサービスを提供することができ、また、測定現場側においてはその後の健康管理の指針を得ることができる。また、遠隔監視手段12a側を基地局とすることにより、複数の活性酸素種等測定装置側に対して同時アクセスしたり、各種データの一元管理を行ったり、必要に応じて基地局にいる医師によって各種のデータに基づいて被測定対象となっている人等の生体の健康状態や疾患状態を診断し、その診断結果を濃度測定現場側に知らせることができる。特に、救急作業中の現場において活性酸素種の濃度に基づく医師の診断が必要な場合に、遠隔地の専門医師によってリアルタイムに診断をすることができ、救命作業の迅速・適正化を図ることができる。更に、活性酸素種等測定装置側においては演算不可能なデータ処理を遠隔監視手段12a側において行って、得られた必要な演算処理データを活性酸素種等測定装置側に送ることができ、活性酸素種等測定装置側の小型化を図ることもできる。また、活性酸素種等測定装置側の活性酸素種濃度計測手段3aの演算制御手段24による計測電流値に基づく活性酸素種等の濃度を求める演算を省いて、活性酸素種センサー1から受けた計測電流値をそのまま遠隔監視手段12a側に送り、遠隔監視手段12aにおいて計測電流値から活性酸素種等の濃度を演算して求めるようにしてもよい。これにより更に活性酸素種等測定装置側の小型化を図ることができる。また、本実施形態においては、活性酸素種等測定装置の通信手段22および表示手段23を携帯電話機21によって形成し、遠隔監視手段12aとインターネットINを介してデータの授受を行うように形成しているので、携帯性に優れている携帯電話機21とインターネットINを用いて、非常に簡単に活性酸素種等の測定、遠隔監視制御等を行うことができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
Claims (10)
- 作用極の表面であって電極の最外部として露出している表面に形成された電極触媒である金属ポルフィリン錯体の重合膜中の金属がスーパーオキシドアニオンラジカルにより還元され、その後前記作用極と前記重合膜が形成されていない対極との間に付与される測定電圧によって還元された前記金属が再酸化することによりスーパーオキシドアニオンラジカルの存在を電流として検出可能な前記作用極と当該作用極の近傍に配置されている前記対極とを備えている電極であって、生体に作用極を装着して生体内のスーパーオキシドアニオンラジカルを測定することができる生体の血管内等に挿入できる微小のカテーテル状に形成されている電極を備えている活性酸素種センサーを有することを特徴とする活性酸素種等測定装置。
- 前記活性酸素種センサーに前記測定電圧を付与あるいは測定電位を設定する電源手段と、前記活性酸素種センサーが検出した前記電流から前記スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を計測する活性酸素種濃度計測手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の活性酸素種等測定装置。
- 前記活性酸素種濃度計測手段は、計測したスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を外部に出力する外部出力手段を備えており、この外部出力手段の出力を受けてスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を監視する遠隔監視手段を有することを特徴とする請求項2に記載の活性酸素種測定装置。
- 前記遠隔監視手段は、前記活性酸素種測定装置との間でデータを送受信する通信手段と、前記外部出力手段から受けたスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度に対してデータ処理を施す演算手段と、前記スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度および前記演算手段によって得られたデータ処理結果を表示する表示手段を有しており、
前記活性酸素種測定装置においては、前記外部出力手段が前記遠隔監視手段との間でデータを送受信する通信手段によって形成されており、スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度および前記遠隔監視手段から受信したデータを表示する表示手段が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の活性酸素種測定装置。 - 前記活性酸素種測定装置と遠隔監視手段との間のデータの授受は無線若しくは有線の伝搬系を介して行われることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の遠隔制御式活性酸素種等測定システム。
- 前記活性酸素種測定装置の通信手段および表示手段は携帯電話機によって形成されており、前記遠隔監視手段とインターネットを介してデータの授受を行うように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の遠隔制御式活性酸素種等測定システム。
- 活性酸素種センサーの電極は、生体内のスーパーオキシドアニオンラジカルの存在を電流として検出可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の活性酸素種測定装置。
- 活性酸素種濃度計測手段は、活性酸素種センサーが検出した電流に基づいて計測したスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を表示する表示手段と外部に出力する外部出力手段との少なくとも一方を有していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の活性酸素種測定装置。
- 金属ポルフィリン錯体が下記式(I)または式(II)
(式I中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チオフリル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示す)
(式II中、MおよびRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは.イミダゾールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ヒスチジンおよびその誘導体、トリメチルアミンおよびその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよびその誘導体、システインおよびその誘導体、メチオニンおよびその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およびその誘導体、酢酸およびその誘導体、フェノールおよびその誘導体、脂肪族アルコールおよびその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかの軸配位子または配位子のないものを示す)
で表される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の活性酸素種等測定装置。 - 金属ポルフィリン錯体を形成するポルフィリン化合物が、5,10,15,20−テトラキス(2−チオフリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チオフリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15−トリス(2−チオフリル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チオフリル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ピス(2−チオフリル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チオフリル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チオフリル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チオフリル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チオフリル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンおよび[5−モノ(3−チオフリル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項9に記載の活性酸素種等測定装置。
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