JP5050843B2 - リニアガイド装置 - Google Patents

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Description

本発明はリニアガイド装置に関する。
リニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに軸方向に相対移動可能に案内レールに取り付けられたスライダと、案内レールの転動体転動溝とスライダの転動体転動溝との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、を備えており、転動体の転動を介してスライダが案内レールに沿って軸方向に移動するようになっている。そして、一般的には、転動体転動路は案内レールを挟んで両側に左右対称に配されている。なお、本発明においては、リニアガイド装置を軸方向端部側から見た場合に、案内レールの中心軸線を対称中心とした両側を左右とする。
転動体転動路内の転動体には、潤滑油,グリース等の潤滑剤が供給され潤滑が行われる。すなわち、スライダの左右方向略中央位置に設けられた給油口から左右に分岐する給油路が左右の転動体転動路に通じており、給油口に注入された潤滑剤が給油路を通って両転動体転動路に供給されるようになっている。このような給油路を有するリニアガイド装置は、水平に設置されている場合には、潤滑剤が左右の転動体転動路にほぼ均等に供給される。
ところが、左右の転動体転動路の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合には、潤滑剤は自重により下方へ向かって流動するので、低い側の転動体転動路には通常よりも多量の潤滑剤が供給され、高い側の転動体転動路には通常よりも少量の潤滑剤しか供給されず、傾斜角度によっては潤滑剤が殆ど供給されないおそれもある。その結果、高い側の転動体転動路においては潤滑剤不足となり、焼付き等の問題が生じるおそれがあった。
そこで、左右の転動体転動路の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合でも、潤滑剤が左右の転動体転動路にほぼ均等に供給されるリニアガイド装置が提案されている。例えば、特許文献1,2に記載のリニアガイド装置は、左右の転動体転動路に供給する潤滑剤の量を制御する弁が給油路に設けられており、傾斜角度に応じて弁を調節すれば、左右の転動体転動路に潤滑剤が均等に供給されるようになっている。
特開平8−114224号公報 特開平5−321933号公報 特開2005−221008号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載のリニアガイド装置に設けられた弁は、傾斜角度に応じて手動で調節するようになっているため、調節に手間を要する、調節を誤るおそれがあるというような問題点があった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、左右両側の転動体転動路の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとっている場合でも、転動体転動路に供給される潤滑剤の量が自動的に調節され、左右の転動体転動路に供給される潤滑剤量の差が緩和されるリニアガイド装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係るリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体転動溝と前記スライダの転動体転動溝との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、前記転動体転動路に潤滑剤を供給する給油路と、を備えるリニアガイド装置において、前記給油路に、重力により動作して前記潤滑剤の供給量を調節する潤滑剤供給量調節部を設けたことを特徴とする。
また、本発明に係るリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を左右両側面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体転動溝と前記スライダの転動体転動溝との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、を備え、前記スライダは、前記転動体転動溝とこれに平行な転動体戻し路とが左右両側にそれぞれ形成されたスライダ本体と、前記転動体転動路と前記転動体戻し路とを連通する湾曲路を左右両側に有して前記スライダ本体の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップと、からなるリニアガイド装置において、前記スライダ本体又は前記エンドキャップに、左右両側の前記転動体転動路に潤滑剤を供給する給油路を形成するとともに、前記給油路に、重力により動作して前記潤滑剤の供給量を調節する潤滑剤供給量調節部を設け、左右両側の前記転動体転動路の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとっている場合には、前記潤滑剤供給量調節部が、低い側の転動体転動路よりも高い側の転動体転動路の方に潤滑剤が供給されやすくするとともに、前記高低差が大きいほど前記潤滑剤の供給されやすさの差も大きくなるようになっていることを特徴とする。
さらに、本発明に係るリニアガイド装置においては、前記潤滑剤供給量調節部は、重力を受けて錘の移動又は回転が生じることにより前記給油路の断面積を変化させ、前記潤滑剤の供給されやすさを調節するようになっていてもよい
本発明のリニアガイド装置は、左右両側の転動体転動路の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとっている場合でも、転動体転動路に供給される潤滑剤の量が自動的に調節され、左右の転動体転動路に供給される潤滑剤量の差が緩和される。
本発明に係るリニアガイド装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係るリニアガイド装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図(ただし、エンドキャップを省略して図示している)である。なお、これ以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。
軸方向に延びる横断面形状が略角形の案内レール1上に、横断面形状が略コ字状のスライダ2が軸方向に相対移動可能に組み付けられている。この案内レール1の上面1bと左右両側面1a,1aとが交差する稜線部には、軸方向に延びる断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成され、また、案内レール1の左右両側面1a,1aの中間位置には、軸方向に延びる断面ほぼ半円形の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成されている。
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、で構成されており、さらに、スライダ2の両端部(各エンドキャップ2Bの端面)には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口をシールするサイドシール5,5が装着されている。
スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の内側面の角部及び上下方向中央部には、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10に対向する断面ほぼ半円形の転動体転動溝11,11,11,11が形成されている。
そして、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10と両袖部6,6の転動体転動溝11,11,11,11とで、断面ほぼ円形の転動体転動路14,14,14,14が形成されていて、これら左右対称の転動体転動路14は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体転動溝10,11の数は片側二列に限らず、例えば片側一列又は三列以上などであってもよい。また、転動体転動溝10,11の断面形状は、前述したように単一の円弧からなる円弧状でもよいが、曲率中心の異なる2つの円弧を組合せてなる略V字状(ゴシックアーク形状溝)でもよい。
さらにまた、スライダ2は、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路14と平行をなして軸方向に貫通する断面円形の貫通孔からなる転動体戻し路13,13,13,13を備えている。
一方、エンドキャップ2Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状がほぼコ字状に形成されている。そして、スライダ本体2Aとの当接面(裏面)には、図3に示すように、斜めに傾斜した半円状の上凹部31と下凹部32とが、左右両袖分部6,6の上下に対応して形成されるとともに、半円状の両凹部31,32の中心部を横断して半円柱状の凹溝33が設けてある。
そして、その半円柱状の凹溝33には、例えば樹脂材料を射出成形して得た半円筒状のリターンガイド35(図4を参照)が嵌合される。なお、図5は、リターンガイド35が装着されたエンドキャップ2Bの斜視図である。このリターンガイド35の外径面の中央部には、転動体3の案内面となる断面円弧状の凹溝36が半円状に形成され、また、リターンガイド35の内径側の凹部37は潤滑剤通路であり、その凹部37から外径側の凹溝36に抜ける貫通孔37aが給油孔として形成されている。
このようなリターンガイド35を半円柱状の凹溝33に組み込むことにより、エンドキャップ2Bの裏面の左右両側に、断面円形の半ドーナツ状の湾曲路30が上下二段に形成される(図6を参照)。このエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに取り付けると、湾曲路30,30によって、転動体転動路14,14と転動体戻し路13,13とが連通される。
これら転動体転動路14,14と転動体戻し路13,13と両端の湾曲路30とで、略環状の転動体循環路が案内レール1を挟んで左右両側に形成され、この転動体循環路内には、例えば鋼球からなる多数の転動体(ボール)3が転動自在に装填されている。なお、各転動体3の間にスペーサーを介装してもよい。
案内レール1に組みつけられたスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動すると、転動体転動路14内に装填されている転動体3は、転動体転動路14内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、転動体3が転動体転動路14の一端に達すると、エンドキャップ2B内に備えられた転動体掬いあげ突部39によって転動体転動路14からすくい上げられ、湾曲路30へ送られる。
湾曲路30に入った転動体3はUターンして転動体戻し路13に導入され、転動体戻し路13を通って反対側の湾曲路30に至る。ここで再びUターンして転動体転動路14に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
なお、エンドキャップ2Bにおいて、転動体3を案内する湾曲路30の内側端部には半円状に突出させた転動体掬いあげ突部39が形成され、その鋭角の先端が案内レール1の転動体転動溝10の溝底に近接するように配されている。
また、エンドキャップ2Bの表側の給油ニップル22から注入されたグリース,潤滑油等の潤滑剤が、エンドキャップ2Bの裏面に形成された溝からなる給油路21を通りリターンガイド35の内径側の凹部37から貫通孔37aを経て、左右両側の湾曲路30内へ送り込まれるようになっている。そして、潤滑剤は転動体3により運ばれるなどして湾曲路30から転動体転動路14に至り、転動体3の潤滑が行われるようになっている。
このようなリニアガイド装置には、左右両側の転動体転動路14,14の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合でも、左右両側の転動体転動路14,14に供給される潤滑剤量の差が緩和されるように、潤滑剤供給量調節部20が備えられている。
すなわち、図7に示すように、エンドキャップ2Bの裏面の左右方向略中央位置には、表側の給油ニップル22から延びた給油口23が開口しており、この給油口23から左右に分岐する給油路21が左右の湾曲路30に通じている。そして、給油路21の途中位置(給油口23と湾曲路30との間の位置)には、潤滑剤供給量調節部20が設けられていて、給油路21を流れる潤滑剤の量が調節されるようになっている。この潤滑剤供給量調節部20の構造及び動作について、図7〜10を参照しながら以下に詳細に説明する。
給油路21の上方には、左右方向に延びる長方形状溝41が設けられており、この長方形状溝41内には長方形状の錘42が装填されている。錘42の両端と長方形状溝41の端部との間にはバネ43,43が介装されており、これらのバネ43,43により錘42の位置が長方形状溝41内の左右方向中央に保持されている。なお、両バネ43,43は、自然長よりも若干縮んだ状態で配され、予圧が加えられた状態となっている。
また、長方形状溝41と給油路21とは2カ所(左右合計すると4カ所)で連通しており、その連通部分と錘42に形成された凹部42aとが同位置に配されていることから、潤滑剤は給油路21から一旦錘42の凹部42a内に入り、再び給油路21に戻って湾曲路30に至るようになっている。そして、錘42が長方形状溝41に沿って左右方向に移動すると、図8の(b)のように、錘42のうち凹部42aが形成されていない部分が前記連通部分の一部と重なるため、前記連通部分が小さくなるようになっている(すなわち、給油路21の断面積が小さくなる)。
リニアガイド装置が水平に設置されている場合には、図8の(a)のように、前記連通部分の大きさ(給油路21の断面積)が最大となっているから、左右いずれの前記連通部分も潤滑剤が通過しやすく、潤滑剤はほぼ均等に左右の湾曲路30に供給される。一方、リニアガイド装置が左右に傾斜姿勢をとって設置されている場合には、すなわち左右の転動体転動路14,14の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合には、図8の(b)のように、錘42が重力を受けて移動するため(図8の(b)では右方に移動)、右側の前記連通部分が狭められて(給油路21の断面積が小さくなって)潤滑剤が通過しにくくなる。そして、傾斜角度が大きいほど錘42の移動距離が大きいため、右側の前記連通部分がより狭められ、潤滑剤がより通過しにくくなる。
錘42が移動しても左側の連通部分の大きさは変化しないので、低い側(図8の(b)では右側)よりも高い側(図8の(b)では左側)の方に潤滑剤が供給されやすい状態となる。潤滑剤供給量調節部20がないと、潤滑剤は重力により低い側に流れやすく左右で潤滑剤の供給量に差が生じるが、潤滑剤供給量調節部20により潤滑剤の供給量の差が緩和される。この潤滑剤供給量調節部20によれば、傾斜角度が大きいほど(左右の高低差が大きいほど)潤滑剤の供給されやすさの差も大きくなるので、どのような傾斜角度でリニアガイド装置を設置しても、潤滑剤の供給量の差が適切に緩和される。よって、高い側の転動体転動路14において潤滑剤不足が生じることがなく、焼付き等の問題が生じるおそれがほとんどないので、リニアガイド装置は長寿命となる。
図9に傾斜角度が45°の場合を示し、図10に傾斜角度が90°の場合を示す。いずれも、左側が低くなっている。図9の場合は、錘42の移動により左側の前記連通部分がやや狭められ、給油路21の断面積がやや小さくなるため、左右での潤滑剤の供給量の差は緩和される。図10の場合は、錘42の移動量が最大で左側の前記連通部分が最も狭められ、給油路21の断面積が最小となる。潤滑剤供給量調節部20がないと、潤滑剤の大部分が左側に流れて右側にはほとんど流れないが、潤滑剤供給量調節部20により左側には流れにくくなっているので、左右での潤滑剤の供給量の差が緩和される。
このように、どのような傾斜角度でリニアガイド装置を設置しても、供給される潤滑剤の量が潤滑剤供給量調節部20により傾斜角度に応じて自動的に調節されるので、供給される潤滑剤の量を調節する手間が必要ないとともに、調節を誤るおそれがない。
なお、錘42の移動が確実に行われるためには、比重の大きな素材で錘42を構成することが好ましい。例えば、鋼,黄銅等の金属があげられる。また、バネ43を用いなくても錘42の移動は起こるが、傾斜角度が変化した際に、例えば傾斜した状態から水平に戻した際に、錘42の位置を適切な位置に移動させるためには、バネ43を用いることが好ましい。
次に、別の構造の潤滑剤供給量調節部50について説明する。なお、上記の潤滑剤供給量調節部20と同様の部分又は相当する部分の説明は省略する。図11に示すように、給油路21の途中位置(給油口23と湾曲路30との間の位置)には回転式弁51,51が設けられている。そして、図12に示すように、回転式弁51の回転によって給油路21の大きさが広げられたり狭められたりするようになっていて(給油路21の断面積が変化するようになっている)、これにより給油路21を流れる潤滑剤の量が調節されるようになっている。
すなわち、回転式弁51は半円形をしており、図12の(b)に示すように回転式弁51の全体が給油路21内に配されていると、給油路21が最も狭められて潤滑剤が最も通過しにくく、図12の(c)に示すように回転式弁51の全体が給油路21外に配されていると、給油路21が最も広げられて潤滑剤が最も通過しやすく、図12の(a)に示すように回転式弁51の半分が給油路21内に配されていると、給油路21がやや狭められて潤滑剤がやや通過しにくい。このように、回転式弁51を回転させて、回転式弁51のうち給油路21内に配されている部分の大きさを変化させることにより、給油路21を流れる潤滑剤の量が調節される。
リニアガイド装置が水平に設置されている場合には、左右の回転式弁51が図12の(a)に示すような状態となっているため、潤滑剤はほぼ均等に左右の湾曲路30に供給される。一方、リニアガイド装置が左右に傾斜姿勢をとって設置されている場合には、すなわち左右の転動体転動路14,14の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合には、回転式弁51が回転し、低い側の回転式弁51は潤滑剤が通過しにくい状態となり、高い側の回転式弁51は潤滑剤が通過しやすい状態となる。そして、傾斜角度が大きいほど回転式弁51の回転角度が大きくなり、低い側の回転式弁51は潤滑剤がより通過しにくい状態となり、高い側の回転式弁51は潤滑剤がより通過しやすい状態となる。
潤滑剤供給量調節部50がないと、潤滑剤は重力により低い側に流れやすく左右で潤滑剤の供給量に差が生じるが、潤滑剤供給量調節部50により潤滑剤の供給量の差が緩和される。この潤滑剤供給量調節部50によれば、傾斜角度が大きいほど(左右の高低差が大きいほど)潤滑剤の供給されやすさの差も大きくなるので、どのような傾斜角度でリニアガイド装置を設置しても、潤滑剤の供給量の差が適切に緩和される。
図13に傾斜角度が45°の場合を示し、図14に傾斜角度が90°の場合を示す。いずれも、左側が低くなっている。図13の場合は、左側の回転式弁51の回転により左側の給油路21がやや狭められ、右側の回転式弁51の回転により右側の給油路21がやや広げられるため、左右での潤滑剤の供給量の差は緩和される。図14の場合は、回転式弁51の回転角度が最大であり、左側の給油路21が最も狭められ、右側の給油路21が最も広げられる。潤滑剤供給量調節部50がないと、潤滑剤の大部分が左側に流れて右側にはほとんど流れないが、潤滑剤供給量調節部50により左側には流れにくくなっているので、左右での潤滑剤の供給量の差が緩和される。
ここで、回転式弁51の回転機構について説明する。回転式弁51はエンドキャップ2Bに回転軸52を介して回転可能に取り付けられている。回転軸52はエンドキャップ2Bの表側に突出していて、表側に突出している回転軸52の端部には錘53が固定されている(図15を参照)。錘53が重力を受けて回転軸52が回転し(錘53が常に下方を向くように回転軸52が回転する)、それに連動して回転式弁51が回転するようになっている。錘53の形状は特に限定されるものではないが、図16に示すような扇形が好ましい。なお、回転式弁51の回転が確実に行われるためには、比重の大きな素材で錘53を構成することが好ましい。例えば、鋼,黄銅等の金属があげられる。
次に、さらに別の構造の潤滑剤供給量調節部60について説明する。なお、上記の潤滑剤供給量調節部20と同様の部分又は相当する部分の説明は省略する。図17〜19に示すように、給油口23に回転式弁61が設けられていて、回転式弁61の回転によって給油口23と給油路21との連結部分の大きさが広くなったり狭くなったりするようになっている(給油路21の断面積が変化するようになっている)。そして、これにより給油路21を流れる潤滑剤の量が調節されるようになっている。
すなわち、回転式弁61は、給油口23と給油路21とを連通する扇形の開口部61a,61aを左右に有しており、回転式弁61が回転すると回転式弁61の開口部61aと給油路21の端部とが位置ズレし、左右の前記連結部分のうち一方が狭くなり他方が広くなるようになっている。その結果、狭くなった連結部分は潤滑剤が通過しにくくなり、広くなった連結部分は潤滑剤が通過しやすくなる。そして、回転式弁61の回転角度が大きいほど、前記連結部分の大きさの変化が大きくなるようになっている。
リニアガイド装置が水平に設置されている場合には、図17に示すように、両者の連結部分の大きさが左右ともに最大となっているので、潤滑剤はほぼ均等に左右の湾曲路30に供給される。一方、リニアガイド装置が左右に傾斜姿勢をとって設置されている場合には、すなわち左右の転動体転動路14,14の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合には、回転式弁61が回転し、低い側は前記連結部分が狭くなって潤滑剤が通過しにくい状態となり、高い側は前記連結部分が広くなって潤滑剤が通過しやすい状態となる。そして、傾斜角度が大きいほど回転式弁61の回転角度が大きくなり、低い側は潤滑剤がより通過しにくい状態となり、高い側は潤滑剤がより通過しやすい状態となる。
潤滑剤供給量調節部60がないと、潤滑剤は重力により低い側に流れやすく左右で潤滑剤の供給量に差が生じるが、潤滑剤供給量調節部60により潤滑剤の供給量の差が緩和される。この潤滑剤供給量調節部60によれば、傾斜角度が大きいほど(左右の高低差が大きいほど)潤滑剤の供給されやすさの差も大きくなるので、どのような傾斜角度でリニアガイド装置を設置しても、潤滑剤の供給量の差が適切に緩和される。
図20に、傾斜角度が90°の場合を示す。図20の場合は、回転式弁61の回転により左側は前記連結部分が最も狭くなって、右側は前記連結部分が最も広くなる。潤滑剤供給量調節部60がないと、潤滑剤の大部分が左側に流れて右側にはほとんど流れないが、潤滑剤供給量調節部60により左側には流れにくくなっているので、左右での潤滑剤の供給量の差が緩和される。
ここで、回転式弁61の回転機構について説明する。給油路21の上方には、左右方向に延びる長方形状溝62が設けられており、この長方形状溝62内には長方形状のラック63が装填されている。ラック63の両端と長方形状溝62の端部との間にはバネ64,64が介装されており、これらのバネ64,64によりラック63の位置が長方形状溝62内の左右方向中央に保持されている。なお、両バネ64,64は、自然長よりも若干縮んだ状態で配され、予圧が加えられた状態となっている。
ラック63には錘65が取り付けられており、リニアガイド装置が左右に傾斜姿勢をとって設置されている場合には、すなわち左右の転動体転動路14,14の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとって設置されている場合には、錘65が重力を受けて右方又は左方に移動するため、それに伴ってラック63も長方形状溝62に沿って同方向に移動する。回転式弁61の外面には複数の歯61bが形成されており、ラック63に形成された複数の歯63aと噛み合っているので、ラック63の移動に伴って回転式弁61が回転する。
錘65を設けなくとも、ラック63の自重だけでラック63が移動することは可能であるが、錘65を設けた方がラック63はより確実に移動する。また、錘65をエンドキャップ2Bの外側に配置すれば、潤滑剤供給量の調節が正しく行われていることを錘65の左右方向位置によって確認することが可能である。さらに、ラック63の移動が確実に行われるためには、比重の大きな素材で錘65を構成することが好ましい。例えば、鋼,黄銅等の金属があげられる。
なお、本実施形態においては、潤滑剤供給量調節部20,50,60をエンドキャップ2Bに設けたが、スライダ本体2Aに設けてもよい。
本発明のリニアガイド装置は、製造装置,加工機械,測定機器等の各種機械に好適に利用可能である。
本発明に係るリニアガイド装置の一実施形態を示す斜視図である。 図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。 リターンガイドを省略してエンドキャップの裏面を示した図である。 リターンガイドの正面図である。 リターンガイドを装着した状態のエンドキャップの斜視図である。 図2のリニアガイド装置のA−A断面図である。 潤滑剤供給量調節部を備えたエンドキャップの裏面を示した図である。 潤滑剤供給量調節部の構造及び動作を説明する図である。 傾斜角度が45°の場合のエンドキャップの裏面を示した図である。 傾斜角度が90°の場合のエンドキャップの裏面を示した図である。 別の構造の潤滑剤供給量調節部を備えたエンドキャップの裏面を示した図である。 潤滑剤供給量調節部の構造及び動作を説明する図である。 傾斜角度が45°の場合のエンドキャップの裏面を示した図である。 傾斜角度が90°の場合のエンドキャップの裏面を示した図である。 回転式弁の回転機構を説明する図である。 錘の形状を説明するエンドキャップの表側を示した図である。 さらに別の構造の潤滑剤供給量調節部を備えたエンドキャップの裏面を示した図である。 図17の潤滑剤供給量調節部の構造を説明するエンドキャップの断面図である。 回転式弁の斜視図である。 傾斜角度が90°の場合のエンドキャップの裏面を示した図である。
符号の説明
1 案内レール
1a 側面
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 転動体
10 転動体転動溝
11 転動体転動溝
13 転動体戻し路
14 転動体転動路
21 給油路
23 給油口
30 湾曲路
20,50,60 潤滑剤供給量調節部
42,53,65 錘
51 回転式弁
61 回転式弁
63 ラック

Claims (2)

  1. 軸方向に延びる転動体転動溝を左右両側面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体転動溝と前記スライダの転動体転動溝との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、を備え、
    前記スライダは、前記転動体転動溝とこれに平行な転動体戻し路とが左右両側にそれぞれ形成されたスライダ本体と、前記転動体転動路と前記転動体戻し路とを連通する湾曲路を左右両側に有して前記スライダ本体の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップと、からなるリニアガイド装置において、
    前記スライダ本体又は前記エンドキャップに、左右両側の前記転動体転動路に潤滑剤を供給する給油路を形成するとともに、前記給油路に、重力により動作して前記潤滑剤の供給量を調節する潤滑剤供給量調節部を設け、
    左右両側の前記転動体転動路の間に高低差が生じるような傾斜姿勢をとっている場合には、前記潤滑剤供給量調節部が、低い側の転動体転動路よりも高い側の転動体転動路の方に潤滑剤が供給されやすくするとともに、前記高低差が大きいほど前記潤滑剤の供給されやすさの差も大きくなるようになっていることを特徴とするリニアガイド装置。
  2. 前記潤滑剤供給量調節部は、重力を受けて錘の移動又は回転が生じることにより前記給油路の断面積を変化させ、前記潤滑剤の供給されやすさを調節するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置。
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