JP5050338B2 - 新規な石油樹脂含有ロジン変性フェノール樹脂 - Google Patents
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こうした実情から、所望の物性を備えた新しい樹脂の開発を目指して、石油樹脂をロジン変性フェノール樹脂骨格へ導入、もしくはロジン変性フェノール樹脂に混合併用させる研究が続けられている。
すなわち、本発明に係る石油樹脂含有ロジン変性フェノール樹脂は、シクロペンタジエン系炭化水素を35重量%以上含有する炭化水素混合物をカチオン重合させて得た石油樹脂(A)を酸変性することなく、ロジンエステル(B)と、フェノールホルムアルデヒド初期縮合物(C)との反応系に添加することで得ることができる。
反応に供せられる(A)成分と(B)成分との重量比は、9:1〜1:9の範囲で選ばれ、(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部当たり、20〜150重量部の範囲で選ばれる。
ここで「シクロペンタジエン系炭化水素」とは、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、これらのアルキル置換誘導体(例えば、メチルシクロペンタジエン)及びこれらの2量体(これには、例えば、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエンなどの共2量化物が含まれる)、3量体(例えば、トリシクロペンタジエン)などの多量体を指す。
そして、反応生成物であるロジンエステルの具体例としては、トール油ロジンエステルやガムロジンエステルを挙げることができ、とりわけ、ガムロジンとペンタエリスリトール及び/又はグリセリンとの反応生成物であるガムロジンエステルが好ましい。
本発明の(B)成分は、単一種のロジンエステルであっても、また、ロジンエステルの混合物であっても差し支えないが、いずれのロジンエステルでも、その酸価は5〜100の範囲であることが好ましく、10〜50の範囲であることが特に好ましい。
この(C)成分は、文字通り、フェノール類とホルムアルデヒドを公知の方法及び公知の反応条件で反応させることによって得ることができる。一般的には、フェノール類とホルムアルデヒドをアルカリ性触媒(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなど)又は酸性触媒(硫酸、p−トルエンスルホン酸など)の存在下、無溶剤又は溶剤中で反応させ、得られた反応混合物を、必要に応じて、中和及び/又は水洗することで得ることができる。反応に際して、ホルムアルデヒド/フェノール類のモル比は、1.0〜3.0の範囲で選ばれる。
反応に供するフェノール類としては、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、p−アルキル置換されているフェノール類などが何れも使用できるが、なかでも炭素数4〜12のp−アルキル置換されているフェノール類である、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノールの使用が好ましい。
反応に供せられる(A)成分と(B)成分との重量比は、9:1〜1:9の範囲で選ばれ、(C)成分の量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部当たり、20〜150重量部の範囲で選ばれる。
(A)成分の量が上記の範囲であれば、得られる高分子量の反応生成物に、求められる物性に応じて石油樹脂由来の特性を効果的に付与することができる。また、(C)成分の量が上記の範囲であれば、未反応原料成分や低分子量反応生成物を極力低減しながら、求められる分子量の樹脂を得ることができ、かつ、反応生成物のゲル化を招く虞がない。
ロジンエステルの製造例
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン4000部を仕込んで200℃まで加熱し、これにペンタエリスリトール360部を添加した。次いで水酸化カルシウム4部を添加し、4時間かけて270〜280℃まで昇温してガムロジンのエステル化を行なった。フラスコ内容物の酸価が25〜30になった時点で、フラスコ内を10mmHgで1時間減圧して揮発成分を留去した後、反応物を取り出し冷却して固形樹脂3700部を得た。
この樹脂の酸価は25.2、重量平均分子量は1,390であった。
攪拌機、還流冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、トルエン1500部、p−ノニルフェノール2200部、92%パラホルムアルデヒド652.2部からなる混合物を収めて52〜57℃に加熱し、これに48%水酸化ナトリウム水溶液50部を添加した。発熱反応で反応混合物は昇温するが、これを水浴及び湯浴にて75℃に保持しながら6時間反応させた。反応終了後、反応器に濃塩酸63部、水200部を加えて攪拌し、冷却後反応器を静置した。上澄み層を分液ロートで分離し、不揮発分65%のレゾール型初期縮合物4300部を得た。
攪拌機、還流冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、トルエン1690部、p−ドデシルフェノール2620部、92%パラホルムアルデヒド228.3部からなる混合物を収めて52〜57℃に加熱し、次いで70%p−トルエンスルホン酸水溶液3.6部を添加した。発熱反応で反応物は昇温するが、これを水浴及び湯浴にて85℃に保持しながら3時間反応させて冷却し、92%パラホルムアルデヒド335部を添加後、48%水酸化ナトリウム水溶液83.1部を添加した。反応物は発熱反応で再び昇温するが、水浴及び湯浴にてこれを75℃に保持して4時間反応を続けた。
反応終了後、反応器に濃塩酸102.5部、水200部を加えて攪拌し、冷却後静置した。上澄み層を分液ロートで分離し、不揮発分65%のノボラック型初期縮合物4810部を得た。
重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてポリスチレン換算の分子量を測定する。装置名:東ソー株式会社製のHLC−8120、カラム:15cm2本組み、東ソー株式会社製のTSK gel スーパーHM−H×2、移動相:THF
亜麻仁油ワニス粘度:亜麻仁油と樹脂とを重量比65:35で混合し、220℃で30分加熱溶解したものを、落球粘度計で測定。測定粘度:25℃
ヘプタントレランス:樹脂2g/トルエン4g溶液を入れた100mlの三角フラスコにヘプタンを少量ずつ添加していき、下に敷いた新聞紙の文字が読めなくなるまでの添加ヘプタン量(ml)から、樹脂1gあたりの白濁に要するヘプタン量(ml)を算出する。値が高いものほど溶解性良好。
色調:作製した樹脂の50%トルエン溶液をガードナー比色計で測定。
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、(A)としてカチオン重合DCPD石油樹脂(商品名:トーホーハイレジン PA−140、東邦化学工業株式会社製、シクロペンタジエン系炭化水素約70重量%含有)800部を、(B)として上記の製造例で得たロジンエステル200部を、(C)として上記の製造例で得たレゾール型初期縮合物の65%トルエン溶液659部を仕込んで加熱し、6時間かけて200℃まで昇温させた。しかる後、フラスコ内を10mmHgで1時間減圧することにより揮発成分を留去した後、反応生成物を取り出し冷却して固形樹脂1280部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は39,200、亜麻仁油ワニス粘度95ps、ヘプタントレランスは12.1ml/g、色調は13−14であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分としてカチオン重合DCPD石油樹脂(商品名:トーホーコーポレックス #2100、東邦化学工業株式会社製、シクロペンタジエン系炭化水素約60重量%含有)500部を、(B)成分として実施例1と同様なロジンエステル500部を、(C)成分として実施例1と同様なレゾール型初期縮合物の65%トルエン溶液434部を仕込んで加熱し、6時間かけて200℃まで昇温させた。しかる後、フラスコ内を10mmHgで1時間減圧して揮発成分を留去した後、反応生成物を取り出し冷却して固形樹脂1160部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は82,000、亜麻仁油ワニス粘度83ps、ヘプタントレランスは19.5ml/g、色調は10であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分として実施例1と同様なカチオン重合DCPD石油樹脂200部を、(B)成分としてロジンエステル(商品名:テスポールTA−14−068、日立化成ポリマー株式会社製)800部を、(C)成分として実施例1と同様なレゾール型初期縮合物の65%トルエン溶液385部を仕込んで加熱し、6時間かけて220℃まで昇温させた。しかる後、フラスコ内を10mmHgで1時間減圧して揮発成分を留去した後、反応生成物を取り出し冷却して固形樹脂1080部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は66,100、亜麻仁油ワニス粘度は110ps、ヘプタントレランスは9.7ml/g、色調は10−11であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)として実施例2で使用したカチオン重合DCPD石油樹脂を、別のカチオン重合DCPD石油樹脂(商品名:トーホーハイレジン #110T、東邦化学工業株式会社製、シクロペンタジエン系炭化水素約55重量%含有)に変更した以外は、実施例2とまったく同様の手法を繰り返して1120部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は55,300、亜麻仁油ワニス粘度64ps、ヘプタントレランスは10.2ml/g、色調は10であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分として実施例4と同様なカチオン重合DCPD石油樹脂250部を、(B)成分としてロジンエステル(商品名:EP1200、理化ファインテク株式会社製)250部を、(C)成分として上記の製造例で得たノボラック型初期縮合物の65%トルエン溶液1154部を仕込んで加熱し、10時間かけて180℃まで昇温させた。しかる後、フラスコ内を10mmHgで1時間減圧して溶剤分を留去した後、反応生成物を取り出し冷却して固形樹脂1120部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は53,500、亜麻仁油ワニス粘度62ps、ヘプタントレランスは50ml/g以上、色調は12−13であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分として実施例1で使用したカチオン重合DCPD石油樹脂を、別のカチオン重合DCPD樹脂(サンプル名:SD−217R、東邦化学工業株式会社製、シクロペンタジエン系炭化水素約30重量%含有)に代替させた以外は、実施例2とまったく同様にして固形樹脂1300部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は8,900、亜麻仁油ワニス粘度20ps、ヘプタントレランスは12.4ml/g、色調は12−13であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分として実施例2で使用したカチオン重合DCPD石油樹脂を、熱重合DCPD石油樹脂(商品名:クィントン1325、日本ゼオン株式会社製)に変更した以外は、実施例2とまったく同様にして固形樹脂1100部を得た。樹脂中にはテトラヒドロフランに不溶なミクロゲルが存在していた。
この樹脂の重量平均分子量は14,500、亜麻仁油ワニス粘度は26ps、ヘプタントレランスは13.1ml/g、色調は11であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分として実施例2で使用したカチオン重合DCPD石油樹脂を、C5系石油樹脂(商品名:マルカレッツT−100A、丸善石油化学株式会社製)に変更した以外は、実施例2とまったく同様にして固形樹脂1080部を得た。樹脂中にはテトラヒドロフランに不溶なミクロゲルが存在していた。
この樹脂の重量平均分子量は65,300、亜麻仁油ワニス粘度41ps、ヘプタントレランスは14.0ml/g、色調は10−11であった。
実施例1と同様のフラスコに、(A)成分として実施例2で使用したカチオン重合DCPD石油樹脂を、C9系石油樹脂(商品名:日石ネオポリマー140、新日本石油化学株式会社製)に変更した以外は、実施例2とまったく同様にして固形樹脂1120部を得た。樹脂中にはテトラヒドロフランに不溶なミクロゲルが存在していた。
この樹脂の重量平均分子量は40,400、亜麻仁油ワニス粘度59ps、ヘプタントレランスは8.3ml/g、色調は10であった。
実施例1と同様のフラスコに、熱重合DCPD石油樹脂(商品名:クィントン1325、日本ゼオン株式会社製)500部と、無水マレイン酸20部を仕込み、230℃で6時間反応させ、酸変性石油樹脂510部を得た。
この酸変性石油樹脂500部と、上記製造例で得たロジンエステル500部と、上記製造例で得たレゾール型初期縮合物の65%トルエン溶液434部を、実施例1と同様のフラスコに仕込んで加熱し、6時間かけて200℃まで昇温させた。しかる後、フラスコ内を10mmHgで1時間減圧して揮発成分を留去した後、反応生成物を取り出し冷却して固形樹脂1154部を得た。
この樹脂の重量平均分子量は78,500、亜麻仁油ワニス粘度98ps、ヘプタントレランスは5.8ml/g、色調は13−14であった。
上記の実施例及び比較例で得られた固形樹脂のそれぞれを印刷インキ用樹脂に用い、樹脂成分だけが異なる複数種の印刷インキを次に示す方法で調製した。
攪拌機、水分離冷却器及び温度計付きセパラブルフラスコに、印刷インキ用樹脂43部、大豆油30部、非芳香族石油系溶剤(商品名:AF6号ソルベント、新日本石油株式会社製)30部を仕込み、窒素気流下220℃で1時間混合した後、135℃まで冷却し、次いでこれにゲル化剤であるアルミニウムキレート(商品名: ALCH、川研ファインケミカル株式会社製)をゲルワニス粘度が700〜900ps程度になるように0.05〜1.0部添加して160℃まで加熱して30分間保持することでインキ用ゲルワニス(実施例:G−1〜G−5、比較例:H−1〜H−5)を得た。
上記のワニス調製例で得たそれぞれのインキ用ゲルワニス(実施例:G−1〜G−5、比較例:H−1〜H−5)と、黄色顔料(商品名:ジスアゾイエロー693、大日精化株式会社製)と、非芳香族石油系溶剤(商品名:AF6号ソルベント、新日本石油株式会社製)を用い、印刷インキのタック値が8.5±1.0、フロー値(60秒)が40±1.0になるように、各成分の使用量を下記の範囲に調整しながら配合した。次いで、配合物を3本ロールで練肉して印刷インキ(黄)(実施例:I−1〜I−5、比較例:J−1〜J−5)を得た。
タック値は、印刷インキ1.3mlをインコメーター(東洋精機株式会社製)のロールに展色して400rpmで回転させ、回転開始後1分後の値を測定した。また、フロー値は、インキ約2ccをスプレッドメーター(安田精機株式会社製)の試料穴に入れ、インキの上面を固定板の上面と同一になるようへらでかきとり、荷重板を落下させた後、同心円状に広がったインキの60秒後の直径値を読み取った。
インキ用ゲルワニス 70〜79部
顔料 12部
AF6号ソルベント 9〜18部
上記のようにして調製された各印刷インキ(黄)の乳化性、流動性、ミスチング、及びブロッキングを次の方法で評価した。結果を表3に示す。
乳化性:インキ25gをステンレス容器にはかりとり、リソトロニック(Novocontrol社製)を使用し、攪拌1200rpm、温度40℃、水の滴下量 2ml/分の条件で、乳化率、トルク変化量を測定した。トルク変化量は、最大トルク値から初期トルク値を差し引いた値をトルク変化量とした。乳化率、トルク変化量ともに数字が小さいものが好ましい。
流動性:インキ1.3mlをガラス板にのせ、70度に傾け、1日後の流れた距離を読み取った。顔料分散が高いワニスほどチキソ性がなくなり、より流動するので、流動距離が長いものほど顔料分散がよい。
ミスチング:インキ2.4ccをインコメーター(東洋精機株式会社製)のロール上に展色し、1200rpmで3分回転させ、ロールの下に置いたアート紙へのインキの飛散度合いを肉眼測定した。飛散が少ない順に◎○×の3段階評価とした。
光沢:インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械株式会社製)にてアート紙に展色、十分乾燥した後、60°の反射率を光沢計(株式会社堀場製作所製)にて測定した。光沢は数値が大きいほど良好である。
黄色顔料を黒色顔料(商品名: カーボンブラック#32、三菱化学株式会社製)に置き換えた以外は、印刷インキ(黄)の場合と同様なインキ用ゲルワニスと、非芳香族石油系溶剤を使用し、印刷インキ(黄)の場合と同様な条件で印刷インキ(墨)(実施例:K−1〜K−5、比較例:L−1〜L−5)を得た。但し、ワニス、顔料及び溶剤の使用量は下記の範囲で調整した。
インキ用ゲルワニス 70〜79部
顔料 18部
AF6号ソルベント 3〜12部
得られた各印刷インキ(墨)の乳化性、流動性、ミスチング、及びブロッキングを印刷インキ(黄)の場合と同様な方法で評価した。結果を表4に示す。
Claims (4)
- シクロペンタジエン系炭化水素を35重量%以上含有する炭化水素混合物をカチオン重合させて得た石油樹脂(A)と、ロジンエステル(B)と、フェノールホルムアルデヒド初期縮合物(C)とを反応させて得た石油樹脂含有ロジン変性フェノール樹脂。
- 反応に供せられる(A)と(B)との重量比が、9:1〜1:9の範囲にある請求項1に記載の石油樹脂含有ロジン変性フェノール樹脂。
- 反応に供せられる(C)の量が、(A)と(B)の合計量100重量部当たり、20〜150重量部の範囲である、請求項1に記載の石油樹脂含有ロジン変性フェノール樹脂。
- シクロペンタジエン系炭化水素を35重量%以上含有する炭化水素混合物をカチオン重合させて得た石油樹脂(A)と、ロジンエステル(B)と、フェノールホルムアルデヒド初期縮合物(C)とを、温度140℃〜270℃の範囲で反応させる石油樹脂含有ロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
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