JP2004300399A - ロジン変性フェノール樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】印刷時における耐ミスチング性を損なうことなく、光沢や流動性に優れたオフセット印刷インキ用樹脂を提供する。
【解決手段】ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)を反応させて得られる、(イ)成分100質量部に対し、モノマー酸成分が10質量%以下、ダイマー酸成分が70質量%以上、トリマー酸成分が20質量%以下である(ロ)成分を1〜20質量部用いたことを特徴とするロジン変性フェノール樹脂。
【選択図】 なし
【解決手段】ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)を反応させて得られる、(イ)成分100質量部に対し、モノマー酸成分が10質量%以下、ダイマー酸成分が70質量%以上、トリマー酸成分が20質量%以下である(ロ)成分を1〜20質量部用いたことを特徴とするロジン変性フェノール樹脂。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ロジン変性フェノール樹脂に関する。本発明により得られたロジン変性フェノール樹脂は、印刷インキ用樹脂、殊にオフセット印刷インキ用樹脂として有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、オフセット印刷の高速化に伴い、印刷インキ用樹脂においても様々な高速印刷適性が要求されており、特にミスチングの発生が深刻な問題となっている。印刷時のミスチング発生を抑制するため、高粘度、低タックなインキが用いられるようになり、ロジン変性フェノール樹脂も高分子量で高粘度な樹脂が検討されている。例えば、アルキルフェノールに石炭酸やビスフェノールAを併用したレゾール型フェノール樹脂を用いたり、ロジン類をマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などのニ塩基酸で変成するなどして、高分子量で高粘度なロジン変性フェノール樹脂を得ることができる。しかし、これら樹脂は、高分子量、高粘度で耐ミスチング性に優れるものの、非芳香族系インキ溶剤に対する溶解性が乏しいので、印刷物の光沢やインキの流動性が低下するという問題がある。そのため、高分子量、高粘度で、非芳香族系インキ溶剤に対し高い溶解性を有するロジン変性フェノール樹脂が切望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高分子量、高粘度で、非芳香族系インキ溶剤に対し高い溶解性を有するロジン変性フェノール樹脂を提供することを目的とする。
【0004】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、この状況に鑑み、目的の性能を備えたロジン変性フェノール樹脂を得るべく鋭意検討を重ねた。その結果、ロジン変性フェノール樹脂の原材料としてダイマー酸を特定割合で用いれば、高分子量、高粘度で、非芳香族系インキ溶剤に対し高い溶解性を有するロジン変性フェノール樹脂が得られることを見出した。
即ち、本発明は、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂であって、(イ)成分100質量部に対し、(ロ)成分を1〜20質量部用いたことを特徴とするロジン変性フェノール樹脂に関する。
【0005】本発明においてロジン類(イ)は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン等が挙げられる。また、必要に応じて、これらロジン類にマレイン酸、フマル酸等の不飽和ニ塩基酸を変性して使用することもできる。
【0006】本発明においてダイマー酸(ロ)は、樹液や穀類から得られるオレイン酸、リノール酸等の不飽和酸とパルチミン酸、ステリアリン酸等の植物油性脂肪酸の混合物を重合することによって得られるカルボン酸である。重合によって得られる前記のカルボン酸は、炭素数36のニ塩基酸(ダイマー酸)が主成分であるが、少量の炭素数18の一塩基酸(モノマー酸)、及び炭素数54の三塩基酸(トリマー酸)を含有している。工業的にダイマー酸と称されるものは、ニ塩基酸(ダイマー酸)のほか一塩基酸(モノマー酸)、三塩基酸(トリマー酸)の混合物が一般的であり、精製植物油性脂肪酸の種類によって芳香族環を有する化合物、環状物を含まない直鎖状の化合物等様々な構造物の混合物となる。本発明において、ダイマー酸(ロ)は、ロジン類(イ)100質量部に対して1〜20質量部とする必要があり、好ましくは2〜15質量部とするのが良い。この範囲内であれば樹脂の軟化点及び分子量を所望の範囲に納めることが容易である。ダイマー酸(ロ)が1質量部より少ないと、ロジン変性フェノール樹脂の分子量が上がり難く、高粘度とするのが難しい、一方、ダイマー酸(ロ)が20質量部を超えるとゲル化し易く合成が困難となる。また、モノマー酸成分が10質量%以下、ダイマー酸成分が少なくとも70質量%以上、トリマー酸成分が20質量%以下であるダイマー酸を用いるのが望ましく、好ましくはモノマー酸成分が5質量%以下、ダイマー酸成分が少なくとも80質量%以上、トリマー酸成分が15質量%以下のものを用いるのが良い。モノマー酸成分が10質量%を超えると、ロジン変性フェノール樹脂の分子量が上がり難い傾向にあり、トリマー酸成分が20質量%を超えるとゲル化し易い傾向となる。
【0007】本発明においてレゾール型フェノール樹脂(ハ)を構成するフェノール類は、従来公知のものが用いられるが、例えば石炭酸、クレゾール、ビスフェノールA、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂(ロ)は、フェノール類1モルに対して、ホルムアルデヒド1.5〜3モルの割合で混合し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ触媒存在下で縮合重合して得られる。必要に応じて、反応後にアルカリ触媒を中和洗浄する。なお、レゾール型フェノール樹脂(ハ)は、ロジン類(イ)100質量部に対して20〜120質量部、好ましくは40〜100質量部とするのが望ましく、この範囲内であれば樹脂の分子量を所望の範囲に納めることが容易である。
【0008】本発明において使用する多価アルコール(ニ)は、従来公知のものが用いられるが、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、2−メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトールなどを挙げることができる。なお、多価アルコール(ニ)は、ロジン類(イ)100質量部に対して、5〜15質量部とするのが望ましく、この範囲内であれば樹脂の分子量を所望の範囲に納めることが容易である。
【0009】本発明のロジン変性フェノール樹脂を合成するに当り、マグネシウム金属化合物、カルシウム金属化合物、亜鉛金属化合物等の従来公知の触媒を用いることができる。これら触媒の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、及び亜鉛の金属水酸化物、金属酸化物、酢酸金属塩、蟻酸金属塩、シュウ酸金属塩、塩化物等が挙げられる。
【0010】本発明において樹脂の酸価は5〜30mgKOH/g、水酸基価は30〜100mgKOH/gであるのが望ましい。酸価が5mgKOH/g未満、水酸基価が30mgKOH/g未満の場合は、顔料の分散性が低下し、印刷時の光沢に劣るようになる。また、酸価が30mgKOH/g、水酸基価が100mgKOH/gを超える場合は、インキの乳化率が高くなる。なお、酸価及び水酸基価はJIS K0070に準拠して測定した値である。
【0011】本発明において樹脂の軟化点は、120〜220℃であることが望ましい。軟化点が120℃を下回ると、印刷時におけるインキのセット、乾燥性が劣るようになる。また、軟化点が220℃を超えると、インキ用ワニスの調製が困難となる。なお、軟化点は、JIS K2207に準拠して測定した値である。
【0012】本発明において樹脂の重量平均分子量は50000〜300000であることが望ましい。重量平均分子量が50000未満ではインキ用ワニスに必要な弾性が得難く、印刷時における耐ミスチングに劣る傾向にある。一方300000以上ではインキ用ワニスに必要な粘性が得難く、インキの流動性に劣る傾向にある。なお、本発明における重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定したもので、単分散の標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
【0013】本発明におけるロジン変性フェノール樹脂は、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)の他に、所望に応じて例えば不飽和ニ塩基酸、植物油、重合植物油、植物油脂肪酸、植物油脂肪酸のエステル、アルキド樹脂、石油樹脂などを加えて反応させ、軟化点、分子量、溶解性、粘度などを調整することも可能である。
【0014】本発明におけるロジン変性フェノール樹脂の反応条件は、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、及びレゾール型フェノール樹脂(ハ)をまず反応させ、次いでその反応物と多価アルコール(ニ)を反応させて製造する方法、あるいは、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、及び多価アルコール(ニ)をまず反応させ、次いでその反応物とレゾール型フェノール樹脂(ハ)を反応させて製造する方法等のいずれの方法も採用できる。
【0015】前者の方法の場合はロジン類(イ)とダイマー酸(ロ)を150〜250℃に加熱溶融し、そこにレゾール型フェノール樹脂(ハ)を滴下反応させた後、多価アルコール(ニ)を反応器に仕込み、温度200〜280℃で反応させる。後者の場合はロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、及び多価アルコール(ニ)を反応器に仕込み、温度200〜280℃で反応させ、次いでこの反応物にレゾール型フェノール樹脂(ハ)を150〜250℃で滴下反応させる。
【0016】
【実施例】以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、仕込みの部は質量部を表す。
【0017】合成例1
撹拌機、冷却器付き反応容器中にp−オクチルフェノール400部、92%パラホルムアルデヒド130部、及び水酸化ナトリウム1部を仕込み、90℃に加熱し5時間反応してレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0018】実施例1
撹拌機、水分離器付き反応容器中に中国産ガムロジン760部、ダイマー酸40部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱撹拌し230℃にて合成例1で合成したレゾール型フェノール樹脂500部を滴下反応する。その後グリセリン73部、酸化マグネシウム1部を仕込み260℃で8時間反応した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点175℃、酸価15mgKOH/g、水酸基価77mgKOH/g、AF7号ソルベント(新日本石油(株)製)溶解性3.8倍、重量平均分子量100000である。なお、AF7号ソルベント溶解性とは、樹脂2gをAF7号ソルベント4gに溶解させ、順次AF7号ソルベントを加えていき、白濁を生じ始めた時点までに使用したAF7号ソルベントのg数に樹脂の溶解に使用したAF7号ソルベント4gを加算し、樹脂1g当り何倍のAF7号ソルベントになるかで表示したものである。
【0019】実施例2
中国産ガムロジン720部、ダイマー酸80部、レゾール型フェノール樹脂500部、グリセリン76部、酸化マグネシウム1部を用いて実施例1と同様に合成した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点168℃、酸価14mgKOH/g、水酸基価76mgKOH/g、AF7号ソルベント溶解性3.3倍、重量平均分子量150000である。
【0020】比較例1
中国産ガムロジン800部、ダイマー酸6部、レゾール型フェノール樹脂500部、グリセリン73部、酸化マグネシウム1部を用いて実施例1と同様に合成した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点160℃、酸価14mgKOH/g、水酸基価74mgKOH/g、AF7号ソルベント溶解性3.9倍、重量平均分子量35000である。
【0021】比較例2
中国産ガムロジン800部、フマル酸40部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱撹拌し200℃で30分保温した後、合成例1で合成したレゾール型フェノール樹脂500部を230℃で滴下反応する。その後グリセリン93部、酸化マグネシウム1部を仕込み260℃で8時間反応した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点175℃、酸価18mgKOH/g、水酸基価80mgKOH/g、AF7号ソルベント(新日本石油(株)製)溶解性1.6倍、重量平均分子量120000である。
【0022】比較例3
中国産ガムロジン600部、ダイマー酸150部、レゾール型フェノール樹脂500部、グリセリン70部、酸化マグネシウム1部を用いて実施例1と同様に合成したがゲル化した。
【0023】得られた各々の樹脂について樹脂40部、大豆油20部、AF7号ソルベント40部を反応容器に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら撹拌昇温して200℃で1時間保温しワニスを得た。これを100℃まで冷却したところでゲル化剤としてALCH−50(川研ファインケミカル(株)製)1部を添加し、180℃まで昇温の後1時間保温しゲルワニスを得た。
【0024】次にゲルワニス60部にカーミン6B(大日本インキ化学工業(株)製)18部を三本ロールミルで練肉し、更にタックが6〜7、フローが25〜28になるよう各々のゲルワニス及びAF7号ソルベントで調整して試験用紅インキを得た。
【0025】表1に各インキの性状と評価結果を示す。なおタック及びフローはそれぞれデジタルインコメーター((株)東洋精機製作所製)、平行板粘度計((株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。
【表1】
【0026】表1のインキ性能評価は以下のように行った。
【0027】光沢:インキ0.3ccをRIテスター(明製作所社製)でアート紙に展色した後、熱風乾燥機中120℃、5秒で乾燥させ、室温で24時間経過した時点で光沢計(ガードナー社製)を用いて60°鏡面反射率を測定した。
【0028】乳化率:リソトロニック(ノボコントロール社製)を用い、25gのインキにイオン交換水を2ml/minの速度で滴下して、飽和したところでの乳化率を測定した。
【0029】ミスチング量:インキ1.3ccをデジタルインコメーター((株)東洋精機製作所製)1分当り2000回転で1分間回転させた時にロール下方に飛散したミストの量を精秤した。
【0030】表1から、本発明により得られたロジン変性フェノール樹脂は、比較例に比べ、光沢や流動性に優れるとともに乳化率も低くミスチング量も少ないので、高速印刷インキ用樹脂として好適であることは明らかである。
【0031】
【発明の効果】
本発明により得られるロジン変性フェノール樹脂をオフセット印刷インキに使用すると、印刷時における耐ミスチング性を損なうことなく、光沢や流動性に優れたインキを得ることができる。
【産業上の利用分野】本発明は、ロジン変性フェノール樹脂に関する。本発明により得られたロジン変性フェノール樹脂は、印刷インキ用樹脂、殊にオフセット印刷インキ用樹脂として有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、オフセット印刷の高速化に伴い、印刷インキ用樹脂においても様々な高速印刷適性が要求されており、特にミスチングの発生が深刻な問題となっている。印刷時のミスチング発生を抑制するため、高粘度、低タックなインキが用いられるようになり、ロジン変性フェノール樹脂も高分子量で高粘度な樹脂が検討されている。例えば、アルキルフェノールに石炭酸やビスフェノールAを併用したレゾール型フェノール樹脂を用いたり、ロジン類をマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などのニ塩基酸で変成するなどして、高分子量で高粘度なロジン変性フェノール樹脂を得ることができる。しかし、これら樹脂は、高分子量、高粘度で耐ミスチング性に優れるものの、非芳香族系インキ溶剤に対する溶解性が乏しいので、印刷物の光沢やインキの流動性が低下するという問題がある。そのため、高分子量、高粘度で、非芳香族系インキ溶剤に対し高い溶解性を有するロジン変性フェノール樹脂が切望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高分子量、高粘度で、非芳香族系インキ溶剤に対し高い溶解性を有するロジン変性フェノール樹脂を提供することを目的とする。
【0004】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、この状況に鑑み、目的の性能を備えたロジン変性フェノール樹脂を得るべく鋭意検討を重ねた。その結果、ロジン変性フェノール樹脂の原材料としてダイマー酸を特定割合で用いれば、高分子量、高粘度で、非芳香族系インキ溶剤に対し高い溶解性を有するロジン変性フェノール樹脂が得られることを見出した。
即ち、本発明は、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂であって、(イ)成分100質量部に対し、(ロ)成分を1〜20質量部用いたことを特徴とするロジン変性フェノール樹脂に関する。
【0005】本発明においてロジン類(イ)は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン等が挙げられる。また、必要に応じて、これらロジン類にマレイン酸、フマル酸等の不飽和ニ塩基酸を変性して使用することもできる。
【0006】本発明においてダイマー酸(ロ)は、樹液や穀類から得られるオレイン酸、リノール酸等の不飽和酸とパルチミン酸、ステリアリン酸等の植物油性脂肪酸の混合物を重合することによって得られるカルボン酸である。重合によって得られる前記のカルボン酸は、炭素数36のニ塩基酸(ダイマー酸)が主成分であるが、少量の炭素数18の一塩基酸(モノマー酸)、及び炭素数54の三塩基酸(トリマー酸)を含有している。工業的にダイマー酸と称されるものは、ニ塩基酸(ダイマー酸)のほか一塩基酸(モノマー酸)、三塩基酸(トリマー酸)の混合物が一般的であり、精製植物油性脂肪酸の種類によって芳香族環を有する化合物、環状物を含まない直鎖状の化合物等様々な構造物の混合物となる。本発明において、ダイマー酸(ロ)は、ロジン類(イ)100質量部に対して1〜20質量部とする必要があり、好ましくは2〜15質量部とするのが良い。この範囲内であれば樹脂の軟化点及び分子量を所望の範囲に納めることが容易である。ダイマー酸(ロ)が1質量部より少ないと、ロジン変性フェノール樹脂の分子量が上がり難く、高粘度とするのが難しい、一方、ダイマー酸(ロ)が20質量部を超えるとゲル化し易く合成が困難となる。また、モノマー酸成分が10質量%以下、ダイマー酸成分が少なくとも70質量%以上、トリマー酸成分が20質量%以下であるダイマー酸を用いるのが望ましく、好ましくはモノマー酸成分が5質量%以下、ダイマー酸成分が少なくとも80質量%以上、トリマー酸成分が15質量%以下のものを用いるのが良い。モノマー酸成分が10質量%を超えると、ロジン変性フェノール樹脂の分子量が上がり難い傾向にあり、トリマー酸成分が20質量%を超えるとゲル化し易い傾向となる。
【0007】本発明においてレゾール型フェノール樹脂(ハ)を構成するフェノール類は、従来公知のものが用いられるが、例えば石炭酸、クレゾール、ビスフェノールA、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂(ロ)は、フェノール類1モルに対して、ホルムアルデヒド1.5〜3モルの割合で混合し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ触媒存在下で縮合重合して得られる。必要に応じて、反応後にアルカリ触媒を中和洗浄する。なお、レゾール型フェノール樹脂(ハ)は、ロジン類(イ)100質量部に対して20〜120質量部、好ましくは40〜100質量部とするのが望ましく、この範囲内であれば樹脂の分子量を所望の範囲に納めることが容易である。
【0008】本発明において使用する多価アルコール(ニ)は、従来公知のものが用いられるが、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、2−メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトールなどを挙げることができる。なお、多価アルコール(ニ)は、ロジン類(イ)100質量部に対して、5〜15質量部とするのが望ましく、この範囲内であれば樹脂の分子量を所望の範囲に納めることが容易である。
【0009】本発明のロジン変性フェノール樹脂を合成するに当り、マグネシウム金属化合物、カルシウム金属化合物、亜鉛金属化合物等の従来公知の触媒を用いることができる。これら触媒の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、及び亜鉛の金属水酸化物、金属酸化物、酢酸金属塩、蟻酸金属塩、シュウ酸金属塩、塩化物等が挙げられる。
【0010】本発明において樹脂の酸価は5〜30mgKOH/g、水酸基価は30〜100mgKOH/gであるのが望ましい。酸価が5mgKOH/g未満、水酸基価が30mgKOH/g未満の場合は、顔料の分散性が低下し、印刷時の光沢に劣るようになる。また、酸価が30mgKOH/g、水酸基価が100mgKOH/gを超える場合は、インキの乳化率が高くなる。なお、酸価及び水酸基価はJIS K0070に準拠して測定した値である。
【0011】本発明において樹脂の軟化点は、120〜220℃であることが望ましい。軟化点が120℃を下回ると、印刷時におけるインキのセット、乾燥性が劣るようになる。また、軟化点が220℃を超えると、インキ用ワニスの調製が困難となる。なお、軟化点は、JIS K2207に準拠して測定した値である。
【0012】本発明において樹脂の重量平均分子量は50000〜300000であることが望ましい。重量平均分子量が50000未満ではインキ用ワニスに必要な弾性が得難く、印刷時における耐ミスチングに劣る傾向にある。一方300000以上ではインキ用ワニスに必要な粘性が得難く、インキの流動性に劣る傾向にある。なお、本発明における重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定したもので、単分散の標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
【0013】本発明におけるロジン変性フェノール樹脂は、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)の他に、所望に応じて例えば不飽和ニ塩基酸、植物油、重合植物油、植物油脂肪酸、植物油脂肪酸のエステル、アルキド樹脂、石油樹脂などを加えて反応させ、軟化点、分子量、溶解性、粘度などを調整することも可能である。
【0014】本発明におけるロジン変性フェノール樹脂の反応条件は、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、及びレゾール型フェノール樹脂(ハ)をまず反応させ、次いでその反応物と多価アルコール(ニ)を反応させて製造する方法、あるいは、ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、及び多価アルコール(ニ)をまず反応させ、次いでその反応物とレゾール型フェノール樹脂(ハ)を反応させて製造する方法等のいずれの方法も採用できる。
【0015】前者の方法の場合はロジン類(イ)とダイマー酸(ロ)を150〜250℃に加熱溶融し、そこにレゾール型フェノール樹脂(ハ)を滴下反応させた後、多価アルコール(ニ)を反応器に仕込み、温度200〜280℃で反応させる。後者の場合はロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、及び多価アルコール(ニ)を反応器に仕込み、温度200〜280℃で反応させ、次いでこの反応物にレゾール型フェノール樹脂(ハ)を150〜250℃で滴下反応させる。
【0016】
【実施例】以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、仕込みの部は質量部を表す。
【0017】合成例1
撹拌機、冷却器付き反応容器中にp−オクチルフェノール400部、92%パラホルムアルデヒド130部、及び水酸化ナトリウム1部を仕込み、90℃に加熱し5時間反応してレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0018】実施例1
撹拌機、水分離器付き反応容器中に中国産ガムロジン760部、ダイマー酸40部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱撹拌し230℃にて合成例1で合成したレゾール型フェノール樹脂500部を滴下反応する。その後グリセリン73部、酸化マグネシウム1部を仕込み260℃で8時間反応した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点175℃、酸価15mgKOH/g、水酸基価77mgKOH/g、AF7号ソルベント(新日本石油(株)製)溶解性3.8倍、重量平均分子量100000である。なお、AF7号ソルベント溶解性とは、樹脂2gをAF7号ソルベント4gに溶解させ、順次AF7号ソルベントを加えていき、白濁を生じ始めた時点までに使用したAF7号ソルベントのg数に樹脂の溶解に使用したAF7号ソルベント4gを加算し、樹脂1g当り何倍のAF7号ソルベントになるかで表示したものである。
【0019】実施例2
中国産ガムロジン720部、ダイマー酸80部、レゾール型フェノール樹脂500部、グリセリン76部、酸化マグネシウム1部を用いて実施例1と同様に合成した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点168℃、酸価14mgKOH/g、水酸基価76mgKOH/g、AF7号ソルベント溶解性3.3倍、重量平均分子量150000である。
【0020】比較例1
中国産ガムロジン800部、ダイマー酸6部、レゾール型フェノール樹脂500部、グリセリン73部、酸化マグネシウム1部を用いて実施例1と同様に合成した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点160℃、酸価14mgKOH/g、水酸基価74mgKOH/g、AF7号ソルベント溶解性3.9倍、重量平均分子量35000である。
【0021】比較例2
中国産ガムロジン800部、フマル酸40部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱撹拌し200℃で30分保温した後、合成例1で合成したレゾール型フェノール樹脂500部を230℃で滴下反応する。その後グリセリン93部、酸化マグネシウム1部を仕込み260℃で8時間反応した。得られたロジン変性フェノール樹脂は軟化点175℃、酸価18mgKOH/g、水酸基価80mgKOH/g、AF7号ソルベント(新日本石油(株)製)溶解性1.6倍、重量平均分子量120000である。
【0022】比較例3
中国産ガムロジン600部、ダイマー酸150部、レゾール型フェノール樹脂500部、グリセリン70部、酸化マグネシウム1部を用いて実施例1と同様に合成したがゲル化した。
【0023】得られた各々の樹脂について樹脂40部、大豆油20部、AF7号ソルベント40部を反応容器に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら撹拌昇温して200℃で1時間保温しワニスを得た。これを100℃まで冷却したところでゲル化剤としてALCH−50(川研ファインケミカル(株)製)1部を添加し、180℃まで昇温の後1時間保温しゲルワニスを得た。
【0024】次にゲルワニス60部にカーミン6B(大日本インキ化学工業(株)製)18部を三本ロールミルで練肉し、更にタックが6〜7、フローが25〜28になるよう各々のゲルワニス及びAF7号ソルベントで調整して試験用紅インキを得た。
【0025】表1に各インキの性状と評価結果を示す。なおタック及びフローはそれぞれデジタルインコメーター((株)東洋精機製作所製)、平行板粘度計((株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。
【表1】
【0026】表1のインキ性能評価は以下のように行った。
【0027】光沢:インキ0.3ccをRIテスター(明製作所社製)でアート紙に展色した後、熱風乾燥機中120℃、5秒で乾燥させ、室温で24時間経過した時点で光沢計(ガードナー社製)を用いて60°鏡面反射率を測定した。
【0028】乳化率:リソトロニック(ノボコントロール社製)を用い、25gのインキにイオン交換水を2ml/minの速度で滴下して、飽和したところでの乳化率を測定した。
【0029】ミスチング量:インキ1.3ccをデジタルインコメーター((株)東洋精機製作所製)1分当り2000回転で1分間回転させた時にロール下方に飛散したミストの量を精秤した。
【0030】表1から、本発明により得られたロジン変性フェノール樹脂は、比較例に比べ、光沢や流動性に優れるとともに乳化率も低くミスチング量も少ないので、高速印刷インキ用樹脂として好適であることは明らかである。
【0031】
【発明の効果】
本発明により得られるロジン変性フェノール樹脂をオフセット印刷インキに使用すると、印刷時における耐ミスチング性を損なうことなく、光沢や流動性に優れたインキを得ることができる。
Claims (2)
- ロジン類(イ)、ダイマー酸(ロ)、レゾール型フェノール樹脂(ハ)、及び多価アルコール(ニ)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂であって、(イ)成分100質量部に対し(ロ)成分を1〜20質量部用いたことを特徴とするロジン変性フェノール樹脂。
- 前記(ロ)成分が、モノマー酸成分が10質量%以下、ダイマー酸成分が70質量%以上、トリマー酸成分が20質量%以下である請求項1記載のロジン変性フェノール樹脂。
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