以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1実施形態にかかる基板処理装置の構成例)
まず,本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置について図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す図である。この基板処理装置100は,基板例えば半導体ウエハWに対して真空圧雰囲気中で成膜処理,エッチング処理等の各種の処理を行う複数の処理室を備える処理ユニット110と,この処理ユニット110に対してウエハWを搬出入させる搬送ユニット120とを備える。
搬送ユニット120は,図1に示すように,基板収納容器例えばカセット容器132(132A〜132C)と処理ユニット110との間でウエハWを搬出入する搬送室130を有している。搬送室130は,断面略多角形の箱体状に形成されている。搬送室130における断面略多角形状の長辺を構成する一側面には,複数のカセット台131(131A〜131C)が並設されている。これらカセット台131A〜131Cはそれぞれ,基板収納容器の一例としてのカセット容器132A〜132Cを載置可能に構成されている。
各カセット容器132(132A〜132C)は,例えばウエハWの端部を保持部で保持することにより,例えば最大25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるものであり,内部を例えば窒素(N2)ガス雰囲気で満たすことができる密閉構造を有している。そして,カセット容器132(132A〜132C)と搬送室130との間には,ゲートバルブ133(133A〜133C)が備えられており,これらを介してウエハWの搬出入が可能となっている。なお,カセット台131とカセット容器132の数は,図1に示す場合に限られるものではない。
また,上記搬送室130一側面には,基板洗浄装置の一例としての洗浄室200が接続している。洗浄室200では,エッチングや成膜など所定の処理が施されたウエハWに対して,その端部に付着した不所望な付着物を除去する洗浄処理が行われる。なお,洗浄室200の構成の詳細については後述する。
上記搬送室130の端部,すなわち断面略多角形状の短辺を構成する一側面には,内部に回転載置台138とウエハWの周縁部を光学的に検出する光学センサ139とを備えた位置決め装置としてのオリエンタ(プリアライメントステージ)136が設けられている。このオリエンタ136では,例えばウエハWのオリエンテーションフラットやノッチが検出され,ウエハWの位置決めが行われる。
上記搬送室130内には,ウエハWをその長手方向(図1に示す矢印方向)に沿って搬送する搬送ユニット側搬送機構(搬送室内搬送機構)170が設けられている。搬送ユニット側搬送機構170が固定される基台172は,搬送室130内の中心部を長手方向に沿って設けられた案内レール174上にスライド移動可能に支持されている。この基台172と案内レール174にはそれぞれ,リニアモータの可動子と固定子とが設けられている。案内レール174の端部には,このリニアモータを駆動するためのリニアモータ駆動機構176が設けられている。リニアモータ駆動機構176は,制御部300が接続されており,制御部300からの制御信号に従って搬送ユニット側搬送機構170が基台172とともに案内レール174に沿って矢印方向へ移動する。
搬送ユニット側搬送機構170には,2つのアーム部からなるいわゆるダブルアーム構造が適用されている。また,各アーム部は,例えば屈伸・昇降・旋回が可能な多関節構造を有している。そして,各アームの先端にはウエハWを保持するためのピック173A,173Bが備えられており,搬送ユニット側搬送機構170は一度に2枚のウエハWを取り扱うことができる。このような搬送ユニット側搬送機構170によって,例えばカセット容器132,オリエンタ136,第1,第2ロードロック室160M,160N,及び洗浄室200に対して,ウエハWを交換するように搬出入することができる。搬送ユニット側搬送機構170のピック173A,173Bはそれぞれ,ウエハWを保持しているか否かを検出するためのセンサ(図示せず)を備えている。なお,搬送ユニット側搬送機構170のアーム部の数は上記のものに限られず,例えば搬送ユニット側搬送機構170に1つのアーム部からなるシングルアーム構造を適用するようにしてもよい。
次に,処理ユニット110の構成例について説明する。本実施形態にかかる基板処理装置100がクラスタツール型であることから,処理ユニット110は図1に示すように,断面多角形(例えば六角形)に形成された共通搬送室150と,その周囲に気密に接続された複数の処理室140(第1〜第6処理室140A〜140F)及び第1,第2ロードロック室160M,160Nから構成されている。
各処理室140A〜140Fは,予め制御部300の記憶媒体などに記憶されたプロセス・レシピなどに基づいてウエハWに対して例えば同種の処理又は互いに異なる異種の処理,例えば成膜処理(例えばプラズマCVD処理)やエッチング処理(例えばプラズマエッチング処理)などの所定の処理を施すように構成されている。各処理室140(140A〜140F)内には,ウエハWを載置するための載置台142(142A〜142F)がそれぞれ設けられている。なお,処理室140の数は,図1に示す例に限られない。
共通搬送室150は,上述したような各処理室140A〜140Fの間,又は各処理室140A〜140Fと各第1,第2ロードロック室160M,160Nとの間でウエハWを搬出入する機能を有する。共通搬送室150は多角形(例えば六角形)に形成されており,その周りに処理室140(140A〜140F)がそれぞれゲートバルブ144(144A〜144F)を介して接続されているとともに,第1,第2ロードロック室160M,160Nの先端がそれぞれゲートバルブ(真空圧側ゲートバルブ)154M,154Nを介して接続されている。第1,第2ロードロック室160M,160Nの基端は,それぞれゲートバルブ(大気圧側ゲートバルブ)162M,162Nを介して搬送室130における断面略多角形状の長辺を構成する他側面に接続されている。
第1,第2ロードロック室160M,160Nは,ウエハWを一時的に保持して圧力調整後に,次段へパスする機能を有している。第1,第2ロードロック室160M,160Nそれぞれの内部には,ウエハWを載置可能な受渡台164M,164Nが設けられている。
共通搬送室150内には,例えば屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる処理ユニット側搬送機構(共通搬送室内搬送機構)180が設けられている。処理ユニット側搬送機構180は,2つのピック183A,183Bを有しており,一度に2枚のウエハWを取り扱うことができるようになっている。また,この処理ユニット側搬送機構180は基台182に回転自在に支持されている。基台182は,共通搬送室150内の基端側から先端側にわたって配設された案内レール184上を例えば図示しないスライド駆動用モータによりスライド移動自在に構成されている。なお,基台182には例えばアーム旋回用のモータなどの配線を通すためのフレキシブルアーム186が接続されている。このように構成された処理ユニット側搬送機構180によれば,この処理ユニット側搬送機構180を案内レール184に沿ってスライド移動させることにより,第1,第2ロードロック室160M,160N及び各処理室140A〜140Fにアクセス可能となる。
例えば,処理ユニット側搬送機構180を第1,第2ロードロック室160M,160N及び対向配置された処理室140A,140Fにアクセスさせる際には,処理ユニット側搬送機構180を案内レール184に沿って共通搬送室150の基端側寄りに位置させる。また,処理ユニット側搬送機構180を4つの処理室140B〜140Eにアクセスさせる際には,処理ユニット側搬送機構180を案内レール184に沿って共通搬送室150の先端側寄りに位置させる。これにより,1つの処理ユニット側搬送機構180により,共通搬送室150に接続されているすべての処理室140A〜140F,第1,第2ロードロック室160M,160Nにアクセス可能となる。
なお,処理ユニット側搬送機構180の構成は上記のものに限られず,2つの搬送機構によって構成してもよい。すなわち,共通搬送室150の基端側寄りに屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる第1搬送機構を設けるとともに,共通搬送室150の先端側寄りに屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる第2搬送機構を設けるようにしてもよい。また,処理ユニット側搬送機構180のピックの数は,2つの場合に限られることはなく,例えば1つのみのピックを有するものであってもよい。
そして,基板処理装置100には,上記各処理室140,搬送ユニット側搬送機構170,処理ユニット側搬送機構180,各ゲートバルブ133,144,154,162,オリエンタ136,洗浄室200などの制御を含め,基板処理装置100全体の動作を制御する制御部300が設けられている。制御部300は,その本体を構成するCPU(中央処理装置),プログラムやレシピなどを記憶するメモリ,ハードディスク等の記憶媒体を備える。
(基板処理装置の動作)
次に,上記のように構成された基板処理装置100の動作について説明する。基板処理装置100は,制御部300により所定のプログラムに基づいて稼働する。例えば搬送ユニット側搬送機構170によりカセット容器132A〜132Cのいずれかから搬出されたウエハWは,オリエンタ136まで搬送されてオリエンタ136の回転載置台138に移載され,ここで位置決めされる。位置決めされたウエハWは,オリエンタ136から搬出されて第1ロードロック室160M又は第2ロードロック室160Nへ搬入される。このとき,必要なすべての処理が完了した処理完了ウエハWが第1,第2ロードロック室160M,160Nにあれば,その処理完了ウエハWを搬出してから,未処理ウエハWを搬入する。
第1,第2ロードロック室160M,160Nへ搬入されたウエハWは,処理ユニット側搬送機構180により第1,第2ロードロック室160M,160Nから搬出され,そのウエハWが処理される処理室140へ搬入され,例えば下部電極を構成する載置台142に載置される。そして,処理室140では,下部電極に対向する上部電極を構成するシャワーヘッド(図示せず)から所定の処理ガスを導入し,上記各電極に所定の高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化し,そのプラズマによりウエハWにエッチング,成膜などの所定の処理を施す。
処理室140での処理が完了した処理済ウエハWは,処理ユニット側搬送機構180により処理室140から搬出される。また,そのウエハWが連続して複数の処理室140での処理が必要な場合には,次の処理を行う他の処理室140へそのウエハWを搬入し,所定の処理を施す。
ところで図2に示すように,載置台142のウエハW載置面は,一般的にウエハWの径よりも若干小さくなっているため,載置台142にウエハWを載置すると,ウエハWの端部が全周にわたって載置台142から張り出す。
また,ウエハWに対してプラズマ処理を行う処理室140の場合,ウエハW面内のバイアス電位の不連続性を緩和させるため,ウエハWの端部を囲むようにフォーカスリング146が配置される。このフォーカスリング146の内周径は,ウエハWに接触しないようにウエハWの外径よりも若干大きいため,ウエハWの端面とフォーカスリング146の内周面との間には若干の隙間が生じている。
このため,ウエハWに対してエッチング処理や成膜処理などのプラズマ処理が行われると,処理ガスのプラズマがウエハWとフォーカスリング146との隙間に入り込み,ウエハWの端部に不所望な付着物が付着することがある。なお,フォーカスリング146がない場合もあるが,その場合にも同様にウエハWの端部に不所望な付着物が付着することがある。
図3Aは,シリコン酸化膜(SiO2膜)402が形成されているウエハWに対して,処理ガスとしてフロロカーボン系(CF系)ガスを用いてプラズマエッチング処理を施したときのウエハWの端部の拡大断面図である。図3Aに示すように,プラズマエッチング処理が行われると,競争反応(重合反応)によってCF系ポリマPからなる副生成物(デポ)が生成され,ウエハWの端部(例えばベベル部を含む端部の裏側)に付着することがある。
また,図3Bは,CF系ガスを用いてウエハWの表面にCF系膜404を化学気相成長させた場合のウエハWの端部の拡大断面図である。図3Bに示すように,CVD法により生成されたCF系膜404は,ウエハWの表側の表面のみならず,ウエハWの端部の縁まで連続し,さらにその端部の裏側(例えばベベル部)まで連続することがある。このCF系膜404のうち,ウエハWの端部に形成された部分のCF系膜Qは,本来成膜する必要がない部分なので,上記のようにプラズマエッチング処理で付着する副生成物と同様に不所望な付着物である。
このように,エッチング処理や成膜処理においてウエハWの端部(例えばベベル部を含む端部の裏側)に付着した付着物(例えばCF系ポリマPやCF系膜Q)は,その後剥離する可能性がある。例えば,ウエハWがカセット容器132A〜132Cのいずれかに戻されると,そのウエハWの端部がカセット容器内の保持部に接触するため,そのとき付着物がウエハ端部から剥離しやすい。ウエハWの端部から剥離した付着物がパーティクルとなってウエハWの表面に付着してしまうと,ウエハW上に形成される半導体デバイスの製造歩留りが低下するおそれがある。
そこで,基板処理装置100では,各処理室140での処理が完了したウエハWを,第1,第2ロードロック室160M,160Nを介して洗浄室200へ搬送し,洗浄室200でウエハWの端部の洗浄処理を行った上で,元のカセット容器132A〜132Cに戻す。このような洗浄処理によってウエハW端部の付着物が除去されるため,そのようなウエハWを例えばカセット容器132Aに戻すときにウエハ端部の付着物が剥離することを防止できる。
(ウエハ端部の洗浄処理)
続いて,洗浄室200で行われる洗浄処理について図3Aを参照しながら説明する。例えばウエハWの端部の裏側に付着物として例えばCF系ポリマPが付着している場合,CF系ポリマPに電磁波例えば紫外線を照射するとともに,CF系ポリマPの表面付近に例えば酸素(O2)を含む気体の流れを形成する。CF系ポリマPに紫外線(hν)が照射されると,CF系ポリマP付近の酸素が励起され,例えば下記化学反応式(1)に示すような化学反応により活性酸素(O)が発生する。
O2+hν→O+O
O+O2→O3
O3+hν→O2+O
・・・(1)
発生した活性酸素は,下記化学反応式(2)に示すようにCF系ポリマPの炭素(C)と分解反応を起して,二酸化炭素(CO2)とフッ素(F2)が生成される。このような化学分解反応によってCF系ポリマPが気化し除去される。
CxFy+O→CO2+F2
・・・(2)
上記化学反応式(2)の反応により発生した二酸化炭素とフッ素は,CF系ポリマPの表面付近に形成される酸素を含む気体の流れに乗って直ぐに除去される。これにより,残っているCF系ポリマPの表面は常に紫外線と酸素に晒されるので,上記化学反応式(2)の反応が活発化し,CF系ポリマPは短時間のうちに除去される。
CF系ポリマPに紫外線を照射し,CF系ポリマPの表面付近に酸素を含む気体の流れを形成する際に,ウエハWの端部を例えば所定の温度(例えば200℃程度)に加熱してもよい。これによって,上記化学反応式(2)の反応がより活発化する。
なお,ここでは図3Aに示すようなエッチング処理によりウエハ端部に付着したCF系ポリマPを例に挙げて付着物を除去するための化学分解反応について説明したが,図3Bに示すような成膜処理によりウエハ端部に付着したCF系膜Qの部分も基本的にC原子とF原子からなるので,上記と同様の化学分解反応により除去することができる。
このように,第1実施形態にかかる洗浄室200では,ウエハWの端部の裏側に紫外線を照射しつつ酸素を含む気体の流れを形成することによって,ウエハWの端部の裏側近傍に活性酸素などの活性種を発生させて,この活性種の作用によりウエハWの端部に付着した付着物(例えばCF系ポリマP,CF系膜Q)を除去する洗浄処理を実行する。
ところが,図3A,図3Bに示すように,単純にウエハWの端部の裏側に向けて酸素を含む気体の流れを形成しただけでは,上記化学反応式(1)に示すような化学反応により発生した活性酸素などの活性種がウエハWの端部の表側に回り込む可能性がある。そして,この活性酸素がウエハWの表側表面の周縁領域D1(例えば,端部から2mm内側までの領域)よりも内側の半導体デバイスが形成される処理面であるデバイス形成領域(処理領域)D2にまで達してしまうと,ウエハW上に形成されている膜などにダメージが及ぶおそれがある。
そこで,本発明では,ウエハの周りを囲むように設けた仕切板で処理容器内をウエハの表側空間と裏側空間に分けることにより,洗浄処理を行う際にウエハの裏側を流れる気体が表側空間に流れ込むことを防止する。これにより,ウエハ端部の裏側近傍で発生した活性種がウエハの裏側の気体の流れに乗ってウエハの表側空間に回り込むことを防止することができる。さらに,洗浄処理を行っている間は,ウエハ端部の表側にも裏側気体の流れと同方向に表側気体の流れを形成し,しかも表側気体流れよりも裏側気体流れの流速の方を速くすることで,ベルヌイの法則を利用して,ウエハ端部と仕切板との隙間からも裏側の気体が表側に流れないようにすることができる。これにより,たとえウエハ端部と仕切板の間に隙間があったとしても,ウエハ端部の裏側近傍に発生した活性種がその隙間を通って,ウエハの表側に回り込むことも防止できる。
(洗浄室の構成例)
次に,上述したような洗浄処理を行う第1実施形態にかかる洗浄室200の具体的構成例について図面を参照しながら説明する。洗浄室200は,図1に示すように処理容器202を備えており,この処理容器202内にはウエハWを載置する載置台204と,処理容器202内をウエハWの周りを囲むように仕切板220が設けられている。
ここで,上記処理容器202の外観の概略を図4に示す。図4は,処理容器202の外観を斜め上側から見た斜視図である。図5は,洗浄室200の内部構成の概略を縦断面図であり,図6は載置台204の近傍の構成を斜め上側から見たときの斜視図である。図6は,仕切板220の一部を切断してウエハWの近傍の外観が見やすいようにしてある。なお,図4では省略しているが,処理容器202の側壁の一部には,ウエハWを処理容器202内に搬出入するためのゲートが設けられている。
処理容器202は,図4に示すように略円筒状に形成されており,その内部をウエハWの表側空間(上部空間)と裏側空間(下部空間)に分ける仕切板220が設けられている。図6にも示すように具体的には仕切板220の外形は略円板状であり,その外周は処理容器202の側壁内側に周方向に沿って取り付けられている。仕切板220は,ウエハWの外径よりも若干大きい円板状の孔が形成されており,この円板状の孔の部分にウエハWが位置するように配置される。このため,ウエハWと仕切板220との間には,ウエハWの表側空間と裏側空間を連通する隙間ができる。本実施形態では,この隙間に表側空間から裏側空間の方に向かう流れを形成することで,裏側気体流れが表側空間に回り込まないようにすることができる。このような気体の流れの具体的な作用については後述する。
なお,仕切板220の厚みは,ウエハWの厚みと略同一であることが好ましい。これによって図5に示すように,ウエハWと仕切板220を表側,裏側ともに面一にすることができるので,ウエハWの端部と仕切板220の端部との間の段差をなくすことができる。したがって,ウエハWの端部の表側表面,裏側表面を通るそれぞれの気体を仕切板220の表面の表側表面,裏側表面を経由させてスムースに処理容器202の側面から排出させることができる。
図5に示すように,載置台204は,ウエハWの径よりも小さい円板状に形成されている。これにより,載置台204にウエハWをその端部の全体が全周にわたって張り出すように載置させることができるので,ウエハWの端部にまんべんなく紫外線を当てることができるとともに,ウエハWの端部に気体の流れを形成し易くなる。
ウエハWは載置台204の上側の載置面に載置される。載置台204は,支柱部205によって例えば処理容器202の底面に固定されている。なお,本実施形態のように載置台204の下方から裏側気体を供給してウエハ端部の裏側表面に裏側気体の流れを形成する場合には,載置台204の厚みはできるだけ薄く,また載置台204を支持する支柱部はできるだけ細いことが好ましい。こうすることにより,載置台204の下方から供給される裏側気体がウエハ端部の裏側表面に流れ易くなる。
載置台204の載置面には多数の吸気孔が形成されており,各吸気孔は,載置台204内部に形成された吸気管206を介してポンプ208に接続されている。ポンプ208が制御部300の制御に従って動作を開始すると,載置台204に載置されたウエハWは,載置面に真空吸着される。このように,各吸気孔,吸気管206,及びポンプ208は,載置面にウエハWを吸着固定する真空チャックとして機能する。これにより,載置台204の下方から供給される裏側気体によってウエハWが載置台204の載置面から浮き上がることを防止できる。
次に,ウエハWの端部の表側表面に沿って表側気体流れを形成する表側気体流れ形成手段について説明する。本実施形態における表側気体流れ形成手段は,処理容器202のウエハWの表側空間の上方からウエハWの表側表面に吹き付けられ,ウエハWの端部の表側表面を通って,表側空間の側方から排出されるような表側気体流れを形成する。
具体的には図4,図5に示すように,処理容器202の表側空間を形成する天井部には,表側空間の上方からウエハWの表側表面に向けて表側気体を吹き付けるように供給する表側気体供給手段が設けられている。具体的には図4,図5に示すように,表側気体供給手段は,処理容器202の天井部に設けられた上部給気管230と,上部給気管230に接続される表側気体供給源250と,表側気体供給源250から上部給気管230に流れる表側気体の流量を制御するバルブ232とを備える。バルブ232は,制御部300からの指令によって開度が制御され,表側気体の流量が制御される。
また,図4に示すように処理容器202の表側空間を形成する側壁には,その周方向に表側気体排出手段としての複数の表側排気口234が配列して形成されている。表側排気口234は,仕切板220の表側表面の近傍,すなわち処理容器202の表側空間を形成する側壁のできるだけ下の方に,仕切板220の周方向に沿って配列することが好ましい。これにより,処理容器202の天井部からウエハWの表側表面に向けて吹き付けられた表側気体は,ウエハWの端部の表側表面を沿って処理容器202の側壁へ排出される。これにより,ウエハWの端部の表側表面にはウエハWの端部の内側から外側へ向けて一定の表側気体の流れが形成される。
次いで,ウエハWの端部の裏側表面に沿って裏側気体流れを形成する裏側気体流れ形成手段について説明する。本実施形態における裏側気体流れ形成手段は,処理容器202のウエハWの裏側空間の下方からウエハWの裏側表面に吹き付けられ,ウエハWの端部の裏側表面を通って,裏側空間の側方から排出されるような表側気体流れを形成する。
図4,図5に示すように,処理容器202の裏側空間を形成する底部には,裏側空間の下方からウエハWの裏側表面に向けて裏側気体を吹き付けるように供給する裏側気体供給手段が設けられている。具体的には裏側気体供給手段は,処理容器202の底部に設けられた下部給気管240と,下部給気管240に接続される裏側気体供給源252と,裏側気体供給源252から下部給気管240に流れる裏側気体の流量を制御するバルブ242とを備える。バルブ242は,制御部300からの指令によって開度が制御され,表側気体の流量が制御される。
下部供給管240が処理容器202の底部に接続される端部は,図5に示すように載置台204の支柱部205の周りを囲むようにして処理容器202の底部に接続されている。例えば下部供給管240の端部を二重管構造にして,その内管の内側に載置台204の支柱部205を固定するとともに,内管と外管の間に裏側気体を供給する。これにより,裏側気体は内管と外管の間からウエハWの裏側に向けて吹き付けるように供給することができる。
また,図4に示すように処理容器202の裏側空間を形成する側壁には,その周方向に裏側気体排出手段としての複数の裏側排気口244が配列して形成されている。裏側排気口244は,仕切板220の裏側表面の近傍,すなわち処理容器202の裏側空間を形成する側壁のできるだけ上の方に,仕切板220の周方向に沿って配列することが好ましい。これにより,処理容器202の底部からウエハWの裏側表面に向けて吹き付けられた裏側気体は,ウエハWの端部の裏側表面を沿って処理容器202の側壁へ排出される。これにより,ウエハWの端部の裏側表面にはウエハWの端部の内側から外側へ向けて一定の裏側気体の流れが形成される。
なお,各表側排気口234及び各裏側排気口244にはそれぞれ真空ポンプなどが接続され,吸引力が働くようにすることが好ましい。これにより,表側気体,裏側気体はそれぞれ,各表側排気口234及び各裏側排気口244から吸引されて,各気体の流れが安定する。また,上部給気管230と下部給気管240からウエハWに向けて供給された表側気体と裏側気体が,ウエハWの表側表面と裏側表面に沿ってより安定的に流れるように,処理容器202内にいくつかの整流フィンを備えるようにしてもよい。
このような表側気体,裏側気体としては,少なくとも酸素を含む気体である。酸素を含むものであれば,空気でもよいが,酸素濃度を簡単に変えることができる点で,酸素と不活性ガス(例えば窒素ガス)とを混合した酸素含有ガスを用いることが好ましい。本実施形態では,表側気体供給源250と裏側気体供給源252から酸素含有ガスを供給する場合を例に挙げて説明する。
なお,表側気体供給源250から供給する表側気体と,裏側気体供給源252から供給する裏側気体とは,酸素濃度を同じにしてもよく,また異なるようにしてもよい。なお,酸素濃度を同じにする場合には,表側気体供給源250と裏側気体供給源252とを一体で構成してもよい。このような酸素含有ガスの酸素濃度によって,ウエハWの端部の付着物除去効果が変わるので,表側気体供給源250及び裏側気体供給源252からは,最適な酸素濃度の酸素含有ガスを供給することが好ましい。なお,酸素含有ガスの酸素濃度と付着物除去効果との関係の詳細は後述する。
本実施形態では,表側気体,裏側気体の流速はそれぞれ,上述した上部給気管230のバルブ232,下部給気管240のバルブ242によって各気体の流量を制御することによって調整することができる。これにより,ウエハ端部の裏側を流れる裏側気体の流速を,ウエハ端部の表側を流れる表側気体の流速よりも速くすることができ,ベルヌイの法則を利用することが可能となる。
例えば第1実施形態における上部給気管230は,下部給気管240よりも大きい内径を有している。このような場合には,例えば各バルブ232,242を制御して,上部給気管230に流れる表側気体の流量と,下部給気管240に流れる裏側気体の流量を一致させると,下部給気管240から処理容器202内に供給される裏側気体の流速を,上部給気管230から処理容器202内に供給される表側気体の流速よりも速くすることができる。なお,上部給気管230,下部給気管240の各配管にマスフローコントローラ(MFC)などの流量調整部を設けて,表側気体,裏側気体の流量を制御することによって,表側気体,裏側気体の流速を調整するようにしてもよい。
図5に示すように,処理容器内202には,載置台204上のウエハWの端部の裏側に向けて電磁波例えば紫外線を照射する電磁波照射手段としての紫外線ランプ210が配設されている。この紫外線ランプ210は,図6に示すように例えば載置台204を囲む環状に構成され,ウエハWの端部の裏側に紫外線を照射可能なようにウエハWの端部の裏側の下方に所定の距離(例えば数mm)だけ離間した位置に配置される。ウエハWの端部の裏側表面に裏側気体である酸素含有ガスの流れが形成されている状態で,紫外線ランプ210からウエハWの端部の裏側に向けて紫外線が照射されると,ウエハWの端部近傍に活性酸素などの活性種が発生し,ウエハWの端部の裏側に付着している付着物(例えばCF系ポリマやCF系膜)の化学分解反応が起こり,その付着物を除去することができる。
このような紫外線ランプ210としては,キセノン(Xe)エキシマランプ(波長172nm),低圧水銀ランプ(波長約185nm,約254nm)など様々な種類のものを採用することができる。
例えば大気圧雰囲気中では,光の波長が短くなるほど,付着物へのその光の吸収率が高くなり,その光のオゾン発生能力も高くなる。このため,大気圧雰囲気中においては,紫外線ランプ210として比較的波長の短いキセノンエキシマランプを採用した場合よりも,比較的波長の長い低圧水銀ランプを採用した場合の方が,紫外線ランプ210をウエハWの端部から離して配置することができる。一方,真空圧雰囲気中においては,紫外線ランプ210として波長が短いキセノンエキシマランプを採用しても,紫外線ランプ210をウエハWの端部から離して配置することができる。
このような理由から,洗浄処理中に洗浄室200内が大気圧雰囲気となる場合には,紫外線ランプ210として比較的波長の長い紫外線を発するランプ(例えば低圧水銀ランプ)を用いることが好ましい。これに対して,洗浄処理中に洗浄室200内が真空圧雰囲気となる場合は,紫外線ランプ210として比較的波長の短い紫外線を発するランプ(例えばキセノンエキシマランプ)を用いることが好ましい。このように,洗浄室200内の圧力雰囲気に応じて適切なランプを紫外線ランプ210として選択することにより,洗浄室200内の各構成要素の配置の自由度を高めることができる。
なお,電磁波照射手段としては,上述した紫外線ランプ210のように紫外線を発するランプ光源に限られるものではなく,さらに長い波長の赤外線を発する赤外線ランプのようなランプ光源であってもよい。このような赤外線ランプとしては,例えばハロゲンランプ等の近赤外線ランプや遠赤外線ランプなどが挙げられる。赤外線ランプの発光波長は,例えば760nm〜1000nmであり,760nm〜2000nmが近赤外線帯となる。なお,このような波長域の中から上記付着物への吸収波長に合った波長をバンドバスフィルタ等に波長抽出器を用いて抽出して照射するようにしてもよい。
その他,電磁波照射手段としては,レーザ光を発するレーザ光源であってもよい。レーザ光源は一般に点状光源であり,集光度がよく,収束照射に適しており,エネルギを高密度で上記付着物に付与することができる。これにより,上記付着物を瞬間的に高温に加熱することができ,またレーザ光を照射する範囲(処理幅)の制御も容易である。このようなレーザ光の種類としては,LD(半導体)レーザでもよく,YAGレーザでもよい。また,エキシマレーザでもよく,その他のレーザ光でもよい。
電磁波照射手段としては,レーザ光源を用いる場合には,例えばウエハ端部の裏側の周方向の一部にレーザ光を照射するようにしてもよく,またウエハ端部の裏側の全周にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えばウエハ端部の一部にレーザ光を照射する場合には,ウエハの載置台204を回転自在に構成し,ウエハを回転させながらレーザ光を照射するようにしてもよい。この場合,ウエハの端部と仕切板220の間の隙間に形成される,ウエハの表側から裏側に向う下降気流を乱さない程度の速度で回転させることが好ましい。また,ウエハ端部の全周にレーザ光を照射する場合には,単一のレーザ光源を用いて反射鏡により環状のレーザ光にしてウエハの端部の全周に照射するようにしてもよく,複数のレーザ光源をウエハ端部の周方向の全周にわたって環状に配置するようにしてもよい。
(洗浄処理の具体例)
次に,第1実施形態にかかる洗浄室200で行われるウエハ端部の洗浄処理の具体例を図5を参照しながら説明する。洗浄室200は,例えば基板処理装置100の制御部300により各部が制御され,洗浄処理が行われる。
先ず,洗浄室200にウエハWが搬送され,載置台204に載置されると,表側気体供給源250と裏気体供給源252からそれぞれ表側気体,裏側気体として例えば同じ酸素濃度の酸素含有ガスを処理容器202内に供給する。そして,例えば上部給気管230のバルブ232,下部給気管240のバルブ242によって各気体の流量を制御することによって,裏側気体の流速が表側気体の流速よりも速くなるように調整する。
すると,図5に矢印で示すように,表側気体供給源250からの表側気体は,上部給気管230を介して載置台204上のウエハWの表側表面の中心付近に向けて吹き付けられて略放射状に広がり,ウエハWの表側表面に沿ってウエハWの端部の全周にわたってその内側から外側へ流れ,さらには処理容器202の側壁の複数の表側排気口234に向けて流れる。
一方,裏気体供給源252からの裏側気体は,下部給気管240を介して載置台204の裏側ないしはウエハWの裏側表面に吹き付けられて略放射状に広がり,ウエハWの裏側表面に沿ってウエハWの端部の全周にわたってその内側から外側へ流れ,さらには処理容器202の側壁の複数の裏側排気口244に向けて流れる。
このとき,ウエハWの端部付近では,表側表面に形成される表側気体の流れと同方向に裏側気体流れが裏側表面に形成される。具体的には図7に示すように,表側気体236は,ウエハWの表側表面に沿ってその端部の内側から外側へ流れ,さらに仕切板220の表側表面に沿って流れる。一方,裏側気体246は,ウエハWの裏側表面に沿ってその端部の内側から外側へ流れ,さらに仕切板220の裏側表面に沿って流れる。
そして,裏側気体246の流速は,表側気体236の流速よりも速くなるように調整されているので,ウエハWの端部と仕切板220の内周端部の間に存在する隙間Gでは,ウエハWの表側空間から裏側空間に向う下降気流238が形成される。この現象は,「ベルヌイの法則(定理)」によって説明できる。
すなわち,表側気体236と裏側気体246の流速に差を設けたため,隙間Gにおいて局所的にウエハWの表側の気圧に比べて裏側の気圧が低くなり,表側気体236の一部が隙間Gを通ってウエハWの裏側に流れる下降気流238が形成される。これにより,裏側気体流れが隙間Gを通ってウエハWの表側空間に流れ込むことを防止することができる。なお,この場合,ウエハWの表側と裏側に圧力差が生じることになるが,上述したようにウエハWは真空チャック機構によって載置台204に吸着されているため,ウエハWが浮き上がるようなことはない。
次に,このような表側気体236の流れと裏側気体246の流れが形成された状態で,紫外線ランプ210からウエハWの端部の裏側に向けて紫外線212を照射する。これにより,紫外線212はウエハWの端部全周に照射され,ウエハWの端部付近を流れる裏側気体246に含まれる酸素が励起されて例えば上記化学反応式(1)に示すような化学反応により活性酸素などの活性種が発生する。この活性酸素により上記化学反応式(2)に示すような化学分解反応が起り,ウエハ端部全周の付着物(CF系ポリマP)は一度に除去される。
このとき,仕切板220によりウエハWの表側空間と裏側空間に分けられているので,裏側気体246が表側空間に流れ込むことはない。これにより,ウエハWの端部の裏側近傍に活性種が発生してもその活性種が裏側気体246の流れに乗ってウエハWの表側に回り込むことはない。上述したように隙間Gには常に下降気流238が生じているため,ウエハWの端部の裏側で発生した活性種がウエハWの表側に回り込むことはない。したがって,ウエハWの表面に形成されているシリコン酸化膜402に活性種によるダメージが及ぶことはない。
なお,この仕切板220を備えることによって,表側気体236の流れと裏側気体246の流れを分離し,隙間Gに下降気流238を確実に発生させることができる。ただし,例えば表側気体236の流れと裏側気体246の流れの方向及び流速を高精度に調整すれば,仕切板220の有無にかかわらず下降気流238を発生させることは可能である。この場合は仕切板220を省略することも可能である。
(酸素含有ガスの酸素濃度)
次に,洗浄処理に用いる酸素含有ガス中の酸素濃度と付着物除去効果との関係について行った実験結果を図面を参照しながら説明する。この実験では,シリコン酸化膜上にCF系膜を形成したサンプルウエハを用意して,そのCF系膜に対して紫外線を60secの間照射しながら,酸素濃度が異なる酸素と窒素の混合ガスを用いてウエハWに形成されたCF系膜表面に気体の流れを形成する処理を施し,処理後のサンプルウエハにおけるCF系膜の残量を測定した。図8は,酸素濃度がそれぞれ0%(酸素なし),1%,3%,7%,10%,15%,21%となるように酸素と窒素の混合比を変えてそれぞれ処理を行った場合の酸素濃度と,CF系膜の残量との関係をグラフに示すものである。
本実験では,CF系膜の残量を測定するために,上記処理後のサンプルウエハの表面分析を行った。具体的には,表面に対して約5°で電子線を照射し,これによって放出される電子スペクトルに基づいて表面から所定の深さまでの領域に含まれる原子全体(下地のSiとO及びCF系膜のCとF)に対するCF系膜のCとFの割合を測定した。従って,図8に示すグラフによれば,原子全体に対するCとFの割合が少なくなるほど,CとFが減少し,CF系膜が減少していることになる。
図8に示す実験結果によれば,酸素濃度が21%以下の範囲では,酸素濃度が15%を超えるとCとFの残量はほとんど変わらないのに対して,酸素濃度が15%以下の範囲でCとFの減少が大きくなり,特に酸素濃度が1〜3%程度でCとFが最も減少していることがわかる。すなわち,酸素濃度が21%よりもさらに低い1〜3%程度で気体の流れを形成した方が,CF系ポリマをより効率よく除去できることがわかる。
このような実験結果によれば,第1実施形態における裏側気体246として酸素濃度1〜3%の酸素含有ガスを用い,表側気体236も酸素濃度1〜3%の酸素含有ガスを用いることが好ましい。なお,本実施形態のように,ウエハWの端部と仕切り板との隙間Gには,表側気体236の一部が下降気流238となって裏側空間へ入り込み,裏側気体246の流れに合流する。このため,表側気体236も裏側気体246と同じ酸素濃度で流れが形成されることが好ましい。このように,表側気体236と裏側気体246として,同じ酸素濃度1〜3%の酸素含有ガスを採用することによって,付着物付近の酸素濃度を,付着物の除去に最も効果的な1〜3%に維持することができる。
以上のように,第1実施形態によれば,炭素とフッ素の分解に適した酸素濃度1〜3%に調整された酸素含有ガスを用いて,ウエハWの端部の裏側に裏側気体246の流れを形成することができる。しかも,表側気体236と裏側気体246の流速を調整して,下降気流238を生じさせているため,ウエハWの裏側で発生した活性種が表側に回り込むことはない。したがって,ウエハWの表面に形成されているシリコン酸化膜402などの膜にダメージを与えることなく,ウエハWの端部の裏側に付着しているCF系ポリマやCF系膜などの不所望の付着物のみを効率よく除去することができる。
(第2実施形態)
続いて,本発明の第2実施形態にかかる洗浄室について図面を参照しながら説明する。第2実施形態の表側気体流れ形成手段の表側気体排出手段,裏側気体流れ形成手段の裏側気体排出手段はそれぞれ,第1実施形態におけるウエハWの側壁に表側排気口234,裏側排気口244を設ける代わりに,仕切板の表裏にそれぞれ取り付けた表側気体吸入配管270,裏側気体吸入配管284から吸入排気させるようにした場合を例に挙げる。また,第2実施形態の裏側気体流れ形成手段の裏側気体供給手段は,第1実施形態における処理容器202の底部の下部給気管240から供給する代わりに,裏側気体吸入配管284に対向して設けた裏側気体吐出配管280から供給する場合を例に挙げる。
このような第2実施形態にかかる洗浄室の構成を図9に示す。図9は,第2実施形態にかかる洗浄室の処理容器262の内部構成の概略を示す縦断面図である。図10は,載置台204の近傍を斜め上側から見たときの斜視図である。図10は,仕切板220の一部及び表側気体吸入配管270と裏側気体吸入配管284の一部を切断してウエハWの近傍の外観が見やすいようにしてある。
図9に示す処理容器262は,ウエハWが載置される載置台204,載置台204上のウエハWの端部の裏側に向けて紫外線を照射する紫外線照射手段としての紫外線ランプ210,及び載置台204上のウエハWの端部の周りを囲むように配置された仕切板220を備えている。また,処理容器262の天井部には,表側気体供給手段としての上部給気管230の一端が接続されている。このような構成については,上記の第1実施形態にかかる処理容器202と共通し,表側気体吸入配管270,裏側気体吐出配管280,及び裏側気体吸入配管284を設けた点で相違するので,共通点についてはその詳細な説明を省略し,相違点について詳細に説明する。
図9,図10に示すように,第2実施形態の裏側気体流れ形成手段は,環状配管により構成される裏側気体吐出配管280と裏側気体吸入配管284とを備え,裏側気体吐出配管280から裏側気体を吐出して裏側気体吸入配管284で吸入することによってウエハ端部の裏側表面(例えばベベル部の裏側)に沿ってウエハ端部の内側から外側に裏側気体の流れを形成する。
図9に示す構成例では,裏側気体吐出配管280は,載置台204に載置されたウエハWの端部よりも内側に,その端部の全周にわたって環状に配置される。また,裏側気体吸入配管284は,載置台204に載置されたウエハWの端部よりも外側に,裏側気体吐出配管280に対向するようにウエハWの端部の全周にわたって環状に配置される。図9は,裏側気体吐出配管280を載置台204の側面に取り付けるとともに,裏側気体吸入配管284を仕切板220の裏側表面に取り付けた場合である。
裏側気体吐出配管280は,バルブ242を介して裏側気体供給源252に接続されている。また,裏側気体吐出配管280には,裏側気体吐出口282が形成されている。この裏側気体吐出配管280は,裏側気体供給源252からの裏側気体を,裏側気体吐出口282からウエハWの端部の裏側表面に沿って所定の流量及び流速で吐出する。裏側気体吐出口282は,裏側気体吐出配管280の全周にわたって設けられている。例えば裏側気体吐出口282を裏側気体吐出配管280の周に沿って設けられた1つのスリットで構成してもよく,裏側気体吐出配管280の周に沿って並んで設けられた多数の孔で構成してもよい。
裏側気体吸入配管284には,裏側気体吐出配管280の裏側気体吐出口282にほぼ対向する位置に酸素含有ガスを吸入する裏側気体吸入口286が形成されている。この裏側気体吸入配管284は,裏側気体吐出配管280が吐出した酸素含有ガスを裏側気体吸入口286から吸入して排気する。裏側気体吸入口286についても,裏側気体吸入配管284の全周にわたって設けられている。例えば裏側気体吸入口286を裏側気体吸入配管284の周に沿って設けられた1つのスリットで構成してもよく,裏側気体吸入配管284の周に沿って並んで設けられた多数の孔で構成してもよい。また,裏側気体吸入配管284は,例えば排気ポンプ(図示せず)に接続される。
このように,裏側気体吸入配管284と裏側気体吐出配管280をできるだけ近づけて配置することにより,ウエハ端部の裏側を通る裏側気体の流れを安定させることができ,ウエハWの端部の付着物除去効率を高めることができる。また,裏側気体吸入配管284と裏側気体吐出配管280をそれぞれ環状の配管で構成するため,図7と図9に示すようにウエハWの端部の裏側表面に沿ってウエハWの端部の内側から外側に向かう裏側気体(酸素含有ガス)246の流れがウエハWの端部の全周にわたって形成される。
一方,第2実施形態の表側気体流れ形成手段は,その表側気体排出手段を環状配管である表側気体吸入配管270で構成し,処理容器202の天井部からウエハWの表側表面に向けて吹き付けられ,ウエハWの端部の表側表面を沿って流れる表側気体を表側気体吸入配管270で吸入する。
表側気体吸入配管270は,図9,図10に示す裏側気体吸入配管284と同様の形状であり,載置台204に載置されたウエハWの端部よりも外側に,その端部の全周にわたって環状に配置されている。図9では,表側気体吸入配管270を仕切板220の表側表面に取り付けた場合である。
この表側気体吸入配管270には,ウエハWの中心に向いて酸素含有ガスを吸入する表側気体吸入口272が形成されている。この表側気体吸入配管270は,上部給気管230からウエハWの表面に向けて供給された酸素含有ガスを表側気体吸入口272から吸入して排気する。表側気体吸入口272は,表側気体吸入配管270の全周にわたって設けられる。例えば表側気体吸入口272を表側気体吸入配管270の周に沿って設けられた1つのスリットで構成してもよく,表側気体吸入配管270の周にそって並んで設けられた多数の孔で構成してもよい。また,表側気体吸入配管270は,例えば排気ポンプ(図示せず)に接続される。
このように,表側気体吸入配管270をできるだけウエハWの端部に近づけて配置することにより,ウエハ端部の表側を通る表側気体の流れを安定させることができる。また,表側気体吸入配管270を環状の配管で構成するため,図7と図9に示すように,ウエハWの端部の表側表面に沿ってウエハWの端部の内側から外側に向かう表側気体(酸素含有ガス)236の流れがウエハWの端部の全周にわたって形成される。
このように第2実施形態における上部給気管230と表側気体吸入配管270によって,例えば酸素含有ガスを表側気体236とする流れを形成し,裏側気体吐出配管280と裏側気体吸入配管284によって,表側気体236と同じ酸素濃度の酸素含有ガスを裏側気体246とする流れを形成する。この状態で,紫外線ランプ210からウエハWの端部の裏側に向けて紫外線212を照射すると,CF系ポリマP付近の酸素が励起され,活性酸素などの活性種が発生する。この活性種は,CF系ポリマPと化学分解反応を起こすため,結果としてCF系ポリマPが除去される。
また,第2実施形態においても,第1実施形態と同様に,裏側気体246の流速が表側気体236の流速よりも速くなるように調整される。この結果,ウエハWの端部と仕切板220の内周端部の間に存在する隙間Gに下降気流238が生じる。したがって,ウエハWの端部の裏側で発生した活性種がウエハWの表側に回り込むことはなく,ウエハWの表面に形成されているシリコン酸化膜402に活性種によるダメージが及ぶことはない。
また,第2実施形態においては,裏側気体吐出配管280と裏側気体吸入配管284を近づけて配置することができる。この構成により,ウエハWの端部の裏側の近傍に裏側気体246の流れを確実にかつ安定的に形成することができる。したがって,ウエハWの端部の裏側に付着している付着物の除去効率を高めることができる。
また,第2実施形態においては,表側気体236を表側気体吸入配管270によって積極的に吸引して排気することができるとともに,裏側気体246を裏側気体吸入配管284によって積極的に吸引して排気することができる。このため,表側気体吸入配管270と裏側気体吸入配管284をともにウエハ端部と仕切板220の隙間Gにより近づけて配置することにより,隙間Gの上側の表側気体236の流れと下側の裏側気体246の流れが平行するように安定化させることができる。したがって,隙間Gに下降気流238を確実に生じさせることができ,活性種のウエハWの表側への回り込みを的確に防止することができる。
(第3実施形態)
次いで,本発明の第3実施形態にかかる洗浄室について図面を参照しながら説明する。第1,第2実施形態では,ウエハWの端部の表裏にその端部の内側から外側へ向かう流れを形成する場合を例に挙げたが,第3実施形態では,ウエハWの端部の表裏にその端部の外側から内側へ向かう流れを形成する場合を例に挙げる。このような第3実施形態にかかる洗浄室の構成を図11に示す。図11は,第3実施形態にかかる洗浄室の処理容器264の内部構成の概略を示す縦断面図である。
図11に示す処理容器264は,ウエハWが載置される載置台204,載置台204上のウエハWの端部の裏側に向けて紫外線を照射する紫外線照射手段としての紫外線ランプ210,及び載置台204上のウエハWの端部の周りを囲むように配置された仕切板220を備えている。このような構成については,上記の第2実施形態にかかる処理容器262と共通し,表側気体,裏側気体の各気体の排気と給気の関係が逆になる点で相違するので,共通点についてはその詳細な説明を省略し,相違点について詳細に説明する。
第3実施形態の表側気体流れ形成手段は,処理容器264のウエハWの表側空間の側方から表側気体を供給する表側気体供給手段と,ウエハWの端部の表側表面をその端部の外側から内側に流れる表側気体を表側空間の上方から吸い上げるように排気する表側気体排出手段とを備える。
具体的には図11に示すように,第3実施形態の表側気体供給手段は,載置台204に載置されたウエハWの端部よりも外側に,その端部の全周にわたって環状に配置された表側気体吐出配管274から表側気体を吐出するように構成される。
この表側気体吐出配管274は,バルブ232を介して表側気体供給源250に接続されている。また,表側気体吐出配管274には,表側気体吐出口276が形成されている。この表側気体吐出配管274は,表側気体供給源250が生成した酸素含有ガスを,表側気体吐出口276からウエハWの端部の表側表面に向けて所定の流量及び流速で吐出する。表側気体吐出口276は,表側気体吐出配管274の全周にわたって設けられている。例えば表側気体吐出口276を表側気体吐出配管274の周に沿って設けられた1つのスリットで構成してもよく,表側気体吐出配管274の周に沿って並んで設けられた多数の孔で構成してもよい。
また,第3実施形態の表側気体排出手段は,処理容器264の天井部に設けられた上部排気管278から表側気体を排出する構成される。上部排気管278には,例えば排気ポンプ(図示せず)が接続されており,この排気ポンプを駆動することによって,処理容器264内の表側気体を吸い上げるように排出することができる。
このような第3実施形態の表側気体流れ形成手段によれば,ウエハWの端部の表側表面に図9に示す表側気体236とは反対の方向,すなわちウエハWの端部の外側から内側に向う表側気体の流れがウエハ端部の全周にわたって形成される。
一方,第3実施形態の裏側気体流れ形成手段は,環状配管により構成される裏側気体吐出配管290と裏側気体吸入配管294とを備え,裏側気体吐出配管290から裏側気体を吐出して裏側気体吸入配管294で吸入することによってウエハ端部の裏側表面(例えばベベル部の裏側)に沿ってウエハ端部の外側から内側に裏側気体の流れを形成する。
図11に示す構成例では,裏側気体吐出配管290は,載置台204に載置されたウエハWの端部よりも外側に,その端部の全周にわたって環状に配置される。また,裏側気体吸入配管294は,載置台204に載置されたウエハWの端部よりも内側に,裏側気体吐出配管290に対向するようにウエハWの端部の全周にわたって環状に配置される。図11は,裏側気体吐出配管290を仕切板220の裏側表面に取り付けるとともに,裏側気体吸入配管294を載置台204の側面に取り付けた場合である。
裏側気体吐出配管290は,バルブ242を介して裏側気体供給源252に接続されている。また,裏側気体吐出配管290には,裏側気体吐出口292が形成されている。この裏側気体吐出配管290は,裏側気体供給源252からの裏側気体を,裏側気体吐出口292からウエハWの端部の裏側表面に沿うように所定の流量及び流速で吐出する。裏側気体吐出口292は,裏側気体吐出配管290の全周にわたって設けられる。例えば裏側気体吐出口292を裏側気体吐出配管290の周に沿って設けられた1つのスリットで構成してもよく,裏側気体吐出配管290の周に沿って並んで設けられた多数の孔で構成してもよい。
裏側気体吸入配管294には,裏側気体吐出配管290の裏側気体吐出口292にほぼ対向する位置に酸素含有ガスを吸入する裏側気体吸入口296が形成されている。この裏側気体吸入配管294は,裏側気体吐出配管290がウエハWの端部の裏側表面に向けて吐出した酸素含有ガスを裏側気体吸入口296から吸入して排気する。裏側気体吸入口296についても,裏側気体吸入配管294の全周にわたって設けられる。例えば裏側気体吸入口296を裏側気体吸入配管294の周に沿って設けられた1つのスリットで構成してもよく,裏側気体吸入配管294の周に沿って並んで設けられた多数の孔で構成してもよい。また,裏側気体吸入配管294は,例えば排気ポンプ(図示せず)に接続される。
このような第3実施形態にかかる裏側気体流れ形成手段によれば,ウエハWの端部の裏側表面に,図9に示す裏側気体246とは反対の方向,すなわちウエハWの端部の外側から内側に向う裏側気体の流れがウエハ端部の全周にわたって形成される。
以上のように第3実施形態における表側気体吐出配管274と上部排気管278によって,例えば酸素含有ガスを表側気体とする流れを形成し,裏側気体吐出配管290と裏側気体吸入配管294によって,表側気体と同じ酸素濃度の酸素含有ガスを裏側気体として流れを形成する。この状態で,紫外線ランプ210からウエハWの端部の裏側に向けて紫外線を照射すると,CF系ポリマP付近の酸素が励起され,活性酸素などの活性種が発生する。この活性種は,CF系ポリマPと化学分解反応を起こすため,結果としてCF系ポリマPが除去される。
また,第3実施形態においても,第2実施形態と同様に,裏側気体の流速が表側気体の流速よりも速くなるように調整される。この結果,ウエハWの端部と仕切板220の内周端部の間に存在する隙間Gに下降気流が生じる。したがって,ウエハWの端部の裏側で発生した活性種がウエハWの表側に回り込むことはなく,ウエハWの表面に形成されている例えばシリコン酸化膜に活性種によるダメージが及ぶことはない。
この第3実施形態における表側気体と裏側気体の流れの方向は,第2実施形態における表側気体236と裏側気体246の流れの方向と反対になるものの,第3実施形態によれば,第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお,洗浄室200を搬送ユニット120内に配置し,ウエハWの端部の洗浄処理を大気圧雰囲気中で行う場合に即して本発明の第1〜第3実施形態を説明したが,洗浄室200を処理ユニット110内に配置し,ウエハWの端部の洗浄処理を真空雰囲気中で行うようにしてもよい。この場合,第1〜第6処理室140A〜140Fのいずれか1つを洗浄室200に割り当てる。真空雰囲気中においても,上記第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
また,上記第1〜第3実施形態では,表側気体と裏側気体の流速は,主に表側気体供給手段および裏側気体供給手段によって調整されているが,表側気体排出手段および裏側気体排出手段によって調整するようにしてもよい。また,気体供給手段と気体排出手段の両方が連携して調整するようにしてもよい。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。