一般に、半導体集積回路(以下、半導体素子という)の製造工程においては、被処理体である半導体ウエハ等の基板に対して、所定の成膜処理とパターンエッチング処理等を繰り返し実施し、該基板上に多数の半導体素子を形成する。
このように被処理体に対して、所定の処理を実施する際には、被処理体(例、半導体ウエハ(以下"ウエハ"という))は各処理装置間で搬送されることが必要である。このことから、ウエハを大気に曝すことを避けることは、現実的に困難であった。ウエハが大気に曝されると、ウエハの表面は大気中の酸素や水分と反応し、その結果、その表面上にはいわゆる自然酸化膜が発生し易かった。また、各種処理中に、大気、処理気体あるいは処理液等に起因して、ウエハの表面上には、いわゆる化学酸化物(Chemical Oxide)等の汚染物が付着するおそれがあった。
このような自然酸化膜及び汚染物は、半導体素子の特性、例えば電気的特性、を劣化させる原因となる。この原因を避けるために、ウエハに対する成膜処理等の前処理として、ウエハ表面上の自然酸化膜等を除去するための表面処理が行なわれる。
従来、自然酸化膜等を除去するための前記表面処理としては、ウエハを薬液中に浸漬し、ウエハの表面の自然酸化膜等を除去する、いわゆるウェット洗浄が一般的に採用されてきた。半導体素子の高集積化が進むにつれて、素子サイズ、例えばその線幅、コンタクトホール径あるいはビアホール径、は微細となる。例えば、コンタクトホールのアスペクト比が大となるとともに、その径は0.2〜0.3μm程度、あるいはそれ以下(例えば、0.12μm)になりつつある。この微細な素子構造のために、上記ウェット洗浄においては、薬液がこのような微細なコンタクトホール内に十分に浸み込まない、あるいはコンタクトホール中に入った薬液がその表面張力のためにそこから排出されない、という事態が生じていた。このためコンタクトホールの底部に形成されていた自然酸化膜が十分に除去されることができない、ウォータマークを生じる、などの重大な問題点が生じていた。
さらに、複数層からなる積層構造を有する被処理体がウェット洗浄される場合、そのコンタクトホール壁面を構成する各層のエッチングレートが異なることから、ホール壁面に凹凸になる等の問題点も生じていた。
図10(a)及び図10(b)には、ウエハW上の積層構造に形成された、ドレインやソースに電気的にコンタクトするためのコンタクトホール302が示されている。図10(a)に示されたホール径Dは、0.2〜0.3μm程度である。このホール302の壁面は、図10(a)に示されるように、複数の成膜工程により形成されたシリコン酸化膜(SiO2 )よりなる多層構造、例えば3層構造、である。この3層構造において、例えば、第1層目のSiO2 膜304は熱酸化により形成された膜であり、第2層目のSiO2 膜306はスピンコート法により形成されたリンドープドガラスであり、第3層目のSiO2 膜308はシリカガラスにより形成された膜である。図10(a)に示されるように、自然酸化膜310がコンタクトホール302の底部に発生している。
このような多層構造の成膜層における、各層の、ウェット洗浄のための薬液に対するエッチング速度は、それぞれ異なる。自然酸化膜310を除去するために、ウェット洗浄を実施した後、図10(b)に示されるように、ホール302の側壁には、前述したエッチング速度の差に起因した凹凸309が発生し、あるいは薬液が各層間の境界部分に浸入し易いことから、この境界部分が過度にエッチングされる(切込み部分参照)、といった問題点を、従来のウェット洗浄は有していた。
そこで、従来のウェット洗浄におけるこのような問題点を解決するために、エッチングガスを用いて被処理体上の自然酸化膜を除去する方法、いわゆるドライ洗浄(エッチング)法が提案されている(例えば、特開平5−275392号公報、特開平6−338478号公報、特開平9−106977号公報参照)。
図11には、上記した特開平5−275392号公報に示されたような従来のSiO2 膜をドライエッチングする方法が示されている。このドライエッチング方法を使用して、被処理体上の自然酸化膜を除去するドライ洗浄方法が説明される。図11のドライエッチング装置において、開閉弁450は閉じられて、Arガス源454からのArガスは遮断されたままとされる。開閉弁436,438が開けられ、NF3 ガス源444とH2 ガス源446とから、流量制御器(MFC)440,442による流量調整を介して、NF3 ガスとH2 ガスが配管432へ送り込まれる。配管432において、両ガスは、例えばNF3 /H2 混合比1:2、全圧26.6Pa(0.2Torr)の混合ガスとなる。マグネトロンから周波数2.45GHz、パワー50Wのマイクロ波が、マイクロ波動波管448を介して供給され、混合ガスは配管432内でプラズマ化される。このプラズマ化において生成されたフッ素活性種F* 、水素活性種H* 、窒素活性種N*は、この配管432内をチャンバ410に向けて移動し、チャンバ410内のバッファ室430に入り、その多孔板428を通ってダウンストリーム状にサセプタ412上に載置されたウエハW上に供給される。このウエハWは、冷却媒体供給装置418からサセプタ412に供給される常温以下に冷却された冷却媒体により冷却される。プラズマにより活性化された活性種F* 、H* 、N* は、冷却されたウエハW上に降り、ウエハW表面上の自然酸化膜に吸着されてSiO2 と反応する。この反応による生成物は、気化してチャンバ410の底部に設けられた排気口460から真空ポンプ466に吸引されて系外へ排気される。
このような従来のプラズマによって生成されたフッ素活性種F* 、水素活性種H* 、窒素活性種N* により、冷却されたウエハ表面の自然酸化膜を除去する方法(特開平5−275392号公報)では、NF3 がプラズマ化されることによって、分解され、その結果、F* 、N* が形成されるため、NF3 の活性ガスが効率よく形成されることができない。また、H2 ガスは、単独状態ではプラズマ状態を維持することが難しい特性をもつため、必ずしも自然酸化膜の除去に十分なエッチングレートを得ることが難しい。
また、他のドライ洗浄による自然酸化膜の除去方法(特開平6−338478号、特開平9−106977号公報)は、いずれもH2 ガスを単独で使用するため、十分に自然酸化膜を除去するために必要なエッチングレートを確保するのが困難であった。
本発明の表面処理方法とその装置は、このような従来の自然酸化膜等の酸化膜除去方法の問題点を解決することを目的とする。本発明においては、10〜20オングストローム程度の膜厚の酸化膜を被処理体の表面から除去するために、H2 ガスとN2 ガスをプラズマガスとし、このプラズマ化したこれらの混合ガスの活性種のフロー中にNF3 ガス(反応ガス)が添加される。被処理体を常温以下に冷却され、被処理体上の酸化膜は該反応ガスと反応し、反応膜が形成される。その後、被処理体は所定温度以上に加熱され、被処理体の表面に形成された反応膜は除去される。
本発明では、処理容器内に、その表面上に酸化膜を有する被処理体を搬入する工程と、該処理容器内を真空排気する工程と、NとHを含むガスをプラズマ発生部に導入し、及び該ガスをプラズマ化して活性化することにより、それぞれの活性ガス種を形成する工程と、該活性ガス種を被処理体に向けてフローさせ、及びフローしている該活性ガス種にNF3 ガスを添加することにより、NF3 ガスの活性化されたガスを形成する工程と、該被処理体を所定の温度以下に冷却する工程と、該NF3 ガスの活性化されたガスを該被処理体の表面上の該酸化物と反応させることにより、該酸化物を変質させる工程と、からなることを特徴とする表面処理方法が提供される。
この表面処理方法において、該NとHを含むガスは、N2 ガスとH2 ガスとの混合ガスであり、該酸化物を変質させる工程に続いて、該N2 ガス、H2 ガス及び該NF3 ガスの該処理容器への供給を停止し、及び該被処理体を所定の温度に加熱することにより、該反応膜を昇華させる工程と、真空排気を停止し、及び酸化膜を除去した該被処理体を該処理容器から搬出する工程と、を、さらに具備する。
また、この表面処理方法において、該被処理体を冷却する所定の温度は、常温以下にする。
また、この表面処理方法において、該被処理体を冷却する所定の温度は、20゜C乃至−20゜Cの範囲とする。
また、この表面処理方法において、該被処理体を冷却する所定の温度は、10゜C乃至−20゜Cの範囲とする。
また、この表面処理方法において、該反応膜を昇華させる所定の加熱温度は、100゜C以上の温度とする。
また、本発明では、プラズマ形成用ガスをプラズマ化するプラズマ発生部と、該プラズマ発生部に接続され、その内部に被処理体を載置する載置台を設けた処理容器と、該載置台に載置された被処理体を所定の温度に冷却する手段と、該処理容器内で該被処理体を加熱位置に上昇させる昇降手段と、該被処理体を該加熱位置で所定の温度に加熱する加熱手段と、を有する表面処理装置が提供される。
また、この表面処理装置は、被処理体の表面に形成された自然酸化膜を除去するための装置である。
また、この表面処理装置は、該プラズマ発生部にプラズマ形成用ガスとしてのN2 ガスとH2 ガスを供給するプラズマ形成用ガス導入部と、該プラズマ発生部で活性化され、被処理体に向けてフローしているN2 ガスとH2 ガスの活性ガス種に、NF3 ガスを添加するNF3 ガス供給部と、をさらに具備し、ここにおいて、該NF3 ガスの添加により、NF3 ガスの活性化されたガスが形成され、該NF3 ガスの活性化されたガスを該被処理体上の表面層と反応させ、該表面層を変質させる。
また、この表面処理装置において、該載置台に載置された被処理体を冷却する所定の温度は、常温以下である。
また、この表面処理装置において、該載置台に載置された被処理体を冷却する所定の温度は、20゜C乃至−20゜Cの範囲である。
また、この表面処理装置において、該載置台に載置された被処理体を冷却する所定の温度は、10゜C乃至−20゜Cの範囲である。
また、この表面処理装置において、該被処理体を該加熱位置で加熱する所定の温度は、100゜C以上の温度である。
また、この表面処理装置において、該NF3 ガス供給部は、該処理容器の内壁に設けられた多数のガス噴出口孔を備える。
また、この表面処理装置において、該NF3 ガス供給部は、該処理容器内に設けられた多数のガス噴出孔をもつ、例えばリング状又は格子状のシャワーヘッドを備える。
また、この表面処理装置において、該NF3 ガス供給部は、前記プラズマ発生部の端から被処理体の方向に少なくとも20cm離れた位置で前記NF3 ガスを該活性ガス種に添加する。
また、この表面処理装置において、該加熱手段は、該被処理体の上方に設けられた熱放射手段である。
また、この表面処理装置において、該加熱手段は、該被処理体の上方に設けられた加熱ランプである。
さらに、本発明では、該表面処理装置に、搬送チャンバを介して、1個あるいは複数個の金属配線形成チャンバ、加熱チャンバ、及びロードロックチャンバを、被処理体が非反応性雰囲気中で搬送されるように、設けたクラスタ装置が提供される。
このクラスタ装置において、搬送チャンバを介して、1個あるいは複数個の金属配線形成チャンバ、加熱チャンバ、冷却チャンバ及びロードロックチャンバを、被処理体が非反応性雰囲気中で搬送されるように設ける。
また、このクラスタ装置において、該金属配線形成チャンバは、Al、Ti、TiN、Si、W、WN、Cu、Ta、TaN、SiNの内の少なくとも一つの膜を形成するためのチャンバである。
また、このクラスタ装置において、該金属配線形成チャンバは、少なくとも100℃以上の温度に該被処理体を加熱する手段を具備している。
以上説明したように、本発明の表面処理方法及びその装置によれば、NとHを含むガスをプラズマ化により活性化し、活性ガス種を形成し、この活性ガス種により反応ガス(NF3 ガス)を活性化し、被処理体を常温以下に冷却しつつ、これら3つのガスと被処理体表面に発生した酸化膜とを反応させて変質させ、反応膜を形成し、加熱によりこの反応膜を昇華させることにより、極めて効率よくかつ高いエッチングレートで被処理体の表面の酸化膜、例えば自然酸化膜、を除去できる。
本実施の形態においては、NとHを含むガスとしてN2 ガスとH2 ガスが採用されたが、このNとHを含むガスとしては、アンモニアなどの他のガスも使用されることができる。
また、本発明の活性化されたガスを噴出させるシャワーヘッドとして、リング状、及び格子状の構造が説明されたが、このシャワーヘッドとしては、いずれの他の構造も採用され得る。
さらに、本発明の表面処理装置と他の処理装置とを非反応性雰囲気中、例えば真空中で、被処理体を真空搬送可能にクラスタ化したので、搬送中に酸化膜の発生がなく、全体としてスループットが向上する。
以下、本発明の表面処理方法及び表面処理装置の実施の形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、表面処理(酸化物除去)装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の表面処理装置の概念構成図である。該表面処理装置は、被処理体(例、半導体ウエハ)(以下、「ウエハW」という)の表面に発生した、膜厚が10〜20オングストローム以下の汚染物(例、自然酸化膜、あるいは意図することなく自然にその表面に付着あるいは形成された化学酸化物、以下、「自然酸化膜」という)の除去に用いられることができる。図1に示される表面処理装置1は、N2 ガスとH2 ガスとの混合ガスをプラズマ化し、該ガスを活性化するプラズマ形成管30と、ウエハWの表面に発生した自然酸化膜を除去するため処理容器10と、NF3 ガス源からNF3 ガス(反応ガス)を処理容器10内に供給する反応ガス供給管26と、を備えている。
処理容器10は、アルミニウム材料から構成されることができ、その内壁は石英(SiO2 )製ライニング13,14が設けられることにより、金属汚染、浸蝕等から保護されることができる。この処理容器10は、筒状のハウジング体であることができ、その横断面は、円形、方形、多角形など、種々の形状とすることができる。この処理容器10の底部には、所定厚の底板12が固定される。この底板12上には、基台29が配置されることができる。この基台29上には円筒状のウエハ載置台(サセプター)20が設けられることができる。ウエハWはウエハ載置台20の上面に載置され、石英製のクランプリング21により係止されることができる。円筒状の載置台20の内部には、冷却媒体(チラー)を収納するジャケット(あるいはパイプ)22と熱交換体23が設けられる。ジャケット(あるいはパイプ)22は熱交換体23と一体的に設けられてもよい。冷却媒体供給装置42から冷却媒体が冷却管路43を介してジャケット(あるいはパイプ)22内に供給され、ウエハWは所定温度、例えば常温以下、に冷却される。
載置台20には、後述するように、ウエハリフト手段が設けられることができる。このウエハリフト手段は、ウエハWを加熱する際に、ウエハWを載置台20から所定の加熱ポジション(L2 )に上昇させ、所定の処理の後、ウエハWを再度下降させ載置台に戻す機構であり、ピン駆動機構25、支持ピン24a、及びアーム24を具備することができる。このウエハリフト手段の一例が、図2(a)、2(b)に示されている。処理容器10の下部に設けられた基台29の下面に、液圧シリンダ25(ピン駆動機構)を配設し、そのシリンダロッド25aの先端部に馬蹄形状の支持片24bが固着される。この支持片24bから半径方向内方に延出されたアーム24の所定個所、(例、3カ所)に支持ピン24aが固定される。支持ピン24aは、上方に突出した先端部に尖頭部を有することができ、この尖頭部でウエハWを3点で水平に支持する。熱放射手段(例、加熱ランプ)19によるウエハ加熱時に、ウエハWはウエハリフト手段により、図1に示される加熱ポジション(L2 )まで上昇(UP)させられる。
処理容器10の底部に固定された底板12の周縁部には、排気管(例、4個の排気管)40が設けられることができる。これらの排気管40に接続された排気手段(例、真空ポンプ)41により処理容器10内は真空排気される。
処理容器10の上部には、頂板11(例、アルミニウム材製)が固定されることができる。頂板11には、シール部材(例、ゴム製O−リング)17を介して、フランジ部16を備えた石英製の覆い(ドーム)15が設けられることができる。覆い15は、石英製のプラズマ形成管30と一体に形成されることができ、その形状は、ドーム形状のみならず、平坦な形状、など種々の形状とされることができる。シール部材17が設けられたシール部には、圧力センサ等の監視機器が配置されることができる。これらの監視機器により、シール部の締付圧力、シール部からのガス漏洩の有無、などが監視される。
ウエハWを上から加熱するための熱放射手段として、覆い15の上方に、多数の加熱ランプ19が設けられることができる。加熱ランプ19は、急速にウエハWを加熱することが出来るようにするために、ハロゲンランプとされることができる。これらの加熱ランプ19から放出される熱線は、透明な石英製のドーム15を透過して、加熱位置に上昇されたウエハWの表面に入射し、ウエハWを100゜C以上の温度(例、120゜C)に加熱する。
加熱ランプ19を金属等からなるカバー18により覆うことにより、加熱ランプ19から外部へ放射される熱線及び光線を遮断することができるとともに、石英製のドーム15が仮に破損した場合でも、プラズマガスあるいは反応ガスが外部への拡散、あるいは漏出を防ぐことができる。
処理容器10の側壁には、搬送室、ロードロック室等と連通するゲートバルブ10aが設けられる。ゲートバルブ10aはウエハWの搬出入時に開閉される。
ここで、NF3 ガスは、金属面をほとんどエッチングしないので、ゲートバルブ10aの内面を石英により保護することは、通常必要ない。一般に、処理容器の金属内面を石英により被覆するのは、金属表面がプラズマで活性化された活性化種の寿命が短かくなることを防ぐために実施される。この意味で、ゲートバルブ10aの内面も石英で被覆されることが好ましい。
プラズマガスを形成するための石英製のプラズマ形成管30が、石英製の覆い15の上部中央に溶融接合等により一体化されて設けられることができ、プラズマ形成管30は覆い15の中央で処理容器10に開口し、プラズマは開口から処理容器10に導入される。プラズマガスの形成及び導入のために、均一な表面処理を可能とする、いずれの構成も採用されることが出来る。例えば、覆い15の中央からズレた位置からプラズマを導入する構成や、処理容器10の側部からプラズマを導入する構成も採用されることができる。
このプラズマ形成管30の上端部には、プラズマ形成用ガスの導入部33が接続される。N2 ガス源35及びH2 ガス源36から、流量制御器(MFC)344を介して、ガス通路33aにN2 ガスとH2 ガスが供給される。これらの混合ガス(N2 +H2 )は、導入部33を通って、プラズマキャビティ31内部のプラズマ形成管30のプラズマ発生部へ供給される。
プラズマキャビティ31には、マイクロ波発生源32が接続されることができる。このマイクロ波発生源32で発生したマイクロ波(例、2.45GHzのマイクロ波)はプラズマキャビティ31に印加され、プラズマ形成管30内でプラズマ形成用ガスを励起し、N2 とH2 との混合ガスを活性化し、N* ラジカルとH* ラジカルの活性ガス種を形成する。それらの活性ガス種はプラズマ形成管30の開口部30aから処理容器10内に供給される。
プラズマ形成管30の開口部30aの下方の位置L1 に、NF3 ガスを供給する多数のガス噴出孔26aが設けられている。この位置L1 は、プラズマ形成管30(プラズマ発生部)のプラズマキャビティ31の下端から少くとも20cm以上の位置が好ましく、更に30cm以上の位置が好ましい。NF3 ガス源28、流量制御器(MFC)27、導通管26、処理容器10の外壁の周囲を囲んで設けられた配管26b、及び処理容器10の壁を貫通して設けられた導通管26cを介して、所定流量のNF3 ガスが、ガス噴出孔26aに供給されることができる。
図1において、ガス噴出孔26aは、処理容器10の内壁面から僅かに内方に突出させた構造として示されている。しかし、このガス噴出孔26a、及び導通管26からガス噴出孔26aに至るガス供給構造は、図1に示された構造に限定されることはない。
図8にガス供給構造の他の実施の態様が説明されている。図8において、配管26b及び導通管26cは、アルミニゥムで製造されることができる処理容器10の壁内部に設けられる。この配管26b及び導通管26cは、処理容器10の壁内部において、該壁と一体的な構造とされることができる。図8において、ガス噴出孔26aは、処理容器10の内壁面から突出させない構造とされている。この構造は、ガスを処理容器内に均一に拡散されることができるとともに、上流からのプラズマガスの流れを乱さない。
図1に示されたガス噴出孔26aの代替の構造として、シャワーヘッド261bが図3(a)に示されている。このシャワーヘッド261bはリング状であり、石英により作られている。シャワーヘッド261bは多数のガス噴出孔261aを有している。これらのガス噴出孔261aは、シャワーヘッド261bの円周上で、下方(載置台20の方向)、横方向、あるいは斜め方向に向って設けられることができる。導通管261がリング状のシャワーヘッド261aに接続される。このシャワーヘッド261aは、処理容器10内の所定位置に水平に配設され、NF3 ガスが処理容器10内に供給される。
図3(b)には、多数のガス噴出孔262aを有する格子状のシャワーヘッド262bが示されている。この格子状のシャワーヘッド262bにおいても、ガス噴出孔262aは、下方、横方向、あるいは斜め方向に向って設けられることができる。
さらに、プラズマ形成管30の開口部30aに、プラズマガスの流れを調整する手段(図示されていない)を設けることができる。この調整手段は、開口部30aから載置台20に向って開口した円筒状あるいは傘状の覆いとされることが出来る。
次に、本発明の表面処理(自然酸化膜除去)方法を説明する。
以上のように構成された表面処理(自然酸化膜除去)装置において、本発明の表面処理(自然酸化膜除去)方法が、図4のフローチャートに基づいて説明される。
工程(a):図1に示される表面処理装置1のゲートバルブ10aを開放され、一枚のウエハWが、搬送室からゲートバルブ10aを通って、非反応性雰囲気中(例、真空中)で、処理容器10内に搬入され、載置台(サセプター)20上に載置され、クランプリング21により載置台20に係止される。このウエハW上には、前工程でコンタクトホール302(図10(a)参照)等が形成されており、このホール底部の表面にウエハWに図5(a)に示されるように酸化物(例、自然酸化膜)80が形成されている。
工程(b):処理容器10内にウエハWが搬入された後、ゲートバルブ10aが閉じられ、処理容器10内は排気管40を介して真空ポンプ41より真空引きされ、処理容器10内は真空雰囲気(例、0.133Pa以下(1mTorr以下))になる。
工程(c):冷却媒体供給装置42からサセプタ20に供給された冷却媒体による冷却により、ウエハWは常温以下になる。
工程(d):Nガス源35及びHガス源36から、N2 (窒素)ガス及びH2(水素)ガスが流量制御器(MFC)34で流量を制御されて、ガス通路33aに供給され、混合ガス(N2+H2)とされ、プラズマ形成用ガスとしてプラズマガス導入部33からプラズマ形成管30内へ供給される。
工程(e):マイクロ波発生源32からのマイクロ波(2.54GHz)が、プラズマ形成管30のプラズマ発生部の周囲に設けられたキャビテイに導入される。マイクロ波により、プラズマ発生部に供給されたN2 ガスとH2 ガスの混合ガスはプラズマ化され、活性化され、活性ガス種であるN* ラジカルと、H* ラジカルが形成される。とくに、プラズマ化され難いH2 ガスはN2 ガスの助けをかりて効率よくプラズマ化され、かつ、活性化されることができる。これらの活性ガス種N* とH* は、処理容器10内の真空雰囲気に引き付けられ、プラズマ形成管30内のプラズマ発生部からその開口(流出口)30aに向けてフローする。
工程(f):処理容器10の外側に設けられたNF3 ガス源28から、流量制御器(MFC)27を介して、反応ガスNF3 が反応ガス供給管26に供給され、多数のガス噴出孔26aから処理容器10内にシャワー状に供給される。供給されたNF3 ガスは、プラズマ形成管30の開口部30aからフローしてくるNガスとHガスのプラズマ化により形成された活性ガス種N* とH* ラジカルに添加される。この結果、添加されたNF3 ガスはフローしてくる活性ガス種N* とH* により活性化される。
工程(g):このNF3 ガスの活性ガス化と、フローしてくる活性ガス種N*とH* との相乗作用により、図5(a)に示されるウエハWの自然酸化膜80は変質され、図5(b)に示されるように、Si、N、H、F、Oが混合した反応膜82が形成される。この自然酸化膜80に変質させる段階では、図1に示される冷却媒体供給装置42による冷却媒体(例、エチレングリコール)が載置台20内に供給され、載置台20上のウエハWは常温以下に冷却されている。
この冷却により、NF3 活性ガスによるエッチングレートは高くなる。また、この時のプロセス条件は、ガスの流量では、H2 、NF3 、N2 がそれぞれ10sccm、30sccm、100sccm、プロセス圧力が399Pa(3Torr)、プラズマ電力が50W、プロセス時間は約3分が好ましい。
NF3 ガスとH2 プラズマガスとの反応によって形成されたエッチング種のエッチング速度は遅いため、反応表面にこれらガスが吸着され反応速度が決定される。常温以下の低温にウエハを冷却することによって、上記吸着速度が上昇し、反応速度を上昇させることができる。
上記したように、NF3 ガスの活性ガス化、活性ガス種N* 及びH* との相乗作用により、ウエハW上の自然酸化膜80を変質する工程は、常温以下の温度で行われることが好ましい。
図9は、この工程における、冷却温度と反応速度との関係を示している。図9において、縦軸はエッチングレート(速度)、横軸は該工程の開始時におけるウエハWの冷却温度を示している。この図9から、冷却温度が20゜Cを越えるとエッチングの制御特性が不安定になるため、室温以下であることが好ましく、さらに20゜C乃至−20゜Cの範囲が好ましく、さらに10゜C乃至−20゜Cの範囲が好ましいことが示唆される。この図9に示されたデータが求められた実験の条件は次のとおりである。自然酸化膜80を変質させる工程:H2 /NF3/N2 の割合・・・300/60/400sccm、圧力・・・532Pa(4Torr)、電力・・・300W、処理時間・・・1分間、(昇華工程)温度・・・140゜C、昇華工程の時間・・・1分間、昇華工程の雰囲気・・・真空。
工程(h):酸化膜を変質させた後、H2 、N2 、NF3 ガスの供給が停止され、マイクロ波発生源32の駆動も停止され、マイクロ波のプラズマ形成管30への導入も停止される。処理容器10内は排気管40からさらに真空引きされる。
工程(i):ウエハリフト手段が駆動され、ウエハWはウエハ載置台20から少なくとも5mm以上離れた加熱ポジションまで上昇させられる。
工程(j):加熱ランプ19が点灯され、ウエハWは上方から加熱され、その表面は室温から急速に100゜C以上(例、約120゜C)の温度に加熱される。
工程(k):加熱ランプ19による加熱によって、Si、N、H、F、Oが混合した反応膜82は、図5(c)に示されるように、Si、N、H、F、Oの混じったガス84となって昇華し、除去され、排気管40から排気される。この昇華によって、ウエハWから自然酸化膜80(反応膜82)は除去され、ウエハWの表面にSi面が現われる。この時のプロセス条件は、プロセス圧力が0.133Pa(1mTorr以下)、プロセス時間は約2分であることが好ましい。
工程(l):加熱ランプ19が消される。
工程(m):最後に、真空引きが停止させられる。
工程(n):ゲートバルブ10aが開放されるとともに、ウエハリフト手段が駆動されてウエハWは下降されウエハ載置台20上に戻される。自然酸化膜が除去されたウエハWが処理容器10内から搬出され、隣接する室(例、搬送室)に真空雰囲気中で搬送される。
なお、本発明の表面処理方法の対象となる酸化膜は、SiO2 のほかに、W、Ti、Al,Ni、Co及びそれらのシリサイド上に成長した極薄い(10〜20オングストローム程度)酸化膜も含まれる。
本発明の表面処理装置は、他の処理装置(例、金属配線形成チャンバ、加熱チャンバ、冷却チャンバ、搬送チャンバ、及びロードロックチャンバ)等と組合わされてマルチチャンバ方式のクラスタ装置を構成することができる。
以下、このクラスタ装置の構成を説明する。
図6に示される真空クラスタ装置100、ウエハを非反応性雰囲気(例、真空雰囲気)中で搬送可能とした装置100である。この真空クラスタ装置100において、本発明の表面処理(自然酸化膜除去)装置は自然酸化膜除去チャンバ101であり、これに搬送チャンバ105を介して、加熱チャンバ102、1台あるいは複数台の金属配線形成チャンバ103、及びロードロックチャンバ104が配置されている。金属配線形成チャンバ103は、Al、Ti、TiN、Si、W、WN、Cu、Ta、SiNの金属配線を被処理体上にメタルCVDにより形成する。各チャンバ間は、ゲートバルブ107が設けられるとともに、搬送チャンバ105内には、搬送ロボット106が設けられている。
ウエハを収容したウエハカセットは、ロードロックチャンバ104内に移送され、搬送チャンバ105で該ウエハはオリフラを基準としたアライメント等が行われる。ゲートバルブ107が開放され、搬送ロボット106により、ウエハは一枚づつ、自然酸化膜除去チャンバ101に搬入され、ウエハの表面の酸化膜が除去された後、加熱チャンバ102で予め加熱され、1台あるいは複数台の金属配線形成チャンバ103内で、ウエハのコンタクトホール内に、メタルCVD等によりAl、Ti等の金属配線が形成され、最後に、ウエハWはロードロックチャンバ104に搬出される。
図7に示される別の真空クラスタ装置200は、同じく非反応性雰囲気中でウエハを搬送可能である。本発明の自然酸化膜除去チャンバ201に搬送チャンバ206を介して加熱チャンバ202、1台あるいは複数台の金属配線形成チャンバ203、冷却チャンバ204及びロードロックチャンバ205を備えている。各チャンバ間にゲートバルブ208が設けられ、搬送チャンバ206内には搬送ロボット207が設けられている。
通常約500゜Cの温度に加熱される金属配線形成チャンバ203から、配線形成後のウエハをロードロックチャンバ205へ搬送する際には、ウエハの温度をロードロックチャンバ205が受け入れ可能な温度(約150゜C)に下げることが必要である。このため、この真空クラスタ装置200は、とくに冷却チャンバ204を備えている。
なお、図6と図7に示す真空クラスタ装置において、加熱チャンバ102及び202が100゜C以上の温度に加熱する手段を具備している場合には、自然酸化膜除去チャンバ101,201の加熱手段は省略されることができる。
以上のように真空クラスタ装置を構成することにより、ウエハを大気中で搬送することによる自然酸化膜の再生成を防ぐことができる。自然酸化膜除去から成膜までの時間管理が不要になり、ウォータ・マークが発生も防止できる。insituでウエハの自然酸化膜を除去ができる、スループットが大幅に向上する、等の効果が奏される。