図1は、本発明の第1実施例である制御システムの構成図を示す。図2は、ステアリングホイールの運転姿勢と退避姿勢とを模式的に表した図を示す。尚、図2において、運転姿勢にあるステアリングホイールを実線で、退避姿勢にあるステアリングホイールを破線で、それぞれ示す。また、図3は、本実施例の制御システムにおけるステアリング姿勢制御装置の構成図を示す。
本実施例の制御システムは、車両エンジンと、運転者が乗車した際に自動的にステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更すべく駆動される電動モータと、を備える車両に搭載されるシステムであり、図1に示す如く、車両エンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置(以下、単に始動制御装置と称す)10と、ステアリングホイールの姿勢を制御するステアリングホイール姿勢制御装置(以下、単に姿勢制御装置と称す)12と、により構成されている。本実施例において、車両は、車両エンジンの駆動により動力を発生し、また、車両操舵のため車両運転者により操作されるステアリングホイールの回転により操舵される。
始動制御装置10は、コンピュータを主体に構成された電源制御用電子制御ユニット(以下、電源ECUと称す)14を備えている。電源ECU14には、運転席の近傍に配設されて車両運転者により操作されるパワースイッチ16が接続されている。パワースイッチ16は、車両の電源状態を切り替えるためのプッシュ式のスイッチであり、そのオン状態又はオフ状態を示す信号を電源ECU14に向けて出力する。電源ECU14は、パワースイッチ16の状態に基づいてそのオン操作が行われたか否かを判別する。
電源ECU14は、パワースイッチ16の状態、ブレーキ操作の有無、シフトポジションの位置、停車の有無などに基づいて車両の電源状態を切り替える。例えば、電源がオフ状態にある状況で、ブレーキ操作が行われることなくパワースイッチ16がオン操作されると、アクセサリリレーをオンして電源状態をオフ状態からアクセサリ状態へ遷移させると共に、更に、ブレーキ操作が行われることなくパワースイッチ16がもう一度オン操作されると、イグニションリレーをオンして電源状態をアクセサリ状態からイグニションオン状態へ遷移させる。また、電源がオフ状態、アクセサリ状態、及びイグニションオン状態の何れかの状態にありかつシフトポジションがパーキングレンジにある状況で、ブレーキ操作が行われながらパワースイッチ16がオン操作されると、車両エンジンの始動条件が成立したと判断し、スタータリレーをオンして電源状態をその状態からスタータオン状態へ遷移させる。更に、車両停車中に電源がイグニションオン状態にある状況で、ブレーキ操作が行われることなくパワースイッチ16がオン操作されると、イグニションリレー及びアクセサリリレーをオフして電源状態をイグニションオン状態からオフ状態へ遷移させる。
電源ECU14には、また、車両エンジンを始動させるためのエンジンスタータ18が接続されている。エンジンスタータ18は、車載バッテリからスタータリレーを介して電源供給がなされることにより駆動される。電源ECU14は、車両エンジンの始動条件が成立したと判断した場合に、スタータリレーをオンすることでエンジンスタータ18を駆動させる。
電源ECU14には、更に、回転数センサ20が接続されている。回転数センサ20は、車両エンジンの回転数NEに応じた信号を電源ECU14に向けて出力するセンサである。電源ECU14は、回転数センサ20の出力信号に基づいて、車両のエンジン回転数NEを検出する。
また、姿勢制御装置12は、コンピュータを主体に構成されたステアリングホイール姿勢制御用電子制御ユニット(以下、姿勢制御ECUと称す)22を備えている。姿勢制御ECU22は、車両電源がアクセサリ状態又はイグニションオン状態にある際に車載バッテリから電源供給されることにより作動可能となる。姿勢制御ECU22には、電動モータ24が接続されている。電動モータ24は、車両運転者の操作するステアリングホイールを、運転者の操舵操作に適した運転姿勢(図2に実線で示す)と運転者の乗降性に適した退避姿勢(図2に破線で示す)とに姿勢変更させるための駆動モータである。
上記したステアリングホイールの退避姿勢時は、運転姿勢時よりも、運転席のシートとステアリングホイールとの間に形成される空間が大きなものとなる。また、ステアリングホイールの退避姿勢は、図2に示す如く、その運転姿勢に対してステアリングホイールをチルト機構(その軸方向の傾きを調整する機構)により上方だけに移動させたものである。尚、その退避姿勢は、更に、その運転姿勢に対してステアリングホイールをテレスコピック機構(その軸方向の位置を調整する機構)により前方にも移動させたものであってもよい。
姿勢制御ECU22は、図3に示す如く、スイッチング回路からなるモータ駆動回路26を有している。モータ駆動回路26は、車載バッテリ28の+端子と電動モータ24との間に介在されている。姿勢制御ECU22は、モータ駆動回路26をスイッチングさせることで、車載バッテリ28からモータ駆動回路26を通じて電動モータ24へ電源供給を行い、その電動モータ24を駆動させる。姿勢制御ECU22は、運転者の車両乗車時(詳細は後述する。)にステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させるべく電動モータ24を駆動させ、また、運転者の車両降車時(例えば、パワースイッチ16がオン操作されて車両電源がオフ状態へ遷移されるとき;尚、この場合、姿勢制御ECU22にはパワースイッチ16のオン操作後でも所定時間は車載バッテリからの電源供給がなされる。)にステアリングホイールを運転姿勢から退避姿勢へ姿勢変更させるべく電動モータ24を駆動させる。
以下、適宜、車両乗車時に電動モータ24の駆動によりステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させる機能をオートリターン機能と、車両降車時に電動モータ24の駆動によりステアリングホイールを運転姿勢から退避姿勢へ姿勢変更させる機能をオートアウェイ機能と、それぞれ称す。
姿勢制御ECU22は、また、スイッチング回路からなる短絡回路30を有している。短絡回路30は、電動モータ24の、接地された接地端子と車載バッテリ28の+端子に接続し得る電源端子とを短絡(すなわち、モータ端子間をショート)させる回路であり、通常は電動モータ24の回転を許容すべくオープン状態にあるが、後述の所定のときは電動モータ24の回転を停止すべくクローズ状態にされる。
姿勢制御ECU22には、回転角度センサ32が接続されている。回転角度センサ32は、電動モータ24の回転角度θに応じたパルス信号を出力するセンサである。姿勢制御ECU22は、回転角度センサ32の出力パルスに基づいて電動モータ24の回転角度θを検出し、更に、その単位時間当たりの回転角度変化Δθを検出する。
更に、姿勢制御ECU22と上記した電源ECU14とは、CANやAVC−LANなどの通信バス34を介して互いに接続されている。電源ECU14及び姿勢制御ECU22は、相互に通信バス34を通じて情報の送受信を行うことが可能である。
次に、図4を参照して、本実施例の制御システムの具体的な動作について説明する。図4は、本実施例の制御システムにおいて電源ECU14及び姿勢制御ECU22がオートリターン機能を実現すべく実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
本実施例の制御システムにおいて、車両電源がオフ状態にあるときは、運転者がステアリングホイールの操舵操作を行う必要はないので、運転者の乗降性を確保すべくステアリングホイールの姿勢は退避姿勢に維持される。
電源ECU14は、車両電源がオフ状態にある場合、パワースイッチ16がオン操作されるか否かを判別する(ステップ100)。その結果、パワースイッチ16がオン操作されたと判別した場合は、車両電源のアクセサリ状態又はイグニションオン状態が要求されたとして、車載バッテリ28から少なくとも姿勢制御ECU22を含む適当な電気機器への電源供給を実現すべくアクセサリリレー又はイグニションリレーをオンすると共に、更に、ステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更が要求されたとして、オートリターン機能を実現すべく通信バス34を通じて姿勢制御ECU22に対して、ステアリングホイールの姿勢変更を要求するオートリターン指令を行う。
姿勢制御ECU22は、車両電源がオフ状態にあるときは、車載バッテリ28から電源供給されることはないが、アクセサリリレー又はイグニションリレーがオンされて車両電源がアクセサリ状態又はイグニション状態になると、車載バッテリ28から電源供給されて作動可能となる。姿勢制御ECU22は、車載バッテリ28から電源供給されている状況で、電源ECU14からステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更を要求するオートリターン指令を受けると、モータ駆動回路26を適当にスイッチングさせることで、ステアリングホイールが退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更されるように電動モータ24の駆動を開始させる(ステップ102)。かかる処理が開始されると、以後、ステアリングホイールは、電動モータ24の駆動により退避姿勢から徐々に運転姿勢へ向けて姿勢変更されることとなる。
姿勢制御ECU22は、電動モータ24の駆動によりステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させる際、その電動モータ24の退避姿勢からの回転パルスをカウントする。そして、そのカウントした回転パルスが所定値に達した場合、ステアリングホイールの姿勢が運転姿勢になったとして、モータ駆動回路26をスイッチングオフさせて電動モータ24を駆動停止させると共に、電源ECU14に対してステアリングホイールの姿勢変更が完了したことを通知する完了通知指令を発する。
電源ECU14は、上記ステップ100における肯定判定以後、車両エンジンの始動条件が成立するか否かを判別する。尚、この車両エンジンの始動条件とは、上記の如く、電源がオフ状態、アクセサリ状態、及びイグニションオン状態の何れかの状態にありかつシフトポジションがパーキングレンジにある状況で、ブレーキ操作が行われながらパワースイッチ16がオン操作されることであればよい。
そして、その結果、上記ステップ100において肯定判定して姿勢制御ECU22に対してオートリターン指令を行った後、その姿勢制御ECU22から完了通知指令を受けた後に車両エンジンの始動条件が成立すると判別した場合は、そのままスタータリレーをオンしてエンジンスタータ18を駆動させる。かかる処理が実行されると、ステアリングホイールの姿勢が既に運転姿勢になった状況で、アクセサリリレー又はイグニションリレーがオフされて姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給が停止されると共に、車載バッテリ28からエンジンスタータ18へ電源供給が行われて車両エンジンが始動されることとなる。
また、上記ステップ100において肯定判定して姿勢制御ECU22に対してオートリターン指令を行った後、その姿勢制御ECU22から完了通知指令を受ける前に車両エンジンの始動条件が成立すると判別した場合(ステップ104における肯定判定時)は、アクセサリリレー又はイグニションリレーのオンを継続しつつ、まず、オートリターン機能を一時中断すべく通信バス34を通じて姿勢制御ECU22に対して、ステアリングホイールの姿勢変更の停止を要求する停止指令を行う。
姿勢制御ECU22は、車載バッテリ28から電源供給されている状況で、電源ECU14に対して完了通知指令を行う前にその電源ECU14からステアリングホイールの姿勢変更の停止を要求する停止指令を受けると、その姿勢変更の停止を実現すべく、モータ駆動回路26をスイッチングオフさせると共に、短絡回路30をスイッチオンさせてクローズさせる(ステップ106)。かかる処理が実行されると、ステアリングホイールの姿勢が運転姿勢に達する前に、車載バッテリ28から電動モータ24への電源供給が停止されると共に、その電動モータ24のモータ端子間がショートされることとなる。
姿勢制御ECU22は、上記の如くステップ106においてステアリングホイールの姿勢変更を停止させる処理を開始すると、その後は、回転角度センサ32の出力パルスに基づいて検出される電動モータ24の回転角度変化Δθに基づいて、その電動モータ24の駆動停止が完了してその姿勢変更が完全に停止されたか否かを判別する(ステップ108)。その結果、電動モータ24の回転角度変化Δθが単位時間当たりにほぼゼロになることによりその電動モータ24の駆動停止が完了したと判別した場合は、その時点での電動モータ24の退避姿勢からの回転パルスを不揮発性メモリに記憶すると共に、更に、通信バス34を通じて電源ECU14に対して、車両エンジンの始動を許可するスタート許可信号を供給する。
電源ECU14は、上記ステップ104において車両エンジンの始動条件が成立したと判別して姿勢制御ECU22に対して停止指令を行った後、その姿勢制御ECU22からスタート許可信号の供給を受けると、姿勢制御ECU22により車両エンジンの始動が許可されているとして、スタータリレーをオンしてエンジンスタータ18を駆動させる(ステップ110)。かかる処理が実行されると、ステアリングホイールの姿勢変更が中途で完全に停止された状況で、アクセサリリレー又はイグニションリレーがオフされて姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給が停止されると共に、車載バッテリ28からエンジンスタータ18へ電源供給が行われて車両エンジンが始動されることとなる。
電源ECU14は、上記の如くステップ110において車両エンジンを始動させる処理を開始すると、その後は、回転数センサ20の出力に基づいて検出されるエンジン回転数NEに基づいて、車両エンジンが確実かつ適切に回転してそのエンジン始動が完了したか否かを判別する(ステップ112)。その結果、エンジン回転数NEが所定の回転数に達して車両エンジンが安定して回転することにより車両エンジンの始動が完了したと判別した場合は、姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給を再開すべくスタータリレーをオフしてイグニションリレーをオンすると共に、更に、通信バス34を通じて姿勢制御ECU22に対して、ステアリングホイールの運転姿勢への姿勢変更の再開を要求する再開指令を行う。
イグニションリレーがオンされると、車載バッテリ28から姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給が開始される。姿勢制御ECU22は、ステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更を停止させかつ電源ECU14へのスタート許可信号を供給した後、車載バッテリ28から電源供給されている状況で、電源ECU14からステアリングホイールの運転姿勢への姿勢変更の再開を要求する再開指令を受けると、再び、モータ駆動回路26を適当にスイッチングさせることで、ステアリングホイールが運転姿勢へ姿勢変更されるように電動モータ24の駆動を再開させる(ステップ114)。かかる処理が実行されると、ステアリングホイールは、停止状態から電動モータ24の駆動により再び徐々に運転姿勢へ向けて姿勢変更されることとなる。
尚、姿勢制御ECU22は、車両エンジンの始動完了後にステアリングホイールが運転姿勢へ姿勢変更されるように電動モータ24の駆動を再開させる場合、電動モータ24の退避姿勢からの回転パルスのカウントを、車両エンジンの始動直前に不揮発性メモリに記憶した駆動停止完了時のものから再開させる。そして、そのカウントした回転パルスが所定値に達すると、ステアリングホイールの姿勢が運転姿勢になったとして、モータ駆動回路26をスイッチングオフさせて電動モータ24を駆動停止させると共に、電源ECU14に対してステアリングホイールの姿勢変更が完了したことを通知する完了通知指令を発する。
また、本実施例の制御システムにおいて、車両電源がアクセサリ状態又はイグニションオン状態にあるときは、運転者がステアリングホイールの操舵操作を行う必要があるので、ステアリングホイールの姿勢は運転姿勢に維持される。
電源ECU14は、車両停車中に車両電源がイグニションオン状態にある場合にはブレーキ操作が行われることなくパワースイッチ16がオン操作されるか否かを判別すると共に、車両電源がアクセサリ状態にある場合にはパワースイッチ16がオン操作されることなく所定時間が経過するか否かを判別する。その結果、イグニションオン時にブレーキ操作が行われることなくパワースイッチ16がオン操作されたと判別した場合及びアクセサリオン時にパワースイッチ16がオン操作されることなく所定時間が経過したと判別した場合は、車両電源のオフ状態が要求されかつステアリングホイールの運転姿勢から退避姿勢への姿勢変更が要求されたとして、まず、オートアウェイ機能を実現すべく通信バス34を通じて姿勢制御ECU22に対して、ステアリングホイールの姿勢変更を要求するオートアウェイ指令を行う。
姿勢制御ECU22は、車載バッテリ28から電源供給されている状況で、電源ECU14からステアリングホイールの運転姿勢から退避姿勢への姿勢変更を要求するオートアウェイ指令を受けると、モータ駆動回路26を適当にスイッチングさせることで、ステアリングホイールが運転姿勢から退避姿勢へ姿勢変更されるように電動モータ24を駆動させる。かかる処理が実行されると、以後、ステアリングホイールは、電動モータ24の駆動により運転姿勢から徐々に退避姿勢へ向けて姿勢変更されることとなる。
姿勢制御ECU22は、電動モータ24の駆動によりステアリングホイールを運転姿勢から退避姿勢へ姿勢変更させる際、その電動モータ24の運転姿勢からの回転パルスをカウントする。そして、そのカウントした回転パルスが所定値に達した場合、ステアリングホイールの姿勢が退避姿勢になったとして、モータ駆動回路26をスイッチングオフさせて電動モータ24を駆動停止させると共に、電源ECU14に対してステアリングホイールの姿勢変更が完了したことを通知する完了通知指令を発する。
電源ECU14は、車両電源のオフ状態が要求されて姿勢制御ECU22に対してオートアウェイ指令を行った後、その姿勢制御ECU22から完了通知指令を受けると、アクセサリリレー及びイグニションリレーをオフする。かかる処理が実行されると、ステアリングホイールの姿勢が退避姿勢になった状況で、少なくとも姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給が停止される。
このように本実施例の制御システムにおいては、車両電源がオフ状態からアクセサリ状態又はイグニションオン状態へ遷移された車両乗車時に、オートリターン機能を発揮させてステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させることができると共に、車両電源がアクセサリ状態又はイグニションオン状態からオフ状態へ遷移された車両降車時に、オートアウェイ機能を発揮させてステアリングホイールを運転姿勢から退避姿勢へ姿勢変更させることができる。
一般的に、車両電源の切り替えのための運転者によるパワースイッチ16のオン操作は、運転者が乗車して運転席シートに着座した後又は運転者が運転席シートから離座して降車する前に行われるので、車両電源のオフ状態からアクセサリ状態又はイグニションオン状態への遷移は運転者の運転席シートへの着座後に実現され、また、車両電源のアクセサリ状態又はイグニションオン状態からオフ状態への遷移は運転者が運転操作終了後であって運転席シートから離座する前に実現される。従って、本実施例において、ステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更は運転者が運転席シートに着座した後になされ、その運転姿勢は車両運転中継続して維持され、また、ステアリングホイールの運転姿勢から退避姿勢への姿勢変更は運転者が運転操作を終了した後であって運転席シートから離座する前になされ、その退避姿勢は車両停車中継続して維持される。
ステアリングホイールの運転姿勢は運転者の操舵操作に適したものであり、また、退避姿勢は運転席のシートとステアリングホイールとの間に形成される空間が大きくて運転者の乗降性に適したものである。従って、本実施例によれば、運転者による車両運転中はステアリングホイールを運転姿勢にして運転席に運転者の操舵操作に適した通常の大きさの空間を確保することが可能であると共に、運転者の乗降時はステアリングホイールを退避姿勢にして運転席に運転姿勢時よりも大きな空間を確保することが可能であるので、車両走行中における運転者の操舵姿勢を損なわせることなく、車両停車中における運転者の乗降性を向上させることが可能となっている。
また、本実施例の制御システムにおいては、電動モータ24の駆動によりステアリングホイールが退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更されている過程で車両エンジンの始動条件が成立した場合、直ちにその車両エンジンの始動が実施されることはなく、まず、そのステアリングホイールの姿勢変更を停止すべく電動モータ24の駆動停止が実施される。そして、ステアリングホイールの姿勢位置が変更されなくなりその電動モータ24の駆動停止が完了した場合、その時点で始めて車両エンジンが始動される。
すなわち、電動モータ24は、ステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させるべく駆動されていても、車両エンジンの始動条件が成立すると、車両エンジンが始動される前に駆動停止されることとなり、スタータリレーがオンされて車両エンジンの始動が開始される時点すなわちアクセサリリレー又はイグニションリレーがオフされて姿勢制御ECU22への電源供給が停止される時点で駆動していることはなく、確実にその駆動停止は完了していることとなる。
かかる構成においては、車両エンジンの始動中、電動モータ24が全く駆動されず車載バッテリ28からその電動モータ24への電源供給が抑制されかつ姿勢制御ECU22への電源供給が停止されるので、その車載バッテリ28からエンジンスタータ18へ多くの電力を供給することが可能であり、エンジンスタータ18の作動を安定した状態で行うことが可能である。
また、姿勢制御ECU22への電源供給が停止されている際に電動モータ24が惰性回転などで駆動することはないので、姿勢制御ECU22においてカウントされる電動モータ24の回転パルス飛びが発生することを確実に防止することが可能である。このため、ステアリングホイールの姿勢位置について姿勢制御ECU22の把握するものと実際のものとの間にずれが生ずるのを抑止することが可能となっており、これにより、ステアリングホイールの運転姿勢又は退避姿勢を常に所望のものとすることが可能であり、また、その姿勢位置の補正を不要とすることが可能である。
尚、本実施例の制御システムにおいては、電動モータ24の駆動によりステアリングホイールが退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更されている過程で車両エンジンの始動条件が成立した際にそのステアリングホイールの姿勢変更を停止すべくなされる電動モータ24の駆動停止は、モータ駆動回路26のスイッチングオフと短絡回路30を用いたその電動モータ24の端子間(+端子と−端子)の短絡とにより実現される。
短絡回路30により電動モータ24の端子間が短絡されると、その電動モータ24に逆起電圧が発生し、そのモータ回転を停止させる大きなブレーキ力が作用する。このため、本実施例の制御システムによれば、モータ駆動回路26のスイッチングオフのみにより上記した電動モータ24の駆動停止を行う対比制御システムに比べて、電動モータ24の駆動によるステアリングホイールの運転姿勢への姿勢変更過程で車両エンジンの始動条件が成立した場合に、その後速やかにその電動モータ24の駆動停止を完了させることが可能となっている。
そして、電動モータ24の駆動停止が完了すると、その時点で始めて車両エンジンの始動が開始される。従って、本実施例によれば、電動モータ24の駆動によるステアリングホイールの運転姿勢への姿勢変更過程で車両エンジンの始動条件成立に伴ってその電動モータ24の駆動を停止させるときにも、その車両エンジンの始動条件成立から実際の車両エンジンの始動までの時間をできるだけ短くすることが可能となっており、電動モータ24の駆動停止に伴うその時間の長期化によって運転者に与える不快感や違和感の発生を回避させることが可能となっている。
更に、本実施例の制御システムにおいては、上記の如く電動モータ24の駆動によりステアリングホイールが退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更されている過程で車両エンジンの始動条件成立に伴ってその電動モータ24の駆動停止によりステアリングホイールの姿勢変更が中途で停止された後、その車両エンジンが確実に回転してその始動が完了したことが検知されると、姿勢制御ECU22への電源供給及び電動モータ24の駆動が再開されることで、ステアリングホイールが再び運転姿勢へ向けて姿勢変更される。従って、本実施例によれば、上記の如く車両エンジンの始動に伴ってステアリングホイールの姿勢変更が中途で停止されたときにも、その車両エンジンの始動完了後に速やかにかつ確実にそのステアリングホイールの姿勢を運転姿勢に移行させることが可能となっている。このため、ステアリングホイールの姿勢変更の中途停止が運転者による車両運転に大きな影響を及ぼすのを回避することが可能である。
尚、上記の第1実施例においては、姿勢制御ECU22が図4に示すルーチン中ステップ106の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「モータ駆動停止手段」が、姿勢制御ECU22がステップ108の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「駆動停止完了判別手段」が、電源ECU14がステップ110の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「エンジン始動手段」が、電源ECU14がステップ112の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「エンジン始動完了判別手段」が、姿勢制御ECU22がステップ114の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「モータ駆動再開手段」が、それぞれ実現されている。
上記した第1実施例では、車両乗車時における電動モータ24の駆動によるステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更(すなわち、オートリターン機能)が、車両電源がオフ状態にある状況でパワースイッチ16がオン操作されることによりその車両電源がアクセサリ状態又はイグニションオン状態へ遷移した際に開始され、その姿勢変更過程で車両エンジンの始動条件が成立した場合に一時停止され、その後、車両エンジンの始動が完了した場合に再開されるものとした。
これに対して、本発明の第2実施例においては、その車両乗車時におけるオートリターン機能が、車両電源がオフ状態からアクセサリ状態又はイグニションオン状態へ遷移しただけでは開始されず、その後、車両エンジンの始動が完了した際に開始されるものとした。以下、図5を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
図5は、本実施例の制御システムにおいて電源ECU14及び姿勢制御ECU22がオートリターン機能を実現すべく実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図5において、上記図4に示すルーチンと同一の処理を実行するステップについては、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
本実施例の制御システムにおいて、電源ECU14は、ステップ100でパワースイッチ16がオン操作されたと判別した場合は、車両電源のアクセサリ状態又はイグニションオン状態が要求されたとして、車載バッテリ28から少なくとも姿勢制御ECU22を含む適当な電気機器への電源供給を実現すべくアクセサリリレー又はイグニションリレーをオンする一方、上記した第1実施例の場合と異なり、通信バス34を通じた姿勢制御ECU22に対するオートリターン指令を行わない。この場合、姿勢制御ECU22は、車載バッテリ28から電源供給されるが、モータ駆動回路26をスイッチングさせることはなく、ステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させるような電動モータ24の駆動を行わない(ステップ200)。
電動ECU14は、上記ステップ100における肯定判定以後、車両エンジンの始動条件が成立するか否かを判別する(ステップ202)。尚、この車両エンジンの始動条件とは、上記の如く、電源がオフ状態、アクセサリ状態、及びイグニションオン状態の何れかの状態にありかつシフトポジションがパーキングレンジにある状況で、ブレーキ操作が行われながらパワースイッチ16がオン操作されることであればよい。
そして、車両エンジンの始動条件が成立すると判別した場合は、スタータリレーをオンしてエンジンスタータ18を駆動させる(ステップ204)。かかる処理が実行されると、アクセサリリレー又はイグニションリレーがオフされて姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給が停止されると共に、車載バッテリ28からエンジンスタータ18へ電源供給が行われて車両エンジンが始動されることとなる。
電源ECU14は、上記の如くステップ204において車両エンジンを始動させる処理を開始すると、その後は、回転数センサ20の出力に基づいて検出されるエンジン回転数NEに基づいて、車両エンジンが確実かつ適切に回転してそのエンジン始動が完了したか否かを判別する(ステップ206)。その結果、エンジン回転数NEが所定の回転数に達して車両エンジンが安定して回転することにより車両エンジンの始動が完了したと判別した場合は、姿勢制御ECU22を含む所定の電気機器への電源供給を実現すべくスタータリレーをオフしてイグニションリレーをオンすると共に、更に、オートリターン機能を実現すべく通信バス34を通じて姿勢制御ECU22に対して、ステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更を要求するオートリターン指令を行う。
姿勢制御ECU22は、車載バッテリ28から電源供給されている状況で、電源ECU14からステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更を要求するオートリターン指令を受けると、モータ駆動回路26を適当にスイッチングさせることで、ステアリングホイールが退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更されるように電動モータ24の駆動を開始させる(ステップ208)。かかる処理が開始されると、以後、ステアリングホイールは、電動モータ24の駆動により退避姿勢から徐々に運転姿勢へ向けて姿勢変更されることとなる。
姿勢制御ECU22は、電動モータ24の駆動によりステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させる際、その電動モータ24の退避姿勢からの回転パルスをカウントする。そして、そのカウントした回転パルスが所定値に達した場合、ステアリングホイールの姿勢が運転姿勢になったとして、モータ駆動回路26をスイッチングオフさせて電動モータ24を駆動停止させる。
このように本実施例の制御システムにおいては、車両電源がオフ状態からアクセサリ状態又はイグニションオン状態へ遷移され更にスタータオン状態へ遷移された車両乗車時、エンジンスタータ18の駆動により車両エンジンの始動が完了した場合に、始めてオートリターン機能を発揮させてステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させることができる。
一般的に、車両電源の切り替えのための運転者によるパワースイッチ16のオン操作は、運転者が乗車して運転席シートに着座した後に行われるので、車両電源のオフ状態からアクセサリ状態又はイグニションオン状態への遷移及び更にスタータオン状態への遷移は共に運転者の運転席シートへの着座後に実現される。従って、本実施例において、ステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更は運転者が運転席シートに着座した後になされ、その運転姿勢は車両運転中継続して維持される。
ステアリングホイールの運転姿勢は運転者の操舵操作に適したものであり、また、退避姿勢は運転席のシートとステアリングホイールとの間に形成される空間が大きくて運転者の乗降性に適したものである。従って、本実施例によれば、運転者による車両運転中はステアリングホイールを運転姿勢にして運転席に運転者の操舵操作に適した通常の大きさの空間を確保することが可能であると共に、運転者の乗降時はステアリングホイールを退避姿勢にして運転席に運転姿勢時よりも大きな空間を確保することが可能であるので、車両走行中における運転者の操舵姿勢を損なわせることなく、車両停車中における運転者の乗降性を向上させることが可能となっている。
また、本実施例の制御システムにおいては、車両乗車時における電動モータ24の駆動によるオートリターン機能の開始すなわちステアリングホイールの退避姿勢から運転姿勢への姿勢変更は、車両電源がスタータオン状態へ遷移した後、車両エンジンが確実に回転してその始動が完了したことが検知された場合に開始される。すなわち、スタータリレーがオンされる車両エンジンの始動中すなわちアクセサリリレー又はイグニションリレーがオフされる姿勢制御ECU22への電源供給の停止中に、電動モータ24が駆動することはなく、ステアリングホイールの姿勢変更が行われることはなく、そして、電動モータ24の駆動停止は車両エンジンの始動が完了するときまで維持される。
かかる構成においては、車両エンジンの始動中、電動モータ24が全く駆動されず車載バッテリ28からその電動モータ24への電源供給が抑制されかつ姿勢制御ECU22への電源供給が停止されるので、その車載バッテリ28からエンジンスタータ18へ多くの電力を供給することが可能であり、エンジンスタータ18の作動を安定した状態で行うことが可能である。
また、姿勢制御ECU22への電源供給の停止中、電動モータ24が惰性回転などで駆動することはないので、姿勢制御ECU22においてカウントされる電動モータ24の回転パルス飛びが発生することを確実に防止することが可能である。このため、本実施例の制御システムにおいても、ステアリングホイールの姿勢位置について姿勢制御ECU22の把握するものと実際のものとの間にずれが生ずるのを抑止することが可能となっており、これにより、ステアリングホイールの運転姿勢又は退避姿勢を常に所望のものとすることが可能であり、また、その姿勢位置の補正を不要とすることが可能である。
尚、上記の第2実施例においては、電源ECU14が図5に示すルーチン中ステップ206の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「エンジン始動完了判別手段」が、姿勢制御ECU22がステップ208の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「姿勢変更開始手段」が、それぞれ実現されている。
ところで、上記の第1及び第2実施例においては、車両の電源状態を切り替えるべく運転者により操作されるパワースイッチ16を、オンとオフとに状態変化するプッシュ式のスイッチとしたが、車両電源のオフ状態、アクセサリ状態、イグニションオン状態、及びスタータオン状態を順に切り替える一般的なダイアル式のスイッチに適用することとしてもよい。
また、上記の第1及び第2実施例においては、車両電源がオフ状態にある状況でアクセサリ状態又はイグニションオン状態を要求すべくパワースイッチ16がオン操作された際に、電動モータ24を駆動してステアリングホイールを退避姿勢から運転姿勢へ姿勢変更させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、外部から車両に乗り込んだ運転者が運転席のシートに着座したことが検知された際或いはその着座検知とパワースイッチ16のオン操作とが共に成立した際に上記の姿勢変更を開始させることとしてもよい。
また、上記の第1及び第2実施例においては、車両エンジンの始動が完了したか否かを、回転数センサ20の出力に基づいて検出されるエンジン回転数NEが所定の回転数に達して車両エンジンが安定して回転するか否かに基づいて判別することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両エンジンの駆動により発電されるオルタネータの作動有無に基づいて判別することとしてもよい。