以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明の光学用積層体は、基材上に、紫外線吸収性単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体の側鎖に重合性二重結合、重合性官能基および/または硬化性官能基を有するアクリル系重合体を硬化させてなる紫外線吸収層を備えた光学用積層体であって、該基材がラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体であることを特徴とする。
<面状熱可塑性樹脂成形体>
本発明の光学用積層体には、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体が基材として用いられている。
ラクトン環含有重合体は、好ましくは、式(1):
[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す;なお、該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい]
で示されるラクトン環構造を有する(以下、単に「ラクトン環構造(1)」ということがある。)。
ラクトン環含有重合体の全構造中におけるラクトン環構造(1)の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ラクトン環構造(1)の含有割合が5質量%未満であると、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不充分になることがある。逆に、ラクトン環構造(1)の含有割合が90質量%を超えると、成形加工性に乏しくなることがある。
ラクトン環含有重合体は、ラクトン環構造(1)以外の構造を有していてもよい。ラクトン環構造(1)以外の構造は、特に限定されるものではないが、ラクトン環含有重合体の製造方法として後に説明するような、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、および、式(5):
[式中、R20は水素原子またはメチル基を表し、Zは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R21基、または−C−O−R22基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R21およびR22は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す]
で示される単量体から選択される少なくとも1種の単量体を重合して得られる重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
ラクトン環含有重合体の全構造中におけるラクトン環構造(1)以外の構造の含有割合は、以下の通りである。(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られる重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。水酸基含有単量体を重合して得られる重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。上記式(5)で示される単量体を重合して得られる重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
ラクトン環含有重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは、まず、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得る重合工程と、次いで、得られた重合体(a)を加熱処理することにより、ラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を包含する。
重合工程においては、式(6):
[式中、R23およびR24は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す]
で示される単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る。
上記式(6)で示される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチル、メタリルアルコールなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好適であり、耐熱性を向上させる効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好適である。
重合工程に供する単量体成分中における上記式(6)で示される単量体の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。上記式(6)で示される単量体の含有割合が5質量%未満であると、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不充分になることがある。逆に、上記式(6)で示される単量体の含有割合が90質量%を超えると、重合時やラクトン環化時にゲル化が起こることや、得られた重合体の成形加工性が乏しくなることがある。
重合工程に供する単量体成分には、上記式(6)で示される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。このような単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、式(5):
[式中、R20は水素原子またはメチル基を表し、Zは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R21基、または、−C−O−R22基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R21およびR22は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す]
で示される単量体などが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記式(6)で示される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリル酸エステルのうち、耐熱性や透明性が優れる点で、メタクリル酸メチルが特に好適である。
上記式(6)で示される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。
水酸基含有単量体としては、上記式(6)で示される単量体以外の水酸基含有単量体であれば、特に限定されるものではないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられる。これらの水酸基含有単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記式(6)で示される単量体以外の水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの不飽和カルボン酸のうち、本発明の効果を充分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が特に好適である。
不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
上記式(5)で示される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、本発明の効果を充分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが特に好適である。
上記式(5)で示される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
重合温度や重合時間は、用いる単量体の種類や使用比率などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は、特に限定されものではなく、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられる。これらの重合溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、用いる重合溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃の重合溶剤が好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組合せや反応条件などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑制するために、重合反応混合物中における生成重合体の濃度が50質量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中における生成重合体の濃度が50質量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中における生成重合体の濃度は、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、重合反応混合物中における生成重合体の濃度があまりに低すぎると、生産性が低下するので、重合反応混合物中における生成重合体の濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中における生成重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより充分に抑制することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために、分子鎖中における水酸基とエステル基との割合を高めた場合であっても、ゲル化を充分に抑制することができる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
以上の重合工程を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれているが、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で、次のラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、次のラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)である。重合体(a)は、重量平均分子量が好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフを用いて、ポリスチレン換算により求めた値である。重合工程で得られた重合体(a)は、次のラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることにより、ラクトン環構造が重合体に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
重合体(a)にラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不充分であると、耐熱性が充分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在したりすることがある。
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、式(1):
[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す;なお、該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい]
で示されるラクトン環構造を有する。
重合体(a)を加熱処理する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用することができる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて、閉環触媒を用いて、加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を備えた加熱炉や反応装置、脱揮装置を備えた押出機などを用いて、加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸などの有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に開示されているように、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応の反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸などのアルキル(アリール)亜ホスホン酸(ただし、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)、および、これらのジエステルまたはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸などのジアルキル(アリール)ホスフィン酸、および、これらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などのアルキル(アリール)ホスホン酸、および、これらのジエステルまたはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸などのアルキル(アリール)亜ホスフィン酸、および、これらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニルなどのリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのモノ−、ジ−またはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィンなどのアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィンなどの酸化モノ−、ジ−またはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウムなどのハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの有機リン化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機リン化合物のうち、触媒活性が高く、低着色性である点で、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好適であり、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステルがより好適であり、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸モノエステルまたはジエステルが特に好適である。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、重合体(a)に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。触媒の使用量が0.001質量%未満であると、環化縮合反応の反応率が充分に向上しないことがある。逆に、触媒の使用量が5質量%を超えると、着色の原因となったり、重合体の架橋により溶融賦形が困難になったりすることがある。
触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、かつ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体などの揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要に応じて、減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不充分であると、生成した樹脂中における残存揮発分が多くなり、成形時の変質などによって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こったりする問題などが生じる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、用いる装置は、特に限定されるものではないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、このような脱揮装置と押出機とを直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置またはベント付き押出機を用いることがより好ましい。
熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃の範囲内である。反応処理温度が150℃未満であると、環化縮合反応が不充分になって残存揮発分が多くなることがある。逆に、反応処理温度が350℃を超えると、着色や分解が起こることがある。
熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、好ましくは931〜1.33hPa(700〜1mmHg)、より好ましくは798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲内である。反応処理時の圧力が931hPaを超えると、アルコールを含めた揮発分が残存し易いことがある。逆に、反応処理時の圧力が1.33hPa未満であると、工業的な実施が困難になることがある。
ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃の範囲内である。反応処理温度が150℃未満であると、環化縮合反応が不充分になって残存揮発分が多くなることがある。逆に、反応処理温度が350℃を超えると、着色や分解が起こることがある。
ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、好ましくは931〜1.33hPa(700〜1mmHg)、より好ましくは798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内である。反応処理時の圧力が931hPaを超えると、アルコールを含めた揮発分が残存し易いことがある。逆に、反応処理時の圧力が1.33hPa未満であると、工業的な実施が困難になることがある。
なお、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化することがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機などを用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機などの反応装置系に通してもよい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて、脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体(a)を、2軸押出機を用いて、250℃付近またはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解などが生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が悪くなることがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め環化縮合反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応の反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置を備えた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機などで、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
上述のように、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応の反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明においてラクトン環含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応の反応率もより高まり、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応の反応率の目安としては、実施例に示すダイナッミクTG測定における、150〜300℃間での質量減少率が、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は、特に限定されるものでないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置などが挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機を用いることもできる。オートクレーブや釜型反応器がより好ましい。しかし、ベント付き押出機などの反応器を用いるときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュー形状、スクリュー運転条件などを調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、および、方法(i)または(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体(a)と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま用いてもよいし、いったん溶剤を除去した後に、環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなど;が挙げられる。しかし、再添加できる溶剤は、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、例えば、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は、特に限定されるものではないが、重合体(a)の質量に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。方法(i)の加熱温度と加熱時間は、特に限定されるものではないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応の反応率が低下することがある。逆に、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こることがある。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法などが挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応の反応率が低下することがある。逆に、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)および(ii)は、条件によっては、加圧下で実施することになっても何ら問題はない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率は、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。質量減少率が2%を超えると、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率が充分高いレベルまで上がらず、得られるラクトン環含有重合体の物性が低下することがある。なお、環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤を、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよいし、必要に応じて、前記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加するなどのその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入しても構わない。
脱揮工程は、環化縮合反応と同時に終了することには限らず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフを用いて、ポリスチレン換算により求めた値である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率が好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応の反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、環化縮合反応の高い反応率によりラクトン環構造が重合体に充分に導入されるので、得られたラクトン環含有重合体が充分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環含有重合体は、15質量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が好ましくは6以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を越えると、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に用いることができないことがある。
ラクトン環含有重合体は、熱重量分析(TG)における5%質量減少温度が好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。熱重量分析(TG)における5%質量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが330℃未満であると、充分な熱安定性を発揮できないことがある。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、特に好ましくは140℃以上である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に準拠して、中点法で求めた値である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が好ましくは1,500ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下である。残存揮発分の総量が1,500ppmを超えると、成形時の変質などによって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となることがある。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に用いることができないことがある。
本発明の光学用積層体において、基材である面状熱可塑性樹脂成形体に含まれるラクトン環含有重合体の含有割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%である。ラクトン環含有重合体の含有割合が50質量%未満であると、本発明の効果を充分に発揮できないことがある。
本発明の光学用積層体において、基材である面状熱可塑性樹脂成形体は、ラクトン環含有重合体以外の重合体(以下「その他の重合体」ということがある。)を含んでいてもよい。
その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂などのゴム質重合体;などが挙げられる。
面状熱可塑性樹脂成形体に含まれるその他の重合体の含有割合は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜40質量%、さらに好ましくは0〜30質量%、特に好ましくは0〜20質量%である。
本発明の光学用積層体において、基材となる面状熱可塑性樹脂成形体は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤などの帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。
面状熱可塑性樹脂成形体に含まれるその他の添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%である。
基材である面状熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは、ラクトン環含有重合体と、必要に応じて、その他の重合体やその他の添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合し、面状に成形することにより得られる。面状の形態としては、フィルム状やシート状が好ましい。
本発明の光学用積層体において、基材である面状熱可塑性樹脂成形体は、高透明性を有するので、可視光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。
基材である面状熱可塑性樹脂成形体は、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した引張強度が10MPa以上、100MPa未満であることが好ましく、より好ましくは30MPa以上、100MPa未満である。引張強度が10MPa未満であると、充分な機械的強度を発現できなくなることがある。逆に、引張強度が100MPa以上であると、加工性が悪くなることがある。
基材である面状熱可塑性樹脂成形体は、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した伸び率が1%以上であることが好ましい。伸び率の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100%である。伸び率が1%未満であると、靭性に欠けることがある。
<硬化性アクリル系重合体>
本発明の光学用積層体において、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体に積層する硬化性アクリル系重合体について説明する。
硬化性アクリル系重合体は、好ましくは、式(2):
[式中、R4は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R5は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す]
で示される単量体、式(3):
[式中、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または、炭素数1〜10アルコキシ基を表し、Yは水素原子またはメチル基を表し、Aは、−(CH2CH2O)n−、−CH2CH(OH)−CH2O−、−(CH2)n−O−、−CH2CH(CH2OR15)−O−、−CH2CH(R15)−O−、または、−CH2(CH2)pCOO−B−O−を表し、R15は炭素数1〜10のアルキル基を表し、Bはメチレン基、エチレン基、または、−CH2CH(OH)CH2−を表し、nは1〜20の整数を表し、pは0または1を表す]
で示される単量体、および、式(4):
[式中、R16は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R17は水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R18は水素原子またはメチル基を表し、R19は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す]
で示される単量体よりなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収性単量体を含む単量体成分を重合してなる重合体の側鎖に重合性二重結合、重合性官能基および/または硬化性官能基を有する化合物を反応させることにより製造される。
硬化性アクリル系重合体では、上記式(2)、(3)または(4)で示される特定構造を有する紫外線吸収性単量体を共重合して樹脂骨格に導入することにより、添加型の紫外線吸収剤を用いる場合に比べて、紫外線吸収剤のブリードアウトがほとんど生じないので、紫外線吸収能の持続性を高めることができる。さらに、硬化性アクリル系重合体は、側鎖に重合性二重結合、重合性官能基および/または硬化性官能基を有するので、架橋性の重合体となり、高硬度で耐擦り傷性が優れる。さらにアクリル系重合体であることから、共重合されるモノマーの側鎖アルキル基の長さや芳香環の有無により物性バランスをとりやすい。
上記式(2)で示される紫外線吸収性単量体は、R4が水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基;R5が炭素数1〜6のアルキレン基;R6が水素原子またはメチル基;Xが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基;で構成されるベンゾトリアゾール類である。
上記式(2)において、R4で表される炭素数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族炭化水素基;などが挙げられる。
上記式(2)において、R5で表される炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基;イソプロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン、t−ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基などの分枝鎖状アルキレン基;などが挙げられる。
上記式(2)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Xで表される炭素数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式炭化水素基:シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族炭化水素基;などが挙げられる。Xで表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
上記式(2)で示される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記式(3)で示される紫外線吸収性単量体は、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または、炭素数1〜10のアルコキシ基;Yが水素原子またはメチル基;Aが−(CH2CH2O)n−、−CH2CH(OH)−CH2O−、−(CH2)n−O−、−CH2CH(CH2OR15)−O−、−CH2CH(R15)−O−、または、−CH2(CH2)pCOO−B−O−;R15が炭素数1〜10のアルキル基;Bがメチレン基、エチレン基、または、−CH2CH(OH)CH2−;nが1〜20の整数;pが0または1;で構成される2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン類である。
上記式(3)において、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13またはR14で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、1,1,3,3,−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基などの直鎖状または分枝状アルキル基;シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基;などが挙げられる。R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13またはR14で表される炭素数2〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘプテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、2,4−ジメチル−3−ペンテニル基、6−メチル−5−ヘプテニル基、2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基などが挙げられる。R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13またはR14で表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどが挙げられる。
上記式(3)において、R15で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13またはR14で表される炭素数1〜10のアルキル基として列挙した上記の置換基などが挙げられる。
上記式(3)で示される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクロイルオキシウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、式(7):
で示される単量体、式(8):
で示される単量体、式(9):
で示される単量体が好適である。
上記式(4)で示される紫外線吸収性単量体は、R16が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基;R17が水素結合を形成し得る元素を有する基;R18が水素原子またはメチル基;R19が水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基;で構成されるベンゾトリアゾール類である。
上記式(4)において、R16で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R16で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、1,1,3,3,−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基などの直鎖状または分枝状アルキル基;シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基;などが挙げられる。R16で表される炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
上記式(4)において、R17で表される、水素結合を形成し得る元素を有する基としては、例えば、−NH−、−CH2NH−、−OCH2CH(OH)CH2O−、−CH2CH2COOCH2CH(OH)CH2O−などが挙げられる。これらの基のうち、活性水素を有する窒素原子が含まれている点で、−NH−、−CH2NH−が好適であり、−CH2NH−が特に好適である。
上記式(4)において、R19で表される炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、R16で表される炭素数1〜8のアルキル基として列挙した上記の置換基に加えて、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの直鎖状または分枝状アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族炭化水素基;などが挙げられる。これらの置換基のうち、炭素数4〜12の直鎖状または分岐状アルキル基が好適であり、1,1,3,3−テトラメチルブチル基などの嵩高い分岐状アルキル基(またはこれらを有している基)が特に好適である。なお、置換基R19は、5位(2位のヒドロキシル基に対してパラ位)に結合する立体障害基であると、2位のヒドロキシル基の消費を阻害する効果が一層増大するので好ましい。
上記式(4)で示される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、これらの単量体のうち、嵩高い置換基R19が5位に結合している、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、および、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールが好適である。
上記式(2)または(4)で示されるベンゾトリアゾール系モノマーは、例えば、対応するベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤として市販されている)に(メタ)アクリル酸クロライドやN−メチロールアクリルアミドまたはそのアルキルエーテルを反応させるなどの方法で合成することができる。例えば、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは、2−[2’−ヒドロキシ−3’−アミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸クロライドを反応させて得ることができる。また、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−ベンゾトリアゾール(例えば、CYASORB UV−5411、CYTEC社製)にN−メチロールアクリルアミド(例えば、日東化学工業(株)製など)を反応させて得ることができる。
上記式(2)〜(4)で示される紫外線吸収性単量体のうち、紫外線吸収層を薄肉化でき、耐光性が高い点で、式(4)で示される紫外線吸収性単量体が特に好適である。
上記式(2)〜(4)で示される紫外線吸収性単量体は、紫外線安定性単量体と併用してもよい。紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。これらの紫外線安定性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記式(2)〜(4)で示される紫外線吸収性単量体以外の単量体としては、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体を用いることにより、UVA官能基が熱分解しにくく、塗膜の熱黄変が少ない、すなわち優れた耐熱性や耐湿熱性を発揮することができる。
炭素数4以上のアルキル基を有する単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、式(10):
[式中、R25は水素原子またはメチル基を表し、Wは置換基を有してもよいシクロアルキル基を表す]
で示される単量体が挙げられる。ここで、Zで表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
上記式(10)で示される単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
硬化性アクリル系重合体は、アクリル系単量体を主たる単量体とし、その他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体であってもよい。
アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸などのアクリル系不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルトリデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、プラクセルFM、ダイセル化学工業(株)製)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるエステルジオールの(メタ)アクリル酸モノエステルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−スルホン酸エチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートおよびその塩などのその他アクリル系単量体;などが挙げられる。これらのアクリル系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのアクリル系単量体のうち、基材との密着性が良好である点で、イミド(メタ)アクリレートが好適である。
その他の共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族不飽和単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルエーテル;などが挙げられる。これらの単量体は、必要に応じて、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
各単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、上記式(2)〜(4)で示される紫外線安定性単量体の合計使用量は、重合体組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.5〜55質量%、さらに好ましくは1〜50質量%である。合計使用量が0.1質量%未満であると、硬化性アクリル系重合体の耐候性が不充分となることがある。逆に、合計使用量が60質量%を超えると、電子線や紫外線を照射した際に硬化を阻害することがある。
上記式(10)で示される不飽和単量体の使用量は、重合体組成物の全量に対して、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%である。使用量が5質量%未満であると、硬化の際にクラックが生じやすくなるばかりでなく、耐候性が不充分となることがある。逆に、使用量が80質量%を超えると、硬化塗膜が脆くなることがある。
硬化性アクリル系重合体は、上記式(2)〜(4)で示される紫外線吸収性単量体から選択される少なくとも一種と官能基を有する単量体とを含む単量体成分を重合してなる重合体に、該官能基と反応する官能基、ならびに、重合性二重結合、重合性官能基および/または硬化性官能基を有する化合物を反応させて製造することができる。
重合性二重結合を導入するために用いる官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、酸アミド基(アミノカルボニル基)、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などが挙げられる。これらの官能基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、エチルイソシアネート(メタ)アクリレート、N−アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、フマル酸アミド、フタル酸アミド、(メタ)アクリレート、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
重合性官能基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、官能基がエポキシ基やオキサゾリン基の場合には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有する化合物;官能基がイソシアネート基の場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体;官能基がカルボキシル基の場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体;官能基が水酸基の場合には、エチルイソシアネート(メタ)アクリレートなどのイソシアネート基含有単量体、(メタ)アクリレート、イタコン酸などのカルボキシル基含有単量体;官能基が酸アミド基の場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基またはヒドロキシル基含有単量体;官能基がアミノ基の場合には、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体;などが挙げられる。
硬化性アクリル系重合体の二重結合当量は、好ましくは200〜3,000、より好ましくは300〜1,500、さらに好ましくは350〜1,000である。二重結合当量が200未満であると、経時的に硬化塗膜にクラックが生じやすくなり、耐候性不良となることがある。逆に、二重結合当量が3,000を超えると、硬度不足や耐擦り傷性が不充分になることがある。
また、単量体成分を重合させる際の重合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の重合方法を採用することができる。例えば、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合などの重合方法を採用することができる。溶液重合法を用いて単量体成分を重合させる場合に使用可能な溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、その他高沸点の芳香族系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;などが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、溶媒の使用量は、生成物の濃度などを考慮して適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
また、単量体成分を重合させる際には、従来公知の重合開始剤を用いればよい。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどが挙げられる。重合開始剤の使用量は、要求される重合生成物の特性値などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、単量体成分全量に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜20質量%である。
反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲内である。なお、反応時間は、用いる単量体成分の組成や重合開始剤の種類などに応じて、重合反応が完結するように適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
単量体成分を重合して得られる共重合体の分子量は、反応時間や反応温度、または、用いる単量体組成物の組成や重合開始剤の種類など、さらに必要であれば、連鎖移動剤などにより、調整することができる。このようにして得られる共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000〜400,000、より好ましくは3,000〜100,000の範囲内である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフを用いて、ポリスチレン換算により求めた値である。
硬化性アクリル系重合体には、必要に応じて、多官能性単量体を配合してもよい。多官能性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレートなどが挙げられる。
多官能性単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、硬化性アクリル系重合体と多官能性単量体との全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは15〜70質量%である。多官能性単量体の使用量が10質量%未満であると、硬化が不足することがある。また、80質量%を超えると、塗膜の紫外線吸収能が低下し、耐光性が低下する。
また、耐擦傷性および硬度を向上させるために、酸化物微粒子を添加してもよい。さらに、微粒子表面に重合性不飽和基を含む有機化合物を結合させる変性を行って用いることも可能である。微粒子表面に重合性二重結合を導入することにより、硬化性アクリル系重合体と架橋構造を形成し、塗膜の硬度が向上する。
酸化物微粒子としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびセリウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物微粒子である。微粒子を構成する酸化物としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウムなどを挙げることができる。これらの酸化物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの酸化物のうち、硬度が高い点で、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、酸化アンチモンが好適である。さらに、酸化物微粒子は、粉体状または溶剤分散ゾルであることが好ましい。溶剤分散ゾルである場合、他の成分との相溶性、分散性が良好である点で、分散媒は有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;などを挙げることができる。これらの有機溶剤のうち、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好適である。
酸化物微粒子の数平均粒子径は、好ましくは0.001〜2μm、より好ましくは0.001〜0.2μm、さらに好ましくは0.001〜0.1μmの範囲内である。数平均粒子径が0.001μm未満であると、微粒子が凝集しやすく、取り扱いにくいことがある。逆に、数平均粒子径が2μmを超えると、硬化物としたときの透明性が低下したり、被膜としたときの表面状態が悪化することがある。また、酸化物微粒子の分散性を改良するために、各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。ケイ素酸化物微粒子(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製の商品名:メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OLなどを挙げることができる。また、粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製の商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50;旭硝子(株)製の商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122;日本シリカ工業(株)製の商品名:E220A、E220;富士シリシア(株)製の商品名:SYLYSIA470;日本板硝子(株)製の商品名:SGフレ−ク;などが挙げられる。また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製の商品名:アルミナゾル−100、−200、−520;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製の商品名:セルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛などの粉末および溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製の商品名:ナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製の商品名:SN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製の商品名:ニードラール;などが挙げられる。酸化物粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状または不定形状であり、好ましくは球状である。酸化物微粒子の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法で測定した値)は、好ましくは10〜1,000m2/g、さらに好ましくは100〜500m2/gである。これら酸化物微粒子は、乾燥状態の粉末、または水もしくは有機溶剤に分散した状態で用いることができる。例えば、上記の酸化物微粒子の溶剤分散ゾルとして当該分野で知られている微粒子状の酸化物微粒子の分散液を直接用いることができる。特に、硬化物に優れた透明性を要求する用途においては、酸化物微粒子の溶剤分散ゾルの利用が好ましい。
微粒子表面に重合性二重結合を導入する方法としては、例えば、分子内に重合性二重結合とシラノール基とを有する化合物を別途加水分解操作に付した後、これと粉体の酸化物微粒子または酸化物微粒子の溶剤分散ゾルを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;分子内に重合性二重結合とシラノール基とを有する化合物の加水分解を酸化物微粒子の存在下で行う方法;などが挙げられる。これらの方法のうち、重合性二重結合とシラノール基とを有する化合物の加水分解を酸化物微粒子の存在下で行う方法が好適である。反応温度は、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは20〜100℃の範囲内である。また、処理時間は、通常、5分間〜24時間の範囲内である。
硬化性アクリル系重合体には、必要に応じて、光重合開始剤を配合してもよい。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−2−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。光重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の商品名:イルガキュア184、907、819などがある。これらの光重合開始剤の配合量は、本発明の効果を損なうことなく、その機能を発揮する量である限り、特に限定されるものではない。
硬化性アクリル系重合体には、必要に応じて、各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤などが挙げられる。これらの添加剤の使用量は、本発明の効果を阻害することなく、その機能を発揮する量である限り、特に限定されるものではない。
硬化性アクリル系重合体を含有する塗布液を基材に塗布する方法としては、例えば、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バーコート、静電塗装などの従来公知の塗工方法がいずれも採用可能である。硬化性アクリル系重合体の被膜を基材に形成させた後に成形加工することもできるし、硬化性アクリル系重合体を単独で成形加工することもできる。その後に、それら成形加工物に、例えば、紫外線や電子線を照射して硬化させることにより最終的に光学用積層体が得られる。
塗布液により形成される紫外線吸収層(紫外線吸収性塗膜)の厚さは、Lambert−Beerの法則により、重合体に導入されている紫外線吸収性基の量、すなわち重合時における紫外線吸収性単量体の使用量に依存する。従って、重合体中における紫外線吸収性基の量や、積層体に要求される耐候性や紫外線吸収性を勘案して、紫外線吸収層の厚さを調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは0.3μm以上、30μm未満、より好ましくは0.5μm以上、25μm未満、さらに好ましくは、0.8μm以上、20μm未満である。厚さが0.3μm未満であると、耐光性試験後における基材との密着性や紫外線吸収性が不充分になることがある。逆に、厚さが30μm以上であると、塗膜の乾燥性が向上しないことがある。
硬化性アクリル系重合体が紫外線照射により硬化されて用いられる場合、その硬化方法としては、用いる光重合開始剤、紫外線を発生させる光源の種類、光源と塗布面との距離などの条件に応じて異なるが、例えば、波長1,000〜8,000Åの紫外線を通常数秒間、長くとも数十秒間照射する方法などが挙げられる。
硬化性アクリル系重合体が電子線照射により硬化されて用いられる場合、その硬化方法としては、例えば、通常50〜1,000kev、好ましくは100〜300kevの加速電圧で、吸収線が1〜20Mrad程度となるように電子線を照射する方法などが挙げられる。電子線照射は、大気中で行ってもよいが、窒素などの不活性ガス中で行うことが好ましい。吸収線量については、被膜中に残存する重合性二重結合や重合性官能基が被膜物性に影響しない程度まで照射することができる。
紫外線照射後または電子線照射後、必要に応じて、加熱を行い、硬化を一層進行させてもよい。
ここで、硬化性アクリル系重合体が単独硬化できる場合は、上記したように、共重合体の側鎖にエポキシ基や(メタ)アクリロイル基のような重合性官能基を有する場合であり、これらは、必要に応じて、カチオン重合触媒やラジカル重合触媒を用いて、熱や紫外線・電子線照射により、カチオン重合またはラジカル重合を起こして硬化する。
また、硬化性アクリル系重合体が単独で硬化できない重合体である場合は、架橋剤を添加する必要がある。かかる架橋剤は、硬化性アクリル系重合体に存在する硬化性官能基、例えば、水酸基やアミノ基、カルボキシル基またはその無水物、エポキシ基、アミド基などと架橋硬化反応する官能基を1分子あたり2個以上含む化合物またはポリマーであって、硬化性アクリル系重合体に存在する官能基の種類に応じて選択して用いられる。例えば、硬化性アクリル系重合体に存在する官能基がカルボキシル基またはその無水物である場合には、ポリイソシアネート化合物またはその変性物、アミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂などの架橋剤が挙げられ、硬化性アクリル系重合体に存在する官能基がエポキシ基である場合には、アミンやカルボン酸、アミド、N−メチロールアルキルエーテルなどを含む化合物からなる架橋剤が挙げられ、硬化性アクリル系重合体に存在する官能基が水酸基やアミノ基である場合には、ポリイソシアネート化合物またはその変性物、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂などの架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤のうち、活性水素を有する基との組合せにおいて、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂が好適である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;「スミジュールN」(住化バイエルウレタン(株)製)などのビュレットポリイソシアネート化合物;「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれもバイエル社製)、「コロネートEH」(日本ポリウレタン工業(株)製)などとして知られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物;「スミジュールL」(住化バイエルウレタン(株)製)などのアダクトポリイソシアネート化合物;「コロネートL」および「コロネートL−55E」(いずれも日本ポリウレタン(株)製)などのアダクトポリイソシアネート化合物;「タケネートD110N」(三井武田ケミカル(株)製)などのキシリレンジイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物のイソシアネート基を、活性水素を有するマスク剤と反応させて不活性化した、いわゆるブロックイソシアネートも使用可能である。
アミノプラスト樹脂としては、例えば、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化シクロヘキシルベンゾグアナミン樹脂等およびこれらの水溶化物などが挙げられる。
また、硬化性アクリル系重合体と併用することのできる重合体としては、例えば、熱可塑性重合体、または、単独もしくは架橋剤により架橋硬化する熱硬化性重合体が挙げられる。本発明の光学用積層体の用途や要求特性に応じて、かかる重合体の種類や使用量を適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。かかる重合体としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性重合体;ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの単独硬化する熱硬化性重合体;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの硬化剤により硬化する熱硬化性重合体;が挙げられる。
特に、基材に対する紫外線吸収層の密着性を改善する点で、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂との併用が好ましい。これらの配合量は、硬化性アクリル系重合体100質量部に対して、1〜20質量部である。配合量が1質量部未満であると、基材に対する紫外線吸収層の密着性が向上しないことがある。逆に、配合量が20質量部を超えると、耐光性試験後に塗膜が黄変しやすくなるばかりでなく、表面硬度が低下することがある。
架橋剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。架橋剤の使用量は、架橋剤の種類などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、硬化性アクリル系重合体に存在する硬化性官能基と架橋剤中における官能基とのモル比率で、好ましくは0.8〜1.2の範囲内である。また、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を添加してもよい。かかる架橋触媒としては、例えば、塩類や無機物質、有機物質、酸物質、アルカリ物質などが挙げられる。
硬化性アクリル系重合体を加熱によって硬化させる場合、硬化温度は、架橋性官能基の種類や用いる架橋剤の種類に応じて異なるが、好ましくは室温〜250℃の範囲内である。
本発明の光学用積層体は、紫外線吸収層上に表面保護層を形成することにより、鉛筆硬度や耐擦傷性が飛躍的に改善される。
表面保護層を形成する樹脂は、特に限定されるものではないが、耐候性や耐擦傷性などの観点から、シリコーン系硬化性樹脂、有機系硬化性樹脂および有機ポリマー複合無機微粒子を含有する硬化性樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。
シリコーン系硬化性樹脂は、シロキサン結合を有する樹脂であり、例えば、トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランまたはそれらのアルキル化物の部分加水分解物、メチルトリアルコキシシランおよびフェニルトリアルコキシシランの混合物を加水分解したもの、コロイド状シリカ充填オルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物などが挙げられる。市販品としては、例えば、「Siコート2」(大八化学(株)製);「トスガード510」、「UVHC8553」、「UVHC8556」、「UVHC8558」(いずれも東芝シリコーン(株)製);「KP−851」、「KP−854」、「X−12−2206」、「X−12−2400」、「X−12−2450」(いずれも信越シリコーン(株)製);「ソルガードNP720」、「ソルガードNP730」、「ソルガードRF0831」(いずれも日本ダクロシャムロック(株)製)などが挙げられる。これらには、縮合反応時に発生するアルコールなどが含まれているが、さらに必要に応じて、任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解または分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールおよびそのエーテル類、エステル類などが挙げられる。なお、表面保護層には、平滑な表面状態を得るために、各種界面活性剤、例えば、シロキサン系、フッ化アルキル系などの界面活性剤などを添加してもよい。
また、有機樹脂系硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂などが挙げられる。多官能アクリル樹脂としては、例えば、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどが挙げられる。
本発明の光学用積層体を得るには、上記のように、硬化性アクリル系重合体を含有する塗工液を基材に塗布する方法以外に、紫外線吸収層が形成された転写フィルムを用いて、紫外線吸収層を基材に転写することができる。転写フィルムは、例えば、剥離層を有するPETフィルムの剥離層上に紫外線吸収層を設け、さらにその上に粘接着剤層を積層した構成を有する。なお、粘接着剤層は、場合によっては、積層しなくてもよい。この転写フィルムを基材の表面に密着させて加熱接着させた後、PETフィルムを剥離して紫外線吸収層を硬化させることにより、基材上に紫外線吸収層を設ける。紫外線吸収層と粘接着剤層との間には、必要に応じて、絵柄や文字などが印刷された装飾層が設けられていてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、特に断りのない限り、実施例および比較例において、「部」は質量部を、「%」は「質量%」を表す。
≪面状熱可塑性樹脂成形体の調製≫
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率および重合体中における特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中における未反応単量体の量をガスクロマトグラフ(GC14A、(株)島津製作所製)を用いて測定して求めた。
<ダイナミックTG>
重合体(または重合体溶液もしくはペレット)をいったんテトラヒドロフランまたはアセトンに溶解または希釈し、過剰のヘキサンまたはメタノールに投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:差動型示差熱天秤(Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG、(株)リガク製)
測定条件:試料量5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー100mL/min
方法:階段状等温制御法(60℃から500℃までの範囲内における質量減少速度値0.005%/s以下に制御)
<ラクトン環構造の含有割合>
まず、得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる質量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において質量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による質量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
すなわち、ラクトン環構造を有する重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の質量減少率の測定を行い、得られた実測値を実測質量減少率(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれるすべての水酸基がラクトン環の形成に関与するためにアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の質量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)を理論質量減少率(Y)とする。なお、理論質量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中における脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値を脱アルコール計算式:
1−(実測質量減少率(X)/理論質量減少率(Y))
に代入してその値を求め、百分率(%)で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(質量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中におけるラクトン環構造の含有割合を算出することができる。
一例として、後述の製造例で得られたペレットにおけるラクトン環構造の含有割合を計算する。この重合体の理論質量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、重合体中における2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率(質量比)は組成上20.0質量%であるから、(32/116)×20.0≒5.52質量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測質量減少率(X)は0.34質量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.34/5.52)≒0.938となるので、脱アルコール反応率は、93.8%である。そして、重合体では、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該重合体中における含有率(20.0質量%)に、脱アルコール反応率(93.8%=0.938)を乗じると、当該重合体中におけるラクトン環構造の含有割合は、18.8(20.0×0.938)質量%となる。
<重量平均分子量、数平均分子量>
重合体の重量平均分子量や数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム、東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。
<重合体の熱分析>
重合体の熱分析は、示差走査熱量計(DSC−8230、(株)リガク製)を用いて、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50mL/minの条件で行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に準拠して、中点法で求めた。
<面状熱可塑性樹脂成形体の製造例>
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤である5.0gのt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC−75、化薬アクゾ(株)製)を添加すると同時に、10.0gのt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜120℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(Phoslex A−18、堺化学工業(株)製)を加え、還流下、約90〜120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で、2.0kg/hの処理速度で導入し、この押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.34質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量は144,000であり、ガラス転移温度が131℃であった。
このラクトン環含有重合体のペレットを、20mmφのスクリューを有する二軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出し、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体として、厚さ約100μmの基材フィルムを作成した。
≪硬化性アクリル系重合体の調製≫
<合成例1>
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた容量1Lのフラスコに、酢酸ブチル200部を仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、90℃に加熱した。紫外線吸収性単量体である2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール9部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート120部、メチルメタアクリレート60部、ブチルメタアクリレート69部、ブチルアクリレート65部および重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)3部の混合物を4時間かけて滴下した後、さらに2時間加熱した。次いで、窒素と酸素の混合ガスを吹き込みながら110℃に昇温し、アクリル酸49部、エステル化触媒であるオクテン酸亜鉛1.0部、重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.01部の混合物を30分かけて滴下した後、さらに7時間反応させて、側鎖にアクリロイル基を有するアクリル系重合体の63%溶液を得た。得られた硬化性アクリル系重合体は、酸価が15mgKOH、数平均分子量が6,500であった。
<合成例2>
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた容量1Lのフラスコに、酢酸ブチル400部を仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら90℃に加熱した。紫外線吸収性単量体である2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール9部、シクロへキシルメタクリレート150部、グリシジルメタクリレート60部、ブチルメタクリレート15部、ブチルアクリレート66部および重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15部の混合物を4時間かけて滴下した後、さらに2時間加熱した。次いで、窒素と酸素の混合ガスを吹き込みながら110℃に昇温し、アクリル酸51部、エステル化触媒であるオクテン酸亜鉛0.51部、重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.05部の混合物を30分かけて滴下した後、さらに6時間反応させて、側鎖にアクリロイル基を有するアクリル系重合体の61%溶液を得た。得られた硬化性アクリル系重合体は、酸価が20mgKOH、数平均分子量が5,500であった。
<合成例3>
合成例2の紫外線吸収性単量体に代えて、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール9部を用いたこと以外は、合成例2と同様にして、重合を行い、側鎖にアクリロイル基を有するアクリル系重合体の60.5%溶液を得た。得られた硬化性アクリル系重合体は、酸価が14mgKOH、数平均分子量が5,000であった。
<合成例4>
紫外線吸収性単量体である2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量を9部とし、シクロヘキシルメタクリレート150部をさらに添加し、2−ヒドロキシエチルメタクリレート45部、メチルメタクリレート30部、ブチルアクリレート66部を使用し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15部を使用し、反応温度を120℃としたこと以外は、合成例1と同様にして、重合を行って、側鎖に水酸基を有するアクリル系重合体の60%溶液を得た。このアクリル系重合体の数平均分子量は5,500であった。
<合成例5>
合成例4の紫外線吸収性単量体を2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(添加量は9部)を使用した以外は、合成例4と同様にして重合を行って、側鎖に水酸基を有するアクリル系重合体の59.9%溶液を得た。このアクリル系重合体の数平均分子量は6,000であった。
<合成例6>
紫外線吸収性単量体である2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール150部、シクロヘキシルメタクリレート30部、メチルメタクリレート100部、2−ヒドロキシメタクリレート20部を使用し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15部を使用し、反応温度を120℃としたこと以外は、合成例1と同様にして、重合を行って、側鎖に水酸基を有するアクリル系重合体の60%溶液を得た。このアクリル系重合体の数平均分子量は4500であった。
≪塗工液の調製≫
<塗工液1>
合成例1で得られた硬化性アクリル系重合体100部に、光重合開始剤であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1部と、レベリング剤(BYK300、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.1部を添加し、よく攪拌し、トルエンにより所定の粘度になるように調整して、塗工液1を得た。
<塗工液2>
合成例1で得られた硬化性アクリル系重合体を合成例2で得られた硬化性アクリル系重合体に変更したこと以外は、塗工液1の調製と同様にして、塗工液2を得た。
<塗工液3>
合成例1で得られた硬化性アクリル系重合体を合成例3で得られた硬化性アクリル系重合体に変更したこと以外は、塗工液1の調製と同様にして、塗工液3を得た。
<塗工液4>
合成例4で得られた硬化性アクリル系重合体100部に、イソシアネート(スミジュールN3500、住化バイエルウレタン(株)製)14部と、レベリング剤(BYK300、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.1部を添加し、よく攪拌し、トルエンにより所定の粘度となるよう調整して、塗工液4を得た。
<塗工液5>
合成例5で得られた硬化性アクリル系重合体100部を用いたこと以外は、塗工液4の調製と同様にして、イソシアネート、レベリング剤を添加し、よく攪拌し、トルエンにより所定の粘度になるように調整して、塗工液5を得た。
<塗工液6>
塗工液4に飽和ポリエステル樹脂(バイロンGK880、東洋紡績(株)製)6部を添加したこと以外は、塗工液4の調製と同様にして、イソシアネート、レベリング剤を添加し、よく攪拌し、トルエンにより所定の粘度になるように調整して、塗工液6を得た。
<塗工液7>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)28部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール3.4部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2.4部、レベリング剤(BYK300、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.05部を混合し、トルエンにより所定の粘度になるように調整して、塗工液7を得た。
<塗工液8>
合成例6で得られた硬化性アクリル系重合体100部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)140部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2部、レべリング剤(BYK300、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.05部を混合し、トルエンにより所定の粘度となるように調整して、塗工液8を得た。
≪実施例1≫
基材フィルム上に、塗工液1を乾燥膜厚が10μmになるように、バーコーターで塗布し、100℃で1分熱風乾燥させた。次いで、紫外線照射装置(メタルハライドランプ、120w/cm、照射距離20cm、コンベア速度5m/min)を用いて、試験板に紫外線を2回照射し、塗膜を形成させて、光学用積層体を得た。
≪実施例2≫
塗工液1を塗工液2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光学用積層体を得た。
≪実施例3≫
塗工液1を塗工液3に変更し、乾燥膜厚を5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、光学用積層体を得た。
≪実施例4≫
基材フィルム上に、塗工液4を乾燥膜厚が10μmになるように、バーコーターで塗布し、80℃で60分間乾燥させて、光学用積層体を得た。
≪実施例5≫
基材フィルム上に、塗工液5を乾燥膜厚が5μmになるように、バーコーターで塗布し、80℃で60分間熱風乾燥させて、光学用積層体を得た。
≪実施例6≫
基材フィルム上に、塗工液6を乾燥膜厚が5μmになるように、バーコーターで塗布し、80℃で60分間熱風乾燥させて、光学用積層体を得た。
≪実施例7≫
塗工液1を塗工液8に変更し、乾燥膜厚を20μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、光学用積層体を得た。
≪比較例1≫
基材フィルム上に、塗工液7を乾燥膜厚が20μmとなるように、アプリケーターを用いて塗布し、80℃で30分間熱風乾燥させ、塗膜を形成させて、光学用積層体を得た。
実施例1〜7および比較例1で得られた光学用積層体を以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
<鉛筆硬度>
JIS K 5600に準拠して、斜め45度に固定した鉛筆の真上から荷重をかけて引っ掻き試験を行い、傷が付かない鉛筆硬度を評価した。評価は耐光性試験の前後で行った。
<耐光性>
光学用積層体の紫外線吸収性塗膜面を、紫外線オートフェードメーター(FAL−AU−B、スガ試験機(株)製)の光源に向けて、80℃の雰囲気下で、960時間、1,500時間、1,980時間放置した。試験前後の300nmでの光線透過率を分光光度計(UV−3100、(株)島津製作所製)で測定し、下記の計算式で300nmにおける紫外線カット率の保持率を求め、下記の基準で評価した。
300nmにおける紫外線カット率の保持率(%)={[100−試験後の300nmの光線透過率(%)]/[100−試験前の300nmの光線透過率(%)]}×100
〇(良好):95%以上;
△(やや良好):90%以上、95%未満;
×(不良):90%未満。
<密着性>
JIS K 5400に準拠して、光学用積層体の紫外線吸収性塗膜面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作成した。その表面にセロハンテープを密着させた後、一気に剥離した時に剥離せずに残存したマス目個数を表示した。評価は耐光性試験および耐湿性試験の後に行った。
○:碁盤目が全く剥離しない;
△:碁盤目の30%未満が剥離した;
×:碁盤目の30%以上が剥離した。
<耐湿性>
光学用積層体を80℃、90%RHの雰囲気下に500時間、1,000時間放置した後、密着性試験を行い、評価した。
表1から明らかなように、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体に、紫外線吸収性単量体を含む単量体成分を重合してなる重合体の側鎖に重合性二重結合、重合性官能基および/または硬化性官能基を有するアクリル系重合体を積層させた実施例1〜7の光学用積層体は、耐光試験前の鉛筆硬度が良好またはやや良好であり、また、約2,000時間に及ぶ耐光試験でも、耐光性、密着性および鉛筆硬度がほとんど変化せず、さらに1,000時間に及ぶ耐湿性試験でも、耐湿性が良好またはやや良好であった。
これに対し、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体に、紫外線吸収性単量体を含む単量体成分を重合してなる重合体の側鎖に重合性二重結合、重合性官能基、硬化性官能基などを有しないアクリル系重合体を積層させた比較例1の光学用積層体は、耐光性試験前の鉛筆硬度が良好であり、また、紫外線吸収性単量体を共重合しているので、約2,000時間に及ぶ耐光性試験の初期段階では、耐光性が良好であったが、耐光性試験を続行するにつれて、耐光性、密着性および鉛筆硬度が劣化し、さらに、1,000時間に及ぶ耐湿性試験でも、耐湿性が劣っていた。