JP5043215B1 - チョウザメ類脊索から簡便な抽出方法で得られるii型コラーゲン - Google Patents

チョウザメ類脊索から簡便な抽出方法で得られるii型コラーゲン Download PDF

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Abstract

【課題】チョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法、及びチョウザメ類脊索から抽出したII型コラーゲンの提供。
【解決手段】チョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法であって、
チョウザメ類脊椎から脊索を採取する工程、
採取した脊索を細断し、II型コラーゲンを抽出する工程、及び
コラーゲンを回収する工程、とを含む方法。
【選択図】なし

Description

本発明はチョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法に関し、さらに、チョウザメ脊索から抽出されたチョウザメ脊索由来のII型コラーゲンに関する。
II型コラーゲンは哺乳類、鳥類、魚類の軟骨組織や脊索に存在する3本のα1鎖で構成されるコラーゲンであり、種々の用途がある。例えば、軟骨再生等の足場材料として注目され、関節疾患等の治療等に用い得る医療材料としての研究用試薬としての需要も高い。さらに、健康食品等としての用途も期待できる。
しかしながら、II型コラーゲンは軟骨、脊索等に含まれているため、抽出が困難であり、現在市場にあるのは鶏軟骨由来のII型コラーゲンのみである。
近年、人獣共通感染症の問題より、I型コラーゲンについては、哺乳類や鳥類由来のI型コラーゲンから、魚類由来のI型コラーゲンに置き換わりつつある。
II型コラーゲンについても、魚類から抽出したという報告はある(非特許文献1〜5を参照)。
従来の方法においては、魚類からII型コラーゲンを抽出するために以下の一連の工程からなる方法で行っていた。(1)魚から吻部軟骨や脊椎を回収し、(2)組織を細片化し、あるいはすりつぶし、(3)プロテオグリカンや非コラーゲン性タンパク質を抽出して分解し、(4)コラーゲンを抽出し(酢酸、塩、酵素などを使用)、(5)コラーゲンを回収する。
しかしながら、II型コラーゲンについては、上記のように、前処理が複雑であり、抽出が困難であることから、現時点では大量に効率的に魚類からII型コラーゲンを抽出することは困難である。この結果、未だに魚類由来のII型コラーゲンは市場に出ていない。
Miller and Mathews, Biochem Biophys Res Comm 60:424-430, 1974 Sheren et al., CBP 85B:5-14, 1986 Kimura and Kamimura, CBP73B:335-339, 1982 Rama and Chandrakasan, Connect Tissue Res 12:111-118, 1984 Kittiphattanabawon et al., LWT-Food Science and Technology, 43:792-800, 2010
本発明は、チョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法、及びチョウザメ類脊索から抽出したII型コラーゲンの提供を目的とする。
上記のように、広く魚にII型コラーゲンが含まれることは知られていたが、その抽出方法は複雑な前処理を必要とする等、効率的に工業的スケールでII型コラーゲンを製造するのは困難であった。
現在、キャビアやフィレを食用として採るためチョウザメの養殖が盛んに行われている。本発明者は、キャビアとフィレの供給源として以外のチョウザメの有効利用の可能性を探るため、チョウザメをII型コラーゲンの供給源として用い、チョウザメからII型コラーゲンを大量に効率的に抽出する方法について鋭意検討を行った。本発明者は、チョウザメの各部位のコラーゲンの分析、特性評価を行なった。その結果、チョウザメ脊索がII型コラーゲンの供給源として有望であることを見出した。一般に脊索は魚類の背骨の内部に存在する。チョウザメにおいては、背骨に節が無く、脊索の形状が棒状であるという独特の形状を有しており、脊索を容易に回収することができた。さらに、従来の魚類からII型コラーゲンを抽出する方法のように、複雑な前処理を行うことなく、脊索から直接効率的に高純度のII型コラーゲンを抽出することができた。すなわち、(1)チョウザメ脊椎より脊索を回収し、(2)回収した脊索を裁断し、コラーゲンを抽出し(酢酸、塩、酵素などを使用)、(3)コラーゲンを回収することにより高純度のII型コラーゲンを効率的に得ることができた。
また、得られたチョウザメ脊索由来のII型コラーゲンの特性分析を行ったところ、他の魚種やチョウザメの他の組織由来のII型コラーゲンとは異なる特性を有していた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] チョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法であって、
チョウザメ類脊椎から脊索を採取する工程、
採取した脊索を細断し、II型コラーゲンを抽出する工程、及び
コラーゲンを回収する工程、とを含む方法。
[2] さらに、脊索から脊索鞘を採取し、該脊索鞘からII型コラーゲンを抽出する、[1]の方法。
[3] 採取した脊索又は脊索鞘に対して脱灰、脱脂処理及び塩酸グアニジンを用いた可溶化処理を行わない、[1]又は[2]の方法。
[4] チョウザメ類がベステル又はアムールチョウザメである、[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5] II型コラーゲンを抽出する工程が、
(i) 細断したチョウザメ類の脊索又は脊索鞘を洗浄する工程、
(ii) 用いた脊索又は脊索鞘の重量に対して0.1〜1%(w/w)のペプシンを用いて処理する工程、
(iii) 遠心分離し、上清を回収し、用いた脊索又は脊索鞘の重量に対して0.01〜0.1%(w/w)のペプシンを用いて処理する工程、
(iv) ろ過して、不純物を除去する工程、
(v) 塩析によりII型コラーゲンの沈殿物を得る工程、並びに
(vi) 透析工程、
を含む[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6] [1]〜[5]のいずれかの方法で抽出した、円偏光二色性(CD)スペクトロメーターにより測定した変性温度が33℃以上であり、アミノ酸1000残基中のイミノ酸残基数が200以上であり、リジンの水酸化率が57%以上である、チョウザメ脊索由来のII型コラーゲン。
チョウザメ類の脊索を原料として、II型コラーゲンを抽出する場合、チョウザメ類の脊索はその形態的特徴から、複雑な前処理を行うことなく直接II型コラーゲンを抽出することができる。従って、チョウザメ類の脊索からは効率的に高純度のII型コラーゲンを低コストで得ることができる。チョウザメ脊索から得られたII型コラーゲンは、哺乳類由来のII型コラーゲンのようにBSE(牛海綿状脳症)の原因プリオンの混入や鳥類由来のII型コラーゲンのように鳥インフルエンザウイルスの混入の心配がない。さらに、チョウザメ脊索由来のII型コラーゲンは、他組織由来のコラーゲンに対して、変性温度が高いという利点を有する。
II型コラーゲンを抽出する方法の概要を示す図である。 チョウザメ類の鱗、皮膚、筋肉、吻部軟骨及び脊椎の前処理方法を示す図である。 各魚種の各組織から抽出したII型コラーゲンの抽出効率と1個体当たりの回収量を示す図である。 各魚種の各組織から抽出したII型コラーゲンのSDS-PAGE像を示す結果である。 チョウザメ(ベステル)の各組織から抽出したII型コラーゲンのアミノ酸組成を示す図である。 チョウザメ(ベステル)の各組織から抽出したII型コラーゲンのLys及びProの水酸化率を示す図である。 各魚種の各組織から抽出したII型コラーゲンの変性温度を示す図である。 各魚種の各組織から抽出したII型コラーゲンの変性温度とイミノ酸含有量の関係を示す図である。 アムールチョウザメから抽出したII型コラーゲンの抽出効率を示す図である。 アムールチョウザメから抽出したII型コラーゲンの純度検定の結果を示す図である。 アムールチョウザメから抽出したII型コラーゲンのアミノ酸分析の結果を示す図である。 アムールチョウザメから抽出したII型コラーゲンの水酸化率分析の結果を示す図である。 アムールチョウザメから抽出したII型コラーゲンの変性温度測定の結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、チョウザメ類をII型コラーゲンの供給源として用いる。チョウザメ類は、硬骨魚類チョウザメ目(Acipenseriformes)に属する魚であり、チョウザメ科(Acipenseridae)、ヘラチョウザメ科(Polyodontidae)に属する魚が含まれる。具体的には、チョウザメ(Acipenser medirostris)、コチョウザメ(Acipensor ruthenus)、アムールチョウザメ(Acipenser schrencki)、シロチョウザメ(Acipenser transmontanus)、シベリアチョウザメ(Acipenser baeri)、ロシアチョウザメ(Acepencer gueldenstadti)、チュウゴクチョウザメ(Acipenser sinensis)、長江チョウザメ(Acipencer dabryanus)、シップチョウザメ(Acipenser nudiventris)、ホシチョウザメ(Acipenser stellatus)、オオチョウザメ(Huso huso)等やその他Acipenser brevirostrum、Acipenser fulvescens、Acipenser gueldenstaedti、Acipenser mediradoi、Acipenser naccarii、Acipenser oxyrinchus、Acipenser persicus、Acipenser sturio、Huso dauricus、Pseudoscaphirhynchus fedtschenkoi、Pseudoscaphirhynchus hermannii、Pseudoscaphirhynchus kaufmanni、Scaphirhynchus albus、Scaphirhynchus platorynchus、Scaphirhynchus suttkusi等が挙げられる。また、これらの種の交配種を用いることができる。交配種としては、例えばオオチョウザメ(ベルーガチョウザメ)雌とコチョウザメ雄の交配種であるベステルが挙げられる。チョウザメは野生のものを捕獲して用いることもできるが、チョウザメ類は卵やフィレを食用として利用するために盛んに養殖されており、卵やフィレを採取した養殖魚体の残りを利用するのが好ましい。
チョウザメの鱗、軟骨、脊椎等の組織にはコラーゲンが含まれているがほとんどの組織に含まれているのはI型コラーゲンである。また、脊椎や吻部軟骨にはII型コラーゲンが含まれているが、脊椎にはII型コラーゲンだけではなくI型コラーゲンも含まれている。また、多くの組織にはカルシウムや脂肪等が多く含まれるので、これらの組織からコラーゲンを抽出する際には、脱灰、脱脂のための複雑な前処理が必須になる。例えば、鱗を用いる場合、カルシウム塩が大量に含まれているので、脱灰のための前処理が必要であり、皮膚、筋肉、消化管、浮袋、軟骨、脊椎等を用いる場合、脂肪が大量に含まれるので、脱脂のための処理が必要である。ここで、脱灰はEDTA、クエン酸ナトリウムなどによる前処理やアルカリ溶液処理により行われ、脱脂はエタノールなどのアルコールやアセトン等の有機溶剤による前処理やリパーゼ等による前処理により行われていた。さらにII型コラーゲンが含まれ得る軟骨や脊椎を用いる場合、脱脂処理及びグアニジン塩酸を用いたタンパク質の可溶化前処理により、組織に含まれる脂肪やプロテオグリカン、非コラーゲン性タンパク質を抽出することが必要となる。
一方、チョウザメの脊索を用いる場合は、上記の脱灰、脱脂、可溶化等の複雑な前処理を必要としない。特に塩酸グアニジンを用いたタンパク質変性処理(可溶化処理)を行う必要がない。このため、前処理による回収率の低下を防止することができる。さらに、前処理を必要としないので、低コストで高い効率でII型コラーゲンを抽出することができる。また、チョウザメ脊索にはII型コラーゲンのみが含まれるので、I型コラーゲンと分離する必要もない。従って、本発明においては、II型コラーゲンの供給源として、チョウザメ類の脊索を用いる。
すなわち、本発明はチョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法であって、チョウザメ類脊椎から脊索を採取する工程、採取した脊索を細断し、II型コラーゲンを抽出する工程、及びコラーゲンを回収する工程、とを含み、脱灰、脱脂、プロテオグリカン、非コラーゲン性タンパク質の抽出等の前処理工程を必要としない方法である。
チョウザメ類の脊索は、チョウザメの脊椎(背骨)より採取する。チョウザメ類以外の他の脊椎動物の脊椎が多数の脊椎骨が繋がって形成され、節があるのに対し、チョウザメ類の脊椎は背骨がつながらずに分離した状態で存在するため、節が形成されず、脊索は棒状である。また、通常、脊椎動物では、脊索はその周囲にできる骨や軟骨に取り囲まれて、脊柱内に痕跡として残っているのに過ぎないが、チョウザメ類においては、脊索が脊椎内に一生残っている。従って、チョウザメにおいては、脊椎を脊索ごと十センチメートル程度に分断したのち、縦に二分し、脊索を手ではがしとることで、脊椎中から脊索を容易に取り出すことができ、脊索をII型コラーゲンの供給源として好適に用いることができる。チョウザメ類の脊索は、外側の脊索鞘と内側の脊索髄からなる。II型コラーゲンは主に脊索鞘に含まれる。本発明において、チョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する場合、脊索から脊索鞘を採取して、脊索鞘からII型コラーゲンを抽出してもよいし、脊索鞘と脊索髄を含む脊索をそのまま用いてもよい。脊索から脊索鞘を採取して脊索鞘からII型コラーゲンを抽出した場合、用いる材料重量当たりのII型コラーゲン含量が高くなり、抽出効率もよくなる。また、脊索から脊索鞘を採取し、脊索鞘からII型コラーゲンを抽出した場合、II型コラーゲンを回収した後の廃液中に含まれる不要な有機物含量を減らすことができる。本発明においては、脊索から脊索鞘を採取し、脊索からII型コラーゲンを抽出するという場合、脊索鞘からII型コラーゲンを抽出することも含む。
採取した脊索を適当な大きさの小片に細断する。細断は例えば1cm×1cm程度の大きさになるように行えばよい。細断は例えば工業用カッターやはさみを用いて行うことができる。この際、上記の大きさに細断すればよく、磨砕処理(すりつぶし)の必要はない。
細断した脊索は水で数時間から数日、好ましくは約1日間洗浄する。洗浄は、例えば、細断した脊索を脱イオン水に浸して撹拌装置を用いて撹拌し、その間に数回脱イオン水を交換することにより行う。洗浄はII型コラーゲンの変性を避けるために、低温で、例えば2〜15℃、好ましくは2〜8℃の冷蔵条件下で行うのが好ましい。
次いで、洗浄した脊索細断物を酸性pH条件下でプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)で処理し、脊索組織を分解し、II型コラーゲンが抽出され易くする。この際、プロテアーゼとして、酸性プロテアーゼである、ペプシン、キモトリプシン等を用いる。pHは塩酸等の酸を用いてpH1〜6、好ましくはpH1〜2程度に調整すればよい。例えば、脊索細断物を細断物重量に対して3〜10倍、好ましくは4〜8倍、さらに好ましくは6倍量の塩酸溶液に浸し、そこにペプシンを組織重量の0.1〜5%(w/w)、好ましくは0.1〜1%(w/w)、さらに好ましくは0.5%(w/w)の濃度で溶解し、低温下で、例えば、2〜15℃で数時間から数日、例えば1日間撹拌することによりプロテアーゼ処理(ペプシン消化)を行う。プロテアーゼ処理によりII型コラーゲンが溶液中に溶解し抽出される。その後、溶液を遠心分離し、上清を回収する。通常は抽出したコラーゲンを10M NaOH溶液等の強アルカリ溶液を用いてアルカリ処理を行うが、チョウザメの脊索を用いてII型コラーゲンを抽出する場合、抽出後のアルカリ処理は不要である。
遠心分離は低温下、例えば、2〜15℃で、1000〜5000g、好ましくは1000〜3000gで5〜60分間、好ましくは10〜30分間行えばよい。回収した上清中にはII型コラーゲンが含まれており、次いで再度プロテアーゼ処理を行うことにより、II型コラーゲンをアテロ化する。アテロ化はコラーゲンの螺旋構造の末端に存在するテロペプタイドを除去することをいう。回収した上清は酸性であるので、プロテアーゼとしては、ペプシン、キモトリプシン等の酸性プロテアーゼを用いることが好ましい。この際、プロテアーゼは用いた脊索の重量に対して0.01%〜0.5%(w/w)、好ましくは0.01%〜0.1%(w/w)程度の濃度で用いればよい。アテロ化はII型コラーゲンの変性温度以下の10℃〜30℃、好ましくは15℃〜25℃で数時間から数日、例えば1日間静置することにより行う。次いで、再度遠心分離を行い、不純物を除去し、上清を回収する。この際の遠心分離は低温下、例えば、2〜15℃で、5000〜50000g、好ましくは10000〜30000gで5〜60分間、好ましくは5〜30分間行えばよい。
回収した上清をろ過することにより、不純物をさらに除去する。ろ過は、メンブレンフィルターを用いることができる。メンブレンフィルターとしては、セルロースアセテートタイプのもの、セルロース混合エステルタイプのもの、ポリカーボネートタイプのもの等があるが、セルロースアセテートタイプのものが好ましい。メンブレンフィルターは0.2μm〜5μmの孔径のものを適宜組合せ、孔径が大きいものから孔径が小さいものの順に用いてろ過すればよい。例えば、3.0μm、0.8μm、0.45μmの孔径を有するフィルターを順に使用すればよい。
ろ過後、ろ液から塩析によりII型コラーゲンを沈殿させる。塩析は塩化ナトリウムや硫酸アンモニウム等を用いた公知の方法で行うことででき、例えば、上記ろ液に塩化ナトリウムを1Mになるように添加し、低温(2〜15℃)で一晩静置すればよい、その後溶液を遠心分離し、上清を除去する。遠心分離は、低温下、例えば、2〜15℃で、1000〜5000g、好ましくは1000〜3000gで数十分〜数時間、好ましくは60〜180分間、好ましくは60〜120分間行えばよい。沈殿はpH1〜4、好ましくはpH2の塩酸に溶解させればよい。塩析、遠心分離、沈殿の溶解を数回、好ましくは3回繰り返す。
さらに、その後溶解した沈殿を蒸留水に対して透析を行い、濃縮することによりII型コラーゲンを高純度で得ることができる。得られたII型コラーゲンの純度は、HPLCやSDS-PAGEにより確認することができる。II型コラーゲン調製物は凍結乾燥により保存することができる。
本発明のII型コラーゲン抽出法の概要を図1に示す。
上記方法で得られるII型コラーゲンの純度は、SDS-PAGE像のバンドの濃さから推定した場合の純度として、95%以上、好ましくは99%以上である。
また、原料として、チョウザメ類の脊索からのII型コラーゲンの抽出効率は0.2〜5%、好ましくは0.3〜3%程度である。平均体重2kgのチョウザメ1個体の脊索から100〜500mg程度のII型コラーゲンを回収することができる。
さらに、チョウザメ類の脊索から抽出されたII型コラーゲンは以下の特性を有する。
アミノ酸組成
チョウザメ類の脊索から得られたII型コラーゲンは、チョウザメ類の他の組織から得られたI型コラーゲンに対して、Ser(セリン)含量、Ala(アラニン)含量、Lys(リジン)含量が低く、Glx(Gln(グルタミン)とGlu(グルタミン酸))含量、Leu(ロイシン)含量、HyLys(水酸化リジン)、Pro(プロリン)含量及びイミノ酸(HyPro(水酸化プロリン)とPro(プロリン))含量が高いという特徴を有する。
各アミノ酸の含量は以下のとおりである。各アミノ酸の含量はアミノ酸1000残基中のアミノ酸残基数で示す。
Ser: 35以下、好ましくは33以下、あるいは、好ましくは30〜33、さらに好ましくは31〜32
Ala: 100以下、あるいは90〜100
Lys: 20以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは17以下、あるいは、好ましくは13〜18、さらに好ましくは13〜17
Glx(Gln+Glu): 80以上、好ましくは85以上、あるいは、80〜100、好ましくは85〜100
Leu: 25以上、好ましくは27以上、あるいは、25〜35、好ましくは27〜33
HyLys: 20以上、あるいは20〜30、好ましくは20〜27
Pro: 115以上、好ましくは120以上、あるいは、115〜145、好ましくは120〜140
イミノ酸(Hypro+Pro): 200以上、好ましくは210以上、あるいは、200〜250、好ましくは210〜250
リジンの水酸化率
チョウザメ類の脊索から得られたII型コラーゲンは、チョウザメ類の他の組織から得られたI型コラーゲンに対して、Lys(リジン)の水酸化率(HyLys残基数のHyLys残基数とLys残基数の合計に対する比率)が高く、55%以上、好ましくは56%以上、さらに好ましくは57%以上、さらに好ましくは58%以上、特に好ましくは60%以上である。
変性温度
チョウザメ類の脊索から得られたII型コラーゲンは、他魚種から得られたI型コラーゲン及びチョウザメ類の他の組織から得られたI型コラーゲンに対して、変性温度が高く、30℃以上、好ましくは31℃以上、さらに好ましくは32℃以上、特に好ましくは33℃以上である。
ここで、変性温度とは、コラーゲン分子の3重らせん構造が壊れ、コラーゲン分子がゼラチンへと変性する温度であり、円偏光二色性(CD)スペクトロメーターにより測定した値である。
本発明の方法で抽出されたチョウザメ類の脊索由来のII型コラーゲンは、医薬や食品や医用材料として用いることができる。本発明は、チョウザメ類の脊索由来のII型コラーゲンを含む医薬組成物、飲食品、医療材料も包含する。例えば、関節疾患を治療又は予防するための医薬組成物、関節疾患を治療又は予防するための飲食品、軟骨再生等の足場材料としての医療材料等が挙げられる。チョウザメ類の脊索由来のII型コラーゲンが含まれる飲食品は、関節疾患等の治療や予防に効果のある健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品等として用いることができる。特定保健用食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取をし、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品をいう。これらの食品には、例えば、関節疾患を治療又は予防するために用いられるものである旨の表示、関節の痛みをやわらげるものである旨の表示、あるいは関節の動きを良くするためのものである旨の表示等の表示を付した飲食品として提供され得る。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 チョウザメ(ベステル)脊索からのII型コラーゲンの抽出
養殖により育種したチョウザメ(体長約80cm)を用いた。この際、チョウザメは、オオチョウザメ(ベルーガ)(Huso huso)とコチョウザメ(Acipenser ruthenus)の交配種であるベステルを用いた。
脊椎を脊索ごと10センチメートル程度に分断したのち、縦に二分し、脊索を手ではがしとることで、脊椎中から脊索を取り出した。採取したチョウザメ脊索の重量は約50gであった。
採取したチョウザメ脊索を、ハサミを用いて1.0×1.0cm程度の大きさに細かく裁断した。裁断した脊索を4℃にて脱イオン水中に浸して撹拌装置で撹拌することにより1日間洗浄した。この間、脱イオン水は4回交換した。
洗浄した脊索細断物を細断物重量に対して6倍量のpH2.0の塩酸溶液に浸し、そこにペプシン(和光純薬工業(株))を組織重量の0.5%(w/w)になるよう加え、10℃にて穏やかに1日攪拌した。この操作によりII型コラーゲンが塩酸中に抽出された。
II型コラーゲンが抽出された塩酸溶液を、4℃にて、2000gで20分間遠心分離を行い、上清を回収した。回収した上清に、原料として用いた脊索の重量に対して0.05%(w/w)のペプシンを加え、10℃で7日静置し、アテロ化を行い、コラーゲンの末端に存在するテロペプチドを除去した。
得られたII型コラーゲンを含む溶液を、4℃にて、22000gで10分間遠心分離を行い、不純物を除去し、上清を回収した。回収した上清を孔径の異なるセルロースアセテート膜(3.0、0.8、及び0.45μm:東洋濾紙(株))を用いて段階的にろ過した。
得られたろ液に最終濃度1.0Mとなるように塩化ナトリウムを加え、10℃にて一晩静置し、塩析を行った。
その後、4℃にて、2000gで90分間で遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿はpH 2.0の塩酸に溶解させた。塩析と沈殿の溶解を合計3回繰り返した。
その後、溶解したものを蒸留水に対して透析し、得られたII型コラーゲンを凍結乾燥した。
抽出方法の概要を図1に示す。
比較例1 チョウザメ鱗、皮膚、筋肉、浮袋、吻部軟骨、脊椎軟骨からのコラーゲンの抽出
チョウザメ鱗、皮膚、筋肉、浮袋、吻部軟骨、脊椎軟骨からコラーゲンを抽出した。
それぞれの組織について以下の前処理を行った。前処理方法の概要を図2に示す。

チョウザメ鱗を集め、脱イオン水中で激しく撹拌して付着する皮膚を除去した。この操作で取り切れない皮膚はピンセット及びメスを用いて除去した。その後,4℃で0.5M EDTA溶液中で3日間脱灰処理を行い、カルシウム塩を溶出させることにより軟化した。その後、脱灰の程度を1%硝酸銀で確認した後、得られたものを脱灰鱗として原料として用いた。
皮膚及び筋肉
チョウザメ皮膚又は筋肉を細片化し、99.5%エタノールに浸し4℃で2日間処理することにより脱脂し、原料として用いた。
吻部軟骨及び脊椎軟骨
チョウザメ吻部又はチョウザメ脊椎から得られた軟骨を細片化し、99.5%エタノールに浸し4℃で2日間処理することにより脱脂し、さらに4Mグアニンジン塩酸を含む50mM Tris-HCl(pH7.5)に浸し、4℃で一晩処理し、原料として用いた。
消化管
チョウザメ消化管を切り開いて内容物をメスを用いてよくこすり取った後、4℃にて脱イオン水中で約2時間洗浄し、血液および内容物などを除去した。その後細片化し、原料として用いた。
浮袋
チョウザメ浮袋を細片化し、原料として用いた。
上記の前処理により得た、脱灰鱗、処理した皮膚、筋肉、吻部軟骨、脊椎軟骨、消化管及び浮袋から実施例1と同様の方法(概要を図1に示す)で、コラーゲンを抽出した。ただし、浮袋においては抽出液の量を組織重量の6倍ではなく、18倍とした。また、鱗、吻部軟骨及び脊椎軟骨からコラーゲンを抽出するときは抽出操作を4回繰り返した。
比較例2 ティラピアの各組織からのコラーゲン抽出方法
ティラピア5個体(尾叉長約26 cm)を0.1%2-フェノキシエタノールに浸漬して麻酔した後、側線鱗を除くすべての鱗を採取し、脱鱗後の皮膚、筋肉、浮袋及び消化管を採取した。

鱗は、4℃にて、脱イオン水中で3日間攪拌することで表面に付着する細胞を除去した。その後、チョウザメの鱗と同じ条件下で1日間脱灰した。脱灰の完了は一部の鱗に硝酸銀染色を施して確認した。得られたものを脱灰鱗として原料として用いた。
浮袋
浮袋は採取したのち4℃にて、脱イオン水中で約2時間洗浄し、付着した血液などを除去した。その後細片化して原料として用いた。
消化管
消化管は切り開いて内容物をメスの背などで除去したのち、浮袋と同様に4℃にて脱イオン水中で洗浄した。その後、細片化して原料として用いた。
皮膚及び筋肉
皮膚及び筋肉は細片化して原料として用いた。
コラーゲン抽出及び精製はベステルの組織と同じ方法を用いた。ただし、抽出温度は20℃とし、遠心分離は10℃でおこなった。また、浮袋の抽出液の量も組織重量の6倍とした。抽出回数はすべての組織で1回とした。
実施例2 II型コラーゲンの分析
コラーゲンの抽出効率及び1個体あたりの回収量
図3に実施例1及び比較例に記載の方法で、チョウザメ各組織及びティラピア各組織より抽出したコラーゲンの抽出効率(%)及び1個体あたりの回収量(mg)を示す。
抽出効率は、使用した原料の湿重量に対する回収されたコラーゲン乾燥重量の百分率(%)で表わした。
図にはキンギョの抽出効率も示してあるが、キンギョの値は小川,2010(小川展弘 (2010) キンギョ(Carassius auratus)再生鱗の初期石灰化機構に関する研究,北海道大学学位論文)からの引用である。
抽出したコラーゲンの純度測定
チョウザメ各組織及びティラピア各組織より抽出したコラーゲンを7.5%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEで分析した。
結果を図4に示す。SDS-PAGE像から、(1)抽出されたコラーゲンが高度に精製されていること、(2)ティラピアの各組織およびチョウザメ(ベステル)の鱗、皮膚、筋肉、浮袋、消化管のコラーゲンは100〜120 kDa付近に2本のメインバンドをもつことからI型コラーゲンであること、(3)ベステルの脊索および吻部軟骨のコラーゲンは130 kDa付近に1本のメインバンドを持つことからII型コラーゲンであること、並びに(4)ベステルの脊椎軟骨のコラーゲンは3本のメインバンドを持つことからI型コラーゲンとII型コラーゲンの混合物であることがわかる。
チョウザメの各組織から抽出したコラーゲンのアミノ酸分析
チョウザメ鱗、皮膚、筋肉、浮袋、消化管、脊索、吻部軟骨及び脊椎軟骨より抽出したコラーゲンを塩酸加水分解した後、全自動アミノ酸分析装置(JLC-500V, JEOL)を用いてアミノ酸組成を分析した。鱗については、1回目抽出物と4回目抽出物を用いた。
結果を図5に示す。図5においてアミノ酸含量はアミノ酸1000残基中のアミノ酸残基数で示す。図に示すように、チョウザメ脊索から抽出したII型コラーゲンはチョウザメ類の他の組織から得られたコラーゲンに対して、Ser(セリン)含量、Ala(アラニン)含量、Lys(リジン)含量が低く、Glx(Gln(グルタミン)とGlu(グルタミン酸))含量、Leu(ロイシン)含量、HyLys(水酸化リジン)、Pro(プロリン)含量及びイミノ酸(HyPro(水酸化プロリン)とPro(プロリン))含量が高いという特徴を有していた。
Lys及びProの水酸化率の測定
チョウザメ鱗、皮膚、筋肉、浮袋、消化管、脊索、吻部軟骨及び脊椎より抽出したコラーゲンのリジン(Lys)及びプロリン(Pro)の水酸化率を計算した。水酸化率は図5のHyLys+Lysの数値に対するHyLysの百分率、HyPro+Proの数値に対するHyproの百分率で求めた。
結果を図6に示す。チョウザメ脊索から抽出したII型コラーゲンは、チョウザメの他の組織から抽出したI型コラーゲンに対して、Lysの水酸化率が高く、他の組織から抽出したLysの水酸化率が24.3%〜55.3%であるのに対して61.3%であった。
各種の各組織から抽出したコラーゲンの変性温度の測定
チョウザメ鱗、皮膚、筋肉、浮袋、消化管及び脊索、並びにティラピア鱗、皮膚、筋肉、浮袋、及び消化管より抽出したコラーゲンの変性温度を測定した。チョウザメ鱗については、1回目抽出物(図7中の(1))と4回目抽出物(図7中の(4))を用いた。コラーゲンの変性温度の測定は公知のIkoma et al. (2003)(Ikoma T, Kobayashi H, Tanaka J, Walsh D and Mann S (2003) Physical properties of type I collagen extracted from fish scales of Pagrus major and Oreochromis niloticas. International Journal of Biological Macromolecules 32: 199-204.)の方法に従った。
結果を図7に示す。図に示すように、チョウザメ脊索から抽出したII型コラーゲンの変性温度は、チョウザメの他の組織から抽出したコラーゲンの変性温度よりも高かった。キンギョの値は小川(2010)からの引用である。
さらに、図8に各種の各組織から抽出したコラーゲンの変性温度とイミノ酸含有量をプロットして得られたグラフを示す。この図から、今回得られたベステル及びティラピアの各種組織のコラーゲン変性温度は、他魚種、哺乳類と同様にイミノ酸含有量が多いほど高くなる傾向があることがわかる。一方で、今回得られたベステル及びティラピアの各種組織のコラーゲンの変性温度はイミノ酸含有量に完全に比例するわけではないことから、組織ごとのコラーゲン変性温度の違いを生む別の機構が存在することが推測される。
実施例3 アムールチョウザメの各組織からのコラーゲン抽出法
養殖により育種したチョウザメ(体長約80cm)を用いた。この際、チョウザメは、アムールチョウザメ(Acipenser schrencki)を用いた。
脊椎を脊索ごと10センチメートル程度に分断したのち、縦に二分し、脊索を手ではがしとることで、脊椎中から脊索を取り出した。採取したアムールチョウザメ脊索の重量は約24gであった。
採取した脊索から脊索鞘のみをとりだした。取り出した脊索鞘は約17gであった。
採取したアムールチョウザメ脊索鞘を、ハサミを用いて1.0×1.0cm程度の大きさに細かく細断した。細断した脊索を4℃にて脱イオン水中に浸して撹拌装置で撹拌することにより1日間洗浄した。この間、脱イオン水は4回交換した。
洗浄した脊索鞘細断物を細断物重量に対して10倍量のpH2.0の塩酸溶液に浸し、そこにペプシン(和光純薬工業(株))を組織重量の1%(w/w)になるよう加え、4℃にて穏やかに3日攪拌した。この操作によりII型コラーゲンが塩酸中に抽出された。
II型コラーゲンが抽出された塩酸溶液を、4℃にて、2000gで90分間遠心分離を行い、上清を回収した。
回収した上清を孔径の異なるセルロースアセテート膜(3.0、0.8、及び0.45μm:東洋濾紙(株))を用いて段階的にろ過した。
得られたろ液に最終濃度1.0Mとなるように塩化ナトリウムを加え、4℃にて一晩静置し、塩析を行った。
その後、4℃にて、2000gで90分間で遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿はpH 2.0の塩酸に溶解させた。塩析と沈殿の溶解を合計3回繰り返した。
その後、溶解したものを蒸留水に対して透析し、得られたII型コラーゲンを凍結乾燥した。
比較例3 アムールチョウザメ皮膚、浮袋からのコラーゲンの抽出
アムールチョウザメ皮膚、浮袋からコラーゲンを抽出した。
それぞれの組織について以下の前処理を行った。前処理方法の概要を図2に示す。
皮膚
アムールチョウザメ皮膚を細片化し、99.5%エタノールに浸し4℃で2日間処理することにより脱脂し、原料として用いた。
浮袋
アムールチョウザメ浮袋を細片化し、原料として用いた。
上記の前処理により得た、処理した皮膚、及び浮袋から実施例1と同様の方法(概要を図1に示す)で、コラーゲンを抽出した。
実施例4 アムールチョウザメ由来II型コラーゲンの分析
コラーゲンの抽出効率及び1個体あたりの回収量
図9に実施例3及び比較例に記載の方法で、アムールチョウザメ各組織より抽出したコラーゲンの抽出効率(%)及び1個体あたりの回収量(mg)を示す。
抽出効率は、使用した原料の湿重量に対する回収されたコラーゲン乾燥重量の百分率(%)で表わした。
抽出したコラーゲンの純度測定
アムールチョウザメ各組織より抽出したコラーゲンを7.5%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEで分析した。
結果を図10に示す。SDS-PAGE像から、(1)抽出されたコラーゲンが高度に精製されていること、(2)アムールチョウザメの皮膚および浮袋のコラーゲンは100〜120kDa付近に2本のメインバンドをもつことからI型コラーゲンであること、(3)アムールチョウザメの脊索鞘のコラーゲンは130kDa付近に1本のメインバンドを持つことからII型コラーゲンであることがわかる。
アムールチョウザメの各組織から抽出したコラーゲンのアミノ酸分析
アムールチョウザメ各組織より抽出したコラーゲンを塩酸加水分解した後、全自動アミノ酸分析装置(JLC-500V, JEOL)を用いてアミノ酸組成を分析した。
結果を図11に示す。図に示すように、アムールチョウザメ脊索鞘から抽出したII型コラーゲンはアムールチョウザメの他の組織から得られたコラーゲンに対して、Ser(セリン)含量、Ala(アラニン)含量、Lys(リジン)含量が低く、Glx(Gln(グルタミン)とGlu(グルタミン酸))含量、Leu(ロイシン)含量、HyLys(水酸化リジン)、Pro(プロリン)含量及びイミノ酸(HyPro(水酸化プロリン)とPro(プロリン))含量が高いという特徴を有していた。
Lys及びProの水酸化率の測定
アムールチョウザメの皮膚、浮袋、脊索鞘より抽出したコラーゲンのリジン(Lys)及びプロリン(Pro)の水酸化率を計算した。水酸化率は図12のHyLys+Lysの数値に対するHyLysの百分率、HyPro+Proの数値に対するHyproの百分率で求めた。
結果を図12に示す。アムールチョウザメ脊索から抽出したII型コラーゲンは、アムールチョウザメの他の組織から抽出したI型コラーゲンに対して、Lysの水酸化率が高く、他の組織から抽出したLysの水酸化率が22.6%〜38.7%であるのに対して60%であった。
アムールチョウザメの各組織から抽出したコラーゲンの変性温度の測定
アムールチョウザメ皮膚、浮袋、及び脊索鞘より抽出したコラーゲンの変性温度を測定した。コラーゲンの変性温度の測定は公知のIkoma et al. (2003)(Ikoma T, Kobayashi H, Tanaka J, Walsh D and Mann S (2003) Physical properties of type I collagen extracted from fish scales of Pagrus major and Oreochromis niloticas. International Journal of Biological Macromolecules 32: 199-204.)の方法に従った。
結果を図13に示す。図に示すように、アムールチョウザメ脊索鞘から抽出したII型コラーゲンの変性温度は、アムールチョウザメの他の組織から抽出したコラーゲンの変性温度よりも高かった。
本発明の方法によりチョウザメ類の脊索より抽出したII型コラーゲンは、医療材料や健康食品の原料等種々の用途に用いることができる。

Claims (2)

  1. チョウザメ類の脊索からII型コラーゲンを抽出する方法であって、
    チョウザメ類脊椎から脊索を採取する工程、
    脊索から脊索鞘を採取する工程、
    採取した脊索を細断し、II型コラーゲンを抽出する工程、及び
    コラーゲンを回収する工程、とを含み、採取した脊索鞘に対して脱灰、脱脂処理及び塩酸グアニジンを用いた可溶化処理を行わず、
    II型コラーゲンを抽出する工程が、
    (i) 細断したチョウザメ類の脊索鞘を洗浄する工程、
    (ii) 用いた脊索鞘の重量に対して0.1〜1%(w/w)のペプシンを用いて処理する工程、
    (iii) 遠心分離し、上清を回収し、用いた脊索鞘の重量に対して0.01〜0.1%(w/w)のペプシンを用いて処理する工程、
    (iv) ろ過して、不純物を除去する工程、
    (v) 塩析によりII型コラーゲンの沈殿物を得る工程、並びに
    (vi) 透析工程、
    を含む方法。
  2. チョウザメ類がベステル又はアムールチョウザメである、請求項に記載の方法。
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