JP5042771B2 - 側面衝突検出システム、乗員拘束システム、車両、側面衝突検出方法 - Google Patents

側面衝突検出システム、乗員拘束システム、車両、側面衝突検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両の側面衝突を検出する技術に関するものである。
従来、車両事故の際の衝突発生を検出する種々の車両衝突センサが知られている。例えば、下記特許文献1には、車両の側面衝突の際に作動するGセンサや接触センサによって、側面衝突を検出するシステムが開示されている。
ところで、車両事故の際、エアバッグモジュールなどの乗員拘束システムによって車両乗員を拘束するこの種のシステムにおいては、乗員拘束性向上を図るべく車両衝突発生を迅速に検出することが可能な高度な検出技術が望まれている。とりわけ、下記特許文献1に記載のような側面衝突に関しては、車両乗員と衝突物との間に車両ドアが介在するのみであり、また、とりわけ電柱などの衝突物が車両ドアに側面衝突するポール衝突の場合には、車両ドアの車両内方への侵入速度が速いことから、側面衝突態様を前方衝突時よりも短時間で判定することが必要とされる。また、その判定においては、車両ドアが路上ないし路側物体以外の衝突、例えばキャスター付買い物かご、ボール、バット等の衝突によっても容易に変位することを勘案し、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性の高いものであるか、或いは車両乗員を即座に拘束する必要性の低い或いは必要性の無い軽微なものであるかを適正に判定することが要請される。
特開平7−172262号公報
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出するのに有効な技術を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明が構成される。本発明は、典型的には自動車において発生した側面衝突に関する情報を検出する技術に対し適用することができるが、自動車以外の車両において発生した側面衝突に関する情報を検出する技術に対しても同様に、本発明を適用することが可能である。ここでいう「車両」には、自動車、航空機、船舶、電車、バス、トラック等の各種の車両が包含される。
本発明にかかる側面衝突検出システムは、車両の側面衝突に関する情報を検出するシステムであって、架設部材、検知センサ、導出装置及び判定装置を少なくとも備える。
架設部材は、車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される空間においてドア前端部とドア後端部との間に架設され、車両側面衝突時にドアアウタパネルの変形に伴って車両内方への撓み動作、すなわち弓なり状に変形することが可能な長尺状の部材として構成される。この架設部材は、その架設状態において車両前後方向に延在する。この架設部材は、典型的には、ドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される空間において車両ドアを補強するべく架設されるドア補強部材としてのドアビームを兼用した構成とされる。その他として、この架設部材が、補強部材としてのドアビームとは別に、車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される空間においてドア前端部とドア後端部との間に架設される部材として構成されてもよい。
検知センサは、架設部材の車両内方への撓み動作の際、架設部材側において予め設定された設定領域の変位に関する情報を検知するセンサとして構成される。この場合、設定領域は、架設部材側に設けることができ、架設部材自体に設定されてもよいし、或いは架設部材に止着された別の部材において設定されてもよい。また、検知センサは、架設部材側に設けられてもよいし、或いはドアインナパネル側に設けられてもよい。ここでいう「設定領域の変位に関する情報」としては、架設部材両端に対して当該架設部材の撓みにより生じた設定領域の動作に関する変位、変位速度、変位加速度を直接的或いは間接的に示唆する情報が広く包含される。また、ここでいう「検知センサ」は、単一の検知センサとして構成されてもよいし、或いは複数の検知センサを組み合わせた構成であってもよい。従って、この検知センサとして、コイルセンサ、加速度センサ、歪センサ、超音波センサ、光学センサ等、各種の検知センサの1または複数を用いることができる。複数の検知センサを用いる場合には、同種の或いは異なる種類の検知センサを複数組み合わせることが可能である。
導出装置は、検知センサにおいて検知された情報に基づいて、架設部材の撓み変位を車両本体側部材に対する設定領域の変位(「変位量」ともいう)及び変位速度として間接的に導出する装置として構成される。ここでいう「車両本体側部材」には、ドアフレーム、ドアインナパネルのように、架設部材の両端が固定される部材、更に車両本体等、ロックヒンジを通して架設部材と連結或いは接続された各種の部材などが広く包含される。
判定装置は、導出装置において導出された情報に基づいて、車両の側面衝突態様を判定する装置として構成される。本発明では、判定装置は、導出装置において導出された、車両本体側部材に対する設定領域の変位が15〜40mmを上回り、且つ、導出装置において導出された、車両本体側部材に対する設定領域の変位速度が4〜8m/secを上回る場合に、車両の側面衝突態様を判定する。この判定装置によって、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性が高い衝突、或いは車両乗員を即座に拘束する必要性が低いないし必要性の無い軽微な衝突であることや、発生した側面衝突が路上ないし路側物体に関する衝突であるか、或いは路上ないし路側物体に関する衝突以外の衝突であること等が判定される。この判定装置によって判定された、車両の側面衝突態様に関する情報は、車両の側面衝突の際に車両乗員の拘束を行うべく作動するエアバッグモジュールやシートベルト装置などの乗員拘束装置の制御、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置の制御、またその他の制御対象の制御に適宜用いられる。
本発明にかかる側面衝突検出システムのこのような構成によれば、車両の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出することが可能となる。すなわち、車両側面衝突時にドアアウタパネルの変形に伴って車両内方への撓み動作が可能な長尺状の架設部材に設定領域を設定し、この設定領域の変位に関する情報を検知センサによって検知する、すなわちモニタリング(観測)することによって、側面衝突態様を迅速に判定することが可能となる。しかも、導出装置において導出された、車両本体側部材に対する設定領域の変位及び変位速度の両方の情報に基づいて、車両の側面衝突態様を判定するため、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性の高いものであるか、或いは車両乗員を即座に拘束する必要性の低いないし必要性の無い軽微なものであるかを適正に判定することができ、これにより側面衝突態様の判定精度を高めるのに効果的である。また、架設部材は、車両前後方向に関し車両ドアの広い範囲にわたって長尺状に延在していることから、この架設部材に設定領域を設定することによって、車両ドアの広範囲にわたり側面衝突を安定して検知することが可能となる。
本発明にかかる更なる形態の側面衝突検出システムでは、前記の検知センサは、設定領域と一体状に構成されるとともに、インナパネル側の対向面に対向して配設されており、架設部材の車両内方への撓み動作の際、インナパネル側の対向面に近接することによって設定領域の変位に関する情報を検知する構成であるのが好ましい。この場合、設定領域は、架設部材自体に設定されてもよいし、或いは架設部材に止着された別の部材において設定されてもよい。このような構成によれば、架設部材側の設定領域と一体状に構成された検知センサを用いることによって、車両の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出することが可能となる。
本発明にかかる更なる形態の側面衝突検出システムでは、前記の検知センサは、金属製の対向面に対向して配設されたコイルの通電時における電流変化を検知するコイルセンサを含み、架設部材の車両内方への撓み動作の際にコイルセンサが検知する電流変化に基づいて、設定領域の変位に関する情報を検知する構成であるのが好ましい。この場合、金属製の対向面は、その全部または一部が、例えば鋼、銅、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体として構成される。
このような構成の側面衝突検出システムによれば、コイルセンサを用いることによって、架設部材の車両内方への撓み動作の際にコイルに近接する成分のみを検知することが可能である。また、コイルセンサは、非接触式であり、また衝撃にも強く衝撃に反応しない、環境に影響を受け難い等の特性を有することから、設定領域の変位情報の所望の検知精度を確保するのに有効である。
本発明にかかる更なる形態の側面衝突検出システムでは、前記の検知センサは、ドアインナパネル側において設定領域に対向して配設されており、架設部材の車両内方への撓み動作の際、当該検知センサに近接する設定領域の変位に関する情報を検知する構成であるのが好ましい。この場合、検知センサの配設位置は、ドアインナパネル自体に設けられてもよいし、或いはドアインナパネルに止着された別の部材に設けられてもよい。このような構成によれば、ドアインナパネル側に配設された検知センサを用いることによって、車両の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出することが可能となる。
本発明にかかる更なる形態の側面衝突検出システムでは、前記の検知センサは、金属製の設定領域に対向して配設されたコイルの通電時における電流変化を検知するコイルセンサを含み、架設部材の車両内方への撓み動作の際にコイルセンサが検知する電流変化に基づいて、設定領域の変位に関する情報を検知する構成であるのが好ましい。この場合、金属製の設定領域は、その全部または一部が、例えば鋼、銅、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体として構成される。
このような構成の側面衝突検出システムによれば、コイルセンサを用いることによって、架設部材の車両内方への撓み動作の際にコイルに近接する成分のみを検知することが可能である。また、コイルセンサは、非接触式であり、また衝撃にも強く衝撃に反応しない、環境に影響を受け難い等の特性を有することから、設定領域の変位情報の所望の検知精度を確保するのに有効である。
本発明にかかる更なる形態の側面衝突検出システムは、更に、車両に作用する加速度を検知する加速度センサを備え、判定装置は、検知センサおよび/または加速度センサからの情報に基づいて衝突判定を行うのが好ましい。判定装置は、加速度センサからの情報に基づく衝突判定のセーフィングセンサとしての検知センサからの情報を用いることができる。また、判定装置は、検知センサからの情報に基づく衝突判定のセーフィングセンサとしての加速度センサからの情報を用いることができる。
本発明にかかる乗員拘束システムは、前記の側面衝突検出システム、乗員拘束装置及び制御装置を少なくとも備える。
乗員拘束装置は、車両の衝突の際に車両乗員を拘束するべく作動する手段として構成される。ここでいう「乗員拘束装置」には、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)やシートベルト装置などの乗員拘束デバイスが包含される。この場合、乗員拘束装置としてエアバッグ装置を用いる場合には、エアバッグがシート、ピラー、上部ルーフレールなどに収容される形態のエアバッグ装置を採用することができる。
制御装置は、側面衝突検出システムの判定装置にて判定された情報、すなわち車両の側面衝突の際の衝突態様に基づいて、乗員拘束装置を制御する機能を少なくとも有する装置として構成される。典型的には、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性が高い衝突であると判定装置が判定した場合に、エアバッグ装置やシートベルト装置に制御信号が出力される構成を採用し得る。また、設定領域の変位情報に基づいて、側面衝突発生時における衝突エネルギーを推定し、エアバッグ装置やシートベルト装置における乗員拘束態様を可変とする構成を採用することも可能である。なお、この制御装置は、当該乗員拘束装置の制御専用として構成されてもよいし、或いは車両のエンジン走行系統や電装系統を駆動制御する手段と兼用とされた構成であってもよい。
このような構成の側面衝突検出システムによれば、側面衝突検出システムの判定装置にて判定された適正な情報を用いて乗員拘束装置が制御されることとなり、これによって車両乗員の拘束徹底が図られる。
本発明にかかる車両は、エンジン走行系統、電装系統、駆動制御装置、車両ドア、センサ装置、制御信号出力装置を少なくとも備える車両である。
エンジン走行系統は、エンジン及び車両の走行に関与する系統として構成される。電装系統は、車両に使われる電機部品に関与する系統として構成される。駆動制御装置は、エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う機能を有する装置として構成される。車両ドアは、車両側面衝突により変位する乗員乗降用のドアとして構成される。センサ装置は、車両ドアの変位に関する情報を導出する機能を有する装置として構成される。このセンサ装置が、前記の側面衝突検出システムによって構成される。制御信号出力装置は、センサ装置にて導出された情報に基づいて、制御対象に制御信号を出力する機能を有する装置として構成される。ここでいう「制御対象」には、車両の側面衝突の際に車両乗員の拘束を行うべく作動するエアバッグモジュールやシートベルト装置などの乗員拘束装置、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置などの制御対象が包含される。この制御信号出力装置は、制御対象の制御の専用に設けられてもよいし、エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う駆動制御装置と兼用とされてもよい。
このような構成によれば、側面衝突検出システムの判定装置にて判定された適正な情報を、車両に関する種々の制御対象の制御に用いる車両が提供されることとなる。
本発明にかかる側面衝突検出方法は、車両の側面衝突に関する情報を検出する側面衝突検出方法とされる。この側面衝突検出方法では、車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される空間において車両前後方向に長尺状に架設され、車両側面衝突時に前記ドアアウタパネルの変形に伴って車両内方への撓み動作が可能な架設部材において、当該架設部材側に予め設定領域を設定する。また、ドアインナパネル側において設定領域に対向する領域に、或いは設定領域と一体状に、設定領域の車両内方への変位に関する情報を検知する検知センサを設ける。そして、架設部材の車両内方への撓み動作の際、設定領域の変位に関する情報を検知センサによって検知するステップと、この検知情報に基づいて、車両本体側部材に対する設定領域の変位及び変位速度を導出するステップと、導出した、車両本体側部材に対する設定領域の変位が15〜40mmを上回り、且つ、導出した、車両本体側部材に対する設定領域の変位速度が4〜8m/secを上回る場合に、車両の側面衝突態様を判定するステップを有する。
このような側面衝突検出方法によれば、車両の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出することが可能となる。

以上のように、本発明によれば、車両の側面衝突に関する情報を検出するに際し、車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される空間においてドア前端部とドア後端部との間に架設され、車両側面衝突時に前記ドアアウタパネルの変形に伴って車両内方への撓み動作が可能な長尺状の架設部材において、当該架設部材側に予め設定領域を設定し、架設部材の車両内方への撓み動作に伴うこの設定領域の変位に関する情報を検知センサによって検知する構成を採用することによって、車両の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出することが可能となった。
以下、図1〜図7を参照しながら本発明における「乗員拘束システム」の一実施の形態である乗員拘束システム100について説明する。本実施の形態では、乗員拘束を行う乗員拘束システムとして、事故発生の際に乗員拘束領域への展開膨張が可能なエアバッグを用いたエアバッグモジュールを採用している。なお、図1に示す形態では、車両室内の右側の車両シート上の車両乗員(運転者)に対し使用されるエアバッグモジュールを記載しているが、本実施の形態のこの乗員拘束システムは、運転席、助手席、後部座席等に対応して設置されるエアバッグモジュールに対しても同様に適用可能である。
本実施の形態の乗員拘束システム100が、車両乗員Cが乗車する車両10に搭載された様子が図1に模式的に示される。詳細については後述するが、本実施の形態では、乗員拘束システム100を構成する変位センサ120が、車両乗員Cが乗降する際に開閉される乗員乗降用の車両ドア10aに装着されている。
本発明における「車両」としての車両10には、当該車両を構成する多数の車両構成部材、エンジン及び車両の走行に関与する系統であるエンジン走行系統、車両に使われる電機部品に関与する系統である電装系統、エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う駆動制御手段等を備える。特に本実施の形態では、この車両10に乗員拘束システム100が搭載されている。
図1に示すように、この乗員拘束システム100は、車両10の側面衝突事故の際、車両10の側面衝突に関する情報に基づいて、車両乗員Cを速やかに拘束する制御を行なうシステムとして構成されており、変位センサ120、導出装置130、判定装置140及びエアバッグモジュール150を少なくとも備える。また、この乗員拘束システム100うちの変位センサ120、導出装置130及び判定装置140によって、車両10の側面衝突に関する情報を検出する側面衝突検出システムが構成される。
変位センサ120は、詳細については後述するが、車両10の側面衝突事故の際、車両10において車両乗員Cの乗降に用いる車両ドア10a側の変位に関する情報を検知するセンサとして構成されている。この変位センサ120によって検知された変位情報は、導出装置130に伝送される。なお、変位センサ120に加えて、車両側面衝突に関する情報を検出する更なる別のセンサを、車両ドア、リム、ピラー等の車体側部材に適宜搭載することも可能である。ここでいう変位センサ120が、本発明における「検知センサ」、「センサ装置」に相当する。
導出装置130は、変位センサ120から伝送された情報に基づいて、車両ドア10aが車両内方へと変位する際の、車両本体側部材に対する相対的な変位(「変位量」ともいう)及び変位速度を導出する装置として構成されている。この導出装置130によって導出された情報は、判定装置140に伝送される。なお、この導出装置130による導出機能は、変位センサ120の一機能として構成されてもよいし、或いは変位センサ120とは別の機能として構成されてもよい。ここでいう導出装置130が、本発明における「導出装置」に相当する。
判定装置140は、導出装置130から伝送された情報に基づいて、車両10の側面衝突態様を判定するとともに、この判定に基づいてエアバッグモジュール150を制御する装置として構成されている。具体的には、この判定装置140は、CPU(演算処理装置)、入出力装置、記憶装置、駆動装置、周辺装置等を含む構成とされる。この判定装置140は、典型的には、車両10のエンジン走行系統や電装系統の制御を行なう駆動制御装置としての制御ユニット(ECU)の全部または一部として構成され得る。また、この判定装置140において、車両10の側面衝突態様を判定する手段と、エアバッグモジュール150に対し制御信号を出力する手段を、それぞれ別個の手段として構成することもできる。ここでいう判定装置140が、本発明における「判定装置」、「制御装置」、「制御信号出力装置」を構成している。
エアバッグモジュール150は、特に図示しないものの、エアバッグ及びガス供給装置を少なくとも備える。当該エアバッグは、膨張及び収縮が可能であり、車両10の事故発生を検知したときに、ガス供給装置からのガス供給によって乗員拘束領域に展開膨張する構成とされる。これにより、車両事故の際、エアバッグモジュール150を介して車両乗員Cを拘束する制御が可能となる。このエアバッグモジュール150が、本発明における「乗員拘束装置」、「制御対象」に対応している。
なお、この乗員拘束システム100において、判定装置140からの制御信号によって制御される乗員拘束装置は、エアバッグモジュール150に代えて或いは加えて、エアバッグモジュール150とは別の乗員拘束装置を用いることが可能である。エアバッグモジュール150とは別の乗員拘束装置としては、シートベルト装置などの乗員拘束装置の制御や、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置の制御などに用いることもできる。
上記変位センサ120及びその周辺部位の構成に関しては、図2及び図3が参照される。図2には、本実施の形態の変位センサ120の基本的な構造が示されており、また図3には、図2中の変位センサ120が搭載された車両ドア10aの断面構造が模式的に示されている。
図2に示すように、本実施の形態の変位センサ120は、センサハウジング120a内に円形状に1または複数回巻かれたコイル121を収容するコイルセンサとして構成されている。この場合、金属体の被検出面と、コイル121の延在平面が概ね平行となるように、変位センサ120を配設するのが好ましい。そして、交流電源装置(図示省略)の駆動によって、このコイル121に交流電流(正弦波電流)が通電され、その周辺の金属体(導電体ないし磁性体)に交流磁場が与えられると、電磁誘導の法則によって金属体に渦電流が発生する。この渦電流によっても磁界を生じ、その磁界の一部がコイル121にも錯交する。結局、コイル121には、交流電源装置で流した電流による磁束に、金属体に流れた渦電流による磁束が加算され、これらの磁束によってコイル121に誘起電圧が発生することとなる。変位センサ120は、このときにコイル121に流れる電流の変化に基づいて、金属体との間の距離を検出することが可能となる。この場合の金属体は、コイルセンサの検出対象物であり、例えば鋼、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体として構成される。特に、アルミニウムは導電性が高く、コイルセンサによって大きな渦電流が流れるため、アルミニウムを含む金属を用いて金属体を構成することによって、検知感度を向上させるのに有利である。また、初期状態における金属体との間の距離が例えば40mm程度である場合には、直径が80mm以上のコイル121を採用することによって、検知感度を高めることが可能となる。
図3に示すように、車両ドア10aは、ドアヒンジ16を介して車両本体(「車両ボデー」ないし」「車両ボディー」とも称呼する)17に連結されており、車両の外側壁を形成するドアアウタパネル11、車両の内側壁を形成するドアインナパネル12を備える。この車両ドア10aは、車両10のAピラーとBピラーとの間に設置される前席ドアとして構成されてもよいし、或いはBピラーとCピラーとの間に設置される後席ドアとして構成されてもよい。これらドアアウタパネル11及びドアインナパネル12によって区画される空間13には、ドアビーム110が設置されている。ここでいうドアアウタパネル11、ドアインナパネル12及び空間13が、それぞれ本発明における「ドアアウタパネル」、「ドアインナパネル」及び「空間」に対応している。
ドアビーム110は、車両前後方向に長尺状に延在する筒状、棒状ないし柱状の部材であり、一端が車両前方側ブラケット14を介して車両本体17に固定される一方、他端が車両後方側ブラケット15を介して車両本体17に固定される。すなわち、このドアビーム110は、ブラケット14,15に対応する両端を固定端として、車両前後方向に関しドア前端部(車両前方側ブラケット14)とドア後端部(車両後方側ブラケット15)との間に長尺状に架設されている。このような構成において、ドアビーム110は、車両側面衝突時にドアアウタパネル11の変形に伴って車両内方への撓み動作、すなわち弓なり状に変形する動作が可能とされる。このドアビーム110は、ドアアウタパネル11に近接した位置においてドア上下方向に関し1または複数設置される。ここでいうドアビーム110が、本発明における「架設部材」に相当する。
ところで、上記ドアビーム110は、典型的には金属パイプ、鋼板のプレス成形品、アルミ押し出し材などよって構成され、ドアアウタパネル11の振動や変形を抑制する機能、衝突物体との側面衝突時に当該衝突物体が車両内方へと侵入するのを抑制する機能、衝突物体との側面衝突時に生じる荷重を車両本体に伝達する機能のうちの少なくとも1つを備える。また、このドアビーム110は、車両前後方向に関し車両ドア10a全体にわたって延在しているとともに、ポールなどの衝突物体の側面衝突時に挫屈することなく車両内方へと弓なり状に撓むという特徴を有する。
そこで、本発明者らは、ドアビーム110のこのような特徴に鑑みた場合、このドアビーム110の変位に着目し、その変位情報を検知する、すなわちモニタリング(観測)することによって、車両10の側面衝突の初期の段階において側面衝突態様を迅速且つ適正に判定することが可能であること、しかもドアビーム110は車両前後方向に関し車両ドア10aの広い範囲にわたって延在していることから、車両ドア10aの広範囲にわたり側面衝突を安定して検知することが可能であることを見出すことに成功した。具体的には、図3に示すように、このドアビーム110の各部位のうち、ドアインナパネル12側の対向面122に向かう所定の設定領域123に、前記構成の変位センサ120を装着することとし、この変位センサ120の変位情報を用いて、車両本体側部材、具体的にはドアインナパネル12に対する設定領域123の相対的な変位及び変位速度を検出することとしている。なお、この設定領域123は、ドアビーム110側に設けることができ、ドアビーム110自体に設定されてもよいし、或いはドアビーム110に止着された別の部材において設定されてもよい。
また、本実施の形態では、ドアビーム110の中央に近いほど変位量が大きくなることから、変位センサ120が装着されるこの設定領域123は、ドアビーム110の各部位のうち長手方向に関する中央部分に設けられるのが好ましい。これにより、設定領域123の変位情報が検出し易くなる。検出性能を考慮した場合、典型的には(1/5)×La<Lb<(4/5)×Laの関係が成り立つような位置に設定領域123を設けることが可能である。更に、ポール衝突の際のドアビーム110の変形遅延の影響を考慮した場合には、(1/4)×La<Lb<(2/4)×Laの関係が成り立つような位置に設定領域123を設けることが可能である。ここでいう対向面122が、本発明における「ドアインナパネル側の対向面」に相当し、またここでいう設定領域123が、本発明における「設定領域」に相当する。
このような構成の乗員拘束システム100の作用に関しては、図4〜図9が参照される。図4には、本実施の形態の乗員拘束システム100において、車両ドア10aがポールPに対し側面衝突する前の断面構造が模式的に示され、また図5には、図4中の車両ドア10aのポールPに対する側面衝突時における断面構造が模式的に示されている。
いま、電柱等のポールPに対し車両10が側面衝突し、図4中に示す車両ドア10aのドアアウタパネル11が側方(図4中の下方)から衝撃を受け、車両内方(図4中の上方)へと変位(「変形」ないし「移動」ともいう)する場合について考える。
図4中に示すドアアウタパネル11は、ポールPとの側面衝突によって、例えば図5に示すような二点鎖線位置から実線位置へと変位し、これに伴ってドアアウタパネル11を介して押圧されたドアビーム110が車両内方へと撓み動作する。ドアビーム110のこの撓み動作の際、変位センサ120は設定領域123と一体状にドアインナパネル12側の対向面122に近接しつつ車両内方へと変位する。
図4に示す状態から図5に示す状態に至るまで変位センサ120及び設定領域123が変位するとき、変位センサ120を構成するコイルセンサによって、前述のような金属体として構成されるドアインナパネル12側の対向面122が検知される。具体的には、変位センサ120のコイル121に流れる電流の変化に基づいて、変位センサ120(実質的には設定領域123)と対向面122との間の移動距離(変位量)が導出装置130によって連続的に検知される。ここでいう処理が、本発明における「架設部材の車両内方への撓み動作の際、定領域の変位に関する情報を検知センサによって検知するステップ」に相当する。
ポールPとの側面衝突によってドアビーム110が車両内方へと撓む際の具体例として、全長が1mのドアビーム110にポールPが衝突したときの撓み状態に関しては、図6及び図7が参照される。図6は、全長が1mのドアビーム110の0.25m付近にポールPが衝突した場合を示すものであり、図7は、全長が1mのドアビーム110の0.5m付近にポールPが衝突した場合を示すものである。これら図6及び図7からわかるように、ドアビーム110に対するポール衝突位置が異なっても、ドアビーム110は類似の弓なり状の撓み状態となる。
なお、ドアインナパネル12側の対向面122を構成する金属体は、例えば鋼、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体として構成されるが、特にはアルミニウムを含む金属を用いて金属体を構成することによって、検知感度を向上させるのに有利となる。また、対向面122は平面、曲面、段差面等であってもよいが、特に平面形状を採用することによって、とりわけ検知性能向上が図られる。
また、変位センサ120から伝送された情報に基づいて、導出装置130は、変位センサ120のドアインナパネル12(車両本体側部材)に対する相対的な変位及び変位速度を出力する。ここでいう出力処理が、本発明における「車両本体側部材に対する設定領域の変位及び変位速度を導出するステップ」に相当する。導出装置130のこの出力処理に関しては、図8が参照される。具体的には、変位センサ120のコイル121に流れる電流の変化に基づいて、変位センサ120(実質的には設定領域123)とドアインナパネル12との間の距離が導出装置130によって連続的に検出される。
図8には、本実施の形態の乗員拘束システム100において導出装置130による演算処理が示されている。この図8に示すように、導出装置130は、変位センサ120が検出した変位情報から、ドアインナパネル12に対する設定領域123の相対的な変位(以下、変位ΔXともいう)を出力し、更に、変位センサ120が検出した変位情報を微分処理することによって、ドアインナパネル12に対する設定領域123の相対的な変位速度(以下、変位速度ΔVともいう)を出力する。更に、導出装置130が出力した変位ΔX及び変位速度ΔVに基づいて、判定装置140は、車両10の側面衝突態様を判定する処理を行う。具体的には、発生した側面衝突が、エアバッグモジュール150を作動させる必要がある程度の衝突であるか否かを判定装置140が判定する。この判定に際しては、導出装置130が出力した変位ΔX及び変位速度ΔVのそのままの出力情報を用いて判定を行なうこともできるし、或いは導出装置130が出力した変位ΔX及び変位速度ΔVのそれぞれの出力情報に対し、更にフィルター処理或いは積算処理を加えた処理後の情報を用いて判定処理を行なうこともできる。ここでいう判定処理が、本発明において「導出した情報に基づいて、車両の側面衝突態様を判定するステップ」に相当する。この判定処理の際の判定基準に関しては、図9が参照される。
図9には、本実施の形態の判定装置140における判定基準が示されている。この判定基準は、前記の変位ΔX及び変位速度ΔVのそのままの出力情報に関するものとして設定されてもよいし、或いは変位ΔX及び変位速度ΔVのそれぞれの出力情報に対し、更にフィルター処理或いは積算処理を加えた処理後の情報に関するものとして設定されてもよい。図9に示すように、本実施の形態では、変位ΔX及び変位速度ΔVの相関に関し、変位ΔXが15〜40mmを上回り、且つ変位速度ΔVが4〜8m/secを上回る領域A1である場合に、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性の高い所定の側面衝突態様であるとして、判定装置140がエアバッグモジュール150に対し作動信号を出力する。この判定基準は、以下の(1)〜(3)に基づき、このままだと車両ドア10aへの物体の侵入が増大し車両乗員に対し不具合を生じると判断するものである。
(1)ドアビーム110を変形させるのに十分な力を有する物体が側面衝突し、これにより実際にドアビーム110の明らかな変形が生じ、車両ドア10aが潰れたものである。
(2)変位速度ΔVに基づき、車両ドア10aを変形させた物体の衝突速度が一定値以上であり、変形が進行しているものである。
(3)変位ΔX及び変位速度ΔVの両方に基づき、大きく重い物体が車両ドア10aを所定以上変形させ、更に所定以上の速度で変形が進行しているものである。
反対に、変位ΔX及び変位速度ΔVの相関がそれ以外の領域A2にある場合には、判定装置140がエアバッグモジュール150に対し作動信号を出力しない。ここでいう領域A2には、変位速度ΔVが相対的に大きく且つ変位ΔXが相対的に小さい場合、例えば車両乗員を即座に拘束する必要性の低いような場合や、変位速度ΔVが相対的に小さく且つ変位ΔXが相対的に大きい場合、例えば車両ドアが路上ないし路側物体以外の衝突、例えばキャスター付買い物かご、ボール、バット等に衝突して可逆的に変位した場合等が包含される。
判定装置140がエアバッグモジュール150に対し作動信号を出力した場合には、エアバッグモジュール150のエアバッグが展開膨張し、当該エアバッグが、車両乗員(図1中の車両乗員C)の側部(頭部、首部、肩部、胸部、腹部、膝部、下肢部など)に作用する衝撃力を緩和しつつ乗員拘束を行う。
以上のように、本実施の形態の乗員拘束システム100によれば、車両10の側面衝突の際の衝突態様を迅速且つ適正に検出することが可能となる。すなわち、車両側面衝突時にドアアウタパネル11の変形に伴って車両内方への撓み動作が可能な長尺状のドアビーム110に設定領域123を設定し、この設定領域123の変位に関する情報を変位センサ120によって検知することによって、側面衝突態様を迅速に判定することが可能となる。例えば5〜8msec程度の短時間で、車両ドア10aが側面衝突によって例えば20mm程度変位するまでの間に、車両10の側面衝突態様を判定することが可能となる。
しかも、導出装置130において導出された、ドアインナパネル12に対する設定領域123の変位及び変位速度の両方の情報に基づいて、車両10の側面衝突態様を判定するため、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性の高いものであるか、或いは車両乗員を即座に拘束する必要性の低いないし必要性の無い軽微なものであるかを適正に判定することができ、これにより側面衝突態様の判定精度を高めるのに効果的である。
また、ドアビーム110は、車両前後方向に関し車両ドア10aの広い範囲にわたって延在していることから、このドアビーム110に設定領域123を設定することによって、車両ドア10aの広範囲にわたり側面衝突を安定して検知することが可能となる。例えば上記のように電柱等のポールPに対し車両が衝突する、いわゆるポール衝突のみならず、壁や別の車両等に対し自車両が衝突する、いわゆるバリア衝突の際においても、安定的な側面衝突検知を行なうことが可能となる。
また、上記実施の形態では、コイルセンサからなる変位センサ120を採用することによって、ドアビーム110の車両内方への撓み動作の際にコイル121に近接する成分のみを検知することが可能である。また、コイルセンサは、非接触式であり、また衝撃にも強く衝撃に反応しない、環境に影響を受け難い等の特性を有することから、設定領域123の変位情報の所望の検知精度を確保するのに有効である。
また、上記実施の形態によれば、変位センサ120によって得られた、設定領域123の変位に関する精度の高い情報を用いてエアバッグモジュール150が制御されることとなり、これによって車両乗員の拘束徹底が図られる。
また、本実施の形態によれば、変位センサ120によって得られた、設定領域123の変位に関する精度の高い情報を、エアバッグモジュール150をはじめ、車両に関する種々の制御対象の制御に用いる車両10が提供されることとなる。
なお、上記実施の形態では、図3に示すように、ドアビーム110の各部位のうち、ドアインナパネル12側の対向面122に向かう所定の設定領域123に変位センサ120を装着する場合について記載したが、変位センサ120の装着位置に関しては、別の形態を採用することもできる。例えば、車両ドア10a内の空間13においてドアビーム110とは別に当該ドアビーム110と同様の架設部材に変位センサ120を設置することもできるし、或いは車両ドア10aのドアインナパネル12側に変位センサ120を設置することもできる。車両ドア10aのドアインナパネル12側に変位センサ120を設置する例に関しては、図10及び図11が参照される。図10には、別実施の形態の乗員拘束システム200において、車両ドア10aがポールPに対し側面衝突する前の断面構造が模式的に示され、また図11には、図10中の車両ドア10aのポールPに対する側面衝突時における断面構造が模式的に示されている。
図10に示す乗員拘束システム200では、ドアインナパネル12の各部位のうち、ドアビーム110の設定領域123に向かう部位に変位センサ120を装着している。この乗員拘束システム200におけるその他の構成に関しては、前述の乗員拘束システム100と同様とされる。このような構成において、車両10の側面衝突によってドアビーム110が図10に示す状態から図11に示す状態に至るまで変位するとき、変位センサ120を構成するコイルセンサによって、前述のような金属体として構成されるドアビーム110側の設定領域123が検出される。なお、この設定領域123は、ドアビーム110側に設けることができ、ドアビーム110自体に設定されてもよいし、或いはドアビーム110に止着された別の部材において設定されてもよい。
具体的には、変位センサ120のコイル121に流れる電流の変化に基づいて、変位センサ120(実質的にはドアインナパネル12)と設定領域123(実質的にはドアビーム110)との間の距離が導出装置130によって連続的に検出される。なお、ドアビーム110自体、或いはドアビーム110側の設定領域123を構成する金属体は、例えば鋼、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体として構成されるが、特にはアルミニウムを含む金属を用いて金属体を構成することによって、検知感度を向上させるのに有利となる。また、この場合、ドアビーム110自体或いは設定領域123のうちの変位センサ120側の対向面は平面、曲面、段差面等であってもよいが、特に平面形状を採用することによって、とりわけ検知性能向上が図られる。具体的には、ドアビーム110がパイプ状或いは棒状、波板状であって、変位センサ120側の対向面が曲面である場合には、変位センサ120側の対向面が平面形状とされた金属体をドアビーム110に連接させて、当該金属体に設定領域123を設ける構成を採用するのが好ましい。このような構成によっても、ドアビーム110側に変位センサ120を装着する前述の構成と同様に、車両10の側面衝突態様を適正に判定することが可能となる。
また、上記実施の形態では、コイルセンサからなる変位センサ120を用いる場合について記載したが、コイルセンサにかえて別の種類の検知センサを採用することもできる。例えば、ドアビーム110側の設定領域123の動作に関する変位、変位速度、変位加速度を直接的或いは間接的に検知する加速度センサ、歪センサ、超音波センサ、光学センサ等、種々の検知センサを用いることもできる。別の種類の検知センサとして歪センサを用いる場合には、ドアビーム110の設定領域123に歪センサないし歪ゲージを設置し、ドアビーム110に生じた曲率の変化から、車両本体側部材に対する設定領域123の相対的な変位ΔX及び変位速度ΔVを出力する構成を採用することができる。また、別の種類の検知センサとして加速度センサを用いる場合に関しては、図12〜図15が参照される。
図12には、ドアビーム110側の設定領域123に加速度センサ320が装着され、また車両本体17側に別の加速度センサ321が装着された別実施の形態の乗員拘束システム300の構成が示されている。加速度センサ320は、ドアビーム110に作用する3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を検出する加速度センサとして構成される。同様に、加速度センサ321は、車両本体17に作用する3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を検出する加速度センサとして構成される。ここでいう加速度センサ320及び321が、本発明における「検知センサ」、「センサ装置」に相当する。この乗員拘束システム300におけるその他の構成に関しては、前述の乗員拘束システム100と同様とされる。
このような構成によれば、ドアビーム110側の加速度センサ320による変位情報と、車両本体17側の加速度センサ321による変位情報の差分を、設定領域123の変位情報として検出することが可能となる。すなわち、本構成では、車両10の側面衝突初期においては、ドアビーム110の両端と車両本体17との間の相対変位が小さいことから、ドアビーム110側の加速度センサ320による変位情報と、車両本体17側の加速度センサ321による変位情報とから、車両本体側部材に対する設定領域123の相対的な撓み情報を適正に検出することが可能であるという考えに基づいている。この場合の具体的な演算処理に関しては、図13が参照される。
図13には、別実施の形態の乗員拘束システム300において導出装置130による演算処理が示されている。この図13に示すように、導出装置130は、加速度センサ320が検出した変位情報の積分値と、加速度センサ321が検出した変位情報の積分値とから、車両本体側部材(車両本体17自体)に対する設定領域123の相対的な変位速度ΔVを出力し、更に各変位速度の積分処理によって車両本体側部材(車両本体17自体)に対する設定領域123の相対的な変位ΔXを出力する。このような構成によれば、前述の変位センサ120を用いる場合と同様に、車両10の側面衝突態様を適正に判定することが可能となる。なお、本構成に関連して、ドアビーム110側に1または複数の加速度センサ320を設置することができ、また車両本体17側に1または複数の加速度センサ321を設置することができる。
また、図14には、ドアビーム110側の設定領域123に加速度センサ420が装着された別実施の形態の乗員拘束システム400の構成が示されている。この加速度センサ420は、ドアビーム110に作用する3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を検出する加速度センサとして構成される。ここでいう加速度センサ420が、本発明における「検知センサ」、「センサ装置」に相当する。この乗員拘束システム400におけるその他の構成に関しては、前述の乗員拘束システム100と同様とされる。
このような構成によれば、ドアビーム110側の加速度センサ420による変位情報のみによって、設定領域123の変位情報を検出することが可能となる。すなわち、本構成では、車両10の側面衝突初期においては、車両本体17自体の変位が小さいことから、ドアビーム110側の加速度センサ420による変位情報のみによって、車両本体側部材に対する設定領域123の相対的な撓み情報を適正に検出することが可能であるという考えに基づいている。この場合の具体的な演算処理に関しては、図15が参照される。
図15には、別実施の形態の乗員拘束システム400において導出装置130による演算処理を示す図である。この図15に示すように、導出装置130は、加速度センサ420が検出した変位情報から、その積分処理によって車両本体側部材(車両本体17自体)に対する設定領域123の相対的な変位速度ΔVを出力し、更に、変位速度の積分処理によって車両本体側部材(車両本体17自体)に対する設定領域123の相対的な変位ΔXを出力する。このような構成によれば、前述の変位センサ120を用いる場合と同様に、車両10の側面衝突態様を適正に判定することが可能となる。また、車両本体17側にセンサを設置する必要がないため構造が簡素化される。なお、本構成に関連して、ドアビーム110側に1または複数の加速度センサ420を設置することができる。
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記実施の形態において、判定装置140の判定に関しては、ビーム変位と変位速度を用いて衝突判断を行なう判定ロジック(以下、「第1の判定ロジック」ともいう)を採用する場合について記載したが、本発明では、第1の判定ロジック以外にも、異なる判断ロジックの判断結果とのAND/ORをとり、衝突判断性能を改善することも可能である。別形態の判定ロジックに関しては、図16及び図17が参照される。
一例として、図16に示すように、第2の判定ロジックでは、Bピラーに置かれた加速度センサや、センタートンネルに置かれた加速度センサを用い、衝撃を素早く検出するセーフィング判断ロジックの判断結果とANDをとることで、変位センサの早い検知性能を生かしたまま、故障等を減少できる。更に、第3の判定ロジックでは、別の衝突判断ロジック(Bピラーに置かれた加速度センサや、センタートンネルに置かれた加速度センサを用いた衝突検出判断)とのORをとることにより、どちらか早いほうの信号で衝突を判断することで、総合的な検知性能を改善できる(図17参照)。
また、判定装置140の判定に関しては、図18に示すように、上記変位センサ120のようなビーム変位センサをセーフィングセンサとして用いることにより、加速度センサにおける衝突判断特性を改善できる。加速度センサは、衝撃に反応するため衝突以外でも、ラフロードや岩が車底に接触した場合でも信号が生じる。そのため、加速度センサを用いたセーフィング判断ロジックは、衝突以外でも信号を出力するという問題があった。したがって加速度センサを用いた衝突判断ロジックには十分時間をかけて衝突を判断しているため、反応を早めることに限界があった。ビーム変位センサを用いたセーフィング判断ロジックを用いると、ラフロードや岩が車底に接触した場合でも信号が生じないため、加速度センサによる衝突判断の判断閾値を低くでき、判断時間を短縮できるメリットがある。ビーム変位センサの衝突判断ロジックにより、より早い衝突判断ができることに加え、ビーム変位センサをセーフィングセンサとして用いることにより、加速度センサによる衝突判断も早めることができ、両者のORをとることで総合性能をさらに改善できる。
図18に関し、変位センサと加速度センサを組み合わせた場合の判断ロジックは、図19が参照される。図19に示すように、加速度センサとの組み合わせ構成としては、加速度センサ1の衝突判断と変位センサを用いたセーフィングのANDをとる。さらに信頼性をあげるためには、変位センサのセーフィングと閾値をあげた加速度センサ2のセーフィングのORをとり、この出力をセーフィングとし、さらに加速度センサ1の衝突判断とのANDをとることが望ましい。さらに上記出力(AND2の出力)と変位センサからの衝突判断(AND1の出力)とのORをとり、最終判断とする。変位センサのセーフィング判断ロジックは、1)衝突判断と同じ判断ロジックを使用する、2)その判断ロジックの閾値を変え(判断領域を変え)て衝突判断よりも早い判断をする、3)変位または変位速度だけ使って判断する、等が用いられる。
また、上記実施の形態では、ドアビーム110に設定領域123を設ける場合について記載したが、本発明では、ドアビーム110とは別の架設部材、すなわちドアビーム110とは別に、車両ドア10aのドアアウタパネル11とドアインナパネル12とで区画される空間13においてドア前端部とドア後端部との間に架設される部材に、設定領域123を設けるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、変位センサ120や加速度センサ320,321,420によって検知された情報を、車両側面衝突の際に車両乗員の拘束を行うべく作動するエアバッグモジュール150の制御に用いる場合について記載したが、本発明では、変位センサ120や加速度センサ320,321,420によって検知された情報を、シートベルト装置などの乗員拘束装置の制御や、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置の制御などに用いることもできる。
また、上記実施の形態では、自動車に装着される乗員拘束システムの構成について記載したが、自動車をはじめ、航空機、船舶、電車、バス、トラック等の各種の車両に装着される乗員拘束システムの構成に対し本発明を適用することができる。
本実施の形態の乗員拘束システム100が、車両乗員Cが乗車する車両10に搭載された様子を模式的に示す図である。 本実施の形態の変位センサ120の基本的な構造を示す図である。 図2中の変位センサ120が搭載された車両ドア10aの断面構造が模式的に示す図である。 本実施の形態の乗員拘束システム100において、車両ドア10aがポールPに対し側面衝突する前の断面構造が模式的に示す図である。 図4中の車両ドア10aのポールPに対する側面衝突時における断面構造が模式的に示す図である。 全長1mのドアビーム110の0.25m付近にポールPが衝突した場合を示す図である。 全長1mのドアビーム110の0.5m付近にポールPが衝突した場合を示す図である。 本実施の形態の乗員拘束システム100において導出装置130による演算処理を示す図である。 本実施の形態の判定装置140における判定基準を示す図である。 別実施の形態の乗員拘束システム200において、車両ドア10aがポールPに対し側面衝突する前の断面構造が模式的に示す図である。 図10中の車両ドア10aのポールPに対する側面衝突時における断面構造が模式的に示す図である。 別実施の形態の乗員拘束システム300の構成を示す図である。 別実施の形態の乗員拘束システム300において導出装置130による演算処理を示す図である。 別実施の形態の乗員拘束システム400の構成を示す図である。 別実施の形態の乗員拘束システム400において導出装置130による演算処理を示す図である。 別形態の判定ロジックを示す図である。 別形態の判定ロジックを示す図である。 変位センサをセーフィングセンサとして用いる構成を示す図である。 図18に関し、変位センサと加速度センサを組み合わせた場合の判断ロジックを示す図である。
10…車両
10a…車両ドア
11…ドアアウタパネル
12…ドアインナパネル
13…空間
14…車両前方側ブラケット
15…車両後方側ブラケット
16…ドアヒンジ
17…車両本体
100,200,300,400…乗員拘束システム
110…ドアビーム
120…変位センサ
120a…センサハウジング
121…コイル
122…対向面
123…設定領域
130…導出装置
140…判定装置
150…エアバッグモジュール
320,321,420…加速度センサ
C…車両乗員

Claims (11)

  1. 車両の側面衝突に関する情報を検出する側面衝突検出システムであって、
    車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される空間においてドア前端部とドア後端部との間に架設され、車両側面衝突時に前記ドアアウタパネルの変形に伴って車両内方への撓み動作が可能な長尺状の架設部材と、
    前記架設部材の車両内方への撓み動作の際、前記架設部材側において予め設定された設定領域の変位に関する情報を検知する検知センサと、
    前記検知センサにおいて検知された情報に基づいて、車両本体側部材に対する前記設定領域の変位及び変位速度を導出する導出装置と、
    前記導出装置において導出された、前記車両本体側部材に対する前記設定領域の変位が15〜40mmを上回り、且つ、前記導出装置において導出された、前記車両本体側部材に対する前記設定領域の変位速度が4〜8m/secを上回る場合に、前記車両の側面衝突態様を判定する判定装置と、
    を備える構成であることを特徴とする側面衝突検出システム。
  2. 請求項1に記載の側面衝突検出システムであって、
    前記検知センサは、前記設定領域と一体状に構成されるとともに、前記ドアインナパネル側の対向面に対向して配設されており、前記架設部材の車両内方への撓み動作の際、前記対向面と近接することによって前記設定領域の変位に関する情報を検知する構成であることを特徴とする側面衝突システム。
  3. 請求項2に記載の側面衝突検出システムであって、
    前記検知センサは、金属製の前記対向面に対向して配設されたコイルの通電時における電流変化を検知するコイルセンサを含み、前記架設部材の車両内方への撓み動作の際に前記コイルセンサが検知する電流変化に基づいて、前記設定領域の変位に関する情報を検知する構成であることを特徴とする職面衝突検出システム。
  4. 請求項1に記載の側面衝突検出システムであって、
    前記検知センサは、前記ドアインナパネル側において前記設定領域に対向して配設されており、前記架設部材の車両内方への撓み動作の際、当該検知センサに近接する前記設定領域の変位に関する情報を検知する構成であることを特徴とする側面衝突検出システム。
  5. 請求項4に記載の側面衝突検出システムであって、
    前記検知センサは、金属製の前記設定領域に対向して配設されたコイルの通電時における電流変化を検知するコイルセンサを含み、前記架設部材の車両内方への撓み動作の際に前記コイルセンサが検知する電流変化に基づいて、前記設定領域の変位に関する情報を検知する構成であることを特徴とする側面衝突検出システム。
  6. 請求項1に記載の側面衝突検出システムであって、
    更に、前記車両に作用する加速度を検知する加速度センサを備え、
    前記測定装置は、前記検知センサおよび/または前記加速度センサからの情報に基づいて衝突判定を行うことを特徴とする側面衝突検出システム。
  7. 請求項6に記載の側面衝突検出システムであって、
    前記測定装置は、前記加速度センサからの情報に基づく衝突判定のセーフィングセンサとしての前記検知センサからの情報を用いることを特徴とする側面衝突検出システム。
  8. 請求項6に記載の側面衝突検出システムであって、
    前記測定装置は、前記検知センサからの情報に基づく衝突判定のセーフィングセンサとしての前記加速度センサからの情報を用いることを特徴とする側面衝突検出システム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の側面衝突検出システムと、
    車両の側面衝突の際、車両乗員を拘束する乗員拘束装置と、
    前記側面衝突検出システムの判定装置にて判定された情報に基づいて、前記乗員拘束装置を制御する制御装置と、
    を備える構成であることを特徴とする乗員拘束システム。
  10. エンジン走行系統と、
    電装系統と、
    前記エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う駆動制御装置と、
    車両衝突により変位する乗員乗降用の車両ドアと、
    前記車両ドアの変位に関する情報を検知するセンサ装置と、
    前記センサ装置において検知された情報に基づいて、制御対象に制御信号を出力する制御信号出力装置と、
    を備える車両であって、
    前記センサ装置は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の側面衝突検出システムによって構成されていることを特徴とする車両。
  11. 車両の側面衝突に関する情報を検出する側面衝突検出方法であって、
    車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画された空間においてドア前端部とドア後端部との間に架設され、車両側面衝突時に前記ドアアウタパネルの変形に伴って車両内方への撓み動作が可能な長尺状の架設部材において、当該架設部材側に予め設定領域を設定し、
    前記ドアインナパネル側において前記設定領域に対向する領域に、或いは前記設定領域と一体状に、前記設定領域の車両内方への変位に関する情報を検知する検知センサを設け、
    前記架設部材の車両内方への撓み動作の際、前記設定領域の変位に関する情報を前記検知センサによって検知するステップと、この検知情報に基づいて、車両本体側部材に対する前記設定領域の変位及び変位速度を導出するステップと、導出した、前記車両本体側部材に対する前記設定領域の変位が15〜40mmを上回り、且つ、導出した、前記車両本体側部材に対する前記設定領域の変位速度が4〜8m/secを上回る場合に、前記車両の側面衝突態様を判定するステップと、を有することを特徴とする側面衝突検出方法。
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