JP5042684B2 - 浸食防止材および浸食防止工法 - Google Patents

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Description

この発明は、浸食防止材およびこれを用いた浸食防止工法に関するものである。
図9に示すように、従来、法面Nの緑化に用いる植生シート50には、(1)導入植生が定着するまでの期間、表層(表層土壌)浸食を防止したり、(2)地山の凹凸(表層土壌の凹凸)に密着して土粒子を捕縛したり、(3)保温効果で凍上による浸食を防止したりする機能を備えたレーヨン製薄綿51が使われている。その特徴は、分解速度が早いことであり、植生シート施工後の降雨により、法面に密着し、導入植生の定着する時期(数カ月〜1年後)には腐食・分解することである。図9において、52は周辺から飛来した種子である。
このような急速緑化工がある一方で、近年においては、生態系保全の観点から、外来牧草種子を使わない緑化方法が普及している。その一つとして、周辺からの飛来(進入)種子による緑化方法、いわゆる、植生誘導工(自然進入促進工)がある。この自然進入促進工の場合、地表面のほぼ全面に飛来(進入)植生が定着するまでには、急速緑化工とは違って数年の期間が必要であるので、その期間、ネットおよび/または薄綿を用いた緑化基礎工で表層(表層土壌)浸食の防止を行う必要がある。
しかし、上記した構成の自然進入促進工では以下の問題があった。
導入植生の植物種子は地表面に敷設した薄綿の下面に配置されていて、降雨後速やかに地表面に落下して施工後の早期に前記植物種子の発芽を促すことはできるが、飛来種子の場合には、飛来種子が薄綿の上面に落下する。そのため、降雨によって薄綿が地表面に密着しても、飛来種子と地表面との間が前記薄綿で遮られ、飛来種子が直接、地表面に接することはなく飛来種子の地表面への定着が阻害される場合があり、施工後、前記植物種子と同様に早期に飛来種子の発芽を促すことが難しい。
この発明の目的の一つは、法面を包むように密着して土壌の浸食防止機能および凍上防止機能を長期間にわたって持続させることにより法面の保護を行うと共に緑化を達成することができる浸食防止材および浸食防止工法を提供することである。
この発明の二つ目の目的は、施工後、早期に飛来種子を直接地表面に接することができるようにして、飛来種子の地表面への定着率を向上させることができる浸食防止材および浸食防止工法を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の浸食防止材は、溶解の過程で粘着性を持つ水溶性繊維と、分解速度の異なる2種以上の繊維とを混合し繊維を相互に絡み合わせてなるシートを有し、水溶性繊維の溶解による粘着性によって種子の定着を行うと共に土壌を膨潤な状態として保水性を高め、飛来種子の定着・発芽率を向上させたことを特徴としている(請求項1)。
この発明で用いる水溶性繊維とは、早期溶解型の水溶性繊維を意味しており、施工後の降雨や夜露により直ちに溶解する性質のものである。
そして、前記分解速度の異なる2種以上の繊維が、天然腐食性繊維と、この天然腐食性繊維よりも分解速度の遅い生分解性プラスチック製腐食繊維とを含むのが好ましい(請求項2)。すなわち、前記シートの分解速度は比較的耐蝕性に優れた植物原料からなる生分解性プラスチック製腐食繊維と動物性繊維、ヤシ繊維や竹繊維などの植物性繊維(天然腐食性繊維)とを混合することによって調整することが望ましい。さらに、金属繊維を用いてもよい。何れの場合にも、シートを構成する繊維は最終的には完全に分解されるものであることが望ましい。また、シートの柔軟さや保温力などの特性も複数種類の繊維を混合することによって調整することが望ましい。
この発明では、シートが、水溶性繊維と、例えば、天然腐食性繊維と、この天然腐食性繊維よりも分解速度の遅い生分解性プラスチック製腐食繊維とを混合してなるものを挙げることができる。この場合、分解速度の異なる3種類の繊維がそれぞれ絡み合っており、段階的に各繊維は溶解・腐食・分解していく。すなわち、この発明では、施工後のシートから降雨や夜露により水溶性繊維が溶解により直ちに除去された後に、残りの天然腐食性繊維と生分解性プラスチック製腐食繊維が表層土壌浸食の防止機能を発揮しながら分解速度の早いもの順に段階的に腐食・分解していくが、この表層土壌浸食の防止機能は、飛来種子が表層土壌に定着し、植物による表層土壌浸食防止が可能な程度その種子が発芽生育するまで持続されうる。
この発明では、天然腐食性繊維は吸水性を有しており、天然腐食性繊維を少なくとも30%以上、望ましくは50%以上の割合で混合してシートを構成することが植物の生育促進のために好適である。また、分解速度については、現場条件による差異はあるものの、施工後1年が経過した時点で少なくとも50%以上、より望ましくは70%以上のシート構成繊維が分解されずに残存するように調整することが確実な浸食防止のために好適である。
また、シートを構成する水溶性繊維の割合は、10%以上50%未満が好ましい。
水溶性繊維の割合が10%未満では、施工直後の空孔率が低すぎて飛来種子定着効果が発揮されず、また、水溶性繊維の溶解による表層土壌の団粒効果も低くなりすぎるという不都合がある。
水溶性繊維の割合が50%以上では、シートによる表層土壌浸食防止能力が低くなりすぎ、飛来種子が定着したとしても、発芽した植物が表層土壌浸食によって流亡してしまうという不都合がある。
これらを考慮し、シートを構成する水溶性繊維の割合は、20〜40%とすることが最も好適である。
前記シートはシート状の薄綿(綿花を意味しているのではなく、薄い綿状のものを意味している)であることが望ましいが、不織布や紙のようなものであってもよい。このシートは植物の通芽や通根を妨げない程度の強度を有するものであり、その平均厚みを0.1〜10mm、望ましくは、0.5〜5mmに設定することで、浸食防止機能を有しながらも植物を地面に根付かせ易くしてある。
前記シートの裏面には土壌改良剤、保水材、肥料が取り付けられていることが望ましく、法面の緑化を達成するための種子が取り付けられていてもよい。シートには例えば、ススキ、ヨモギ、メドハギなどの野草種、イタチハギ、ヤマハギなどの樹木種、トールフェスク、バミューダグラス、クリーピングレッドフェスク、レッドトップ、ホワイトクローバなどの牧草種などの植物の種子が取り付けられていることが望ましい。また、例えば、ペレニアルライグラスやイタリアングラスなどの牧草種や、ヌルデ、アカメガシワ、ヤシャブシ、ネムノキなどの先駆性植物の種子を用いてもよい。これらの種子は、シートの全面に配置して広範囲の緑化を目指してもよいが、部分的な配置に留めて種子が存在しない区域を設け、その区域を周辺植物から飛来してくる種子を生育させるための範囲とすると、積極的に周辺植物が導入できるので好適である。
この発明では、ネットまたはマットと前記シートとが積層され、シートの繊維を前記ネットまたはマットの繊維に絡み付かせることによって、ネットまたはマットとシートとが一体化されてあってもよい。ネットまたはマットとシートを少量の水溶性接着剤で接着してあってもよい。前記シートは、雨水などを吸収することにより、ネットまたはマットから速やかに離脱し、地表面に密着するように構成してあることが望ましい。また、ネットまたはマットと、シートとを積層した状態でローラ間に通して加圧することにより、シートの繊維を前記ネットまたはマットの繊維に絡み付かせて、ネットまたはマットとシートとが一体化されていることが望ましい。さらに、シート側から空気を吹きつけたり、ネットまたはマット側から空気を吸引したりすることにより、シートの繊維をネットまたはマット側に起毛させてネットまたはマットの繊維に絡みつかせてあることが望ましい。
この発明では、前記水溶性繊維がポリビニルアルコール繊維であり、前記天然腐食性繊維がレーヨン繊維であり、前記生分解性プラスチック製腐食繊維がポリ乳酸繊維であることが好ましい(請求項3)。
すなわち、前記シートが、施工後の降雨や夜露によって溶解する水溶性繊維としてのポリビニルアルコール繊維と、分解速度が早く、表層土壌浸食を防止しうる天然腐食性繊維としてのレーヨンと、このレーヨンよりも分解速度が遅く、飛来種子を表層土壌へ定着させるまでは残存しながら表層土壌浸食を防止しうる生分解性プラスチック製腐食繊維としてのポリ乳酸繊維とを混合したものであるのが好ましい。
前記ポリビニルアルコール繊維(PVA繊維)は、この発明において、特に重要な性質を持つ原料である。PVA繊維は、施工後の主として降雨から溶解が始まる。特に、秋前の施工を想定すると、従来のレーヨン製薄綿51〔図9(A),(B)参照〕よりも、溶解が遙に早いため、秋季の飛来種子40の定着を確実に行うことができる〔図8(A),(B)参照〕。
PVA繊維は、そもそも粘着剤であり、キク科植物などの風散布種子などをより定着する機能を持つ。つまり、風散布種子は地表面に落下したとしても風が吹けば再び空に舞い上がることがあるが、溶解したPVAの粘着性で種子の定着が確実に行われうる。
また、PVA繊維は、シートの全面に均一に配置するのが好ましく、この場合は、降雨による粘着性の発揮で地表面の土壌微粒子を団粒化して捕縛する機能を有する。
この発明で用いるレーヨン繊維は、微生物の非活動期間では腐食は進まないが、微生物の活動期間では、数箇月〜半年程度、例えば3箇月程度で腐食・分解する。これは、秋期施工の場合、飛来種子の量が増える5〜6月に腐食・分解が始まるため飛来種子の定着に適している。また、夏期施工の場合には同様に、飛来種子量の多い10〜12月に腐食・分解が始まるため飛来種子の定着に適している。また、前記レーヨン繊維は、秋期・冬期施工では凍上による表層(表層土壌)浸食の防止機能を発揮する。
さらに、飛来種子を用いて緑化するにあたっては、飛来種子が侵入しない場合や、予想以上の期間を要した後飛来種子が侵入する場合を想定する必要がある。このため、この発明では、従来のレーヨン製薄綿よりも長期間の浸食防止効果を維持することも求められる。その目的から、この発明の浸食防止材のシートを構成する繊維の一つとしてポリ乳酸繊維を用いている。ポリ乳酸繊維はトウモロコシなどの澱粉から得られる乳酸を原料とする生分解性の繊維であり、一般的にレーヨンよりも高い耐腐蝕性を有するものである。詳しくは、ポリ乳酸繊維は通常2〜3年で腐食・分解する。つまり、従来のレーヨン製薄綿よりも基本的な浸食防止効果は1〜3年長く持続し、レーヨン繊維が腐食・分解した後も、植物による表層土壌の全面被覆までの数年間は残存し、表層土壌浸食の防止機能が発揮されうる。
以上、この発明では、法面緑化用の植生シート・マットに用いられる浸食防止用のシートに性質の異なる3種類の原料を用いることで、施工後、浸食防止効果を維持しつつ、周辺からの飛来種子の定着をより確実にすることができる。これら3種類の繊維は、それぞれ絡み合っており、段階的に各繊維は腐食・分解していくが、基本的な浸食防止効果は1〜3年は維持できる。また、3種類の原料の割合によって、シートがどの時期(期間)にどの程度分解するのかを調整することができる。すなわち、PVA繊維とレーヨン繊維とポリ乳酸繊維の割合を調整することにより、植物が発芽生長するのに良い環境を必要な期間だけ持続させることができるシートを容易に形成することができる。
さらに、これら3種類の繊維は、均一に混合されるのが好ましく、これら3種類の繊維より構成されるシートは、施工直後は、飛来種子が地表面へ落下するのを遮る程度に密な状態のシート状に地表面を覆うが、施工後の降雨や夜露によってPVA繊維が溶解してシートから消失し、残ったレーヨン繊維およびポリ乳酸繊維により、飛来種子が地表面へ落下するのを許容する程度の目合いが形成されたネット状のものに変化し、この状態で地表面を覆うことになる。さらに、数カ月後にはレーヨン繊維が腐食・分解してシートから消失し、残ったポリ乳酸繊維のみで表層土壌浸食が防止されうるとともに、レーヨン繊維も消失したシート3’’は、飛来種子40が直接地表面Nへ落下するのをさらに許容し易くする程度に疎な状態のネット状のものに変化する〔図8(A),(B)参照〕。図8(A)に示すように、このネット状に変化したシート3’’は、レーヨン繊維が残っている場合よりも大きな目合いFを有することになり、この目合いFを介して飛来種子40が地表面Nへ落下することになる。すなわち、目合いFを介して飛来種子40が直接地表面Nに接することができ、飛来種子40の早期の定着を促すことができる。
この発明では、前記ネットまたはマットの上部に位置するように前記ネットまたはマットに連結される上部ネットを有するもよい。つまり、この上部ネットが前記ネットまたはマットから浮かせた状態で配置されて、前記シートまたはマットの上に周辺植物の種子を捕捉させるための種子捕捉領域を形成するものであってもよい。この場合、上部ネットは熱によって収縮しやすい繊維からなることが望ましい。
また、この発明は別の観点から、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の浸食防止材を、前記シートが地表面に当接するように敷設した状態で固定することを特徴とする浸食防止工法を提供する(請求項4)。
この場合、浸食防止材を固定した後、降雨や夜露によって水溶性繊維が溶解し、その後、分解速度の早いもの順に残りの繊維が分解する。
この発明では、浸食防止材は、水溶性繊維と、分解速度の異なる2種以上の繊維とを混合し繊維を相互に絡み合わせてなるシートを有する。例えば、浸食防止材は、水溶性繊維と、天然腐食性繊維と、この天然腐食性繊維よりも分解速度の遅い生分解性プラスチック製腐食繊維とを混合してなるシートを有している。そのため、施工後に降雨や夜露により水溶性繊維が溶解し、その後、分解速度の早いもの順に段階的に腐食・分解していく。すなわち、施工直後は、分解速度の異なる、水溶性繊維、天然腐食性繊維および生分解性プラスチック製腐食繊維は相互に絡み合っているが、その後の降雨や夜露により、まず最初に水溶性繊維の溶解が始まり、シートから水溶性繊維が除去され、シートは、分解速度の異なる2種類の天然腐食性繊維および生分解性プラスチック製腐食繊維同士が絡んだ状態のものとなる。そのため、水溶性繊維が溶解する前のシートの繊維密度に比べて水溶性繊維が除去された後のシートの繊維密度は低下しており、水溶性繊維が溶解する前は飛来種子と地表面との間が高い繊維密度を有するシートで遮られていたが、水溶性繊維の溶解による繊維密度の低下により、いわば、ネット状のシートに変化する。さらに、天然腐食性繊維および生分解性プラスチック製腐食繊維は分解速度の早いもの順に腐食・分解していく。この間、ネット状のシートの目合いは序々に大きくなっていき、施工直後のシートは、最終的に分解速度の最も遅い繊維だけが残る時点では、最も大きな目合い(孔)を有するネット状のシートに変化している。
すなわち、時間の経過とともに天然腐食性繊維がまず腐食・分解していくので、水溶性繊維を消失したシートは、天然腐食性繊維の腐食・分解によりシート状からネット状のものに変化していく。このネット状に変化したシートは、いわゆる目合いを有することになり、この目合いを介して飛来種子が地表面へ自重で落下する。特に、天然腐食性繊維が腐食・分解した後は大きな目合いとなる。このように、目合いを介して飛来種子が直接地表面に接することができ、飛来種子の早期の定着を促すことができる。
更には、上述したように、シートに目合いが有る(施工直後のシートに比べて疎なシート状となる)ことにより、微細土粒子の微移動(微細土粒子が流亡しない程度の移動)を許容させることができ、これによって飛来種子と微細土粒子を自然状態で混合させて、飛来種子の定着・発芽率をより高めることができる。すなわち、この発明では、シートによって、雨による法面の浸食や表層土壌の流亡を防止しながら(後述する)も、微妙な微細土粒子移動は故意に生じさせることができる。これによって、飛来種子がシートによって覆われている地表面ではなく土の中に埋もれる状態が形成されうる。この状態は飛来種子の上に薄っすら前記土が被さる状態である。そのため、この発明では、より早期な飛来種子の定着・発芽を促すことができる。
また、この発明は以下の効果を奏する。
この発明では、シートによって地表面が覆われており、法面に直接的に雨水が当たることをシートによって確実に防止できるので、雨による法面の浸食や表層土壌の流亡を防止できる。また、外気温の温度変化による地表面の温度変化を小さくすることができるので、冬期には表層土壌が凍上によって流亡することを防止できる。前記シートがシート状の薄綿であることにより、表層土壌の凹凸に対して容易になじませることができるので好ましいが、施工前の浸食防止材の形状を安定させるためには、このシートが不織布であってもよい。また、シートが紙状である場合は、施工前の浸食防止材の取り扱いをさらに容易とすることができる。
そして、前記シートが分解速度の異なる3種類の繊維が混合されていることにより、その分解速度が調整されているので、法面の表層土壌を法面緑化が達成できるまで、少なくとも半年の間(すなわち、植物の種子が法面に定着し、しっかり根付くまでの間)は、法面を保護することができる。また、シートを構成する繊維は混合されたものであるから、耐蝕性のある繊維の特性の影響を受けにくくなる。つまり、一般的に耐蝕性のある繊維は十分な吸水性を持っていないが、シートを構成する繊維のうちの少なくとも一つが吸水性を有するものであるから、植物の発芽生長に必要な水分をシートによって確保することが可能である。
同様にシートの柔軟性や保温性についても異なる3種類の繊維を混合することにより、その特性を調整しやすくなる。つまり、シートが分解速度の異なる3種類の繊維を混合してなるものであるから、植物が生長して法面の緑化を達成するまで、十分に長期間にわたって、シートが法面を保護できる程度に、シートの分解速度を調整することができると共に、シートによって植物が生長し易い環境を整えることができる。さらに、シートを構成する繊維は何れは分解して土に戻るので、シートが邪魔になって植物が生長できなくなることもなく、逆に養分として植物に吸収されて利用できる。
前記シートの裏面に土壌改良剤、保水材、肥料が取り付けられている場合には、法面の表層土壌の状態を植物の生育に適した状態にすることができる。また、このときシートの裏面側に種子などを取り付けてある場合には、シートが種子などを覆うようにして地表面に密着するので、種子の発芽および生長を確実なものとし、活着が良くなる。さらに、前記シートに、例えば、ススキ、ヨモギ、メドハギなどの野草種、ペレニアルライグラスやイタリアングラスなどの牧草種や、ヌルデ、アカメガシワ、ヤシャブシ、ネムノキなどの先駆性植物の種子を用いることが好ましい。これによって、周辺植物の生態系に悪影響を及ぼさないようにすることができる。つまり、牧草種として上記2種のような1年草もしくは短年草を採用すると、牧草種の衰退期間が早く、周辺植物の生長を阻害することがない為好ましい。また、上述の先駆性植物を導入すると、植生遷移の速度が上がり、より早期に周辺植生と同様の植生を復元させることができるため好適である。なお、この場合の浸食防止材は、植生基体ということができる。
ネットまたはマットと前記シートとが積層され、シートの繊維を前記ネットまたはマットの繊維に絡み付かせたり水溶性接着剤を用いることによって、ネットまたはマットとシートとが一体化されてなる場合には、ネットまたはマットに雨水が当たるなどして雨水の落下速度をある程度低減できる。
また、ネットまたはマットとシートとを積層した状態でローラ間に通して加圧することにより、シートの繊維を前記ネットまたはマットの繊維に絡み付かせた場合には、糸で縫着する場合のように固定が部分的ではなく、シートがネットまたはマットの全面に一体化する。ゆえに、これらが施工前に不測に剥がれることがない。施工後には、シートが雨水等を吸収してその柔軟性を増すと共に重くなることにより、シートがネットまたはマットから速やかに離脱し、地表に密着することができる。
さらに、前記ローラによって加圧する前に、シート側から空気を吹きつけたり、ネットまたはマット側から空気を吸引したりすることにより、シートをネットまたはマット側に起毛させてネットまたはマットの繊維に絡みつかせてある場合には、ネットまたはマットに対する繊維の絡み付きを確実に行う上で望ましい。
シートに含まれるレーヨンは吸水性のみならず柔軟性も備えているので、シートが法面を包み込むように、シートを法面に密着させることができ、このシートによって法面の表面における乾燥を防止できる。また、ポリ乳酸繊維はレーヨンのような柔軟性を備えているだけでなくレーヨンに比べて分解速度が遅いので、ポリ乳酸繊維を混合することによりシートの分解速度を遅くすることができる。つまり、レーヨンとポリ乳酸繊維の混合の比率を調整することにより植物が発芽生長するのに良い環境を必要な期間だけ持続させることができるシートを容易に形成することができる。
前記ネットまたはマットの上部に位置するように前記ネットまたはマットに連結される上部ネットを有するもよい。つまり、この上部ネットが前記ネットまたはマットから浮かせた状態で配置されて立体構造となり、前記シートまたはマットの上に周辺植物の種子を捕捉させるための種子捕捉領域を形成することにより、種子捕捉領域に飛来または落下した周辺植物の種子による緑化を行うことができる。上部ネットが前記ネットまたはマットから浮かせた状態で配置されるものであるので、上部ネットは種子の落下速度を抑えて種子が種子捕捉領域に留まり易くできる。また、この上部ネットが風除けとしても機能できるので、種子捕捉領域に捕捉された種子が風によって飛ばされないように保護することができる。
加えて、前記上部ネットが熱によって収縮しやすい繊維からなる場合には、施工後の上部ネットを構成する繊維が太陽熱などによって収縮してその張力を高く保ち、上部ネットが法面から浮いた状態を保つようにすることができる。なお、上部ネットは熱によって収縮しやすい繊維の一例としてポリエチレン(PE)系の合成樹脂からなるモノフィラメントを鎖編みすることにより形成してなるものである。
また、この発明に係る浸食防止工法によれば、浸食防止材を固定した後、降雨や夜露によって水溶性繊維が溶解し、その後、分解速度の早いもの順に残りの天然腐食性繊維と生分解性プラスチック製腐食繊維が分解することから、シートの目合いを通って、飛来種子が直接地表面に自重で落下し、飛来種子が直接地表面に接することができるものであり、最も分解速度の最も遅い生分解性プラスチック製腐食繊維の腐食・分解を待つことなく、施工後の降雨や夜露によって天然腐食性繊維の分解中においても、上述したように、シートに目合いが有る(施工直後のシートに比べて疎なシート状となる)ことにより、微細土粒子の微移動(微細土粒子が流亡しない程度の移動)を許容させることができ、これによって飛来種子と微細土粒子を自然状態で混合させて、早期に飛来種子の発芽を促すことができ、飛来種子の地表面への定着率を向上させることができる。また、シートが法面に密着して浸食防止材によって法面の浸食や凍上を防止することにより、この法面を保護することができる。そして、保護された法面によって、植物の種子が繁茂しやすい環境を整えることができる。
以上のことをまとめると以下のようになる。
(1)この発明は、シートに目合いが有る(施工直後のシートに比べて疎なシート状となる)ことにより、飛来種子が直接地表面に接し、法面上に定着するという利点と、特徴的構成のシートで地表面を保護することにより、夏季の乾燥防止と冬季の凍上防止を達成できるという効果と、シートに目合いが有る(施工直後のシートに比べて疎なシート状となる)ことにより、微細土粒子の微移動(微細土粒子が流亡しない程度の移動)を許容させることができ、これによって飛来種子と微細土粒子を自然状態で混合させて、飛来種子の定着・発芽率をより高めることができるという効果を併せ持つ。
また、特徴的構成のシートを有するこの発明は、さらに以下の効果を奏する。
(2)シートに含まれる早期溶解型の水溶性繊維は、溶解の過程で粘着性を併せ持つことから、飛来種子が法面上に定着した後に、飛来種子が法面に沿って移動落下するのを防ぐことができる。
(3)水溶性繊維は溶解し、土粒子間に進入するため、土壌を膨潤な状態とし、保水性を高めることができる。
そして、これら3つの効果から、従来のレーヨン製薄綿よりも飛来種子の定着効果を向上させることができる。
以下、この発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。なお、それによってこの発明は限定されるものではない。
図1〜2は、第1実施例の浸食防止材1を示す図であって、図1は浸食防止材1の構成を示す斜視図、図2はこの浸食防止材の製造方法を説明する図である。これらの図において、2はネット、3はシートであり、本実施例ではシート状の薄綿である。なお、ここでいう薄綿は、薄い綿を意味するのではなく、たとえば、後述するような材料からなる薄い綿状のものを意味する。また、シートは薄綿3であることに限定されるものではなく、不織布や紙状のものであってもよい。
ネット2は、例えばポリエチレン(PE)系の合成樹脂からなるフラットヤーンからなる緯糸2aと、この緯糸2aに直行する例えばPE系の合成樹脂からなるモノフィラメントを鎖編みすることにより形成してなる経糸2bとからなり、緯糸2aは経糸2b間をジグザグに進むようにして編み込んで形成したものである。
なお、以下の説明において各実施例を用いて薄綿3がネット2に取り付けられている例を示すが、このネット2に代えて、ヤシ繊維、シュロ毛、ジュート等で作製された表面の毛羽立ったマットを使用してもよい。また、本発明はネット2またはマットとシート(薄綿3)とが一体化されていることに限定されるものではなく、シートを構成する綿状のものの厚みを変えたり、不織布や紙状のものなど形状が安定しているものを用いることによって形成して、ネット2やマットを省略してもよい。
一方、本実施例に示す薄綿3は、凹凸のある施工対象土壌の表面に容易に密着できる程度の柔軟性を有し、前記ネット2の下面に取り付けられるものであり、保水材、土壌改良剤および肥料などの植物生育基材4と、植物種子5とを取り付けてなるものである。前記薄綿3を構成する繊維は、水溶性繊維と、天然腐食性繊維と、この天然腐食性繊維よりも分解速度の遅い生分解性プラスチック製腐食繊維とを混合したものであり、十分な耐蝕性や吸水性を兼ね備えたものである。
すなわち、薄綿3は、PVA繊維と、吸水性に優れた素材であるレーヨン繊維と、耐蝕性のある素材であるポリ乳酸繊維(例えば商品名「ラクトロン」などの生分解性プラスチック)からなる繊維とをそれぞれ30:30:40の割合で混合したものである。この混合の比率を変えることにより薄綿3が所望の分解速度で分解し、かつ、所望の吸水性を有するものとすることができる。しかしながら、薄綿3を構成する各繊維の素材は、PVA繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維に限定されるものではない。
なお、これらの各繊維は20〜150mmの長さに設定することが好適である。20mmより短い場合は、分散性が高すぎるとともにシート状への加工が困難となってしまい、150mmよりも長い場合は分散性が低下してしまうという問題が生じる。より好ましくは35〜70mmの繊維長であり、この設定の際にPVA繊維溶解後のシートは理想的分散状況のネット状になるのである。すなわち、薄綿3は目合いを有することにより、微細土粒子の微移動(微細土粒子が流亡しない程度の移動)を許容させることができ、これによって飛来種子と微細土粒子を自然状態で混合させて、飛来種子の定着・発芽率をより高めることができる。
すなわち、吸水性のある天然腐食性繊維はレーヨンだけでなく、羊毛などの動物性繊維を用いても、やし繊維や竹繊維などの強度のある植物性繊維を用いてもよく、耐蝕性のある生分解性プラスチック製腐食繊維としては、ポリ乳酸繊維以外の生分解性プラスチックを用いてもよい。さらには、金属繊維などを加えることも可能である。いずれにしても、薄綿3の分解速度は施工後1年以上が経過しても完全に分解しないものであることが望ましく、少なくとも半年以上は法面に対して雨風が直接的に当たり難くするものである。しかしながら、薄綿3を構成する繊維は何れも最終的には微生物によって完全に分解されるものであることが好ましい。
これらの特性に加えて、薄綿3は施工対象土壌の表面における凹凸に対応して柔軟に変形できる程度の柔軟性を有するものであることが望ましい。この点においてもレーヨンは柔軟性と吸水性に優れており、このレーヨンを30%混合してなる薄綿3は施工対象土壌の表面を包み込むように覆った状態で密着し、施工対象土壌の表面における保水を行って、種子の発芽および生育に必要な水分を確保することができる。一方、ポリ乳酸繊維はレーヨンに比べて分解速度が遅いので、薄綿3が長期間にわたって施工対象土壌の表面を保護することができ、これを雨風による浸食から保護し、冬期の凍上などの施工対象土壌の表面における急激な温度変化を抑えることができる。
図2に示すように、前記浸食防止材1はネット2を構成する緯糸2aと経糸2bに薄綿3の繊維3aを絡み付かせるようにして積層した状態で、上下一対のローラ10,11間に通して加圧することにより形成されている。12は両ローラ10,11の近傍部の上方に形成されたノズルであり、薄綿3側から空気13を吹きつけるものである。これによって、前記ネット2と薄綿3とをローラ10,11によって加圧する前に、薄綿3の繊維3aをネット2側により大きく起毛することができ、この繊維3aが確実にネット2に絡まるようにすることができる。なお、このノズル12による起毛を省略して、浸食防止材1の製造工程を簡略化してもよいことはいうまでもない。
薄綿3の表面への植物生育基材4や植物種子5の接着は、例えば、水溶性糊材をまぶした植物生育基材4や植物種子5を薄綿3の表面に散布し、加湿した後に加圧したり、薄綿3の表面に植物生育基材4や植物種子5を散布した後に、水溶性糊材(多数の気泡を包含させたいわゆる泡接着剤など)を塗布したり、薄綿3の表面に水溶性糊材(泡接着剤)を塗布した後に、植物生育基材4や植物種子5を散布するなど、任意の方法で行うことができる。また、薄綿3に対する植物生育基材4および/または植物種子5の接着を省略したり、水溶性糊材を用いたネット2と薄綿3の接着を省略してもよい。
図3は、前記浸食防止材1の製造に関する別の方法を説明する図である。図3に示すように、ローラ10,11の近傍部の下方に、バキューム装置14を設け、積層したネット2とシート上の薄綿3とをローラ10,11間に通す前に、ネット2側から空気13を吸引することにより、薄綿3の繊維3aをネット2側に起毛するようにしてもよい。
図4は上述のようにして製造された浸食防止防止材1を用いて法面Nを保護する浸食防止工法を示しており、図5は法面Nに敷設した後の浸食防止材1の状態を示す図である。
図4に示すように、法面Nに浸食防止防止材1を敷設するときは、浸食防止防止材1を図2,3に示す姿勢から上下に反転させて敷設する。このとき法面Nには凹凸があるので、法面Nと浸食防止材1との間に隙間が生じるところもあるが、隣合う浸食防止材1同士は隙間無く配置できるように、例えば逆U字上の止め串15などを用いて、浸食防止材1を法面Nに固定する。
図5(A)は施工直後の浸食防止材1と法面Nの状態を示す図、図5(B)は施工後に降雨が生じた時における状態を示す図、図5(C)は施工後数カ月が経過した時の施工現場の状態を示す図である。図5(A)に示すように、施工直後には法面Nと浸食防止材1の間に隙間が生じるものの、図5(B)に示すように、降雨によって薄綿3が雨水を吸収し、しなやかになると共に重くなることによりネット3から離脱して、植物生育基材4や植物種子5を覆うように地表面に密着し、施工後の早期に植物種子5の発芽を促すことができる。また、発根が確実となり、活着が良い。そして、降雨によってシート(薄綿)3の全面に設けたPVA繊維は溶解し、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維による繊維密度の密なネット状のシート(薄綿)3’に変化し、このシート3’が、地表面に密着している。
そして,図5(C)に示すように、施工後に数カ月の期間が経過しても、薄綿3は法面Nの表面を包むように保護し続けることができ、その間ずっと法面Nの表層土壌を雨風から保護することができる。また、薄綿3に適度の保水力があるので、植物種子5の生長に必要な水分を確保でき、乾燥から保護することもできる。つまり、植物種子5を確実に生長させることができる。すなわち、施工後に数カ月の期間が経過すると、レーヨン繊維が腐食・分解し、シート(薄綿)3は、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維によるシート(薄綿)3’よりも繊維密度の疎なネット状のシート(薄綿)3’’に変化する。この場合は、ポリ乳酸繊維により地表面浸食の防止が行われる。そして、シート3’,3’’には、図8(A)に示すように目合い(孔)Fが形成されうる。なお、図5(B),(C)には目合いを省略してある。
加えて、薄綿3はその繊維に飛来種子や落下種子を絡ませて捕捉することもできる。つまり、薄綿3によって飛来種子や落下種子を捕捉する種子捕捉領域を形成することにより、周辺植物の種子を用いた緑化を促進することができ、施工現場における本来あるべき生態系をできるだけ早期に回復することができる。特に、目合いFを介して飛来種子が直接地表面へ落下することになる。すなわち、目合いFを介して飛来種子が直接地表面Nに接することができ、飛来種子の早期の定着を促すことができる。つまり、薄綿3は目合いFを有することにより、微細土粒子の微移動(微細土粒子が流亡しない程度の移動)を許容させることができ、これによって飛来種子40と微細土粒子を自然状態で混合させて、飛来種子40の定着・発芽率をより高めることができる。
また、上述の実施例においては前記薄綿3に植物種子5を取り付ける例を示しているが、薄綿3に植物種子5を付けないことにより、周辺植物の種子だけを用いた緑化を行うことも可能であり、施工現場における生態系を脅かすおそれが一切なくなる。
さらに、上述の実施例では、本実施例の薄綿3には裏面に保水材、土壌改良剤および肥料などの植物生育基材4が取り付けられているので、薄綿3はこの植物生育基材4を施工対象となる土壌の表面に密着させた状態でこれを保持することができる。つまり、表層土壌の状態を植物の生長に適した環境にすることができる。
図6は、本発明の浸食防止材1の効果を検証したフィールド試験の結果を示す図であって、レーヨン100%の図9に示す薄綿51を形成した植生シート50と、PVA繊維30%とレーヨン繊維30%とポリ乳酸繊維40%とを混合して形成した薄綿3を形成した本発明の浸食防止材1とを比較して、フィールド試験を実施したときの測定結果をグラフにして示す図である。
図6に示すグラフは植生シート50と浸食防止材1を同じ法面Nに並べて敷設し、その施工後209日目(約7ヶ月後)以降の各時点における法面の表層安定状況を判断するものである。なお、前記植生シート50は施工後169日目(約5ヶ月)が経過した時点で既に腐食しており、腐食の進行度合いが部分毎に異なるため一部では完全裸地部も生じているのに対して、薄綿3は同じ時点においてPVA繊維の溶解並びにレーヨン繊維の一部腐食は生じているものの、ポリ乳酸繊維と残存レーヨン繊維がほぼ均一に分散して法面Nの全域を覆うことができている。
図6において、20は施工現場の外気温を示しており、21,22は前記薄綿51,3の下面における地表面の温度を示している。図6に示す範囲の温度変化を見ると、施工現場における外気温20は−3〜+25℃の範囲で変化しているが、PVA繊維30%とレーヨン繊維30%とポリ乳酸繊維40%を混合して形成した薄綿3によって覆われた法面Nにおける温度変化は+3〜18℃の範囲内に抑えることができることが分かる。一方、レーヨン100%の薄綿51によって覆われた法面Nの温度は+2〜25℃の範囲で変化しており、これは、図示していない法面Nの裸地における表面温度の変化とほゞ同じである。
前記薄綿51,3の下部における温度の経時変化の測定結果から明らかであるように、本発明のように薄綿3を構成する繊維が、PVA繊維とレーヨン繊維とポリ乳酸繊維とを混合してなるものであることにより、少なくとも半年は薄綿3が法面Nに対し降雨が直接的に当たることを防止して降雨による浸食から保護することができる。また、PVA繊維とレーヨン繊維とポリ乳酸繊維からなる繊維を混合してなる薄綿3は保温性に優れており、例えば、外気温が−3℃まで低下したときでも、薄綿3の下部では+3℃以上の温度を保つことができる。したがって、薄綿3によって冬期の凍上を効果的に防止し、法面Nの表層土壌が凍上することに伴う土壌の流亡を効果的に防止できる。
図7は本発明の第2実施例に係る浸食防止材30の構成を示す図である。図1〜6と同じ符号を付した部材は同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。図7において、31は前記ネット2の上部に位置するように前記ネット2に連結される上部ネット、32はこの上部ネット31をネット2に連結する中閉じ糸、33はこの中閉じ糸32によって閉じない部分を設けて両ネット2,31の間に形成された収容部、34はこの収容部33に収容させた肥料袋である。
前記上部ネット31は例えばPE系の合成樹脂からなるモノフィラメントを鎖編みすることにより形成された緯糸31a、この緯糸31aに直行する例えばPE系の合成樹脂空なるモノフィラメントを鎖編みすることにより形成された経糸31bとからなり、本実施例では経糸2b,31bを中閉じ糸32によって連結することにより、ネット2の上部の所定高さ位置に上部ネット31を配置できるようにしている。
前記中閉じ糸32は、例えば経糸2b,31bを適宜の間隔(例えば1本間隔)をおいて連結することにより、二重編み構造の網状体本体30aを形成するものである。また、中閉じ糸32が経糸2b,31bを連結しない部分を横方向に残すことにより、前記収容部33が形成されている。なお、本発明は中閉じ糸32によって両ネット2,31を連結するものであることに限定されるものではなく、前記経糸2b,31bを適宜の間隔(例えば1本間隔)をおいて編み込むようにして連結することも可能である。
前記PE系の合成樹脂からなるモノフィラメントによって編成された上部ネット31は、同じPE系の合成樹脂からなるフラットヤーンによって編成されたネット2に比べて熱収縮率が高いので、前記網状体本体30aの二重編構造を形成しやすくすることができる。すなわち、薄綿3を網状体本体30a(特にネット2)の下面に取付けたり、植物生育基材4や植物種子5を取付けたりするときに、網状体本体30aに薄綿3を熱融着させるための熱または接着剤を乾燥させるための熱を加える必要があるが、この熱によって、ネット2に比べて上部ネット31を大きく収縮させることができ、これによって、網状体本体30aの二重編構造を形成しやすくすることができる。
前記熱収縮率の違いは、上部ネット31を構成するモノフィラメントが押し出し形成処理によって製造されるものであるのに対し、ネット2を構成するフラットヤーンが熱をかけながら延伸処理して形成されるものであることによると考えられる。
前記肥料袋34は前記収容部33内に収容されるものであり、例えば耐腐食性の不織布によって構成された袋34a内に、少しずつ溶出する程度の養分を、少なくとも数カ月〜数年(本実施例の場合は3〜5年)といった長い肥効期間にわたって供給し続ける超遅効性の肥料34bを収容してなるものである。
なお、本実施例の肥料袋34には植物の種子を含ませていない例を示しているが、この肥料袋34内に施工後の早い時期に法面Nを緑化し、周辺植物の生態系に悪影響を及ぼさない先駆性植物の種子を収容してあってもよい。同様に、肥料袋34内に土壌改良材や保水材などの植物生育基材を収容してあってもよい。
前記浸食防止材30は、前記肥料袋34がほゞ等高線状になるようにして、浸食防止材30の最上部の前記肥料袋34から順にアンカー35によって固定する。このとき、前記上部ネット31に張力をかけることにより、上部ネット31を法面から浮かせた状態で配置する。本実施例の場合、肥料袋34の直径を2〜3cmにしており、ネット2と上部ネット31との間に2〜3cmの空間を形成するように構成してある。このとき、上部ネット31をネット2に比べて少し収縮させているので、上部ネット31に張力をかけた状態でもネット2を少し弛ませた状態にすることができ、ネット2を法面Nに沿わせることができる。
図7のように構成された浸食防止材30を法面Nに敷設することにより、法面Nの表層土壌を薄綿3によって包み込むように覆って、この表層土壌を浸食や凍上から保護することができ、植物種子5を法面Nに密着させているので、その発芽および生長を促すことができる。そして、薄綿3そのものが持つ保水性に加えて薄綿3に取り付けられた植物生育基材4などによって植物種子5の発芽生長を促進できる。
さらに、本実施例の浸食防止材30には薄綿8の上面に周辺植物の種子を捕捉させるための種子捕捉領域36が形成され、周辺植物の種子を取り入れた法面Nの緑化を行うものである。ここで、飛来した周辺種子や落下した周辺種子(以下、単に種子という)40が、浸食防止材30の上に落下すると、上部ネット31やネット2に当たるなどして、その落下速度が低下し、その運動エネルギーを吸収すると共に、落下方向が分散し、薄綿3の表面部分に留まる。このとき、ネット2の裏面に取り付けられた薄綿3の繊維が絡まるなどして、その種子41が薄綿3によって捕捉されて、その場に留まる。
この実施例でも、施工後の降雨や夜露によってPVA繊維が溶解してシート(薄綿)3から消失し、残ったレーヨン繊維およびポリ乳酸繊維により、飛来種子40が直接地表面Nへ落下するのを許容するネット状のものに変化し、この状態で地表面Nを覆うことになる。さらに、数カ月後にはレーヨン繊維が腐食・分解してシート(薄綿)3’から消失し、残ったポリ乳酸繊維のみで表層土壌浸食が防止されうるとともに、レーヨン繊維も消失したシート(薄綿)3’’は、飛来種子40が直接地表面Nへ落下するのを許容する程度に疎な状態のネット状のものに変化する〔図8(A),(B)参照〕。図8(A)に示すように、このネット状に変化したシート3’’は、いわゆる目合いFを有することになり、この目合いFを介して飛来種子40が地表面Nへ落下することになる。すなわち、目合いFを介して飛来種子40が直接地表面Nに接することができ、飛来種子40の早期の定着を促すことができる。つまり、薄綿3は目合いFを有することにより、微細土粒子の微移動(微細土粒子が流亡しない程度の移動)を許容させることができ、これによって飛来種子40と微細土粒子を自然状態で混合させて、飛来種子40の定着・発芽率をより高めることができる。
前記ネット3や上部ネット31は、種子40を通すことができる程度の目合いを有するものの薄綿3によって捕捉された種子41に強い風が直接的に当たらないように風除けとしても機能して種子41を保護する。また、薄綿3によって捕捉された種子は薄綿3から水分や養分を得ることができるので、容易に発芽し生長することができる。
一方、落下した種子40が例えばドングリのような転がりやすい種子である場合などには、薄綿3の繊維に絡まることなく、外部からの風を受けるなどして薄綿3の表面を転がることが考えられる。しかしながら、上部ネット31によって上部が覆われているので、一旦落下した種子40は風によって吹き飛ばされることなく重力によって谷側に移動する。そして、符号42に示す種子のように、肥料袋34によって形成される小段に当接して留まる。このとき、肥料袋34を等高線状に配置してあるので、種子42がネット2の上面を転がり落ちることがあったとしても、これを肥料袋34によって受け止めることができる。そして、前記肥料袋34は、これによって受け止めた種子42を含む周辺の種子に養分を供給することができる。
上述するように、本実施例の浸食防止材30は、周辺植物の種子40を取り入れた緑化を行うことができるので、上述の実施例では前記薄綿3が植物生育基材4および植物種子5を取り付けた例を示しているが、薄綿3に対する植物種子5の取付けを省略してもよいことはいうまでもない。同様に、法面Nの状態が良い場合には薄綿3に対する植物生育基材4の取付けを省略してもよい。
加えて、本実施例における上部ネット31はモノフィラメントのように熱収縮率の高い繊維によって形成されているので、施工後に夏期の太陽熱などによって収縮して上部ネット31にかかる張力を強く保つことができると考えられる。つまり、網状体本体30aの立体的な二重網構造を長期間にわたって保つことができる。
そして、前記薄綿3を構成する繊維は、既に詳述したように、PVA繊維と、レーヨン繊維と、ポリ乳酸繊維とを混合してなり、そのうちの一つの繊維が吸水性を有するものであり、かつ、少なくとも半年は薄綿が機能するように、この薄綿の分解速度を調整したものである。したがって、本実施例の浸食防止材30を用いることにより、種子5,41,42が発芽生長して法面Nに根付くまでの長い期間(少なくとも半年以上)にわたって、薄綿3によって法面Nの表層土壌を降雨などによる浸食や凍上から保護しつつも、微妙な微細土粒子移動は故意に生じさせることができる。これによって、飛来種子40が薄綿3によって覆われている地表面ではなく土の中に埋もれる状態が形成され、この状態は飛来種子40の上に薄っすら前記土が被さる状態であり、そのため、より早期な飛来種子40の定着・発芽を促すことができ、植物による法面Nの緑化を確実に行うことができる。
第1実施例に係る浸食防止材の構成を示す斜視図である。 前記浸食防止材の製造方法の一例を示す図である。 前記浸食防止材の製造方法の別の例を示す図である。 前記浸食防止材を用いた浸食防止工法を説明する図である。 前記浸食防止材を敷設した後の状態を示す図である。 本発明の浸食防止材による効果を検証する実測データを示す図である。 第2実施例に係る浸食防止材の構成および浸食防止工法の例を示しており、降雨に遭遇しない施工直後の状態を示す図である。 (A)は、この発明の使用状態を示す構成説明図であり、飛来種子の早期の定着を促すため薄綿に目合いが形成されている。(B)は、その平面図てある。 (A)は、従来型のレーヨン製薄綿を備えた法面緑化用の植生シートの使用状態を示す構成説明図である。(B)は、その植生シートの平面図てある。
1,30 浸食防止材
2 ネット(またはマット)
3 シート(薄綿)
31 上部ネット
36 種子捕捉領域
40,41,42 周辺植物からの飛来種子
N 法面

Claims (4)

  1. 溶解の過程で粘着性を持つ水溶性繊維と、分解速度の異なる2種以上の繊維とを混合し繊維を相互に絡み合わせてなるシートを有し、水溶性繊維の溶解による粘着性によって種子の定着を行うと共に土壌を膨潤な状態として保水性を高め、飛来種子の定着・発芽率を向上させたことを特徴とする浸食防止材。
  2. 前記分解速度の異なる2種以上の繊維が、天然腐食性繊維と、この天然腐食性繊維よりも分解速度の遅い生分解性プラスチック製腐食繊維とを含む請求項1に記載の浸食防止材。
  3. 前記水溶性繊維がポリビニルアルコール繊維であり、前記天然腐食性繊維がレーヨン繊維であり、前記生分解性プラスチック製腐食繊維がポリ乳酸繊維である請求項2に記載の浸食防止材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の浸食防止材を、前記シートが地表面に当接するように敷設した状態で固定することを特徴とする浸食防止工法。
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