JP5041546B2 - 作業用車両 - Google Patents

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本発明は,例えば,走行機体に各種の作業機を装着して成るトラクタ等のような作業用車両に関するものである。
一般に,この種の作業用車両においては,その走行機体に搭載したエンジンによって,前進走行又は後進走行に駆動するとともに,その走行機体に装着した各種の作業機を駆動することに加えて,前記作業機の昇降用油圧機構等の各種油圧機器に対して作動油を供給するための油圧ポンプをも,前記エンジンにて駆動するように構成している(例えば,特許文献1及び2参照)。
また,前記作業用車両においては,前記エンジンの回転数を,コモンレール方式等のように燃料噴射制御手段により,各種作業モードに応じた任意の所定回転数に維持し,この任意に回転数の状態で,当該エンジンによる走行の駆動,作業機の駆動及び油圧ポンプの駆動を行うことにより,各種の作業を行うように構成していることも,従来から良く知られている。
特開平8−187009号公報 特開平10−89111号公報
従来の作業用車両においては,前記したように,前記エンジンにおける回転数が,前記したように,常時,任意の回転数に維持されていることにより,このエンジンにて駆動される前記油圧ポンプとしては,前記した任意の回転数において,前記昇降用油圧機構を,作業機の重量負荷が大きい場合においても確実に作動することに必要な油量を吐出するものにしなければならず,従って,前記作業機における重量負荷が大きい場合に対応するために,吐出油量の多い油圧ポンプを使用しなければならないから,油圧ポンプの大型化及び価格のアップを招来するばかりか,大型の油圧ポンプをエンジンにて駆動することのために,エンジンにおける燃料消費量の増大を招来するという問題があった。
本発明は,これらの問題を解消することを技術的課題とするものである。
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「燃料噴射制御手段を備えたエンジンにて無段変速機構を介して走行駆動される走行機体と,この走行機体に昇降可能に装着され前記エンジンにて駆動される作業機と,少なくとも前記作業機の昇降用油圧機構に作動油を供給するために前記エンジンにて駆動される油圧ポンプとを備えて成る作業用車両において,
前記昇降用油圧機構による作業機の上昇作動を検出する手段を設け,前記作業機を上昇作動しているとき前記検出手段にて検出した前記上昇作動の速度が遅いか,又は,前記検出手段が前記上昇作動を検出しないとき,前記エンジンの回転数を前記燃料噴射制御手段にてアップするように構成するとともに,前記無段変速機構を,前記走行機体における走行速度が変化しないように変速作動する構成にした。」
ことを特徴としている。
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記作業機を所定の高さにまで上昇したとき,前記エンジンの回転数アップを停止するとともに,前記無段変速機構を元の変速位置に戻すように構成した。」
ことを特徴としている。
請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記エンジンの回転数アップ及び前記無段変速機構の変速作動を行う場合と,行わない場合とに切り換え可能に構成した。」
ことを特徴としている。
請求項1の記載によると,昇降用油圧機構による作業機の上昇作動が,作業機の重量負荷が大きい場合等において,遅いときとか,作業機を上昇作動を行うことができないときに限り,エンジンの回転数のアップが行われて,油圧ポンプにおける吐出油量が増加されることにより,前記作業機の確実な上昇作動が実行される。
これにより,前記油圧ポンプとしては,前記した従来の場合によりも吐出油量の少ないものを使用できるから,前記油圧ポンプの小型化と,低価格化を図ることができるとともに,小型のエンジンをエンジンにて駆動することのために,エンジンにおける燃料消費量を節減できる。
その一方で,作業機の上昇作動が遅いときとか,作業機を上昇作動することができないときには,前記エンジン回転数のアップを行うことに加えて,前記無段変速機構を利用して,走行速度が変化しないように維持されるので,走行速度がオペレータの意志とは無関係に変化することを回避できて,安全に作業を行うことができる。
請求項2の記載によると,エンジンの回転数のアップ及び無段変速機構による走行速度の維持を,作業機の上昇作動を完了するまでに限定できるから,燃料消費量の低減を達成できるとともに,操作の負担を軽減できる。
請求項3の記載によると,オペレータが,エンジンの回転数のアップ及び無段変速機構による走行速度の維持を行う場合と,これらを行わない場合とに任意に選択できるから,作業用車両の使い勝手を向上できる。
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図7の図面について説明する。
図1及び図2において,符号1は,トラクタを,符号2は,作業機としての一つの例であるロータリ耕耘機2を各々示す。
前記ロータリ耕耘機2は,従来から良く知られているように,前記トラクタ1の後部に,左右一対のロアーリンク3と,一本のトップリンク4とによって昇降可能に連結されており,また,前記ロータリ耕耘機2は,前記トラクタ1の後部に設けた昇降用油圧シリンダ5によって昇降動するように構成されていることに加えて,当該ロータリ耕耘機2を水平に保持するように制御するための水平制御用油圧シリンダ6が設けられている(図3参照)。
前記トラクタ1は,従来から良く知られているように,左右両側の前車輪7と左右両側の後車輪8とで支持した走行機体9に,多気筒のディーゼルエンジン10を搭載するとともに,操縦ハンドル11及び操縦座席12等を有するキャビン13を設けた構成であり,前記ディーゼルエンジン10からの出力は,無段変速機構14を介してミッションケース15に入り,このミッションケース15から前記両前車輪7及び両後車輪8に伝達されてこれを駆動することにより,前記トラクタ1を前進走行又は後退走行するように構成されている。
また,前記ディーゼルエンジン10からの出力は,PTO軸16を介して前記ロータリ耕耘機2に伝達されてこれを駆動することにより,所定の耕耘作業を行うように構成されている。
更にまた,前記ディーゼルエンジン10からの出力は,前記昇降用油圧シリンダ5及び前記水平制御用油圧シリンダ6に対して作動油を供給するための油圧ポンプ17に伝達されてこれを駆動するように構成されている。
なお,前記トラクタ1におけるキャビン13には,ブレーキペタル43,メインクラッチペタル44,前記無段変速機構14を変速作動する主変速操作レバー45,前記ミッションケース15を変速作動する副変速操作レバー46,前記ロータリ耕耘機2の昇降を司る昇降操作レバー47及び前記PTO軸16への動力伝達を断続するためのPTOクラッチレバー48等が設けられている。
そして,前記ディーゼルエンジン10における排気マニホールド18から大気への排気ガス管路19には,パティキュレートフィルタ(DPF)20及びNOx触媒21等のような各種の排気ガス浄化装置が設けられている。
前記ディーゼルエンジン10は,図4に示すように,蓄圧式燃料噴射制御手段22にて制御されている。
前記蓄圧式燃料噴射制御手段22は,前記ディーゼルエンジン10の各気筒ごとのソレノイドインジェクタ23に燃料を分配するコモンレール24を,蓄圧室として利用するものである。
すなわち,燃料タンク25内の燃料を,前記ディーゼルエンジン10にて駆動のサプライポンプ26に燃料フィルタ27を経て吸入し,このサプライポンプ26にて加圧した高圧燃料を,吐出管路28を介して前記コモンレール24に送り,ここに蓄えるようにする。
前記コモンレール24に蓄えられた高圧燃料は,個別の燃料供給管路29を介して前記各気筒ごとのソレノイドインジェクタ23に供給される。
前記各ソレノイドインジェクタ23を,エンジンコントローラ30からの指令にて開作動することにより,前記高圧燃料を,各気筒に対して噴射供給する。
なお,この各気筒への燃料噴射は,図5に示すように,上死点(TDC)を挟む付近でのメイン噴射Aにて行われる。また,各気筒への燃料噴射は,前記のメイン噴射Aに加えて,NOx及び騒音の低減を目的として前記上死点(TDC)よりクランク角度で約60度だけ以前のクランク角度θ1の時期における少量のパイロット噴射Bとか,騒音の低減を目的として前記上死点(TDC)直前のクランク角度θ2の時期におけるプレ噴射Cとか,パティキュレートの低減及び排気ガス浄化促進を目的として前記上死点(TDC)後のクランク角度θ3及びθ4の時期におけるアフタ噴射D及びポスト噴射Eとかも行うように構成している。
一方,前記各ソレノイドインジェクタ19における余剰燃料は,個別のリターン管路31及び共通のリターン管路32を介して前記燃料タンク25に戻るように構成されている。
前記サプライポンプ26には,圧力制御弁33が,前記コモンレール24には圧力センサー34が各々設けられている。
前記圧力制御弁33は,前記エンジンコントローラ30からの指令にて,前記サプライポンプ26から前記燃料タンク25にリターンする燃料量を増減するものであり,これによって,前記コモンレール24への燃料吐出量を調整して,前記コモンレール24内における燃料噴射圧力を制御することができる。
前記エンジンコントローラ30は,具体的には,前記ディーゼルエンジン10を任意の回転数にする場合における目標燃料噴射圧力を設定し,前記コモンレール24内における燃料噴射圧力が前記目標燃料噴射圧力と一致するように,前記圧力制御弁33を介してフィードバック制御している。
前記エンジンコントローラ30とは別の作業用コントローラ49は,前記エンジンコントローラ30に対して,前記ディーゼルエンジン10を,以下に述べる各種作業モードに応じて任意の回転数で運転するようを指示を出力している。
例えば,前記ディーゼルエンジン10の回転数を,前記ロータリ耕耘機2を上昇作動した状態での路上モード,ロータリ耕耘機2を低負荷で作動しながら走行する軽作業モード,及びロータリ耕耘機2を重負荷で作動しながら走行する重作業モード等のような各種作業モードの各々において最適とするように,任意の回転数に維持するように構成している。
なお,前記コモンレール24には,当該コモンレール24内における燃料噴射圧力が必要以上に高くなることを防止するための圧力リミッター弁35が,前記共通リターン管路32との間に設けられている。
また,前記ディーゼルエンジン10の回転数は,前記キャビン13に設けたアクセル操作レバー50(図2参照)の操作により,前記蓄圧式燃料噴射制御手段22を利用して,前記エンジンコントローラ30の制御に優先して任意に回転数に変更できるように構成されている。
そして,前記作業用コントローラ49は,前記昇降用油圧シリンダ5に対して設けた上昇作動センサー36における検出信号を入力するとともに,前記トラクタ1が前進又は後退走行するときにおける走行速度センサー40からの検出信号を入力としている。
前記昇降用油圧シリンダ5を,前記油圧ポンプ17からの油圧回路37に設けた油圧切換弁38,39の前記昇降操作レバー47による切り換え操作にて,前記ロータリ耕耘機2の上昇に作動した状態において,前記昇降用油圧シリンダ5におけるロータリ耕耘機2の上昇への作動速度が遅いと判断するか,或いは,前記昇降用油圧シリンダ5がロータリ耕耘機2の上昇に作動しないと判断した場合には,前記エンジンコントローラ30に対して,蓄圧式燃料噴射制御手段22のコモンレール24内における燃料噴射圧力を,前記目標燃料噴射圧力よりも適宜圧力だけ高くする指示を出力するという構成にしている。
これに加え,前記作業用コントローラ49は,前記昇降用油圧シリンダ5におけるロータリ耕耘機2の上昇への作動速度が遅いと判断するか,或いは,前記昇降用油圧シリンダ5がロータリ耕耘機2の上昇に作動しないと判断した場合には,前記走行速度センサー40からの検出信号に基づいて,前記無段変速機構14を変速作動することにより,前記トラクタ1における走行速度が変化しないように,換言すると,走行速度を略一定に維持するという構成にしている。
これにより,前記ディーゼルエンジン10は,その各気筒への燃料噴射量が増加されるから,その回転数がアップされる一方,トラクタ1における走行速度が略一定に維持される。
このディーゼルエンジン10における回転数のアップにより,前記油圧ポンプ17における吐出油量が増大するから,前記ロータリ耕耘機2の上昇作動を確実に実行することができる。
一方,前記作業用コントローラ49は,前記上昇作動センサー36から前記ロータリ耕耘機2が所定の上昇位置まで上昇したことの信号が入ると,前記コモンレール24内における燃料噴射圧力を,前記目標燃料噴射圧力にまで下げることにより,前記エンジンコントローラ30に対して,前記回転数のアップを停止する指示を出力するとともに,前記無段変速機構14における変速作動を元に戻すように構成している。
すなわち,図6のフローチャートで示すように,先ず,ステップS1で,前記ロータリ耕耘機2を上昇に操作したか否か判別し,上昇に操作したときには,ステップS2で,前記昇降用油圧シリンダ5を作動することにより,前記ロータリ耕耘機2を上昇作動を開始する。
次に,ステップS3で,前記ロータリ耕耘機2の上昇作動を,前記上昇作動センサー36にて検出し,ステップS4で,トラクタ1における走行速度を検出する。
次いで,ステップS5で,前記上昇作動センサー36が上昇作動を認識しないとき,換言すると,前記ロータリ耕耘機2が上昇作動しないか,又は,その上昇作動の速度を遅いと判断した場合には,ステップS6に移行して,前記ディーゼルエンジン10における回転数のアップを実行し,ステップS7で,前記無段変速機構14による走行速度の維持を実行する。
次いで,ステップS8で,前記上昇作動センサー36の検出に応じて前記ロータリ耕耘機2の上昇が完了したと判断されたときには,ステップS9に移行して,前記ディーゼルエンジン10における回転数のアップを停止し,ステップS10で,前記無段変速機構14による走行速度の維持を解除する。
これらにより,前記ディーゼルエンジン10における回転数のアップ,及び,回転数アップに基づく走行速度の維持を,前記ロータリ耕耘機2の上昇作動を完了するまでに限定することができる。
また,前記作業用コントローラ49は,前記ディーゼルエンジン10における負荷を検出する負荷センサー41からの信号を入力とし,前記エンジンコントローラ30に対して,前記ディーゼルエンジン10における回転数のアップを,図7に示すように,前記ディーゼルエンジン10における負荷に正比例して行うようにした指示を出力する構成にしている。
これにより,エンジンの回転数のアップを,エンジンの負荷,ひいては,前記作業機の重量負荷の増大に応じて行うことができるから,エンジン回転数を,前記作業機の重量負荷にかかわらず,必要以上にアップすることを回避できる。
更にまた,前記作業用コントローラ49は,前記油圧ポンプ17からの油圧回路37における作動油の温度センサー42からの信号を入力とし,前記エンジンコントローラ30に対して,前記ディーゼルエンジン10における回転数のアップを,図8に示すように,前記作動油の温度に反比例して行うようにした指示を出力する構成にしている。
これにより,作動油の温度が低くてその流れ抵抗が大きいときには,回転数のアップを大きくし,作動油の温度が高くてその流れ抵抗が小さいときには,回転数のアップを小さくできることができるから,エンジン回転数を,作動油の温度にかかわらず,必要以上にアップすることを回避できる。
なお,本発明においては,前記実施の形態におけるエンジンコントローラ30と,作業用コントローラ49とを,一つのコントローラにて兼用することができるほか,前記実施の形態で示したように,トラクタ1にロータリー耕耘機2を装着して成る作業用車両に限らず,乗用型田植機等のように走行機体に,各種の作業機を昇降可能に装着した構成の作業用車両にも適用できることはいうまでもない。
ロータリ耕耘機を装着したトラクタの側面図である。 図1の平面図である。 油圧回路を示す図である。 制御のシステムを示す図である。 燃料の噴射時期を示す図である。 エンジン回転数アップのフローチャトである。 エンジン回転数アップとエンジン負荷との関係を示す図である。 エンジン回転数アップと作動油の温度との関係を示す図である。
符号の説明
1 トラクタ
2 ロータリ耕耘機(作業機)
5 昇降用油圧シリンダ(昇降用油圧機構)
7 前車輪
8 後車輪
9 走行機体
10 ディーゼルエンジン
14 無段変速機構
22 蓄圧式燃料噴射制御手段
24 コモンレール
26 サプライポンプ
30 エンジンコントローラ
36 上昇作動センサー
40 走行センサー
41 負荷センサー
42 温度センサー
49 作業用コントローラ

Claims (3)

  1. 燃料噴射制御手段を備えたエンジンにて無段変速機構を介して走行駆動される走行機体と,この走行機体に昇降可能に装着され前記エンジンにて駆動される作業機と,少なくとも前記作業機の昇降用油圧機構に作動油を供給するために前記エンジンにて駆動される油圧ポンプとを備えて成る作業用車両において,
    前記昇降用油圧機構による作業機の上昇作動を検出する手段を設け,前記作業機を上昇作動しているとき前記検出手段にて検出した前記上昇作動の速度が遅いか,又は,前記検出手段が前記上昇作動を検出しないとき,前記エンジンの回転数を前記燃料噴射制御手段にてアップするように構成するとともに,前記無段変速機構を,前記走行機体における走行速度が変化しないように変速作動する構成にしたことを特徴とする作業用車両。
  2. 前記請求項1の記載において,前記作業機を所定の高さにまで上昇したとき,前記エンジンの回転数アップを停止するとともに,前記無段変速機構を元の変速位置に戻すように構成したことを特徴とする作業用車両。
  3. 前記請求項1又は2の記載において,前記エンジンの回転数アップ及び前記無段変速機構の変速作動を行う場合と,行わない場合とに切り換え可能に構成したことを特徴とする作業用車両。
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