JP5040703B2 - 増幅器 - Google Patents

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Description

本発明は、増幅器に関するものであり、より具体的にはJ級動作を行う増幅器に関するものである。
増幅器は、その動作によって区別され、A級、AB級、B級などといわれる。非特許文献1には、A級(Class A)、AB級(Class AB)、B級(Class B)のほか、C級(Class C)、D級(Class D)、E級(Class E)、F級(Class F)、FD級(Class FD)が開示され、さらに、J級(Class J)が開示されている。
非特許文献1におけるJ級の増幅器の基本回路は、図8に示すとおりである(非特許文献1 p71,figure4.2)。なお、図8では、電界効果トランジスタTrは、半波整流電流源として表されている。また、図8に示すRLは、基本波(ω0=2πf0)の実効負荷とし、その値は、RL=Vdc/(Imax×0.5)と表すものとする。
また、図中のId,IF,Idc,Icについては、下記式のように表される。
Figure 0005040703
図8に示すJ級増幅器の特徴は、電界効果トランジスタTrのドレイン−ソース間にCdsが接続されているとともに、Xds=1/ω0Cdsとした場合に、Xds/RLが1を超えるように、Cdsの値が設定されていることである(非特許文献1(p.68))。
また、図9は、従来のJ級増幅器の電圧電流波形(ドレイン−ソース電圧Vdsとドレイン電流Idの波形)を示している。
Steve C. Cripps,"RF Power Amplifiers for Wireless Communications",Second Edition,(米国),ARTECH House Inc,2006,p.68-77
従来のJ級増幅器では、図9に示すように電圧波形Vdsと電流波形Idが対称的では無かった。つまり、ドレイン−ソース電圧Vdsとドレイン電流Idとの位相差が180°ではなかった。この結果、電圧波形Vdsと電流波形Idとの重なりが生じ、増幅器の効率に関し、改善の余地があった。
そこで、本発明は、J級動作をする増幅器において、電圧波形と電流波形の重なりを小さくすることを目的とする。
本発明は、入力端となるゲート並びに出力端となるドレイン及びソースを有する電界効果トランジスタ部と、前記ドレインと前記ソースとの間に接続された容量性インピーダンス部とを有してEJ級動作を行う増幅器であって、
前記容量性インピーダンス部よりも後段に位置するように、前記ドレインに接続されたインダクタと、前記インダクタを介して前記容量性インピーダンス部に並列接続されたキャパシタとを有し、
前記インダクタは、基板上に形成されたマイクロストリップラインによって所定のインダクタンスを確保するものであり、
前記容量性インピーダンス部のインピーダンスをXdsとし、前記容量性インピーダンス部よりも後段側のインピーダンスの実部をZ1(Re)とするとき、Xds/Z1(Re)>1の関係を満たし、かつ、前記インダクタのインピーダンスが前記容量性インピーダンス部のインピーダンスXds以上とすることで、前記出力端から後段側を見たときの、増幅器の基本波周波数の2倍波におけるインピーダンスが容量性となることを確保する、ことを特徴とするものである。
上記のような増幅器では、電解効果トランジスタ部の出力端から後段側を見たときのインピーダンスが容量性となり、電流波形のシフト(45deg)が生じることにより、電圧波形と電流波形の重なりを小さくすることができる。また、必要なインダクタンスを、基板上に形成されたマイクロストリップラインによって確保するようにした。
また、上記増幅器において、キャパシタは、平行平板コンデンサであって、その一方の電極は、基板上において、マイクロストリップラインから導電部を連ねて設けられているものであってよい。
この場合、マイクロストリップラインの基板上にキャパシタを設けることができる。ワイヤ接続をマイクロストリップラインで行えば、キャパシタにはワイヤ接続が必要ないので、小さな面積のためワイヤボンディングができない、もしくは困難であるといった問題が解消され、小さなキャパシタ接続に好適な構成となる。
本発明の増幅器によれば、級動作を前提とする動作をする増幅器において、電圧波形と電流波形の重なりを小さくすることができる。また、所定のインダクタンスを、基板上に形成されたマイクロストリップラインによって確保するようにしたので、インダクタンス確保のために長いワイヤを設ける必要がなくなり、ワイヤの変形や、ワイヤとその相手方との接合部が破断する問題を解消することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
《回路から見た実施形態》
図1は、従来のJ級増幅器を改良した本発明の第1実施形態に係る増幅器1を示している。なお、以下では、実施形態に係る増幅器1の動作級を、「EJ級(Class EJ)」というものとする。
図1に示すEJ級増幅器1は、例えば、無線通信用の電力増幅器として使用されるものであり、特に、GHz帯(例えば、2GHz程度)の通信に適したものである。このEJ級増幅器1は、電界効果トランジスタ部として一つの電界効果トランジスタTrを有している。この電界効果トランジスタTrのゲートGが増幅器1の入力端子Pinに接続され、ドレインDが出力端となっている。電界効果トランジスタTrのドレインD−ソースS間には、容量性インピーダンス部となる第1キャパシタCdsが接続されている。
さらに、EJ級増幅器1は、第1キャパシタCdsよりも後段側に位置するように、ドレインDと出力端子Poutとの間に接続されたインダクタLsを有している。また、EJ級増幅器1は、インダクタLsを介して、第1キャパシタCdsに並列接続された第2キャパシタCsを有している。
つまりEJ級増幅器1では、電界効果トランジスタTrの出力側には、第1キャパシタCds、インダクタLs、及び第2キャパシタCsからなるC−L−Cのπ型回路が接続されている。このEJ級増幅器1が、従来のJ級増幅器と異なる点は、インダクタLs及び第2キャパシタCsからなるLC回路3が追加されている点にある。
なお、図1では、EJ級増幅器1に接続される出力負荷(整合回路)をRL1として示した。
さて、図8に示すように従来のJ級増幅器において生じていた電圧波形Vdsと電流波形Idの重なりを小さくするため、本実施形態のEJ級増幅器1では、インダクタLsの値を適切に設定することにより、図1のインピーダンスZ0(電界効果トランジスタのドレインD・ソースSから出力側にみたインピーダンス)が容量性になるようにしている。
つまり、本実施形態では、インダクタLsの基本波周波数でのインピーダンス(2πfLs=ωLs)が、容量性インピーダンス部Cdsのインピーダンス(Xds=1/2πfCds=1/(ωCds))以上の値になるように設定されている。
つまり、本実施形態では、ωLs≧1/(ωCds)に設定されている。
以下、従来のJ級増幅器において生じていた電圧波形Vdsと電流波形Idsの重なりを小さくするために、ωLs≧1/(ωCds)とすればよいことについて、詳しく説明する。
まず、図9に示す電圧波形Vdsと電流波形Idとでは、ピーク同士の位相差Δθが133degであり、これらの波形の位相差Δθを180degにして、電圧波形Vdsと電流波形Idの重なりを無くすには、電流波形Idの位相を、約45degずらせばよい。つまり、電流波形Idを図9の右へ45degシフトすればよい。
電流波形Idの位相を、約45degずらせばよい理由は下記のとおりである。
すなわち、J級増幅器の電圧波形Vds(図9参照)を式で表すと、下記式(1)のとおりである。
Figure 0005040703
上記式(1)から、電圧波形Vds(θ)がピークとなる位相θvpを求める。ピーク位相θvpを求めるには、下記式(2)(3)を解けばよい。
Figure 0005040703
Figure 0005040703
つまり、式(2)より、
Figure 0005040703
であり、式(3)より、
Figure 0005040703
である。
一方、図9に示す従来のJ級動作時のパラメータは、それぞれ下記のとおりである。
Figure 0005040703
上記パラメータを、式(4)及び(5)に代入すると、θvp=317[deg]が得られる。従って、電圧波形Vdsのピーク位相θvpと電流波形Idのピーク位相θipの差Δθは、図9に示すように133degとなる。従って、電圧波形Vdsと電流波形Idを反転させてΔθ=180degとするためには、電圧波形Vdsと電流波形Idとの位相関係を、従来のJ級動作の場合よりも、約45deg(≒47deg=(180deg−133deg))ずらせばよい。
そして、本実施形態では、電圧波形Vdsと電流波形Idとの位相関係を45degずらすため、図1のインピーダンスZ0に関し、2倍波(2×ω0)でのインピーダンスZ0(2×ω0)を容量性(2倍波位相がほぼ−90deg)にしている。2倍波インピーダンスZ0(2×ω0)を容量性にすると、電流波形Id(基本波ω0)は、45degのシフト(図9での右シフト)が生じる。
増幅器1にJ級動作をさせつつ、2倍波インピーダンスZ0(2×ω0)を十分な容量性にするには、本発明者の検討の結果、ω0Ls≧1/ω0Cds(EJ級条件1)とすればよいことが判明した。ω0Ls≧1/ω0Cdsとすることで、第1キャパシタCdsから出力側にみたインピーダンスZ1に関し、|Z1(2ω0)|が、1/(2ω0Cds)に比べ、十分大きな値になる。
また、EJ級は、J級動作を前提とするため、従来のJ級増幅器にインダクタLs及び第2キャパシタCsを追加してもJ級動作条件の成立が必要である。ここで、図8に示す従来のJ級増幅器では、J級の動作条件は、Xds=1/ω0Cdsとおいた場合に、Xds/RL>1であった。
本実施形態のEJ級増幅器1では、従来のJ級増幅器のRLに相当するのは、第1キャパシタCdsから出力側にみたインピーダンスZ1の実部Z1(Re)である。
従って、EJ級増幅器1が、J級動作条件を維持するためには、Xds/Z1(Re)>1(EJ級条件2=J級動作条件)であり、この条件を満たせば、インダクタLs及び第2キャパシタCsが追加されても、最大の電力を供給できる。
Z1(Re)は、図1の回路の場合、具体的には、Z1(Re)=RL1・Xcs2/(RL12+Xcs2)によって求まる。なお、Xcs=1/ω0Csである。
また、Xds/Z1(Re)が2.5を超えると、効率の劣化が始まるので、Xds/Z1(Re)<2.5であるのが好ましい。つまり、1<Xds/Z1(Re)<2.5とすることで、EJ級増幅器をJ級動作条件で動作させつつ、効率劣化を防止できる。
なお、Xds/Z1(Re)を1以下とした場合、B級増幅器となる。
図1のEJ級増幅器では、例えば、基本波周波数2.0[GHz]、第1キャパシタCds=10[pF]、出力負荷RL1=50[Ω]とした場合、インダクタLsは0.7[nH]以上とし、第2キャパシタCsは4[pF]以上とすることで、J級動作においてEJ級条件1であるω0Ls≧1/ω0Cdsを満たすことができる。そして、上記条件では、2倍波位相(φ2)として、−80deg程度以上を確保でき、電圧波形Vdsと電流波形Idの重なりを小さくできる。
また、Cds=10[pF]、RL1=50[Ω]の条件では、Csを4〜6[pF]とすることで、Xds/Z1(Re)<2.5の条件も満たし、高効率を得ることができる。
なお、インダクタLsは、できるだけ大きい方が、2倍波位相が−90degにより近くなるため、第1キャパシタCds=10[pF]、出力負荷RL1=50[Ω]とした例では、Lsは0.8[nH]以上であるのが好ましい。この場合、2倍波位相(φ2)として−85deg以上が確保され、電圧波形と電流波形の重なりを非常に小さくできる。
つまり、2倍波位相(φ2)として−80deg以上好ましくは−85deg以上を確保できるようにインダクタLsの値を設定するとともに、Xds/Z1(Re)<2.5の条件も満たすように第2キャパシタCsの値を設定することで、電圧波形と電流波形の重なりを小さくしつつ、高効率なEJ級増幅器が実現できる。
なお、インダクタLsの上限としては例えば、1[nH]を採用できるが、特に限定されるものではない。
図2は、2倍波位相を−90degとしたEJ級増幅器1の電圧電流波形を示している。図2から明らかなように、電圧波形Vdsと電流波形Idとの重なりが、図9に比べて小さくなっている。この結果、EJ級増幅器1では、従来のJ級増幅器に比べて、9%程度最大効率を上昇させることができた。
図3は、第2実施形態に係る増幅器10を示している。この増幅器10においては、電界効果トランジスタ部は、複数(2個)の電界効果トランジスタTr1,Tr2を直列接続して構成され、容量性インピーダンス部は、各電界効果トランジスタTr1,Tr2のドレイン−ソース間に、それぞれキャパシタCds1,Cds2を接続して構成されている。
この第2実施形態によれば、キャパシタCds1,Cds2のキャパシタンスを、例えば、Cds1=Cds2=図1のCds、とすると、第2実施形態における容量性インピーダンス部のキャパシタンスCdsは、図1のCdsのキャパシタンスに比べて、半分になる。従って、第2実施形態における容量性インピーダンス部のドレインソース間容量性インピーダンス(1/2πf0Cds)を大きくすることができる。
なお、第2実施形態において、Cds1=Cds2である必要はない。また、第2実施形態において説明を省略した点については、第1実施形態と同様である。
図4は、第3実施形態に係る増幅器20を示している。この増幅器20は、図1に示す増幅器1と同様の電界効果トランジスタ(Tr1,Tr2,Tr3)、キャパシタ(cds1,cds2,cds3)及びインダクタ(Ls1,Ls2,Ls3)を複数個(3個)並列接続して構成して、並列動作するように構成したものである。この増幅器20において、各トランジスタTr1,Tr2,Tr3のゲートには、共通の入力端子Pinから入力が与えられる。また、各インダクタLs1,Ls2,Ls3からの出力P1out,P2out,P3outは、合成されて共通の出力Poutとなる。
この増幅器20のように複数の増幅器要素(電界効果トランジスタ、キャパシタ、インダクタ)を並列動作させることで高出力が得られる。
《実装技術から見た実施形態》
次に、実装技術から見た増幅器の実施形態について、図4に示した増幅器20を例に挙げて説明する。まず、参考例としての増幅器から説明する。
図5は、図4に示した増幅器20を、パッケージベース200に収めた状態を示す略図である。図において、半導体ダイチップ201には、図4の電界効果トランジスタTr1,Tr2,Tr3及び第1キャパシタCds1,Cds2,Cds3が含まれている。半導体ダイチップ201の上面には導電体からなる3枚のパッド202が設けられており、それぞれ、電界効果トランジスタTr1,Tr2,Tr3の各ドレインと接続された出力端子となっている。なお、電界効果トランジスタTr1,Tr2,Tr3の各ソースは、共通の接地側電路(図示せず。)に接続され、外部のリード線(図示せず。)と接続可能である。
半導体ダイチップ201の横には、図4の第2キャパシタCsに相当する矩形の平行平板コンデンサ203が設けられ、その上面には、導電体からなる一方の電極204が形成されている。他方(裏面)の電極は、共通の接地側電路に接続されている。図4のインダクタLs1,Ls2,Ls3に相当する3本のワイヤ205のそれぞれの一端は、半導体ダイチップ201における3つのパッド202にそれぞれ接続され、他端は全て平行平板コンデンサ203の電極204に接続されている。また、電極204は、ワイヤ206を介して、外部リード207と電気的に接続されている。
増幅器においてEJ級を実現するには、前述のEJ級条件1より、大きな直列インダクタが必要である。図5の参考例では、大きな直列インダクタを得るために、
(A)半導体ダイチップ201と平行平板コンデンサ203とを互いに接続するワイヤ205を、インダクタとして利用すること、が考えられる。
また、前述のEJ級条件2を考慮すれば、さらに、小さな並列キャパシタンス(Cs)であることが好ましい。そのためには、
(B)平行平板コンデンサ203の面積をなるべく小さくすること、が考えられる。
一方、ワイヤ205は、以下の3つの機能を備える必要がある。
すなわち、(i)DC及びエンベロープ帯域の低損失電力給電、(ii)基本波帯域RF信号の低損失出力、(iii)2倍波帯域RF信号の遮断、そして、それらの機能を有しつつ、(iv)ワイヤボンディング(組立)及び性能抽出(調整)が容易であることが重要である。
まず、上記(A)の構成に関して、ワイヤ205をインダクタ素子として利用するため、相応の長さを確保する必要がある。所定のインダクタンスLは、
L=0.4593×log10(D/d) [nH/mm] ...(6)
と表すことができる。ここで、Dはパッケージベース200内での高さ、dはワイヤ径である。式(6)は、通常同軸線路の中心導体のインダクタンスを求めるものである。例えば、0.9[nH]を得るためには、この式(6)式より、D=3[mm]、d=20[μm](=0.02[mm])としたならば、L=1[nH/mm]となる。
一方、高出力の半導体ダイチップ201上には、通常、並列に複数個(n個とする。)のトランジスタが設けられ、ワイヤの本数もn本となる。n本のワイヤがつながれたとすれば、その全体のインダクタンス値を0.9[nH]とするためには、1本当たりのインダクタンス値は0.9×n[nH]が必要である。
その結果、そのワイヤ長WLは、
WL=(0.9×n)/L=0.9×n[mm] ...(7)
となる。図5に示すようにn=3であれば、WL=2.7[mm]となる。トランジスタの並列個数を増加させれば、ワイヤ長WLは、さらに大きくなる。
半導体ダイチップ201の幅が数mmであるのに対して、また、ワイヤ205の直径が0.02mmしかないことを考慮すれば、式(7)の結果が示す数値はかなり長い。また、ワイヤでインダクタンスを確保する必要がない場合(単に接続すればよい場合)のワイヤ長WLは1mm程度で足りるため、上記数値は長いといえる。
また、直径0.02mmのワイヤ205が例えば10本でそれぞれ10mm引き回すということは、振動等によるワイヤ205の変形や、パッド202又は電極204との接合部の破断の問題がある。また、複数のワイヤ205を並列接続するために、ワイヤ205間で磁気結合するようなことがあれば、交流電流に偏りが生じ、相対的に増した交流電流によって、ワイヤ205が溶断してしまう恐れがある。
そこで、図6は、実装技術を重視した本願発明の一実施形態による増幅器20の回路図である。図4との違いは、各トランジスタTr1,Tr2,Tr3に1対1で対応したインダクタを設けることなく、各各トランジスタTr1,Tr2,Tr3に対して共通であって、かつ、直列に接続されるインダクタLs−sを設けた点であり、その他は図4と同様である。
図7は、図6に示した増幅器20を、パッケージベース200に収めた状態を示す略図である。図において、半導体ダイチップ201には、図6の電界効果トランジスタTr1,Tr2,Tr3及び第1キャパシタCds1,Cds2,Cds3が含まれている。半導体ダイチップ201の上面には導電体からなる3枚のパッド202が設けられており、それぞれ、電界効果トランジスタTr1,Tr2,Tr3の各ドレインと接続された出力端子となっている。なお、電界効果トランジスタTr1,Tr2,Tr3の各ソースは、共通の接地側電路(図示せず。)に接続され、外部のリード線(図示せず。)と接続可能である。
半導体ダイチップ201の隣には、矩形のマイクロストリップ基板208が設けられ、その上面には、導電体からなる横長形状のマイクロストリップライン209が形成されている。このマイクロストリップライン209は、図6のインダクタLs−sに相当するものであり、マイクロストリップ基板208によって、接地側電路から絶縁されている。3本のワイヤ205の一端は半導体ダイチップ201における3つのパッド202にそれぞれ接続され、他端は全てマイクロストリップライン209の一端(図の左端)近傍に接続されている。マイクロストリップライン209の他端近傍には、ワイヤ206の一端が接続され、このワイヤ206の他端は、外部リード207と接続されている。
マイクロストリップライン209をリボンインダクタンスとした場合のインダクタンス値は、
L=Z0×ML×(ε1/2)/300 [nH] ...(8)
となる。ここで、Z0は特性インピーダンス、MLはライン長[mm]、εはマイクロストリップ基板208の実効誘電率である。例えば、ε=10、Z0=10[Ω]のマイクロストリップラインを用いれば、L=0.9[nH]を得るためには、ML=8.5mmとなる。マイクロストリップライン幅は、基板厚を0.3mmとしたならば、2.5mmとなる。
従って、マイクロストリップライン209のライン長として8.5mmを確保すれば、所望のインダクタンスL(=0.9nH)が得られる。その結果、3本のワイヤ205はインダクタとしてではなく、内部整合を目的として、トランジスタTr1,Tr2,Tr3とマイクロストリップライン209とを互いに接続する電路としてのみに用いられている。そのため、ワイヤ205の長さは最小限でよく、例えば1mm程度でよい。
従って、振動等によるワイヤ205の変形や、ワイヤ205とパッド202又は電極204との接合部の破断の問題を解消することができる。また、ワイヤ205間での磁気結合も発生しにくいので、ワイヤ205の溶断の恐れも、解消することができる。
一方、図7において、平行平板コンデンサ210は、マイクロストリップ基板208上に設けられている。これは、図6の第2キャパシタCsに相当するものである。キャパシタ210の一方(上面)の電極211は、マイクロストリップライン209から導電部212を連ねて設けられており、マイクロストリップライン209と電気的に直結されている。
一方、前述の(B)の構成すなわち、平行平板コンデンサ210の面積をなるべく小さくすること、に関しては、以下のようにすることができる。
すなわち、平行平板コンデンサ203のキャパシタンスは、
Cp=ε0×ε×(S/d) [pF] ...(9)
で得られる。ここで、ε0は真空中の誘電率、εは基板の比誘電率、Sは平行平板コンデンサ面積、dは板厚である。例えば、Cp=30pF、ε=50、dを0.2mmとすれば、Sは13.6mm2となり、実装において問題のない大きさで実現できる。
ここで、Cpを小さくするには、Sを小さくすることが考えられる。ところが、4pF程度のCpを得るためには、Sは1.8mm2となり、実装するにあたっては、マイクロストリップ基板208への接続力の低下を招く恐れがある。そこで、Sを小さくするのではなく、上記の値よりも誘電率εを小さくし、かつ、板厚dを大きくする。すなわち、(9)式より、ε=10、d=0.3mmの同様の基板にて、Cp=4pFのキャパシタンスを形成した場合、上記の場合と同様に、S=13.6mm2となり、実装において問題のない大きさで実現できる。なお、誘電率εを小さくすることは、コストの低減に寄与する。
また、インダクタLs−sであるマイクロストリップライン209と、キャパシタCsである平行平板コンデンサ210とを、マイクロストリップ基板208に一体形成することにより、ワイヤ接続をマイクロストリップライン209上で行えば、平行平板コンデンサ210にワイヤがボンディングされることはなくなる。従って、Sを小さくしても、ボンディングミスを招く恐れを解消することができる。すなわち、小さな面積のためワイヤボンディングができない、もしくは困難であるといった問題が解消され、小さなキャパシタ接続に好適な構成となる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
第1実施形態に係るEJ級増幅器の回路図である。 EJ級増幅器の電圧電流波形図である。 第2実施形態に係るEJ級増幅器の回路図である。 第3実施形態に係るEJ級増幅器の回路図である。 図4に示した増幅器を、パッケージベースに収めた状態を示す略図である。 実装技術を重視した本願発明の一実施形態による増幅器の回路図である。 図6に示した増幅器を、パッケージベースに収めた状態を示す略図である。 従来のJ級増幅器の回路図である。 従来のJ級増幅器の電圧電流波形図である。
符号の説明
1:増幅器、3:LC回路、20:増幅器、200:パッケージベース、201:半導体ダイチップ、202:パッド、203:平行平板コンデンサ、204:電極、205:ワイヤ、206:ワイヤ、207:外部リード、208:マイクロストリップ基板、209:マイクロストリップライン、210:平行平板コンデンサ、211:電極、212:導電部、Tr,Tr1,Tr2,Tr3:電界効果トランジスタ部、Cds,Cds1,Cds2,Cds3:第1キャパシタ(容量性インピーダンス部)、Cs:第2キャパシタ、Ls,Ls1,Ls2,Ls3,Ls−s;インダクタ

Claims (3)

  1. 入力端となるゲート並びに出力端となるドレイン及びソースを有する電界効果トランジスタ部と、前記ドレインと前記ソースとの間に接続された容量性インピーダンス部とを有して、J級動作を前提とする動作を行う増幅器であって、
    前記容量性インピーダンス部よりも後段に位置するように、前記ドレインに接続されたインダクタと、
    前記インダクタを介して前記容量性インピーダンス部に並列接続されたキャパシタと、を有し、
    前記インダクタは、基板上に形成されたマイクロストリップラインによって所定のインダクタンスを確保するものであり、
    前記容量性インピーダンス部のインピーダンスをXdsとし、前記容量性インピーダンス部よりも後段側のインピーダンスの実部をZ1(Re)とするとき、Xds/Z1(Re)>1の関係を満たし、かつ、前記インダクタのインピーダンスが前記容量性インピーダンス部のインピーダンスXds以上とすることで、前記出力端から後段側を見たときの、増幅器の基本波周波数の2倍波におけるインピーダンスが容量性となることを確保する、
    ことを特徴とする増幅器。
  2. 前記キャパシタは、平行平板コンデンサであって、その一方の電極は、前記基板上において、前記マイクロストリップラインから導電部を連ねて設けられている請求項1記載の増幅器。
  3. 前記インピーダンスXdsと前記インピーダンスの実部Z1(Re)とは、Xds/Z1(Re)<2.5を満たす請求項1記載の増幅器。
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