JP5039120B2 - プラズマ処理装置用のアルミナ部材及びプラズマ処理装置用のアルミナ部材の製造方法 - Google Patents

プラズマ処理装置用のアルミナ部材及びプラズマ処理装置用のアルミナ部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマ処理装置用のアルミナ部材、アルミナ部材を配設したプラズマ処理装置及びプラズマ処理装置用のアルミナ部材の製造方法に関する。
プラズマ処理装置では、電極部分、載置台、ガスのシャワーヘッド等、処理室内部のプラズマに晒される部分に多くの誘電体を使用する。たとえば、RLSA(Radial Line Slot Antenna)プラズマ処理装置やマイクロ波プラズマ処理装置では、処理室の天井面に誘電体窓を設けることによって処理室内の気密を保持するとともに、電磁波を誘電体窓に透過させて処理室内に供給し、電磁波の電界エネルギーによりプラズマを生成する(たとえば、特許文献1、2参照。)。
プラズマ処理装置に用いられる誘電体の材質としては、アルミナ(Al)が多く用いられる。アルミナには、大面積でも比較的製造が容易であること、性能が安定していること、機械的強度が高いこと、コストが安いこと等、多くの利点が内在するためである。
特開2008−13816号公報 特開2008−91571号公報
しかしながら、プラズマ処理中、アルミナのプラズマに晒される部分は、プラズマによりダメージを受けて削れてしまい、その剥離物が膜中に混入してプロセス性能を悪化させる場合がある。たとえば、水素プラズマ処理では、水素プラズマによりアルミナ表面がスパッタされるとともに酸化還元反応が生じる。アルミナ表面にてこのような物理的衝撃及び化学反応が起こると、アルミナ部材表面が損傷してアルミナからアルミニウムや酸素が飛び出して汚染源となり、それらが膜中に混入して膜質を悪くする。
これに対して、アルミナの替わりにプラズマに晒されてもダメージを受けない素材を使用することも考えられるが、上記に説明したアルミナの利点から、現時点ではプラズマ処理装置に用いる誘電体としてアルミナ部材は最も適した素材の一つである。
上記問題に鑑み、本発明は、プラズマに晒されても表面が削れないように加工されたプラズマ処理装置用のアルミナ部材、そのアルミナ部材を配置したプラズマ処理装置及びそのアルミナ部材を製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、内部にてプラズマが励起される処理容器と、前記処理容器内にプラズマ励起用の電磁波を供給する電磁波源と、を備えたプラズマ処理装置に用いられるアルミナ部材であって、前記アルミナ部材は、アルミナ基材に、膜厚が1μm以下の窒化アルミニウムの膜がコーティングされているプラズマ処理装置用のアルミナ部材が提供される。
これによれば、プラズマ処理装置に用いられるアルミナ部材であって、該アルミナ部材は、アルミナ基材に窒化アルミニウムの膜がコーティングされて構成されている。これにより、アルミナ部材が、プラズマに晒されても窒化アルミニウムのコーティングによりアルミナ部材の表面にて酸化還元反応は生じず、また、アルミナ部材の表面へのイオンアタックによるダメージも妨げられる。この結果、プラズマ処理中、アルミナ部材がプラズマに晒されても、アルミナ部材がダメージを受けて削れることはなく、アルミナ部材の削れによる処理室内の金属汚染やコンタミの問題を解消することができる。
トリメチルアルミニウム(Trimethylaluminium,化学式Al(CH,以降TMAと記す)とアンモニア(NH)とを含んだ混合ガスの熱CVD処理により、前記アルミナ基材を前記窒化アルミニウムの膜にてコーティングしてもよい。
前記熱CVD処理に使用される混合ガス中のTMAガスの流量に対するアンモニアガスの流量は、10倍以上であってもよい。なお、本明細書中の流量は0℃かつ1気圧における体積で規格化された流量を意味する。
前記熱CVD処理を施す熱CVD処理装置の内部を400℃以上、700℃以下に調温してもよい。
アレン・エヌ・メチルピロリジン(Alane−N−methylpyrrolidine,化学式AlH:N(CH)(CH,以降MPAと記す)とアンモニアとを含んだ混合ガスの熱CVD処理により、前記アルミナ基材を前記窒化アルミニウムの膜にてコーティングしてもよい。
前記プラズマ処理装置用のアルミナ部材は、前記処理容器内に設けられ、プラズマ処理中に少なくともプラズマに晒されるアルミナ基材の表面に窒化アルミニウムの膜がコーティングされていてもよい。
前記プラズマ処理装置用のアルミナ部材は、前記処理容器の内側に面して設けられ、前記電磁波源から供給された電磁波を前記処理容器内に向けて透過させる誘電体窓であってもよい。
前記プラズマ処理装置用のアルミナ部材は、前記プラズマ処理装置から取り外して前記熱CVD処理により前記窒化アルミニウムの膜をリコートした後、再度前記プラズマ処理装置に取り付けて再利用されるようにしてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、内部にてプラズマが励起される処理容器と、前記処理容器内にプラズマを励起するために必要な電磁波を供給する電磁波源と、前記処理容器内に設けられたアルミナ部材と、を備え、前記アルミナ部材の少なくともプラズマに晒されるアルミナ基材の表面には、膜厚が1μm以下の窒化アルミニウムの膜がコーティングされているプラズマ処理装置が提供される。
上記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、熱CVD処理装置の内部を400℃以上、700℃以下に調温する工程と、前記熱CVD処理装置にトリメチルアルミニウムとアンモニアとを含んだ混合ガスを供給する工程と、前記混合ガスを使用した熱CVD処理により、前記熱CVD処理装置の内部にてアルミナ基材を、膜厚が1μm以下の窒化アルミニウムの膜にてコーティングする工程と、を含むプラズマ処理装置用のアルミナ部材の製造方法が提供される。
以上説明したように、本発明によれば、アルミナ基材を窒化アルミニウムの膜によってコーティングしたプラズマ処理装置用のアルミナ部材を用いることにより、プラズマの作用によってアルミナ部材の表面がダメージを受けて削れることを防ぎ、アルミナ部材中のアルミニウムや酸素による汚染を防止することができる。
本発明の一実施形態に係るアルミナ部材を製造するための熱CVD処理装置を模式的に示した図である。 同実施形態に係る熱CVD処理装置での圧力と膜厚との関係を示したグラフである。 同実施形態に係る熱CVD処理装置での圧力と膜中の組成比との関係を示したグラフである。 同実施形態に係る熱CVD処理装置での温度と膜中のカーボン比との関係を示したグラフである。 TMAの熱分解特性を示したグラフである。 同実施形態に係る熱CVD処理装置に供給するアンモニアガス濃度と膜中のカーボン比との関係を示したグラフである。 アンモニアの熱分解特性を示したグラフである。 同実施形態に係る熱CVD処理装置での処理時間と膜厚との関係を示したグラフである。 同実施形態に係るアルミナ部材を設けたマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図である。 同実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の天井面を示した図である。 同実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置に設置されたアルミナ部材の一部拡大図である。 図12(a)(b)は、アルミナ部材(TMAコート)のプラズマ照射前後のアルミナ表層の組成比を示した図である。 図13(a)(b)は、アルミナ部材(MPAコート)のプラズマ照射前後のアルミナ表層の組成比を示した図である。 図14(a)(b)は、アルミナ基材(コートなし)のプラズマ照射前後のアルミナ表層の組成比を示した図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、以下の説明ではガスの流量をSCCMまたはSLMの単位を用いて説明する。SCCMとSLMは温度が0℃かつ圧力が1atmつまり101325Paで規格化した流量を表す。例えばxSLMは、温度が0℃かつ1atmつまり101325Paにおいて体積がxL(Lはリットル)となるガスと等しい質量を一分間当たりに流す流量を意味する。同様にySCCMは、温度が0℃かつ1atmつまり101325Paにおいて体積がycc(ccはつまりcm)となるガスと等しい質量を一分間当たりに流す流量を意味する。前記から分かるようにSCCMとSLMは、例えば1SLMは1000SCCMと等しい流量となる関係にある。
説明は、以下の順序で行う。
[1.アルミナ部材の製造方法]
(熱CVD処理装置の構成)
(アルミナ部材の製造方法)
(プロセス条件)
[2.アルミナ部材を配置したプラズマ処理装置]
(マイクロ波プラズマ処理装置の構成)
[3.アルミナ部材のプラズマ耐性評価]
(プラズマ耐性評価 TMAコート)
(プラズマ耐性評価 MPAコート)
(プラズマ耐性評価 コートなし)
[1.アルミナ部材の製造方法]
まず、本発明の一実施形態に係るアルミナ部材の製造方法について説明する。このアルミナ部材はプラズマ処理装置用であり、プラズマ耐性を強化するために板状のアルミナ基材に以下の加工が施される。
(熱CVD処理装置の構成)
本実施形態に係るアルミナ部材は、図1に示した熱CVD処理装置100にて熱CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)処理される。熱CVD処理は、熱エネルギーによってガスを化学反応させ、薄膜を生成するものである。
熱CVD処理装置100は、チューブ状のリアクタ105を有し、リアクタ105内部にて板状のアルミナ基材30aに熱CVD処理を行う。リアクタ105の外部には、赤外線ランプ110が装着されている。赤外線ランプ110の近傍にはニクロム線115が配されていて、各ニクロム線115は、温調器120に接続されている。リアクタ105はアルミナとステンレス(SUS)により形成されているが、石英等を用いてもよい。また、赤外線ランプ110に変えて他のランプヒータを用いることができる。またニクロム線115に変えて他のヒータを用いることができる。
ガス系統について説明する。ガス系統は、主にガスラインL1、ガスラインL2及びガスラインL3を有している。ガスラインL1からは、パージガスとして窒素ガス(N)がリアクタ105に供給される。なお、パージガスに使用されるガスは、不活性ガスであれば窒素ガスに限られない。ガスラインL2からは、アンモニア(NH)ガス及びアルゴン(Ar)ガスがリアクタ105に供給される。ガスラインL3からは、アルゴンガスをキャリアガスとしてトリメチルアルミニウム(Trimethylaluminium,化学式Al(CH,以降TMAと記す)がリアクタ105に供給される。TMAは、アルミニウム液体金属材料であり、原料容器135に収納されており、ガス化したTMAガスをアルゴンガスにてキャリアするようになっている。なお、キャリアガスに使用されるガスは、不活性ガスであればアルゴンガスに限られない。
(アルミナ部材の製造方法:コーティング)
次にアルミナ部材の製造方法について、前工程、本工程の順に説明する。まず、アルミナ基材30aをコーティングする前工程では、温調器120の温度調整によりニクロム線115からの熱によって赤外線ランプ110を配管加熱し、リアクタ105内部を400℃以上に調温する。バルブV1を開き、他のバルブを閉じてガスラインL1からパージガスの窒素ガスをリアクタ105内に供給する。図示しない排気装置によりリアクタ105の内部を所定の真空度まで排気する。前工程では、窒素ガスの流量を1SLMに調整しながら30分間プリベークする。
前記プリベーク後、本工程である熱CVD処理を開始する。本工程では、パージガスから実ガスに切り替える。すなわち、バルブV1を閉じて窒素ガスの供給を停止し、ガスラインL2、L3のバルブ群(V2〜V9)を適宜開いてTMAガス、アンモニアガス及びアルゴンガスをリアクタ105に供給する。具体的には、バルブV2を開いてマスフローコントローラ125によりガス流量を調整しながらガスラインL2からアンモニアガスとアルゴンガスとの混合ガスをリアクタ105へ供給し、バルブV3〜V6を開いてマスフローコントローラ130によりガス流量を調整しながらガスラインL3からTMAガスとアルゴンガスとの混合ガスをリアクタ105へ供給する。
その際、混合ガスの全ガス流量つまり、リアクタ105に供給される全ガス流量の和に対してアンモニアガス流量の割合が1000ppm(0.1%)になり、混合ガスの全ガス流量に対してTMAガス流量の割合が100ppm(0.01%)になるように、ガスラインL2から1SCCMのアンモニアガスと499SCCMのアルゴンガスとの混合ガスをリアクタ105に供給し、ガスラインL3から0.1SCCMのTMAガスと499.9SCCMのアルゴンガスとの混合ガスをリアクタ105に供給する。
赤外線ランプ110の配管加熱により赤外線ランプ110から赤外線がリアクタ105内部に照射されると、その赤外線のエネルギーによってTMA及びアンモニアガスが熱分解して化学反応を起こし、その結果、アルミナ基材30a全体に窒化アルミニウム(AlN)の薄膜が成膜される。所定時間後、本工程を終了し、バルブV2〜V9等を適宜開閉しながら排気する。
なお、TMAの替わりにアレン・エヌ・メチルピロリジン(Alane−N−methylpyrrolidine,化学式AlH:N(CH)(CH,以降MPAと記す)を用いて窒化アルミニウムのコーティング膜を成膜してもよい。その場合には、原料容器135にはMPAが収納されていて、ガスラインL3からガス化したMPAガスとアルゴンガスとの混合ガスが供給される。その際にも、全ガス流量(つまり、ガスラインL2からの混合ガスとガスラインL3からの混合ガスの流量の和)に対してMPAガスの流量の割合が100ppm(0.01%)になるように、ガスラインL3から0.1SCCMのMPAガスと499.9SCCMのアルゴンガスとの混合ガスをリアクタ105に供給し、ガスラインL2から1SCCMのアンモニアガスと499SCCMのアルゴンガスとの混合ガスをリアクタ105に供給する。
(プロセス条件)
以上に説明した熱CVD処理において、プロセス条件の最適化を図るとプラズマ耐性の高いコーティング膜が形成できる。換言すれば、プロセス条件の最適化を図らないと、窒化アルミニウム膜中にカーボン(C)が残留したり、酸素が混入したりしてプラズマ耐性が悪くなる。そこで、発明者らは、リアクタ105内の圧力や温度、熱CVDの処理時間等の適正化を図るための実験を行った。
(圧力条件)
まず、圧力を変化させて熱CVD処理し、生成された窒化アルミニウム膜の膜質を調べた。熱CVD処理時のプロセス条件は次の通りである。
プロセス条件
・ガス種、流量 500SCCMの2000ppmNH3/Arの混合ガス及び500SCCMの200ppmTMA/Arの混合ガスを供給する。すなわち、実験時のガスに関する条件は、アンモニアガス流量とTMAガス流量とアルゴンガス流量の和が1SLMであり、前記流量の和に対してアンモニアガス流量が1000ppmであり、前記流量の和に対してTMAガス流量が100ppmである。つまり、アンモニアガス流量が1SCCMであり、TMAガス流量が0.1SCCMであり、アンモニアガスとアルゴンガスとの混合ガス中のアルゴンガスとTMAガスとアルゴンガスとの混合ガス中のアルゴンガスとを足した流量(つまりアルゴンガスの総流量)が998.9SCCMである。
・温度 600℃
・処理時間 30分
・圧力 XTorr(可変)
実験の結果、圧力の変化に伴う窒化アルミニウム膜厚の変化を図2に示し、圧力の変化に伴う窒化アルミニウム膜中の窒素N及び酸素Oの組成比の変化を図3に示す。図2の実験結果によれば、圧力が低いほど窒化アルミニウム膜が厚くなることがわかる。また、図3の実験結果によれば、圧力が低いほど窒化アルミニウム膜の酸素含有率が低く、窒素含有率が高くなることがわかる。窒化アルミニウム膜中の酸素含有率が低くなるほどプラズマ耐性は向上するから、圧力を低くして酸素含有率を低下させるほうがよい。
(窒化アルミニウム膜厚)
ただし、アルミナ基材30aをコーティングする窒化アルミニウム膜は、1μm以下である必要がある。これは、窒化アルミニウム膜の厚さが1μmを超えると、プラズマ処理時の熱膨張により窒化アルミニウム膜がひび割れる可能性が高くなるからである。コーティングされたアルミナ部材は、後述するようにプラズマ処理装置に設置されて、プラズマ処理中には高温にさらされ、基板の搬出時には冷却される。アルミナ基材の熱膨張係数は8.0×10−6−1、そのアルミナ基材をコーティングする窒化アルミニウムの熱膨張係数は4.9×10−6−1である。この熱膨張差が原因となって、1μmを超える厚さの窒化アルミニウム膜では、プラズマ処理時のアルミナ部材の加熱と冷却の繰り返しによって窒化アルミニウム膜が割れてしまう。よって、本実施形態では、窒化アルミニウムのコーティング膜は、1μm以下に制御される。
(温度条件)
次に、温度を変化させて熱CVD処理し、生成された窒化アルミニウム膜の膜質を調べた。熱CVD処理時のプロセス条件は次の通りである。
プロセス条件
ガス種、流量は、500SCCMの200ppmNH/Arの混合ガスと、500SCCMの200ppmTMA/Arの混合ガスをリアクタ105へ供給する。これにより、リアクタ105に供給される全ガス流量の和に対して、アンモニアガス流量が100ppmとなり、TMAガス流量が100ppmとなる。すなわち、実験時の各ガスの流量に関する条件は、アンモニアガス流量とTMAガス流量とアルゴンガス流量の和が1SLMで、アンモニアガス流量は0.1SCCM、TMAガス流量は0.1SCCM、アルゴンガス流量は999.8SCCMである。
また、温度はX℃の可変であり、処理時間は30分である。
実験の結果、温度の変化に伴う窒化アルミニウム膜中のカーボンの含有率を図4に示す。図4の実験結果によれば、温度が高くなるほど窒化アルミニウム膜中のカーボン含有率が高くなることがわかる。窒化アルミニウム膜にはなるべくカーボンが入らないほうがよい。なぜなら、カーボンは酸素(O)や水素(H)と反応しメチル化(CH)して揮発する性質を有している。窒化アルミニウム膜中でこのような化学反応が起こると窒化アルミニウム膜の表層を平坦化できず、窒化アルミニウム膜表面に凹凸が生じて窒化アルミニウム膜表面の特に凸部に電界エネルギーが集中してその部分で剥離が起こり、コンタミの原因となるからである。よって、リアクタ105内の温度は、窒化アルミニウム膜中のカーボン含有率が40%以下となる温度700℃以下が望ましい。
図5に、アルミナパッシべーション膜(Al−SUS)表面でのTMAの熱分解特性を示す。このときの条件は、
・ガス種、流量 5SCCMの100ppmTMA/Arの混合ガス、つまり0.0005SCCMのTMAガスと4.9995SCCMのアルゴンガスを供給する。
・プリベーク 500SCCMのアルゴンガスを流しながら500℃で1時間加熱する。
つまりこの熱分解特性の実験は、プリベークとして一分間に500SCCMのアルゴンガスを流しながら500℃で1時間加熱し、その後アルゴンガスを流しながら温度が室温に安定するまで待ち、室温での温度安定をしばらく保持した後、0.0005SCCMのTMAガスと4.9995SCCMのアルゴンガスとの混合ガスを流しながら温度を2℃/minのレートで上昇させ、この温度を上昇させている最中に温度と排出されるガスの成分とを測定することにより行った。
この結果、温度が350℃以上でTMAの熱分解が始まり、分解とともにメタン(CH)が発生していることが分かる。温度が400℃以上になると、TMAが安定して熱分解する。図4及び図5の結果から、熱CVD処理の温度の下限は、TMAが安定して熱分解される400℃以上である必要がある。また、熱CVD処理の温度の上限は、窒化アルミニウム膜中に含まれるカーボンの比率を考慮して700℃以下であることが好ましい。
(アンモニア濃度条件)
次に、アンモニア濃度を変化させて熱CVD処理した場合に成膜された窒化アルミニウム膜を調べた。熱CVD処理時のプロセス条件は次の通りである。
プロセス条件
この実験時のガスに関する条件は、リアクタ105内に供給される、アンモニアガス流量とTMAガス流量とアルゴンガス流量との和を1SLM(=1000SCCM)に固定し、前記流量の和に対してアンモニアガス濃度がX(可変)ppmとなるように、アンモニアガス流量をX×10−6SLM(=X×10−3SCCM)とし、TMAガス流量を0.1SCCM(つまり前記流量の和に対してTMAガス濃度が100ppm)とし、アンモニアガスの流量を可変することに伴い総流量が1SLMとなるように、アルゴンガス流量を1000−(X×10−3)−(0.1)SCCMとした。また、温度は600℃、処理時間は30分である。
実験の結果、アンモニアガス濃度の変化に伴う窒化アルミニウム膜中のカーボン含有率を図6に示す。図6の実験結果によれば、カーボン含有率は、アンモニアガス濃度が10ppmと100ppmとでは38%前後となり、1000ppmで0となる。つまりアンモニアガス濃度が100ppmから1000ppmの間にカーボン含有率が減り始めるポイントがあることが分かる。前述したように、カーボン(C)は酸素(O)や水素(H)と反応しメチル化(CH)して揮発する性質を有しているため、窒化アルミニウム膜にはなるべくカーボンが入らないほうがよい。よって、アンモニアガス濃度は、窒化アルミニウム膜中のカーボン含有率が低い1000ppm以上が好ましく、下限は、カーボン含有率が減り始める100ppm〜1000ppmの間であるといえる。
なお、アンモニアガス濃度100ppmは、TMAガス流量に対してアンモニアガス流量が1倍であり、アンモニアガス濃度1000ppmは、TMAガス流量に対してアンモニアガス流量が10倍である。
図7に、アルミナパッシべーション膜(Al−SUS)表面でのアンモニア(NH)の熱分解特性を示す。このときの条件は、
・ガス種及び流量 100ppmNH/Arの混合ガスを5SCCM、つまり、0.0005SCCMのアンモニアガスと4.9995SCCMのアルゴンガスを流す。
・プリベーク 一分間に500SCCMのアルゴンガスを流しながら500℃で1時間加熱する。
つまりこの熱分解特性の実験は、プリベークとして一分間に500SCCMのアルゴンガスを流しながら500℃で1時間加熱し、その後アルゴンガスを流しながら温度が室温に安定するまで待ち、室温での温度安定をしばらく保持した後0.0005SCCMのアンモニアガスと4.9995SCCMのアルゴンガスとの混合ガスを流しながら温度を2℃/minのレートで上昇させ、この温度を上昇させている最中に温度と排出されるガスの成分とを測定することにより行った。
この結果、温度が370℃以上でアンモニアの熱分解が開始され、600℃でほぼ完全に分解することが分かる。よって、窒化アルミニウム膜成膜時の温度条件としては、TMAが安定して熱分解される400℃以上に設定すれば、アンモニアも十分に熱分解され、窒化アルミニウム膜成膜のための化学反応が促進されることがわかる。
(処理時間)
最後に、熱CVDの処理時間を変化させた場合の窒化アルミニウム膜の膜厚を調べた。その際のプロセス条件は次の通りである。
プロセス条件
実験時のガスに関する条件は、アンモニアガス流量とTMAガス流量とアルゴンガス流量の和が1SLMであり、この流量の和に対してアンモニアガス流量が1000ppm、TMAガス流量が100ppmである。つまり、アンモニアガスが1SCCMでTMAガスが0.1SCCMでアルゴンガスが998.9SCCMである。また、温度は600℃、処理時間はX時間の可変である。
実験の結果、処理時間と窒化アルミニウム膜厚との関係を図8に示す。図8の実験結果によれば、30分で135nm程度の膜厚になる。前述の通り、膜厚は1μm以下であればひび割れが生じない。よって、処理時間は30分〜2時間のいずれでもよく、処理時間が30分であっても、後述するようにプラズマ耐性があり、かつスループットが向上するので好ましい。
以上の結果から、熱CVD処理装置(図1)における最適化されたプロセス条件は以下のとおりとなる。
プロセス条件
・ガス種及び流量
ガスラインL2 2000ppmNH/Arの混合ガスを500SCCM(アンモニアガスを1SCCM、アルゴンガスを499SCCM)供給
ガスラインL3 200ppmTMA/Ar混合ガスを500SCCM(TMAガスを0.1SCCM、アルゴンガスを499.9SCCM)供給
・温度 400℃以上(好ましくは500℃〜700℃)
・処理時間 30分
・圧力 特に限定なし(ただし、酸素含有量を低くするために低めがよい)
アンモニアガスの流量はTMAガスの流量に対して、少なくとも1倍以上、好ましくは10倍以上であることが好ましい。これにより、カーボン基がほとんど入らない窒化アルミニウム膜を成膜することができる。一方、たとえば、アンモニアガスの流量をTMAガスの流量に対して1倍以下にすると窒化アルミニウム膜中にカーボン基が入り、必要なプラズマ耐性をもつコーティング膜を得られない。アンモニアガスの流量をTMAガスの流量に対して少なくとも10倍にすると、窒化アルミニウム膜中に入るカーボン基をとても少なくでき、良好なプラズマ耐性をもつコーティング膜を得られる。
以上、熱CVD処理装置の内部を400℃以上に調温する工程と、前記熱CVD処理装置にTMAとアンモニアとを所定比率含んだ混合ガスを供給する工程と、前記混合ガスを使用した熱CVD処理により、アルミナ基材を窒化アルミニウムの膜にてコーティングする工程と、を含むプラズマ処理装置用のアルミナ部材の製造方法及び熱CVD処理時のプロセス条件の最適化について説明した。次に、このようにして製造されたアルミナ部材を配置した本実施形態に係るプラズマ処理装置について、図9〜図11を参照しながら説明する。本実施形態では、アルミナ部材30をマイクロ波プラズマ処理装置の誘電体窓に用いた場合を例に挙げて説明する。
[2.アルミナ部材を配置したプラズマ処理装置]
(マイクロ波プラズマ処理装置の構成)
図9は、本実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置200の縦断面図を模式的に示した図である。図10は同装置の天井面を示す。以下の説明では、本実施形態にかかるマイクロ波プラズマ処理装置を用いて基板GにプラズマCVD処理を施す。
マイクロ波プラズマ処理装置200は、処理容器10と蓋体20とを備えている。処理容器10は、その上部が開口された有底立方体形状を有している。処理容器10と蓋体20とは、蓋体20(蓋本体21)と処理容器10との接面に配設されたOリング32により密閉されていて、これにより、プラズマ処理を行う処理室Uが形成される。処理容器10および蓋体20は、たとえば、アルミニウム等の金属からなり、電気的に接地されている。
処理容器10には、その内部にてガラス基板(以下「基板」という)Gを載置するためのサセプタ11(載置台)が設けられている。サセプタ11は、たとえば窒化アルミニウムからなり、その内部には、給電部11aおよびヒータ11bが設けられている。
給電部11aには、整合器12a(たとえば、コンデンサ)を介して高周波電源12bが接続されている。また、給電部11aには、コイル13aを介して高圧直流電源13bが接続されている。整合器12a、高周波電源12b、コイル13aおよび高圧直流電源13bは、処理容器10の外部に設けられている。また、高周波電源12bおよび高圧直流電源13bは、接地されている。
給電部11aは、高周波電源12bから出力された高周波電力により処理容器10の内部に所定のバイアス電圧を印加するようになっている。また、給電部11aは、高圧直流電源13bから出力された直流電圧により基板Gを静電吸着するようになっている。
ヒータ11bには、処理容器10の外部に設けられた交流電源14が接続されていて、交流電源14から出力された交流電圧により基板Gを所定の温度に保持するようになっている。
処理容器10の底面は筒状に開口され、その底面周縁にはベローズ15の一端が装着されている。また、ベローズ15の他端は昇降プレート16に固着されている。このようにして、処理容器10底面の開口部分は、ベローズ15および昇降プレート16により密閉されている。
サセプタ11は、昇降プレート16上に配置された筒体17に支持されていて、昇降プレート16および筒体17と一体となって昇降する。これにより、サセプタ11は、処理プロセスに応じた高さに調整されるようになっている。また、サセプタ11の周囲には、処理室Uのガスの流れを好ましい状態に制御するためのバッフル板18が設けられている。
処理容器10の底部には、処理容器10の外部に設けられた真空ポンプ(図示せず)が備えられている。真空ポンプは、ガス排出管19を介して処理容器10内からガスを排出することにより、処理室Uを所望の真空度まで減圧するようになっている。
蓋体20には、蓋本体21、6本の導波管33、スロットアンテナ31及び複数枚のアルミナ部材30が設けられている。6本の導波管33は、その断面形状が矩形状であり、蓋本体21の内部にて平行に並んで設けられている。その内部は、フッ素樹脂(たとえばテフロン(登録商標))、アルミナ(Al)、石英などの誘電部材34で充填されていて、その誘電部材34により、λg=λc/(ε1/2の式に従って各導波管33の管内波長λgが制御される。ここで、λcは自由空間の波長、εは誘電部材34の誘電率である。
スロットアンテナ31は、蓋本体21の下方にて蓋本体21と一体的に形成されている。スロットアンテナ31は、アルミニウムなどの非磁性体である金属から形成されている。スロットアンテナ31には、各導波管33の下面にて、図10に示した13個のスロット37(開口)が、それぞれ直列に配置されている。各スロット37の内部には、フッ素樹脂、アルミナ(Al)、石英などの誘電部材38が充填されていて、その誘電部材38により、λg=λc/(ε1/2の式に従って各スロット37の管内波長λgが制御される。ここで、λcは自由空間の波長、εはスロット37内部の誘電部材38の誘電率である。
誘電体窓にはアルミナ部材30が用いられている。図11に一部拡大して示したように、アルミナ部材30は、アルミナ基材30aに窒化アルミニウム膜30bをコーティングした部材である。図10に示したように、アルミナ部材30はタイル状に形成され、処理容器10の内側に面して均等に39枚設置されている。13枚の部材30が、2本の導波管33を跨ぐように同ピッチで3列に設けられている。6本の導波管33は、2本ずつ組となってY分岐管41を介して3つのマイクロ波源40にそれぞれ接続されている。各アルミナ部材30は、2つのスロット37と隣接する。これにより、6本の導波管33、複数のスロット37および複数のアルミナ部材30から構成されるマイクロ波の伝送経路が構築される。
このように、本実施形態に係るアルミナ部材30は、処理容器10の内側に面して設けられ、マイクロ波源40から供給されたマイクロ波を処理容器内に向けて透過させる誘電体窓として機能する。なお、アルミナ部材30は、処理容器10内に設けられ、プラズマ処理中に少なくともプラズマに晒される表面が、窒化アルミニウムの膜にてコーティングされていればよく、必ずしもアルミナ基材のすべてをコーティングしていなくてもよい。
スロットアンテナ31の下面には、図9〜図11に示したように、39枚のアルミナ部材30を支持するために格子状に形成された梁26が設けられている。梁26は、アルミニウムなどの非磁性体にて形成されている。
再び図9に戻って説明を続ける。ガス供給源43は、複数のバルブの開閉(図示せず)、および複数のマスフローコントローラ(図示せず)の開度をそれぞれ制御することにより、所望の濃度のガスを処理容器10内にそれぞれ供給する。プラズマ耐性を評価する際には、水素ガス、アルゴンガスが供給される。ガス供給源43から出力された所望のガスは、ガスライン42を介して梁26内を貫通したガス導入管29に通され、ガス導入管29の先端開口Aから処理室内に導入される。
冷却水配管44には、冷却水供給源45が接続されていて、冷却水供給源45から供給された冷却水が冷却水配管44内を循環して冷却水供給源45に戻ることにより、蓋本体21は、所望の温度に保たれるようになっている。
以上に説明した構成により、図10に示した3つのマイクロ波源40から出力された、たとえば、2.45GHz×3のマイクロ波により、ガス供給源43から出力された所望のガスが励起されてプラズマが生成され、プラズマの作用により基板Gにエッチングや成膜処理が施される。
[3.アルミナ部材のプラズマ耐性評価]
つぎに、上部電極及び下部電極を有する平行平板型プラズマ処理装置に載置されたアルミナ部材30を用いて、アルミナ部材30のプラズマ耐性を評価した。
(プラズマ耐性評価 TMAコート)
初めに、TMAコート(TMAを原料に用いた窒化アルミニウム膜によるコーティング)されたアルミナ部材30を平行平板型プラズマ処理装置に載置して水素プラズマ処理を行った。プロセス条件は次の通りである。
プロセス条件
・高周波電力 13.56MHz
・バイアス電圧 50V
・ガス種及び流量 水素(H)ガス 5sccm、アルゴンガス 45sccm
・圧力 20mTorr
・処理時間 1時間
この場合の水素プラズマ処理前及び処理後のアルミナ部材30をX線光電子分光(X−ray photoelectron spectroscopy)にて解析した結果を図12に示す。図12(a)は水素プラズマ照射前のアルミナ部材30の表層部分の組成比を示し、図12(b)は水素プラズマ照射後のアルミナ部材30の表層部分の組成比を示す。
グラフのアルミナ部材30の最表層0nm〜10nmは、汚染されているため考察に使えない。上記水素プラズマ処理後、アルミナ部材30を一度大気中に放出してからX線光電子分光による解析を行っているためである。よって、図12(a)(b)のアルミナ部材30の表層10nm〜100nm付近を見てみると、酸素(O)はアルミナ基材(アルミナ部材の下地部分)を示しているのに対して、アルミニウム(Al)と窒素(N)は窒化アルミニウムのコーティング膜を示している。これによれば、アルミナ部材30の表層10nm〜100nm付近のアルミニウムおよび窒素の組成比は変わっていない。
これにより、水素プラズマ照射によっても酸化還元反応は生じておらず、アルミナ部材30の窒化アルミニウム膜は削れていないことがわかる。これにより、TMAコートしたアルミナ部材30にはプラズマ耐性があることが証明された。なお、TMAコートによる窒化アルミニウム膜の表層10nm以上の深さにはカーボンが存在していない。よって、形成されたTMAコートによる窒化アルミニウム膜は、カーボンによるガス化も生じず、良質な膜となっている。
(プラズマ耐性評価 MPAコート)
次に、MPAコート(MPAを原料に用いた窒化アルミニウム膜によるコーティング)されたアルミナ部材30を平行平板型プラズマ処理装置に載置して水素プラズマ処理を行った。プロセス条件は上記TMAコートの場合と同じである。
この場合の水素プラズマ処理前及び処理後のアルミナ部材30をX線光電子分光にて解析した結果を図13に示す。図13(a)は水素プラズマ照射前のアルミナ部材30の表層部分の組成比を示し、図13(b)は水素プラズマ照射後のアルミナ部材30の表層部分の組成比を示す。
この場合にも汚染されていない窒化アルミニウム膜の表層10nm〜100nm付近を見てみると、アルミニウム(Al)と窒素(N)との組成比に大きな変化はない。これにより、MPAコートの場合にも水素プラズマ照射によって酸化還元反応は生じておらず、窒化アルミニウム膜は削れていないことがわかる。これにより、MPAコートしたアルミナ部材30にはプラズマ耐性があることが証明された。なお、MPAコートによる窒化アルミニウム膜の表層10nm以上の深さにもカーボン(C)が存在していない。よって、形成されたMPAコートによる窒化アルミニウム膜は、カーボンによるガス化も生じず、良質な膜となっている。
(プラズマ耐性評価 コートなし)
最後に、窒化アルミニウム膜によりコーティングされていないアルミナ基材のみ(コートなし)を載置した平行平板型プラズマ処理装置を用いて水素プラズマ処理を行った。プロセス条件は上記TMAコートの場合と同じである。
この場合の水素プラズマ処理前及び処理後のアルミナ基材のみ(コートなし)をX線光電子分光にて解析した結果を図14に示す。図14(a)は水素プラズマ照射前のアルミナ基材の表層部分の組成比を示し、図14(b)は水素プラズマ照射後のアルミナ基材の表層部分の組成比を示す。
この場合にも汚染されていないアルミナ基材の表層10nm〜100nm付近を考察すると、アルミニウムが減っている。これによれば、アルミナ基材からアルミニウムが飛び出したと考えられる。この場合、飛び出したアルミニウムにより、処理室内は金属汚染され、膜中にアルミニウムが混入していると考えられる。これにより、コーティングされていないアルミナ基材にはプラズマ耐性がないのに比べて、TMAコート又はMPAコートが施されているアルミナ部材30にはプラズマ耐性があることが証明された。
(他の素材、他のコーティング膜)
以上の説明では、アルミナ基材に窒化アルミニウム膜をコーティングしてアルミナ部材を製造することによりプラズマ耐性を向上させた。
これに対して、窒化アルミニウム膜にてコーティングしたアルミナ部材の替わりに、酸化アルミニウム(AlO)膜にてコーティングしたアルミナ部材を用いることも考えられる。しかしながら、窒化アルミニウムのAl−Nの結合の強さは、酸化アルミニウムのAl−Oの結合の強さより大きい。IRスペクトルによる各結合の伸縮振動を見ると、Al−N(ウルツ型)では、約691cm−1であるのに対して、Al−Oでは、約465cm−1であることから、Al−NのほうがAl−Oより高い振動数を有する。つまり、Al−NのほうがAl−Oより結合強度が大きい。このため、アルミナ基材を窒化アルミニウム膜にてコーティングする方がアルミナ基材を酸化アルミニウム膜にてコーティングするよりプラズマ耐性が強化され、成膜へのアルミニウムや酸素の混入がより低減される。よって、アルミナ基材を窒化アルミニウム膜にてコーティングする替わりに、アルミナ基材を酸化アルミニウム膜にてコーティングしてアルミナ部材を製造するのは得策でない。
また、アルミナ基材を窒化アルミニウム膜にてコーティングしてアルミナ部材を製造する替わりに、窒化アルミニウムだけでアルミナ部材を構成することも考えられる。しかしながら、窒化アルミニウムの誘電正接tanδは3.5×10−3であり、アルミナの誘電正接tanδである1×10−4に比べて一桁大きい。よって、窒化アルミニウム単体では、アルミナ基材に窒化アルミニウムをコーティングした場合よりマイクロ波伝送時のロスが大きくなってしまう。さらに、窒化アルミニウム単独の成膜では、プロセス条件を変えて適正化しても膜中にカーボンが残留したり、酸素が混入したりして、窒化アルミニウム単独の大面積の板を製造することが難しいことが実験により確認されている。対してアルミナ基材は大面積でも比較的製造が容易であること、コストが安いことなどから、アルミナ基材に窒化アルミニウムをコーティングした場合は大面積のものでも製造が容易で、コストが安いという利点がある。よって、アルミナ基材を窒化アルミニウム膜にてコーティングしてアルミナ部材を製造する替わりに、窒化アルミニウムだけでアルミナ部材を構成するのも得策ではない。
よって、アルミナ基材を窒化アルミニウム膜にてコーティングしてアルミナ部材を製造することが良策であるが、その際にも、前述したとおり窒化アルミニウム膜中にカーボンが残留したり、酸素が混入したりすることを防ぐために、上記適正化されたプロセス条件に基づいて窒化アルミニウム膜を成膜することが非常に大切である。すなわち、上記プロセス条件に基づいてアルミナ基材に窒化アルミニウム膜を成膜することにより、プラズマ耐性の高いプラズマ処理装置用のアルミナ部材30を製造することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
たとえば、本発明に係るプラズマ処理装置用のアルミナ部材は、マイクロ波プラズマ処理装置の誘電体窓だけでなく、種々のプラズマ処理装置の電極部分や載置台、ガスのシャワーヘッド等、プラズマに晒される誘電体部分に使用することができる。
また、例えば、本発明に係る熱CVD処理装置は、ニクロム線と赤外線ランプに替えて、他のヒータや加熱方法を用いて熱CVD処理を行うことができる。
また、本発明に係るプラズマ処理装置用のアルミナ部材は、プラズマ処理装置から取り外して熱CVD処理により前記窒化アルミニウムの膜をリコートした後、再度前記プラズマ処理装置に取り付けて再利用することも可能である。これにより、部材の再利用が可能になり、コストを低減し、環境に配慮したプラズマ処理装置の一パーツを製造及び流通させることができる。
本発明に係るアルミナ部材が使用されるプラズマ処理装置は、ICP(Inductively Coupled Plasma)プラズマ処理装置、RLSA(Radial Line Slot Antenna)プラズマ処理装置、MSEP(Metal Surfacewave Excitation Plasma)プラズマ処理装置、平行平板型プラズマ処理装置等、基板やウエハ等の被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であればどんなプラズマ処理装置であってもよい。
本発明にかかるプラズマ処理装置が実行するプラズマ処理としては、CVD、エッチング処理、アッシング処理などが挙げられる。
また、本発明に係る電磁波源は、マイクロ波源だけに限られず、高周波電源等、アルミナ部材が使用されるプラズマ処理装置の処理容器内にプラズマを励起するために必要な電磁波を供給する電源であればよい。
基板G(ガラス基板)のサイズは、たとえば、G3基板サイズで400mm×500mm(処理室内の寸法:720mm×720mm)、G4.5基板サイズで730mm×920mm(処理室内の寸法:1000mm×1190mm)、G5基板サイズで1100mm×1300mm(処理室内の寸法:1470mm×1590mm)である。上記大きさの処理室内に1〜8W/cmのパワーのマイクロ波が供給される。
10 処理容器
20 蓋体
26 梁
33 導波管
30 アルミナ部材
30a アルミナ基材
31 スロットアンテナ
37 スロット
40 マイクロ波源
100 熱CVD処理装置
105 リアクタ
110 赤外線ランプ
115 ニクロム線
120 温調器
135 原料容器
200 マイクロ波プラズマ処理装置

Claims (10)

  1. 内部にてプラズマが励起される処理容器と、前記処理容器内にプラズマ励起用の電磁波を供給する電磁波源と、を備えたプラズマ処理装置に用いられるアルミナ部材であって、
    前記アルミナ部材は、アルミナ基材に、膜厚が1μm以下の窒化アルミニウムの膜がコーティングされているプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  2. トリメチルアルミニウムとアンモニアとを含んだ混合ガスの熱CVD処理により、前記アルミナ基材を前記窒化アルミニウムの膜にてコーティングする請求項1に記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  3. 前記熱CVD処理に使用される混合ガス中のトリメチルアルミニウムガスの流量に対するアンモニアガスの流量は、10倍以上である請求項2に記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  4. 前記熱CVD処理を施す熱CVD処理装置の内部を400℃以上、700℃以下に調温する請求項2又は3のいずれかに記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  5. アレン・エヌ・メチルピロリジンとアンモニアとを含んだ混合ガスの熱CVD処理により、前記アルミナ基材を前記窒化アルミニウムの膜にてコーティングする請求項1に記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  6. 前記プラズマ処理装置用のアルミナ部材は、前記処理容器内に設けられ、プラズマ処理中に少なくともプラズマに晒されるアルミナ基材の表面に窒化アルミニウムの膜がコーティングされている請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  7. 前記プラズマ処理装置用のアルミナ部材は、前記処理容器の内側に面して設けられ、前記電磁波源から供給された電磁波を前記処理容器内に向けて透過させる誘電体窓である請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  8. 前記プラズマ処理装置用のアルミナ部材は、前記プラズマ処理装置から取り外して前記熱CVD処理により前記窒化アルミニウムの膜をリコートした後、再度前記プラズマ処理装置に取り付けて再利用される請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用のアルミナ部材。
  9. 内部にてプラズマが励起される処理容器と、
    前記処理容器内にプラズマを励起するために必要な電磁波を供給する電磁波源と、
    前記処理容器内に設けられたアルミナ部材と、を備え、
    前記アルミナ部材の少なくともプラズマに晒されるアルミナ基材の表面には、膜厚が1μm以下の窒化アルミニウムの膜がコーティングされているプラズマ処理装置。
  10. 熱CVD処理装置の内部を400℃以上、700℃以下に調温する工程と、
    前記熱CVD処理装置にトリメチルアルミニウムとアンモニアとを含んだ混合ガスを供給する工程と、
    前記混合ガスを使用した熱CVD処理により、前記熱CVD処理装置の内部にてアルミナ基材を、膜厚が1μm以下の窒化アルミニウムの膜にてコーティングする工程と、を含むプラズマ処理装置用のアルミナ部材の製造方法。
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